説明

開閉器の吊下金具取付構造体

【課題】開閉器の製造コストを低減させることができる開閉器の吊下金具取付構造体を提供することにある。
【解決手段】本体ケース14のフランジ部の下面に吊下金具21の一部が配置されている。そして、フランジ部と蓋体15とを締結固定する締結体18a(ボルト19及びナット20)を利用して、吊下金具21とフランジ部とを締結固定した。よって、吊下金具21を取付けるための部材を設ける必要がなくなるため、部品点数を削減することができ、溶接箇所も削減することができる。そして、フランジ部と蓋体15とを締結固定する締結体18a(ボルト19及びナット20)を利用するため、吊下金具21とフランジ部とを締結固定する専用の締結体を設ける必要もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉器を吊下支持する吊下金具の取付構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱に固定された開閉器としては、特許文献1に示す開閉器が知られている。特許文献1の開閉器は、本体ケースの短手方向の側壁に締付支持部材が設けられ、その締付支持部材の上面には、蓋及び取付部材が各々ボルト及びナットにより締結固定されている。その取付部材には、吊下げボルトが連結され、吊下げボルトにより電柱に固定された腕金に落下不能に固定されている。
【特許文献1】特開2001−23481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来の開閉器においては、本体ケースの短手方向の側壁に締付支持部材が溶接により固定されていた。溶接は加工コストが高いため、溶接箇所が多いと開閉器の製造コストが高くなるという問題点があった。
【0004】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は開閉器の製造コストを低減させることができる開閉器の吊下金具取付構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、本体ケースの上部に蓋体を備え、前記本体ケースの開口部外周にフランジ部を備え、前記フランジ部の下面を吊り下げ支持する吊下金具を設け、前記吊下金具と前記フランジ部とを締結固定したことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フランジ部と前記蓋体とを締結固定する蓋固定用締結体を利用して、前記吊下金具を前記フランジ部に締結固定したことを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、開閉器運搬用の取手を備え、前記取手は、前記吊下金具と共に前記フランジ部に締結固定されていることを要旨とする。
【0008】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、本体ケースのフランジ部の下面が吊下金具にて吊下げ支持されると共に、吊下金具とフランジ部とが締結固定されている。このため、開閉器を腕金に吊下げたとき安定して設置される。また、吊下金具を取付けるための部材を設ける必要がないため、部品点数が削減され、溶接箇所も削減される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、フランジ部と蓋体とを締結固定する蓋固定用締結体を利用して、吊下金具がフランジ部に締結固定されている。このため、吊下金具とフランジ部とを締結固定する専用の締結体を設ける必要がない。従って、開閉器の部品点数が削減される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、取手とフランジ部とを締結固定する専用の締結体を設ける必要がない。従って、開閉器の部品点数が削減される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数及び溶接箇所を削減することにより開閉器の製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を開閉器に具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図2に示すように、開閉器11は、電柱12に固定した四角柱状の腕金13に吊されるものである。開閉器11は、外観が直方体となるように略四角箱状に形成されており、本体ケース14と蓋体15とを備えている。本体ケース14は、上部を開口した開口部K(図4参照)とされており、その全体形状が底部14aを有する略四角筒状とされている。図1及び図3に示すように、底部14aが長方形状とされていることにより、本体ケース14の4つ側部は、互いに対向する一対の長手側部14b,14cと、互いに対向する一対の短手側部14d,14eとなっている。図2に示すように、長手側部14b,14cは、底部14aの長手辺に一体に連結されており、短手側部14d,14eは、底部14aの短手辺に一体に連結されている。長手側部14b,14cには、三相のブッシングB(長手側部14bのみ図示)が取付けられており、短手側部14dには図示しない開閉部を操作するための操作ハンドルHが設けられている。なお、説明の便宜上、三相のブッシングB及び操作ハンドルHは、図2でのみ図示しており、その他の図面では図示を省略している。
【0013】
図6に示すように、長手側部14b,14c及び短手側部14d,14eの外面には、フランジ部16が一体に形成されている。フランジ部16は、開口部Kの周縁全周に対応する位置に形成されている。
【0014】
図4に示すように、蓋体15は、開口部Kを覆うように配置されている。本体ケース14のフランジ部16と蓋体15との間には、パッキン17が介在されており、このパッキン17によりフランジ部16と蓋体15とをシールしている。この結果、開閉器11の気密性が保持されている。前記フランジ部16と蓋体15とが、複数の締結体18にて締結固定されている(図6参照)。締結体18は、蓋固定用締結体に相当する。締結体18は、ボルト19と、そのボルト19に螺着したナット20により構成されている。
【0015】
図6に示すように、本実施形態では、締結体18は、蓋体15の四隅に対応する位置と、長手側部14b,14cに対応する位置にそれぞれ3つずつと、短手側部14d,14eに対応する位置にそれぞれ1つずつ配置されている。以下、長手側部14b,14cに対応する位置にそれぞれ3つずつ配置された締結体18を、締結体18aという。
【0016】
図1に示すように、開閉器11は、本体ケース14を吊り下げるための一対の吊下金具21を備えている。図5(a)〜(c)に示すように、吊下金具21は、金属プレートをプレス加工で打ち抜き形成し、さらに折り曲げ加工して形成されている。吊下金具21は、本体部22と、一対の鉤部23とを備えている。図5(c)に示すように、本体部22は、断面L字状となるように形成されている。本体部22は、互いに一端同士が一体に連結された垂直部22aと水平部22bとを備えている。
【0017】
図5(a)に示すように、垂直部22aには、開閉器11を腕金13に取付ける際にフック等を仮止めするための仮止孔22cが形成されている。垂直部22aには、J字型の吊下ボルト25(図1参照)に挿通するための挿通孔22dが形成されている。垂直部22aには、その上部に腕金13と係合するための凹部22eが切欠き形成されている。一方、水平部22bの幅方向(図5(a)における左右方向)両端には、下方へ向けて延びる前記鉤部23がそれぞれ形成されている。鉤部23は、断面L字状に形成されており、互いに一端同士が一体に連結された垂直部23aと水平部23bとを備えている。垂直部23aは、水平部23bが一体に連結された端部とは反対側の端部が、前記本体部22の水平部22bに一体に連結されている。また、一つの吊下金具21に形成された両水平部23bは、互いに向かい合う方向へ延びるように形成されている。
【0018】
図5(b)に示すように、水平部23bには、前記締結体18aのボルト19を挿通するための挿通孔23cが形成されている。
図3、図4及び図6に示すように、吊下金具21は本体ケース14の短手側部14d,14e側から装着される。そして、吊下金具21に形成された両水平部23bのうち、一方は長手側部14b、もう一方は長手側部14cに形成されたフランジ部16の下面Mに配置される。この結果、吊下金具21は、本体ケース14を吊下げ支持する。水平部23bは、その挿通孔23cに締結体18aのボルト19が挿通された状態で、該ボルト19及びナット20によりフランジ部16に締結固定されている。ちなみに、吊下金具21は、前記水平部22b、垂直部23a及び水平部23bにより下向きの断面C字状に形成されているため、フランジ部16の長手側部14b、14cを抱えるように吊下げ支持されている。よって、開閉器11は上下方向及び短手方向(図3における左右方向)の移動が規制され、またフランジ部16の下面Mと水平部23bの上面とが当接した状態で固定されるため、安定した吊下げ支持が可能となる。
【0019】
一対の吊下金具21は、図6における長手側部14b、14cの2つの締結体18aを利用して締結固定される。よって、一対の吊下金具21の取付間隔は、締結体18aの取付孔の間隔で決まることとなる。
【0020】
図1及び図3に示すように、開閉器11は、4つのJ字型の吊下ボルト25、その吊下ボルト25にそれぞれ螺着されるナット26、及び2つの支持プレート27を備えている。吊下ボルト25は、その下部が湾曲しており、その上端には雄ネジ部25aが形成されている。吊下金具21は、その一対の挿通孔22dに一対の吊下ボルト25の下部が挿通されている。支持プレート27には、一対の吊下ボルト25の雄ネジ部25aが挿通されている。雄ネジ部25aに螺着されたナット26は、支持プレート27の上面に係止している。図3に示すように、支持プレート27が腕金13の上方に位置し、その支持プレート27に連結された一対の吊下ボルト25が腕金13の両側に位置し、その一対の吊下ボルト25に吊り下げられた吊下金具21の凹部22eが腕金13の下部に係合することにより、開閉器11は腕金13に吊下げ固定されている。
【0021】
図3に示すように、開閉器11は、開閉器運搬用の2つの取手30を備えている。図7(a)〜(c)に示すように、取手30は、金属プレートをプレス加工で打ち抜き形成し、さらに折り曲げ加工して形成されている。取手30は、取付部31と、把持部32とを備えている。取付部31は、長尺な帯状に形成されており、把持部32が連結された側の側面に3つのボルト挿通切欠部31aが形成されている。把持部32は、図7(c)に示すように断面L字状に形成され、かつ図7(b)に示すように平面視コ字状に形成されている。コ字状をなす把持部32の両端は、取付部31の側面に大きな角度で折り曲げ加工して一体に形成されている。
【0022】
図3及び図6に示すように、取手30は長手側部14b、14cに対応する位置に形成されたフランジ部16に締結固定され、開閉器の下方向に広がるハの字状に取付けられている。よって、開閉器運搬時持ち易くなっている。
【0023】
長手側部14b側に締結固定された取手30について説明する。
図4に示すように、この取手30の取付部31は、吊下金具21の水平部23bと、フランジ部16との間に配置されている。図4及び図6に示すように、取付部31に形成された3つのボルト挿通切欠部31aには、前記締結体18aのボルト19がそれぞれ挿通されている。即ち、長手側部14b側の3つの締結体18aのうち、2つの締結体18aは、吊下金具21の水平部23b、取手30の取付部31、フランジ部16、及び蓋体15を締結固定し、残りの1つの締結体18aは、取手30の取付部31、フランジ部16、及び蓋体15を締結固定している。
【0024】
従って、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、本体ケース14のフランジ部16の下面Mに吊下金具21の水平部23bが配置されている。そして、フランジ部16と蓋体15とを締結固定する締結体18a(ボルト19及びナット20)を利用して、吊下金具21の水平部23bとフランジ部16とを締結固定した。
【0025】
よって、吊下金具21を取付けるための部材を設ける必要がなくなるため、部品点数を削減することができ、溶接箇所も削減することができる。そして、フランジ部16と蓋体15とを締結固定する締結体18a(ボルト19及びナット20)を利用するため、水平部23bとフランジ部16とを締結固定する専用の締結体を設ける必要もない。また、吊下金具21の水平部23bがフランジ部16の下面Mを吊下げ支持しているため、安定した吊下げが可能となる。さらには、本体ケース14に吊下金具21を長手側部のフランジ部16における所定位置の締結体18aに締結固定したため、一対の吊下金具21は相互の間隔を決めることができる。
【0026】
(2)取手30を、吊下金具21と共にフランジ部16と蓋体15とを締結固定する締結体18a(ボルト19及びナット20)を利用して、フランジ部16に締結固定した。よって、取手30を本体ケースに溶接する必要がなくなるため、溶接箇所を削減することができる。ちなみに一般に開閉器は、取手を本体ケースに溶接したり、ブッシング保護を兼ねる取手を溶接したりして用いている。
【0027】
(3)長手側部14b,14cに対応する位置に形成されたフランジ部16は、短手側部14d,14eに対応する位置に形成されたフランジ部16に比して長尺に形成されているので、撓みが発生しやすい。よって、取手30の取付部31を吊下金具21の水平部23bと、フランジ部16との間に配置してフランジ部16の長手側部14b,14cに締結固定することにより、そのフランジ部16の撓みを抑制することができる。また、取手30は、取手として機能するだけではなく、フランジ部16の長手側部の補強、即ち開閉器11の補強部材としても機能する。
【0028】
次に、上記実施形態及びその態様の変更から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記取手は、前記本体ケースの長手側部のフランジ部に締結固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の開閉器の吊下金具取付構造体。このため、長手側部のフランジ部の撓みを抑制することができる。また、フランジ部の長手側部の補強、即ち開閉器の補強をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】開閉器を一部破断した正面図。
【図2】開閉器を、電柱に固定した腕金に吊した状態を示す概略説明図。
【図3】開閉器を一部破断した側面図。
【図4】開閉器の部分断側面図。
【図5】(a)は吊下金具の正面図。(b)は吊下金具の底面図。(c)は吊下金具の側面図。
【図6】図1のA−A線矢視断面図。
【図7】(a)は取手の正面図。(b)は取手の底面図。(c)は取手の側面図。
【符号の説明】
【0030】
11…開閉器、14…本体ケース、15…蓋体、16…フランジ部、18…蓋固定用締結体にも相当する締結体、18a…締結体、21…吊下金具、30…取手、K…開口部、M…下面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの上部に蓋体を備え、
前記本体ケースの開口部外周にフランジ部を備え、
前記フランジ部の下面を吊り下げ支持する吊下金具を設け、
前記吊下金具と前記フランジ部とを締結固定したことを特徴とする開閉器の吊下金具取付構造体。
【請求項2】
前記フランジ部と前記蓋体とを締結固定する蓋固定用締結体を利用して、前記吊下金具を前記フランジ部に締結固定したことを特徴とする請求項1に記載の開閉器の吊下金具取付構造体。
【請求項3】
開閉器運搬用の取手を備え、
前記取手は、前記吊下金具と共に前記フランジ部に締結固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開閉器の吊下金具取付構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−210071(P2006−210071A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18777(P2005−18777)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】