説明

開閉器の絶縁強度制御構造

【課題】1相毎の絶縁ケースに収納された固定電極と可動電極を備えた開閉器において、異相主回路間の絶縁協調が取れる、開閉器の絶縁強度制御構造を提供する。
【解決手段】絶縁ケース3の外面の突出壁3bの上側に中間電極7の光端部7aが外側に向くように水平に、ねじ8にてそれぞれ各極に固定されている。そして各極の光端部のそれぞれの間で放電ギャップが形成され、またねじ8の先端部が絶縁ケース3の内側へ突出しており、その先端部が消弧室9の固定ねじ10の頭部との間で放電ギャップG2が形成されている。これにより絶縁強度を大地間<異相主回路間<主回路間と制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配電線路などの電路を開閉するために使用される開閉器に用いられ、開閉部内部における絶縁強度を制御する方法である。更に詳しくは、1相毎に可動電極や固定電極が絶縁ケースに収納されている開閉器において、異相主回路間における絶縁強度を制御するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線路には、配電線路の電路を開閉するために固定電極、および可動電極の開閉部と消弧室を本体ケース内部に収納しているケース入り開閉器が設置されており、上記開閉器には、例えば、遮断器や開閉器の負荷開閉時発生する断路器サージ、開閉サージ、雷による雷サージ等で発生する過電圧において適切な裕度を保つためにも、絶縁強度に格差を設け地絡優先とすることが従来の知見であることから、絶縁強度は次のように規定されている。主回路と対地間<異相主回路間<同相主回路間の順に絶縁強度を上げる必要がある(上記のように適切な裕度を勘案して絶縁強度を選定することを絶縁協調と言う)。
【0003】
例えば、特許文献1記載の発明においては、開閉器ケース内に3相充電部を一括で収納した開閉器において、負荷側充電部導体に先端部が隣り合う負荷側充電部導電体に向かう電極を設けた構成がある。
【特許文献1】特許第3013770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明においては、3相充電部を一括して収納する場合においては有効であるが、1相毎充電部を仕切られた絶縁壁を有する場合においては前記電極が有効に働かず、異相主回路間における絶縁強度を制御することが困難であった。
【0005】
そのため、上記のような1相毎電極が絶縁ケースに収納された開閉器においても、異相主回路間の絶縁強度を制御することが課題となった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記のように、相間に絶縁板が用いられ而も両側電源に対応可能とするために、上記の課題を解決するために請求項1記載の発明においては、本体ケース2内部に絶縁材料からなる絶縁ケース3を3相並列に備え、内部に固定電極5と、前記固定電極5に投入開放するための可動電極6とを備えた開閉器1において、中央に配置された前記絶縁ケース3の前記固定電極5が配置された外側側面には、円弧形状の先端部7aが隣り合う絶縁ケース3に向かうように配置された導電性の金属材料からなる電極7と、さらに、左右両側に配置された前記絶縁ケース3の前記固定電極5が配置された外側側面には同様に前記電極7とを設け、それぞれの前記絶縁ケース3に設けられた前記電極7と同ケース7の前記固定電極5とで放電ギャップG2を形成し、而も中央の絶縁ケース3に設けられた電極7とその左右両側の絶縁ケース3に設けられた電極7の先端部7aとが対向し放電ギャップG1を形成することを特徴とする開閉器の絶縁強度制御構造であり、請求項2記載の発明においては、本体ケース2内部に絶縁材料からなる絶縁ケース3を3相並列に備え、内部に固定電極5と、前記固定電極5に投入開放するための可動電極6とを備えた開閉器1において、上記中央に配置された前記絶縁ケース3に収納された前記可動電極6には、前記可動電極6の最大開放時において、前記絶縁ケースの上端近傍に位置し、而も両側に突出した電極22と、さらに、前記左右両側に配置された絶縁ケース3内の可動電極6には、前記電極22の先端に対して放電ギャップG3を形成するために配置された導電性の金属材料からなる電極20とを設けたことを特徴とする開閉器の絶縁強度制御構造であり、請求項3記載の発明においては、請求項1並びに請求項2からなる開閉器の絶縁強度制御構造である。
【発明の効果】
【0007】
上記の発明により、1相毎に電極が絶縁ケースに収納された開閉器においても、異相主回路間の絶縁強度が制御できるようになったために、開閉器内部における絶縁協調が取れるようになった。
【0008】
請求項1記載の発明においては、電源線路が固定電極に接続されている状態での開放状態や閉路状態では、高圧配電線路内に開閉サージや雷サージによる過電圧が侵入した場合でも被害を最小限度に留めることができ、さらに開閉器の内部短絡事故が発生した場合でも開閉器の損傷を小さく抑えることができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明においては、電源線路が可動電極に接続されている状態での開放状態では、上記同様に高圧配電線路内に開閉サージや雷サージによる過電圧の侵入した場合でも、被害を最小限度に留めることができる。
【0010】
さらに、請求項3記載の発明においては、電源線路が固定電極や可動電極のどちらにでも接続された場合での開放状態及び閉路状態であっても絶縁協調が取れる構成となっている。そのため、電柱上への開閉器の取付においては特に電源側や負荷側を意識せず取付けることができるために開閉器の柱上への取付作業が向上され、さらに開閉器の主回路開放状態においても過電圧に対して保護ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
図1乃至図4は、本発明の実施例を示す。
【0012】
図1に示すように開閉器1は、上面が開口し有底の金属材料からなる、例えばステンレス板や鋼板からなる本体ケース2を有し、該本体ケース2内部には1相毎に分割された絶縁性を有する樹脂材料、例えばエポキシ樹脂や不飽和ポリエステェルからなる絶縁ケース3が3相設けられ、それらは台板4にネジにて固定されている。
【0013】
絶縁ケース3は上部が開口した略長方形の箱形状にて形成されており、絶縁ケース3の内部には固定電極5、可動電極6が対向して設けられている。
また、絶縁ケース3の固定電極5、可動電極6が設けられている両側壁部には表裏を貫通する貫通穴3aが設けられ、貫通穴3aと同心円状で二重に形成された突出壁3bを有している。
【0014】
また、図3に示すように固定電極5が設けられている側の絶縁ケース3外面で上記突出壁3bの上側には中間電極7が次のように設けられている。なお、中間電極7は金属材料の例えば銅やステンレス等からなる略長方形の板形状のもので、一方の先端部7aが略円弧状に形成されており、絶縁ケース3に取付けるための長穴3bを備えている。
【0015】
中央に配置された絶縁ケース3で固定電極5が配置されている側の側面外側には、前記中間電極7の先端部7aが外側(両側に配置された絶縁ケース3側)に向くように水平に配置され、それらは絶縁ケース3に対してねじ8にて固定されている。また、両側に配置された絶縁ケース3で同様に固定電極5が配置されている側の側面外側には、前記中間電極7の先端部7aに向かい合うように所定間隔を置いて絶縁ケース3にねじ8固定されている(それぞれの中間電極7の先端7aにより、放電ギャップG1が形成されている)。なお、上記説明の所定間隔については異相主回路間の絶縁強度が適切になるように調整し、その調整が行なえるように前記中間電極7には取付用の穴は長穴7bで構成されている(図4参照願います)。
【0016】
また、図1や図2に示すように上記3相の絶縁ケース3に取付けられた中間電極7のねじ8固定位置は、上記ねじ8の先端部が前記絶縁ケース3側面より内側へ突出し、而もその先端部が後述する消弧室9の固定ねじ10の頭部に対して遮蔽するものがない空間を保つように取り付けられている(上記ねじ8と上記固定ねじ10との間にて放電ギャップG2が形成されている)。
【0017】
なお、本実施例の説明においては中央に配置された上記中間電極7は2部材で独立して構成されているが、この形態に限定されるものではなく、例えば2つの中間電極7を接合させた1部材の構成であってもかまわない。その場合、中間電極7間の距離の所定距離の調整は、左右に設けられた中間電極7を移動させることで可能となる。
【0018】
次に、前記絶縁ケース3に設けられた貫通穴3aには、金属性の導電材料からなる接続導電体11が挿通して絶縁ケース3に対して図示しないねじ固定又は圧入等の方法により固定されており、それらは後述する固定電極5や可動電極6と電気的に接続されている。また、絶縁ケース3より外側へ突出した接続部11aには後述するブッシング12の接続部12aが取付けられる。
【0019】
固定電極5は前記接続導電体11と固定接触子13で構成されており、導電性の金属材料からなる板状の固定接触子13は、前記接続導電体11に設けられた平行な2つの平面と平行となるように2箇所のピン14にて回転しないように支持されている。
【0020】
さらに、固定電極5には、主回路の開放時に発生するアークを消弧するために、アーク熱により熱分解した際に消弧性ガスを発生するユリア樹脂やポリアセタール樹脂材料からなる消弧室9が固定接触子13を覆うように設けられている。また、前記消弧室9外面には、固定接触子13近傍に消弧性能を上げるための図示しない鉄材が設けられている。
【0021】
また、消弧室9は、接続導電体11と電気的に接続された断面形状が略コの字からなる導電性の金属材料からなる取付部材15にねじ固定されている。一方、前記取付部材15は絶縁ケース3に対して回転しないように図示しないねじにてねじ固定されている。
上記取付構造により、消弧室9を固定するための前記固定ねじ10と前記固定接触子13や接続導電体11は同電位となっている。
【0022】
可動電極6は前記接続導電体11と可動接触子16にて構成され、前記可動接触子16は湾曲する逆V字形状に形成され、さらに別の板状部材17で股状に形成され平行に配設されており、前記可動接触子16と板状部材17により接続導電体11設けられた平行な2つの平面を狭持し、而も接続導電体11に貫通されたピン18に対して回転可能に支持されている。
なお、図2に示すように前記可動接触子16の回転支点部にある前記ピン18と同軸上には、コイルバネ19が圧縮状態で配設されており、この付勢力により所定の圧力により前記接続導電体11を狭持している。
【0023】
また、可動接触子16と板状部材17の接合部は、金属材料の例えばステンレスからなる、ボルト20、ねじ22やナット21にて以下のように固定されている。中央に配置された絶縁ケース3内部の可動接触子16には、両側に所定量の長さが突出するねじ22を前記接合に構成された図示しない取付穴に対して貫通させ、その後両側より2枚の板状部材16、17を狭持するようにナット21で締め付けることでねじ固定させる。この構造により、可動接触子16及び接続導電体11と前記ねじ22は同電位となっている。
【0024】
さらに、両側に位置するそれぞれの可動接触子16の接合部16aには、導電性の金属材料の例えばステンレス材量で頭部とねじ部が一体となったボルト20のねじ部を図示しない取付穴に対して貫通させ、前記ボルト20の頭部とは反対側より可動接触子16と板状部材17を挟持するためナット21を締め付けねじ固定させる。なお、前記3相の可動接触子16に設けられたボルト20やねじ22の先端部は、それぞれ所定間隔を置いて向かい合うように構成されており、しかも可動電接触子16の最大開放位置において、前記ボルト20やねじ22の先端部は絶縁ケース3の上端面近傍となるように配置されている(それぞれボルト20とのねじ22の先端間にて放電ギャップG3を形成)。
【0025】
なお、上記所定間隔とは、前記可動接触子16が固定接触子13に対して最大開放位置にある時にでも、異相間の絶縁強度が適切な値となるように設定されている。
【0026】
図1に示すようにブッシング12は本体ケース1の両側面から貫装取付されており、絶縁性の樹脂材料、例えばエポキシ樹脂や磁器からなるブッシング12の中央部に、導電性を備えた導電体12aが一体で形成されている。
また、ブッシング12の中央部に設けられた前記導電体12aの先端部には、導電材からなる例えば銅材の中空のパイプ形状の接続部12bを圧入している。
【0027】
上記構成のブッシング14を本体ケース1に周知の方法で貫装取付することで、ブッシング14の接続部12bは接続導電体11の接続部11aに圧入勘合されブッシング14の接続導電体11は可動電極5や固定電極6と電気的に接続される。なお、本体ケース1に接続されたブッシング12の円筒部12cは、絶縁ケース3に設けられた突起部3bの間に挿入されることで絶縁空間を形成している。
【0028】
この絶縁空間により、充電部(導電体12aや接続導電体11)から本体ケース1へと至る空間絶縁距離を伸ばすことが出来る。つまり、充電部から突出壁3b(内側)と円筒部12c間の空間を通り、次に円筒部12cと突出壁3b(外側)の間の空間を経て本体ケース1へと至り絶縁距離が長くなることで絶縁性能が向上する。
【0029】
次に、図1及び図2を参照し上記構成において異相主回路間において絶縁破壊される動作について説明する。開閉器1の投入状態において、電源線路に過電圧が印加された場合は以下の通りである。絶縁強度は主回路と大地間が一番弱く設定されているため、始めに主回路と大地間で絶縁破壊が生じ、その後異相主回路間で絶縁破壊が生じる。なお、ここでは主回路と大地間における絶縁破壊の動作説明に関しては省略する。
【0030】
異相主回路間での絶縁破壊は、過電圧により固定電極接触子13や接続導電体11が昇圧することで、3相それぞれの固定電極5に取付けられた消弧室9を固定するための固定ねじ10が昇圧し、中間電極7を固定しているねじ8の先端部の間で絶縁破壊する(放電ギャップG2より放電する)。それにより中間電極7が昇圧した後、それぞれの中間電極7の間で絶縁破壊が発生し(放電ギャップG1より放電する)、異相主回路間の絶縁破壊が生じる。このとき、可動接触子16に設けられた電極も同様に昇圧はするものの、絶縁ケース3内部に収納された状態であるために絶縁強度は異相主回路間より強く構成されているため、可動接触子16間では絶縁破壊は発生しない。
【0031】
また、開閉器1の開放状態においては、次の通りである。電源線路が固定電極部5側に接続されている場合には上記投入状態と同様の現象のため省略する。
電源線路が可動電極6部側に接続されている場合に電源線路に過電圧が印加されるとそれぞれの可動接触子16や接続導電体11が昇圧し、始めに主回路と大地間での絶縁破壊が発生し、次に異相主回路間での絶縁破壊が生じる。異相主回路間では、過電圧により可動接触子16が昇圧し、同時に可動接触子16に設けられたボルト20やねじ22も昇圧する。
お互いの昇圧したボルト20やねじ22の先端部が向き合っているため、その間で絶縁破壊が発生する。
【0032】
上記のように本発明の構成によれば、開閉器1の開放状態や投入状態に関わらず、絶縁強度を大地間<異相主回路間<主回路間と制御できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例である開閉器の正面側からの断面図
【図2】図1における3相の絶縁ケースを表した平面図
【図3】図2における固定電極側からの側面図
【図4】中間電極の正面図
【符号の説明】
【0034】
1 開閉器
2 本体ケース
3 絶縁ケース
5 固定電極
6 可動電極
7 中間電極
8 ねじ(中間電極用)
9 消弧室
10 固定ねじ(消弧室固定用)
15 取付金具
20 ボルト
22 ねじ
G1 放電ギャップ(中間電極間)
G2 放電ギャップ(中間電極と固定電極間)
G3 放電ギャップ(開放時における可動電極間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース2内部に絶縁材料からなる絶縁ケース3を3相並列に備え、内部に固定電極5と、前記固定電極5に投入開放するための可動電極6とを備えた開閉器1において、
中央に配置された前記絶縁ケース3の前記固定電極5が配置された外側側面には、円弧形状の先端部7aが隣り合う絶縁ケース3に向かうように配置された導電性の金属材料からなる電極7と、
さらに、左右両側に配置された前記絶縁ケース3の前記固定電極5が配置された外側側面には同様に前記電極7とを設け、それぞれの前記絶縁ケース3に設けられた前記電極7と同ケース7の前記固定電極5とで放電ギャップG2を形成し、
而も中央の絶縁ケース3に設けられた電極7とその左右両側の絶縁ケース3に設けられた電極7の先端部7aとが対向し放電ギャップG1を形成することを特徴とする開閉器の絶縁強度制御構造。
【請求項2】
本体ケース2内部に絶縁材料からなる絶縁ケース3を3相並列に備え、内部に固定電極5と、前記固定電極5に投入開放するための可動電極6とを備えた開閉器1において、
上記中央に配置された前記絶縁ケース3に収納された前記可動電極6には、前記可動電極6の最大開放時において、前記絶縁ケースの上端近傍に位置し、而も両側に突出した電極22と、
さらに、前記左右両側に配置された絶縁ケース3内の可動電極6には、前記電極22の先端に対して放電ギャップG3を形成するために配置された導電性の金属材料からなる電極20とを設けたことを特徴とする開閉器の絶縁強度制御構造。
【請求項3】
請求項1並びに請求項2からなる開閉器の絶縁強度制御構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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