説明

開閉器及び開閉器の操作方法

【課題】信頼性を向上させる開閉器を提供することを目的とする。
【解決手段】上記の課題を解決するために、本発明に係る開閉器は、固定電極と、該固定電極と接離する可動電極と、絶縁性気体が内部に入る第一のパッファ室と、該第一のパッファ室から前記絶縁性気体が流入すると共に、前記固定電極と前記可動電極の接触部が収納される消弧室と、前記第一のパッファ室と前記消弧室の間に開け閉め可能な弁とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁性気体を用いて電流の遮断を行う開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉器は送電系統や配電系統に配置され、電流を遮断等する機器である。ここで、従来の開閉器として例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、パッファ型ガス遮断器が記載されており、パッファ室と第一熱ガス室との間に配置される隔壁に連通孔、及び該連通孔に設けた逆止弁を配置している。また、パッファ室と第二熱ガス室との間に配置されるピストンには連通孔を設け、該連通孔には逆止弁が設けられている。そして、可動電極内の中空部と第二熱ガス室を連通する連通孔が備えてある。
【0003】
特許文献1では、上記の構成を採用して第二熱ガス室から高圧の絶縁ガスを供給して高圧の絶縁ガスを高速でアークに吹き付けることができる様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−313825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された内容によれば、(投入時と遮断時で、固定アーキングコンタクトと可動アーキングコンタクトが接触する位置とつながる第一熱ガス室の体積が変化しておらず、)投入時において絶縁ガスの圧力を上昇させることはできていない。
【0006】
可動電極と固定電極は接触する直前に先行放電が発生して先行アークが発生するが、可動電極と固定電極との接触部近傍における圧力が低下している場合、放電電圧が低下し放電が生じやすくなるので、両電極がより離れた位置で先行放電が発生し、その結果先行アーク時間が長くなる。先行アーク時間が長くなると、短絡電流が流れる時間が長くなるので電極の損傷が促進し開閉器の性能を維持できなくなり、信頼性が低下するといった問題も考えられる。
【0007】
本発明では、信頼性を向上させる開閉器を提供することを目的とする。また、信頼性を向上させる開閉器の操作方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る開閉器は、固定電極と、該固定電極と接離する可動電極と、絶縁性気体が内部に入る第一のパッファ室と、該第一のパッファ室から前記絶縁性気体が流入すると共に、前記固定電極と前記可動電極の接触部が収納される消弧室と、前記第一のパッファ室と前記消弧室の間に開け閉め可能な弁とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る開閉器の操作方法は、固定電極と、該固定電極と接離する可動電極と、絶縁性気体が内部に入る第一のパッファ室と、該第一のパッファ室から前記絶縁性気体が流入すると共に、前記固定電極と前記可動電極の接触部が収納される消弧室とを備える開閉器の操作方法であって、前記可動電極の投入時には、前記第一のパッファ室から前記消弧室に前記絶縁性気体を流入させ、前記消弧室内の前記絶縁性気体の圧力を上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性を向上させる開閉器または開閉器の操作方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る開閉器主要部の断面図である。
【図2】(a)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、遮断位置を示す図である。(b)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、圧力上昇位置を示す図である。(c)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、アーク点弧位置を示す図である。(d)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、投入位置を示す図である。
【図3】(a)実施例1の遮断動作を説明するための開閉部の図であり、投入位置を示す図である。(b)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、開極後の位置を示す図である。(c)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、圧力上昇位置を示す図である。(d)実施例1の投入動作を説明するための開閉部の図であり、アーク消弧位置を示す図である。
【図4】実施例2に係る開閉器主要部の断面図である。
【図5】(a)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、遮断位置を示す図である。(b)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、圧力上昇位置を示す図である。(c)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、アーク点弧位置を示す図である。(d)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、投入位置を示す図である。
【図6】(a)実施例2の遮断動作を説明するための開閉部の図であり、投入位置を示す図である。(b)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、開極後の位置を示す図である。(c)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、圧力上昇位置を示す図である。(d)実施例2の投入動作を説明するための開閉部の図であり、アーク消弧位置を示す図である。
【図7】実施例3に係る開閉器主要部の断面図である。
【図8】同期弁の構造の一例を説明した図である。
【図9】(a)投入動作における同期弁の動作を説明するための図であり、遮断位置を示す図である。(b)投入動作における同期弁の動作を説明するための図であり、同期弁回転直前の位置を示す図である。(c)投入動作における同期弁の動作を説明するための図であり、同期弁回転直後の位置を示す図である。(d)投入動作における同期弁の動作を説明するための図であり、投入位置を示す図である。
【図10】(a)遮断動作における同期弁の動作を説明するための図であり、遮断位置を示す図である。(b)遮断動作における同期弁の動作を説明するための図であり、同期弁回転直前の位置を示す図である。(c)遮断動作における同期弁の動作を説明するための図であり、同期弁回転直後の位置を示す図である。(d)遮断動作における同期弁の動作を説明するための図であり、投入位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記した本発明を実施する上で好適な実施の形態について図面を用いて説明する。下記はあくまでも実施例に過ぎず、発明内容が係る特定の態様に限定して解釈されることを意図する趣旨ではない。
【実施例1】
【0013】
実施例1に係る開閉器について図1ないし図3を用いて説明する。図1に示す様に本実施例に係る開閉器は、固定電極12と、該固定電極12に対して接離自在であり、可動軸方向に長く引き出されている可動電極11と、固定電極12と可動電極11の接触部から可動電極11の軸方向に沿って覆う筒状のノズル18と、固定電極12と可動電極11の接触部及びノズル18を収納する消弧室21と、可動電極12に固定される仕切り15によって消弧室21と隔てられ、ノズル18によって囲まれた消孤室21に絶縁性気体を噴出する第一のパッファ室13と、固定電極12と一体に形成されて開閉部の電界を低減するための埋め込みシールド20と、内側に開閉部を配置する空間を確保してこれらを一体に注型する固体絶縁物30とから主として構成される。可動電極11の周囲には固体絶縁物30に埋め込まれた可動側シールド24が覆っており、該可動側シールド24は固体絶縁物30外に引き出され、固体絶縁物30に沿って、可動電極11側に近付く方向に屈曲している。尚、屈曲した可動側シールド24と可動電極11の間には隙間25が空いており、該隙間25は下述する投入用弁17が塞ぐ連通孔26よりも狭く構成され、両者を流れる気体の流量は、連通孔26の方が隙間25よりも多くなる様に形成している。固体絶縁物30の材料としては例えばエポキシ樹脂やポリエステルを使用することが可能である。尚、本実施例では絶縁性気体として空気を使用しており、密閉する必要性はなく、開放系で問題がない。この場合、密閉構造にするための密閉容器やシール部材が不要となり、構造を簡素化することができる。
【0014】
仕切り15には、第一のパッファ室13から消弧室21へのみに絶縁性気体が流れることを許容する連通孔26が形成されており、該連通孔26には連通孔26を開け閉め可能な投入用弁17を設けている。ノズル18には軸方向に垂直な方向の内径がノズル18の他の部位と比較して小さい小径部となるスロート23を有しており、該スロート23の内径側に可動電極11の先端が位置した際に、電流の零点を迎えて絶縁性気体を吹き付けることでアークを消弧する。また、可動電極11の先端には、他の部分より、軸方向に垂直な方向の外径が大きい大径部11Aを設けており、大径部11Aの径をノズル18のスロート径より小さくし、可動電極11の大径部11Aの長さをノズル18のスロート23から固定電極12の距離より短くする。
【0015】
さらに、可動電極11内部には中心軸に沿って連通する排気口11Cが形成されており、排気口11Cは上記大径部11Aの先端にある排気口入口11Bから開閉部の外に配置されて軸方向に垂直な方向に開閉部外と連通する排気口出口11Dと繋がっている。そして、排気口出口11Dには、投入動作時においては先行アークが点弧する位置よりも軸方向可動側(軸方向で固定電極12と反対側)で排気口出口11Dを塞いで密閉し、投入動作時の先行アークが点弧する位置より可動電極11が固定電極12に近い位置では、絶縁性気体を開閉器の外部に放出し、遮断動作時においては動作行程中常時、排気口出口11Dを開放して、消弧室21内のガスを消弧室21外に排気できる様にする同期弁22が設けられている。先行アークが点弧する位置は、例えば試験動作を繰り返す中で最も可動電極と固定電極の距離が遠い位置で点弧した場合や、先行アークが点弧する可能性が最も高い位置等により定めることが可能である。
【0016】
可動電極11は大径部11Aを除いては軸方向においていずれの位置でも同程度の外径を有する様に形成されており、同期弁22は可動電極11の大径部11A以外の外径と内接できる様な内径を有している。同期弁22は、可動電極11とは独立して移動可能かつ固定可能にされており、可動電極11の動作中においては、同じ位置を保っている。(逆に可動電極11を動作させない時には同期弁22の位置は移動させることができる。)これにより、可動電極11が移動して軸方向について可動電極11の先端がノズル18のスロート23より固定電極12と反対側に位置する場合に排気口出口11Dを同期弁22で塞ぐことが可能となる。尚、同期弁は可動電極11の動作時に完全に固定されていなくとも可動電極11と異なる速度で移動する様にすれば、可動電極11が移動して軸方向について可動電極11の先端がノズル18のスロート23より固定電極12と反対側に位置する場合に排気口出口11Dを塞ぐことは実現できる。この様な案は無論、本発明から排除されるものではない。
【0017】
上記の様に構成された開閉器について、図2及び図3を用いて投入及び遮断動作について説明する。
【0018】
図2(a)−(d)では、遮断位置から投入位置へ移動させる動作について説明する。尚、投入動作中は投入用弁17は閉じられており、連通孔26を通じて絶縁性気体が行き来することが無い様にしている。
【0019】
図2(a)に示す遮断位置では、先行アーク40Aが発生しておらず、この際可動電極の排気口出口11Dを同期弁22が閉じており、絶縁性気体は排気されない。この位置から、図2(b)に示すように、可動電極11と仕切り15が連動して軸方向に固定電極12に近付く側に動作すると、仕切り15によって消弧室21内の絶縁性気体が圧縮され、消弧室21内気体の圧力が高くなる。可動電極と固定電極との接触部近傍における圧力が低下している場合、放電電圧が低下し放電が生じやすくなるが、本実施例では消弧室21内気体の圧力を高めており、放電電圧も高くなり絶縁耐力が向上している。その結果、図2(c)に示すように両電極の距離が、(消弧室21内気体の圧力が投入時に変化しない場合または減少する場合と比較して、)より近い位置で先行放電が発生するため、先行アーク時間が短くなり電極の損傷を抑制できる。また、図2(c)に示すように、先行アーク40Aが発生する位置において、同期弁22が開いて絶縁性気体を排気口入口11B〜排気口11C〜排気口出口11Dの経路で放出する様に形成している。これにより、先行アーク40Aが発生した際には、先行アーク40Aの熱によって絶縁性気体の温度が上昇するが、該温度が上昇して膨張した絶縁性気体を開閉部の外に逃がせるようになる。故に温度上昇に起因して圧力上昇した絶縁性気体については開閉器外部に放出できるようになり、消孤室21の圧力が過剰に上昇することによって、投入方向と逆向きに作用する力を小さくでき(即ち、抗力が小さくなるので操作力が低減され)、図示しない操作機構の操作力を変化させずとも、図2(d)に示す投入位置まですばやく動作でき、投入時間を短縮できる様になる。また、操作力を低減できるので操作機構の大型化も防止できる。
【0020】
先行アーク40Aの発生により生じた消弧室内の圧力上昇分は、操作力に対する抗力として低減する様にしているが、これは先行アークが既に発生しているので、その後において更に消弧室内の圧力を上昇させる必要が無いためである。故にその後は、逆に、圧力の過度な上昇を妨げる様にしている。この様に消弧室内の圧力を必要に応じて上下させ、コントロールする点は本発明の非常に優れた点である。
【0021】
図3(a)−(d)では、投入位置から遮断位置へ移動させる動作について説明する。尚、遮断動作中は投入用弁17は開けられており、連通孔26を通じて第一のパッファ室13と消弧室21の間で絶縁性気体が行き来できる様にしている。また、遮断動作時は同期弁22で排気口出口11Dを塞がず、常に消孤室21から開閉部の外へ絶縁性気体を流す様にしている。即ち、同期弁22の位置は投入動作時よりも可動電極11の軸方向について固定電極12側と逆方向に移動させている。
【0022】
図3(a)に示す投入位置から図3(b)に示すように、開閉器が投入状態から可動電極11と仕切り15が連動して可動側に動作し開極すると、可動電極11と固定電極12の間に遮断アーク40Bが発生する。可動電極11には排気口11Cが設けられているので遮断アーク40Bの熱により温度が上昇して膨張した絶縁性気体を開閉部の外に逃がすことができる。図3(c)に示すように、可動電極11と連動して仕切り15が動作することで第一のパッファ室13の絶縁性気体が消弧室21に流れ消孤室の圧力が上昇し、図3(d)に示す可動電極11がノズル18のスロートを抜ける位置で電流零点を迎えることで圧力の高い絶縁性気体を遮断アーク40Bに吹き付けて消弧する。
【0023】
本実施例によれば、第一のパッファ室13と消弧室21の間の連通孔26に開け閉め可能な投入用弁17を備えて、可動電極11の投入時には、第一のパッファ室13から消弧室21に絶縁性気体を流入させ、消弧室21内の絶縁性気体の圧力を上昇させる様にしたので、先行アーク時間が短くなり電極の損傷を抑制でき、開閉器の信頼性を向上させることが可能となる。
【0024】
また、投入動作時において先行アークが点弧する位置よりも軸方向可動側で排気口出口11Dを塞いで密閉する様にしたので、更に先行アークが点弧する位置までは消弧室21内の圧力を上昇させられる。
【0025】
そして、先行アークが点弧する位置よりも軸方向可動電極側に近い位置では、排気口出口11Dを開放する様にしたので、先行アーク点弧後に消弧室21内の極端な圧力上昇により、抗力が増加し、投入速度が低下することを防止できるようになる。
【実施例2】
【0026】
次に、図4ないし図6を用いて実施例2について説明する。尚、下記では実施例1と相違する点についてのみ説明し、重複する点については説明を省略する。
【0027】
図4に示す様に、本実施例に係る開閉器は、実施例1で説明した第一のパッファ室13に加えて、可動絶縁筒19の外側にあり第一のパッファ室13につながる第二のパッファ室34と、第一のパッファ室13と第二のパッファ室34と消弧室21を分ける仕切り31と、仕切り31において第二のパッファ室34から第一のパッファ室13の間を連通させる連通孔32と、該連通孔32を開け閉め可能な弁33と、仕切り31において第一のパッファ室13から消弧室21への方向のみに絶縁性気体が流れる投入用弁17を備えており、固体絶縁物30は第二のパッファ室34を含め、内側に開閉部を配置する空間を確保して一体に注型されている。
【0028】
図5(a)−(d)は本発明の負荷開閉器の投入動作を説明した開閉部の図である。尚、投入動作中は投入用弁17は閉じられており、連通孔26を通じて絶縁性気体が行き来することが無い様にしている。この点は実施例1と同様である。更に本実施例では、投入動作中は第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間の弁33を開けており、連通孔32を通じて絶縁性気体が第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間を行き来できる。
【0029】
図5(a)に示す遮断位置では、先行アーク40Aが発生しておらず、この際可動電極11の排気口出口11Dを同期弁22が閉じており、絶縁性気体は排気されない。この位置から、図5(b)に示すように、可動電極11と仕切り15が連動して軸方向に固定電極12に近付く側に動作すると、仕切り15によって消弧室21内の絶縁性気体が圧縮され、消弧室21内気体の圧力が高くなる。この結果、両電極の距離が、(消弧室21内気体の圧力が投入時に変化しない場合または減少する場合と比較して、)より近い位置で先行放電が発生するようになり、先行アーク時間が短くなり電極の損傷を抑制できる点は実施例1と同様である。
【0030】
更に本実施例では、投入動作中は第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間の弁33を開けており、連通孔32を通じて絶縁性気体が第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間を行き来できる様にしている。投入動作時には、仕切り15により第二のパッファ室34の体積が圧縮され、第一のパッファ室13の体積が拡張されるので、第二のパッファ室34内の気体の圧力が相対的に上昇し、第二のパッファ室34から第一のパッファ室13へ絶縁性気体が流れる。これにより、投入時において第一のパッファ室13の圧力低下を抑制でき、投入方向と逆方向に働く力を抑えて投入時間を短縮できる。実施例1に示す構造の場合、投入動作時には、仕切り15により第一のパッファ室13の体積が拡張され、気体の圧力が低下するので、可動電極11が軸方向に固定電極12から離れる方向に押し戻される力が仕切り15には印加されていたが、本実施例の様に第一のパッファ室13の圧力を上昇させることで、可動電極11に対し、軸方向で固定電極12から離れる方向に押し戻される力が仕切り15に印加されなくなり、操作力を向上させることが可能となる。
【0031】
また、図5(c)に示すように、先行アーク40Aが発生する時に同期弁22が開くことで、先行アーク40Aの温度により上昇した絶縁性気体を開閉部の外に逃がして、先行アークにより消孤室21の圧力が上昇して投入方向と逆向きに働く力を小さくでき、図5(d)に示す投入位置まですばやく動作でき、投入時間を短縮できる点については実施例1と同様である。
【0032】
図6(a)−(d)では、投入位置から遮断位置へ移動させる動作について説明する。本実施例では、投入動作中は第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間の弁33を閉めており、連通孔32を通じて絶縁性気体が第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間を行き来できない様にしているため、投入位置から遮断位置へ移動させる動作については実施例1で説明した内容と同様となる。
【0033】
本実施例においても、実施例1と同様に先行アーク時間が短くなり電極の損傷を抑制でき、開閉器の信頼性を向上させることが可能となる。
【0034】
加えて、第二のパッファ室34と第一のパッファ室13の間の連通孔32に開け閉め可能な弁33を備えて、可動電極11の投入時には、第二のパッファ室34から第一のパッファ室13に絶縁性気体を流入させ、第一のパッファ室13内の絶縁性気体の圧力を上昇させる様にしたので、軸方向で固定電極12から離れる方向に押し戻される力が仕切り15に印加されなくなり、操作力を向上させることが可能となる。操作力が向上するので、投入速度を向上させることができ、また図示しない操作器を小型化することにもつながる。
【実施例3】
【0035】
実施例3について図7を用いて説明する。上記した各実施例では、絶縁性気体として空気を用いる場合を想定して説明したが、空気に限定されるものでなくそれ以外の絶縁性気体を用いることも可能である。尚、他の絶縁性気体としては例えばSF6、CO2、N2が挙げられる。
【0036】
本実施例では、開閉器の周囲に密閉タンク50を形成しており、該タンク50内に絶縁性気体を封入している。タンク50は同期弁22に連結されており、連結部はシールされて絶縁性気体が外部に漏れない様に封止されている。これ以外の点については、特に実施例1と同様であり、ここでの重複説明は省略する。可動電極11に設けられる排気口出口11Dは軸方向において同期弁22よりも固定電極12と反対方向(即ち、タンク50外)に移動することはなく、タンク50外に絶縁性気体を放出しない様にしている。尚、本実施例で説明する様に、タンクを用いて密閉し、密閉空間内に絶縁性気体を封入し、一定量の所定の絶縁性気体を循環的に用いることについては、実施例2やその他本発明の種々の変形例のいずれでも適用できることは勿論である。
【0037】
タンク50を用いる、または他の構造を含め、密閉系にすることで、空気以外の絶縁性気体を循環的に用いることが可能となる。
【0038】
また、本実施例ではタンク50を直接同期弁22に連結しているが、直接両者を連結することは必須条件ではなく、密閉系にすることが重要である。
【0039】
ここで、図8ないし図10を用いて同期弁52及び可動電極51の形態の他の例について具体的に説明する。該同期弁52は絶縁性気体を排気するための穴55と、可動電極51の動作に伴って下述するピン53と係合して同期弁52が回転するための溝54を備えている。可動電極51にはピン53が固定され、同期弁52に形成された溝54の内部を動くことで同期弁52を可動電極の軸を中心として回転させ、排気口出口51Dを塞いだり開けたりする。これにより、投入時で先行アークが発生しないときだけ可動電極51の排気口出口51Dを塞いで、絶縁性気体が排出されないようにできる。溝54は、ピン53が軸方向に動作できる様に設けた経路57,58を有しており、ピンが経路57に位置する際には可動電極51の排気口出口51Dと同期弁52に設けた穴55はずれており、ピンが経路58に位置する際には可動電極51の排気口出口51Dと同期弁52に設けた穴55が一致する。経路57,58は、ピン53が可動電極51と共に軸方向に動作した場合に、ピン53から受ける力の向きを軸方向から円周方向に変化させられる様、各々ピン53が係止される係止部59(即ち、投入位置または遮断位置の定常状態)とは反対側の壁面が軸方向と円周方向の両方の成分を有する係合部56となっている。
【0040】
図9は同期弁52の投入動作を説明する図である。図9(a)、(b)に示すように、投入動作が開始してから可動電極51に設けられたピン53が経路57内を動作し、係合部56に到達するまでは、同期弁52の穴55は可動電極51の排気口出口51Dとずれており、排気口出口51Dから絶縁性気体は排気されない。この状態から更に可動電極51が軸方向固定電極側に駆動し、図9(c)に示すように、先行アークが点弧する位置、またはその直前においてピン53が軸方向と円周方向の両方の成分を有する係合部56と接触すると、ピン53からの押圧力を円周方向の力に変換して、同期弁52が可動電極51の軸を中心に時計回りに回転する。回転して、ピン53が経路58の壁面60にぶつかると、同期弁52の穴55が可動電極51の排気口出口51Dと重なり、絶縁性気体が排出される。更に可動電極51が軸方向に駆動されると、図9(d)に示すピン53が経路58内を動作し、係止部59に接触する投入位置を含めて絶縁性気体は排気され得る状態を維持し続ける。
【0041】
図10は同期弁52の遮断動作を説明した図である。図10(a)、(b)に示すように遮断動作が開始してから可動電極51に設けられたピン53が経路58内を動作し、係合部56に到達するまでは、同期弁52の穴55は可動電極51の排気口出口51Dと重なっており、排気口出口51Dから絶縁性気体が排気される。この状態から更に可動電極51が軸方向固定電極と反対側に駆動し、図10(c)に示すように、可動電極51がノズル18のスロート23を抜けて遮断動作が終わる直前においてピン53が軸方向と円周方向の両方の成分を有する係合部56と接触すると、ピン53からの押圧力を円周方向の力に変換して、同期弁52が可動電極51の軸を中心に反時計回りに回転する。回転して、ピン53が経路57の壁面61にぶつかると、同期弁52の穴55は可動電極51の排気口出口51Dとずれ、絶縁性気体は排気されなくなる。更に可動電極51が軸方向に駆動されると、図10(d)に示すピン53が経路57内を動作し、係止部59に接触する遮断位置を含めて絶縁性気体は排気されない状態で維持される。
【0042】
尚、同期弁及び可動電極のうち同期弁と関連する部位の構造については、上記したいずれかの実施例中で記載した特定の内容に限定されるものでないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
11,51 可動電極
11A 大径部
11B 排気口入口
11C 排気口
11D,51D 排気口出口
12 固定電極
13 第一のパッファ室
15,31 仕切り
17 投入用弁
18 ノズル
19 可動絶縁筒
20 埋め込みシールド
21 消弧室
22,52 同期弁
23 スロート
24 可動側シールド
25 隙間
26,32 連通孔
30 固体絶縁物
33 弁
34 第二のパッファ室
50 タンク
53 ピン
54 溝
55 穴
56 係合部
57,58 経路
59 係止部
60,61 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と、
該固定電極と接離する可動電極と、
絶縁性気体が内部に入る第一のパッファ室と、
該第一のパッファ室から前記絶縁性気体が流入すると共に、前記固定電極と前記可動電極の接触部が収納される消弧室と、
前記第一のパッファ室と前記消弧室の間に開け閉め可能な弁とを備えることを特徴とする開閉器。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉器であって、
前記可動電極のうち、前記消弧室に配置される部位には該消弧室外に連通する排気口を備えていることを特徴とする開閉器。
【請求項3】
請求項2に記載の開閉器であって、
前記可動電極は可動軸方向に長い形状であり、
該可動電極の周囲には、前記軸方向に沿ってノズルが覆っており、
該ノズルは前記軸方向に垂直な方向の内径が該ノズル内の他の部位と比較して小さい小径部を有しており、
前記排気口は、前記可動電極の先端が前記軸方向について前記小径部より固定電極側に位置する場合のみ前記消弧室内のガスを該消弧室外に排気可能とすることを特徴とする開閉器。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉器であって、
前記可動電極の周囲には密閉部材が配置されており、
前記軸方向について前記可動電極の先端が該小径部より固定電極側と反対側に位置する場合、該密閉部材が前記排気口を密閉し、前記消弧室内のガスを該消弧室外に排気できない様にすることを特徴とする開閉器。
【請求項5】
請求項4に記載の開閉器であって、
前記密閉部材は、前記排気口の前記可動電極外へつながる排気部、における前記可動電極の外径と略同程度の内径を有することを特徴とする開閉器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つに記載の開閉器であって、
更に絶縁性気体が内部に入る第二のパッファ室と、
該第二のパッファ室と前記第一のパッファ室との間に開け閉め可能な弁とを備えることを特徴とする開閉器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の開閉器であって、
前記可動電極は、前記固定電極に接触する部位が前記軸方向に垂直な方向において外径が大きい大径部となっており、前記固定電極に接触しない部位よりも前記軸方向に垂直な方向における外径が大きいことを特徴とする開閉器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一つに記載の開閉器であって、
該開閉器の周囲は固体絶縁物によって覆われていることを特徴とする開閉器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一つに記載の開閉器であって、
前記絶縁性気体は空気であることを特徴とする開閉器。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一つに記載の開閉器であって、
該開閉器はタンクで密閉されていることを特徴とする開閉器。
【請求項11】
固定電極と、
該固定電極と接離する可動電極と、
絶縁性気体が内部に入る第一のパッファ室と、
該第一のパッファ室から前記絶縁性気体が流入すると共に、前記固定電極と前記可動電極の接触部が収納される消弧室とを備える開閉器の操作方法であって、
前記可動電極の投入時には、前記第一のパッファ室から前記消弧室に前記絶縁性気体を流入させ、前記消弧室内の前記絶縁性気体の圧力を上昇させることを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項12】
請求項11に記載の開閉器の操作方法であって、
更に前記可動電極の遮断時には、前記第一のパッファ室から前記消弧室に前記絶縁性気体を流入させない様にすることを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項13】
請求項11に記載の開閉器の操作方法であって、
前記可動電極の投入時には、前記第一のパッファ室と前記消弧室の間を連通させ、
前記可動電極の遮断時には、前記第一のパッファ室と前記消弧室の間を封止することを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれか一つに記載の開閉器の操作方法であって、
前記開閉器は、更に絶縁性気体が内部に入る第二のパッファ室を備えており、
更に前記可動電極の投入時には、前記第二のパッファ室から前記第一のパッファ室に前記絶縁性気体を流入させ、前記第一のパッファ室内の前記絶縁性気体の圧力を上昇させることを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項15】
請求項14に記載の開閉器の操作方法であって、
更に前記可動電極の遮断時には、前記第二のパッファ室から前記第一のパッファ室に前記絶縁性気体を流入させない様にすることを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項16】
請求項14に記載の開閉器の操作方法であって、
前記可動電極の投入時には、前記第二のパッファ室と前記第一のパッファ室の間を連通させ、
前記可動電極の遮断時には、前記第二のパッファ室と前記第一のパッファ室の間を封止することを特徴とする開閉器の操作方法。
【請求項17】
請求項11ないし16のいずれか一つに記載の開閉器の操作方法であって、
前記可動電極の投入時には、アークが点弧する位置より前記可動電極が前記固定電極から遠い位置では、前記絶縁性気体を前記開閉器の外部に放出せず、
アークが点弧する位置より前記可動電極が前記固定電極から遠い位置では、前記絶縁性気体を前記開閉器の外部に放出し、
前記可動電極の遮断時には、常時前記絶縁性気体を前記開閉器の外部に放出することを特徴とする開閉器の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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