説明

開閉装置

【課題】主に各種電子機器に使用される開閉装置に関し、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触の操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】可動カム26の固定カム2に弾接する当接部26Aを、反転カム12に弾接する当接部26Bよりも、固定カム2方向に突出形成することによって、反転カム12が移動した後に固定カム2に弾接する当接部26Aが、反転カム12に弾接する当接部26Bよりも固定カム2方向に突出形成され、当接部26Aと固定カム2との間隙が殆んどないように形成されているため、反転カム12が移動した後の当接部26Aの固定カム2への衝突が生じず、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触で操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に携帯電話やパーソナルコンピュータ等の各種電子機器に使用される開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の多様化や高機能化が進むなか、固定筐体に対し可動筐体を開閉させて、様々な操作を行うものが増えており、これらに用いられる開閉装置においても、良好な感触で開閉操作を行なえるものが求められている。
【0003】
このような従来の開閉装置について、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図6は従来の開閉装置の断面図、図7は同分解斜視図であり、同図において、1は略円筒状の固定体で、この外周右端部には右方へ突出した略三角形状の一対の固定カム2が形成されている。
【0006】
そして、3は固定軸、4は略円筒状の固定ケースで、固定軸3の中間部には固定体1が、左端部には固定ケース4が各々固着されている。
【0007】
また、5は略円筒状の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、外周左端部には左方へ突出した略三角形状の一対の可動カム6が形成されている。
【0008】
そして、7は略円筒状の可動ケースで、この可動ケース7内に可動体5が軸線方向へは移動可能で、回転方向へは可動ケース7と一体となって回転するように収納されている。
【0009】
さらに、可動ケース7の左端開口部には固定ケース4が回転可能に装着されると共に、固定軸3が可動ケース7内を挿通し、右端部が止め輪8によって可動ケース7外側面に回転可能に装着されている。
【0010】
また、9はコイル状のばねで、可動体5右側面と可動ケース7内側面の間にやや撓んだ状態で装着され、このばね9によって、可動体5が左方の固定体1の方向へ付勢されている。
【0011】
そして、10は略円筒状の反転体、11は略円盤状の解除体で、反転体10の外周右端部には右方へ突出した略三角形状の一対の反転カム12が、解除体11の外周右端部には同じく一対の解除カム13が各々形成されている。
【0012】
さらに、反転体10内には固定体1が挿通され、反転体10が固定体1外周にガイドされて軸線方向へ移動可能に、解除体11が回転可能なように、各々固定ケース4に装着されている。
【0013】
そして、14は巻ばねで、やや捩られた状態で一端が解除体11に係止されると共に、この巻ばね14によって解除体11が所定角度に復帰するように形成されている。
【0014】
また、15は外周右端部に右方へ突出した一対の押圧カム16が形成された押圧体で、固定軸3左端に軸線方向へ移動可能に装着されると共に、この押圧体15がやや撓んだ状態のコイル状のばね17に付勢され、左端が固定ケース4から左方へ突出して、開閉装置20が構成されている。
【0015】
そして、このように構成された開閉装置20が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定ケース4が、上面に複数のキーが配列された操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、可動ケース7が、前面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着される。
【0016】
また、押圧体15には押釦が装着され、この押釦が固定筐体21側面から突出すると共に、上記のように開閉装置20によって、固定筐体21上端に可動筐体22下端が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0017】
以上の構成において、図6に示すように、可動カム6の先端が反転カム12上側の傾斜部に弾接した状態では、可動体5がばね9によって上方向の閉方向へ付勢されているため、可動ケース7が装着された可動筐体22には閉方向への付勢力が働き、可動筐体22が固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0018】
また、この閉状態から、指で固定筐体21側面の押釦を押圧操作すると、押釦が装着された押圧体15の押圧カム16が解除カム13を押圧して、解除体11が巻ばね14を撓めながら回転し、解除カム13が反転体10左端から外れて、反転カム12が左方向へ移動する。
【0019】
そして、ばね9に付勢された可動カム6が、図6に示す固定カム2との間隙Lだけ左方向へ移動して、先端が固定カム2の下側の傾斜部に弾接し、可動カム6が固定カム2上を弾接摺動して下方向へ回転することによって、可動体5及び可動ケース7が下方向の開方向へ付勢され、この力によって可動筐体22には開く方向の力が加わり、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度、例えば通話等の行い易い180度近くに開いた状態で保持される。
【0020】
また、この開状態から、可動筐体22を手で閉じる方向へ押圧して所定角度まで閉じると、上記とは逆に、可動カム6が固定カム2上を弾接摺動した後、反転カム12上側の傾斜部に弾接して、図6に示した状態に戻り、可動筐体22が携帯し易い閉じた状態で保持される。
【0021】
つまり、手による開閉操作に加え、可動筐体22を開く際には、押釦の押圧操作によって、反転カム12を左右方向、すなわち軸線方向に移動させて、可動筐体22をワンタッチで開く、所謂ワンタッチオープン操作が行えるように構成されているものであった。
【0022】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2008−138763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上記従来の開閉装置においては、押圧体15を押圧操作して可動筐体22をワンタッチオープン操作する際、反転体10が左方向へ移動した後、ばね9に付勢された可動カム6が間隙Lだけ左方向へ移動して、反転カム12から固定カム2下側の傾斜部に弾接するため、この可動カム6の固定カム2への衝突によって、特に可動筐体22の開操作を急速に行った場合には、大きな音や手への衝撃が生じてしまうことがあるという課題があった。
【0025】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触の操作が可能な開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために本発明は、可動カムの固定カムに弾接する当接部を、反転カムに弾接する当接部よりも、固定カム方向に突出形成して開閉装置を構成したものであり、反転カムが移動した後に固定カムに弾接する可動カムの当接部が、反転カムに弾接する当接部よりも固定カム方向に突出形成され、可動カムと固定カムとの間隙が殆んどないように形成されているため、反転カムが移動した後の可動カムの固定カムへの衝突が生じず、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触で操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触で操作の可能な開閉装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】同カム動作図
【図5】携帯電話の斜視図
【図6】従来の開閉装置の断面図
【図7】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0030】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0031】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0032】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金等の金属製の固定体で、この外周右端部には右方へ突出した略三角形状の一対の固定カム2が形成されている。
【0033】
そして、3は金属製の固定軸、4は略円筒状で金属製の固定ケースで、固定軸3の中間部には固定体1が、左端部には固定ケース4が各々固着されている。
【0034】
また、25は略円筒状で金属製の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に、かつ軸線方向へ移動可能に配置されると共に、外周左端部には左方へ突出した略三角形状の一対の可動カム26が形成されている。
【0035】
さらに、この可動カム26は、図3の部分斜視図に示すように、内周側の当接部26Aと、これとは段差のある外周側の当接部26Bから形成され、内周側の当接部26Aは外周側の当接部26Bよりも、固定カム2の方向に突出して形成されている。
【0036】
そして、この可動体25が略円筒状で金属製の可動ケース7内に、軸線方向へは移動可能で、回転方向へは可動ケース7と一体となって回転するように収納されている。
【0037】
また、可動ケース7の左端開口部には固定ケース4が回転可能に装着されると共に、固定軸3が可動ケース7内を挿通し、右端部が止め輪8によって可動ケース7外側面に回転可能に装着されている。
【0038】
さらに、9はコイル状で鋼線製のばねで、可動体25右側面と可動ケース7内側面の間にやや撓んだ状態で装着され、このばね9によって、可動体25が左方の固定体1の方向へ付勢されている。
【0039】
そして、10は略円筒状で金属製の反転体、11は略円盤状の解除体で、反転体10の外周右端部には右方へ突出した略三角形状の一対の反転カム12が、解除体11の外周右端部には同じく一対の解除カム13が各々形成されている。
【0040】
また、反転体10内には固定体1が挿通され、反転体10が固定体1外周にガイドされて軸線方向へ移動可能に、解除体11が回転可能なように、各々固定ケース4に装着されている。
【0041】
さらに、この反転体10の反転カム12上側の傾斜部には、ばね9によって左方向へ付勢された可動体25の、可動カム26の外周側の当接部26B先端が弾接すると共に、この当接部26Bよりも左方向に突出形成された内周側の当接部26Aと、固定カム2の間には間隙が殆んどないように形成されている。
【0042】
そして、14は鋼線製の巻ばねで、やや捩られた状態で一端が解除体11に係止されると共に、この巻ばね14によって解除体11が所定角度に復帰するように形成されている。
【0043】
また、15は外周右端部に右方へ突出した一対の押圧カム16が形成された押圧体で、固定軸3左端に軸線方向へ移動可能に装着されると共に、この押圧体15がやや撓んだ状態のコイル状のばね17に付勢され、左端が固定ケース4から左方へ突出して、開閉装置30が構成されている。
【0044】
そして、このように構成された開閉装置30が、例えば、図5の携帯電話の斜視図に示すように、固定ケース4が、上面に複数のキーが配列された操作部21Aやマイクロフォン等の音声入力部21Bが形成された固定筐体21へ、可動ケース7が、前面に液晶表示素子等の表示部22Aやスピーカ等の音声出力部22Bが形成された可動筐体22へ各々固着される。
【0045】
また、押圧体15には押釦が装着され、この押釦が固定筐体21側面から突出すると共に、上記のように開閉装置30によって、固定筐体21上端に可動筐体22下端が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0046】
以上の構成において、図1や図4(a)のカム動作図に示すように、可動カム26の外周側の当接部26B先端が、反転カム12上側の傾斜部に弾接した状態では、可動体25がばね9によって上方向の閉方向へ付勢されているため、可動ケース7が装着された可動筐体22には閉方向への付勢力が働き、可動筐体22が固定筐体21に対して閉じた状態で保持されている。
【0047】
また、この閉状態から、指で固定筐体21側面の押釦を押圧操作すると、押釦が装着された押圧体15の押圧カム16が解除カム13を押圧して、図4(b)に示すように、解除体11が巻ばね14を撓めながら回転し、解除カム13が反転体10左端から外れて、反転カム12が左方向へ移動し可動カム26の当接部26B先端から離れる。
【0048】
このため、図4(c)に示すように、ばね9に付勢された可動カム26が左方向へ移動して、当接部26A先端が固定カム2の下側の傾斜部に弾接するが、この時、上述したように、反転カム12に弾接していた外周側の当接部26Bよりも、左方向に突出形成された内周側の当接部26Aと、固定カム2の間には間隙が殆んどないように形成されているため、当接部26Aの固定カム2への衝突による音や衝撃は殆んど生じない。
【0049】
つまり、押釦の押圧操作によって反転カム12が移動した後に、固定カム2に弾接する可動カム26の内周側の当接部26Aが、反転カム12に弾接していた外周側の当接部26Bよりも、固定カム2の方向に突出形成され、当接部26Aと固定カム2との間隙が殆んどないようになっているため、当接部26Aの固定カム2への衝突がなく、開閉操作時の音や衝撃が殆んど発生しないように構成されている。
【0050】
そして、この後、図4(d)に示すように、可動カム26の当接部26A先端が、固定カム2の下側の傾斜部上を弾接摺動して下方向へ回転することによって、可動体25及び可動ケース7が下方向の開方向へ付勢され、この力によって可動筐体22には開く方向の力が加わり、可動筐体22が固定筐体21に対して所定角度、例えば通話等の行い易い180度近くに開いた状態で保持される。
【0051】
また、この開状態から、可動筐体22を手で閉じる方向へ押圧して所定角度まで閉じると、上記とは逆に、可動カム26の当接部26Aが固定カム2上を上方向へ弾接摺動した後、当接部26Bが反転カム12上側の傾斜部に弾接して、図1や図4(a)に示した状態に戻り、可動筐体22が携帯し易い閉じた状態で保持される。
【0052】
つまり、手による開閉操作に加え、可動筐体22を開く際には、押釦の押圧操作によって、反転カム12を左右方向、すなわち軸線方向に移動させて、可動筐体22をワンタッチで開く、所謂ワンタッチオープン操作が行えるように構成されている。
【0053】
そして、このようなワンタッチオープン操作を行った際、上述したように、固定カム2に弾接する可動カム26の内周側の当接部26Aが、反転カム12に弾接する外周側の当接部26Bよりも固定カム2方向に突出形成され、当接部26Aと固定カム2との間隙が殆んどないように形成されているため、当接部26Aの固定カム2への衝突による開閉操作時の音や衝撃が殆んど生じないようになっている。
【0054】
すなわち、ワンタッチオープン操作時の、可動カム26の固定カム2への衝突を防ぎ、開閉操作時の音や衝撃の殆んどない、良好な感触での操作を行うことが可能なように構成されている。
【0055】
また、可動カム26の当接部26Aを当接部26Bよりも固定カム2方向に突出形成し、当接部26Aと固定カム2との間隙が殆んどないようにすることによって、可動カム26の移動量を少なくし、軸線方向の寸法を短く形成することも可能なようになっている。
【0056】
このように本実施の形態によれば、可動カム26の固定カム2に弾接する当接部26Aを、反転カム12に弾接する当接部26Bよりも、固定カム2方向に突出形成することによって、反転カム12が移動した後に固定カム2に弾接する当接部26Aが、反転カム12に弾接する当接部26Bよりも固定カム2方向に突出形成され、当接部26Aと固定カム2との間隙が殆んどないように形成されているため、反転カム12が移動した後の当接部26Aの固定カム2への衝突が生じず、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触で操作を行うことが可能な開閉装置を得ることができるものである。
【0057】
なお、以上の説明では、固定体1と反転体10の外周右端部に一対の固定カム2と反転カム12を、可動体25の外周左端部に一対の可動カム26を各々形成し、これらを弾接させる構成について説明したが、可動体25の外周または内周にピン状の可動カムを突出形成し、これを固定体1や反転体10の内周または外周に形成した固定カムや反転カムに弾接させる構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明による開閉装置は、開閉操作時の音や衝撃が少なく、良好な感触の操作が可能なものを得ることができ、主に各種電子機器に使用される開閉装置として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 固定体
2 固定カム
3 固定軸
4 固定ケース
7 可動ケース
8 止め輪
9 ばね
10 反転体
11 解除体
12 反転カム
13 解除カム
14 巻ばね
15 押圧体
16 押圧カム
17 ばね
21 固定筐体
21A 操作部
21B 音声入力部
22 可動筐体
22A 表示部
22B 音声出力部
25 可動体
26 可動カム
26A、26B 当接部
30 開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定カムが形成された固定体と、この固定体に対し回転可能に配置されると共に、上記固定カムとの対向面に可動カムが形成された可動体と、上記可動カムを上記固定カムの方向へ付勢するばねと、軸線方向に移動可能に配置されると共に、上記可動カムとの対向面に反転カムが形成された反転体からなり、上記可動カムの上記固定カムに弾接する当接部を、上記反転カムに弾接する当接部よりも、上記固定カム方向に突出形成した開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−249285(P2010−249285A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101825(P2009−101825)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】