説明

間伐材を利用した苗鉢

【課題】十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく環境にやさしい苗鉢用ラミネート板およびこのラミネート板を使用して製作された苗鉢を提供すること。
【解決手段】)間伐材を薄くスライスして得られたい経木状板同士を重ねて得られた、経木状板間に古紙を介在させ、これらを固着して得られた苗鉢用ラミネート板を用いて鉢側壁用円弧状部材および底板からなり、該鉢側壁用円弧状部材は、表面側の一端に他端と係合するための段差部を有しており、また他端の裏面には前記一端と係合するための段差部を有しており、前記鉢側壁用円弧状部材の一端に他端を係合して環状となし、該底部には底板固定チップを有すると共に該底板固定チップ上に底板固定リングおよび底板が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杉などの間伐材から得られた苗鉢用材料およびこの材料から製作された苗鉢に関し、更に詳しくは杉などの間伐材の木目をそれぞれ直角に配置して強度を増した苗鉢用材料およびこの材料から作られた苗鉢に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、苗鉢又は育苗ポットとしては、古ダンボールや古コピー用紙などの古紙をそのまま用いるか、更にこれらを解きほぐし、再度漉き直して得られた紙を張子だるまのように張るか(例えば、特許文献1参照)、また安価に製作するためにプラスチックス、例えば、ポリ塩化ビニルなどに炭酸カルシウムなどの充填剤を加えて成型して作られているか(例えば、特許文献2参照)、更には製紙屑、古紙,木材廃材、間伐材、製材屑などのセルロース系素材に炭の粉砕物または炭粉体を配合し、植物栽培用ポットや栽培容器状に成形したもの(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【特許文献1】特開平11−42016(段落0011、図1)
【特許文献2】特開平9−205895(段落0002)
【特許文献3】特開2002−262671(特許請求の範囲、段落0005、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の如く特許文献1に開示されている植物栽培用キットは、古紙を使用する点で環境上好ましいが、製作上煩雑になり作業工程が多く生産効率が悪く、大量生産が困難であるという問題がある。また特許文献2に開示されている育苗ポットは、安価で苗鉢としては極めて好ましいものではあるが、このような苗鉢は使用される数が多く、使用後の処置に困り、そのまま田畑に放置されたり、廃棄されたりしているのが現状である。また更に特許文献3に開示されている植物栽培用ポットなどは、生分解性のバイダーが添加されているので、成形後の強度に優れたものが得られるが、セルロース系素材が、製紙屑、古紙,木材廃材、間伐材、製材屑などを粉体又は繊維状に加工してから用いるので、加工工程や加工時間が嵩み効率が悪いという製造上の問題がある。
【0004】
そこで、本発明者は、上記の問題点について、種々検討したところ、間伐材をスライスして得られた薄板を2枚用意し、これら薄板の木目を90度回転させて木目面同士が直角になるように重ね、更にこれらの薄板の間に古紙を介在させてサンドイッチにすると共にこれらを接着剤などで接着しラミネートして製造したところ、古紙を介在させ、かつ木目面同士を直角に配置したことにより、得られたラミネート板の強度が増大すると共に、製造工程も簡単かつ大量生産が可能であることがわかった。したがって、このようなラミネート板を使用して製作した苗鉢は、苗鉢として使用するのに必要な強度を十分備えており、また間伐材の有効利用が促進され、しかも使用後、不要になった苗鉢は実質的に古紙と間伐材とから構成されているので、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく環境にもやさしく優れた効果を奏することがわかり、ここに本発明をなすにいたった。したがって、本発明が解決しようとする課題は、十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく環境にやさしい苗鉢用ラミネート板およびこのラミネート板を使用して製作された苗鉢を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)乃至(5)の各考案によって、前記の課題を解決したものである。
(1)間伐材を薄くスライスして得られたい経木状板同士を重ねて得られた、経木状板間に古紙を介在させ、これらを固着したことを特徴とする苗鉢用ラミネート板。
(2)前記間伐材が杉であることを特徴とする請求項1に記載の苗鉢用ラミネート板。
(3)前記経木状板の厚みが0.1mm〜2mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の苗鉢用ラミネート板。
(4)前記経木状板の木目がそれぞれ90°回転して直角となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗鉢用ラミネート板。
(5)苗鉢用ラミネート板から得られた鉢側壁用円弧状部材および底板からなり、該鉢側壁用円弧状部材は、表面側の一端に他端と係合するための段差部を有しており、また他端の裏面には前記一端と係合するための段差部を有しており、前記鉢側壁用円弧状部材の一端に他端を係合して環状となし、該底部には底板固定チップを有すると共に該底板固定チップ上に底板固定リングおよび底板が配置されていることを特徴とする前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の苗鉢用ラミネート板を使用して得られた苗鉢。
【発明の効果】
【0006】
前記(1)〜(2)の本発明は、以下の如き優れた効果を奏するものである。
(1)の発明の苗鉢用ラミネート板は、間伐材を薄くスライスして得られた経木状板同士を重ねて得られた、経木状板間に古紙を介在させ、これらを固着したことにより、製造工程も簡単かつ大量生産が可能であり、十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく環境にやさしい苗鉢用ラミネート板が得られる。
(2)の発明の苗鉢用ラミネート板は、前記間伐材が杉であることにより、前記の(1)の発明の効果に加えて、原料の杉の間伐材が大量に排出され、原料不足になることがないという優れた効果を奏するものである。
(3)の発明の苗鉢用ラミネート板は、前記経木状板の厚みが0.1mm〜2mmであることにより、苗鉢用に用いることができる強度を得ることができる。
(4)の発明の苗鉢用ラミネート板は、前記経木状板の木目がそれぞれ90°回転して直角となるように配置されていることにより、苗鉢用ラミネート板の横および縦方向の強度が十分得られ、折り曲げることができるという優れた効果を奏するものである。
【0007】
(5)の発明の苗鉢は、苗鉢用ラミネート板から得られた鉢側壁用円弧状部材および底板からなり、該鉢側壁用円弧状部材は、表面側の一端に他端と係合するための段差部を有しており、また他端の裏面には前記一端と係合するための段差部を有しており、前記鉢側壁用円弧状部材の一端に他端を係合して環状となし、該底部には底板固定チップを有すると共に該底板固定チップ上に底板固定リングおよび底板が配置されていることにより、十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく(燃焼しても炭酸ガスの増加の心配はない。)、環境にやさしい優れた間伐材を利用した苗鉢が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明について、発明の実施の形態を図面で説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
図1は、本発明の苗鉢用の、間伐材をスライスした板と古紙を示す平面図である。図2は、本発明の苗鉢用の、間伐材をスライスした板の木目を互いに直角になるように配置した平面図である。図3は、図1のスライスした板に古紙を介してラミネートした積層板の断面図である。図4は、図2のスライスした板に古紙を介してラミネートした積層板の断面図である。図1及び図3において、間伐材をスライスして薄い経木状板2及び3を得た。間伐材には、杉、さわら、檜などが用いられるが、好ましくは杉、さわらがよく、更に好ましくは杉がよい。このスライス板2、3の厚みは0.1mm〜2mmであるが、好ましくは0.1mm〜1.5mm、0.3mm〜1.5mm、更に好ましくは0.1mm〜0.5mmの範囲で用いられる。これらの範囲で苗鉢用スライス板として好ましく使用される。苗鉢用スライス板から苗鉢用ラミネート板を製造するには、この経木状板2の木目5の方向と同方向、即ち平行に経木状板3の木目5を重ね、ついで、これらの間に古紙4を挟んで接着剤により接着し、図3に示される如きラミネート板又は積層板Aを製造するものである。接着剤としては、通常用いられる天然又は合成の接着剤でよく、その種類には限定されるものではないが、水溶性接着剤がよい。また接着剤に代え、圧着による接着でもよい。更に希薄な接着剤を古紙に含浸させた後、これをスライス板の間に挟んで圧着してもよい。このように古紙4を介在してラミネートすることにより強度に優れた苗鉢用ラミネート板Aが得られる。ここに用いられる古紙4には、新聞紙、広告、コピー紙、ボール紙、ダンボールなどの使用済みの木質系材料を用いるのが好ましい。
【0009】
また図2及び図4において、間伐材をスライスして薄い経木状板2及び3を得た後、この経木状板2の木目5の方向に対して経木状板3の木目5の方向が直角となるように90°回転して得られた経木状板3と重ね、これらの間に古紙4を挟んで接着剤により接着し、図4に示される如きラミネート板又は積層板Bを製造するものである。このように古紙4を介在すると共に木目をそれぞれ直角に配置してラミネートすることにより縦横の更なる曲げ強度に優れた苗鉢用ラミネート板Bが得られる。
【0010】
また本発明は、前述の苗鉢用ラミネート板A又はBを使用して製造した苗鉢に係るもので、製造された苗鉢の側壁の傾斜は任意であり、通常市販されている鉢と同様に特に傾斜角は限定されるものではない。図5は、苗鉢本体を示す平面図である。図5のAは、苗鉢本体の側壁を示す展開図であり、図5のBは、苗鉢本体の一端部のc−d線の断面図である。また図5のCは、苗鉢本体の他端部のE−F線の断面図である。図6は、底板固定リングを示す図面であり、図6aは、底板固定リングを示す断面図であり、図6bは、底板固定リングを示す平面図である。図7は、底板を示す平面図である。図8は、底板固定チップを示す斜視図である。図9は、本発明の苗鉢の断面図である。図10は、図9に示される円内の拡大図である。
【0011】
図5乃至図10において、苗鉢1は、苗鉢本体11、底板14、底板固定リング15又は底板固定チップ16からなり、苗鉢本体11は、円弧状又は扇状からなり、半径の小さい方が底部21となり、半径の大きい方が上側22となる。苗鉢本体11の一端部12には段差部12aを有し、また他端13には段差部13aを有しており、一端12bと他端13bとを近接すると、段差部12aと段差部13aとが合わさるので、この部分で固定することにより環状体が形成される。また底部21には、底板固定チップ16が接着剤により接着されて設けられており、このチップ16で底板14を支えている。またこのチップ16の代わりに苗鉢の側壁の下部をコの字に切り抜き、得られた突起を内側に折り曲げ、底板14を支持してもよい。更に別の例では、図6に示される如き底板固定リング15が用いられる。この底板固定リング15の断面形状は方形、例えば、長方形であることが好ましいが、これに限定されるものではない。またこれら底板14、底板固定チップ16および底板固定リング15は、木質系の材料が好ましく、例えば、苗鉢本体11の材質と同じ又は同様のものが使用される。得られた苗鉢1は図9に示されている。苗鉢1の大きさは、通常使用されている大きさでよいが、使用目的よっては適宜大きさを変えることができる。一例を挙げれば、底部の直径は、20mm、上部の直径は45mmである。また鉢側壁の傾斜は、通常15°であるが、使用目的により適宜変えられる。このように本発明の苗鉢1は、製造工程も簡単かつ大量生産が可能であり、十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく環境にやさしい苗鉢用ラミネート板を使用しているので、十分な強度を備え、間伐材の有効利用が促進され、放置しても腐敗して土に還元され、公害の発生がなく(燃焼しても炭酸ガスの増加の心配はない。)、環境にやさしい苗鉢1が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、間伐材の有効利用が可能で、苗鉢のごとく大量に使用されることにより、間伐材の使用促進が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の苗鉢用の、間伐材をスライスした板と古紙を示す平面図である。
【図2】本発明の苗鉢用の、間伐材をスライスした板の木目を互いに直角になるように配置した平面図である。
【図3】図1のスライスした板に古紙を介してラミネートした積層板の断面図である。
【図4】図2のスライスした板に古紙を介してラミネートした積層板の断面図である。
【図5】苗鉢本体を示す平面図である。図5のAは、苗鉢本体の側壁を示す展開図であり、図5のBは、苗鉢本体の一端部のc−d線の断面図である。また図5のCは、苗鉢本体の他端部のE−F線の断面図である。
【図6】本発明に用いられる底板固定リングを示す図面である。図6aは、その断面図であり、図6bは、その平面図である。
【図7】本発明に用いられる底板を示す平面図である。
【図8】本発明に用いられる底板固定チップを示す斜視図である。
【図9】本発明の苗鉢の断面図である。
【図10】図9に示される円内の拡大図である。
【符号の説明】
【0014】
1 苗鉢
11 苗鉢本体
12 一端部
12a、13a 段差部
12b 一端
13b 他端
13 他端部
14 底板
15 底板固定リング
16 底板固定チップ
2、3 経木状板
4 古紙
5 木目
6 接着剤
A、B 積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間伐材を薄くスライスして得られた経木状板同士を重ねて得られた、経木状板間に古紙を介在させ、これらを固着したことを特徴とする苗鉢用ラミネート板。
【請求項2】
前記間伐材が杉であることを特徴とする請求項1に記載の苗鉢用ラミネート板。
【請求項3】
前記経木状板の厚みが0.1mm〜2mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の苗鉢用ラミネート板。
【請求項4】
前記経木状板の木目がそれぞれ90°回転して直角となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗鉢用ラミネート板。
【請求項5】
苗鉢用ラミネート板から得られた鉢側壁用円弧状部材および底板からなり、該鉢側壁用円弧状部材は、表面側の一端に他端と係合するための段差を有しており、また他端の裏面には前記一端と係合するための段差を有しており、前記鉢側壁用円弧状部材の一端に他端を係合して環状となし、該底部には底板固定チップを有すると共に該底板固定チップ上に底板固定リングおよび底板が配置されていることを特徴とする前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の苗鉢用ラミネート板を使用して得られた苗鉢。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−202414(P2007−202414A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21840(P2006−21840)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(592014001)
【Fターム(参考)】