説明

防振構造物を構成する単位ブロックと防振構造物

【課題】設置作業や撤去作業に掛かる手間及び費用が抑制され、短時間に構築及び撤去できる防振構造物を提供する。
【解決手段】地盤Gを媒体として伝播する振動を遮断又は低減する波型防振構造物4を構成する単位ブロック1であって、水平方向に屈曲関係で2枚以上の主垂直壁11及び副垂直壁12を連ね、少なくとも2つの端部側面122を形成してなり、端部側面122に近接する副垂直壁の上面16又は側面121に連結手段を設けてなる防振構造物を構成する単位ブロック1を水平方向に連結して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を媒体として伝播する振動を遮断又は低減する防振構造物を構成する単位ブロックと、前記単位ブロックから構成された防振構造物とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路や鉄道等の交通設備、工場等の産業設備、そして建設現場等を震動源とし、前記震動源の周辺地盤を媒体として伝播する振動を遮断又は低減するため、例えば特許文献1に見られるように、前記各震動源を囲むように構築する防振構造物が提案されている。特許文献1が開示する防振構造物は、周辺地盤より剛性の高い硬質材とゴム弾性材とを隣接させて埋設し、硬質層と弾性層とを形成して構築される。硬質材はコンクリート製柱を水平断面形状がハニカム形状となる構成が、また弾性材は破砕した廃タイヤからなる構成がそれぞれ例示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004-156259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する防振構造物において、硬質層は多数の柱を埋設して構築される。このため、一方向に連続して直線状に延びる壁面を形成する場合、壁面の延在方向に沿って多数の柱を地盤に打ち込まなければならず、設置作業の労力及び費用が掛かる。これに対し、弾性層は、弾性材として廃タイヤの破砕物を利用すると、柱に囲まれた空間に廃タイヤの破砕物を投入するだけなので、設置作業の手間及び費用は掛からない。しかし、一度弾性層が構築されてしまうと、弾性層の形状変更はもちろん、弾性材を回収する撤去作業に手間及び費用が掛かることになる。
【0005】
震動源が道路、鉄道又は工場等である場合、構築される防振構造物の設置作業に手間及び費用が掛かっても、十分な防振作用を発揮できれば問題がない。しかし、震動源が建設現場等である場合、建設作業の間だけ防振構造物を構築しておくため、手間及び費用が抑制された設置作業と撤去作業とが要求される。ここで、例えば弾性層を省略し、硬質層のみからなる防振構造物とすることにより、設置作業や撤去作業の手間及び費用を抑制することも考えられるが、弾性層がないために当然防振作用が低下するものの、手間及び費用の抑制はそれほどでもない。
【0006】
設置作業や撤去作業に掛かる手間及び費用が抑制され、短時間に構築及び撤去できる防振構造物は、永続的に構築しておくこともできる。すなわち、設置作業や撤去作業に掛かる手間及び費用が抑制され、短時間に構築及び撤去できる防振構造物は、特許文献1が開示する防振構造物より、利用可能な範囲が広いことになる。そこで、設置作業や撤去作業に掛かる手間及び費用が抑制され、短時間に構築及び撤去できる防振構造物を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果、地盤を媒体として伝播する振動を遮断又は低減する防振構造物を構成する単位ブロックであって、水平方向に屈曲関係で2枚以上の垂直壁を連ね、少なくとも2つの端部側面を形成してなり、端部側面に近接する垂直壁の上面又は側面のいずれか又は全部に連結手段を設けてなる防振構造物を構成する単位ブロックと、地中に埋設する前記単位ブロックを水平方向に連結して構成される防振構造物を開発した。垂直壁相互が屈曲関係にあるため、側面は各垂直壁毎に分かれるが、各垂直壁の上面は連続して面一に形成することができる。また、各垂直壁の下面は、載置安定性を確保するため、面一に形成されることが好ましい。
【0008】
連結手段は、垂直壁の上面又は側面のいずれか又は全部に設けたインサートネジと、連結プレートの端部に設けた一対の挿通孔の一方を通じて前記インサートネジに螺着するボルトの組み合わせや、垂直壁の表面及び裏面にわたって設けた貫通孔と、連結プレートの端部に設けた一対の挿通孔の一方を通じて前記貫通孔に通して締め付けるボルト及びナットとの組み合わせによる。連結プレートは、挿通孔の一方が単位ブロックの連結方向に延在する長孔であることが好ましい。これにより、前記長孔の延在範囲で単位ブロック相互を連結する位置関係の調整を図ることができる。
【0009】
本発明の単位ブロックは、特許文献1の柱が所定配列で並んだ構成に相当する垂直壁を、水平方向に屈曲関係で2枚以上連結させた構造を有する。これにより、単位ブロックは、特許文献1における柱を一度に複数本ずつ取り扱うことと同等の利便性を得ることができ、容易かつ短時間で防振構造物を構築及び撤去できる。また、単位ブロックは、各垂直壁が水平方向に屈曲関係に連なることにより、各垂直壁が振動を跳ね返す方向を複雑にして、結果として振動の遮断又は低減を促進できる。
【0010】
単位ブロックは、水平方向に単位長である主垂直壁の両端部から、水平方向に単位長の半分である副垂直壁を前記主垂直壁に対して120度の開度で2枚ずつ突出させた構成が好ましい。これにより、単位ブロックを平面視波形状に連結して防振構造物を構築できる。また、単位ブロックを3基一組にすれば、単位ブロックを平面視ハニカム形状(平面視六角形状)に連結した防振構造物にすることもできる。平面視ハニカム形状に単位ブロックを連結した防振構造物は、平面視ハニカム形状の空間にゴムブロック等の弾性体を充填し、特許文献1が開示する構成と同様な防振構造物とすることもできる。
【0011】
単位ブロックは、垂直壁(主垂直壁、副垂直壁を含む)が周囲の地盤より剛性の高いものであれば素材を問わない。これから、通常、単位ブロックは、プレキャストコンクリートのブロックとして構成することが好ましい。また、廃棄物利用の観点から、単位ブロックは、鉄鋼スラグ又は高炉スラグの粉末や火力発電所から発生するフライアッシュのいずれか1種又は組み合わせからなる鉄鋼スラグ水和固化体のブロックとすることもできる。
【0012】
防振構造物は、既述したように、連結する単位ブロックそれぞれの主垂直壁に対して異なる側に突出した副垂直壁の端部側面を突き合わせ、各単位ブロックの主垂直壁が互い違いに蛇行する平面視波形状に単位ブロックを連結させる構成にしたり、連結する単位ブロックそれぞれの主垂直壁に対して同じ側に突出した副垂直壁の端部側面を突き合わせ、3基一組の単位ブロックが平面視ハニカム形状を形成するように単位ブロックを連結させる構成にしたりする。3基の単位ブロックを平面視ハニカム形状に連結した場合、前記単位ブロックに囲まれた空間が形成されるため、前記空間に後述するゴムブロックを充填するとよい。
【0013】
本発明の防振構造物においても、特許文献1同様、弾性層を形成するゴムブロックを単位ブロックと併用することが好ましい。具体的には、単位ブロックの垂直壁の表面又は裏面の一方又は双方に添って、ゴムブロックを袋体に充填した弾性バッグを埋設した防振構造物とする。ゴムブロックは、袋体に充填することにより一定量を単位として取り扱える利便性を得て、容易かつ短時間で埋設及び除去ができる。これは、単位ブロックを含めた防振構造物の容易かつ短時間での埋設及び撤去を可能にすることを意味する。ゴムブロックは、漏れ出ない大きさのメッシュ地の袋体に充填する。ゴムブロックは、例えば廃棄タイヤを破砕して作るとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、設置作業や撤去作業に掛かる手間及び費用が抑制され、短時間に構築及び撤去できる防振構造物が提供される。これは、本発明の単位ブロックによる効果である。また、単位ブロックを単位長の主垂直壁と単位長の半分の副垂直壁とからなる構成にすると、平面視形波形状や平面視ハニカム形状に連結した防振構造物を容易に構築できる。防振構造物は、本発明の単位ブロックのみで構築することもできるが、例えば単位ブロックを平面視ハニカム形状に連結し、前記単位ブロックに囲まれた空間にゴムブロックを充填すると、より高い防振性能を得ることができる。このように、本発明は、防振性能に優れた防振構造物を容易かつ短時間に構築及び撤去できるようにして、永続的な防振構造物のほか、仮設的な防振構造物の構築も容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本願発明に基づく本例の単位ブロック1を表す斜視図、図2は本例の単位ブロック1の接続関係を表す部分斜視図、図3は本例の単位ブロック1を平面視波形状に連結して構築した防振構造物4(以下、便宜上「波型防振構造物4」)の斜視図、図4は波型防振構造物4の図3中A−A断面図、図5は波型防振構造物4の平面図、図6は別例の単位ブロック2を平面視波形状に連結して構築した波型防振構造物4の斜視図、図7は更に別例の単位ブロック3を平面視波形状に連結して構築した波型防振構造物4の斜視図、図8は本例の単位ブロック1を二列の平面視波形状に連結して構築した防振構造物5(以下、便宜上「二重波型防振構造物5」)の斜視図、図9は二重波型防振構造物5の平面図、図10は本例の単位ブロック1を平面視ハニカム形状に連結して構築した防振構造物6(以下、便宜上「ハニカム型防振構造物6」)の斜視図、図11はハニカム型防振構造物6の平面図、図12は本例の単位ブロック1を平面視波形状及び平面視ハニカム形状にそれぞれ連結して構築した防振構造物7(以下、便宜上「複合型防振構造物7」)の斜視図であり、図13は複合型防振構造物7の平面図である。図示の便宜上、図5、図9、図11及び図13は、インサートネジ13、吊り下げ用アンカー15、連結プレート91、ボルト92の図示を省略している。
【0016】
本例の単位ブロック1は、図1に見られるように、水平方向に単位長Lmの主垂直壁11の両端部から、水平方向に単位長の半分Lsの副垂直壁12を前記主垂直壁11に対して120度の開度で2枚ずつ突出させたプレキャストコンクリートブロックである。単位ブロック1の上面16及び下面17は、主垂直壁11及び副垂直壁12にわたって連続かつ平行である。防振構造物は、地盤を伝播する振動を遮断又は低減するため、単位ブロック1により地盤が分画される必要があるが、単位ブロック1が地表面から突出する必要はない。これから、地表面の多くが平坦であることから、単位ブロック1は上面16及び下面17を主垂直壁11及び副垂直壁12にわたって連続かつ平行にし、防振構造物を構築する際に単位ブロック1を載置する掘削溝(トレンチ)の深さを単位ブロック1の高さhで掘り、単位ブロック1の上面16を地表面と面一にする。
【0017】
各副垂直壁12は、端部側面122に近接した上面16にインサートネジ13を埋め込み、同じく端部側面122に近接した側面121の中段位置に貫通孔14を表裏の側面121(副垂直壁12の一方の側面121を表、他方の側面121を裏)にわたって貫通させている。端部側面122を突き合わせた単位ブロック1は、図2に見られるように、上面16のインサートネジ13,13にわたって、また表裏の側面121に開口する貫通孔14,14にわたってそれぞれ連結プレート91を架け渡し、連結プレート91の挿通孔(円孔)911及び挿通孔(長孔)912を通じてボルト92をインサートネジ13,13に捩じ込み、また表裏の側面121に架け渡した連結プレート91,91の挿通孔911及び挿通孔912を通じてボルト92を貫通させ、ナット93を螺着して、連結する。
【0018】
インサートネジ13、連結プレート91及びナット93や、貫通孔14、連結プレート91、ボルト92及びナット93は、それぞれ連結手段を構成する。本発明に用いることのできる連結手段は、このほか従来公知の各種連結手段を利用できる。本例の連結手段は、連結プレート91に設けたボルト92の挿通孔911の一方を円孔としながら、残る挿通孔912の他方を連結プレート91の長手方向に延びる長孔として、前記長孔の挿通孔912の範囲で連結する単位ブロック1,1相互の水平方向又は垂直方向の位置関係を調整できるようにする利点がある。例えば、インサートネジ13,13を結ぶ連結プレート91は、長孔の挿通孔912の範囲でボルト92の挿通位置をずらし、貫通孔14,14に架け渡す連結プレート91を省略又は折り曲げると、単位ブロック1,1相互を水平方向に少しずつ曲げながら連結することができ、全体として水平方向に湾曲した防振構造物を構築することができる。
【0019】
このほか、本例の単位ブロック1は、クレーンで吊り上げることができるように、主垂直壁11と2枚の副垂直壁12とが交差する部位、すなわち前記主垂直壁11の両端部の上面16に、吊り下げ用アンカー15を設けている。既述したインサートネジ13や前述した吊り下げ用アンカー15は、単位ブロック1の成型時に上面16に埋め込み、また既述した貫通孔14は、単位ブロック1の成型時に側面121と共に成型する。吊り下げ用アンカー15は、単位ブロッ1の運搬や防振構造物の設置又は撤去に際する利便性を高めるものであり、本例が示すもの以外の構成であってもよい。また、吊り下げ用アンカー15と共にインサートネジ13や貫通孔14を併用して、単位ブロック1を吊り下げるようにしてもよい。
【0020】
単位ブロック1における主垂直壁11の単位長Lm、副垂直壁12の単位長の半分Ls、主垂直壁11及び副垂直壁12の厚みt、そして主垂直壁11及び副垂直壁12の高さhは、単位長の半分Lsが単位長Lmの1/2であることを除けば、自由に設定できる。しかし、振動の遮断又は低減に十分な防振構造物を構築したり、運搬又は保管したりすることを鑑みた場合、単位長Lmは0.3m〜10m、好ましくは0.5m〜2m(単位長の半分Lsは0.15m〜5m、好ましくは0.25m〜1m)とし、厚みtは前記単位長Lmに応じて50mm〜1000mm、好ましくは50mm〜200mm、同じく高さhは前記単位長Lmに応じて0.5m〜5m、好ましくは0.6m〜2.4mとする。連結手段の関係から、単一の防振構造物を構築する単位ブロック1はすべて同じ大きさにすることを基本とするが、連結手段に問題がなければ、大きさの異なる単位ブロック1を相互に連結し、防振構造物を構築してもよい。
【0021】
波型防振構造物4は、図3〜図5に見られるように、多数の単位ブロック1を同じ姿勢に揃えて一方向に連結し、前記単位ブロック1の連結方向に直交して張り出す各単位ブロック1の副垂直壁12に挟まれる空間に、主垂直壁11の側面111や副垂直壁12の側面121に添わせて弾性バッグ8を多数埋設して構築される。この波型防振構造物4は、通常、震動源Pと最短に結ぶ方向に直交して延在させる(図5参照)。これにより、震動源Pに向けて突出する各単位ブロック1の副垂直壁12は、波型防振構造物4に直交する方向から伝播する振動のみを、奥まった位置にある主垂直壁11又は連結された副垂直壁12,12に到達を許して、その他の振動を反射又は屈折させる。これにより、前記主垂直壁11及び連結された副垂直壁12,12に直交方向から到達する振動がなくなり、あらゆる振動が前記副垂直壁12に挟まれる空間内で乱反射し、吸収される。また、仮に主垂直壁11又は連結された副垂直壁12,12を介して反対側に伝播された振動も、波型防振構造物4の直交方向に放射されず、前記主垂直壁11又は連結された副垂直壁12,12の直交方向、すなわち斜め方向にしか放射されず、波型防振構造物4の直交方向への伝播が制限される。こうして、本例の波型防振構造物4により振動の遮断又は低減が実現される。
【0022】
本例の弾性バッグ8は、樹脂メッシュ製の袋体82に、平均粒径2mm〜300mm、好ましくは10mm〜100mmゴムブロック81を充填して構成される。袋体82のメッシュの大きさは、ゴムブロック81の平均粒径を基準にして決定すればよいが、一般には前記ゴムブロック81の平均粒径より小さい方が好ましい。裏返せば、袋体82のメッシュより大きければ、ゴムブロック81個々の大きさが異なっていても構わない。また、袋体82は、充填したゴムブロック81が移動し、弾性バッグ8として変形自在になるように樹脂製メッシュ製としているが、前記弾性バッグ8として変形自在であれば、樹脂製又はメッシュ製にこだわらない。ゴムブロック81は、廃棄タイヤを破砕して得ることができる。
【0023】
本例の波型防振構造物4の構築手順は、例えば次の通りである。まず、震動源Pに直交する方向に延びる断面逆さ台形状の掘削溝(トレンチ)Tを掘る(図5中一点鎖線の範囲が掘削溝T)。この掘削溝Tの深さは、単位ブロック1の高さに等しく、また掘削溝Tの底面は地表面に平行にされるため、単位ブロック1の上面16と地表面とは面一になる。単位ブロック1は、こうして掘られた掘削溝Tの底面に載置しながら、連結プレート91により相互に連結する。そして、単位ブロック1の連結方向に直交して張り出す各単位ブロック1の副垂直壁12に挟まれる空間を残し、間詰土砂Sを掘削溝Tに充填する。こうして残った前記空間に、各単位ブロック1の主垂直壁11及び副垂直壁12の各側面111,121に弾性バッグ8を添わせて詰め込む。弾性バッグ8を空間に充填してから間詰土砂Sを充填すると、かえって弾性バッグ8相互の隙間が残る虞がある。これから、埋設される防振構造物として不要な隙間を残さないためにも、間詰土砂Sの充填の後に弾性バッグ8を充填することが好ましい。
【0024】
波型防振構造物4は、図6に見られるように、単位長の半分Lsである3枚の垂直壁21を平面視120度間隔で突き合わせた別例の単位ブロック2や、図7に見られるように、単位長の半分Lsである2枚の垂直壁31を水平方向に120度の屈曲関係で連結させた更に別例の単位ブロック3により、構築することもできる。便宜上、図6及び図7に示す波型防振構造物4は弾性バッグ8(図3及び図5)の図示を省略しているが、本例の波型防振構造物4(図3及び図5)と同様に弾性バッグ8を充填できる。このほか、別例の単位ブロック2は、各垂直壁21の周方向に120度の等間隔で連結し、また更に別例の単位ブロック3は、垂直壁31を水平方向に120度で屈曲させているため、3種類の単位ブロック1,2,3を混在させても、本例の波型防振構造物4ほかの防振構造物を構築できる。
【0025】
別例の単位ブロック2は、本例の単位ブロック1を主垂直壁11で半割した構成であり、3枚の垂直壁21それぞれが端部側面212を有し、端部側面212に近接して上面26にインサートネジ23を埋め込み、端部側面212に近接して各側面211の中段位置に貫通孔24を設けて、各垂直壁21の交点となる上面26の位置に吊り下げ用アンカー25を設けている。この別例の単位ブロック2は、単位ブロック1を用いて構築される防振構造物をすべて構築できる。また、別例の単位ブロック2は、本例の単位ブロック1の半分の大きさで、軽量であることから、取り扱いが容易である。しかし、本例の単位ブロック1に比べ、同じ防振構造物を構築又は撤去する場合、必要な単位ブロック2の数は単純に倍になることから単位ブロック2相互の連結又は解除の手間が倍となり、防振構造物の構築又は撤去に掛かる労力はかえって増える。これから、別例の単位ブロック2は、本例の単位ブロック1に対して補助的に用いる、例えば既存建物の基礎との干渉を避けるために防振構造物の端に用いるとよい。
【0026】
更に別例の単位ブロック3は、本例の単位ブロック1の副垂直壁12に相当する垂直壁31を水平方向に120度の屈強関係で連結した構成で、2枚の垂直壁31それぞれが端部側面312を有し、端部側面312に近接して上面36にインサートネジ33を埋め込み、端部側面312に近接して各側面311の中段位置に貫通孔34を設けて、各垂直壁31の交点となる上面36の位置に吊り下げ用アンカー35を設けている。別例の単位ブロック3は、波型防振構造物4を構築した際、震動源P(図5参照)に向けて突出する垂直壁がない。このため、震動源Pに向けて突出する垂直壁の働きはないが、水平方向に屈曲関係の垂直壁31により、伝播してくる振動を斜めに反射したり、斜め方向にのみ放射して、振動の遮断又は低減を図る働きを有する。このほか、更に別例の単位ブロック3は、別例の単位ブロック2より小型かつ軽量であることから、取り扱いに優れる反面、別例の単位ブロック2同様、防振構造物の構築又は撤去に掛かる労力が本例の単位ブロック1による場合に比べて増えるため、本例の単位ブロック1又は別例の単位ブロック2に対して補助的に用いるとよい。
【0027】
本発明の防振構造物は、例えば本例の単位ブロック1を用いて、様々な構成で構築できる。例えば、図8及び図9に見られるように、上記波型防振構造物4(図3及び図5参照)を2列並べて構築し、全体として二重波形構造物5とすることもできる。波型防振構造物4が二重に構築されるだけでなく、平行に並ぶ波型防振構造物4の間にも弾性バッグ8を充填できることから、波型防振構造物4に比べ、二重波型防振構造物の防振効果は高くなっている。これに対し、二重波型防振構造物5は、単純に波型防振構造物4を2列構築することから、掘削溝Tが大きくなり、構築又は撤去に掛かる労力も倍になる。これから、構築又は撤去を簡便にすることが主眼であれば波型防振構造物4、より高い防振効果が望まれる場合であれば二重波型防振構造物5を選択することになる。図示は省略するが、波型防振構造物4を3列又はそれ以上並べた多列波型構造物を構築してもよい。
【0028】
二重波型防振構造物5は、波型防振構造物4が二列並ぶことによる防振効果の向上のほか、二列の波型防振構造物4の間に弾性バッグ8を充填したことによる防振効果の向上を図っている。これから、例えば図10及び図11に見られるように、連結する単位ブロック1それぞれの主垂直壁11に対して同じ側に突出した副垂直壁12の端部側面122を突き合わせ、3基一組の単位ブロック1が平面視ハニカム形状を形成させたハニカム型防振構造物6とすれば、波型防振構造物4が大きく離れて2列並び、更に弾性バッグ8を充填する中間の空間を大きくして、防振効果をより高めることができる。本例のハニカム型防振構造物6は、上述までの波型防振構造物4に倣って、震動源Pに向けて突出した副垂直壁12の間にも弾性ブロック8を充填している。しかし、二列の波型防振構造物4に挟まれて形成されるハニカム形状の空間が大きく、前記空間に十分な弾性バッグ8を充填できれば、前記副垂直壁12の間に弾性バッグ8を充填しなくてもよい。
【0029】
更に、図12及び図13に見られるように、上記ハニカム型防振構造物6に波型防振構造物4を組み合せた複合型防振構造物7とすることもできる。連結する単位ブロック1の数が多くなることから、複合型防振構造物7の構築又は撤去に手間及び労力は掛かるものの、防振効果は非常に優れたものになる。しかし、複合型防振構造物7は、単位ブロック1の数だけでなく、単位ブロック1相互の連結又は解除の個数も非常に増えることから、構築又は撤去に手間及び労力が掛かる。これから、複合型防振構造物7は、できる限り高い防振効果が求められる場所や、特定期間経過後に撤去するのではなく、永続的に設置する場合に用いられる。図示は省略するが、波型防振構造物4は、ハニカム型防振構造物6に対して震動源Pと反対側に配置してもよいし、ハニカム型防振構造物6の両側に配置してもよい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の単位ブロック1を用いて構築された防振構造物について、防振効果を計測する振動試験を実施した。構築された防振構造物は、単位ブロック1を一方向に連ねた波型防振構造物4(実施例1、図3及び図5参照)、波型防振構造物4を2列並べた二重波型防振構造物5(実施例2、図8及び図9参照)、単位ブロック1を3基一組で組み合せたハニカム型防振構造物6(実施例3、図10及び図11参照)及びハニカム型防振構造物6に波型防振構造物4を組み合せた複合型防振構造物7(実施例4、図12及び図13参照)の4種類である。単位ブロック1は、鉄鋼スラグを主体としたプレキャストコンクリートブロックで、Lm=1m(Ls=0.5m)、t=0.1m、h=1.2mである。弾性バッグ8は、廃棄タイヤを平均粒径50mm〜100mmに破砕して得られたゴムブロック81を樹脂メッシュ製の袋体82に充填した構成で、0.8m3の容量である。例えば、ハニカム型防振構造物の平面視六角形状の空間には4個の弾性バッグ8を充填した。
【0031】
試験場は、例えば図14に見られるように、第1計測点M1から震動源距離Lrだけ離れて震動源Pを設定し、震動源Pと第1計測点M1との間で、掘削溝Tの外縁から第1計測点M1までの距離が計測点間距離Lmとなるように、防振構造物(図示では波型防振構造物4を例示)を構築している。計測点は、防振構造物から遠ざかる向きに、第1計測点M1に続いて計測点間距離Lmの間隔で第2計測点M2〜第5計測点M5の計5点である。地盤Gを伝播する振動は、波長の違いにより例えば震動源Pより離れた地点でより大きく計測される場合もあるため、防振構造物からの距離が異なる複数の地点の計測値を平均して、防振構造物を評価する。計測点間距離Lmは5m、震動源距離Lrは10mとした。このほか、図示は省略するが、二重波型防振構造物5、ハニカム型防振構造物6及び複合型防振構造物7も同様に試験場を構成する。
【0032】
震動源Pは、次の3種類を用いた。1つ目の震動源Pは、打撃ハンマーによる打撃である。具体的には、地表面に置いた水平打撃面に向けて75kgの鉄製塊状物を落下させ、地盤Gに鉛直荷重を与える場合と、地表面に下部を埋設した垂直打撃面に向けて75kgの鉄製塊状物を振り子のように打ち下ろし、地盤Gに水平荷重を当てる場合との2種類である。2つ目の震動源Pは、バックホーによる走行振動である。具体的には、0.25m3積クラス、重量約6.5tのバックホーを防振構造物と平行に5km/hで走行させ、震動源Pの地点を通過する瞬間を、バックホーによる走行振動とした。そして3つ目の震動源Pは、いわゆる「ランマー」と呼ばれる振動転圧機による振動である。
【0033】
防振効果は、防振構造物のない地盤Gを伝播して第1計測点M1〜第5計測点M5で計測される振動の大きさの平均値にdB換算値から、防振構造物を構築した場合の前記平均値のdB換算値を減算して求められる減衰量により評価した。減衰量が6dBであれば振動は約半分、減衰量が10dBであれば振動は約1/7となる。dB換算値は、第1計測点M1〜第5計測点で加速度計が計測した振動の加速度をdB換算して求めている。ここで、dB換算値は、第1計測点M1〜第5計測点で速度計が計測した振動の速度を微分して振動の加速とし、前記加速度をdB換算して算出してもよい。計測対象の振動は、第1計測点M1〜第5計測点M5における防振構造物に対する直交方向(後掲グラフにおける面内方向)、平行方向(後掲グラフにおける面外方向)及び鉛直方向のそれぞれを計測している。
【0034】
波型防振構造物4、二重波型防振構造物5,ハニカム型防振構造物6及び複合型防振構造物7について、上記各震動源Pについての防振効果を表すグラフを図15〜図18に示す。震動源Pの種類や計測対象となる振動の方向の違いによって防振効果の程度は異なるものの、図15〜図18に見られるように、波型防振構造物4、二重波型防振構造物5、ハニカム型防振構造物6及び複合型防振構造物7いずれの場合にも防振効果のあることが確認された。また、全体的な傾向として、弾性バッグ8が多いほど、また基本となる波型防振構造物4の数が多いほど、防振効果が高い。これから、設置コストや労力及び手間を考慮しなければ、可能な限り大型の防振構造物が好ましいと言える。
【0035】
ここで、二重波型防振構造物5に比べてハニカム型防振構造物6の防振効果は倍近いが、ハニカム型防振構造物6に比べて複合型防振構造物7の防振効果は2dB〜3dB程度の差しかない。この度の振動試験に用いた単位ブロック1は、1基当たりの設置時間は12分〜15分である。これから、複合型防振構造物7と防振効果に大きな差がなく、振動試験の例で言えば、むしろ基本となる波型防振構造物4が1列少なくて約1時間オーダで施工時間が短縮されるハニカム型防振構造物6が、最も費用対効果に優れた構成と考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明に基づく本例の単位ブロックを表す斜視図である。
【図2】本例の単位ブロックの接続関係を表す部分斜視図である。
【図3】本例の単位ブロックを平面視波形状に連結して構築した波型防振構造物の斜視図である。
【図4】波型防振構造物の図3中A−A断面図である。
【図5】波型防振構造物の平面図である。
【図6】別例の単位ブロックを平面視波形状に連結して構築した波型防振構造物の斜視図である。
【図7】更に別例の単位ブロックを平面視波形状に連結して構築した波型防振構造物の斜視図である。
【図8】本例の単位ブロックを二列の平面視波形状に連結して構築した二重波型防振構造物の斜視図である。
【図9】二重波型防振構造物の平面図である。
【図10】本例の単位ブロックを平面視ハニカム形状に連結して構築したハニカム型防振構造物の斜視図である。
【図11】ハニカム型防振構造物の平面図である。
【図12】本例の単位ブロックを平面視波形状及び平面視ハニカム形状にそれぞれ連結して構築した複合型防振構造物の斜視図である。
【図13】複合型防振構造物の平面図である。
【図14】試験場の構成を現す平面図である。
【図15】波型防振構造物の試験結果を表すグラフである。
【図16】二重波型防振構造物の試験結果を表すグラフである。
【図17】ハニカム型防振構造物の試験結果を表すグラフである。
【図18】複合型防振構造物の試験結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 単位ブロック
11 主垂直壁
12 副垂直壁
2 単位ブロック
21 垂直壁
3 単位ブロック
31 垂直壁
4 波型防振構造物
5 二重波型防振構造物
6 ハニカム型防振構造物
7 複合型防振構造物
8 弾性バッグ
G 地盤
S 間詰土砂
T 掘削溝
P 震動源
M1〜M5 第1計測点〜第5計測点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を媒体として伝播する振動を遮断又は低減する防振構造物を構成する単位ブロックであって、水平方向に屈曲関係で2枚以上の垂直壁を連ね、少なくとも2つの端部側面を形成してなり、端部側面に近接する垂直壁の上面又は側面のいずれか又は全部に連結手段を設けてなる防振構造物を構成する単位ブロック。
【請求項2】
単位ブロックは、水平方向に単位長である主垂直壁の両端部から、水平方向に単位長の半分である副垂直壁を前記主垂直壁に対して120度の開度で2枚ずつ突出させてなる請求項1記載の防振構造物を構成する単位ブロック。
【請求項3】
単位ブロックは、プレキャストコンクリートのブロックである請求項1又は2いずれか記載の防振構造物を構成する単位ブロック。
【請求項4】
単位ブロックは、鉄鋼スラグ又は高炉スラグの粉末や火力発電所から発生するフライアッシュのいずれか1種又は組み合わせからなる鉄鋼スラグ水和固化体のブロックである請求項1又は2いずれか記載の防振構造物を構成する単位ブロック。
【請求項5】
地盤を媒体として伝播する振動を遮断又は低減する防振構造物であって、地中に埋設する単位ブロックを水平方向に連結して構成され、単位ブロックは、水平方向に屈曲関係で2枚以上の垂直壁を連ね、少なくとも2つの端部側面を形成してなり、端部側面に近接する垂直壁の上面又は側面のいずれか又は全部に連結手段を設けてなる防振構造物。
【請求項6】
単位ブロックは、水平方向に単位長である主垂直壁の両端部から、水平方向に単位長の半分である副垂直壁を前記主垂直壁に対して120度の開度で2枚ずつ突出させてなる請求項5記載の防振構造物。
【請求項7】
単位ブロックは、主垂直壁に対して異なる側に突出した副垂直壁の端部側面を突き合わせ、平面視波形状に連結させる請求項6記載の防振構造物。
【請求項8】
単位ブロックは、主垂直壁に対して同じ側に突出した副垂直壁の端部側面を突き合わせ、平面視ハニカム形状に連結させる請求項6記載の防振構造物。
【請求項9】
単位ブロックの垂直壁の表面又は裏面の一方又は双方に添って、ゴムブロックを袋体に充填した弾性バッグを埋設した請求項5〜請求項8いずれか記載の防振構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−235689(P2009−235689A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80669(P2008−80669)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(501366720)
【出願人】(000211237)ランデス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】