説明

防水床スラブ、防水床スラブの製造方法、床スラブの防水方法

【課題】構造体としての機能と防水性能とを確保した上で、構成部材の使用量を減少させて、コストを抑えることができる防水床スラブおよび床スラブの防水方法を提供すること。
【解決手段】防水床スラブ1を、下層のコンクリート部材20と、下層のコンクリート部材20の上側となる上層のコンクリート部材30と、下層のコンクリート部材20と上層のコンクリート部材30の間に介在し、その表裏面に下層のコンクリート部材20及び上層のコンクリート部材30との付着強度を高めるための起毛11を有する防水シート10とを備え、下層のコンクリート部材20と上層のコンクリート部材30とは、床スラブの躯体として機能する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体としての機能と防水性能とを確保した上で、コストを抑えることができる防水床スラブ、このような防水床スラブの製造方法、床スラブの防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋上などの雨水に曝される床スラブを駐車場や歩行用として利用する場合には、鉄筋コンクリート製の床スラブの上に防水層を設け、この防水層の上に防水層を保護するためのアスファルト等の押えコンクリート層を設けた防水床スラブが採用されている(例えば、特許文献1参照)。このような防水床スラブによれば、床スラブと押えコンクリート層との間に防水層が設けられるため、押えコンクリート層に雨水等が降り注がれても、防水層によって床スラブ側へと浸水することを防止できる。
【特許文献1】特開平5−125801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような防水床スラブでは、床スラブと押えコンクリート層との間に介在する防水層によって、床スラブと押えコンクリート層とが縁切りされているため、押えコンクリート層は構造体として機能せず、あくまで、防水層を押さえるためのものとして機能する。このため、床スラブを支持する柱や梁では、床スラブの荷重に加えて、押えコンクリート層の荷重も考慮して設計とする必要があり、梁せいが大きくなる等してコスト高になるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、構造体としての機能と防水性能とを確保した上で、構成部材の使用量を減少させて、コストを抑えることができる防水床スラブ、このような防水床スラブの製造方法、床スラブの防水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防水床スラブは、防水加工が施された防水床スラブであって、下層のコンクリート部材と、この下層のコンクリート部材の上側となる上層のコンクリート部材と、前記下層のコンクリート部材と前記上層のコンクリート部材の間に介在し、表裏面に前記上層のコンクリート部材及び前記下層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートとを備え、前記下層のコンクリート部材と前記上層のコンクリート部材とは、床スラブの躯体であることを特徴とする。
【0006】
また、上記の防水床スラブにおいて、前記付着強度を高める手段として、前記防水シートの表裏面には起毛が形成され、前記起毛が前記上層のコンクリート部材及び下層のコンクリート部材に埋め込まれていてもよい。
【0007】
上記の防水床スラブによれば、防水シートが起毛を有することにより、防水シートと上層及び下層のコンクリートの間でせん断力を伝達できるので、上層及び下層のコンクリートが一体となって構造体として機能する。このため、防水スラブの厚さや防水スラブを支持するための梁の梁せい等をおさえることができ、コストの削減が可能になる。
【0008】
ここで、下層のコンクリート部材はその上部に、無機系の流動性硬化剤が硬化した固着層を備え、前記固着層は、その内部に前記起毛が侵入した状態で硬化してもよい。
【0009】
このように、下層のコンクリート部材と防水シートを親水性の流動性硬化剤で付着させる構成としたため、下層のコンクリート部材を構成するコンクリートが湿潤した状態であっても、親水性の流動性硬化剤を用いることができ、施工期間を短縮することができる。
また、上記の防水床スラブにおいて、前記付着強度を高める手段として、前記防水シートの表裏面には凹凸部が形成され、前記上層のコンクリート部材及び下層のコンクリート部材が前記防水シートの凹部に入り込むように形成されていてもよい。
【0010】
上記の防水床スラブによれば、防水シートの凹凸部が上層のコンクリート部材及び下層のコンクリート部材と嵌合することにより、せん断力を伝達することができるので、防水シートに起毛が形成された場合と同様に、コストの削減が可能になる。
【0011】
さらに、前記下層のコンクリート部材の下側にデッキスラブが設けられていていてもよい。また、前記下層のコンクリート部材が鉄筋コンクリート部材であるとともに、厚さ80mm未満であってもよい。また、前記デッキスラブの下面を覆うように耐火性材料からなる耐火層を備えてもよい。また、前記下層のコンクリート部材及び前記上層のコンクリート部材の少なくとも一方が鉄筋コンクリート部材であってもよい。
【0012】
また、前記防水床スラブは大梁又は小梁に支持されており、奥行き方向又は幅方向の少なくともいずれかの梁間内法長さが0.5m以上、かつ3.5m以下であってもよい。また、前記下層のコンクリート部材のみでは、躯体として機能しなくてもよい。また、前記上層のコンクリート部材が鉄筋コンクリート部材であってもよい。
【0013】
また、本発明は、防水加工が施された防水床スラブの製造方法であって、下層のコンクリート部材のコンクリートを打設し、その上面に、表裏面に前記下層のコンクリート部材とその上に設けられる上層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートを設置し、この防水シートの上に前記上層のコンクリート部材のコンクリートを打設することを特徴とする防水床スラブの製造方法を含むものとする。
【0014】
また、本発明は、床スラブの防水方法であって、前記床スラブを、下層のコンクリート部材と上層のコンクリート部材とに分割し、これら下層及び上層のコンクリート部材の間に、表裏面に前記下層及び上層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートを介在させることを特徴とする床スラブの防水方法を含むものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防水床スラブによれば、構造体としての機能及び防水性能を確保した上で、構造部材の使用量を低減し、コストを削減することができる。さらに、下層のコンクリート部材と防水シートの付着剤として親水性の流動性硬化剤を用いたため、施工期間の短縮ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の防水床スラブの第1実施形態について、図面に基づき説明する。図1は第1実施形態に係る防水床スラブ1を示す平面図である。防水床スラブ1は雨水に曝される建物の屋上スラブなどの床スラブとして用いられるものであり、駐車場の床スラブのように積載荷重を支持する躯体としての機能も備える床スラブである。図1に示すように、防水床スラブ1は平面視矩形状に形成され、柱4間の大梁2又は大梁2間にかけられた小梁3に支持されている。防水床スラブ1の奥行き方向又は幅方向の少なくともいずれかの、大梁2又は小梁3の内法長さが0.5m以上、かつ3.5m以下(本実施形態では300cm)となるように構築されている。
【0017】
図2は、図1における大梁と小梁とで囲まれた防水床スラブ1の縦断面図である。同図に示すように、防水床スラブ1は下層のコンクリート部材20と、上層のコンクリート部材30と、下層のコンクリート部材20及び上層のコンクリート部材30の間に設けられた防水シート10とで構成される。上層のコンクリート部材30は、コンクリート部材本体31と、その内部に埋設されたスラブ筋32とで構成される。また、下層のコンクリート部材20はコンクリート部材本体21と、その内部に埋設されたスラブ筋22と、コンクリート部材本体21の上部に設けられた固着層23とで構成されている。上層のコンクリート部材本体31及び下層のコンクリート部材本体21は、現場打ちの鉄筋コンクリートである。なお、上層のコンクリート部材30は、その厚さが4cm以上であることが望ましい。また、上層及び下層のコンクリート部材本体21、31に用いられるコンクリートは、その設計基準強度が21N/mm以上であることが望ましい。
【0018】
防水床スラブ1が屋上スラブとして用いられた場合、防水床スラブ1の上層のコンクリート部材30側が雨水等に曝され、その表面のひび割れ等から上層のコンクリート部材30に雨水が浸入しても、防水シート10により、この雨水が下層のコンクリート部材20へ浸水することを防止される。
なお、このような防水床スラブは、下層のコンクリート部材20のコンクリートを打設し、その上面に、防水シート10を設置し、この防水シート10の上に上層のコンクリート部材30を構成するコンクリートを打設することで構築できる。
【0019】
図3は、防水シート10の断面図である。同図に示すように防水シート10は、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂などの樹脂製のシート状部材であるシート部材本体12と、シート部材本体12の表裏面に形成された複数の起毛11とを備える。このような防水シート10としては、例えば、長谷川化学工業(株)のサンエーシート等を用いることができる。防水シート10に用いられたエチレン酢酸ビニル樹脂などの樹脂は伸縮性を備えている。このため、防水床スラブ1が変形を受けた場合には防水シート10は防水床スラブ1の変形に追従して伸縮することができるので、防水シート10が破損することを抑止できる。さらに、防水床スラブ1が曲げ変形を受けた場合には、防水シート10が防水床スラブ1の断面中央付近に埋設されているため、防水シート10に作用する曲げ応力は小さくなり、傷つきにくい。
【0020】
図2に戻って、下層のコンクリート部材20の固着層23は無機性の硬化性流動剤であるセメントペースト34が硬化したものである。このセメントペースト34は、防水シート10の表面の起毛11を隙間なく取り囲むように硬化している。このため、固着層23はその内部に埋設された起毛11を強固に固着することができる。また、これと同様に、上層のコンクリート部材30を構成するコンクリートは防水シート10の表面の起毛11の間に隙間なく取り囲むように硬化しており、上層のコンクリート部材30は起毛11を強固に固着することができる。このため、下層のコンクリート部材20と上層のコンクリート部材30とは、防水シート10を介してせん断力を互いに伝達することができる。 なお、上層のコンクリート部材30と防水シートとの界面における付着強度は0.4N/mm以上であることが望ましい。
【0021】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の防水床スラブについて説明する。
図4はデッキスラブ40を用いて構築した第2実施形態の防水床スラブ100を示す図であり、(A)は、スラブ筋を省略した場合を、(B)は下層のコンクリート部材にスラブ筋を設けた場合を示す。なお、図2と同様の構成部分には同一の符号を付している。また、デッキスラブ40を用いて床スラブを構築する方法は、デッキスラブ40が負担することができる引張り強度により梁間内法長さが決定されるため、幅方向又は奥行き方向の少なくともどちらか一方の梁間内法長さが0.5m以上、かつ3.5m程度以下の床スラブに適用されることが多い。
【0022】
図4(A)に示すように、防水床スラブ100は、デッキスラブ40と、下層のコンクリート部材20と、上層のコンクリート部材30と、下層のコンクリート部材20及び上層のコンクリート部材30の間に配置された防水シート10とを備える。また、防水床スラブ1と同様に、防水シート10として表裏面に起毛11を有するエチレン酢酸ビニル樹脂製のシート状部材が用いられている。下層のコンクリート部材20はコンクリート部材本体21及びその上部に設けられたセメントペースト34が固化した固着層23とで構成されている。また、上層のコンクリート部材30はコンクリート部材本体31とその上部に埋設されたメッシュ筋35とで構成されている。このメッシュ筋35は、コンクリート部材本体31の表面にひび割れが生じるのを防止するために設けられている。デッキスラブ40は鋼製の部材からなり、下層のコンクリート部材31生ずる引張り応力をスラブ筋32に変わって負担できる。このため、図4(A)に示すように、デッキスラブ40を用いた防水床スラブ100はスラブ筋を省略した構成とすることができる。
なお、図4(B)に示すように下層のコンクリート部材20にスラブ筋32を設ける構成としてもよい。図4(B)に示すように、下層のコンクリート部材20にスラブ筋32を設ける場合に、下層のコンクリート部材20のコンクリート厚さ(図4(B)参照)が80mmを超える場合には、文献( “スーパーEデッキ”、[online]、日鐵建材株式会社、[平成18年6月1日検索]、インターネット<http://www.n-kenzai.co.jp/product/a2/a2_1s.html>に記載されているように、下層のコンクリート部材20のみで躯体として機能するため、このような場合は本発明に含まれないものとし、図4(B)の構成でも下層のコンクリート部材20の厚さを80mm未満としている。
また、デッキスラブ40の下面を覆うように耐火層を設けてもよい。耐火層は、ロックウールやセラミック系材料からなる耐火被覆材を吹付ける方法、断熱性を有するALCなどの成形板を貼り付ける方法、発泡性耐火性塗料を塗布する方法、又は発泡性耐火シートを貼付する方法などにより形成することができる。デッキスラブ20の下面に耐火層を設けることにより、防水床スラブ100の耐火性能を向上することができる。
【0023】
次に、このような防水床スラブ100の施工手順について説明する。
まず、デッキスラブ40を配置し、このデッキスラブ40を型枠として利用し、防水シート10に相当する高さまで下層のコンクリート部材本体21を構成するコンクリートを打設する。次に、コンクリート部材本体21が硬化した後、この上面に固着層23を構成する流動性のあるセメントペースト34を所定の厚さ塗布する。セメントペースト34は無機性の流動性硬化剤であるため、コンクリート部材本体21を構成する現場打ちコンクリートの表面が湿潤していても表面の水分と分離することなく塗布することができる。次に、セメントペースト34が硬化する前に、セメントペースト34の上側に防水シート10を貼付する。この時、セメントペースト34は流動性を有しているため、防水シート10の起毛11の間の空隙に隙間なく入り込むことができる。セメントペースト34が硬化したのち、防水シート10上に上層のコンクリート部材本体31を構成するコンクリートを打設する。なお、メッシュ筋35は、上層のコンクリート部材本体31を構成するコンクリートを打設する前に、スペーサ等を用いて所定の高さに配置しておく。打設したコンクリートは、セメントペースト34の上側に防水シート10を貼付した場合と同様に、防水シート10の起毛11の空隙にコンクリートが隙間なく入り込む。そして、コンクリートを防水床スラブ100の表面に相当する高さまで打設し、このコンクリートが硬化することにより防水床スラブ100が構築される。
【0024】
ここで、防水床スラブ100に荷重が作用すると、上層及び下層のコンクリート部材20、30と防水シート10との間にはせん断力が作用する。このため上層及び下層のコンクリート部材20、30と防水シート10との間に十分なせん断強度が無ければ、上層と下層のコンクリート部材はせん断破壊を生じて肌別れしてしまい、積載荷重を十分支持することができない。
そこで、防水床スラブ100の接合面に作用するせん断応力を解析的に計算し、防水シート10とコンクリートの付着強度を試験により測定し、せん断応力と付着強度を比較することにより、防水床スラブ100が十分な耐力を有することを確認したので説明する。
【0025】
まず、解析の対象として想定した防水床スラブについて説明する。解析対象の防水床スラブはデッキプレートを用いた防水床スラブである。防水床スラブは一方向スラブであり、内法スパンは3[m]である。スラブ厚はデッキプレートの凹凸部の上面より80[mm]の厚さとし、防水シートは防水床スラブの上面より50mm下方の高さに配置する。デッキスラブは日鐵建材工業株式会社製のスーパーEデッキ(EZ−75−1.2)を想定しており、計算に必要なデッキスラブの値は日鐵建材工業株式会社のスーパーEデッキのカタログに記載されている性能表示の値を用いる。上端筋として、φ6―150のメッシュ筋を配置し、コンクリートの設計基準強度は21[N/mm]とする。
【0026】
まず、この防水床スラブの上層及び下層のコンクリート部材と防水シートとの境界面に作用するせん断応力について算出する。
設計荷重は以下のように想定した。内法スパン長3[m]の一方向スラブの単位長さ1[m]に作用する設計荷重は固定荷重と積載荷重の和となる。固定荷重は単位面積あたりのコンクリートの荷重とデッキプレートの荷重との和の300[kg/m]であり、積載荷重は500[kg/m]であるので、設計荷重は和の800[kg/m]である。
内法スパン3[m]に設計荷重800[kg/m]が作用した時に接合面に作用するせん断応力をT[kg/cm]とすると、以下の式(1)で表される。ここで、せん断力をV[kg]、断面二次モーメントをI[cm]、断面一次モーメントをS[cm]、単位幅をB(=1)[m]としている。
T=V×S/(I×B) …(1)
【0027】
ここで、防水床スラブに作用するせん断力V=3[m]×1[m]×800[kg/m]×1/2=1200[kg]、全断面有効な場合の断面二次モーメントI=29、000[cm](日鐵建材工業のスーパーEデッキカタログより)、中立軸位置(コンクリート上面からの距離)Xn=7.37[cm](日鐵建材工業のスーパーEデッキカタログより)であるので、断面一次モーメントS=(7.37−5.0/2)×5×100=2435[cm]となり、単位長さあたりのせん断応力T[kg/cm]は以下の式(2)に示す値となる。
T=V×S/(I×B)=1200×2435/(29000×100)=1.01[kg/cm] …(2)
【0028】
このことから、下層の及び上層のコンクリート部材と防水シート10との接合面におけるせん断強度が、式(2)により得られたせん断応力1.01[kg/cm]以上となれば、防水床スラブはその固定荷重及び積載荷重に対する耐力を有することになる。
【0029】
ここで、付着強度を調べることにより、せん断強度はこの付着強度以上の値であると推定することができる。そこで、エチレン酢酸ビニル樹脂シート及びコンクリートの境界面のせん断強度を推定するために、付着強度を調べるために付着強度試験を行ったので説明する。
【0030】
本試験では、防水床スラブを模した構造体を作成し、この構造体から直径49[mm]の円筒形の試験体(付着面積1885.7[mm])を3体抜き取り、付着強度試験を行った。
【0031】
図5は、試験体が負担することができた最大荷重及び最大荷重より算出した付着強度を示す表である。同図に示すように、試験体1〜3が負担することができた最大荷重は170[kg]程度であり、ばらつきの少ない結果となった。上記の試験体1〜3の最大荷重を付着面積で割ることにより得られた付着強度の平均は9.08[kg/cm]であった。
【0032】
ここで、上記したように一般にせん断強度は付着強度よりも大きい。したがって、以上の結果より、せん断強度は付着強度9.08[kg/cm]以上となることが推定できる。ここで、防水シートと上層及び下層のコンクリート部材に作用するせん断力は式(2)に示すように、1.01[kg/cm]であるので、防水シートと上層及び下層のコンクリート部材の間のせん断強度は作用するせん断力の9倍程度であると推定できる。このように、防水シートとコンクリートとの接合面は安全率を考慮しても、十分なせん断強度を備えており、防水床スラブは躯体として荷重を支持することができる。
【0033】
以下、本実施形態の防水床スラブが構造体としての機能を有することを実験により確認したので、以下説明する。
<実験1>
本実験では、幅60cm、スパン長さ(試験体の両端に位置する支持部材間の距離)300cmの上記第2実施形態で説明したデッキプレートを用いた防水床スラブを試験体として用い、単純支持三等分載荷により載荷を行い、載荷荷重と試験体中央の撓みとの関係を調べた。
【0034】
本実験に用いた試験体は以下の通りである。試験体NO.1は、本発明の第2実施形態で説明した防水床スラブに相当するものであり、上層及び下層のコンクリートの間に防水シートを設けた。これに対し、試験体NO.2には、防水シートを設けず、上層及び下層のコンクリートを一体打ちとした。また、試験体NO.3には、防水シートを設け、両端の支持部材付近に後述するスタッドを設けた。また、試験体NO.4には、防水シートを設け、両端の支持部材付近にスタッドを設け、さらに、防水シートと上層及び下層のコンクリートとの付着力を無くすための剥離材を塗布した。
【0035】
試験体の詳細な構成は、以下の通りである。
図6は、本実験で用いた防水床スラブを模した試験体200の一例(試験体NO.2)を示す図である。デッキプレート40には日鐵建材工業株式会社のスーパーEデッキ(EZ75−1.2、厚さ80mm)を用いた。下層のコンクリート30はデッキプレートの天端より30mmの厚さとし、上層のコンクリート20は50mmの厚さとした。また、上層のコンクリート20には、上端筋として縦横150mm間隔、鉄筋径6mmの溶接金網(いわゆるメッシュ筋)35を防水床スラブ200上面より20mmの深さに埋設した。コンクリートは先打ち(下層の)コンクリート30、後打ち(上層の)コンクリート20ともに呼び強度21N/mmのコンクリートを用いた。
【0036】
試験体NO.1、NO.3、NO.4の防水シート10には、長谷川化学工業(株)のサンエーシートの厚さ5mmのものを用いた。このサンエーシートは、表裏面に起毛を有するエチレン酢酸ビニル樹脂からなるシート部材であり、上層及び下層のコンクリート20、30は、その内部に防水シート10の表裏面に設けられた起毛が入り込んだ状態で硬化している。
【0037】
また、図6に示すように試験体NO.3及びNO.4には、両端に位置する支持部材220付近に、防水シート10の上下面から突出し、上層及び下層のコンクリート20,30を跨ぐようにスタッド210が埋設されている。このスタッド210は、上層又は下層のコンクリート20,30と防水シート10との間で十分にせん断力が伝達されないような場合に、上層及び下層のコンクリート20,30の間でせん断力を伝達する。
夫々の試験体に単純支持三等分載荷により載荷を行い、載荷荷重と試験体中央の撓みとの関係を調べた。
【0038】
ここで、構造計算により、単純支持三等分載荷による設計荷重時の荷重PP、デッキプレートが降伏曲げモーメントに達する時の荷重Py、ひび割れ時の荷重Pcrを算出する。
単純支持三等分載荷によるスパン中央部の曲げモーメントMppは、スパン長をL、単位長さあたりの設計荷重時の荷重をPPとすると、Mpp=1/6×PP×Lとなる。よって、本実験の試験体200ではスパン長L=3mであるので、設計荷重時の荷重PP=Mpp×2となる。設計用積載荷重wp=5kN/m(=500kgf/m)とすると、単位長さ1mあたりの中央曲げモーメントは、Mp=1/8×wp×L=1/8×5×3=5.62kN・mである。よって、設計用積載荷重作用時の単位幅あたりの曲げモーメントに相当するPP´=5.62×2=11.24KN・mである。本実験では、試験体の幅を0.6mとしているので、設計荷重時の荷重PPは以下の式(3)で算出される。
PP=11.24KN×0.6=6.74KN …(3)
【0039】
なお、自重wdによる単位幅あたりの曲げモーメントMwは、厚さ12cmとすると、以下の式(4)により算出される。
Mw=1/8×wd×L=1/8×2.88×3=3.24KN・m …(4)
よって、単位幅あたりの設計用曲げモーメントは以下の式(5)により算出される。
Md=Mp+Mw=5.62+3.24=8.86KN・m …(5)
【0040】
次に、デッキプレートの降伏曲げモーメントを算出する。なお、デッキプレートに関する材料定数は、デッキプレートとして用いた日鐵建材株式会社のスーパーEデッキの技術資料に記載されている値及びJIS規格の値を用いている。
単位幅あたりのデッキプレートの降伏曲げモーメントは、デッキプレート側の断面係数が18700/{15×(7.5+8.0−5.71)}=127cm/mであるので、以下の式(6)により算出される。
My=127cm×295N/mm=37.47kN・m …(6)
ただし、デッキプレートに使用した材料定数は、JIS規格の値を用いて、降伏点を295N/mm、引張強さを400N/mmとした。
【0041】
また、デッキプレートの引張り強度に基づく最大曲げモーメントは、以下の式(7)により算出される。
=cZt×F=127cm×400N/mm=5080kN・cm
=50.8kN・m …(7)
【0042】
自重によるモーメントは、式(4)よりMw=3.24kN・mであるため、単位幅あたりのデッキプレートの降伏曲げ荷重時の載荷荷重(以下、降伏荷重という)Py´=(37.47−3.24)×2=68.46KNとなる。試験体の幅は0.6mであるため、試験体への降伏荷重は次式の式(8)により算出される。
Py=0.6×68.46=41.08kN …(8)
【0043】
同様に、単位幅あたりのデッキプレートの引張り強度に基づく最大曲げ荷重時の終局荷重P´=(50.8−3.24)×2=95.12kNとなる。試験体の幅は0.6mであるため、デッキプレートの引張り強度に基づく試験体への終局荷重Pは以下の式(9)により算出される。
=0.6×95.12=57.1kN …(9)
【0044】
また、試験体のひび割れ載荷荷重Pcrは以下の通りである。
曲げひび割れモーメントMcrは、断面係数Z=I/(15.5−Xn)=29000/(15.5−7.37)=3567cmであるため、コンクリートの曲げ強度を27.9kgf/cmとすると、Mcr=Z×σcr=3567000mm×2.79N/mm=9951930N・mm=9.95kN・mとなる。よって、単位幅あたりの曲げひび割れ荷重時のひび割れ載荷荷重Pcr´=(9.95−3.24)×2=13.42kNとなる。試験体の幅は0.6mであるため、試験体のひび割れ載荷荷重Pcrは以下の式(10)により算出される。
Pcr=0.6×13.42=8.05kN …(10)
【0045】
試験体NO.1〜4に対して、単純支持三等分載荷により最大たわみが50mmに達するまで載荷を行い、荷重とたわみの関係を調べた。また、実験により得られた終局荷重を上記の構造計算により算出した計算値と比較した。
【0046】
以下、実験結果を説明する。
図7は、各試験体の荷重―たわみ曲線を示すグラフである。また、図8は、試験体NO.1〜4の最大たわみ50mmに達するまでの最大荷重と、この最大荷重の計算値に対する比とを示す表である。図7に示すように、試験体NO.1〜3では、60kN程度以下まで荷重の増加にともないたわみが増加し、60kN程度に達すると、急激に荷重が低下した。これはデッキプレートと下層のコンクリートとの界面でずれ変形を生じたためである。
【0047】
また、図8に示すように、試験体NO.1〜4の最大たわみ50mmに達するまでの最大荷重は、夫々、63.54kN、61kN、62.6kN、45.6kNとなった。このように、本実施形態の防水床スラブに相当する試験体NO.1は、構造計算より算出された降伏荷重及び試験体NO.2に比べて、同等またはそれ以上の曲げ性能を有することが確認された。
【0048】
なお、試験体NO.4は、防水シートと上層及び下層のコンクリートとの間で十分にせん断力が伝達されないため、最大荷重は他の試験体に比べて低い値となっている。しかし、そのたわみ量は、設計荷重5KN/mmの場合(対応する3等分荷重でPP=6.75KN)で1.2mm程度であり、特に問題となるような大きなたわみではなかった。また、最大荷重は45.6kNであり、設計荷重時の載荷荷重PPの6倍以上の耐力を有していた。このことから、本実験で試験体として用いた試験体NO.1〜4の防水床スラブに設計用曲げモーメント以下の曲げモーメントが作用しても、防水床スラブには大変形が生じず、使用上問題がないことがわかる。
【0049】
試験体NO.3と試験体NO.4とを比較すると、試験体NO.3に比べて試験体NO.4は、最大荷重が低下していることがわかる。これは、試験体NO.4は剥離材を防水シート表裏面に塗布しているため、起毛によるせん断応力の伝達が十分に行われず、防水シートとコンクリートの界面にずれを生じてしまったためである。このことから、防水シート表裏面の起毛が上層及び下層のコンクリートに入り込んだ状態で、上層及び下層のコンクリートが硬化することで、防水シートと上層及び下層のコンクリートの間でせん断力の伝達が起こり、防水床スラブの強度が向上されることが確認された。
【0050】
また、試験体NO.1と試験体NO.2を比較すると、試験体NO.1の終局荷重が63.54kNであるのに対し、試験体NO.2の終局荷重は61kNと略同じ値となっている。また、荷重―たわみ曲線を見ても、その形状は略等しい。このことから、本実施形態の表裏面に起毛を有する防水シートを設けた防水床スラブによれば、防水シートを設けていない一体打ちのコンクリートスラブと同程度の強度を有することが確認された。
【0051】
以上の実験により、防水シートであるエチレン酢酸ビニル樹脂の表裏面の起毛により、上層及び下層のコンクリート部材との付着強度が向上し、上層及び下層のコンクリート部材と防水シートとの間でせん断応力を伝達され、一体打ちのコンクリートスラブと同等の耐力が確保されていることが確認された。
【0052】
<実験2>
次に、本実施形態の防水床スラブは、実際の建築物では、単体で用いられることは少なく、複数スパンの防水床スラブを連結して用いられる。そこで、防水床スラブを長手方向に2スパン連結した連続スラブを試験体として用いて載荷試験を行った。本実験では、デッキプレート40を用いた単位幅60cm、スパン長さ(試験体の支持部材間の距離)300cm、2スパン分の防水床スラブを試験体として用いた。なお、試験体の構成は実験1において用いた試験体と同じため、詳しい説明は省略する。
【0053】
試験体NO.5〜7の条件は、夫々以下の通りである。試験体NO.5は、本発明の第2実施形態で説明した防水床スラブに相当し、防水シートを設け、スタッドを設けていない。これに対し、試験体NO.6は、防水シートを設けずに上層及び下層のコンクリートを一体打ちとした。また、試験体NO.7は、防水シートを設け、夫々のスパンの支持部材付近にスタッドを設けた。なお、試験体NO.5〜7の条件は、実験1における試験体NO.1〜3の条件と等しい。
【0054】
図9は、本実験で用いた連続スラブの一例(後述する試験体NO.7)を示す図である。同図に示すように、試験体300の両端部及び中央部を下方より支持した状態で、夫々のスパンのスパン長さを3等分するような点(図中矢印で示す各支持部材320より1000mmの点)において、スパン中央のたわみが30mmに達するまで載荷した。
【0055】
図10は、各試験体の荷重―たわみ曲線を示すグラフである。また、図11は、本実験の各試験体NO.5〜7の終局荷重及びこの終局荷重と実験1において得られた単純支持の場合の終局荷重との比を示す表である。なお、本試験における夫々の載荷荷重の合計の最大値は、試験体NO.5は159.8kN、試験体NO.6は147.0kN、試験体NO.7は168.3kNであったが、実験1に合わせて個々のスラブの荷重値として、合計値の半分の値を用いて比較している。
【0056】
図11に示すように、夫々のスラブの荷重値は、実験1の単純支持の場合と比べて2割〜3割の増加している。このことから、本実施形態の防水床スラブは、連続スラブとして用いた場合にも、単純支持の場合と同等又はそれ以上の曲げ耐力を有することがわかる。また、図10及び図11に示すように、防水シートを設けた試験体NO.5、NO.7は、スタッドの有無に係わらず、防水シートを設けていない試験体NO.6以上の曲げ耐力を有することがわかる。このことから、本実施形態の防水床スラブは、連続スラブとして用いた場合にも、防水シートを設けていない床スラブと同等の曲げ耐力を有することがわかる。
【0057】
以上説明したように、本実験により本実施形態の防水床スラブは、連続スラブとして用いた場合においても、防水シートを設けていない床スラブと同等の耐力を有することが確認された。
【0058】
<実験3>
次に、本実施形態の防水床スラブは屋上等の駐車場の床スラブとして用いられることが多く、長期間に亘って積載荷重が作用されることが予想されるため、長期間に亘って継続的に荷重を作用させた場合のたわみ量を実験により測定したので以下説明する。
【0059】
本実験に用いた試験体NO.8〜10は、実験1で用いた試験体NO.1〜3と同じ構成であるため詳しい説明は省略する。試験体NO.8〜10の条件は、以下の通りである。試験体NO.8は、本発明の第2実施形態の防水床スラブに相当し、防水シートを設け、スタッドを設けていない。これに対し、試験体NO.9は、防水シートを設けず、上層及び下層のコンクリートを一体打ちとした。試験体NO.10は、防水シートを設け、スタッドを設けた。
【0060】
各試験体に対し、試験体の中央部で設計用曲げモーメントMdの1.2倍以上となるように単純支持三等分載荷により長期載荷荷重を作用させる。スラブ中央部で設計用曲げモーメントMdの1.2倍の曲げモーメントが作用するために加えなければならない曲げモーメントは以下の式(10)により算出される。
Mp=1.2Md−Mw=10.632−3.24=7.392kN・m …(10)
【0061】
よって、単位幅1mあたりの載荷荷重は、P´=6×Mp/L=6×7.392/3=14.784kNとなる。試験体の幅は0.6mであるため、試験体に作用させる載荷荷重P=0.6×P=0.6×14.784=8.87kN以上であればよい。本実験では、この条件を満たすP=8.96kNの載荷荷重を1ヶ月に亘って作用させ、スパン中央のたわみを測定した。
【0062】
図12は、各試験体の載荷日数とたわみの関係を示すグラフである。同図に示すように、防水シートを設けていない試験体NO.9では、1ヶ月経過時のたわみが初期たわみの3倍程度であるが、試験体NO.8及び試験体NO.10では、1ヶ月経過時のたわみが初期たわみの4倍程度まで増加している。しかし、たわみ量そのものは小さく、実用上の上限値である10mmを下回っている。このように、本実験により、本実施形態の防水床スラブは長期荷重に対する十分な耐性を有することが確認された。
【0063】
以上のように、本実施形態の防水床スラブによれば、表裏面に起毛を有するエチレン酢酸ビニル樹脂からなるシート部材を防水シートとして用いることで、防水シートと上層及び下層のコンクリート部材との付着強度が向上し、上層及び下層のコンクリート部材と防水シートとの間でせん断応力を伝達することができる。このため、上層及び下層のコンクリート部材が一体となって構造体として積載荷重及び固定荷重を負担するので、防水床スラブの厚さやそれを支持する梁の梁せい等を抑えることができコストを削減することができる。
【0064】
また、上層及び下層のコンクリート部材との間に防水シートを埋設する構成としたので、上層のコンクリート部材が防水シートを保護し、防水シートの暴露による劣化を抑えることができる。
【0065】
さらに、これまで下層のコンクリートが十分乾燥していないと、防水層が膨れるなどの問題があったため、下層のコンクリートの硬化後、養生期間として例えば3〜4週間以上必要であったが、下層のコンクリートに防水シートを固着するためにセメントペーストを使用するので、下層のコンクリート打設後、例えば4〜5日程度でコンクリートの含有率が高い状態でもセメントペーストを塗布することができ、施工期間を短縮することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、本実施形態では防水シートとして、例えばエチレン酢酸ビニル樹脂製のシート部材を用いたが、これに限らず、界面付着力が確保でき、合成高分子系ルーフィングシートのような伸縮可能でひび割れ追従性を有するシート部材であればよい。
【0067】
また、本実施形態では上層及び下層のコンクリートと防水シートとのせん断力を伝達するために、防水シートの表裏面に起毛を設ける構成としたが、これに限らず、例えばその表面にエンボス加工(凹凸部を設ける加工)等が施された防水シートを用い、上層及び下層のコンクリート部材が凹部に入り込むように形成してもよい。このような構成によれば、凹凸部によりせん断強度を伝達できるので同様の効果が得られる。
【0068】
また、下層のコンクリートと防水シートとを接着させるため、セメントペーストを使用したが、これに限らず、例えば、ポリマーセメント、モルタルなどのような無機系の硬化性流動剤であればよい。
また、コンクリートも一般のコンクリートに限られず、SFRC(鋼繊維補強コンクリート)を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係る防水床スラブを示す平面図である。
【図2】図1における大梁と小梁とで囲まれた防水床スラブの縦断面図である。
【図3】防水層として用いられる防水シートの断面図である。
【図4】デッキスラブを用いて構成した防水床スラブを示す図であり、(A)はスラブ筋を省略した場合、(B)はスラブ筋を設けた場合を示す。
【図5】試験体が負担することができた最大荷重及び最大荷重より算出した付着強度を示す表である。
【図6】実験1で用いた試験体の一例(試験体NO.2)を示す図である。
【図7】実験1の各試験体の荷重―たわみ曲線を示す図である。
【図8】実験1の試験体の最大荷重及び最大荷重の計算値に対する比を示す表である。
【図9】実験2で用いた試験体の一例(試験体NO.6)を示す図である。
【図10】実験2の各試験体の荷重―たわみ曲線を示すグラフである。
【図11】実験2の試験体NO.5〜7の終局荷重及びこの終局荷重と実験1において得られた単純支持の場合の終局荷重との比を示す表である。
【図12】実験3の各試験体の経過日数とたわみ量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 防水床スラブ 2 大梁
3 小梁 4 柱
10 防水シート 11 起毛
12 シート状部材本体 20 下層のコンクリート部材
21 (下層の)コンクリート部材本体 22 (下層の)スラブ筋
23 固着層 30 上層のコンクリート部材
31 (上層の)コンクリート部材本体 32 (上層の)スラブ筋
34 セメントペースト 35 メッシュ筋
40 デッキスラブ 100 防水床スラブ
200 試験体(防水床スラブ) 210 スタッド
220 支持部材 300 試験体(防水床スラブ)
310 スタッド 320 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水加工が施された防水床スラブであって、
下層のコンクリート部材と、
この下層のコンクリート部材の上側となる上層のコンクリート部材と、
前記下層のコンクリート部材と前記上層のコンクリート部材の間に介在し、表裏面に前記下層のコンクリート部材及び前記上層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートとを備え、
前記下層のコンクリート部材と前記上層のコンクリート部材とは、床スラブの躯体であることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項2】
請求項1記載の防水床スラブであって、
前記付着強度を高める手段として、
前記防水シートの表裏面には起毛が形成され、
前記起毛が前記上層のコンクリート部材及び下層のコンクリート部材に埋め込まれていることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項3】
請求項2記載の防水床スラブであって、
下層のコンクリート部材はその上部に、
無機系の流動性硬化剤が硬化した固着層を備え、
前記固着層は、その内部に前記起毛が侵入した状態で硬化したことを特徴とする防水床スラブ。
【請求項4】
請求項1記載の防水床スラブであって、
前記付着強度を高める手段として、
前記防水シートの表裏面には凹凸部が形成され、
前記上層のコンクリート部材及び下層のコンクリート部材が前記防水シートの凹部に入り込むように形成されたことを特徴とする防水床スラブ。
【請求項5】
請求項1から4いずれか記載の防水床スラブであって、
前記下層のコンクリート部材の下側にデッキスラブを備えることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項6】
請求項5記載の防水床スラブであって、
前記下層のコンクリート部材が鉄筋コンクリート部材であるとともに、厚さ80mm未満であることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項7】
請求項5又は6記載の防水床スラブであって、
前記デッキスラブの下面を覆うように耐火性材料からなる耐火層を設けられていることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項8】
請求項1から5いずれか記載の防水床スラブであって、
前記下層のコンクリート部材及び前記上層のコンクリート部材の少なくとも一方が鉄筋コンクリート部材であることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項9】
請求項1から8いずれか記載の防水床スラブであって、
前記防水床スラブは大梁又は小梁に支持されており、奥行き方向又は幅方向の少なくともいずれかの梁間内法長さが0.5m以上、かつ3.5m以下であることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項10】
請求項1から9いずれか記載の防水床スラブであって、
前記下層のコンクリート部材のみでは、躯体として機能しないことを特徴とする防水床スラブ。
【請求項11】
請求項1から10いずれか記載の防水床スラブであって、
前記上層のコンクリート部材が鉄筋コンクリート部材であることを特徴とする防水床スラブ。
【請求項12】
防水加工が施された防水床スラブの製造方法であって、
下層のコンクリート部材のコンクリートを打設し、その上面に、表裏面に前記下層のコンクリート部材とその上に設けられる上層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートを設置し、この防水シートの上に前記上層のコンクリート部材のコンクリートを打設することを特徴とする防水床スラブの製造方法。
【請求項13】
床スラブの防水方法であって、前記床スラブを、下層のコンクリート部材と上層のコンクリート部材とに分割し、これら下層及び上層のコンクリート部材の間に、表裏面に前記下層及び上層のコンクリート部材との付着強度を高める手段を有する防水シートを介在させることを特徴とする床スラブの防水方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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