説明

防水用ブッシング

【課題】 異なる板厚を有する隔壁に形成された開口に防水性を保って装着する出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】 隔壁の内外を連通させる開口を挿通されるワイヤーハーネスに嵌着されて上記開口を防水する防水用ブッシング1であって、ワイヤーハーネスを嵌挿させる嵌挿孔5が貫設されると共に外周面に形成された嵌合溝4を挟んで第1の部分2と第2の部分3とが一体に形成され、上記嵌合溝は、上記第1の部分に沿って形成された平面部41と該平面部の奥から上記第2の部分へ行くに従って外方へ変位していく傾斜面部42とを備え、上記第1の部分の外周部には上記第2の部分の方へ突出した薄肉のリップ部21が全周に亘って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な防水用ブッシングに関する。詳しくは、異なる板厚を有する隔壁に形成された開口に防水性を保って装着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車輌用灯具の車体への装着に際して、車輌用灯具の光源への電力供給のためのワイヤーハーネスを車体に搭載された電源部へと接続しなければならず、そのために、上記ワイヤーハーネスを車体外板を通して車体内部へと引き込む必要がある。
【0003】
上記したように、ワイヤーハーネスを車体内側に引き込むための開口を車体外板に設けると、該開口から雨水、路上の溜まり水の跳ね上げ水等が車体内部に入り込む惧がある。そこで一般に、上記開口に防水用ブッシングを装着し、ワイヤーハーネスを該防水用ブッシングを通して車体内部へと引き込むようにしている。
【0004】
上記したような防水用ブッシングの一例が特許文献1に示されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭61−124921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1に示された防水用ブッシングにあっては、断面形状が矩形をした嵌着溝に開口縁を嵌着して取り付けるものであるので、開口縁に立ち上げ壁を形成して該立ち上げ壁の幅を上記嵌着溝の幅に合わせなければ防水性を保った状態で装着することが出来ない。そのため、特定の場所に専用の防水用ブッシングとならざるを得ず、ある範囲内であっても開口が形成される隔壁の板厚が異なる複数の場所には使用することが出来ないと言う不便があった。
【0007】
また、特許文献1に示された防水用ブッシングにあっては、それを軸方向に貫通して形成されたコード挿入孔がほぼ一様の径を以て形成されているため、椀状に形成された部分の肉厚が嵌着溝に近づくに従って厚くなり、該椀状の部分を開口から引き込んで開口縁に嵌着溝を嵌着するのにかなり大きな力を必要とし、作業性が良くないと言う問題があった。
【0008】
本発明は、上記した問題に鑑みて為されたものであり、異なる板厚を有する隔壁に形成された開口に防水性を保って装着出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明防水用ブッシングは、上記した課題を解決するために、嵌合溝を挟んで第1の部分と第2の部分とが一体に形成され、上記嵌合溝は、上記第1の部分に沿って形成された平面部と該平面部の奥から上記第2の部分へ行くに従って外方へ変位していく傾斜面部とを備え、上記第1の部分の外周部には上記第2の部分の方へ突出した薄肉のリップ部が全周に亘って形成されている。
【0010】
従って、本発明防水用ブッシングにあっては、板厚が異なる隔壁に形成された開口に確実に嵌合する。
【発明の効果】
【0011】
本発明防水用ブッシングは、 隔壁の内外を連通させる開口を挿通されるワイヤーハーネスに嵌着されて上記開口を防水する防水用ブッシングであって、ワイヤーハーネスを嵌挿させる嵌挿孔が貫設されると共に外周面に形成された嵌合溝を挟んで第1の部分と第2の部分とが一体に形成され、上記嵌合溝は、上記第1の部分に沿って形成された平面部と該平面部の奥から上記第2の部分へ行くに従って外方へ変位していく傾斜面部とを備え、上記第1の部分の外周部には上記第2の部分の方へ突出した薄肉のリップ部が全周に亘って形成されていることを特徴とする。
【0012】
従って、本発明防水用ブッシングにあっては、嵌合溝が平面部と傾斜面部とによって形成されているので、異なる板厚の隔壁に形成された開口に装着してガタつくことがない。また、開口の開口縁は傾斜面部によって第1の部分の方へ寄せられるので、第1の部分の外周部に形成されたリップ部が確実に隔壁面と接触し、該第1の部分の外周部と隔壁との間の防水が図られる。
【0013】
請求項2に記載した発明にあっては、上記平面部と傾斜面部との間に軸方向に沿う微小な垂直平面部が形成されているので、比較的薄手の隔壁に形成された開口の開口縁は微小な垂直平面部に密着する。
【0014】
請求項3に記載した発明にあっては、上記第1の部分は軸方向に厚肉な平板状を成し、上記第2の部分は第1の部分から遠離るに従って外径が小さくなるテーパー部を備え、該テーパー部は薄肉に形成されているので、第2の部分のテーパー部は変形が容易であり、従って、第2の部分の端部から開口に挿通させるようにすると、テーパー部が変形することによって、大きな力を要せずして、第2の部分に開口を通り抜けさせることが出来、防水用ブッシングを開口に装着するための作業性が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明防水用ブッシングを実施するための最良の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
防水用ブッシング1はゴム状弾性を有する材料、例えば、合成ゴムによって形成されている。
【0017】
防水用ブッシング1は第1の部分2と第2の部分3とが一体に形成されて成り、第1の部分2と第2の部分3との間の外周面には嵌合溝4が形成されている。そして、第1の部分2はやや厚手の平板状に形成され、第2の部分3は第1の部分から遠離るに従って外径が小さくなるテーパー部31を備え、該テーパー部31に連続して短い筒状部32が一体に形成されている。
【0018】
上記第1の部分2及び第2の部分3を貫通して嵌挿孔5が形成されており、第2の部分3は薄肉でほぼ一様の肉厚を有するように形成されている。
【0019】
上記第1の部分2は第2の部分3の最も大きな外径を有する部分よりさらに大きな外径を有する。そして、第1の部分2の外周部には第2の部分3の方へ突出したリップ部21が全周に亘って形成されている。上記リップ部21は横断面形状で直角な頂角が第1の部分2の外端部に位置したほぼ直角二等辺三角形状をしている。
【0020】
上記嵌合溝4は、上記第1の部分2に沿って形成された平面部41と該平面部41の奥から上記第2の部分3へ行くに従って外方へ変位していく傾斜面部42とを備え、上記平面部41と傾斜面部42との間に軸方向に沿う微小な垂直平面部43が形成されている。
【0021】
上記した防水用ブッシング1は、その嵌挿孔5に図示しないワイヤーハーネスを嵌挿した状態で、図示しない隔壁、例えば、自動車の車体外板に形成された開口に第2の部分3の筒状部32、テーパー部31の順に挿通していく。そして、テーパー部31の外周面が開口の縁に当接すると、薄肉に形成されているテーパー部31は開口を通過できるように容易に変形する。これによって、大きな力を要すること無しに、第2の部分3が開口を通過し、該開口の縁に嵌合溝4の部分で嵌合する。
【0022】
そして、嵌合溝4は平面部41と傾斜面部42とによって形成されているので、異なる板厚の隔壁に形成された開口に装着してガタつくことがない。また、開口の開口縁は傾斜面部42によって第1の部分2の方へ寄せられるので、開口への装着時の作業性が向上すると共に第1の部分2の外周部に形成されたリップ部21が確実に隔壁面と接触し、該第1の部分2の外周部と隔壁との間の防水が図られる。また、上記平面部41と傾斜面部42との間に軸方向に沿う微小な垂直平面部43が形成されているので、比較的薄手の隔壁に形成された開口の開口縁は微小な垂直平面部に密着する。
【0023】
例えば、嵌合溝4の幅aを2.8mm、傾斜面部42の溝奥からの突出量bを2.0mm、垂直平面部43の幅cを0.8mm、リップ部21の突出量dを1.0mmに構成した場合、開口が形成された隔壁の厚さが0.8mm〜1.2mmの範囲のものに適合することが出来、確実な水密性を以てワイヤーハーネスを隔壁の開口に挿通することが出来た。また、テーパー部31の肉厚eを約1.5mmとした場合、開口への嵌合が極めて容易であった。
【0024】
図3は車輌用灯具の光源への給電用ワイヤーハーネスの引き回しに本発明にかかる防水用ブッシング1を使用した使用例を示すものである。
【0025】
車輌用灯具10は車体20に形成された凹部21内に位置するようにボルト締め等の適宜の取付手段によって車体20に取り付けられている。車輌用灯具10のボディ11には互いに仕切られた2つの灯室12a、12bが形成され、これら灯室12a、12bの前面を覆うようにレンズ(透明カバー)13がボディ11に取り付けられている。上記各灯室12a、12bには光源用バルブ14a、14bが配置されており、これら光源用バルブ14a、14bへの給電用コードが一纏めにされたワイヤーハーネス15が防水用ブッシング1を挿通された状態で車体20に形成された開口22を挿通されて車体20内へと引込まれている。この使用例において、車体20に形成された開口22の防水性は防水用ブッシング1によって充分に保持され、また、防水用ブッシング1の筒状部32がワイヤーハーネス15の外周面に密着することによって、ワイヤーハーネス15と防水用ブッシング1との間の防水性も充分に保持される。
【0026】
なお、上記した実施に形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
厚さの異なる隔壁に形成された開口にワイヤーハーネスを挿通するの適用して防水性を確実に確保することが出来、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図面は本発明防水用ブッシングの実施の形態を示すものであり、本図は側面図である。
【図2】縦断面図である。
【図3】具体的な使用例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…防水用ブッシング、2…第1の部分、21…リップ部、3…第2の部分、31…テーパー部、4…嵌合溝、41…平面部、42…傾斜面部、43…垂直平面部、5…嵌挿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁の内外を連通させる開口を挿通されるワイヤーハーネスに嵌着されて上記開口を防水する防水用ブッシングであって、
ワイヤーハーネスを嵌挿させる嵌挿孔が貫設されると共に外周面に形成された嵌合溝を挟んで第1の部分と第2の部分とが一体に形成され、
上記嵌合溝は、上記第1の部分に沿って形成された平面部と該平面部の奥から上記第2の部分へ行くに従って外方へ変位していく傾斜面部とを備え、
上記第1の部分の外周部には上記第2の部分の方へ突出した薄肉のリップ部が全周に亘って形成されている
ことを特徴とする防水用ブッシング。
【請求項2】
上記平面部と傾斜面部との間に軸方向に沿う微小な垂直平面部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の防水用ブッシング。
【請求項3】
上記第1の部分は軸方向に厚肉な平板状を成し、上記第2の部分は第1の部分から遠離るに従って外径が小さくなるテーパー部を備え、該テーパー部は薄肉に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防水用ブッシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−166584(P2006−166584A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353800(P2004−353800)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】