説明

防水盤

【課題】扉を筐体に支持するヒンジの位置でもパッキンを加圧することができ、水密性をより一層高めることができる防水盤を得ることにある。
【解決手段】防水盤1は、開口部5が形成された端面2aを有する筐体2と、筐体の端面の一端部にヒンジ12を介して回動可能に支持された扉3と、扉が閉じ位置に回動された時に、扉と筐体の端面との間に介在されて開口部を水密にシールするパッキン25と、を備えている。閉じ位置に回動された扉は、第1の締め付け具27によって筐体の端面に向けて押圧されている。第1の締め付け具は扉と筐体の端面との間に跨っている。扉は、第2の締め付け具20を介してヒンジに連結されている。第2の締め付け具は、扉とヒンジとの間に跨っており、この第2の締め付け具をヒンジにねじ込むことで、閉じ位置に回動された扉が筐体の端面に向けて押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポンプ、空調機あるいは各種の動力付加設備の制御盤として用いられる防水盤に係り、特に開閉可能な扉を有する筐体の防水性能を高めるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水処理場は、各種のポンプや配管類が据付けられたポンプ室を備えている。ポンプ室は、下水処理場の地階に設けられており、このポンプ室にポンプの運転を制御するための制御盤が設置されている。
【0003】
制御盤は、前面に開口部が形成された筐体と、筐体の開口部を開閉するための扉と、を備えている。筐体は、開口部に連通する収納室を有し、この収納室に各種の電気機器が収められている。扉は、筐体にヒンジを介して支持されており、開口部を閉じる閉じ位置と、開口部を開放する開き位置との間で回動可能となっている。
【0004】
ところで、制御盤は、下水処理場の地階に位置するため、例えば大雨によって地階に水が溢れた時に水没し易い環境にある。そのため、従来の制御盤は、例えば特許文献1に開示されているように、扉を閉じ位置に回動させた時に、扉と筐体との間に介在されるパッキンを備えている。パッキンは、開口部の周囲を取り囲むことで収納室を水密にシールしている。
【0005】
さらに、より高度の水密性が要求される制御盤では、扉が閉じ位置に回動された時に、この扉を複数のボルトを用いて筐体の前面に固定することが行なわれている。ボルトは、扉と筐体の前面との間に跨るように筐体の前面のボス部にねじ込まれている。
【0006】
このねじ込みにより、扉が筐体の前面に押し付けられて、パッキンが扉と筐体の前面との間で強制的に圧縮されるようになっている。この結果、パッキンが扉に対し隙間なく密接し、収納室の水密性が強化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−218677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の制御盤によると、収納室の水密性を高めるためのボルトは、ヒンジを外れた位置で扉を筐体の前面に向けて押圧している。
【0009】
しかしながら、扉が閉じ位置に回動された状態において、ヒンジに対応する位置では、このヒンジによって扉と筐体の前面との間の間隔が固定的に定められている。そのため、ボルトを締め付けても、ヒンジの位置では扉を筐体の前面に向けて押圧することができなくなる。
【0010】
この結果、ボルトの締め付け力がパッキンに均等に伝わり難くなり、ヒンジの位置でパッキンのシール性が損なわれる虞があり得る。よって、制御盤が水没した場合に、収納室に水が浸入するのを否めないといった問題がある。
【0011】
本発明の目的は、扉を筐体に支持するヒンジの位置でもパッキンを加圧することができ、水密性をより一層高めることができる防水盤を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る防水盤は、
開口部が形成された端面を有する筐体と、
前記筐体の端面の一端部にヒンジを介して支持され、前記開口部を閉じる閉じ位置と、前記開口部を開放する開き位置との間で回動可能な扉と、
前記閉じ位置に回動された前記扉と前記筐体の端面との間に介在されて、前記開口部を水密にシールするパッキンと、
前記扉が閉じ位置に回動されている時に、前記扉と前記筐体の端面との間に跨るように前記筐体の端面にねじ込まれて、前記扉を前記筐体の端面に向けて押圧する第1の締め付け具と、
前記扉と前記ヒンジとの間に跨るように前記ヒンジにねじ込まれて、前記扉を前記ヒンジに連結する第2の締め付け具と、を備えている。前記第2の締め付け具は、前記扉が閉じ位置に回動されている時に、前記ヒンジにねじ込むことで前記扉を前記筐体の端面に向けて押圧することを特徴としている。
【0013】
前記目的を達成するため、本発明の他の形態に係る防水盤は、
開口部が形成された端面を有する筐体と、
前記筐体の端面に支持されて前記開口部の一端に位置された第1のヒンジと、
前記筐体の端面に支持されて前記開口部の他端に位置された第2のヒンジと、
前記筐体の開口部を開閉する扉と、
前記扉と前記筐体の端面との間に介在されて、前記開口部を水密にシールするパッキンと、
前記扉の一端と前記第1のヒンジとの間に跨るように前記第1のヒンジにねじ込まれて、前記扉の一端を前記第1のヒンジに連結する第1の締め付け具と、
前記扉の他端と前記第2のヒンジとの間に跨るように前記第2のヒンジにねじ込まれて、前記扉の他端を前記第2のヒンジに連結する第2の締め付け具と、を備え、
前記第1の締め付け具又は前記第2の締め付け具を選択的に取り外すことで、前記扉が前記第1のヒンジ又は前記第2のヒンジを支点として開閉可能であり、
前記扉が前記筐体の開口部を閉じている時に、前記第1の締め付け具を前記第1のヒンジにねじ込みむとともに、前記第2の締め付け具を前記第2のヒンジにねじ込むことで、前記扉が前記筐体の端面に向けて押圧されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒンジに対応した位置においても、扉と筐体の端面との間でパッキンを加圧することができる。そのため、筐体の開口部周りをパッキンによって確実にシールすることができ、防水盤の水密性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポンプ制御盤の斜視図。
【図2】図1のF2-F2線に沿う断面図。
【図3】図2のF3-F3線に沿う断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態において、第1および第2の締め付けボルトを緩めた状態を示すポンプ制御盤の断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態において、扉を閉じ位置から開き位置に向けて回動させた状態を示すポンプ制御盤の断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るポンプ制御盤の斜視図。
【図7】図6のF7-F7線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の第1の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0017】
図1は、例えば下水処理場のポンプ室に据え付けられて、ポンプの運転を制御するための制御盤1を示している。制御盤1は、高度の水密性が要求される防水盤の一例であって、万一水没した時でも水圧に耐え得るような高強度の鋼板で造られている。
【0018】
図1に示すように、制御盤1は、筐体2と蓋3とを備えている。筐体2は、縦長の四角い箱形であり、この筐体2の内部に各種の電気機器類を収める収納室4が形成されている。図2に示すように、筐体2は、端面としての前面2aを有している。筐体2の前面2aに縦長の四角い開口部5が形成されている。開口部5は、収納室4に対する電気機器の出し入れおよび収納室4に収められた電気機器の保守点検を行なうためのものであり、収納室4に通じている。
【0019】
図2に示すように、開口部5は、筐体2の前面2aから筐体2の前方に向けて直角に折り返されたフランジ部6によって規定されている。言い換えると、フランジ部6は、開口部5を取り囲むように筐体2の前面2aから筐体2の前方に向けて筒状に張り出している。そのため、フランジ部6の先端縁6aは、筐体2の前面2aよりも筐体2の前方に突出している。
【0020】
さらに、筐体2の前面2aは、開口部5の右側に位置する第1の扉受け部7と、開口部5の上側から開口部5の左側を通って開口部5の下側に至る第2の扉受け部8と、を有している。第2の扉受け部8に複数のボス部9(図2に一つのみを図示)が溶接等の手段により固定されている。ボス部9は、夫々ねじ孔10を有している。
【0021】
本実施の形態では、開口部5の上側および下側に夫々一つのボス部9が配置され、開口部5の左側に四つのボス部9が配置されている。開口部5の上側および下側のボス部9は、夫々筐体4の幅方向に沿う中央に位置されている。開口部5の左側のボス部9は、筐体2の高さ方向に間隔を存して一列に並んでいる。
【0022】
一方、前記扉3は、フラットな板状であり、筐体2の前面2aに対応するような大きさを有している。扉3の右端部は、三つの金属製ヒンジ12を介して筐体2の第1の扉受け部7に支持されている。ヒンジ12は、筐体2の高さ方向に間隔を存して一列に並んでいる。
【0023】
図2および図3に一つのヒンジ12を代表して示すように、ヒンジ12は、ヒンジ受け13とヒンジ軸14とを備えている。ヒンジ受け13は、一対の軸受部15a,15bを有している。ヒンジ受け13は、筐体2の第1の扉受け部7に溶接等の手段により固定されている。この固定により、軸受部15a,15bが筐体2の高さ方向に互いに離れている。
【0024】
ヒンジ軸14は、軸受部15a,15bの間に跨るとともに、これら軸受部15a,15bに支持されている。そのため、ヒンジ軸14は、筐体2の高さ方向に延びるとともに、軸回り方向に回動可能となっている。ヒンジ軸14は、軸受部15a,15bから抜け出ることがないように、Eリング16を介してヒンジ受け13に保持されている。
【0025】
さらに、ヒンジ軸14の軸方向に沿う中間部にねじ孔17が形成されている。ねじ孔17は、軸受部15a,15bの間に位置するとともに、ヒンジ軸14を径方向に貫通している。
【0026】
扉3の右端部に三つのボルト挿通孔19(図2および図3に一つのみを示す)が形成されている。ボルト挿通孔19は、ヒンジ軸14のねじ孔17に対応している。
【0027】
ボルト挿通孔19に扉3の外側からヒンジ連結ボルト20が挿入されている。ヒンジ連結ボルト20は、第2の締め付け具の一例であって、ボルト挿通孔19を貫通してヒンジ軸14のねじ孔17にねじ込まれている。このねじ込みにより、扉3の右端部が各ヒンジ12のヒンジ軸14に連結されている。そのため、扉3はヒンジ軸14を支点として閉じ位置と開き位置との間で開閉可能となっている。
【0028】
図4は、扉3が閉じ位置に回動された状態を開示している。閉じ位置では、扉3が筐体2の開口部5と向かい合って、この開口部5を閉塞している。図5は、扉3が閉じ位置から開き位置に向けて回動された状態を開示している。開き位置では、扉3が筐体2の開口部5から遠ざかって、この開口部5を開放している。
【0029】
ヒンジ連結ボルト20の先端は、ねじ孔17からヒンジ軸14の外に突出している。ヒンジ連結ボルト20の先端にヒンジ軸14からヒンジ連結ボルト20が脱落するのを阻止するEリング21が装着されている。
【0030】
さらに、ヒンジ連結ボルト20にストッパピン22が固定されている。ストッパピン22は、ヒンジ軸14と扉3との間においてヒンジ連結ボルト20を径方向に貫通している。ストッパピン22の両端部は、ヒンジ連結ボルト20の外周面から突出している。
【0031】
図4および図5に示すように、扉3は、筐体2の開口部5と向かい合う内面を有している。扉3の内面にパッキンホルダ24を介してゴム製のリング状パッキン25が取り付けられている。パッキン25は、扉3が閉じ位置に回動された時に、開口部5を取り囲むとともに、開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aと向かい合うようになっている。本実施の形態では、フランジ部6の先端縁6aは、パッキン25よりも幅が狭く形成されている。
【0032】
扉3の右端部を除く扉3の外周部に複数のボルト挿通孔26(図2に一つのみを示す)が形成されている。ボルト挿通孔26は、筐体2の前面2aに溶接されたボス部9のねじ孔10に対応している。
【0033】
ボルト挿通孔26に扉3の外側から扉固定ボルト27が挿入されている。扉固定ボルト27は、第1の締め付け具の一例であって、ボルト挿通孔26を貫通してボス部9のねじ孔10にねじ込まれている。扉固定ボルト27にEリング28が装着されている。Eリング28は、扉3から扉固定ボルト27が抜け出るのを防止するためのものであり、扉3とボス部9の端面との間に位置されている。
【0034】
図2に示すように、扉3が閉じ位置に回動された状態において、ヒンジ連結ボルト20および扉固定ボルト27を締め付けると、各ボルト20,27の頭部が扉3に突き当たる。これにより、扉3が筐体2の前面2aに向けて押圧され、パッキン25が開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aに突き当たる。
【0035】
言い換えると、フランジ部6の先端縁6aがパッキン25に食い込んでパッキン25を弾性的に変形させる。これにより、フランジ部6の先端縁6aと扉3の内面との間がパッキン25により水密にシールされるようになっている。
【0036】
さらに、扉3はハンドル30を備えている。ハンドル30は、扉3を閉じ位置から開き位置に回動させる時、あるいは扉3を開き位置から閉じ位置に回動させる時に作業者が手で握るためのものであって、ヒンジ12とは反対側の扉3の左端部に取り付けられている。
【0037】
次に、制御盤1を組み立てる手順について説明する。
【0038】
筐体2の第1の扉受け部7に溶接されたヒンジ受け13の軸受部15a,15bにヒンジ軸14を差し込み、このヒンジ軸14の先端にEリング16を装着する。これにより、ヒンジ軸14が軸受部15a,15bから脱落することがないようにヒンジ受け13に回動可能に保持される。
【0039】
次に、扉3のボルト挿通孔19がヒンジ軸14のねじ孔17と合致するように、扉3を筐体2の前面2aに重ね合わせる。この状態で、扉3の外側からボルト挿通孔19にヒンジ連結ボルト20を差し込んで、このヒンジ連結ボルト20をヒンジ軸14のねじ孔17にねじ込む。さらに、ヒンジ連結ボルト20がヒンジ軸14から抜け落ちないように、ヒンジ連結ボルト20の先端にEリング21を装着するとともに、ヒンジ連結ボルト20にストッパピン22を固定する。
【0040】
このことにより、扉3の右端部がヒンジ12を介して筐体2に組み付けられ、扉3がヒンジ軸14を支点として閉じ位置と開き位置との間で回動可能となる。扉3が閉じ位置に回動された状態では、図4に示すように、パッキン25が開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aと向かい合う。
【0041】
扉3を閉じ位置に固定するには、扉3を閉じる前に扉3のボルト挿通孔26に扉固定ボルト27を差し込む。さらに、扉固定ボルト27が扉3のボルト挿通孔26から抜け落ちないように、扉固定ボルト27にEリング28を装着する。
【0042】
この状態で、扉固定ボルト27をボス部9のねじ孔10にねじ込む。扉固定ボルト27をねじ込んでいくと、扉固定ボルト27の頭部によって扉3の左半分が筐体2の前面2に向けてさらに押し込まれるとともに、この扉固定ボルト27に装着したEリング28がボス部9の端面に突き当たる。これにより、扉固定ボルト27の過度のねじ込みが制限され、扉3と筐体2の前面2aとの間の隙間が適正に保たれる。
【0043】
扉固定ボルト27のねじ込みが完了した後、ヒンジ軸14のねじ孔17にねじ込まれたヒンジ連結ボルト20をさらに締め付ける。これにより、ヒンジ連結ボルト20の頭部によって扉3が筐体2の前面2に向けて押し込まれるとともに、ストッパピン22の両端がヒンジ軸14に突き当たる。これにより、ヒンジ連結ボルト20の過度のねじ込みが制限され、扉3と筐体2の前面2aとの間の隙間が適正に保たれる。
【0044】
この結果、扉3は、筐体2の前面2aに対し傾くことなく筐体2の開口部5に向けて押圧される。開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aは、パッキン25よりも幅が狭いので、図2に示すように、フランジ部6の先端縁6aが開口部5の周方向に連続してパッキン25に食い込む。
【0045】
よって、扉3は、フランジ部6の先端縁6aと扉3の内面との間がパッキン25により水密にシールされた状態で筐体3に固定され、高度の水密性を有する制御盤1の組み立てが完了する。
【0046】
一方、閉じ位置に固定された扉3を開くには、先ずヒンジ連結ボルト20のストッパピン22が扉3に当接するまでヒンジ連結ボルト20を緩める。引き続いて、扉固定ボルト27を緩めてボス部29のねじ孔10から離脱させ、筐体2に対する扉3の固定を解除する。
【0047】
次に、扉3のハンドル30を手で掴んで手前に引っ張る。これにより、図5に示すように、ヒンジ軸14を支点として扉3が閉じ位置から開き位置に向けて回動し、筐体2の開口部5が露出される。
【0048】
このような本発明の第1の実施の形態によれば、扉3の右端部は、ヒンジ連結ボルト20を介してヒンジ12のヒンジ軸14に連結されている。そのため、扉3を閉じ位置に回動させた状態でヒンジ連結ボルト20をさらに締め付けることで、ヒンジ12に対応した位置でも扉3を筐体2の前面2aに向けて押圧することができる。
【0049】
この結果、ヒンジ12の位置においても扉3と筐体2の端面2aとの間でパッキン25を強制的に挟み込むことができ、パッキン25を開口部5の周方向に均等に加圧することができる。
【0050】
よって、筐体2の開口部5周りをパッキン25によって確実にシールすることができ、制御盤1の水密性をより一層高めることができる。
【0051】
さらに、第1の実施の形態によると、開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aがパッキン25に食い込んでいる。このため、フランジ部6の先端縁6aとパッキン25との接触部分の接触圧を充分に確保することができ、例えばパッキン25を単に面と面との間で挟んで押し潰す場合との比較において、シール性を高めることができる。
【0052】
それとともに、フランジ部6の先端縁6aをパッキン25に食い込ませることで、パッキン25を少ない力で容易に変形させることができる。このため、扉3を筐体2に向けて押圧する際に、ヒンジ連結ボルト20および扉固定ボルト27の締め付けに大きな力を必要とせず、扉3を閉じ位置に固定する際の作業性が良好となるといった利点がある。
【0053】
本発明は前記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。例えば、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を開示している。
【0054】
第2の実施の形態は、扉3を筐体2の右方向および左方向のいずれかの方向に選択的に開閉可能とした点が前記第1の実施の形態と相違しており、それ以外の制御盤1の基本的な構成は、第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図6および図7に示すように、筐体2の前面2aは、開口部5の右側に位置する第1の扉受け部41と、開口部5の左側に位置する第2の扉受け部42と、開口部5の上側に位置する第3の扉受け部43と、開口部5の下側に位置する第4の扉受け部44を有している。
【0056】
筐体2の第1の扉受け部41に扉3の右端部を支持する一対の第1のヒンジ46が配置されている。同様に、筐体2の第2の扉受け部42に扉3の左端部を支持する一対の第2のヒンジ47が配置されている。第1および第2のヒンジ46,47は、夫々筐体2の高さ方向に間隔を存して一列に並んでいるとともに、互いに共通の構成を有している。
【0057】
すなわち、第1および第2のヒンジ46,47は、夫々前記第1の実施の形態のヒンジと同様のヒンジ受け13およびヒンジ軸14を有している。第1のヒンジ46のヒンジ受け13は、第1の扉受け部41に溶接等の手段により固定されている。第2のヒンジ47のヒンジ受け13は、第2の扉受け部42に溶接等の手段により固定されている。第1および第2のヒンジ46,47のヒンジ軸14は、ヒンジ受け13に回動可能に支持されている。
【0058】
扉3の右端部は、第1の締め付け具としての第1のヒンジ連結ボルト48を介して第1のヒンジ46のヒンジ軸14に連結されている。第1のヒンジ連結ボルト48は、扉3の右端部に開けた第1のボルト挿通孔49を貫通してヒンジ軸14のねじ孔(図示せず)にねじ込まれている。
【0059】
扉3の左端部は、第2の締め付け具としての第2のヒンジ連結ボルト50を介して第2のヒンジ47のヒンジ軸14に連結されている。第2のヒンジ連結ボルト50は、扉3の左端部に開けた第2のボルト挿通孔51を貫通してヒンジ軸14のねじ孔(図示せず)にねじ込まれている。
【0060】
そのため、本実施の形態では、第2のヒンジ連結ボルト50を緩めて第2のヒンジ47のヒンジ軸14から取り外すと、扉3は第1のヒンジ連結ボルト48を介して第1のヒンジ46に支持される。よって、第1のヒンジ46のヒンジ軸14が扉3の支点となり、このヒンジ軸14を中心に扉3を右方向に開くことができる。
【0061】
逆に第1のヒンジ連結ボルト48を緩めて第1のヒンジ46のヒンジ軸14から取り外すと、扉3は第2のヒンジ連結ボルト50を介して第2のヒンジ47に支持される。よって、第2のヒンジ47のヒンジ軸14が扉3の支点となり、このヒンジ軸14を支点に扉3を左方向に開くことができる。
【0062】
したがって、第1のヒンジ連結ボルト48又は第2のヒンジ連結ボルト50のいずれかを選択的に取り外すことで、扉3が開く方向を右又は左の何れかの方向に任意に設定することができる。
【0063】
さらに、扉3が開く方向を任意に設定したことで、扉3の右端部および左端部に扉3を開閉する際に手で握るハンドル52a,52bが取り付けられている。
【0064】
本実施の形態によると、扉3を開く際には、第1のヒンジ連結ボルト48又は第2のヒンジ連結ボルト50を扉3から取り外すことが必要となる。そのため、第2の実施の形態では、第1のヒンジ連結ボルト48および第2のヒンジ連結ボルト50にEリングやストッパピンを装着する必要はない。
【0065】
この際、ヒンジ軸14に対する第1のヒンジ連結ボルト48および第2のヒンジ連結ボルト50の過度のねじ込みを防ぐためには、例えば第1および第2のヒンジ連結ボルト48,50の途中に径方向に沿う段付き部を形成し、この段付き部をヒンジ軸14の外周面に突き当てるようにする。
【0066】
筐体2の第3および第4の扉受け部43,44に夫々ボス部(図示せず)が溶接等の手段により固定されている。ボス部は、ねじ孔を有するとともに、筐体2の幅方向に沿う中央に位置されている。
【0067】
扉3の上端部は、扉固定ボルト53を介して第3の扉受け部43に固定されている。同様に、扉3の下端部は、他の扉固定ボルト54を介して第4の扉受け部44に固定されている。これら扉固定ボルト53,54は、第3の締め付け具の一例であって、扉3とボス部との間に跨るようにボス部のねじ孔にねじ込まれている。
【0068】
次に、例えば扉3が第1のヒンジ46のヒンジ軸14を支点として開閉する場合において、この扉3を閉じ位置に固定する手順について説明する。
【0069】
扉3を閉じ位置に回動させた後、蓋3の第2のボルト挿通孔51に第2のヒンジ連結ボルト50を差し込んで、第2のヒンジ47のヒンジ軸14にねじ込む。さらに、扉3の上端および下端に通した扉固定ボルト53,54を筐体2のボス部にねじ込む。
【0070】
この状態で第1のヒンジ連結ボルト48、第2のヒンジ連結ボルト50および扉固定ボルト53,54を均等に締め付けると、扉3は、筐体2の前面2aに対し傾くことなく筐体2の開口部5に向けて押圧される。
【0071】
この結果、前記第1の実施の形態と同様に、開口部5を規定するフランジ部6の先端縁6aが開口部5の周方向に連続してパッキン25に食い込む。よって、扉3は、フランジ部6の先端縁6aと扉3の内面との間がパッキン25により水密にシールされた状態で筐体3に固定される。
【0072】
なお、扉3が第2のヒンジ47のヒンジ軸14を支点として開閉する場合において、扉3を閉じ位置に固定するには、扉3を閉じ位置に回動させた後、蓋3の第1のボルト挿通孔49に第1のヒンジ連結ボルト48を差し込む。この後、前記と同様に各ボルト48,50,53,54を締め付けることで、フランジ部6の先端縁6aと扉3の内面との間をパッキン25によって水密にシールすることができる。
【0073】
このような第2の実施の形態によると、第1のヒンジ46および第2のヒンジ47に対応する位置においても扉3を筐体2の前面2aに向けて押圧することができる。そのため、扉3が左右いずれかの方向に開閉可能な制御盤1であっても、パッキン25を開口部5の周方向に均等に加圧することができる。
【0074】
よって、筐体2の開口部5周りをパッキン25によって確実にシールすることができ、制御盤1の水密性をより一層高めることができる。
【0075】
前記実施の形態では、パッキンを扉の内面に固定しているが、本発明はこれに制約されるものではない。例えば、パッキンを筐体の開口部を取り囲むように筐体の前面に固定するとともに、扉の内面にパッキンに食い込む又は面接触する突起を形成してもよい。
【0076】
さらに、本発明に係る防水盤は、ポンプ制御用の制御盤に特定されるものではなく、例えば電気配線を分岐するための複数の開閉器を有する分電盤でも同様に実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、筐体にヒンジを介して開閉可能に支持された扉を有する防水盤に適用することで、ヒンジに対応した位置においても扉と筐体の端面との間でパッキンを加圧することができ、筐体の開口部周りをパッキンによって確実にシールすることができる。
【符号の説明】
【0078】
2…筐体、3…扉、5…開口部、12…ヒンジ、20,50…第2の締め付け具(ヒンジ連結ボルト、第2のヒンジ連結ボルト)、27,48…第1の締め付け具(扉固定ボルト、第1のヒンジ連結ボルト)、46…第1のヒンジ、47…第2のヒンジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された端面を有する筐体と、
前記筐体の端面の一端部に支持されたヒンジと、
前記ヒンジに支持され、前記開口部を閉じる閉じ位置と、前記開口部を開放する開き位置との間で回動可能な扉と、
前記閉じ位置に回動された前記扉と前記筐体の端面との間に介在されて前記開口部を水密にシールするパッキンと、
前記扉が閉じ位置に回動されている時に、前記扉と前記筐体の端面との間に跨るように前記筐体の端面にねじ込まれて、前記扉を前記筐体の端面に向けて押圧する第1の締め付け具と、
前記扉と前記ヒンジとの間に跨るように前記ヒンジにねじ込まれて、前記扉を前記ヒンジに支持する第2の締め付け具と、を具備し、
前記第2の締め付け具は、前記扉が閉じ位置に回動されている時に、前記ヒンジにねじ込むことで、前記扉を前記筐体の端面に向けて押圧することを特徴とする防水盤。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第2の締め付け具は、前記ヒンジ軸に突き当たることで前記第2の締め付け具の過度のねじ込みを制限するストッパを有することを特徴とする防水盤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の記載において、前記パッキンは前記扉に支持されているとともに、前記筐体の端面は前記開口部を規定する縁を有し、この縁は前記扉が前記筐体の端面に向けて押圧された時に、前記パッキンに食い込むことを特徴とする防水盤。
【請求項4】
開口部が形成された端面を有する筐体と、
前記筐体の端面に支持されて前記開口部の一端に位置された第1のヒンジと、
前記筐体の端面に支持されて前記開口部の他端に位置された第2のヒンジと、
前記筐体の開口部を開閉する扉と、
前記扉と前記筐体の端面との間に介在されて、前記開口部を水密にシールするパッキンと、
前記扉の一端と前記第1のヒンジとの間に跨るように前記第1のヒンジにねじ込まれて、前記扉の一端を前記第1のヒンジに支持する第1の締め付け具と、
前記扉の他端と前記第2のヒンジとの間に跨るように前記第2のヒンジにねじ込まれて、前記扉の他端を前記第2のヒンジに支持する第2の締め付け具と、を具備し、
前記第1の締め付け具又は前記第2の締め付け具を選択的に取り外すことで、前記扉が前記第1のヒンジ又は前記第2のヒンジを支点として開閉可能となる防水盤であって、
前記扉が前記筐体の開口部を閉じている時に、前記第1の締め付け具を前記第1のヒンジにねじ込むとともに、前記第2の締め付け具を前記第2のヒンジにねじ込むことで、前記扉が前記筐体の端面に向けて押圧されていることを特徴とする防水盤。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記パッキンは前記扉に支持されているとともに、前記筐体の端面は前記開口部を規定する縁を有し、この縁は前記扉が前記筐体の端面に押圧された時に、前記パッキンに食い込むことを特徴とする防水盤。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記扉が前記開口部を閉じた時に、前記扉と前記筐体の端面との間に跨るように前記筐体の端面にねじ込まれて、前記扉を前記筐体の端面に向けて押圧する第3の締め付け具をさらに備えていることを特徴とする防水盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54692(P2011−54692A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200852(P2009−200852)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】