説明

防水通気ケース装置

【課題】組付時の内圧放出特性が向上し、またフィルタの保守点検が可能となると共に、ケース外面に水が溜まることもないようにする。
【解決手段】防水通気ケース装置1は、ケース本体3と蓋4とを加熱型接着材7により接着して構成され内部に回路基板8を収容したケース2と、このケース2の少なくとも2箇所に形成された通気孔部10、11と、この通気孔部10、11をケース2外面から閉塞する形態に接着され防水性があって且つ通気性を有するフィルタ12、13とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付時の内外気圧の平衡時間の短縮ができ且つ製品状態において外部からの水浸入を防止する防水通気ケース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば防水構造で且つ通気可能なケース装置は、特許文献1に示されるケース装置がある。このものでは、ケース本体と蓋とを防水ゴムを介して接合している。そして、ケース本体には、防水の観点から1つの通気孔を形成し、この通気孔をケース内面側から防水性及び通気性を有するフィルタにより閉塞している。
【特許文献1】特開平11−87944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、防水構造で通気可能なケース装置としては、車両の燃料制御装置に用いられる防水通気ケース装置がある。このものでは、防水性を強化するためにケースと蓋とを熱硬化性樹脂からなる接着剤により接着するようにしている。この場合、車両搭載環境に対してケース内部の温度上昇が急激であり、つまり内圧が急に上昇する。ここで、前記従来のように通気孔部が1箇所であると、通気面積が少なくてこのフィルタの通気速度が追いつかず、蓋が持ち上がってしまうなどの問題がある。また、通気孔が1箇所であると、通常使用時に、ケース内部において放熱むらが発生しやすく内外気圧の平衡に時間がかかるという問題がある。さらにはフィルタがケース内側に接着されているため、ケース一体化前にフィルタのシール性のテストをしておかなければならず、また、ケース一体化後にはフィルタの保守点検ができないという問題があった。さらにフィルタがケース内側に接着されているため、ケース外面に通気孔部による凹所が形成されて、水が該凹所に溜まるおそれがあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、組付時の内圧放出特性を向上し、またフィルタの保守点検が可能となると共に、ケース外面に水が溜まることもない防水通気ケース装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、ケースの少なくとも2箇所に通気孔部を形成し、防水性があって且つ通気性を有するフィルタをケース外面から該通気孔部を閉塞する形態に接着する構成としたから、ケースと蓋とを加熱型接着剤により接着するときに、内部温度が急激に上昇して内圧が急激に上昇しても、ケースに通気孔部があるから、該通気孔部から内圧を素早く逃がすことができ、蓋が持ち上がることがなく、また、通常使用時においてケース内部が温度上昇しても、ケースの少なくとも2箇所の通気孔部から均一に内外気圧の平衡ができ、またフィルタがケース外面に存在することで、該フィルタの保守点検が何時でも可能となると共に、水滴が滞留することもない。
【0006】
この場合、前記ケースの一部を前記回路基板冷却用の金属製筐体により構成し、前記筐体に座ぐり孔及びねじ挿通孔を形成し、前記ケース本体の内部に備えたシールド板を前記座ぐり孔及びねじ挿通孔を通したねじにより前記筐体に固定し、前記座ぐり孔及びねじ挿通孔を前記通気孔部として兼用し、前記筐体外面に前記座ぐり孔を閉塞する前記フィルタを接着するようにしても良い(請求項2の発明)。
【0007】
このようにすると、該筐体シールドのためのシールド板を取り付けるための座ぐり孔及びねじ挿通孔を前記通気孔部として兼用できる。
また、前記通気孔部をケースの同じ面部の複数個所に形成し、該同じ面部に存する複数の通気孔部をひとつのフィルタにより閉塞するようにしても良い(請求項3の発明)。このようにすると、フィルタの取り付け工数を削減できる。
【0008】
また、前記通気孔部をケースの異なる面部に形成するようにしても良い(請求項4の発明)。このようにすると、製品の搭載制約がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施例について図1ないし図3を参照して説明する。図1には、車両の燃料制御装置に用いる防水通気ケース装置1を示している。ケース2はケース本体3と樹脂製の蓋4とを備えている。ケース本体3は、樹脂製の枠部5と金属製筐体である放熱板6とから構成されている。この放熱板6には多数の放熱フィン部6aが形成されている。
【0010】
前記枠部5の下端内周縁部はほぼL字状に凹むように形成されており、この凹部5aに前記放熱板6の上面周縁の角部6bを嵌め、この部分を、シール部材を兼ねる熱硬化性樹脂からなる接着剤7(加熱型接着剤に相当)により加熱接着している。前記放熱板6はケース2の一部を構成している。
【0011】
前記放熱板6の上面(内面)には、燃料制御の回路を形成した回路基板8が熱伝達可能に接着されている。前記枠部5の側部には、外部接続可能なコネクタ一体(図示せず)の樹脂ケース9の全周を、内部に浸水しないように接着剤で固定している。この樹脂ケース9の図示しないターミナルと前記回路基板8の図示しないリードを接続し、図示しないポッティング剤を回路基板8上部に被覆して防湿構成としている。
【0012】
また、前記枠部5の上端全周囲には溝状の凹部5bが形成されている。
前記蓋4には、例えば2箇所に円形の通気孔部10、11が形成されており、該蓋4の外面には、フィルタ12、13がそれぞれ通気孔部10、11を蓋4外面(ケース外面)から閉塞する形態に接着されている。このフィルタ12、13は、それぞれ防水性があって且つ通気性を有する材料(例えばゴアテックス(登録商標)など)から構成されている。また、この蓋4の下面周縁部は前記凹部5bと嵌り合う凸部4aが形成されている。
【0013】
そして、該蓋4の前記凸部4aが前記枠部上面の凹部5bに嵌め込まれ、且つこの凹部5bに熱硬化性樹脂の接着剤14(加熱型接着剤に相当)を配置して、この嵌め込み部分を該接着剤14により加熱接着している。
【0014】
この場合、ケース2内部が急激に温度上昇して内圧が上昇しても、その内圧をケース2の2つの通気孔部10、11から素早く逃がすことができ、蓋4が持ち上がることがない。なお、図1の完成状態において、フィルタ12、13部分のシールテストを行うことができる。この場合、一方のフィルタ部分から空気を入れて他のフィルタ部分からの空気漏れなどを検査することが可能となる。
【0015】
このような本実施例によれば、ケース2の2箇所に通気孔部10、11を形成し、防水性があって且つ通気性を有するフィルタ12、13を熱硬化性樹脂による接着工程前とするためケース2外面から該通気孔部10、11を閉塞する形態に接着又は溶着する構成としたから、ケース2と蓋4とを熱硬化性樹脂からなる接着剤7により接着するときに、内部温度が急激に上昇して内圧が急激に上昇しても、ケース2の2箇所に通気孔部10、11があって通気量を大きくできるから、該通気孔部10、11から内圧を素早く逃がすことができ、蓋4が持ち上がることがない。この場合、フィルタ12、13は最終的にケース2外面に接着されれば良いから、フィルタ12、13の接着時期が自由であり、ケース本体3に対する蓋4の接着前に、該フィルタ12、13は装着しておかなくても良く、この状態(通気孔部10、11開放状態)で上述の接着剤7の加熱接着を行うことができ、この結果、当該接着剤7の加熱接着時の内圧上昇がまったく無くなる。なおこの加熱接着後に前記フィルタ12、13を接着することになる。
【0016】
また、通常使用時(燃料制御時)においてケース2内部が温度上昇しても、ケース2の少なくとも2箇所の通気孔部10、11から均一に内外気圧の平衡ができ、またフィルタ12、13がケース2外面に存在することで、該フィルタ12、13の保守点検が何時でも可能となると共に、水滴が滞留することもない。
【0017】
図4及び図5は本発明の第2の実施例を示しており、この実施例においては、次の点が第1の実施例と異なる。前記放熱板6の例えば1箇所に座ぐり孔21及びねじ挿通孔22を形成している。前記ケース本体3の内部にシールド板23を備えている。このシールド板23は、回路形成をなすアース端子に接続されたターミナルから構成されており、当該シールド板23には、前記ねじ挿通孔22に対応して、バーリング加工による筒部23aが形成されており、この筒部23a内面に雌ねじ部(図示せず)が形成されている。
【0018】
このシールド板23は、前記座ぐり孔21及びねじ挿通孔22を通したねじ24を前記筒部23aの雌ねじ部にねじ込むにことより前記放熱板6に固定されている。この場合、前記座ぐり孔21及びねじ挿通孔22を通気孔部として兼用している。なお、蓋4には1つの通気孔部10及び1つのフィルタ12が備えられている。従って、通気孔部としては2つ設けられていることになる。
【0019】
そして、前記放熱板6外面には前記座ぐり孔21を閉塞するフィルタ25を接着している。この第2の実施例によれば、回路基板8冷却用の放熱板6により、該放熱板6シールドのためのシールド板23を取り付けるための座ぐり孔21及びねじ挿通孔22を通気孔部として兼用できる。
【0020】
図6は本発明の第3の実施例を示しており、次の点が第1の実施例と異なる。すなわち、この第3の実施例においては、通気孔部31、32をケース2の同じ面部である例えば蓋4の複数個所に形成し、該同じ面部に存する複数の通気孔部31、32をひとつのフィルタ33により各通気孔部31、32外周での接着又は溶着で閉塞するようにしている。この第3の実施例によれば、第1及び第2の実施例と同様に複数のフィルタを構成するのと同様の効果があり且つフィルタ33の取り付け工数を削減できる。
【0021】
この場合、本発明の第4の実施例として示す図7のように、通気孔部34、35をケース2の異なる面部に形成し、各通気孔部34、35に夫々フィルタ36、37を設ける構成としてもよく、これによれば、製品の搭載方向制約がなくなる。
【0022】
なお、本発明は、上記した各実施例に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して実施することができる。例えば、燃料制御装置以外にも、防水と通気とが要求されるケース装置全般に広く適用することができる。また、フィルタとしては、防水性及び通気性があるものであれば良い。さらに、加熱型接着剤としては種々考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施例を示す防水通気ケース装置の縦断側面図
【図2】蓋装着前の状態で防水通気ケース装置の縦断側面図
【図3】蓋の平面図
【図4】本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図5】ねじ取付部分の縦断側面図
【図6】本発明の第3の実施例を示す図1相当図
【図7】本発明の第4の実施例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0024】
図面中、1は防水通気ケース装置、2はケース、3はケース本体、4は蓋、5は枠部、6は放熱板(筐体)、7は接着剤(加熱型接着剤)、8は回路基板、10、11は通気孔部、12、13はフィルタ、14は接着剤(加熱型接着剤)、21は座ぐり孔、22はねじ挿通孔、23はシールド板、24はねじ、31、32は通気孔部、33はフィルタ、34、35は通気孔部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と蓋とを加熱型接着材により接着して構成され内部に回路基板を収容したケースと、
このケースの少なくとも2箇所に形成された通気孔部と、
この通気孔部をケース外面から閉塞する形態に接着され防水性があって且つ通気性を有するフィルタと
を備えてなる防水通気ケース装置。
【請求項2】
前記ケースの一部が前記回路基板冷却用の金属製筐体により構成され、
前記ケース本体の内部に前記筐体をシールドするシールド板を備え、
前記筐体に座ぐり孔及びねじ挿通孔を形成し、
前記シールド板を前記筐体に座ぐり孔及びねじ挿通孔を通したねじにより固定し、
前記座ぐり孔及びねじ挿通孔は前記通気孔部を兼用し、
前記筐体外面に前記座ぐり孔を閉塞する前記フィルタを接着したことを特徴とする請求項1に記載の防水通気ケース装置。
【請求項3】
前記通気孔部はケースの同じ面部の複数個所に形成され、該同じ面部に存する複数の通気孔部はひとつのフィルタにより閉塞されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水通気ケース装置。
【請求項4】
前記通気孔部はケースの異なる面部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防水通気ケース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−282981(P2008−282981A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125663(P2007−125663)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】