説明

防汚流路体及び洋風便器

【課題】構造の簡略化を図りつつ、防汚作用をより効果的に発揮することができる防汚流路体を提供する。
【解決手段】防汚流路体としてのトラップ20は、透光部21と紫外線光源としてのUV−LED22とを備える。
透光部21は、紫外線を透光可能な透光性材料によって形成され、内周面21aが紫外線を出射可能であるとともに、下流に向けて排水を流すS状にカーブした流路とされている。UV−LED22は、透光部21に一体に設けられ、紫外線を透光部21内に入射可能とされている。透光部21の内周面21aには、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層21cが形成されている。他方、透光部21の外周面には、紫外線を反射する反射層21bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚流路体及び洋風便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4に従来の防汚流路体が開示されている。この防汚流路体は、洗面器に設けられたトラップである。このトラップは、洗面器の排水口から下流に向けて排水を流すS状にカーブした流路と、流路のうちのカーブした部位の内側に設けられ、流路の内周面に紫外線を照射可能な紫外線光源とを備えている。
【0003】
このような構成である従来の防汚流路体では、紫外線光源から紫外線が周囲に広がりつつ照射されて、流路の内周面に当たる。このため、紫外線が当たった流路の内周面では、紫外線の殺菌作用により雑菌の繁殖が抑制される。こうして、この防汚流路体は、流路及び流路内の気体又は液体に対する防汚作用を発揮することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−112855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の防汚流路体では、紫外線光源の設置場所によって、流路の内周面に紫外線がよく当たる場所と、あまり当たらない場所とができてしまい、紫外線による防汚作用も、場所によって大きな差が生じてしまっていた。そのような事態を解消するためには、例えば、紫外線光源を多数設置しなければならず、防汚流路体の構造の簡略化が難しかった。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、構造の簡略化を図りつつ、防汚作用をより効果的に発揮することができる防汚流路体を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防汚流路体は、紫外線を透光可能な透光性材料によって形成され、内周面が該紫外線を出射可能であるとともに気体又は液体を流す流路とされた透光部と、
該透光部に一体に設けられ、該紫外線を該透光部内に入射可能な紫外線光源とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このような構成である本発明の防汚流路体において、透光部に一体に設けられた紫外線光源から透光部内に入射される紫外線は、透光部内を拡がりつつ進行し、透光部の内周面の広い範囲から出射されることとなる。このため、紫外線が出射される内周面では、紫外線の殺菌作用により雑菌の繁殖が抑制され、その結果として、この防汚流路体は、内周面の広い範囲において防汚作用をより効果的に発揮することができる。このため、この防汚流路体は、紫外線による防汚作用が場所によって大きな差が生じてしまうという従来の防汚流路体の不具合を抑制することができる。また、この防汚流路体は、そのために必ずしも多数の紫外線光源を設ける必要がないので、構造の簡略化を図ることができる。
【0009】
したがって、本発明の防汚流路体は、構造の簡略化を図りつつ、防汚作用をより効果的に発揮することができる。
【0010】
透光性材料といては、無機ガラスや、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、その他の透明樹脂等を採用することができる。
【0011】
紫外線光源としては、紫外線ランプ、紫外線LEDその他の一般的な紫外線光源を採用することができる。また、紫外線(波長が約300〜400nm)を含む光線を照射する白熱電球、蛍光灯、水銀ランプ等の光源を採用することもできる。紫外線は、後述する光触媒を効果的に励起可能な380nmの波長のものであることが好ましい。紫外線照射装置の小型化、省電力化、耐久性のためには紫外線LEDを採用することが好ましい。
【0012】
本発明の防汚流路体において、前記内周面には前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されていることが好ましい。
【0013】
この場合、内周面から出射される紫外線は、内周面に形成された光触媒を含む防汚層にも照射されることとなる。このため、この防汚流路体では、防汚層の光触媒の活性が上がり、内周面に付着する臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この防汚流路体は、より高い防汚作用が発揮することができる。
【0014】
本発明の防汚流路体において、前記透光部の外周面には前記紫外線を反射する反射層が形成されていることが好ましい。
【0015】
この場合、透光部に一体に設けられた紫外線光源から透光部内に入射される紫外線は、透光部内を拡がりつつ進行する際、外周面に形成された反射層によって反射され、内周面のさらに広い範囲から出射されることとなる。また、反射層により、外周面の外側へ無駄に出射される紫外線がなくなる。このため、この防汚流路体は、紫外線光源から照射される紫外線を内周面のさらに広い範囲から無駄なく出射させることができ、本発明の効果をより確実に奏することができる。
【0016】
本発明の防路流路体は、洋風便器に適用し得る。すなわち、本発明の洋風便器は、鉢面及び該鉢面に封水を形成するトラップをもつ洋風便器本体と、該トラップに接続された排水ソケットとを備えた洋風便器において、
前記トラップ及び前記排水ソケットの少なくとも一方は上述した本発明の防汚流路体のいずれかであり、該防汚流路体は、前記封水の水位が下がる時、前記紫外線を照射可能であることを特徴とする。
【0017】
このような構成である本発明の洋風便器では、封水により紫外線の照射が不十分となり易いトラップ及び排水ソケットの少なくとも一方の内周面にも、封水の水位が下がる時を有効に利用して、紫外線を確実に照射することができる。このため、この洋風便器は、トラップ及び排水ソケットの少なくとも一方について、本発明の効果を確実に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0019】
図1に示すように、実施例1の防汚流路体は、トラップ20として洋風便器10に適用されるものである。洋風便器10は、鉢面11a及び鉢面11aに封水12を形成するトラップ20をもつ洋風便器本体11と、トラップ20に接続された排水ソケット13とを備えている。
【0020】
トラップ20は、下流に向けて排水を流すS状にカーブした流路とされた透光部21と、透光部21に一体に設けられ、紫外線を透光部21内に入射可能な紫外線光源としてのUV−LED22とを備えている。
【0021】
図2に拡大して示すように、透光部21は、紫外線を透光可能な透光性材料であるエポキシ樹脂によって形成され、内周面21aが紫外線を出射可能とされている。透光部21の内周面21aには、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層21cが形成されている。他方、透光部21の外周面には、紫外線を反射する反射層21bが形成されている。
【0022】
UV−LED22は、トラップ20の底側に設けられており、発光する部分が透光部21に埋設された状態とされている。また、UV−LED22は、洋風便器10の洗浄時に封水12の水位が下がった時や、洋風便器10を使用していない時等の適当な機会に随時紫外線を照射可能とされている。
【0023】
このような構成である実施例1のトラップ20において、UV−LED22から透光部21内に入射される紫外線は、透光部21内を拡がりつつ進行し、透光部21の内周面21aの広い範囲から出射可能とされている。また、UV−LED22から透光部21内に入射される紫外線の一部は、透光部21内を拡がりつつ進行する際、外周面に形成された反射層21bによって反射され、内周面21bのさらに広い範囲から出射可能とされている。さらに、反射層21bにより、外周面の外側へ無駄に出射される紫外線がなくなっている。
【0024】
このため、紫外線が出射される内周面21aでは、紫外線の殺菌作用により雑菌の繁殖が抑制される。その結果として、このトラップ20は、内周面21aの広い範囲において防汚作用をより効果的に発揮することが実現できている。このため、このトラップ20は、紫外線による防汚作用が場所によって大きな差が生じてしまうという従来のトラップの不具合を抑制することができている。また、このトラップ20は、そのために必ずしも多数の紫外線光源を設ける必要がなくなっているので、構造の簡略化を図ることもできる。
【0025】
特に、このトラップ20では、内周面21aから出射される紫外線が防汚層21cにも照射される。このため、このトラップ20では、防汚層21cの光触媒の活性が上がり、内周面21aに付着する臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、このトラップ20は、より高い防汚作用を発揮することができる。
【0026】
さらに、このトラップ20では、紫外線の一部は、透光部21内を拡がりつつ進行する際、反射層21bによって反射され、内周面21aのさらに広い範囲から出射されることとなっており、外周面の外側へ出射しない。このため、このトラップ20は、紫外線を内周面21aから無駄なく出射させることができる。
【0027】
したがって、実施例1のトラップ20は、構造の簡略化を図りつつ、防汚作用をより効果的に発揮することができる。
【0028】
また、洋風便器10は、封水12の水位が下がる時、UV−LED22から紫外線を照射することができる。このため、封水12により紫外線の照射が不十分となり易いトラップ20の内周面21aにも、紫外線を確実に照射することができる。このため、この洋風便器10は、高い防汚作用を発揮することができる。
【0029】
なお、洋風便器10において、排水ソケット13の構成を防汚流路体としてのトラップ20の構成と同様にした場合には、排水ソケット13について、本発明の効果を奏することができる。
【実施例2】
【0030】
図3に示すように、実施例2の防汚流路体は、局部洗浄装置30に適用されるものである。防汚流路体としての局部洗浄装置30は、温水タンク31、切替弁32、ノズルシリンダ33及びノズル34を備えている。
【0031】
局部洗浄装置30において、温水タンク31、切替弁32、ノズルシリンダ33及びノズル34の各筐体は、局部洗浄用の温水を流す流路とされた透光部とされている。また、局部洗浄装置30は、温水タンク31、切替弁32、ノズルシリンダ33及びノズル34の各筐体に一体に設けられ、紫外線を各筐体内に入射可能な紫外線光源としてのUV−LED35を備えている。
【0032】
UV−LED35は、実施例1において説明したUV−LED22の透光部21への設置構成と同様の構成により、温水タンク31、切替弁32、ノズルシリンダ33及びノズル34の各筐体に一体に設けられている。他の構成は実施例1と同様である。このため、同一の構成については、同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0033】
このような構成である実施例2の局部洗浄装置30において、透光部としての各筐体に一体に設けられたUV−LED35から各筐体内に入射される紫外線は、各筐体内を拡がりつつ進行し、各筐体の内周面21aの広い範囲から出射される。UV−LED35から各筐体内に入射される紫外線の一部は、各筐体内を拡がりつつ進行する際、反射層21bによって反射され、各筐体の内周面21aのさらに広い範囲から出射される。さらに、反射層21bにより、各筐体の外周面の外側へ無駄に出射される紫外線がなくなる。
【0034】
このため、紫外線が出射される各筐体の内周面21aでは、紫外線の殺菌作用により雑菌の繁殖が抑制される。その結果として、この局部洗浄装置30は、各筐体の内周面21aの広い範囲において、防汚作用をより効果的に発揮することが実現できる。
【0035】
したがって、実施例2の局部洗浄装置30も、実施例1のトラップ20と同様に、本発明の作用効果を奏することができる。
【0036】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0037】
例えば、紫外線光源の設置個数や設置場所に関しては、防汚流路体の大きさや形状にあわせて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明はトラップ、局部洗浄装置その他の防汚流路体及び洋風便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の洋風便器の概略断面図である。
【図2】実施例1の洋風便器に係り、図1のZ部を示す要部拡大断面図である。
【図3】実施例2の局部洗浄装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10…洋風便器
11…洋風便器本体
11a…鉢面
12…封水
13…排水ソケット
20、30…防汚流路体(20…トラップ、30…局部洗浄装置)
21…透光部
21a…内周面
21b…反射層
21c…防汚層
22、35…紫外線光源(UV−LED)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透光可能な透光性材料によって形成され、内周面が該紫外線を出射可能であるとともに気体又は液体を流す流路とされた透光部と、
該透光部に一体に設けられ、該紫外線を該透光部内に入射可能な紫外線光源とを備えていることを特徴とする防汚流路体。
【請求項2】
前記内周面には前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されている請求項1記載の防汚流路体。
【請求項3】
前記透光部の外周面には前記紫外線を反射する反射層が形成されている請求項1又は2記載の防汚流路体。
【請求項4】
鉢面及び該鉢面に封水を形成するトラップをもつ洋風便器本体と、該トラップに接続された排水ソケットとを備えた洋風便器において、
前記トラップ及び前記排水ソケットの少なくとも一方は請求項1乃至3のいずれか1項記載の防汚流路体であり、該防汚流路体は、前記封水の水位が下がる時、前記紫外線を照射可能であることを特徴とする洋風便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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