防汚設備及び紫外線照射装置
【課題】意匠や使用の便宜を損なうことなく、充分な防汚効果を長期に亘って発揮可能な防汚設備を提供する。また、そのような防汚設備に用いて好適な紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】防汚設備である洋風便器1は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする洋風便器本体10と、紫外線を照射するUV−LED46を先端にもつノズル本体34とを備えている。ノズル本体34は、洋風便器本体10及び/又はその周辺に紫外線を照射可能にUV−LED46が洋風便器本体10に対して移動可能に構成されている。
【解決手段】防汚設備である洋風便器1は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする洋風便器本体10と、紫外線を照射するUV−LED46を先端にもつノズル本体34とを備えている。ノズル本体34は、洋風便器本体10及び/又はその周辺に紫外線を照射可能にUV−LED46が洋風便器本体10に対して移動可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚設備及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に従来の防汚設備が開示されている。例えば特許文献1の図1〜3に開示されている防汚設備は、自己が防汚を必要とする洋風便器本体と、この洋風便器本体に固定され、洋風便器本体に紫外線を照射可能な紫外線光源とを備えている。また、この防汚設備では、洋風便器本体の紫外線が照射される部分に光触媒が設けられている。
【0003】
この防汚設備は、紫外線光源が照射する紫外線により洋風便器本体が殺菌され、防汚効果が得られる。また、その際、紫外線によって光触媒の活性が上がり、より高い防汚効果が発揮される。特許文献1の他の防汚設備及び特許文献2、3に開示された防汚設備も同様である。
【0004】
【特許文献1】実開平5−16881号公報
【特許文献2】特開平11−71803号公報
【特許文献3】特開2001−65035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の防汚設備は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする洋風便器本体等の対象物に紫外線光源が固定されている。このため、この防汚設備は、設備の意匠及び使用上の観点から、紫外線光源を対象物に固定する位置の自由度が低かった。また、こうして紫外線光源を対象物に固定する位置を限定すると、紫外線が照射される範囲が限定されてしまい、充分な防汚効果を発揮し難い。さらに、意匠をある程度犠牲にして充分な防汚効果を発揮できるように紫外線光源を対象物に固定すると、汚れが紫外線光源に付着しやすく、汚れによって紫外線を照射することが困難な事態を生じ、防汚効果の耐久性が損なわれ易い。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、意匠や使用の便宜を損なうことなく、充分な防汚効果を長期に亘って発揮可能な防汚設備を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、そのような防汚設備に用いて好適な紫外線照射装置を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防汚設備は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物と、紫外線を照射する出射部をもつロッドとを備え、該ロッドは、該対象物及び/又はその周辺に該紫外線を照射可能に該出射部が該対象物に対して移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
この防汚設備では、ロッドの出射部が対象物に対して移動し、それによって対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射できる。このため、この防汚設備は、ロッドを対象物に設ける位置が設備の意匠及び使用上の制限を受け難く、設計の自由度が高い。また、出射部は、対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射可能に移動することから、紫外線を照射する範囲を広範囲にすることが可能であり、充分な防汚効果を発揮し易い。さらに、例えば防汚設備が使われている時には出射部をある位置に移動し、防汚設備が使われていない時には出射部を他の位置に移動させること等により、汚れが出射部に付着することを防止でき、耐久性のある防汚効果を実現する。
【0009】
したがって、本発明の防汚設備は、優れた意匠を呈し、かつ使用の便宜が損なわれず、充分な防汚効果を長期に亘って発揮することが可能である。
【0010】
対象物は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とするものである。例えば、洋風便器本体、便座、便蓋、シンク、カウンタ、浴槽等が対象物となり得る。
【0011】
ロッドは紫外線(波長が約300〜400nm)を照射する出射部をもつ。出射部はロッドの全体でもよく、一部でもよい。出射部がロッドの一部である場合、ロッドの先端に出射部が位置することが好ましい。これにより、紫外線を照射できる範囲が広くなったり、指向性が上がるからである。また、ロッドは、紫外線を照射可能な紫外線光源を出射部として自身が有していてもよいし、他に設けた紫外線光源の紫外線を自身が導波し、出射部から照射してもよい。紫外線光源としては、紫外線ランプ、紫外線LEDその他の一般的な紫外線光源を採用することができる。また、紫外線を含む光線を照射する白熱電球、蛍光灯、水銀ランプ等の光源を採用することもできる。紫外線照射装置の小型化、省電力化、耐久性のためには紫外線LEDを採用することが好ましい。
【0012】
ロッドの出射部は、対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射可能に対象物に対して移動可能である。出射部は、対象物に対して直線状に前進及び後退してもよく、対象物に対して揺動してもよい。
【0013】
対象物が洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つである場合、出射部は、洋風便器本体、便座上の人の局部、便座及び便蓋の少なくとも一つに紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。これらの場合、防汚設備は洋風便器に具体化される。例えば、対象物が洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つであり、出射部が洋風便器本体の鉢面に紫外線を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により洋風便器本体が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が洋風便器本体と床面との間に紫外線を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により洋風便器本体と床面との間が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が便座上の人の局部を照射可能に構成されている洋風便器では、その人の局部を殺菌することができる。この場合には、日焼けし難い340〜380nmの波長の紫外線を照射することが好ましい。出射部が便座を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により便座が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が便蓋を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により便蓋が殺菌され、防汚効果が得られる。
【0014】
洋風便器本体が鉢面に封水を形成するトラップをもつ場合、出射部は、封水の水位が下がる時に鉢面に突出し、トラップに紫外線を照射可能であることが好ましい。この場合、封水により紫外線の照射が不十分となり易いトラップにも、封水の水位が下がる時を有効に利用して、紫外線を確実に照射することができる。このため、トラップについて、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0015】
洋風便器が洗浄水を吐出可能なノズルを備える場合、ロッドはノズルであり得る。この場合、別個に紫外線照射装置を設置する必要がなく、防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれに起因する製品コストの低廉化を実現できる。そして、この洋風便器では、鉢面、便座及び便蓋等の広い範囲にノズルの先端から洗浄水を吐出しつつ紫外線を照射することにより、紫外線が導波された洗浄水を鉢面、便座及び便蓋等の広い範囲に当てることもできる。このため、この洋風便器は、鉢面、便座及び便蓋等をより効果的に殺菌し、清潔な状態を維持することができる。
【0016】
ノズルは、洗浄水を吐出する際、洗浄水に紫外線を照射することにより、その紫外線が導波された洗浄水を人の局部に当てるものであることができる。この洋風便器では、人の局部をより効果的に殺菌し、清潔にすることもできる。
【0017】
ノズルは、洗浄水を吐出する際、洗浄水に紫外線を照射することにより、その紫外線が導波された洗浄水を鉢面に当てるものであることもできる。この洋風便器では、鉢面をより効果的に殺菌し、清潔な状態を維持することができる。
【0018】
対象物が鉢面をもつシンクである場合、出射部は鉢面に紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。この場合、防汚設備はシンクに具体化される。このシンクは、紫外線により殺菌され、防汚効果が得られる。
【0019】
対象物がカウンタである場合、出射部はカウンタの表面又は裏面に紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。この場合、防汚設備はカウンタに具体化される。このカウンタでは、紫外線によりカウンタの表面又は裏面が殺菌され、防汚効果が得られる。
【0020】
対象物には、光触媒が設けられていることが好ましい。この場合、対象物に設けられた光触媒に紫外線が照射されることにより、光触媒の活性が上がり、対象物に付着した臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この防汚設備は、防汚性能をより確実に発揮させることができる。この場合、紫外線は、光触媒を効果的に励起可能な380nmの波長のものであることが好ましい。
【0021】
出射部は、周囲で人体が検知されない時、紫外線を照射可能であることも可能である。この場合、紫外線によって人体が害を受けることがなく、かつ防汚設備の効果を発揮させることが可能な時間に自動的に機能させることが可能となる。
【0022】
本発明の防汚設備において、ロッドが紫外線を透光可能な透光性材料からなり、ロッドの後端に紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられていることが好ましい。これにより、ロッド自体に紫外線光源を設ける必要がなくなる。このため、ロッドに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となり、防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となる。
【0023】
本発明の防汚設備において、紫外線光源は電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることが好ましい。これにより、紫外線光源への有線による給電が不要となる。このため、紫外線光源への給電を容易に実施可能となり、防汚設備の小型化及び簡素化が可能となる。
【0024】
本発明の防汚設備において、出射部の表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されていることが好ましい。この場合、この防汚設備では、出射部から紫外線が照射されるだけでなく、出射部の表面に形成された光触媒を含む防汚層にも紫外線が照射されることとなる。このため、この防汚設備は、出射部の表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この防汚設備は、より高い防汚効果が発揮される。
【0025】
本発明の紫外線照射装置は、紫外線を照射する出射部をもち、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物に対して該出射部が移動可能なロッドを備えていることを特徴とする。
【0026】
この紫外線照射装置を対象物又はその周辺に設ければ、その対象物を備えた設備を本発明の防汚設備にすることができる。
【0027】
本発明の紫外線照射装置は、対象物又はその周辺に設けられるシリンダを備え、ロッドは出射部が突出するようにシリンダに設けられていることができる。シリンダは、対象物又はその周辺に固定されてもよいし、移動可能に設けられてもよい。この紫外線照射装置では、ロッドをシリンダに収容した状態としておれば、防汚設備において、紫外線照射装置が目立たず、防汚設備の意匠及び使用の便宜を損ない難い。このため、この紫外線照射装置は設置場所の自由度が高い。また、この状態では、汚れが出射部に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、この紫外線照射装置は、防汚効果の低下を抑制することができる。また、この紫外線照射装置は、ロッドをシリンダから突出させた状態とすれば、出射部から紫外線を好適な範囲に照射し、対象物及び/又はその周辺を殺菌することが可能となる。このため、この紫外線照射装置は、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0028】
ロッドをシリンダから突出可能とする駆動方法としては、空気や水等による流体駆動、ソレノイド駆動若しくはモータ駆動等の一般的な駆動方法又はこれらの複合式のもの等を採用することができる。
【0029】
ロッドは紫外線を透光可能な透光性材料からなり、ロッドの後端には紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられ得る。この場合、ロッド自体に紫外線光源を設ける必要がなくなる。このため、ロッドに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となり、紫外線照射装置、ひいては防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となる。紫外線光源はシリンダに設けられることができる。
【0030】
紫外線光源がシリンダに設けられる場合、シリンダは紫外線を透光可能な透光性材料からなり得る。この場合、シリンダからロッドを突出させた状態で、出射部から紫外線を照射するだけでなく、シリンダに設けた紫外線光源によりシリンダ内部からシリンダ表面に向けて紫外線を照射することができる。また、シリンダ内にロッドを戻した状態でも、シリンダに設けた紫外線光源によりシリンダ内部からシリンダ表面に向けて紫外線を照射するようにし得る。このため、この紫外線照射装置は、シリンダの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、紫外線により殺菌等の防汚効果を発揮することができる。
【0031】
本発明の紫外線照射装置においても、紫外線光源は電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることが好ましい。これにより、紫外線光源への有線による給電が不要となる。このため、紫外線光源への給電を容易に実施可能となり、紫外線照射装置、ひいては防汚設備の小型化及び簡素化が可能となる。
【0032】
本発明の紫外線照射装置は、ロッドは出射部が外周側になるように対象物又はその周辺に揺動可能に設けられていることができる。この紫外線照射装置では、ロッドを一方向に揺動させた状態とし、防汚設備の意匠及び使用の便宜を損なわないようにすることができる。このため、この紫外線照射装置も設置場所の自由度が高い。また、この状態では、汚れが出射部に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、この紫外線照射装置は、防汚効果の低下を抑制することができる。また、この紫外線照射装置は、ロッドを他方向に揺動させた状態とし、出射部から紫外線を好適な範囲に照射し、対象物及び/又はその周辺を殺菌することが可能となる。このため、この紫外線照射装置も、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0033】
ロッドを揺動可能とする駆動方法としては、ソレノイド駆動若しくはモータ駆動等の一般的な駆動方法又はこれらの複合式のもの等を採用することができる。
【0034】
紫外線照射装置において、出射部は、紫外線を透光可能な透光性材料からなる透光部と、透光部内に設けられ、紫外線を照射可能な紫外線光源とからなり得る。この場合、ロッド自体に紫外線光源を設けることとなるが、対象物に直接紫外線を照射し、優れた防汚効果を発揮することができる。
【0035】
透光部の先端面及び後端面には紫外線を反射可能な反射層が形成されていることが好ましい。この場合、反射層によって紫外線が無駄な方向に照射されず、優れた防汚効果を発揮することができる。
【0036】
本発明の紫外線照射装置においても、出射部の表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されていることが好ましい。この場合、この紫外線照射装置では、出射部から紫外線が照射されるだけでなく、出射部の表面に形成された光触媒を含む防汚層にも紫外線が照射されることとなる。このため、この紫外線照射装置は、出射部の表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この紫外線照射装置は、より高い防汚効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を具体化した実施例1〜9を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0038】
図1〜3に示すように、実施例1の防汚設備は、実施例1の紫外線照射装置としてのノズル30が設けられた洋風便器1である。洋風便器1は、洋風便器本体10と便座24と便蓋26とを備える。
【0039】
図1において、洋風便器本体10の便鉢12の底部にトラップ14が設けられ、排水口16がこのトラップ14に後続して設けられている。便鉢12には、ロータンク20内の水が水路18を介して供給されるようになっている。
【0040】
この洋風便器本体10の後部上面には便座ボックス22が設置され、便座24と便蓋26とが便座ボックス22に対し上下方向に揺動自在に取り付けられている。便鉢12の鉢面12aと、便座24の下面、上面、内周面及び外周面と、便蓋26及び便座ボックス22の下面とには、図2に示すように、それぞれこれらの基材100上に光触媒を含む防汚層101が設けられている。
【0041】
便座ボックス22内には、洋風便器1を使用する者の臀部を温水で洗浄するためのノズル30のほか、このノズル30用の温水タンク(図示しない)や、臀部を乾燥させるための温風ファン(図示しない)等が設置されている。
【0042】
ノズル30は、図3(a)に示すように、シリンダ32と、シリンダ32から前方に突出可能なロッドとしてのノズル本体34と、ノズル本体34の先端の噴出口36と、ノズル本体34を後退方向に付勢するリターンスプリング38等を有する。シリンダ32の後部の給水口321に水(温水)を供給すると、図3(b)に示すように、水圧によってノズル本体34が前進し、噴出口36から上方へ温水が噴出し、人体の臀部が温水で洗浄される。ノズル本体34及びシリンダ32の外面にも光触媒を含む防汚層101が設けられている。
【0043】
このシリンダ32の先端側には1次コイル40が巻回され、ノズル本体34の後部には2次コイル42が巻回されている。なお、シリンダ32及びノズル本体34は合成樹脂などの非磁性かつ非導電性材料にて構成されている。1次コイル40は、ノズル本体34が前進限まで前進したときに、2次コイル42と対峙する位置に設けられている。
【0044】
また、シリンダ32の先端側には、ソレノイド44が設けられている。図示は省略するが、ノズル本体34には、前進限まで前進したときにソレノイド44と対面する位置に磁石片が設けられている。ソレノイド44に直流を通電して励磁すると、ソレノイド44と磁石片とが強力に吸引し合い、ノズル本体34が前進限にて保持されるよう構成されている。
【0045】
ノズル本体34の先端の下面、側面及び上面にそれぞれ出射部としての紫外線LED(UV−LED)46が設けられており、これらのUV−LED46へ2次コイル42から給電されるようにリード線(図示しない)が配線されている。
【0046】
このノズル30は紫外線照射装置を兼ねている。言い換えれば、実施例1の紫外線照射装置は、シリンダ32と、シリンダ32から突出可能なノズル本体34とを有し、ノズル本体34の先端からUV−LED46により紫外線を照射可能に構成されている。
【0047】
このように構成された洋風便器1において、ノズル30によって人体の臀部を温水で洗浄するときには、図3(a)の状態からシリンダ32へ温水を供給し、図3(b)のようにノズル本体34を前進させ、噴出口36から温水を上方に噴出させる。温水の供給を停止すると、リターンスプリング38の付勢力によりノズル本体34が図3(a)のように後退する。
【0048】
UV−LED46から便鉢12の鉢面12a等に紫外線を照射する場合には、まずノズル30に温水を供給してノズル本体34を前進させると共に、1次コイル40に交流を通電し、ソレノイド44に直流を通電する。1次コイル40に生じた磁束により2次コイル42に誘電電流が生じ、この電流がUV−LED46に流れ、UV−LED46が点灯する。これにより、便鉢12の鉢面12a、便座24の下面及び内周面、便蓋26の下面に直接的に紫外線が照射される。また、便蓋26の下面で反射した紫外線が便座24の上面に照射される。この紫外線照射により、殺菌作用が奏されると共に、防汚層101の光触媒が励起し、有機物分解作用が奏される。
【0049】
この紫外線照射を行う場合、ノズル本体34を前進させた後、シリンダ32への温水の供給を停止し、温水がノズル本体34から噴出しないようにしてもよい。この場合、ソレノイド44が励磁してノズル本体34がロック状態となっているので、温水の供給を停止してもノズル本体34は突出状態のままとなっている。なお、このようなソレノイド以外のロック機構を設けてもよい。
【0050】
紫外線照射を停止するときには、1次コイル40及びソレノイド44への通電を停止する。ノズル本体34はリターンスプリング38の付勢力により図3(a)のように後退する。
【0051】
実施例1のノズル30は、周囲で人体が検知されない時又は便蓋26が閉じている時、ノズル本体34がシリンダ32から突出して先端のUV−LED46を点灯させ、紫外線を照射することもできる。この場合、紫外線によって人体が害を受けることがなく、かつノズル30の効果を発揮させることが可能な時間に自動的にノズル30を機能させることができる。
【0052】
逆に、ノズル30によって人体の臀部の洗浄中にUV−LED46を点灯させ、臀部を紫外線殺菌するようにすることもできる。この場合には、人体に長時間紫外線を照射しないように照射時間を適度に設定することが好ましい。
【0053】
また、実施例1の洋風便器1において、ノズル本体34は、トラップ14に形成された封水の水位が下がる時、シリンダ32から突出してUV−LED46から紫外線を照射することもできる。この場合、封水により紫外線の照射が不十分となり易いトラップ14にも、封水の水位が下がる時を有効に利用して、紫外線を確実に照射することができる。このため、トラップ14について、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0054】
こうして、実施例1の洋風便器1では、使用者が使用する際に汚れが付着し難い便座24の裏面側等にシリンダ32を設置している。そして、この洋風便器1では、使用者が使用しない間に、紫外線を洋風便器本体10の鉢面12aの広い範囲に照射可能なようにノズル本体34をシリンダ32から鉢面12a内に突出させることも可能である。この場合、この洋風便器1は、使用者が使用しない間に殺菌をすることができる。また、この洋風便器1では、使用者が使用する際、ノズル本体34を鉢面12a内からシリンダ32側に戻すことができるので、UV−LED46が汚れ難くなっており、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、実施例1の洋風便器1は、長期に亘って清潔な状態を維持することができる。
【0055】
また、ノズル30は、シリンダ32と、シリンダ32から突出可能なノズル本体34とを有し、ノズル本体34の先端から紫外線を照射可能に構成されている。このため、ノズル本体34をシリンダ32に収容した状態としておれば、洋風便器1において、ノズル30が洋風便器1の意匠及び使用の便宜を損なわない。このため、このノズル30の設置場所の自由度が高くなっている。また、この状態では、汚れがUV−LED46に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、ノズル30は、防汚効果の低下を抑制することができている。
【0056】
さらに、ノズル30は、ノズル本体34をシリンダ32から突出させた状態とすれば、ノズル本体34がUV−LED46から紫外線を好適な範囲に照射し、洋風便器本体10の鉢面12a等を殺菌することが可能となっている。このため、このノズル30は、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0057】
したがって、実施例1の洋風便器1は、優れた意匠を呈し、かつ使用の便宜が損なわれず、充分な防汚効果を長期に亘って発揮することが可能である。また、実施例1のノズル30は、洋風便器1への設置場所の自由度が高く、かつ洋風便器1の防汚効果を長期に亘って発揮し易い。
【0058】
また、実施例1の洋風便器1は、ノズル30が紫外線照射装置を兼ねていることから、別個に紫外線照射装置を設置する必要がなくなっており、洋風便器1の小型化及び簡素化並びにそれに起因する製品コストの低廉化を実現できている。
【0059】
さらに、実施例1のノズル30は、UV−LED46が電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることから、小型化及び簡素化が可能となっている。
【実施例2】
【0060】
図4に示すように、実施例2の紫外線照射装置としてのノズル301は、実施例1のノズル30のシリンダ32の後端側に1次コイル40aを増設したものである。1次コイル40aは、シリンダ32の前端側に設けられた1次コイル40と同じ構成である。また、シリンダ32の内側表面及びノズル本体34の外表面には、図5に示すように、それぞれこれらの基材100上に紫外線を反射可能な反射層102と防汚層101と順次が設けられている。他の構成は実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0061】
このような構成である実施例2のノズル301は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、ノズル本体34をシリンダ32内に収容した状態において、1次コイル40aに通電することにより、UV−LED46を点灯させる。そして、UV−LED46から照射された紫外線は、シリンダ32の内表面の反射層102及び防汚層101に当たり、周囲に散乱して、ノズル本体34の外表面の反射層102及び防汚層101にも当たる。その結果、紫外線が照射されたシリンダ32及びノズル本体34の防汚層101では、光触媒の活性が上がって防汚効果が発揮される。このため、このノズル301は、ノズル本体34がシリンダ32内に収容された状態においても、シリンダ32及びノズル本体34を清潔な状態に維持することができる。
【実施例3】
【0062】
実施例1のノズル30では、シリンダ32が固定されて動かないものであるのに対して、図6に示すように、実施例3の紫外線照射装置としてのノズル302では、シリンダ32が軸芯O1を中心軸として回転可能とされている点が異なる。他の構成は実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0063】
実施例3のノズル302において、シリンダ32は、軸芯O1を中心軸とする軸受522を介して、支持部材523に支承されている。また、シリンダ32の後端側の外周には回転用ギヤ520が一体に形成され、支持部材523には回転用ギヤ520と噛み合うギヤ付きモータ524が設けられている。これにより、シリンダ32は、軸芯O1を中心軸として回転可能とされている。また、支持部材523には、給水口521が形成されており、シリンダ32の回転を許容しつつ、シリンダ32内に水を供給可能とされている。
【0064】
このような構成である実施例3のノズル302は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、図7に示すように、シリンダ32を軸芯O1を中心軸として回転させ、ノズル本体34の噴出口36の吐出方向を変更することができる。
【0065】
また、図8(a)〜(d)に示すように、このノズル302は、シリンダ32に対してノズル本体34を前進後退させつつ、シリンダ32を回転させて噴出口36の吐出方向を変更することにより、鉢面12a内の全域に紫外線を照射して、より確実に殺菌効果を発揮させることができる。
【実施例4】
【0066】
図9及び図10に示すように、実施例4の紫外線照射装置としてのノズル303は、実施例1のノズル30に、UV−LED46及びUV−LED46を制御する制御基板461を冷却する冷却流路530及び冷却配管531を増設したものである。他の構成は、実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0067】
実施例4のノズル303において、UV−LED46には制御基板461が一体に設けられており、UV−LED46が発光する際には、双方が発熱して高温となる傾向にある。また、噴出口36から温水が吐出される場合には、さらにその傾向が強くなる。
【0068】
このため、このノズル303では、図10に示すように、ノズル本体34の後端側から先端側のUV−LED46及び制御基板461まで、冷却流路530が形成されている。また、シリンダ32内には、シリンダ32の後端から冷却流路530内に少なくとも一部が挿通される冷却配管531が設けられている。
【0069】
この冷却配管531は、図9に示すように、ノズル本体34がシリンダ32内に収容される場合に、冷却流路530内にほぼ全体が挿通されてノズル本体34の前進後退を許容するようになっている。そして、外部から供給される冷却水は、冷却配管531及び冷却流路530に形成された往路(図示しない)を介して、UV−LED46及び制御基板461を冷却し、冷却配管531及び冷却流路530に形成された復路(図示しない)を介して、外部に排出されるようになっている。
【0070】
このような構成である実施例4のノズル303は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、冷却配管531及び冷却流路530によって、UV−LED46及び制御基板461を冷却し、耐久性を向上させることができる。
【0071】
なお、冷却配管531及び冷却流路530に往路のみを形成し、冷却流路530の先端側に吐出口を設けて、冷却水を吐出口から吐出するようにしてもよい。
【実施例5】
【0072】
実施例1ではノズル30が紫外線照射装置を兼ねているのに対して、図11に示す実施例5の紫外線照射装置30aは、図1に示す洋風便器1において、ノズル30の隣に別個に設置されるものである。他の構成は、実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0073】
実施例5の紫外線照射装置30aは、シリンダ32aと、シリンダ32aから前方に突出可能なロッド34aとを有する。
【0074】
シリンダ32a及びロッド34aを構成する材料は、紫外線を透光可能な透光性材料であるシリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等から適宜選択されたものである。シリンダ32a内は、ロッド34aを後退方向に付勢するリターンスプリング38aが配設されている。
【0075】
シリンダ32aの後端には、UV−LED46aが設けられており、前端が封止された円筒状のロッド34aに紫外線を入射可能とされている。また、シリンダ32aの後部には、空気供給口321aが配設されている。
【0076】
空気供給口321aには、図12に示すように、送風配管70、送風手段71が接続されている。送風配管70の途中には、香り付加手段72が設置され、シリンダ32aに供給する空気に香りを付加することが可能とされている。送風配管70及び送風手段71によって、シリンダ32aに空気が供給されることにより、図13に示すように、ロッド34aが前方に突出可能となっている。
【0077】
図11及び図13に示すように、ロッド34aの先端には、UV−LED46aから入射された紫外線を照射可能な出射部341aと、空気噴出口36aとが形成されている。
【0078】
出射部341aは、微小な突起を面状に配列したものであり、紫外線を広い範囲に拡散させつつ出射可能とされている。出射部341aの表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層101が形成されている。
【0079】
空気噴出口36aは、シリンダ32aに供給された空気を噴出するためのものである。特に、香り付加手段72を作動させることで、空気噴出口36aからよい香りの空気を噴出することが可能となっている。
【0080】
このような構成である実施例5の紫外線照射装置30aも、実施例1のノズル30と同様の作用効果を奏することができる。また、紫外線照射装置30aはノズル30と別個に設置されているので、機能分離によって作動時の制約を少なくすることができる。
【0081】
それに加えて、この紫外線照射装置30aにおいて、シリンダ32aは紫外線を透光可能な上述の透光性材料からなり、UV−LED46aがシリンダ32aの後端に設けられている。このため、この紫外線照射装置30aは、シリンダ32aからロッド34aを突出させた状態で、ロッド34aの先端から紫外線を照射するだけでなく、シリンダ32aの後端に設けたUV−LED46aにより、シリンダ32aの内部からシリンダ32aの表面に向けて紫外線を照射することができる。また、シリンダ32a内にロッド34aを戻した状態でも、シリンダ32aの後端に設けたUV−LED46aにより、シリンダ32aの内部からシリンダ32aの表面に向けて紫外線を照射することができる。このため、この紫外線照射装置30aは、シリンダ32aの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、紫外線により殺菌等の防汚効果を発揮することができる。
【0082】
さらに、この紫外線照射装置30aにおいて、ロッド34aは紫外線を透光可能な上述の透光性材料からなり、ロッド34aに紫外線を入射可能なUV−LED46aがシリンダ32aに設けられている。このため、ロッド34aに紫外線光源を設ける必要がなくなっている。このため、ロッド34aに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となっており、紫外線照射装置30a、ひいては洋風便器1の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となっている。
【0083】
また、この紫外線照射装置30aは、出射部341aを有しているので、ロッド34aの先端から所望な範囲に好適に紫外線を照射することを一層容易に実現することができている。
【0084】
さらに、この紫外線照射装置30aにおいて、出射部341aの表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層101が形成されている。このため、この紫外線照射装置30aでは、シリンダ32aからロッド34aを突出させた状態で、ロッド34aの先端の出射部341aから紫外線が照射されるだけでなく、出射部341aの表面に形成された防汚層101にも紫外線が照射される。このため、この紫外線照射装置30aは、ロッド34aの先端の出射部341aの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層101において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができている。
【0085】
なお、実施例5の紫外線照射装置30aは、図14に示すように、突出した状態のロッド34aに対して、便蓋26の裏面に設置されたUV−LED26aから紫外線を照射することで、ロッド34aの表面における防汚効果をさらに向上させることが可能である。
【0086】
また、実施例5の紫外線照射装置30aは、図15に示すように、シリンダ32a及び後退してシリンダ32a内に収容された状態のロッド34aに対して、便座24の裏面に設置されたUV−LED24aから紫外線を照射することで、シリンダ32a及びロッド34aの表面における防汚効果をさらに向上させることが可能である。
【実施例6】
【0087】
実施例5の紫外線照射装置30aでは、UV−LED46aがシリンダ32aの後端に設置され、ロッド34aの先端に出射部341aが形成されているのに対して、図16及び図17に示すように、実施例6の紫外線照射装置30bでは、ロッド34bの先端に出射部としてのUV−LED46bが設置されている点が異なる。他の構成は、実施例5の紫外線照射装置30aと同様であるので、説明は省く。
【0088】
実施例6の紫外線照射装置30bにおいて、UV−LED46bは、前端が封止された円筒状のロッド34bの先端に設置され、紫外線をトラップ14の方向に照射可能な姿勢とされている。
【0089】
シリンダ32bの後端側からロッド34bの内部を経て、ロッド34bの先端のUV−LED46bまでには、給電用のリード線81が配線されている。リード線81は、コイル状に形成され、ロッド34bの突出にあわせて追従可能とされている。
【0090】
このような構成である実施例6の紫外線照射装置30bも、実施例1のノズル30と同様の作用効果を奏することができる。また、この紫外線照射装置30bは、実施例5の紫外線照射装置30aと同様にノズル30と別個に設置されているので、機能分離によって作動時の制約を少なくすることができる。また、実施例6の紫外線照射装置30bは、UV−LED46bをロッド34bの先端に設置していることから、実施例5の紫外線照射装置30aと比べて、特定の方向に紫外線を集中的に照射したい場合に適している。例えば、図18に示す変形例の紫外線照射装置30cのように、2個以上のUV−LED46bをロッド34bの先端に出射部として設置すれば、特定の方向に紫外線をさらに集中的に照射することが可能である。
【実施例7】
【0091】
図19に示すように、実施例7の防汚設備は、実施例6の紫外線照射装置30bが設けられたシンク91である。
【0092】
この場合、紫外線照射装置30bは、洋風便器1に適用される場合と同様に、通常はロッド34bが後退して、シリンダ32b内に収容されており、紫外線による殺菌作用が必要なときには、ロッド34bが前方に突出してシンク91の排水口92又は屑入れ93に紫外線を照射する。こうして、シンク91は、紫外線の殺菌作用により、雑菌の繁殖が抑制され、清潔な状態を維持することが可能となっている。他の作用効果は実施例1と同様である。
【実施例8】
【0093】
図20及び図21に示すように、実施例8の防汚設備は、紫外線照射装置としてのロッド96をカウンタ95に揺動可能に設けたシンク97である。
【0094】
ロッド96は、図22に示すように、ロッド本体961と、このロッド本体961の先端に設けられた出射部962とからなる。出射部962は、紫外線を透光可能な透光性材料からなる透光部962aと、この透光部962a内に設けられたUV−LED46cとからなる。透光部962aの先端面及び後端面には紫外線を反射可能な反射層102が形成されている。
【0095】
ロッド本体961は図示しないモータによりカウンタ95に対して揺動可能に構成されている。また、図20及び図21に示すように、カウンタ95の前面には赤外線、マイクロ波等を用いた人体検知センサ95aが設けられている。人体検知センサ95aによってカウンタ95の前に人がいると検知されている間は、モータによってロッド96が水平になり、かつUV−LED46cへの給電が行われない。逆に、人体検知センサ95aによってカウンタ95の前に人がいると検知されれば、モータによってロッド96がカウンタ95の縁から起立し、かつUV−LED46cへの給電が行われる。
【0096】
このシンク97では、人がカウンタ95の前面にいる場合には、図20に示すように、ロッド96が水平になり、シンク97の意匠を損なわないとともに、使用の邪魔にならない。また、人がカウンタ95の前面にいない場合には、図21に示すように、ロッド96が起立し、外周側の出射部962から紫外線を直接好適な範囲に照射し、カウンタ95の表面を殺菌することが可能となる。このため、カウンタ95の防汚効果が得られる。この際、透光部962が反射層102を有しているため、紫外線は所望の角度で照射されて無駄な方向に照射されず、優れた防汚効果を発揮することができる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【実施例9】
【0097】
図23に示すように、実施例9の紫外線照射装置80は、透明なロッド50の後端面に対峙してUV−LED52を設けたものである。ロッド50は、公知のモータ等により対象物に対して移動可能に構成されている。
【0098】
ロッド50は、UV−LED52からの紫外線を内部に入射させ、全反射を利用して紫外線を先端まで導く。そして、先端に設けた粗面等よりなる出射部50aから紫外線を出射させる。この出射部50aは、汚れが付着し易いので、光触媒を含む防汚層101をコーティング等により保持させることが好ましい。防汚層101はロッド50のその他の部位にも設けられてもよい。出射部50aはロッド50の先端の全外周面に設けてもよい。
【0099】
以上において、本発明を実施例1〜9に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜9に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
例えば、図1では、洋風便器本体1にロータンク20が設置されているが、ロータンクカバーを備えた機種や、ロータンクのない機種の洋風便器等にも本発明を適用することができる。
【0101】
また、本発明では、洋風便器のさらに他の部位に防汚層101が設けられてもよい。本発明では、洋風便器を据え付けた床面等と洋風便器との境界部にコーキングを施した場合、このコーキングに光触媒を保持させてもよい。この場合、光触媒をコーティング等により保持させるときには、洋風便器とコーキングとに跨って光触媒を保持させたり、床面とコーキングとに跨って光触媒を保持させたりすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、洋風便器、シンク、浴室等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1の洋風便器の縦断面図である。
【図2】便鉢等の要部を示す拡大断面図である。
【図3】実施例1の紫外線照射装置に係り、(a)はノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図であり、(b)はノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図4】実施例2の紫外線照射装置に係り、(a)はノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図であり、(b)はノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図5】シリンダ等の要部を示す拡大断面図である。
【図6】実施例3の紫外線照射装置に係り、シリンダの回転機構を示す断面図である。
【図7】実施例3の洋風便器に係り、図1のα方向から見て、紫外線の照射方向を変更する動作を示す概略図である。
【図8】実施例3の洋風便器に係り、(a)〜(d)は、図1のβ方向から見て、紫外線の照射方向を変更する連続動作を示す概略図である。
【図9】実施例4の紫外線照射装置に係り、ノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図10】実施例4の紫外線照射装置に係り、ノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図11】実施例5の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図12】実施例5の紫外線照射装置に係り、送風手段、送風配管及び香り付加手段を示す概略断面図である。
【図13】実施例5の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図14】実施例5の紫外線照射装置に係り、便蓋の裏面にも紫外線光源を設置した例を示す概略断面図である。
【図15】実施例5の紫外線照射装置に係り、便座の裏面にも紫外線光源を設置した例を示す概略断面図である。
【図16】実施例6の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図17】実施例6の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図18】実施例6の紫外線照射装置の変形例を示す概略断面図である。
【図19】実施例7のシンクを示す概略断面図である。
【図20】実施例8のカウンタを示し、ロッドが水平になっている状態を示す斜視図である。
【図21】実施例8のカウンタを示し、ロッドが起立している状態を示す斜視図である。
【図22】実施例8の紫外線照射装置の拡大斜視図である。
【図23】実施例9の紫外線照射装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…洋風便器
10…洋風便器本体
12a…鉢面
14…トラップ
24…便座
26…便蓋
91…シンク
95…カウンタ
24a、26a、46、46a、46b、46c、52…紫外線光源(UV−LED)
40、40a…1次コイル
42…2次コイル
46、46b、341a、962、50a…出射部
101…防汚層
30、301、302、303、30a、30b、30c、96…紫外線照射装置(30、301、302、303…ノズル、96…ロッド)
32、32a、32b…シリンダ
34、34a、34b…ロッド(34…ノズル本体)
961…ロッド本体
962a…透光部
102…反射層
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚設備及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に従来の防汚設備が開示されている。例えば特許文献1の図1〜3に開示されている防汚設備は、自己が防汚を必要とする洋風便器本体と、この洋風便器本体に固定され、洋風便器本体に紫外線を照射可能な紫外線光源とを備えている。また、この防汚設備では、洋風便器本体の紫外線が照射される部分に光触媒が設けられている。
【0003】
この防汚設備は、紫外線光源が照射する紫外線により洋風便器本体が殺菌され、防汚効果が得られる。また、その際、紫外線によって光触媒の活性が上がり、より高い防汚効果が発揮される。特許文献1の他の防汚設備及び特許文献2、3に開示された防汚設備も同様である。
【0004】
【特許文献1】実開平5−16881号公報
【特許文献2】特開平11−71803号公報
【特許文献3】特開2001−65035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の防汚設備は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする洋風便器本体等の対象物に紫外線光源が固定されている。このため、この防汚設備は、設備の意匠及び使用上の観点から、紫外線光源を対象物に固定する位置の自由度が低かった。また、こうして紫外線光源を対象物に固定する位置を限定すると、紫外線が照射される範囲が限定されてしまい、充分な防汚効果を発揮し難い。さらに、意匠をある程度犠牲にして充分な防汚効果を発揮できるように紫外線光源を対象物に固定すると、汚れが紫外線光源に付着しやすく、汚れによって紫外線を照射することが困難な事態を生じ、防汚効果の耐久性が損なわれ易い。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、意匠や使用の便宜を損なうことなく、充分な防汚効果を長期に亘って発揮可能な防汚設備を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、そのような防汚設備に用いて好適な紫外線照射装置を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防汚設備は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物と、紫外線を照射する出射部をもつロッドとを備え、該ロッドは、該対象物及び/又はその周辺に該紫外線を照射可能に該出射部が該対象物に対して移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
この防汚設備では、ロッドの出射部が対象物に対して移動し、それによって対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射できる。このため、この防汚設備は、ロッドを対象物に設ける位置が設備の意匠及び使用上の制限を受け難く、設計の自由度が高い。また、出射部は、対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射可能に移動することから、紫外線を照射する範囲を広範囲にすることが可能であり、充分な防汚効果を発揮し易い。さらに、例えば防汚設備が使われている時には出射部をある位置に移動し、防汚設備が使われていない時には出射部を他の位置に移動させること等により、汚れが出射部に付着することを防止でき、耐久性のある防汚効果を実現する。
【0009】
したがって、本発明の防汚設備は、優れた意匠を呈し、かつ使用の便宜が損なわれず、充分な防汚効果を長期に亘って発揮することが可能である。
【0010】
対象物は、自己又は自己の周辺が防汚を必要とするものである。例えば、洋風便器本体、便座、便蓋、シンク、カウンタ、浴槽等が対象物となり得る。
【0011】
ロッドは紫外線(波長が約300〜400nm)を照射する出射部をもつ。出射部はロッドの全体でもよく、一部でもよい。出射部がロッドの一部である場合、ロッドの先端に出射部が位置することが好ましい。これにより、紫外線を照射できる範囲が広くなったり、指向性が上がるからである。また、ロッドは、紫外線を照射可能な紫外線光源を出射部として自身が有していてもよいし、他に設けた紫外線光源の紫外線を自身が導波し、出射部から照射してもよい。紫外線光源としては、紫外線ランプ、紫外線LEDその他の一般的な紫外線光源を採用することができる。また、紫外線を含む光線を照射する白熱電球、蛍光灯、水銀ランプ等の光源を採用することもできる。紫外線照射装置の小型化、省電力化、耐久性のためには紫外線LEDを採用することが好ましい。
【0012】
ロッドの出射部は、対象物及び/又はその周辺に紫外線を照射可能に対象物に対して移動可能である。出射部は、対象物に対して直線状に前進及び後退してもよく、対象物に対して揺動してもよい。
【0013】
対象物が洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つである場合、出射部は、洋風便器本体、便座上の人の局部、便座及び便蓋の少なくとも一つに紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。これらの場合、防汚設備は洋風便器に具体化される。例えば、対象物が洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つであり、出射部が洋風便器本体の鉢面に紫外線を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により洋風便器本体が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が洋風便器本体と床面との間に紫外線を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により洋風便器本体と床面との間が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が便座上の人の局部を照射可能に構成されている洋風便器では、その人の局部を殺菌することができる。この場合には、日焼けし難い340〜380nmの波長の紫外線を照射することが好ましい。出射部が便座を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により便座が殺菌され、防汚効果が得られる。出射部が便蓋を照射可能に構成されている洋風便器では、紫外線により便蓋が殺菌され、防汚効果が得られる。
【0014】
洋風便器本体が鉢面に封水を形成するトラップをもつ場合、出射部は、封水の水位が下がる時に鉢面に突出し、トラップに紫外線を照射可能であることが好ましい。この場合、封水により紫外線の照射が不十分となり易いトラップにも、封水の水位が下がる時を有効に利用して、紫外線を確実に照射することができる。このため、トラップについて、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0015】
洋風便器が洗浄水を吐出可能なノズルを備える場合、ロッドはノズルであり得る。この場合、別個に紫外線照射装置を設置する必要がなく、防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれに起因する製品コストの低廉化を実現できる。そして、この洋風便器では、鉢面、便座及び便蓋等の広い範囲にノズルの先端から洗浄水を吐出しつつ紫外線を照射することにより、紫外線が導波された洗浄水を鉢面、便座及び便蓋等の広い範囲に当てることもできる。このため、この洋風便器は、鉢面、便座及び便蓋等をより効果的に殺菌し、清潔な状態を維持することができる。
【0016】
ノズルは、洗浄水を吐出する際、洗浄水に紫外線を照射することにより、その紫外線が導波された洗浄水を人の局部に当てるものであることができる。この洋風便器では、人の局部をより効果的に殺菌し、清潔にすることもできる。
【0017】
ノズルは、洗浄水を吐出する際、洗浄水に紫外線を照射することにより、その紫外線が導波された洗浄水を鉢面に当てるものであることもできる。この洋風便器では、鉢面をより効果的に殺菌し、清潔な状態を維持することができる。
【0018】
対象物が鉢面をもつシンクである場合、出射部は鉢面に紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。この場合、防汚設備はシンクに具体化される。このシンクは、紫外線により殺菌され、防汚効果が得られる。
【0019】
対象物がカウンタである場合、出射部はカウンタの表面又は裏面に紫外線を照射可能に構成されていることが可能である。この場合、防汚設備はカウンタに具体化される。このカウンタでは、紫外線によりカウンタの表面又は裏面が殺菌され、防汚効果が得られる。
【0020】
対象物には、光触媒が設けられていることが好ましい。この場合、対象物に設けられた光触媒に紫外線が照射されることにより、光触媒の活性が上がり、対象物に付着した臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この防汚設備は、防汚性能をより確実に発揮させることができる。この場合、紫外線は、光触媒を効果的に励起可能な380nmの波長のものであることが好ましい。
【0021】
出射部は、周囲で人体が検知されない時、紫外線を照射可能であることも可能である。この場合、紫外線によって人体が害を受けることがなく、かつ防汚設備の効果を発揮させることが可能な時間に自動的に機能させることが可能となる。
【0022】
本発明の防汚設備において、ロッドが紫外線を透光可能な透光性材料からなり、ロッドの後端に紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられていることが好ましい。これにより、ロッド自体に紫外線光源を設ける必要がなくなる。このため、ロッドに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となり、防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となる。
【0023】
本発明の防汚設備において、紫外線光源は電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることが好ましい。これにより、紫外線光源への有線による給電が不要となる。このため、紫外線光源への給電を容易に実施可能となり、防汚設備の小型化及び簡素化が可能となる。
【0024】
本発明の防汚設備において、出射部の表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されていることが好ましい。この場合、この防汚設備では、出射部から紫外線が照射されるだけでなく、出射部の表面に形成された光触媒を含む防汚層にも紫外線が照射されることとなる。このため、この防汚設備は、出射部の表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この防汚設備は、より高い防汚効果が発揮される。
【0025】
本発明の紫外線照射装置は、紫外線を照射する出射部をもち、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物に対して該出射部が移動可能なロッドを備えていることを特徴とする。
【0026】
この紫外線照射装置を対象物又はその周辺に設ければ、その対象物を備えた設備を本発明の防汚設備にすることができる。
【0027】
本発明の紫外線照射装置は、対象物又はその周辺に設けられるシリンダを備え、ロッドは出射部が突出するようにシリンダに設けられていることができる。シリンダは、対象物又はその周辺に固定されてもよいし、移動可能に設けられてもよい。この紫外線照射装置では、ロッドをシリンダに収容した状態としておれば、防汚設備において、紫外線照射装置が目立たず、防汚設備の意匠及び使用の便宜を損ない難い。このため、この紫外線照射装置は設置場所の自由度が高い。また、この状態では、汚れが出射部に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、この紫外線照射装置は、防汚効果の低下を抑制することができる。また、この紫外線照射装置は、ロッドをシリンダから突出させた状態とすれば、出射部から紫外線を好適な範囲に照射し、対象物及び/又はその周辺を殺菌することが可能となる。このため、この紫外線照射装置は、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0028】
ロッドをシリンダから突出可能とする駆動方法としては、空気や水等による流体駆動、ソレノイド駆動若しくはモータ駆動等の一般的な駆動方法又はこれらの複合式のもの等を採用することができる。
【0029】
ロッドは紫外線を透光可能な透光性材料からなり、ロッドの後端には紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられ得る。この場合、ロッド自体に紫外線光源を設ける必要がなくなる。このため、ロッドに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となり、紫外線照射装置、ひいては防汚設備の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となる。紫外線光源はシリンダに設けられることができる。
【0030】
紫外線光源がシリンダに設けられる場合、シリンダは紫外線を透光可能な透光性材料からなり得る。この場合、シリンダからロッドを突出させた状態で、出射部から紫外線を照射するだけでなく、シリンダに設けた紫外線光源によりシリンダ内部からシリンダ表面に向けて紫外線を照射することができる。また、シリンダ内にロッドを戻した状態でも、シリンダに設けた紫外線光源によりシリンダ内部からシリンダ表面に向けて紫外線を照射するようにし得る。このため、この紫外線照射装置は、シリンダの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、紫外線により殺菌等の防汚効果を発揮することができる。
【0031】
本発明の紫外線照射装置においても、紫外線光源は電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることが好ましい。これにより、紫外線光源への有線による給電が不要となる。このため、紫外線光源への給電を容易に実施可能となり、紫外線照射装置、ひいては防汚設備の小型化及び簡素化が可能となる。
【0032】
本発明の紫外線照射装置は、ロッドは出射部が外周側になるように対象物又はその周辺に揺動可能に設けられていることができる。この紫外線照射装置では、ロッドを一方向に揺動させた状態とし、防汚設備の意匠及び使用の便宜を損なわないようにすることができる。このため、この紫外線照射装置も設置場所の自由度が高い。また、この状態では、汚れが出射部に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、この紫外線照射装置は、防汚効果の低下を抑制することができる。また、この紫外線照射装置は、ロッドを他方向に揺動させた状態とし、出射部から紫外線を好適な範囲に照射し、対象物及び/又はその周辺を殺菌することが可能となる。このため、この紫外線照射装置も、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0033】
ロッドを揺動可能とする駆動方法としては、ソレノイド駆動若しくはモータ駆動等の一般的な駆動方法又はこれらの複合式のもの等を採用することができる。
【0034】
紫外線照射装置において、出射部は、紫外線を透光可能な透光性材料からなる透光部と、透光部内に設けられ、紫外線を照射可能な紫外線光源とからなり得る。この場合、ロッド自体に紫外線光源を設けることとなるが、対象物に直接紫外線を照射し、優れた防汚効果を発揮することができる。
【0035】
透光部の先端面及び後端面には紫外線を反射可能な反射層が形成されていることが好ましい。この場合、反射層によって紫外線が無駄な方向に照射されず、優れた防汚効果を発揮することができる。
【0036】
本発明の紫外線照射装置においても、出射部の表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されていることが好ましい。この場合、この紫外線照射装置では、出射部から紫外線が照射されるだけでなく、出射部の表面に形成された光触媒を含む防汚層にも紫外線が照射されることとなる。このため、この紫外線照射装置は、出射部の表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができる。その結果、この紫外線照射装置は、より高い防汚効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を具体化した実施例1〜9を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0038】
図1〜3に示すように、実施例1の防汚設備は、実施例1の紫外線照射装置としてのノズル30が設けられた洋風便器1である。洋風便器1は、洋風便器本体10と便座24と便蓋26とを備える。
【0039】
図1において、洋風便器本体10の便鉢12の底部にトラップ14が設けられ、排水口16がこのトラップ14に後続して設けられている。便鉢12には、ロータンク20内の水が水路18を介して供給されるようになっている。
【0040】
この洋風便器本体10の後部上面には便座ボックス22が設置され、便座24と便蓋26とが便座ボックス22に対し上下方向に揺動自在に取り付けられている。便鉢12の鉢面12aと、便座24の下面、上面、内周面及び外周面と、便蓋26及び便座ボックス22の下面とには、図2に示すように、それぞれこれらの基材100上に光触媒を含む防汚層101が設けられている。
【0041】
便座ボックス22内には、洋風便器1を使用する者の臀部を温水で洗浄するためのノズル30のほか、このノズル30用の温水タンク(図示しない)や、臀部を乾燥させるための温風ファン(図示しない)等が設置されている。
【0042】
ノズル30は、図3(a)に示すように、シリンダ32と、シリンダ32から前方に突出可能なロッドとしてのノズル本体34と、ノズル本体34の先端の噴出口36と、ノズル本体34を後退方向に付勢するリターンスプリング38等を有する。シリンダ32の後部の給水口321に水(温水)を供給すると、図3(b)に示すように、水圧によってノズル本体34が前進し、噴出口36から上方へ温水が噴出し、人体の臀部が温水で洗浄される。ノズル本体34及びシリンダ32の外面にも光触媒を含む防汚層101が設けられている。
【0043】
このシリンダ32の先端側には1次コイル40が巻回され、ノズル本体34の後部には2次コイル42が巻回されている。なお、シリンダ32及びノズル本体34は合成樹脂などの非磁性かつ非導電性材料にて構成されている。1次コイル40は、ノズル本体34が前進限まで前進したときに、2次コイル42と対峙する位置に設けられている。
【0044】
また、シリンダ32の先端側には、ソレノイド44が設けられている。図示は省略するが、ノズル本体34には、前進限まで前進したときにソレノイド44と対面する位置に磁石片が設けられている。ソレノイド44に直流を通電して励磁すると、ソレノイド44と磁石片とが強力に吸引し合い、ノズル本体34が前進限にて保持されるよう構成されている。
【0045】
ノズル本体34の先端の下面、側面及び上面にそれぞれ出射部としての紫外線LED(UV−LED)46が設けられており、これらのUV−LED46へ2次コイル42から給電されるようにリード線(図示しない)が配線されている。
【0046】
このノズル30は紫外線照射装置を兼ねている。言い換えれば、実施例1の紫外線照射装置は、シリンダ32と、シリンダ32から突出可能なノズル本体34とを有し、ノズル本体34の先端からUV−LED46により紫外線を照射可能に構成されている。
【0047】
このように構成された洋風便器1において、ノズル30によって人体の臀部を温水で洗浄するときには、図3(a)の状態からシリンダ32へ温水を供給し、図3(b)のようにノズル本体34を前進させ、噴出口36から温水を上方に噴出させる。温水の供給を停止すると、リターンスプリング38の付勢力によりノズル本体34が図3(a)のように後退する。
【0048】
UV−LED46から便鉢12の鉢面12a等に紫外線を照射する場合には、まずノズル30に温水を供給してノズル本体34を前進させると共に、1次コイル40に交流を通電し、ソレノイド44に直流を通電する。1次コイル40に生じた磁束により2次コイル42に誘電電流が生じ、この電流がUV−LED46に流れ、UV−LED46が点灯する。これにより、便鉢12の鉢面12a、便座24の下面及び内周面、便蓋26の下面に直接的に紫外線が照射される。また、便蓋26の下面で反射した紫外線が便座24の上面に照射される。この紫外線照射により、殺菌作用が奏されると共に、防汚層101の光触媒が励起し、有機物分解作用が奏される。
【0049】
この紫外線照射を行う場合、ノズル本体34を前進させた後、シリンダ32への温水の供給を停止し、温水がノズル本体34から噴出しないようにしてもよい。この場合、ソレノイド44が励磁してノズル本体34がロック状態となっているので、温水の供給を停止してもノズル本体34は突出状態のままとなっている。なお、このようなソレノイド以外のロック機構を設けてもよい。
【0050】
紫外線照射を停止するときには、1次コイル40及びソレノイド44への通電を停止する。ノズル本体34はリターンスプリング38の付勢力により図3(a)のように後退する。
【0051】
実施例1のノズル30は、周囲で人体が検知されない時又は便蓋26が閉じている時、ノズル本体34がシリンダ32から突出して先端のUV−LED46を点灯させ、紫外線を照射することもできる。この場合、紫外線によって人体が害を受けることがなく、かつノズル30の効果を発揮させることが可能な時間に自動的にノズル30を機能させることができる。
【0052】
逆に、ノズル30によって人体の臀部の洗浄中にUV−LED46を点灯させ、臀部を紫外線殺菌するようにすることもできる。この場合には、人体に長時間紫外線を照射しないように照射時間を適度に設定することが好ましい。
【0053】
また、実施例1の洋風便器1において、ノズル本体34は、トラップ14に形成された封水の水位が下がる時、シリンダ32から突出してUV−LED46から紫外線を照射することもできる。この場合、封水により紫外線の照射が不十分となり易いトラップ14にも、封水の水位が下がる時を有効に利用して、紫外線を確実に照射することができる。このため、トラップ14について、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0054】
こうして、実施例1の洋風便器1では、使用者が使用する際に汚れが付着し難い便座24の裏面側等にシリンダ32を設置している。そして、この洋風便器1では、使用者が使用しない間に、紫外線を洋風便器本体10の鉢面12aの広い範囲に照射可能なようにノズル本体34をシリンダ32から鉢面12a内に突出させることも可能である。この場合、この洋風便器1は、使用者が使用しない間に殺菌をすることができる。また、この洋風便器1では、使用者が使用する際、ノズル本体34を鉢面12a内からシリンダ32側に戻すことができるので、UV−LED46が汚れ難くなっており、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、実施例1の洋風便器1は、長期に亘って清潔な状態を維持することができる。
【0055】
また、ノズル30は、シリンダ32と、シリンダ32から突出可能なノズル本体34とを有し、ノズル本体34の先端から紫外線を照射可能に構成されている。このため、ノズル本体34をシリンダ32に収容した状態としておれば、洋風便器1において、ノズル30が洋風便器1の意匠及び使用の便宜を損なわない。このため、このノズル30の設置場所の自由度が高くなっている。また、この状態では、汚れがUV−LED46に付着し難く、紫外線の照射能力が低下するという事態が生じ難い。その結果、ノズル30は、防汚効果の低下を抑制することができている。
【0056】
さらに、ノズル30は、ノズル本体34をシリンダ32から突出させた状態とすれば、ノズル本体34がUV−LED46から紫外線を好適な範囲に照射し、洋風便器本体10の鉢面12a等を殺菌することが可能となっている。このため、このノズル30は、防汚効果を長期に亘って発揮することができる。
【0057】
したがって、実施例1の洋風便器1は、優れた意匠を呈し、かつ使用の便宜が損なわれず、充分な防汚効果を長期に亘って発揮することが可能である。また、実施例1のノズル30は、洋風便器1への設置場所の自由度が高く、かつ洋風便器1の防汚効果を長期に亘って発揮し易い。
【0058】
また、実施例1の洋風便器1は、ノズル30が紫外線照射装置を兼ねていることから、別個に紫外線照射装置を設置する必要がなくなっており、洋風便器1の小型化及び簡素化並びにそれに起因する製品コストの低廉化を実現できている。
【0059】
さらに、実施例1のノズル30は、UV−LED46が電磁給電によって紫外線を照射可能なものであることから、小型化及び簡素化が可能となっている。
【実施例2】
【0060】
図4に示すように、実施例2の紫外線照射装置としてのノズル301は、実施例1のノズル30のシリンダ32の後端側に1次コイル40aを増設したものである。1次コイル40aは、シリンダ32の前端側に設けられた1次コイル40と同じ構成である。また、シリンダ32の内側表面及びノズル本体34の外表面には、図5に示すように、それぞれこれらの基材100上に紫外線を反射可能な反射層102と防汚層101と順次が設けられている。他の構成は実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0061】
このような構成である実施例2のノズル301は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、ノズル本体34をシリンダ32内に収容した状態において、1次コイル40aに通電することにより、UV−LED46を点灯させる。そして、UV−LED46から照射された紫外線は、シリンダ32の内表面の反射層102及び防汚層101に当たり、周囲に散乱して、ノズル本体34の外表面の反射層102及び防汚層101にも当たる。その結果、紫外線が照射されたシリンダ32及びノズル本体34の防汚層101では、光触媒の活性が上がって防汚効果が発揮される。このため、このノズル301は、ノズル本体34がシリンダ32内に収容された状態においても、シリンダ32及びノズル本体34を清潔な状態に維持することができる。
【実施例3】
【0062】
実施例1のノズル30では、シリンダ32が固定されて動かないものであるのに対して、図6に示すように、実施例3の紫外線照射装置としてのノズル302では、シリンダ32が軸芯O1を中心軸として回転可能とされている点が異なる。他の構成は実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0063】
実施例3のノズル302において、シリンダ32は、軸芯O1を中心軸とする軸受522を介して、支持部材523に支承されている。また、シリンダ32の後端側の外周には回転用ギヤ520が一体に形成され、支持部材523には回転用ギヤ520と噛み合うギヤ付きモータ524が設けられている。これにより、シリンダ32は、軸芯O1を中心軸として回転可能とされている。また、支持部材523には、給水口521が形成されており、シリンダ32の回転を許容しつつ、シリンダ32内に水を供給可能とされている。
【0064】
このような構成である実施例3のノズル302は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、図7に示すように、シリンダ32を軸芯O1を中心軸として回転させ、ノズル本体34の噴出口36の吐出方向を変更することができる。
【0065】
また、図8(a)〜(d)に示すように、このノズル302は、シリンダ32に対してノズル本体34を前進後退させつつ、シリンダ32を回転させて噴出口36の吐出方向を変更することにより、鉢面12a内の全域に紫外線を照射して、より確実に殺菌効果を発揮させることができる。
【実施例4】
【0066】
図9及び図10に示すように、実施例4の紫外線照射装置としてのノズル303は、実施例1のノズル30に、UV−LED46及びUV−LED46を制御する制御基板461を冷却する冷却流路530及び冷却配管531を増設したものである。他の構成は、実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0067】
実施例4のノズル303において、UV−LED46には制御基板461が一体に設けられており、UV−LED46が発光する際には、双方が発熱して高温となる傾向にある。また、噴出口36から温水が吐出される場合には、さらにその傾向が強くなる。
【0068】
このため、このノズル303では、図10に示すように、ノズル本体34の後端側から先端側のUV−LED46及び制御基板461まで、冷却流路530が形成されている。また、シリンダ32内には、シリンダ32の後端から冷却流路530内に少なくとも一部が挿通される冷却配管531が設けられている。
【0069】
この冷却配管531は、図9に示すように、ノズル本体34がシリンダ32内に収容される場合に、冷却流路530内にほぼ全体が挿通されてノズル本体34の前進後退を許容するようになっている。そして、外部から供給される冷却水は、冷却配管531及び冷却流路530に形成された往路(図示しない)を介して、UV−LED46及び制御基板461を冷却し、冷却配管531及び冷却流路530に形成された復路(図示しない)を介して、外部に排出されるようになっている。
【0070】
このような構成である実施例4のノズル303は、実施例1のノズル30と同様な作用効果を奏するとともに、冷却配管531及び冷却流路530によって、UV−LED46及び制御基板461を冷却し、耐久性を向上させることができる。
【0071】
なお、冷却配管531及び冷却流路530に往路のみを形成し、冷却流路530の先端側に吐出口を設けて、冷却水を吐出口から吐出するようにしてもよい。
【実施例5】
【0072】
実施例1ではノズル30が紫外線照射装置を兼ねているのに対して、図11に示す実施例5の紫外線照射装置30aは、図1に示す洋風便器1において、ノズル30の隣に別個に設置されるものである。他の構成は、実施例1のノズル30と同様であるので、説明は省く。
【0073】
実施例5の紫外線照射装置30aは、シリンダ32aと、シリンダ32aから前方に突出可能なロッド34aとを有する。
【0074】
シリンダ32a及びロッド34aを構成する材料は、紫外線を透光可能な透光性材料であるシリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等から適宜選択されたものである。シリンダ32a内は、ロッド34aを後退方向に付勢するリターンスプリング38aが配設されている。
【0075】
シリンダ32aの後端には、UV−LED46aが設けられており、前端が封止された円筒状のロッド34aに紫外線を入射可能とされている。また、シリンダ32aの後部には、空気供給口321aが配設されている。
【0076】
空気供給口321aには、図12に示すように、送風配管70、送風手段71が接続されている。送風配管70の途中には、香り付加手段72が設置され、シリンダ32aに供給する空気に香りを付加することが可能とされている。送風配管70及び送風手段71によって、シリンダ32aに空気が供給されることにより、図13に示すように、ロッド34aが前方に突出可能となっている。
【0077】
図11及び図13に示すように、ロッド34aの先端には、UV−LED46aから入射された紫外線を照射可能な出射部341aと、空気噴出口36aとが形成されている。
【0078】
出射部341aは、微小な突起を面状に配列したものであり、紫外線を広い範囲に拡散させつつ出射可能とされている。出射部341aの表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層101が形成されている。
【0079】
空気噴出口36aは、シリンダ32aに供給された空気を噴出するためのものである。特に、香り付加手段72を作動させることで、空気噴出口36aからよい香りの空気を噴出することが可能となっている。
【0080】
このような構成である実施例5の紫外線照射装置30aも、実施例1のノズル30と同様の作用効果を奏することができる。また、紫外線照射装置30aはノズル30と別個に設置されているので、機能分離によって作動時の制約を少なくすることができる。
【0081】
それに加えて、この紫外線照射装置30aにおいて、シリンダ32aは紫外線を透光可能な上述の透光性材料からなり、UV−LED46aがシリンダ32aの後端に設けられている。このため、この紫外線照射装置30aは、シリンダ32aからロッド34aを突出させた状態で、ロッド34aの先端から紫外線を照射するだけでなく、シリンダ32aの後端に設けたUV−LED46aにより、シリンダ32aの内部からシリンダ32aの表面に向けて紫外線を照射することができる。また、シリンダ32a内にロッド34aを戻した状態でも、シリンダ32aの後端に設けたUV−LED46aにより、シリンダ32aの内部からシリンダ32aの表面に向けて紫外線を照射することができる。このため、この紫外線照射装置30aは、シリンダ32aの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、紫外線により殺菌等の防汚効果を発揮することができる。
【0082】
さらに、この紫外線照射装置30aにおいて、ロッド34aは紫外線を透光可能な上述の透光性材料からなり、ロッド34aに紫外線を入射可能なUV−LED46aがシリンダ32aに設けられている。このため、ロッド34aに紫外線光源を設ける必要がなくなっている。このため、ロッド34aに紫外線光源を設ける場合に必要な給電手段が不要となっており、紫外線照射装置30a、ひいては洋風便器1の小型化及び簡素化並びにそれらに起因する製品コストの低廉化が可能となっている。
【0083】
また、この紫外線照射装置30aは、出射部341aを有しているので、ロッド34aの先端から所望な範囲に好適に紫外線を照射することを一層容易に実現することができている。
【0084】
さらに、この紫外線照射装置30aにおいて、出射部341aの表面には、紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層101が形成されている。このため、この紫外線照射装置30aでは、シリンダ32aからロッド34aを突出させた状態で、ロッド34aの先端の出射部341aから紫外線が照射されるだけでなく、出射部341aの表面に形成された防汚層101にも紫外線が照射される。このため、この紫外線照射装置30aは、ロッド34aの先端の出射部341aの表面に汚れが付着するおそれがある場合でも、防汚層101において光触媒の活性が上がり、臭気成分や汚れ成分をより効果的に分解することができている。
【0085】
なお、実施例5の紫外線照射装置30aは、図14に示すように、突出した状態のロッド34aに対して、便蓋26の裏面に設置されたUV−LED26aから紫外線を照射することで、ロッド34aの表面における防汚効果をさらに向上させることが可能である。
【0086】
また、実施例5の紫外線照射装置30aは、図15に示すように、シリンダ32a及び後退してシリンダ32a内に収容された状態のロッド34aに対して、便座24の裏面に設置されたUV−LED24aから紫外線を照射することで、シリンダ32a及びロッド34aの表面における防汚効果をさらに向上させることが可能である。
【実施例6】
【0087】
実施例5の紫外線照射装置30aでは、UV−LED46aがシリンダ32aの後端に設置され、ロッド34aの先端に出射部341aが形成されているのに対して、図16及び図17に示すように、実施例6の紫外線照射装置30bでは、ロッド34bの先端に出射部としてのUV−LED46bが設置されている点が異なる。他の構成は、実施例5の紫外線照射装置30aと同様であるので、説明は省く。
【0088】
実施例6の紫外線照射装置30bにおいて、UV−LED46bは、前端が封止された円筒状のロッド34bの先端に設置され、紫外線をトラップ14の方向に照射可能な姿勢とされている。
【0089】
シリンダ32bの後端側からロッド34bの内部を経て、ロッド34bの先端のUV−LED46bまでには、給電用のリード線81が配線されている。リード線81は、コイル状に形成され、ロッド34bの突出にあわせて追従可能とされている。
【0090】
このような構成である実施例6の紫外線照射装置30bも、実施例1のノズル30と同様の作用効果を奏することができる。また、この紫外線照射装置30bは、実施例5の紫外線照射装置30aと同様にノズル30と別個に設置されているので、機能分離によって作動時の制約を少なくすることができる。また、実施例6の紫外線照射装置30bは、UV−LED46bをロッド34bの先端に設置していることから、実施例5の紫外線照射装置30aと比べて、特定の方向に紫外線を集中的に照射したい場合に適している。例えば、図18に示す変形例の紫外線照射装置30cのように、2個以上のUV−LED46bをロッド34bの先端に出射部として設置すれば、特定の方向に紫外線をさらに集中的に照射することが可能である。
【実施例7】
【0091】
図19に示すように、実施例7の防汚設備は、実施例6の紫外線照射装置30bが設けられたシンク91である。
【0092】
この場合、紫外線照射装置30bは、洋風便器1に適用される場合と同様に、通常はロッド34bが後退して、シリンダ32b内に収容されており、紫外線による殺菌作用が必要なときには、ロッド34bが前方に突出してシンク91の排水口92又は屑入れ93に紫外線を照射する。こうして、シンク91は、紫外線の殺菌作用により、雑菌の繁殖が抑制され、清潔な状態を維持することが可能となっている。他の作用効果は実施例1と同様である。
【実施例8】
【0093】
図20及び図21に示すように、実施例8の防汚設備は、紫外線照射装置としてのロッド96をカウンタ95に揺動可能に設けたシンク97である。
【0094】
ロッド96は、図22に示すように、ロッド本体961と、このロッド本体961の先端に設けられた出射部962とからなる。出射部962は、紫外線を透光可能な透光性材料からなる透光部962aと、この透光部962a内に設けられたUV−LED46cとからなる。透光部962aの先端面及び後端面には紫外線を反射可能な反射層102が形成されている。
【0095】
ロッド本体961は図示しないモータによりカウンタ95に対して揺動可能に構成されている。また、図20及び図21に示すように、カウンタ95の前面には赤外線、マイクロ波等を用いた人体検知センサ95aが設けられている。人体検知センサ95aによってカウンタ95の前に人がいると検知されている間は、モータによってロッド96が水平になり、かつUV−LED46cへの給電が行われない。逆に、人体検知センサ95aによってカウンタ95の前に人がいると検知されれば、モータによってロッド96がカウンタ95の縁から起立し、かつUV−LED46cへの給電が行われる。
【0096】
このシンク97では、人がカウンタ95の前面にいる場合には、図20に示すように、ロッド96が水平になり、シンク97の意匠を損なわないとともに、使用の邪魔にならない。また、人がカウンタ95の前面にいない場合には、図21に示すように、ロッド96が起立し、外周側の出射部962から紫外線を直接好適な範囲に照射し、カウンタ95の表面を殺菌することが可能となる。このため、カウンタ95の防汚効果が得られる。この際、透光部962が反射層102を有しているため、紫外線は所望の角度で照射されて無駄な方向に照射されず、優れた防汚効果を発揮することができる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【実施例9】
【0097】
図23に示すように、実施例9の紫外線照射装置80は、透明なロッド50の後端面に対峙してUV−LED52を設けたものである。ロッド50は、公知のモータ等により対象物に対して移動可能に構成されている。
【0098】
ロッド50は、UV−LED52からの紫外線を内部に入射させ、全反射を利用して紫外線を先端まで導く。そして、先端に設けた粗面等よりなる出射部50aから紫外線を出射させる。この出射部50aは、汚れが付着し易いので、光触媒を含む防汚層101をコーティング等により保持させることが好ましい。防汚層101はロッド50のその他の部位にも設けられてもよい。出射部50aはロッド50の先端の全外周面に設けてもよい。
【0099】
以上において、本発明を実施例1〜9に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜9に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
例えば、図1では、洋風便器本体1にロータンク20が設置されているが、ロータンクカバーを備えた機種や、ロータンクのない機種の洋風便器等にも本発明を適用することができる。
【0101】
また、本発明では、洋風便器のさらに他の部位に防汚層101が設けられてもよい。本発明では、洋風便器を据え付けた床面等と洋風便器との境界部にコーキングを施した場合、このコーキングに光触媒を保持させてもよい。この場合、光触媒をコーティング等により保持させるときには、洋風便器とコーキングとに跨って光触媒を保持させたり、床面とコーキングとに跨って光触媒を保持させたりすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、洋風便器、シンク、浴室等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1の洋風便器の縦断面図である。
【図2】便鉢等の要部を示す拡大断面図である。
【図3】実施例1の紫外線照射装置に係り、(a)はノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図であり、(b)はノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図4】実施例2の紫外線照射装置に係り、(a)はノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図であり、(b)はノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図5】シリンダ等の要部を示す拡大断面図である。
【図6】実施例3の紫外線照射装置に係り、シリンダの回転機構を示す断面図である。
【図7】実施例3の洋風便器に係り、図1のα方向から見て、紫外線の照射方向を変更する動作を示す概略図である。
【図8】実施例3の洋風便器に係り、(a)〜(d)は、図1のβ方向から見て、紫外線の照射方向を変更する連続動作を示す概略図である。
【図9】実施例4の紫外線照射装置に係り、ノズル本体がシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図10】実施例4の紫外線照射装置に係り、ノズル本体がシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図11】実施例5の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図12】実施例5の紫外線照射装置に係り、送風手段、送風配管及び香り付加手段を示す概略断面図である。
【図13】実施例5の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図14】実施例5の紫外線照射装置に係り、便蓋の裏面にも紫外線光源を設置した例を示す概略断面図である。
【図15】実施例5の紫外線照射装置に係り、便座の裏面にも紫外線光源を設置した例を示す概略断面図である。
【図16】実施例6の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダ内に収容された状態を示す断面図である。
【図17】実施例6の紫外線照射装置に係り、ロッドがシリンダから突出した状態を示す断面図である。
【図18】実施例6の紫外線照射装置の変形例を示す概略断面図である。
【図19】実施例7のシンクを示す概略断面図である。
【図20】実施例8のカウンタを示し、ロッドが水平になっている状態を示す斜視図である。
【図21】実施例8のカウンタを示し、ロッドが起立している状態を示す斜視図である。
【図22】実施例8の紫外線照射装置の拡大斜視図である。
【図23】実施例9の紫外線照射装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…洋風便器
10…洋風便器本体
12a…鉢面
14…トラップ
24…便座
26…便蓋
91…シンク
95…カウンタ
24a、26a、46、46a、46b、46c、52…紫外線光源(UV−LED)
40、40a…1次コイル
42…2次コイル
46、46b、341a、962、50a…出射部
101…防汚層
30、301、302、303、30a、30b、30c、96…紫外線照射装置(30、301、302、303…ノズル、96…ロッド)
32、32a、32b…シリンダ
34、34a、34b…ロッド(34…ノズル本体)
961…ロッド本体
962a…透光部
102…反射層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物と、紫外線を照射する出射部をもつロッドとを備え、該ロッドは、該対象物及び/又はその周辺に該紫外線を照射可能に該出射部が該対象物に対して移動可能に構成されていることを特徴とする防汚設備。
【請求項2】
前記対象物は、洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つであり、前記出射部は、該洋風便器本体、該便座上の人の局部、該便座及び前記便蓋の少なくとも一つに前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項3】
前記洋風便器本体は前記鉢面に封水を形成するトラップをもち、前記出射部は、該封水の水位が下がる時に該鉢面に突出し、該トラップに前記紫外線を照射可能である請求項2記載の防汚設備。
【請求項4】
洗浄水を吐出可能なノズルを備え、前記ロッドは該ノズルである請求項2又は3記載の防汚設備。
【請求項5】
前記ノズルは、前記洗浄水を吐出する際、該洗浄水に前記紫外線を照射することにより、該紫外線が導波された該洗浄水を人の局部に当てるものであることを特徴とする請求項4記載の防汚設備。
【請求項6】
前記ノズルは、前記洗浄水を吐出する際、該洗浄水に前記紫外線を照射することにより、該紫外線が導波された該洗浄水を前記鉢面に当てるものであることを特徴とする請求項4記載の防汚設備。
【請求項7】
前記対象物は鉢面をもつシンクであり、前記出射部は該鉢面に前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項8】
前記対象物はカウンタであり、前記出射部は該カウンタの表面又は裏面に前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項9】
前記対象物には、光触媒が設けられている請求項1乃至8のいずれか1項記載の防汚設備。
【請求項10】
前記出射部の表面には、前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されている請求項1乃至9のいずれか1項記載の防汚設備。
【請求項11】
紫外線を照射する出射部をもち、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物に対して該出射部が移動可能なロッドを備えていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項12】
前記対象物又はその周辺に設けられるシリンダを備え、前記ロッドは前記出射部が突出するように該シリンダに設けられている請求項11記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
前記ロッドは前記紫外線を透光可能な透光性材料からなり、該ロッドの後端には該紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられている請求項12記載の紫外線照射装置。
【請求項14】
前記紫外線光源が前記シリンダに設けられている請求項13記載の紫外線照射装置。
【請求項15】
前記シリンダは前記紫外線を透光可能な透光性材料からなる請求項14記載の紫外線照射装置。
【請求項16】
前記出射部の表面には、前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されている請求項11乃至15のいずれか1項記載の紫外線照射装置。
【請求項1】
自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物と、紫外線を照射する出射部をもつロッドとを備え、該ロッドは、該対象物及び/又はその周辺に該紫外線を照射可能に該出射部が該対象物に対して移動可能に構成されていることを特徴とする防汚設備。
【請求項2】
前記対象物は、洋風便器本体、便座及び便蓋の少なくとも一つであり、前記出射部は、該洋風便器本体、該便座上の人の局部、該便座及び前記便蓋の少なくとも一つに前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項3】
前記洋風便器本体は前記鉢面に封水を形成するトラップをもち、前記出射部は、該封水の水位が下がる時に該鉢面に突出し、該トラップに前記紫外線を照射可能である請求項2記載の防汚設備。
【請求項4】
洗浄水を吐出可能なノズルを備え、前記ロッドは該ノズルである請求項2又は3記載の防汚設備。
【請求項5】
前記ノズルは、前記洗浄水を吐出する際、該洗浄水に前記紫外線を照射することにより、該紫外線が導波された該洗浄水を人の局部に当てるものであることを特徴とする請求項4記載の防汚設備。
【請求項6】
前記ノズルは、前記洗浄水を吐出する際、該洗浄水に前記紫外線を照射することにより、該紫外線が導波された該洗浄水を前記鉢面に当てるものであることを特徴とする請求項4記載の防汚設備。
【請求項7】
前記対象物は鉢面をもつシンクであり、前記出射部は該鉢面に前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項8】
前記対象物はカウンタであり、前記出射部は該カウンタの表面又は裏面に前記紫外線を照射可能に構成されている請求項1記載の防汚設備。
【請求項9】
前記対象物には、光触媒が設けられている請求項1乃至8のいずれか1項記載の防汚設備。
【請求項10】
前記出射部の表面には、前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されている請求項1乃至9のいずれか1項記載の防汚設備。
【請求項11】
紫外線を照射する出射部をもち、自己又は自己の周辺が防汚を必要とする対象物に対して該出射部が移動可能なロッドを備えていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項12】
前記対象物又はその周辺に設けられるシリンダを備え、前記ロッドは前記出射部が突出するように該シリンダに設けられている請求項11記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
前記ロッドは前記紫外線を透光可能な透光性材料からなり、該ロッドの後端には該紫外線を照射可能な紫外線光源が設けられている請求項12記載の紫外線照射装置。
【請求項14】
前記紫外線光源が前記シリンダに設けられている請求項13記載の紫外線照射装置。
【請求項15】
前記シリンダは前記紫外線を透光可能な透光性材料からなる請求項14記載の紫外線照射装置。
【請求項16】
前記出射部の表面には、前記紫外線を透光可能であるとともに光触媒を含む防汚層が形成されている請求項11乃至15のいずれか1項記載の紫外線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−316607(P2006−316607A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257438(P2005−257438)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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