説明

防波管

【課題】流速による防波管の外側と内側における圧力水頭差を小さくし、測定水位誤差を減少させる防波管を提供する。
【解決手段】防波管21は、蓋部材4に穿たれた嵌入孔4aに嵌入され、固定部材5によって固定されているものとする。さらに、前記防波管21には、導通孔6が、圧力式水位計が挿通される配管の側周に、該防波管21の軸方向に長く形成され、その軸方向に沿った該導通孔6を一組と見做し、その一組が軸対称を成し側周に複数穿孔されている。なお、A−A線は、防波管21の中心軸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位測定技術、特に水位計の防波管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、上水,下水,河川,都市下水路における水位計測には、投込式水位計が利用されている。
【0003】
投込式水位計は、液面下に沈められた検出器と、その検出器から伸びた中空パイプ入りケーブルで接続された変換器と、を有する水位計である。例えば、前記の投込式水位計には、大気圧変動を小さくする機構を有するものがある。即ち、通気孔を穿孔した中空パイプによって、空気を出入りさせ、大気圧変動に伴う応答遅れ誤差を小さくできる投込式水位計である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、投込式水位計には、検出器(例えば、図3中の符号1で示すもの)を液中に設置し、液圧を検出することによって、液面の高さを測定する水位計(以下、投込圧力式水位計)も知られている。なお、前記の投込圧力式水位計は、円筒型配管(以後、防波管と称する;例えば、図3中の符号2で示すもの)に検出器1を挿通した形式のものが多い(例えば、特許文献2参照)。また、検出器1は、中心軸が防波管2の中心軸方向A−A(以下、単に軸方向A−Aという)に合わせて設置されることが好ましい。
【0005】
一般的な投込圧力式水位計及び防波管の構成を図3に基づいて以下に説明する。
【0006】
図3中の防波管2は、蓋部材4に形成された嵌入孔4aに嵌入され、固定部材5によって蓋部材4に固定される。また、前記の防波管2の水底面101方向に形成された開口部(以下、単に水底面方向開口部と言う)2aが、水底面101より上位になるように、防波管2は設置される。
【0007】
図3中の検出器1は、通常、前記の防波管2の水底方向開口部2aとは反対側の開口部(以後、水上方向開口部と称する)2bから挿入され、検出器1の検出部1aが少なくとも最低水位100より下位に位置し、かつ、水底方向開口部2aより上位に位置するように設置される。
【0008】
図3中の蓋部材4は、なお、最高水位より上位になるように設置される。
【0009】
以上のような投込圧力式水位計は、波,結氷,浮遊物,強風などの水面の状況に影響されずに、水位を測定できるものである。
【特許文献1】特開平9−33316(段落[0012]〜[0021]等)。
【特許文献2】特許第3234970号(段落[0007]〜[0008]等)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のような投込圧力式水位計では、投込圧力式水位計が受ける流水の速さ(即ち、流速)が速くなると、防波管の外側と内側間で水圧に差が生じ、結果的に、防波管内の圧力が変化する。
【0011】
即ち、検出器が前記の速い流速の影響を受けてしまい、水位計測に誤差を生じさせることになる。
【0012】
図4は、図3のような投込圧力式水位計における圧力を示す概略図である。図4に適応されるベルヌーイの定理を以下に説明する。なお、以下の式における記号の意味は、V:流速、g:重力の加速度、Z:基準面からの高さ、p:圧力、ω:流体の比重量である。
【0013】
図4では、ベルヌーイの定理により、速度水頭
【0014】
【数1】

【0015】
,位置水頭
【0016】
【数2】

【0017】
,圧力水頭
【0018】
【数3】

【0019】
の和(即ち、全水頭)が一定である(式1)。ただし、位置水頭が防波管の内外で同じになるため、式1では位置水頭を無視している。
【0020】
【数4】

【0021】
なお、図4中では、以下の(式1´)ように表される。図4中の符号の意味は、α1:防波管外の流速、α2:防波管内の流速、β1:防波管外の圧力水頭、β2:防波管内の圧力水頭である。
【0022】
【数5】

【0023】
即ち、防波管下部の流速が摩擦などによって損失した場合、圧力水頭が式1に基づいて防波管の周囲の流速に対し変化する。
【0024】
例えば、速度水頭が上昇すると圧力水頭が降下し、逆に、速度水頭が降下すると圧力水頭が上昇する。
【0025】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであって、流速による防波管の外側と内側における圧力水頭差を小さくし、測定水位誤差を減少させる防波管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、防波管であって、圧力式水位計が挿通される配管の側周に、導通孔が、前記防波管の軸方向に長く形成され、その軸方向に沿った該導通孔を一組と見做し、その一組が軸対称を成し側周に複数穿孔された、ことを特徴とする。
【0027】
請求項2記載の発明は、防波管であって、圧力式水位計が挿通される配管の側周に、導通孔が、前記防波管の一方の開口部から他方の開口部まで軸方向に沿ってスリット状に形成され、軸対称を成し側周に複数穿孔された、ことを特徴とする。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、特定の面積を有する前記導通孔が穿孔されたことを特徴とする。
【0029】
前記の請求項1の発明によれば、防波管の外側と内側における圧力水頭差を小さくできる。また、導通孔より大きい障害物が防波管内へ侵入することも阻止できる。
【0030】
前記の請求項2の発明によれば、防波管の外側と内側における圧力水頭差を小さくできる。また、導通孔を広く形成できる。
【0031】
前記の請求項3の発明によれば、防波管の外側と内側における圧力水頭差を導通孔の面積に応じて調整できる。
【発明の効果】
【0032】
以上示したように請求項1の発明によれば、防波管内への障害物侵入を阻止しつつ、圧力水頭差を小さくでき、流速による測定水位誤差を小さくできる。
【0033】
請求項2の発明によれば、導通孔を広く形成できるため、その広く形成できた分だけ圧力水頭差を小さくでき、流速による測定水位誤差を小さくできる。
【0034】
請求項3の発明によれば、流速による測定水位誤差を導通孔の面積に応じて調整できる。
【0035】
これらを以って水位測定技術の分野に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の第1乃至第2形態における防波管を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0037】
本発明における実施の第1乃至第2形態は、特定の面積を有する導通孔が、側周に均等(例えば、軸方向に関して等距離,周方向に関して等距離)に穿孔された防波管である。
【0038】
[本実施の第1形態]
本実施の第1形態は、円筒型配管であって、この配管の軸方向に長い導通孔が、この配管軸対称に配置され、かつ、流水の当たる面に関して均等に、側周に複数穿孔された防波管である。
【0039】
本実施の第1形態における防波管を図1(側面図)に基づいて以下に説明する。
【0040】
なお、図1中で図3中の符号と同じものの説明は省略する。図1中のA−A線は、防波管21の中心軸である。また、図1中の防波管21は、図3中の防波管2と同様に、蓋部材4に穿たれた嵌入孔4aに嵌入され、固定部材5によって固定されているものとする。
【0041】
防波管21には、配管軸方向に長い導通孔6が、軸方向に沿った複数孔を一組とし、さらに、その一組が軸対称を形成している。例えば、図1中の導通孔6は、軸方向に4個並んだ導通孔6を一組とし、さらに、その組が周方向に4組並び、計16個の導通孔6が穿孔されている。
【0042】
また、軸方向に並ぶ導通孔6は、最低水位100から上に形成されることが望ましい。また、前記の導通孔6は、防波管21内に通されるケーブルを動かさないために、例えば、水流方向に向けないよう(例えば、水流方向に対して垂直)に穿孔されることが望ましい。
【0043】
なお、軸方向に並ぶ4個の導通孔6の面積は、防波管21に流水の当たる面積(即ち、防波管21の半円筒部分の面積)に対して約5%程度に形成されている。
【0044】
[本実施の第2形態]
本実施の第2形態は、円筒型配管であって、一方の開口部から他方の開口部まで軸方向に沿って伸びたスリット状の導通孔が、軸対称に配置され、かつ、流水の当たる面に関して均等に、側周に複数穿孔された防波管である。
【0045】
本実施の第2形態における防波管を図2(側面図)に基づいて以下に説明する。
【0046】
なお、図2中で図3中の符号と同じものの説明は省略する。図2中のA−A線は、防波管22の中心軸である。また、図2中の防波管22は、図3中の防波管2と同様に、蓋部材4に穿たれた嵌入孔4aに嵌入され、固定部材5によって固定されているものとする。
【0047】
防波管22には、軸方向に沿って水底方向開口部22aから水上方向開口部22bに伸びたスリット状の導通孔61が側周に穿孔されている。さらに、導通孔61は、軸対称を形成している。例えば、図2中の導通孔61は、4個穿孔されている。
【0048】
また、前記の導通孔61は、最低水位100から上に形成されることが望ましい。導通孔61は、防波管22内に通されるケーブルを動かさないために、例えば、水流方向に向けないように穿孔されることが望ましい。
【0049】
なお、1個当たりの導通孔61の面積は、防波管22に流水の当たる面積(即ち、防波管22の半円筒部分の面積)に対して約8%程度に形成されている。
【0050】
以上のような本実施の第1乃至第2形態における防波管は、塩化ビニール樹脂製管に穿孔して作成されることもあるが、強度を必要とする場合、SUS(Stainless Used Steel)管に穿孔して作成することもある。
【0051】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0052】
例えば、本実施の第1乃至第2形態の変形例としては、全ての導通孔の和に関する特定条件を満たしつつ、導通孔を更に小さくして、編み目のように形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の第1形態における防波管の側面図。
【図2】本実施の第2形態における防波管の側面図。
【図3】一般的な投込圧力式水位計及び防波管の断面図。
【図4】防波管の内外側における圧力の説明図。
【符号の説明】
【0054】
1…検出器
1a…検出部
2,21,22…防波管
2a,21a,22a…水底方向開口部
2b,21b,22b…水上方向開口部
3…ケーブル
4…蓋部材
4a…嵌入孔
5…固定部材
6,61…導通孔
100…最低水位
101…水底面
α1,α2…速度水頭
β1,β2…圧力水頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防波管であって、
圧力式水位計が挿通される配管の側周に、
導通孔が、前記防波管の軸方向に長く形成され、
その軸方向に沿った該導通孔を一組と見做し、
その一組が軸対称を成し側周に複数穿孔された、
ことを特徴とする防波管。
【請求項2】
防波管であって、
圧力式水位計が挿通される配管の側周に、
導通孔が、前記防波管の一方の開口部から他方の開口部まで軸方向に沿ってスリット状に形成され、
軸対称を成し側周に複数穿孔された、
ことを特徴とする防波管。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防波管であって、特定の面積を有する前記導通孔が穿孔されたことを特徴とする防波管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128688(P2008−128688A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311011(P2006−311011)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】