説明

防湿ライナー

【課題】本発明は、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てに優れる防湿ライナーを得ることを課題とする。特に塗工層の塗工量が、固形分換算で片面あたり15g/m未満でありながら十分な防湿性、撥水性および糊貼り適性を有する防湿ライナーを得ることを課題とする。
【解決手段】
基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有する防湿ライナーにおいて、前記2層の塗工層は、前記防湿ライナーの最表層に設けられる塗工層(A)および、前記基紙と前記塗工層(A)との間に設けられる塗工層(B)であり、前記塗工層(B)はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有し、前記塗工層(A)はマイクロカプセル状のワックスを含有し、前記塗工層(A)の塗工量が、固形分換算で片面あたり0.5g/m以上2.5g/m以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、防湿ライナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライナーに防湿性を付与するために、合成樹脂系およびワックス系の防湿剤や撥水剤などをライナーの表面に塗工して防湿層および撥水層を設けることが一般的に実施されている。しかしながら、ライナーの防湿性を向上させるためには、合成樹脂系やワックス系の防湿剤および撥水剤を単位面積当たりの塗工量で、固形分換算で片面あたり15g/m以上設ける必要があり、15g/m未満では防湿剤や撥水剤が紙中に浸透し防湿性および撥水性が確保できない問題があった。
さらに、前記防湿剤および撥水剤で防湿層や撥水層を設けたライナーを用いて段ボールシートを製造し、この段ボールシートを段ボール箱に製函する際に、段ボール箱のいわゆるのりしろ部分において、段ボールシート表面同士が充分に接着しにくい問題があった。特に防湿層や撥水層の主成分がワックス系であったり、塗工量が15g/m以上であると接着力が低下し、段ボール箱を製函した後にのりしろ部分が剥離する、糊貼り適性低下の問題があった。
【0003】
他方、防湿剤や撥水剤として合成樹脂系を用いた場合、糊貼り適性は良好となるものの、ワックス系ほど高い撥水性を有さないため、水滴が防湿ライナーに付着して吸収されやすく、防湿性が低下する問題があった。このため所望の防湿性を得るには塗工量を多くする必要があり、省資源化に逆行する問題があった。
【0004】
これらワックス系および合成樹脂系の防湿剤や撥水剤を適宜混合して用い、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てを満足させる方法も開示されているが(引用文献1および2を参照)、防湿性、撥水性および糊貼り適性をいずれも犠牲にする中途半端な機能となり、十分に満足する品質を得ることはできなかった。
【0005】
ワックス系および合成樹脂系の防湿層および撥水層を積層することで防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てを満足させようとする技術も開示されているが(引用文献3を参照)、合成樹脂系の上にワックス系を塗工すると、ワックスの皮膜により糊貼り適性が悪くなり、段ボール箱の糊貼り適性が低下する問題がある。加えて、ワックス系と合成樹脂系を積層すると、ワックスが合成樹脂に染み込んで混合され(引用文献4を参照)、防湿性、撥水性および糊貼り適性のいずれもが低下する問題がある。
【0006】
上述のごとく、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てにすぐれた防湿ライナーは未だ得られていない。特に塗工量が、固形分換算で片面あたり15g/m未満であり省資源化を達成しながらも、十分な防湿性、撥水性および糊貼り適性を有する防湿ライナーは得られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−3895号公報
【特許文献2】特開平6−184988号公報
【特許文献3】特開平8−85183号公報
【特許文献4】特開平9−188995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は上記の点に鑑みてなされたもので、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てに優れる防湿ライナーを得ることを目的とする。特に塗工層の塗工量が、固形分換算で片面あたり15g/m未満でありながら十分な防湿性、撥水性および糊貼り適性を有する防湿ライナーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有する防湿ライナーにおいて、前記2層の塗工層は、前記防湿ライナーの最表層に設けられる塗工層(A)および、前記基紙と前記塗工層(A)との間に設けられる塗工層(B)であり、前記塗工層(B)はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有し、前記塗工層(A)はマイクロカプセル状のワックスを含有し、前記塗工層(A)の塗工量が、固形分換算で片面あたり0.5g/m以上2.5g/m以下である。
【0010】
好ましくは、前記基紙と前記塗工層(B)との間に塗工層(C)が設けられた、少なくとも3層の塗工層を有する防湿ライナーであり、前記塗工層(C)がワックスを含有し、前記塗工層(C)の塗工量が、固形分換算で片面あたり0.1g/m以上1.0g/m以下であり、前記塗工層(C)および前記塗工層(A)の合計塗工量が、固形分換算で片面あたり0.6g/m以上3.5g/m以下である。
【0011】
好ましくは、前記アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体がスチレン−アクリル共重合物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てに優れる防湿ライナーを得ることができる。特に塗工量が、固形分換算で片面あたり15g/m未満でありながら十分な防湿性、撥水性および糊貼り適性を有する防湿ライナーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明の好適な実施の形態について説明する。
本願発明の防湿ライナーは、基紙の少なくとも片面に、マイクロカプセル状のワックスを含有し、かつ前記防湿ライナーの最表層に設けられる塗工層(A)および、前記基紙と前記塗工層(A)との間に、アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する塗工層(B)を設ける。
【0014】
(基紙)
基紙は一般的に使用されているライナーであれば特に限定はなく、例えば広葉樹クラフトパルプ(LKP)や針葉樹クラフトパルプ(NKP)のような化学パルプ、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)のような機械パルプ、段ボール古紙、ライナー古紙、雑誌古紙や新聞古紙などをから再生した古紙パルプや脱墨古紙パルプを原料として、これらパルプを1種類または2種類以上組み合わせて抄造されたライナーを使用することができる。
【0015】
(塗工層(C))
上記基紙に塗工層(A)および塗工層(B)を設ける前に、塗工層(C)を設けることが好ましく、塗工層(C)がワックスを含有すればより好ましい。塗工層(C)を設けることで、塗工層(B)に含有するアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を基紙内部に浸透させない目止めとしての効果と、塗工層(B)を通過した湿気を基紙に吸収させにくい防湿層としての効果が得られる。特にアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体はワックスよりも水を透過させやすいため、このワックスを含有する塗工層(C)を設けることで、更に防湿性を向上させた防湿ライナーを得ることができる。
【0016】
塗工層(C)に用いる塗工剤としては特に限定されず、ワックス系や合成樹脂系の防湿剤または撥水剤などを用いることができる。
【0017】
塗工層(C)に用いるワックス系撥水剤としては特に限定されず、一般的なワックスを用いることができる。ワックスには大きく分類して天然ワックスと合成ワックスがある。天然ワックスは動・植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス、例えばパラフィンワックス、モンタンワックスに分類でき、合成ワックスは脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フィッシャー・トロブシュワックス、ポリオレフィンワックス、例えばポリエチレンワックス、極性変性ポリオレフィンワックス、その他合成ワックスに分類できる。これらワックスを単体または2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
塗工層(C)に用いる合成樹脂系撥水剤としては特に限定されず、後述する塗工層(B)に用いるスチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体や、後述する塗工層(B)にて記載した一般的な合成樹脂を用いることができる。
【0019】
塗工層(C)の塗工量は、固形分換算で片面あたり0.1〜1.0g/mが好ましく、0.2〜0.8g/mがより好ましい。0.1g/mを下回ると十分な防湿性が得られにくいため好ましくない。1.0g/mを超過すると、塗工層(C)にワックスを用いた場合、塗工層(B)の合成樹脂と塗工層(C)のワックスとが混合して塗工層(B)由来の防湿性が低下しやすくなるため好ましくない。塗工層(C)のワックスが塗工層(B)の合成樹脂に溶け込んで混ざると、塗工層(C)を設けない場合よりも防湿性が低下する可能性があり、かえって防湿性のない防湿ライナーとなる可能性があるため、塗工量が1.0g/mを超過することは、特に好ましくない。
【0020】
(塗工層(B))
基紙上、または基紙上に塗工層(C)を設けた上に、スチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体を含有する塗工層(B)が設けられる。塗工層(B)としてスチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体を用いることで十分な防湿性を付与することができる。前述した通り塗工層(C)を設ける場合は塗工量が、固形分換算で片面あたり0.1〜1.0g/mであることが好ましく、後述する塗工層(A)の塗工量は、固形分換算で片面あたり0.5〜2.5g/mであり、いずれも塗工量が少ないため、これら塗工層(C)および後述する塗工層(A)だけでは十分な防湿性が得られない。十分な防湿性を得るには、塗工層(B)としてスチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体を有する塗工層(B)を設けることが重要であり、十分な撥水性を得るには、後述する塗工層(A)を設けることが重要である。
【0021】
スチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体を含有する合成樹脂を塗工層(B)に含有させることで、他の合成樹脂と比較して、塗工層(A)と好ましくは塗工層(C)で用いるワックスが塗工層(B)と混合しにくく、高い防湿性を得ることができる。スチレン系共重合体および/またはアクリル系共重合体ではなく他の合成樹脂を用いた場合、塗工層(A)と好ましくは塗工層(C)に含まれるワックスと合成樹脂とが混合しやすく、得られた防湿ライナーの防湿性および糊貼り適性が低下する問題がある。
【0022】
スチレン系合成樹脂および/またはアクリル系合成樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合物、スチレン−アクリロニトリル共重合物、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合物、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合物、スチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合物、(メタ)アクリル酸−ブタジエン共重合物、(メタ)アクリル酸−エチレン共重合物、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合物、(メタ)アクリル酸−スルホン酸共重合物、(メタ)アクリル酸エチル−エチレン共重合物、(メタ)アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合物、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合物などが挙げられる。この中でも、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合物を用いると、高い防湿性および糊貼り適性が得られるため好ましい。
【0023】
スチレン系合成樹脂および/またはアクリル系合成樹脂以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の一般的な合成樹脂を併用することができる。このような合成樹脂としては、例えばエポキシ化合物(ブチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールポリエチレングリコールグリシジルエーテル等)、ポリ尿素化合物(ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物およびポリアミドアミン化合物等)、オレフィン系ポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合物、塩化ビニル、ビニルエーテル、ベンジルイソシアネート、アリルメルカプタン等)などが挙げられる。
【0024】
塗工層(B)の塗工量は、固形分換算で片面あたり7.0〜12.5g/mが好ましく、8.0〜11.5g/mがより好ましい。7.0g/mを下回ると十分な糊貼り適性が得られないばかりか、防湿性も低下しやすいため好ましくない。13.0g/mを超過すると、塗工層(A)や好適となるよう設けた塗工層(C)のワックスが塗工層(B)の合成樹脂と混合しやすくなり、得られる防湿ライナーの防湿性および糊貼り適性が低下しやすいため好ましくない。
【0025】
(塗工層(A))
塗工層(B)の上には、マイクロカプセル状のワックスを含む塗工層(A)が、防湿ライナーの最表層として設けられる。塗工層(A)としてマイクロカプセル状のワックスを含むことで、塗工層(B)に含まれるアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体と、塗工層(A)に含まれるワックスとの直接接触を防止でき、ワックスがアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体と混合することを防止できるため、合成樹脂およびワックスが有する本来の防湿性および撥水性を得ることができるのである。加えて、糊貼り適性が悪いワックスを含有する塗工層(A)を有しながら、良好な糊貼り適性を有する防湿ライナーを得ることができる。糊貼り適性が良好となる理由は不明だが、おそらく、アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体と、ワックスとの混合を防止できることにより、塗工層(A)中のワックスが均一になるためと考えられる。マイクロカプセル状でないワックスを塗布した場合は、アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体とワックスとが混合して、塗工層中のワックスが不均一になるため、充分な糊貼り適性が得られなかったと考えられる。
【0026】
但し、ワックスがマイクロカプセル中に留まったままであると十分な撥水性が得られないため、塗工層(A)を塗工した後に、マイクロカプセルを破壊してワックス成分を露出させる必要がある。マイクロカプセルの破壊は特段の工程を必要とせず、コルゲータを用いて防湿ライナーを段ボールシートに加工すれば、加工時に加わる熱により容易にマイクロカプセルが破壊され、防湿ライナーの塗工層(A)に撥水性が付与でき、防湿ライナーの防湿性を向上させることができる。
【0027】
コルゲータで段ボールシートを製造する際には、130〜150℃の熱がかかるため、マイクロカプセルに用いるカプセル(外殻)の融点は130〜150℃であることが好ましい。130〜150℃に融点を有するマイクロカプセル状ワックスは、従来一般に知られているマイクロカプセル製造方法を用いて製造することができる。例えば、特開平07−323668号公報、特開2008−297503号公報に記載の製造方法等を用いれば良い。
【0028】
なお、コルゲータで段ボールシートを製造する前に、防湿ライナーを130〜150℃の環境下にしてマイクロカプセルを破壊してしまうと、マイクロカプセル内のワックスが露出して塗工層(B)に沈み込む可能性があり、撥水性が低下する可能性がある。このため、塗工層(A)の塗工工程や塗工後の乾燥工程においては、防湿ライナーの紙面温度を130℃未満とすることが好ましい。一般的な乾燥設備は水分を蒸発させることを目的にしているため、ライナー表面の温度が水の沸点である100℃を大きく超過することはなく、130℃まで紙面温度が上昇する可能性はないが、乾燥温度には注意が必要である。
【0029】
マイクロカプセルに封入するワックスとしては、塗工層(C)で記載した一般的なワックスを用いることができる。
【0030】
塗工層(A)の塗工量は、固形分換算で片面あたり0.5〜2.5g/mであり、1.0〜2.0g/mがより好ましい。0.5g/mを下回ると十分な撥水性および防湿性が得られない。2.5g/mを超過すると、貼合部分においてワックス量が多くなりすぎて、ワックスの短所である糊貼り適性の低下が発生し、段ボール箱を製函した後に貼合部分が剥離しやすい、糊貼り適性低下の問題がある。
【0031】
また、塗工層(C)、塗工層(B)、塗工層(A)を塗工する方法は限定されず、従来一般の塗工方法や印刷方法を用いることができる。例えばエアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソ印刷機等が挙げられるが、本発明のごとく2層以上の塗工を行う場合には、塗工層を同時に塗工でき生産性に優れる、フレキソ印刷機などの印刷機を用いることが好ましい。
【0032】
上述のとおり、本発明においては、アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する塗工層(B)を設け、マイクロカプセル状のワックスを含有する塗工層(A)を、塗工量0.5g/m以上2.5g/m以下で設けることを特徴とする。本構成にすることで、塗工層(B)のアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体と、塗工層(A)のワックスとが混ざることなく塗工層(B)および塗工層(A)を形成できるため、防湿性および撥水性の低下を防止でき、塗工層の合計塗工量が15g/m未満であっても十分な防湿性および撥水性を得ることができる。すなわち、ワックスに由来する高い撥水性を得ながら、かつアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体に由来する良好な防湿性を得ることができ、かつ、糊貼り適性をも向上でき、防湿性、撥水性および糊貼り適性の相反する全ての性能を有する防湿ライナーを得ることができる。特に塗工層の合計塗工量が15g/m未満でありながら、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てを満足できるため、省資源化を達成できるものである。
【0033】
更には、基紙と塗工層(B)との間に塗工層(C)を設けると、防湿性を更に高めることができるだけでなく、アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する塗工層(B)が基紙に浸透することを防止できるため、塗工層(B)の防湿性をさらに向上させることができるため好ましい。この塗工層(C)としてワックスを含有させ、かつ塗工層(A)としてワックスを含有させ、2層のワックス層を設けることにより、特に防湿性に優れた防湿ライナーを得ることができる。仮に塗工層(C)を設けず塗工層(A)のみを設けて十分な防湿性を得るためには3.5g/mを超過するまで塗工量を増加させることが好ましいため、塗工層(B)であるアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体とワックスが混合しやすくなり、防湿性が低下する場合がある。塗工層(C)としてワックスの塗工量を0.1〜1.0g/mと低塗工量にし、かつ塗工層(A)の塗工量を0.5〜2.5g/mと低塗工量にし、低塗工量のワックス層を2層とすることで、防湿性および撥水性を更に向上しながら、かつ糊貼り適性にも優れた防湿ライナーが得られやすいため好ましい。塗工層(C)および塗工層(A)の合計塗工量は、0.6〜3.5g/mが好ましく、1.2〜2.8g/mがより好ましい。合計塗工量を上記範囲内とすることで、塗工量が15g/m未満でありながら防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てに優れた防湿ライナーが得られやすいため好ましい。合計塗工量が上記範囲を外れると、防湿性、撥水性および糊貼り適性が低下しやすいため好ましくない。
【0034】
更には、前記アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体がスチレン−アクリル共重合物であると、より塗工層(C)および塗工層(A)のワックスとの混合を防止することができ、特に防湿性、撥水性および糊貼り適性に優れた防湿ライナーを得ることができるため好ましい。
【0035】
ついで、本願発明を、実施例および比較例により、さらに詳述する。
【0036】
以下に説明する実施例および比較例において使用される基紙、撥水剤および防湿剤(ワックスまたは合成樹脂)、塗工方法は以下の通りである。
<基紙>
ライナー(大王製紙(株)製 ジャストKライナー180g/m
<ワックス>
ワックス:ハリコートC−300、ハリマ化成社製。
パラフィンワックス:ペルトールK−3、東邦化学工業社製。
変性ワックス:撥水剤WR3922、星光PMC社製。
MCワックス:マイクロカプセル状ワックス、ブライトーンFC350、サカタインクス社製。
<合成樹脂>
スチレン−アクリル:スチレン−アクリル共重合体、ブライトーンFC3200、サカタインクス社製。
アクリル系樹脂:ジョンクリル538、BASF社製。
スチレン系樹脂:ジョンクリル631、BASF社製。
尿素系樹脂:ポリアミドポリ尿素系樹脂、スミレーズレジン633、田岡化学社製。
フッ素系:フッ素系エマルジョン、コートサイザーDCF、大和化学工業社製。
<塗工方法>
フレキソ印刷機(型番:DF93、F&K社製)を用い、次の範囲の線数を有するアニロックスロール用いて、固形分換算で片面あたり、表に記載の塗工量となるよう塗工した。なお、塗工層(B)は表に記載の防湿剤または撥水剤を2回塗工し、表に記載の塗工量となるよう調整した。
塗工層(C):250〜400線のアニロックスロールを用いた。
塗工層(B):120〜200線のアニロックスロールを用いた。
塗工層(A):165〜400線のアニロックスロールを用いた。
【0037】
実施例および比較例として、上記基紙上に、上記ワックスおよび合成樹脂を、上述の塗工方法で表1に記載の塗工量となるよう塗工し、表1に記載の塗工層(C)、塗工層(B)および塗工層(A)を有する防湿ライナーを得た。
【0038】
<評価方法>
1)透湿度
JIS−Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に規定するカップ法に従って測定した。測定時間は24時間、温度は40度、湿度は90%とした。24時間後の透湿度が150g/m以下であれば特に防湿性が高いため特に好ましく、200g/m以下であれば防湿性があるため好ましく、200g/mを超過すると防湿性に劣るため使用できない。
【0039】
2)吸水度
JIS−P−8140「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に規定する吸水度試験方法に従って測定した。測定時間は2時間とした。2時間後の吸水度が40g/m以下であれば特に防湿性が高いため特に好ましく、60g/m以下であれば防湿性があるため好ましく、60g/mを超過すると防湿性に劣るため使用できない。
【0040】
3)撥水性
旧JIS−P−8137「紙及び板紙のはっ水度試験方法」に規定する撥水度試験方法に従って測定した。撥水度がR10であれば撥水性に優れ、R8以上であれば撥水性が良好であり、R8未満であれば撥水性に劣るため使用できない。
【0041】
4)糊貼り適性
実施例および比較例で製造した防湿ライナーを表層および裏層として、中芯原紙(120g/m、大王製紙社製)とコルゲータマシン(型番:ベルトンプレス60G、三菱社製)を用い、貼合速度180m/分で、塗工層を有する面を段ボールシートの表側となるよう(塗工層を中芯原紙と貼合しないよう)貼合し、A段の段ボールシートを製造した。得られた段ボールシートを製函機(フレキソフォルダグルアー サミット100 三菱重工社製)および糊(セビアンA56104 ダイセル化学工業社製)を用い、加工速度200枚/分にてA式の段ボールケースに製函加工し、1分後に貼合部分(シートのジョイント部分)を手で剥がし、次のとおり糊貼り適性を評価した。
◎:糊貼り個所が剥離しなかった(段ボールシートが破壊された)部分が、糊貼り面積全体うち1/3以上あり、糊貼り適性に優れる。
○:糊貼り個所が剥離しなかった(段ボールシートが破壊された)部分が、糊貼り面積全体うち1/3以下あり、糊貼り適性が良い。
×:糊貼り個所が剥離しなかった(段ボールシートが破壊された)部分がなく、糊貼り適性が悪い。
【0042】
【表1】

【0043】
上記結果によれば実施例は、マイクロカプセル状のワックスを含み、かつ防湿ライナーの最表層に設けられた塗工層(A)および、基紙と塗工層(A)との間にアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する塗工層(B)を有しており、塗工層(A)を塗工量が、固形分換算で片面あたり0.1〜0.5g/mで設けているため、透湿度および吸水度が低く防湿性に優れ、撥水性が高く、かつ糊貼り適性が良好な防湿ライナーが得られた。
【0044】
これに対して比較例は、マイクロカプセル状のワックスを含む塗工層(A)を有していないか、基紙と塗工層(A)との間にアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する塗工層(B)を有していないか、塗工層(A)を塗工量が、固形分換算で片面あたり0.1〜0.5g/mで設けていないため、透湿度、吸水度、撥水性、糊貼り適性のいずれかまたは複数の項目において実施例よりも明らかに劣り、使用できない防湿ライナーとなった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、防湿性、撥水性および糊貼り適性の全てに優れる防湿ライナーを得ることができる。また、塗工量が固形分換算で片面あたり15g/m未満としながらも、十分な防湿性、撥水性および糊貼り適性を有する防湿ライナーを得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有する防湿ライナーにおいて、
前記2層の塗工層は、前記防湿ライナーの最表層に設けられる塗工層(A)および、前記基紙と前記塗工層(A)との間に設けられる塗工層(B)であり、
前記塗工層(B)はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有し、
前記塗工層(A)はマイクロカプセル状のワックスを含有し、
前記塗工層(A)の塗工量が、固形分換算で片面あたり0.5g/m以上2.5g/m以下であることを特徴とする防湿ライナー。
【請求項2】
前記基紙と前記塗工層(B)との間に塗工層(C)が設けられた、少なくとも3層の塗工層を有する防湿ライナーであり、
前記塗工層(C)がワックスを含有し、
前記塗工層(C)の塗工量が、固形分換算で片面あたり0.1g/m以上1.0g/m以下であり、
前記塗工層(C)および前記塗工層(A)の合計塗工量が、固形分換算で片面あたり0.6g/m以上3.5g/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載の防湿ライナー。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体がスチレン−アクリル共重合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防湿ライナー。

【公開番号】特開2011−162899(P2011−162899A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24967(P2010−24967)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】