防湿容器
【課題】防湿効果に優れ、乾燥剤の塵埃による被収容物の汚損が極度に低減された防湿容器を提供すること。
【解決手段】容器本体と、容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、内容器に収容された乾燥剤と、内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、容器本体は、底板内壁に台座を備え、乾燥剤収容体は、台座と、透湿防塵シートとが接触するように容器本体に挿入され、容器本体底板と透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器により上記課題を解決しうる。
【解決手段】容器本体と、容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、内容器に収容された乾燥剤と、内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、容器本体は、底板内壁に台座を備え、乾燥剤収容体は、台座と、透湿防塵シートとが接触するように容器本体に挿入され、容器本体底板と透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器により上記課題を解決しうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥剤を備えた防湿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿の分析に用いるテストピース(検出センサチップ)は、湿気(水)により容易に劣化し、検出能力が低下する。従って、このようなテストピースの保存には、内部に乾燥剤を備えた容器が用いられる。例えば、乾燥剤を収容し、開口部を防塵シートで封止したカップ状の成形容器を、容器の底部に固定した防湿容器が提案されている(特許文献1)。このような防湿容器の欠点は、テストピースとの接触により防塵シートが破損し、当該破損部分から漏洩した乾燥剤が、テストピースを汚損する場合があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防湿効果に優れ、乾燥剤による被収容物(テストピース)の汚損がきわめて低減された防湿容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、下記構成の防湿容器により上記課題を解決しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
〔1〕:容器本体と、容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、
乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、内容器に収容された乾燥剤と、内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、
内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、
容器本体は、底板内壁に台座を備え、
乾燥剤収容体は、台座と、透湿防塵シートとが接触するように容器本体に挿入され、容器本体底板と透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器を提供する。
【0007】
〔1〕に記載の防湿容器は、さらに、内容器の底部の外面を含む平面よりも容器本体の開口部側において、容器本体の内周壁から突出し、乾燥剤収容体の容器本体の開口部側への移動を阻止する突起を有することが好ましい。
【0008】
本発明はさらに、〔1〕に記載の防湿容器の製造方法であって、
内容器に充填ノズルを使用して乾燥剤を充填する工程と、
当該乾燥剤を収容した内容器の開口部に、透湿防塵シートをシールして開口部を封止して乾燥剤収容体を製造する工程と、
乾燥剤収容体を、透湿防塵シートを容器本体の底部に向けて容器本体に挿入する工程とを備える、防湿容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防湿容器は、防湿効果に優れ、かつ、乾燥剤による被収容物の汚損がきわめて低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の防湿容器を示す斜視図
【図2】実施の形態1の防湿容器の開栓状態を示す上面図
【図3】実施の形態1の防湿容器を示す断面図
【図4】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図5】内容器の上面図
【図6】内容器の第1の例を示す断面図
【図7】内容器の第2の例を示す断面図
【図8】防湿容器の製造方法を示す図
【図9】防湿容器の製造方法を示す図
【図10】防湿容器の製造方法を示す図
【図11】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図12】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図13】実施の形態2の防湿容器の開栓状態を示す上面図
【図14】実施の形態2の閉栓状態を示す断面図
【図15】実施の形態2に係る内容器の正面図
【図16】実施の形態2に係る内容器の上面図
【図17】実施の形態2に係る内容器の一部断面図
【図18】実施の形態2に係る容器本体の開栓状態を示す断面図
【図19】実施の形態2の比較例1及び2の防湿容器の吸湿能力を示す図
【図20】スリットの本数による吸湿能力を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る本発明の防湿容器の一例を示す斜視図である。図2は図1に示した防湿容器の開栓状態を示す上面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【0012】
本発明の防湿容器は、防湿性を有する樹脂(例えば、ポリプロピレン)等からなる。容器本体1は、筒型であり、一端は底板13によって封止され、他の一端は開口している。筒型としては、円筒、角筒(四角柱、六角柱など)を例示できる。
【0013】
図1〜図3に示した防湿容器のように、容器本体1と蓋体2とをヒンジ23を介して接続して一体とすると、樹脂一体成形体として効率よく生産できる。しかしながら、容器本体1と蓋体2とは、図4に示すように別体としてもよい。
【0014】
容器本体1の開口を開閉自在に密栓する方法は、特に限定されない。例えば、容器本体1と蓋体2とを別体として、蓋体2を容器本体1の開口部に螺合して、開閉自在に密栓することもできる。
【0015】
容器本体1は、底板13の上面の外周部に台座11を備える。台座11は、後述する乾燥剤収容体3を支持し、乾燥剤収容体3と底板13との間に隙間6を確保する役割を担う。従って、台座11が底板13に占める割合は小さい方がよい。図1〜図4には、台座11を容器本体1の内周壁に沿って配置した例を示したが、台座11の位置は乾燥剤収容体3を安定して支持できる限り特に制限されない。台座11の数及び形状もまた、乾燥剤収容体3を安定して保持できる限り特に制限されない。例えば、底板13の中央から容器本体1の内周壁に向けて放射状に延びるリブを、台座11として形成してもよい。
【0016】
[乾燥剤収容体]
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、容器本体1の底部に挿入された乾燥剤収容体3を有する。
【0017】
乾燥剤収容体3は、内容器30と、内容器30内部に収容された乾燥剤5と、内容器30の開口部を封止する透湿防塵シート4とを備える。
【0018】
内容器30は筒型であり、その一端は底板により封止され、他の一端は開口している。内容器30の外周形状及び大きさは、容器本体1に挿入可能で、かつ、内容器30の外径が容器本体1の内径と一致するように設定される。ただし、後述の溝31が設けられた部分はこの限りでない。
【0019】
図5は、内容器30の一例を示す上面図である。図6は、図5に示す内容器30のVI−IV方向の断面図である。
【0020】
内容器30の外周壁には、その開口端と底部とを結ぶ溝31が形成されている。また、内容器30の外周壁は、その外径が容器本体1の内径と一致するよう設定したスリット32を備える。図5には5本の溝31を有する内容器30を示したが、溝31は単数であってもよく、その数は特に制限されない。開口端と底部とを最短距離で結ぶ直線の溝31を図示したが、溝31の形状は開口端から底部までを連続して結ぶ限り特に制限されない。
【0021】
溝31の深さa及び幅bは、後述する防湿容器の乾燥能力を考慮して適宜決定される。溝31の数もまた、防湿容器の乾燥能力を考慮して適宜決定される。
【0022】
内容器30の底板は、図6に示すような平面状であってもよい。また、内容器30の底板は、図7に示すように中央部が内方側に陥入した凹形状であってもよい。図7の底板を採用した場合の作用効果については後述する。
【0023】
乾燥剤5としては、被収容物を汚染浸食しない限りにおいて、公知乃至慣用の乾燥剤をいずれも使用することができ、特に制限されない。具体的には、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化アルミニウム、鉄粉等の化学系乾燥剤や、酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル等の物理系乾燥剤を挙げることができる。
【0024】
乾燥剤の種類を選択することにより、防湿容器内の湿度を調整することができる。ゼオライト及び/又はモレキュラーシーブを用いた場合は、防湿容器内の湿度を5%以下にすることが可能である。酸化カルシウム、塩化カルシウム等を用いた場合は、防湿容器内の湿度を5〜10%程度にすることが可能である。シリカゲル、酸化アルミニウムを用いた場合は、防湿容器内の湿度は約10%となる場合が多い。
【0025】
本発明においては、吸湿による乾燥剤の凝集や、摩擦等による塵埃の発生を回避する観点から、物理系乾燥剤を使用することが好ましい。これらの中で、防湿容器内の湿度を低く保持できること、温度変化に伴う乾燥効率の変化及び水の再放出をおこしにくいことからモレキュラーシーブを特に好適に使用することができる。
【0026】
透湿防塵シート4としては、透湿性及び防塵性を具備し、一定の強度を有するシートをいずれも使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる不織布、微多孔性フィルム、及び微多孔性シートを例示できる。このようなシートの市販の例としては、米国デュポン社製;『Tyvek(登録商標)』、積水化成品工業株式会社製;『セルポア』、徳山曹達株式会社製;『NFシート』、日東電工株式会社製『ニトフロン(登録商標)』を挙げることができる。
【0027】
内容器30に乾燥剤5を収容し、内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止することにより乾燥剤収容体3を製造することができる。
【0028】
乾燥剤5を内容器30に収容する際には、例えば、図8に示すように充填ノズルを使用すると、効率的に収容作業を行うことができる。
【0029】
乾燥剤5を収容した後、内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止する。透湿防塵シート4は、予め内容器30の開口部の形状及び大きさに合わせて裁断される。裁断された透湿防塵シート4は、空気吸引を利用した吸着アームを用いて内容器30の開口部に位置あわせすることができる。
【0030】
内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止する方法は特に制限されないが、超音波を利用した溶着を例示できる。図9に示すように、吸着アームを用いて透湿防塵シートを保持しつつ、超音波ホーンを用いて加熱溶着することができる。内容器30の開口部と透湿防塵シート4との溶着面積は、両者の密着性を損なわない限りにおいて、小さい方が好ましい。溶着面積が大きいと、内容器30を容器本体1に挿入した際に透湿防塵シート4にしわやよじれが発生する原因となるため、好ましくない。
【0031】
上述のようにして得られた乾燥剤収容体3を容器本体1に挿入する。図10に示すように、乾燥剤収容体3は、透湿防塵シート4を容器本体1の底板13に向けて挿入される。換言すると、内容器30の開口部は、容器本体1の底板13に向けられ、内容器30の底は、容器本体1の開口側に向けられる。乾燥剤収容体3は、透湿防塵シート4が、容器本体1の底板13内壁に設けられた台座11に接触するように挿入される。
【0032】
台座11の設置位置及び大きさを適切に調整し、かつ、図9に示す超音波溶着の工程の後、直ちに乾燥剤収容体3の容器本体1への挿入を行うことで、乾燥剤収容体3の透湿防塵シート4と、容器本体1の台座11とが溶着されうる。
【0033】
乾燥剤収容体3を、容器本体1に収容後、蓋体2により容器本体1の開口を密栓することにより、容器本体1内に乾燥状態がもたらされ、本発明の防湿容器が完成する。
【0034】
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、防湿容器内の湿気(水)が乾燥剤5に到達する際の通路となる透湿防塵シート4が容器本体1の底板13に向けられて設置されている。しかしながら、底板13の内壁には台座11が設置されているので、底板13と透湿防塵シート4の間には隙間6が存在する。また、内容器30の外周壁には溝31が設けられている。従って、防湿容器内の湿気(水)は、溝31と容器本体1の内周壁との間の空間を通り、隙間6へと移動することができる。隙間6へと移動した湿気(水)は、透湿防塵シート4を透過して乾燥剤5に吸着される。
【0035】
一方、内容器30の被収容物と接触する部分は、内容器30の底部である。この底部は透湿防塵シート4に比して強靱であるため、被収容物(テストピース)との接触により内容器30の塵埃が発生する可能性はきわめて低い。また、乾燥剤収容体3に傷等が生じ、当該傷から乾燥剤5及びその塵埃が乾燥剤収容体3の外部に漏れ出る懸念は著しく低減される。すなわち、実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、被収容物が、防湿容器自体の損傷によって生じる塵埃や、乾燥剤5及びその塵埃により汚損する懸念がきわめて低減された、優れた防湿容器である。
【0036】
上述のように、実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、安定した乾燥能力と、乾燥剤5による被収容物の汚損の低減とが両立されている。
【0037】
防湿容器の乾燥能力は、上述のように乾燥剤5の種類を選択することによっても調節できるが、溝31の深さa、及び幅b、並びにその数を選択することによっても調節することができる。また、台座11の高さh及び、透湿防塵シート4と接触する面の面積を選択することによっても調節することができる。
【0038】
溝31の深さa、及び幅bを大きくし、溝31の数を増やせば短時間に多量の湿気(水)を吸収することができるため、瞬発力に優れた防湿容器となるが、短時間に乾燥剤5の乾燥能を消費してしまうため、防湿容器の寿命は短くなる。
【0039】
台座11の高さhを大きくすれば、隙間6の体積が大きくなるため、瞬発力に優れた防湿容器となる。
【0040】
台座11の透湿防塵シート4と接触する面の面積を大きくすると、湿気(水)が透過する面積が小さくなるため、乾燥は緩慢に行われ、瞬発力には劣るが防湿容器の寿命は長くなる。
【0041】
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、さらに、容器本体1の内周壁に突起12を有することが好ましい。突起12は、内容器の底部の外面を含む平面よりも、容器本体1の開口部側に設置される。突起12は、容器本体1の底部に挿入された乾燥剤収容体3が、容器本体1の開口部側へ移動することを防止する。
【0042】
突起12の形状及び大きさは特に制限されないが、容器本体1の底部への乾燥剤収容体3の挿入を妨げない範囲から選択する。
【0043】
突起12の数は単数であっても、複数であってもよい。
【0044】
図11は、実施の形態1にかかる本発明の防湿容器において、図7に示す内容器30を採用した例を示す。乾燥剤の量を増やしたい場合、乾燥剤収容体3の容積を大きくすればよい。ただし、容器本体1の高さに余裕がない場合は、単純に乾燥剤収容体3の高さを大きくしただけでは、被収容物(テストピース等)の収容スペースを確保できないという問題がある。図11のように防湿容器を構成すれば、容器本体1の長さを変えることなく、乾燥剤収容体3の容積を大きくし、より多くの乾燥剤5を収容でき、かつ、同じ長さの被収容物(テストピース等)を収容することができる。また、図11の内容器30の底板は、外周部から徐々に内径が狭まるテーパー形状であるので、被収容物が底板の周縁部分に乗った場合でも中央の低い部分に導かれ、蓋を閉める際の妨げとならない。したがって、このテーパー形状により、安定して被収容物を収容することが可能となる。ただし、被収容物の安定した収容状態を考慮しなくてもよい場合は、底板の少なくとも一部に段差を設けることによって乾燥剤収容体3の容積を調整することができる。
【0045】
図12は、図11に示す防湿容器と同様に、底板の中央が陥入した形状の内容器30を採用し、かつ、乾燥剤収容体3の容積を小さくした例である。内容器30の高さおよび陥入の程度を調整することにより、乾燥剤5の収容量を調節し、乾燥能力および防湿容器の寿命を所望の範囲に設定することができる。
【0046】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る防湿容器の開栓状態の上面図を示し、図14に実施の形態2に係る防湿容器の閉栓状態の断面図を示す。実施の形態1に係る防湿容器と同様の構成要素は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では突起12を容器本体10の内壁全周に設けている点と、内容器30aの底部角の一部を面取りしている点とが、実施の形態1と異なる。突起12を容器本体10の内壁全周に設けることにより、容器本体10の底部に挿入された乾燥剤収容体3aが、容器本体10の開口部側へ移動することをより確実に防止できる。また、突起12を容器本体10の内壁全周に設けると、防湿容器内の空気の隙間6への流れが悪くなるが、内容器30aの溝31を形成する底部角の一部を面取りすることにより、上述の空気の流れが悪くなるのを防止できる。
【0047】
図15は、実施の形態2に係る乾燥剤収容体3の内容器30aの正面図を示し、図16は内容器300の上面図を示す。内容器30aの外周壁は、容器本体10の内径と一致する外径を有する複数のスリット32を備えている。図15ではスリット32を15本備えているが、スリット32の本数は、乾燥剤収容体3が突起12から容器本体10の開口側に移動するのを防止できれば制限されるものではなく、また、スリット32を外壁の外周全体に設けていなくても良い。しかし、乾燥剤収容体3が突起12から容器本体10の開口側に移動するのを防止する目的と型設計の設計条件より、スリット32の本数は2〜30本が好ましい。また、溝31の底部は平面で形成されているが、曲面で形成されていても良い。
【0048】
防湿容器の乾燥能力はスリット32の深さd、及び幅w、並びにその数を選択することによって調節することができる。スリット32の深さd、及び幅wを大きくし、スリット32の本数を増やせば短時間に多量の湿気(水)を吸収することができるため、瞬発力に優れた防湿容器となるが、短時間に乾燥剤5の乾燥能を消費してしまうため、防湿容器の寿命は短くなる。後述する所望の吸水速度に応じて、設定するのがより好ましい。また、溝31の深さa及び幅bは被収容物の大きさに応じて、被収容物が溝31に挟まらないように設定するのが好ましい。
【0049】
被収容物の大きさを縦e、横f、高さgとする。被収容物が溝31内に落ちないためには、下記の寸法を満たせば良い。溝31の幅bが被収容物の横fより大きい場合は、溝31の深さaが被収容物の縦eの10−100%から指定される寸法であれば良い。また、溝31の幅bが被収容物の横f以下の寸法の場合は、溝31の深さaが被収容物の縦eの10−100%から指定される寸法または縦eの100%から溝31の幅b以下の寸法であれば良い。また、上記の寸法を満たすようにスリット32の幅wを適宜設定するのが好ましい。さらに、容器本体10の開口を封止する蓋体2の内環21の下から乾燥剤収容体3aの底部までの高さH1は、蓋体2で容器本体10の開口部を封止する際、蓋体2と容器本体10との間に被収容物が噛み込まれることを防ぐために、被収容物の高さg以上の寸法とすることが好ましい。例えば、図13に示す容器本体10の開口を封止する蓋体2の内環21の下から乾燥剤収容体3aの底部までの高さH1の寸法は、一例として28.3mmとした。この場合高さgが28.3mmより低い被収容物を収容することが好ましい。
【0050】
図17は図16のA−A線に沿った断面図を示す。本実施形態では内側容器30の溝31を形成する底部の上端部の角が、斜めに平面カットされたC面取りされている。C面取りを行うことにより、実施の形態1の突起12と内容器30との隙間に比べて、突起12と内容器30aとの隙間を大きく形成することができる。従って、突起12を容器本体10の内壁全周に設けても、容器本体10の内部の空気が溝31を通じて乾燥材収容体3aに流れにくくなるのを防いでいる。また、本実施形態では溝31の底部の上端部を斜めに平面カットしてC面取りしているが、曲面で面取りされたR面取りでも良い。
【0051】
乾燥剤5及び透湿防塵シート4は、実施の形態1で使用したものと同様のものを使用でき、乾燥剤5を内容器30aに収容する際にも同様に充填ノズルを使用すると、効率的に収容作業を行うことができる。また、内容器30aの開口部を透湿防塵シート4で封止する方法は特に制限されない。例えば超音波を利用した溶着を選択できる。
【0052】
図18は実施の形態2に係る容器本体10の断面図を示す。図18で示した乾燥剤収容体3aを挿入する空間の寸法は、一例として高さH2を14.6mm、径rを22.33mmとした。
【0053】
実施の形態2に係る防湿容器は、上述のようにして得られた乾燥剤収容体3aを透湿防塵シート4と容器本体10の台座11接触するように挿入することで製造することができ、被収容物(テストピース等)を容器本体10に収容後、蓋体2により容器本体10の開口を封止することにより、容器本体10内に乾燥状態をもたらされる。
【0054】
実施の形態2の防湿容器は、実施の形態1の防湿容器と比べ、容器本体10の底部に挿入された乾燥剤収容体3aが、容器本体10の開口部側へと移動することをより確実に防止することができる。
【0055】
(サンプル1)
容器本体10にスリット32の本数が5本の内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、蓋体2の裏側に温湿度計を両面テープで貼りつけた。上述で得られた防湿容器を蓋体2が開いた状態で、温度30℃、湿度70%に設定された恒温恒湿槽に入れ1時間放置し、サンプル1を得た。
【0056】
(サンプル2)
容器本体10にスリット32の本数が15本の内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、比較例1と同様の工程でサンプル2を得た。
【0057】
サンプル1および2について上述の恒温恒湿槽内で蓋体2を閉め、吸湿状況を計測した。結果を図19に示す。図19よりスリット32の本数が5本であるサンプル1は湿度が20%まで低下するのに、約1時間30分かかったのに対し、スリット32の本数15本のサンプル2では湿度が20%まで低下するのにかかった時間は約45分であった。
【0058】
また、容器本体10にスリット32の本数が5本、8本、10本、15本である内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、それぞれの防湿容器の重量を精密電子天秤にて測定した。その後、それぞれ蓋体2を開いた状態で、温度30℃、湿度70%に設定された恒温恒湿槽に入れ24時間放置し、再度それぞれの防湿容器の重量を電子天秤にて測定し、1時間当たりの吸水能力を算出し、スリット32の本数が5本のものと比較した。上記の算出および比較結果を図20に示す。
【0059】
以上、図19および図20の比較結果より、スリット32の本数を設定することで、吸湿速度および吸水能力を適宜設定することができる。
【0060】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る防湿容器はいずれも、被収容物の攻撃から透湿防塵シート4を有効に保護し、乾燥剤5及びその塵埃による被収容物の汚損を低減している。しかも、防湿容器の除湿速度や除湿可能期間を自在に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の防湿容器は、湿気及び乾燥剤の塵埃により劣化しやすい物品を収容するための容器として広範に利用できる。例えば、血糖値検査や尿検査に使用するためのテストピースや、薬剤(錠剤等)を収容するための容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、10 容器本体
11 台座
12 突起
13 底板
2 蓋体
21 内環
22 外環
23 ヒンジ
3、3a 乾燥剤収容体
30、30a 内容器
31 溝
32 スリット
4 透湿防塵シート
5 乾燥剤
6 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥剤を備えた防湿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿の分析に用いるテストピース(検出センサチップ)は、湿気(水)により容易に劣化し、検出能力が低下する。従って、このようなテストピースの保存には、内部に乾燥剤を備えた容器が用いられる。例えば、乾燥剤を収容し、開口部を防塵シートで封止したカップ状の成形容器を、容器の底部に固定した防湿容器が提案されている(特許文献1)。このような防湿容器の欠点は、テストピースとの接触により防塵シートが破損し、当該破損部分から漏洩した乾燥剤が、テストピースを汚損する場合があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防湿効果に優れ、乾燥剤による被収容物(テストピース)の汚損がきわめて低減された防湿容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、下記構成の防湿容器により上記課題を解決しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
〔1〕:容器本体と、容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、
乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、内容器に収容された乾燥剤と、内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、
内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、
容器本体は、底板内壁に台座を備え、
乾燥剤収容体は、台座と、透湿防塵シートとが接触するように容器本体に挿入され、容器本体底板と透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器を提供する。
【0007】
〔1〕に記載の防湿容器は、さらに、内容器の底部の外面を含む平面よりも容器本体の開口部側において、容器本体の内周壁から突出し、乾燥剤収容体の容器本体の開口部側への移動を阻止する突起を有することが好ましい。
【0008】
本発明はさらに、〔1〕に記載の防湿容器の製造方法であって、
内容器に充填ノズルを使用して乾燥剤を充填する工程と、
当該乾燥剤を収容した内容器の開口部に、透湿防塵シートをシールして開口部を封止して乾燥剤収容体を製造する工程と、
乾燥剤収容体を、透湿防塵シートを容器本体の底部に向けて容器本体に挿入する工程とを備える、防湿容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防湿容器は、防湿効果に優れ、かつ、乾燥剤による被収容物の汚損がきわめて低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の防湿容器を示す斜視図
【図2】実施の形態1の防湿容器の開栓状態を示す上面図
【図3】実施の形態1の防湿容器を示す断面図
【図4】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図5】内容器の上面図
【図6】内容器の第1の例を示す断面図
【図7】内容器の第2の例を示す断面図
【図8】防湿容器の製造方法を示す図
【図9】防湿容器の製造方法を示す図
【図10】防湿容器の製造方法を示す図
【図11】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図12】実施の形態1の防湿容器の他の一例を示す断面図
【図13】実施の形態2の防湿容器の開栓状態を示す上面図
【図14】実施の形態2の閉栓状態を示す断面図
【図15】実施の形態2に係る内容器の正面図
【図16】実施の形態2に係る内容器の上面図
【図17】実施の形態2に係る内容器の一部断面図
【図18】実施の形態2に係る容器本体の開栓状態を示す断面図
【図19】実施の形態2の比較例1及び2の防湿容器の吸湿能力を示す図
【図20】スリットの本数による吸湿能力を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る本発明の防湿容器の一例を示す斜視図である。図2は図1に示した防湿容器の開栓状態を示す上面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【0012】
本発明の防湿容器は、防湿性を有する樹脂(例えば、ポリプロピレン)等からなる。容器本体1は、筒型であり、一端は底板13によって封止され、他の一端は開口している。筒型としては、円筒、角筒(四角柱、六角柱など)を例示できる。
【0013】
図1〜図3に示した防湿容器のように、容器本体1と蓋体2とをヒンジ23を介して接続して一体とすると、樹脂一体成形体として効率よく生産できる。しかしながら、容器本体1と蓋体2とは、図4に示すように別体としてもよい。
【0014】
容器本体1の開口を開閉自在に密栓する方法は、特に限定されない。例えば、容器本体1と蓋体2とを別体として、蓋体2を容器本体1の開口部に螺合して、開閉自在に密栓することもできる。
【0015】
容器本体1は、底板13の上面の外周部に台座11を備える。台座11は、後述する乾燥剤収容体3を支持し、乾燥剤収容体3と底板13との間に隙間6を確保する役割を担う。従って、台座11が底板13に占める割合は小さい方がよい。図1〜図4には、台座11を容器本体1の内周壁に沿って配置した例を示したが、台座11の位置は乾燥剤収容体3を安定して支持できる限り特に制限されない。台座11の数及び形状もまた、乾燥剤収容体3を安定して保持できる限り特に制限されない。例えば、底板13の中央から容器本体1の内周壁に向けて放射状に延びるリブを、台座11として形成してもよい。
【0016】
[乾燥剤収容体]
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、容器本体1の底部に挿入された乾燥剤収容体3を有する。
【0017】
乾燥剤収容体3は、内容器30と、内容器30内部に収容された乾燥剤5と、内容器30の開口部を封止する透湿防塵シート4とを備える。
【0018】
内容器30は筒型であり、その一端は底板により封止され、他の一端は開口している。内容器30の外周形状及び大きさは、容器本体1に挿入可能で、かつ、内容器30の外径が容器本体1の内径と一致するように設定される。ただし、後述の溝31が設けられた部分はこの限りでない。
【0019】
図5は、内容器30の一例を示す上面図である。図6は、図5に示す内容器30のVI−IV方向の断面図である。
【0020】
内容器30の外周壁には、その開口端と底部とを結ぶ溝31が形成されている。また、内容器30の外周壁は、その外径が容器本体1の内径と一致するよう設定したスリット32を備える。図5には5本の溝31を有する内容器30を示したが、溝31は単数であってもよく、その数は特に制限されない。開口端と底部とを最短距離で結ぶ直線の溝31を図示したが、溝31の形状は開口端から底部までを連続して結ぶ限り特に制限されない。
【0021】
溝31の深さa及び幅bは、後述する防湿容器の乾燥能力を考慮して適宜決定される。溝31の数もまた、防湿容器の乾燥能力を考慮して適宜決定される。
【0022】
内容器30の底板は、図6に示すような平面状であってもよい。また、内容器30の底板は、図7に示すように中央部が内方側に陥入した凹形状であってもよい。図7の底板を採用した場合の作用効果については後述する。
【0023】
乾燥剤5としては、被収容物を汚染浸食しない限りにおいて、公知乃至慣用の乾燥剤をいずれも使用することができ、特に制限されない。具体的には、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化アルミニウム、鉄粉等の化学系乾燥剤や、酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル等の物理系乾燥剤を挙げることができる。
【0024】
乾燥剤の種類を選択することにより、防湿容器内の湿度を調整することができる。ゼオライト及び/又はモレキュラーシーブを用いた場合は、防湿容器内の湿度を5%以下にすることが可能である。酸化カルシウム、塩化カルシウム等を用いた場合は、防湿容器内の湿度を5〜10%程度にすることが可能である。シリカゲル、酸化アルミニウムを用いた場合は、防湿容器内の湿度は約10%となる場合が多い。
【0025】
本発明においては、吸湿による乾燥剤の凝集や、摩擦等による塵埃の発生を回避する観点から、物理系乾燥剤を使用することが好ましい。これらの中で、防湿容器内の湿度を低く保持できること、温度変化に伴う乾燥効率の変化及び水の再放出をおこしにくいことからモレキュラーシーブを特に好適に使用することができる。
【0026】
透湿防塵シート4としては、透湿性及び防塵性を具備し、一定の強度を有するシートをいずれも使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる不織布、微多孔性フィルム、及び微多孔性シートを例示できる。このようなシートの市販の例としては、米国デュポン社製;『Tyvek(登録商標)』、積水化成品工業株式会社製;『セルポア』、徳山曹達株式会社製;『NFシート』、日東電工株式会社製『ニトフロン(登録商標)』を挙げることができる。
【0027】
内容器30に乾燥剤5を収容し、内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止することにより乾燥剤収容体3を製造することができる。
【0028】
乾燥剤5を内容器30に収容する際には、例えば、図8に示すように充填ノズルを使用すると、効率的に収容作業を行うことができる。
【0029】
乾燥剤5を収容した後、内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止する。透湿防塵シート4は、予め内容器30の開口部の形状及び大きさに合わせて裁断される。裁断された透湿防塵シート4は、空気吸引を利用した吸着アームを用いて内容器30の開口部に位置あわせすることができる。
【0030】
内容器30の開口部を透湿防塵シート4で封止する方法は特に制限されないが、超音波を利用した溶着を例示できる。図9に示すように、吸着アームを用いて透湿防塵シートを保持しつつ、超音波ホーンを用いて加熱溶着することができる。内容器30の開口部と透湿防塵シート4との溶着面積は、両者の密着性を損なわない限りにおいて、小さい方が好ましい。溶着面積が大きいと、内容器30を容器本体1に挿入した際に透湿防塵シート4にしわやよじれが発生する原因となるため、好ましくない。
【0031】
上述のようにして得られた乾燥剤収容体3を容器本体1に挿入する。図10に示すように、乾燥剤収容体3は、透湿防塵シート4を容器本体1の底板13に向けて挿入される。換言すると、内容器30の開口部は、容器本体1の底板13に向けられ、内容器30の底は、容器本体1の開口側に向けられる。乾燥剤収容体3は、透湿防塵シート4が、容器本体1の底板13内壁に設けられた台座11に接触するように挿入される。
【0032】
台座11の設置位置及び大きさを適切に調整し、かつ、図9に示す超音波溶着の工程の後、直ちに乾燥剤収容体3の容器本体1への挿入を行うことで、乾燥剤収容体3の透湿防塵シート4と、容器本体1の台座11とが溶着されうる。
【0033】
乾燥剤収容体3を、容器本体1に収容後、蓋体2により容器本体1の開口を密栓することにより、容器本体1内に乾燥状態がもたらされ、本発明の防湿容器が完成する。
【0034】
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、防湿容器内の湿気(水)が乾燥剤5に到達する際の通路となる透湿防塵シート4が容器本体1の底板13に向けられて設置されている。しかしながら、底板13の内壁には台座11が設置されているので、底板13と透湿防塵シート4の間には隙間6が存在する。また、内容器30の外周壁には溝31が設けられている。従って、防湿容器内の湿気(水)は、溝31と容器本体1の内周壁との間の空間を通り、隙間6へと移動することができる。隙間6へと移動した湿気(水)は、透湿防塵シート4を透過して乾燥剤5に吸着される。
【0035】
一方、内容器30の被収容物と接触する部分は、内容器30の底部である。この底部は透湿防塵シート4に比して強靱であるため、被収容物(テストピース)との接触により内容器30の塵埃が発生する可能性はきわめて低い。また、乾燥剤収容体3に傷等が生じ、当該傷から乾燥剤5及びその塵埃が乾燥剤収容体3の外部に漏れ出る懸念は著しく低減される。すなわち、実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、被収容物が、防湿容器自体の損傷によって生じる塵埃や、乾燥剤5及びその塵埃により汚損する懸念がきわめて低減された、優れた防湿容器である。
【0036】
上述のように、実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、安定した乾燥能力と、乾燥剤5による被収容物の汚損の低減とが両立されている。
【0037】
防湿容器の乾燥能力は、上述のように乾燥剤5の種類を選択することによっても調節できるが、溝31の深さa、及び幅b、並びにその数を選択することによっても調節することができる。また、台座11の高さh及び、透湿防塵シート4と接触する面の面積を選択することによっても調節することができる。
【0038】
溝31の深さa、及び幅bを大きくし、溝31の数を増やせば短時間に多量の湿気(水)を吸収することができるため、瞬発力に優れた防湿容器となるが、短時間に乾燥剤5の乾燥能を消費してしまうため、防湿容器の寿命は短くなる。
【0039】
台座11の高さhを大きくすれば、隙間6の体積が大きくなるため、瞬発力に優れた防湿容器となる。
【0040】
台座11の透湿防塵シート4と接触する面の面積を大きくすると、湿気(水)が透過する面積が小さくなるため、乾燥は緩慢に行われ、瞬発力には劣るが防湿容器の寿命は長くなる。
【0041】
実施の形態1に係る本発明の防湿容器は、さらに、容器本体1の内周壁に突起12を有することが好ましい。突起12は、内容器の底部の外面を含む平面よりも、容器本体1の開口部側に設置される。突起12は、容器本体1の底部に挿入された乾燥剤収容体3が、容器本体1の開口部側へ移動することを防止する。
【0042】
突起12の形状及び大きさは特に制限されないが、容器本体1の底部への乾燥剤収容体3の挿入を妨げない範囲から選択する。
【0043】
突起12の数は単数であっても、複数であってもよい。
【0044】
図11は、実施の形態1にかかる本発明の防湿容器において、図7に示す内容器30を採用した例を示す。乾燥剤の量を増やしたい場合、乾燥剤収容体3の容積を大きくすればよい。ただし、容器本体1の高さに余裕がない場合は、単純に乾燥剤収容体3の高さを大きくしただけでは、被収容物(テストピース等)の収容スペースを確保できないという問題がある。図11のように防湿容器を構成すれば、容器本体1の長さを変えることなく、乾燥剤収容体3の容積を大きくし、より多くの乾燥剤5を収容でき、かつ、同じ長さの被収容物(テストピース等)を収容することができる。また、図11の内容器30の底板は、外周部から徐々に内径が狭まるテーパー形状であるので、被収容物が底板の周縁部分に乗った場合でも中央の低い部分に導かれ、蓋を閉める際の妨げとならない。したがって、このテーパー形状により、安定して被収容物を収容することが可能となる。ただし、被収容物の安定した収容状態を考慮しなくてもよい場合は、底板の少なくとも一部に段差を設けることによって乾燥剤収容体3の容積を調整することができる。
【0045】
図12は、図11に示す防湿容器と同様に、底板の中央が陥入した形状の内容器30を採用し、かつ、乾燥剤収容体3の容積を小さくした例である。内容器30の高さおよび陥入の程度を調整することにより、乾燥剤5の収容量を調節し、乾燥能力および防湿容器の寿命を所望の範囲に設定することができる。
【0046】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る防湿容器の開栓状態の上面図を示し、図14に実施の形態2に係る防湿容器の閉栓状態の断面図を示す。実施の形態1に係る防湿容器と同様の構成要素は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では突起12を容器本体10の内壁全周に設けている点と、内容器30aの底部角の一部を面取りしている点とが、実施の形態1と異なる。突起12を容器本体10の内壁全周に設けることにより、容器本体10の底部に挿入された乾燥剤収容体3aが、容器本体10の開口部側へ移動することをより確実に防止できる。また、突起12を容器本体10の内壁全周に設けると、防湿容器内の空気の隙間6への流れが悪くなるが、内容器30aの溝31を形成する底部角の一部を面取りすることにより、上述の空気の流れが悪くなるのを防止できる。
【0047】
図15は、実施の形態2に係る乾燥剤収容体3の内容器30aの正面図を示し、図16は内容器300の上面図を示す。内容器30aの外周壁は、容器本体10の内径と一致する外径を有する複数のスリット32を備えている。図15ではスリット32を15本備えているが、スリット32の本数は、乾燥剤収容体3が突起12から容器本体10の開口側に移動するのを防止できれば制限されるものではなく、また、スリット32を外壁の外周全体に設けていなくても良い。しかし、乾燥剤収容体3が突起12から容器本体10の開口側に移動するのを防止する目的と型設計の設計条件より、スリット32の本数は2〜30本が好ましい。また、溝31の底部は平面で形成されているが、曲面で形成されていても良い。
【0048】
防湿容器の乾燥能力はスリット32の深さd、及び幅w、並びにその数を選択することによって調節することができる。スリット32の深さd、及び幅wを大きくし、スリット32の本数を増やせば短時間に多量の湿気(水)を吸収することができるため、瞬発力に優れた防湿容器となるが、短時間に乾燥剤5の乾燥能を消費してしまうため、防湿容器の寿命は短くなる。後述する所望の吸水速度に応じて、設定するのがより好ましい。また、溝31の深さa及び幅bは被収容物の大きさに応じて、被収容物が溝31に挟まらないように設定するのが好ましい。
【0049】
被収容物の大きさを縦e、横f、高さgとする。被収容物が溝31内に落ちないためには、下記の寸法を満たせば良い。溝31の幅bが被収容物の横fより大きい場合は、溝31の深さaが被収容物の縦eの10−100%から指定される寸法であれば良い。また、溝31の幅bが被収容物の横f以下の寸法の場合は、溝31の深さaが被収容物の縦eの10−100%から指定される寸法または縦eの100%から溝31の幅b以下の寸法であれば良い。また、上記の寸法を満たすようにスリット32の幅wを適宜設定するのが好ましい。さらに、容器本体10の開口を封止する蓋体2の内環21の下から乾燥剤収容体3aの底部までの高さH1は、蓋体2で容器本体10の開口部を封止する際、蓋体2と容器本体10との間に被収容物が噛み込まれることを防ぐために、被収容物の高さg以上の寸法とすることが好ましい。例えば、図13に示す容器本体10の開口を封止する蓋体2の内環21の下から乾燥剤収容体3aの底部までの高さH1の寸法は、一例として28.3mmとした。この場合高さgが28.3mmより低い被収容物を収容することが好ましい。
【0050】
図17は図16のA−A線に沿った断面図を示す。本実施形態では内側容器30の溝31を形成する底部の上端部の角が、斜めに平面カットされたC面取りされている。C面取りを行うことにより、実施の形態1の突起12と内容器30との隙間に比べて、突起12と内容器30aとの隙間を大きく形成することができる。従って、突起12を容器本体10の内壁全周に設けても、容器本体10の内部の空気が溝31を通じて乾燥材収容体3aに流れにくくなるのを防いでいる。また、本実施形態では溝31の底部の上端部を斜めに平面カットしてC面取りしているが、曲面で面取りされたR面取りでも良い。
【0051】
乾燥剤5及び透湿防塵シート4は、実施の形態1で使用したものと同様のものを使用でき、乾燥剤5を内容器30aに収容する際にも同様に充填ノズルを使用すると、効率的に収容作業を行うことができる。また、内容器30aの開口部を透湿防塵シート4で封止する方法は特に制限されない。例えば超音波を利用した溶着を選択できる。
【0052】
図18は実施の形態2に係る容器本体10の断面図を示す。図18で示した乾燥剤収容体3aを挿入する空間の寸法は、一例として高さH2を14.6mm、径rを22.33mmとした。
【0053】
実施の形態2に係る防湿容器は、上述のようにして得られた乾燥剤収容体3aを透湿防塵シート4と容器本体10の台座11接触するように挿入することで製造することができ、被収容物(テストピース等)を容器本体10に収容後、蓋体2により容器本体10の開口を封止することにより、容器本体10内に乾燥状態をもたらされる。
【0054】
実施の形態2の防湿容器は、実施の形態1の防湿容器と比べ、容器本体10の底部に挿入された乾燥剤収容体3aが、容器本体10の開口部側へと移動することをより確実に防止することができる。
【0055】
(サンプル1)
容器本体10にスリット32の本数が5本の内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、蓋体2の裏側に温湿度計を両面テープで貼りつけた。上述で得られた防湿容器を蓋体2が開いた状態で、温度30℃、湿度70%に設定された恒温恒湿槽に入れ1時間放置し、サンプル1を得た。
【0056】
(サンプル2)
容器本体10にスリット32の本数が15本の内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、比較例1と同様の工程でサンプル2を得た。
【0057】
サンプル1および2について上述の恒温恒湿槽内で蓋体2を閉め、吸湿状況を計測した。結果を図19に示す。図19よりスリット32の本数が5本であるサンプル1は湿度が20%まで低下するのに、約1時間30分かかったのに対し、スリット32の本数15本のサンプル2では湿度が20%まで低下するのにかかった時間は約45分であった。
【0058】
また、容器本体10にスリット32の本数が5本、8本、10本、15本である内容器30aと乾燥剤5を有する乾燥剤収容体3aを入れ、それぞれの防湿容器の重量を精密電子天秤にて測定した。その後、それぞれ蓋体2を開いた状態で、温度30℃、湿度70%に設定された恒温恒湿槽に入れ24時間放置し、再度それぞれの防湿容器の重量を電子天秤にて測定し、1時間当たりの吸水能力を算出し、スリット32の本数が5本のものと比較した。上記の算出および比較結果を図20に示す。
【0059】
以上、図19および図20の比較結果より、スリット32の本数を設定することで、吸湿速度および吸水能力を適宜設定することができる。
【0060】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る防湿容器はいずれも、被収容物の攻撃から透湿防塵シート4を有効に保護し、乾燥剤5及びその塵埃による被収容物の汚損を低減している。しかも、防湿容器の除湿速度や除湿可能期間を自在に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の防湿容器は、湿気及び乾燥剤の塵埃により劣化しやすい物品を収容するための容器として広範に利用できる。例えば、血糖値検査や尿検査に使用するためのテストピースや、薬剤(錠剤等)を収容するための容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、10 容器本体
11 台座
12 突起
13 底板
2 蓋体
21 内環
22 外環
23 ヒンジ
3、3a 乾燥剤収容体
30、30a 内容器
31 溝
32 スリット
4 透湿防塵シート
5 乾燥剤
6 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の容器本体と、前記容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、前記容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、
前記乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、前記内容器に収容された乾燥剤と、前記内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、
前記内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、
前記容器本体は、底板内壁に台座を備え、
前記乾燥剤収容体は、前記台座と、前記透湿防塵シートとが接触するように前記容器本体に挿入され、容器本体底板と前記透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器。
【請求項2】
さらに、前記内容器の底部の外面を含む平面よりも前記容器本体の開口部側において、前記容器本体の内周壁から突出し、前記乾燥剤収容体の前記容器本体の開口部側への移動を阻止する突起を有する、請求項1に記載の防湿容器。
【請求項3】
前記突起は、前記容器本体の内周壁全周に形成されており、
前記内容器は、その外周壁に外径が前記容器本体の内径と一致するスリットを有し、
前記内容器の前記溝を形成する底部の角が面取りされている、請求項2に記載の防湿容器。
【請求項4】
請求項1に記載の防湿容器の製造方法であって、
前記内容器に充填ノズルを使用して乾燥剤を充填する工程と、
前記内容器の前記開口部に、前記透湿防塵シートをシールして前記開口部を封止し、前記乾燥剤収容体を製造する工程と、
前記乾燥剤収容体を、透湿防塵シートを前記容器本体の底部に向けて前記容器本体に挿入する工程と、
前記容器本体を前記蓋体で密封する工程とを備える、防湿容器の製造方法。
【請求項1】
筒型の容器本体と、前記容器本体を開閉自在に密封する蓋体と、前記容器本体の底部に挿入された筒型の乾燥剤収容体とを備える防湿容器であって、
前記乾燥剤収容体は一端に開口部を有する内容器と、前記内容器に収容された乾燥剤と、前記内容器の開口部を封止する透湿防塵シートとを備え、
前記内容器は、その外周壁に開口端と底部とを結ぶ溝を有し、
前記容器本体は、底板内壁に台座を備え、
前記乾燥剤収容体は、前記台座と、前記透湿防塵シートとが接触するように前記容器本体に挿入され、容器本体底板と前記透湿防塵シートとの間に隙間が存在する、防湿容器。
【請求項2】
さらに、前記内容器の底部の外面を含む平面よりも前記容器本体の開口部側において、前記容器本体の内周壁から突出し、前記乾燥剤収容体の前記容器本体の開口部側への移動を阻止する突起を有する、請求項1に記載の防湿容器。
【請求項3】
前記突起は、前記容器本体の内周壁全周に形成されており、
前記内容器は、その外周壁に外径が前記容器本体の内径と一致するスリットを有し、
前記内容器の前記溝を形成する底部の角が面取りされている、請求項2に記載の防湿容器。
【請求項4】
請求項1に記載の防湿容器の製造方法であって、
前記内容器に充填ノズルを使用して乾燥剤を充填する工程と、
前記内容器の前記開口部に、前記透湿防塵シートをシールして前記開口部を封止し、前記乾燥剤収容体を製造する工程と、
前記乾燥剤収容体を、透湿防塵シートを前記容器本体の底部に向けて前記容器本体に挿入する工程と、
前記容器本体を前記蓋体で密封する工程とを備える、防湿容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−197117(P2012−197117A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49383(P2012−49383)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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