説明

防湿紙用組成物および防湿紙

【課題】本発明は優れた防湿性を備え、古紙として容易に回収、再生することが可能な防湿紙、および、このような防湿紙を製造することが可能な防湿紙用塗工用組成物を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿紙用塗工用組成物であって、前記有機化無機層状化合物固形分の含有量が、2質量%〜20質量%であることを特徴とする防湿紙用塗工用組成物を提供することにより、前記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙基材の表面に塗布されることにより、防湿性や防水性を備える防湿紙を作製することが可能な防湿紙用組成物、および、防湿紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、各種の塗工紙などの巻取りおよび上質紙や塗工紙の平判紙の包装には、製品の吸湿を防ぐためにポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の高分子化合物が紙基材に塗工されたものや、紙基材にこれらの高分子化合物がラミネート、あるいは、内部添加された包装紙が用いられている。
また、セメント袋、樹脂袋、塩袋、砂糖袋、飼料袋、肥料袋、ゴミ袋などの重袋用原紙には、吸湿性および吸水性以外にも強度が要求されることから、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがクラフト紙にラミネートされたポリオレフィンラミネート紙(以下、「ポリラミ紙」と称す。)と、クラフト紙とが重ね合わされたものが使用されている。
さらには段ボール用のライナ原紙に防湿層を形成させたもので段ボールを耐水化、防湿化することも行われているが、このようなライナにもポリラミ紙が用いられている場合が多い。
【0003】
しかしながら、このような従来のポリラミ紙は、上述したような高分子化合物が用いられていることから、使用後に古紙として再使用するため回収しても水に十分に離解せず、古紙として再使用できないことが問題となっている。また、使用済みポリラミ紙を廃棄する場合の処分方法としては焼却や埋め立てによるしかないため環境汚染となる懸念があり、多くの問題を抱えているのが現状である。
したがって、上述したような防湿性を有する包装紙には、古紙として再利用できることと、十分な防湿性および防水性を備えることを両立できる新しい防湿紙が求められている。
【0004】
このような状況において特許文献1には、平板状顔料と合成樹脂ラテックスとからなる防湿層を設けた防湿積層体が提案されている。このような防湿積層体は、それ自体は水蒸気を通さないと思われる顔料、例えば白雲母のような平板状顔料を合成樹脂ラテックスなどの重合体と混合して防湿層を形成したものである。このため、その防湿メカニズムは、平面的には水蒸気の透過面積が小さくなり、また厚み方向では平板状顔料が防湿層表面に対して平行に配列して積層するため、防湿層中の水蒸気はこの平板状顔料を迂回しながら透過することから(曲路効果)、水蒸気の透過距離が長くなり、結果として大幅に防湿性能が向上するものである。しかしながら、このような防湿積層体においては塗工量30g/mで透湿度15g/m・24hr〜60g/m・24hrの範囲の防湿紙を製造するには非常に有効であるが、塗工量を少なくすると防湿性は低下し、逆に、防湿性を向上させるため塗工量を多くすると防湿紙における防湿層の割合が大きくなり古紙としての価値も低下するといった問題点があった。
【0005】
また、特許文献2および3には、高膨潤性粘土鉱物および合成樹脂水性分散体からなる防湿性被覆組成物が塗布されることによって形成された防湿層を有する防湿性紙が開示されている。しかしながら、このような防湿性紙は用途の拡大や、再離解性の向上等のために、低塗工量時や高湿度条件下での防湿性を更に向上させることが望まれており、実用性に乏しいという問題点がある。
【0006】
また、特許文献4には、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物にさらにタルクを一定量配合することによって防湿性を向上させ、かつ、摩擦係数を低下させることができる旨が開示されている。しかしながら、このような方法では、多量のタルクを追加配合しなければならず、配合量に比べ防湿効果は十分とはいえなかった。さらに特許文献5には、紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物と変性ポリアミド系樹脂のような含窒素化合物を含む防湿層を設けた防湿紙が開示されており、特許文献6には膨潤性無機層状化合物と芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体および不飽和脂肪酸単量体を共重合して得られた不飽和脂肪酸単量体が全単量体成分の5〜40質量%である共重合体と、からなる防湿性塗被組成物が開示されている。
しかしながら、これらの特許文献に開示されている膨潤性無機層状化合物はいずれもその層間がNaやKなどのアルカリ金属イオンで固定されており、層間剥離が不十分であり塗被層において十分に微細化せず、均一に分散していないことからその防湿性も不十分であるという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−21096号公報
【特許文献2】特開2000−303026号公報
【特許文献3】特開2000−290895号公報
【特許文献4】特開2004−218130号公報
【特許文献5】特開2004−27444号公報
【特許文献6】特開2003−306894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、優れた防湿性を備え、古紙として容易に回収、再生することが可能な防湿紙、および、このような防湿紙を製造することが可能な防湿紙用塗工用組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の顔料とバインダーとを用いることにより、優れた防湿性を備え、古紙として容易に回収、再生することが可能な防湿層を形成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、以下の1〜3の発明が提供される。
1. 無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿紙用塗工用組成物であって、前記防湿紙用塗工用組成物の全固形分中における前記有機化無機層状化合物の固形分の含有量が2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする防湿紙用塗工用組成物。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
2. 前記無機層状化合物が、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイトから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、前記1に記載の防湿紙用塗工用組成物。
3. 紙基材、および、前記紙基材上に形成され、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿層を有する防湿紙であって、前記防湿層における前記有機化無機層状化合物の含有量が、固形分換算にて2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする防湿紙。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の防湿紙は、優れた防湿性を備え、古紙として容易に回収、再生することが可能であるという効果を奏する。また、本発明の防湿紙用塗工用組成物は防湿性と再生可能性とを備える防湿紙を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の防湿紙用塗工用組成物は、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿紙用塗工用組成物であって、前記防湿紙用塗工用組成物の全固形分中における前記有機化無機層状化合物の固形分の含有量が2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
【0013】
本発明に用いられる顔料は、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含むものである。
【0014】
ここで、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。
【0015】
前記有機化無機層状化合物に用いられる無機層状化合物としては、特に限定されないが、たとえば、スメクタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物が挙げられ、より具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイト等が例示される。
【0016】
これら無機層状化合物は、天然、合成品、加工処理品のいずれであってもよい。たとえば、天然スメクタイトとしては、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトおよびベントナイト等が挙げられる。合成スメクタイトとしては、組成式:(Naおよび/またはLi)0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OHおよび/またはF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。合成マイカとしては、膨潤性フッ素マイカが挙げられる。
【0017】
このような無機層状化合物としては、市販されている粘土鉱物、たとえば、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、市販品のクニピア、スメクトン(クニミネ工業社製)、ビーガム(バンダービルト社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(トピー工業)、ベンゲル(豊順洋行社製)等を用いても良い。
【0018】
本発明で用いる無機層状化合物は、前記アンモニウムイオン(RNH3、RNH2、R(CH3)3N、R(CH3)2N)との接触面が大きく、これにより、層間を十分に膨潤できるものであることが好ましい。具体的には、無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が好ましくは10〜200ミリ等量/100g、より好ましくは50〜180ミリ等量/100gの範囲であるものが好ましい。陽イオン交換容量が低すぎると、無機層状化合物の層間への前記アンモニウムイオン(RNH3、RNH2、R(CH3)3N、R(CH3)2N)のインターカレーションが不十分となる傾向にある。一方、陽イオン交換容量が高すぎると、無機層状化合物の結合力が強固となり、層間への前記アンモニウムイオンのインターカレーションが困難となる。なお、無機層状化合物の陽イオン交換容量は、例えば、メチレンブルー吸着量を測定することにより求めることができる。
【0019】
また、無機層状化合物としては、そのアスペクト比(Z)が、好ましくは50〜5000、より好ましくは100〜5000である。アスペクト比(Z)は、防湿層中で層状に分散された無機層状化合物の長さをL、単位厚みをaとした場合に、式:Z=L/aに従い求めることができる。なお、長さLおよび単位厚みaは、電子顕微鏡写真より測定することができる。
【0020】
本発明において、前記無機層状化合物にインターカレートさせるアンモニウムイオンは、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種である。ここにおいて、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数8〜18の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12、好ましくは炭素数8〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の飽和炭化水素である。
【0021】
本発明においては、無機層状化合物の層間に、前記アンモニウムイオンをインターカレートさせて、無機層状化合物を有機化させることにより、無機層状化合物の層間が膨潤し、層間距離を大きくすることができ、無機層状化合物の分散性を向上させることができる。そして、その結果として、有機化無機層状化合物の形態で、本発明の防湿紙用塗工用組成物中に微分散させることができ、これにより、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて製造される防湿紙を表面光沢等に優れたものにできる。
なお、前記アンモニウムイオンは、比較的に長鎖な炭化水素基で置換されたアンモニウムイオンであり、本発明に係る有機化無機層状化合物は、このようなアンモニウムイオンでイオン交換して得られるものである。
【0022】
各アンモニウムイオンにおける、飽和炭化水素基(R、R、R、R、R、R)の炭素数が少なすぎると、インターカレートするアンモニウムイオン容積が小さく層間距離が不十分となり無機層状化合物の分散性が劣り、一方、炭素数が多すぎると、アンモニウムイオンの疎水性が高くなりすぎ、溶媒への溶解性が低下し、無機層状化合物へのインターカレートがしにくくなる。
【0023】
NH3またはRNH2で表されるアンモニウムイオンとしては、たとえば、RNH2またはRNHで表されるアミンを、塩酸、硫酸、硝酸などの酸を用いてアンモニウムイオンとしたものが用いられる。RNH2またはRNHで表されるアミンとしては、たとえば、オクチルアミン、2─エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミンなどが挙げられる。なお、RNH2において、R、Rは、同じ炭素数の飽和炭化水素としても良いし、互いに異なる炭素数の飽和炭化水素としても良い。
【0024】
(CH3)3NまたはR(CH3)2Nで表されるアンモニウムイオンとしては、たとえば、これらの塩化物塩、臭化物塩、硫酸塩などの各種塩の形態で用いることができる。このような化合物としては、オクチルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。なお、R(CH3)2Nおいて、R、Rは、同じ炭素数の飽和炭化水素としても良いし、互いに異なる炭素数の飽和炭化水素としても良い。
【0025】
前記アンモニウムイオン(RNH3、RNH2、R(CH3)3N、R(CH3)2N)の使用量は、無機層状化合物を十分に膨潤させることができる量であれば良く、特に限定されないが、アンモニウムイオンの使用量の下限は、無機層状化合物の陽イオン交換容量の0.5当量とすることが好ましく、より好ましくは0.7当量とする。また、アンモニウムイオンの使用量の上限は、陽イオンの交換効率の点から、2当量が好ましく、より好ましくは1.5当量である。アンモニウムイオンの使用量を、0.5当量以下とすると、陽イオンの交換が不十分となり、有機化無機層状化合物の生成が不十分になる傾向にある。また、2当量以上とすると、陽イオン交換に関与しないアンモニウムイオンの量が多くなり、経済的に不利となる傾向にある。
【0026】
有機化無機層状化合物は、たとえば、(1)RNH2またはRNHで表されるアミンと酸との化合物や、R(CH3)3NまたはR(CH3)2Nの塩を、溶解した溶媒中に、無機層状化合物を添加することにより反応させる方法、(2)前記化合物や塩を軟化または溶融させ、次いで、これらの中に、無機層状化合物を添加することにより反応させる方法、により得ることができる。
【0027】
前記(1)の方法によれば、室温下で、無機層状化合物の層間に、アンモニウムイオンをインターカレートさせることができる。この方法においては、用いる溶媒としては、たとえば、水の他、各種有機溶媒を用いることができる。また、前記(2)の方法においては、前記化合物や塩の軟化温度または溶融温度以上の高温に加熱する必要がある。この加熱は、前記化合物や塩、さらには無機層状化合物が分解しない温度で、かつこれらが安定に存在する温度において行うことが望ましく、たとえば、加熱温度は100℃以上、250℃以下である。
【0028】
本発明に用いられる顔料は、前記有機化無機層状化合物以外の他の材料を含有するものであってもよい。本発明に用いられる前記他の材料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、モンモリロナイト、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、酸化亜鉛、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料などを挙げることができる。
【0029】
なお、前記他の材料を用いる場合、その使用量は特に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができるが、防湿紙用塗工用組成物の全固形分100質量%に対し、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下を使用するのが望ましい。
【0030】
本発明の防湿紙用塗工用組成物中に含まれる顔料の量としては、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて作製される防湿紙に所定の防湿性等を付与することができる範囲内であれば特に限定されるものではない。このような含有量は前記有機化無機層状化合物の種類等に応じて適宜決定することができる。なかでも本発明の防湿紙用塗工用組成物における前記顔料の含有量は、防湿紙用塗工用組成物の全固形分100質量%に対し本発明の前記有機無機層状化合物の含有量が2〜20質量%の範囲内となるように調整されることが必要であり、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは3〜18質量%の範囲内となるように調整されることが望ましい。有機化無機層状化合物の含有量が前記範囲よりも少ないと、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて作製される防湿紙に所望の防湿性を付与することが困難となる。また、前記範囲よりも多く含有させても防湿性の向上効果に対する寄与が少なく、却ってコスト高になってしまう。
【0031】
本発明に用いられるバインダーは、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるものである。
【0032】
本発明に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。本発明においては、これらの芳香族ビニル系単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも本発明においては、前記芳香族ビニル系単量体としてスチレンを用いることが好ましい。
【0033】
また、本発明に用いられるバインダーを構成する共重合体のうち、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有割合は特に限定されるものではないが、5〜65質量%の範囲内であることが好ましく、10〜65質量%の範囲内であることがより好ましく、15〜60質量%の範囲内であることがさらに好ましい。芳香族ビニル系単量体単位の含有割合が前記範囲の下限より少ないと、耐ブロッキング性が悪化する可能性があり、一方、前記範囲の上限より多いと、バインダーとしての紙基材への接着力が悪化する可能性がある。
【0034】
次に、本発明に用いられる脂肪族共役ジエン系単量体について説明する。本発明に用いられる脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ハロゲン置換ブタジエンなどが挙げられる。本発明においてはこれらの脂肪族共役ジエン系単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも本発明においては、前記脂肪族共役ジエン系単量体として、1,3−ブタジエンを用いることが好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられるバインダーを構成する共重合体のうち、前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有割合は特に限定されるものではないが、20〜70質量%の範囲内であることが好ましく、20〜60質量%の範囲内であることがより好ましく、25〜55質量%の範囲内であることがさらに好ましい。脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有割合が前記範囲の下限より少ないと、バインダーとしての紙基材への接着力が悪化する可能性があり、一方、前記範囲の上限より多いと、耐ブロッキング性が悪化する可能性がある。
【0036】
本発明に用いられるエチレン性不飽和脂肪酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸;無水イタコン酸、無水マレイン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;モノブチルイタコン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル;などが挙げられる。本発明においてはこれらのいずれの不飽和脂肪酸単量体であっても好適に用いることができる。また本発明に用いられる不飽和脂肪酸単量体は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。なかでも本発明においては前記エチレン性不飽和脂肪酸単量体として、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明に用いられるバインダーを構成する共重合体のうち、前記エチレン性不飽和脂肪酸単量体単位の含有割合は特に限定されるものではないが、10〜30質量%の範囲内であることが好ましく、12〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、15〜25質量%の範囲内であることがさらに好ましい。前記エチレン性不飽和脂肪酸単量体単位の含有割合が少ないと、得られる共重合体ラテックスの機械的安定性が劣り、紙塗工用組成物を配合する際の配合安定性が劣る傾向にある。逆に含有割合が多すぎると、ラテックスの粘度が高くなり過ぎて、取扱いが困難となる他、紙塗工用組成物のハイシェア粘度(高せん断速度下における粘度)が高くなり過ぎて高速塗工時の流動性に劣る傾向にある。
【0038】
本発明に用いられるバインダーは、少なくとも前記脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるものであるが、本発明に用いられるバインダーには、本発明の効果を損ねない範囲で、さらに前記の単量体と共重合可能な単量体が共重合されていてもよい。このような共重合可能な他の単量体としては、例えば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミドなどが挙げられる。
【0039】
ここで、前記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどを挙げることができ、なかでもアクリロニトリルを用いることが好ましい。
また、前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチルなどを挙げることができる。
さらに、前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミド単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0040】
また、前記の単量体以外にも、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどを用いることができる。
【0041】
これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
なお、本発明に用いられるバインダーは、通常、前記単量体の混合物を、従来公知の乳化重合法を用いて重合することによって得ることができる。
【0043】
本発明に用いられるバインダーを構成する単量体の組み合わせとしては、前記脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体から少なくとも一種類ずつ選択された組み合わせであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に好適に用いられる単量体の組み合わせとしては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0044】
本発明の防湿紙用塗工用組成物の全固形分中に含まれるバインダーの固形分の含有量は、98質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。本発明においてバインダーの含有量がこの範囲にあると本発明の防湿紙用塗工用組成物が塗工適性に優れたものとなる。また、バインダーの含有量が前記下限よりも少ないと、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて防湿層を形成した際に、前記顔料を防湿層に十分に固定することが困難になる場合があり、また前記上限よりも多いと所望の防湿性を付与することができない可能性がある。
【0045】
本発明の防湿紙用塗工用組成物中に含まれるバインダーの量は、上述した範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも97質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、97質量%〜78質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の防湿紙用塗工用組成物は、少なくとも前記顔料および前記バインダーを含有するものであるが、必要に応じて他の任意の添加剤を含有するものであってもよい。本発明に用いられる任意の添加剤としては、架橋剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、および、着色剤等を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの材料であっても好適に用いられる。
【0047】
架橋剤が用いられることにより、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて作製される防湿紙の防湿性等の特性をさらに向上させることができるという利点がある。本発明に用いられる架橋剤としては、例えば、前記バインダーが備える官能基の種類等に応じて、例えば、カルボキシル基、アミド基、水酸基等の親水性官能基と反応して、これらの樹脂を架橋(三次元網目構造化)、高分子化あるいは疎水化するという機能を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる架橋剤としては、メチロール基を有し、前記親水性官能基と脱水反応を起こすもの、アルデヒド基を有し、前記親水性官能基と付加反応を起こすもの(グリオキザールなど)、エポキシ基を有し、前記親水性官能基と開環付加反応を起こすもの(ポリグリシジルエーテル化合物など)、多価金属を有し前記親水性官能基と配位結合および共有結合を形成するもの(炭酸ジルコニウムなど)、水溶液中でカチオン性を示しアニオン性官能基とイオン結合を形成するもの(ポリアミドアミンポリ尿素樹脂など)、および、カルボキシル基と付加反応を起こすオキサゾリン基を有するもの等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの架橋剤であっても好適に用いることができる。また、本発明に用いられる架橋剤は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0048】
本発明の防湿紙用塗工用組成物は、前記顔料およびバインダーが溶媒に溶解あるいは分散したものであることが好ましい。本発明に好適に用いられる溶媒としては、前記顔料およびバインダーを所望の程度に分散・溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、水が特に好ましい。
【0049】
また、本発明の防湿紙用塗工用組成物の固形分濃度としては、本発明の防湿紙用塗工用組成物を用いて防湿紙を作製する際に、防湿紙用塗工用組成物を塗布する方式等に応じて組成物の粘度を所望の範囲内にできる程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明の防湿紙用塗工用組成物の固形分濃度は10〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に20〜55質量%の範囲内であることが好ましく、さらに25〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0050】
本発明の防湿紙は紙基材、および、前記紙基材上に形成され、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿層を有する防湿紙であって、前記防湿層における前記有機化無機層状化合物の含有量が、固形分換算にて2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
【0051】
まず、本発明に用いられる防湿層について説明する。本発明に用いられる防湿層は、特定の有機化無機層状化合物を含む顔料と、特定の単量体が共重合されてなるバインダーとを含有するものであり、本発明の防湿紙に防湿性を付与する機能を備えるものである。
【0052】
ここで、本発明に用いられる顔料およびバインダーについては、いずれも、上述した防湿紙用塗工用組成物に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0053】
また、本発明に用いられる防湿層には、前記顔料およびバインダー以外の他の任意の添加剤が含まれていてもよいが、本発明に用いられる他の添加剤についても、上述した防湿紙用塗工用組成物に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0054】
本発明に用いられる防湿層は前記顔料が含まれるものであるが、本発明に用いられる防湿層の防湿性は、防湿層の単位面積あたりに存在する有機化無機層状化合物の量に依存して決定されるものである。すなわち、単位面積あたりに存在する有機化無機層状化合物の量が多いほど防湿層の防湿性は高くなり、一方、単位面積あたりに存在する有機化無機層状化合物の量が少ないほど防湿層の防湿性は少なくなる。したがって、本発明において防湿層の単位面積あたりに存在する有機化無機層状化合物の量は、本発明の防湿紙に求める防湿性の程度に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、防湿層中に含まれる有機化無機層状化合物の量が、0.2g/m以上であること好ましく、0.3g/m〜6g/mの範囲内であることがより好ましく、0.3g/m〜4g/mの範囲内であることがさらに好ましい。
【0055】
さらに、本発明に用いられる防湿層は上述したバインダーが含有されるものであり、その含有量が固形分換算にて98質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。本発明においてバインダーの含有量をこのような範囲に規定するのは、バインダーの含有量がこのような範囲内であることにより、本発明に用いられる防湿層中に前記顔料を十分に固定することができるため、本発明の防湿紙を製造適性に優れたものにできるからである。本発明において前記防湿層中に含まれるバインダーの量は、上述した範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも97質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、97質量%〜78質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0056】
なお、本発明に用いられる防湿層は1層のみであってもよく、あるいは、2層であってもよい。本発明において防湿層が2層用いられる場合は、通常、後述する紙基材の両面に防湿層が形成された態様が用いられる。
【0057】
次に、本発明に用いられる紙基材について説明する。本発明に用いられる紙基材としては、本発明の防湿紙の用途等に応じて所定の機械強度を有するものであれば特に限定されるものではない。このような紙基材としては、セルロースパルプを主成分とする紙類の他、合成紙なども用いることができる。
【0058】
前記紙類に用いられる原料パルプとしては、所望の機械強度等を備える紙基材を得ることが得きるものであれば特に限定されるものではない。このような原料パルプとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、さらしケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、メカニカルパルプ(MP)等の機械パルプ;ケナフ等の非木材原料から得られるパルプ等の抄紙用パルプ;古紙から再生した古紙パルプ;等が挙げられる。本発明においては、これらの原料パルプを単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明に用いられる紙基材には必要に応じて填料が内添されていてもよい。そのような填料としては、種々の無機顔料を用いることができ、たとえば、シリカ、焼成カオリン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化チタン、活性白土、ゼオライト、珪藻土、硫酸バリウム等が挙げられる。これらのなかでも、シリカ、焼成カオリン、モンモリロナイト、炭酸カルシウムまたはゼオライトが好ましく用いられる。填料の配合量は、全パルプに対して、通常1〜30質量%である。
【0060】
また、本発明に用いられる紙基材には、必要に応じて、たとえば、硫酸バンドなどの歩留まり向上剤;ロジン系、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤;酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース、完全鹸化または部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼイン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリル系共重合体等の接着剤;等が含有されていてもよい。
【0061】
本発明に用いられる紙基材の坪量は用途等に応じて適宜決定することができるが、なかでも40〜220g/mの範囲内であることが好ましく、特に50〜180g/mの範囲内であることが好ましい。
【0062】
また、本発明に用いられる紙基材は表面に前記防湿層との密着性を向上させるためのアンカー層が形成されているものであってもよい。このようなアンカー層に用いられる材料としては、澱粉化合物、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、前記アンカー層には必要に応じて、本発明に用いられるバインダーや顔料が含まれていてもよい。
【0063】
なお、本発明に用いられる紙基材は、たとえば、前記した各種パルプに填料を加えて、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置を用い、酸性抄紙または中性抄紙で抄造することにより調製することができる。
【0064】
本発明の防湿紙が備える防湿性は、本発明の防湿紙の用途に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。なかでも本発明の防湿紙が防湿紙は透湿度が50g/m・24hr以下であることが好ましく、40g/m・24hr以下であることがより好ましく、30g/m・24hr以下であることがさらに好ましい。ここで、本発明の防湿紙の透湿度は、前記防湿層中における前記顔料の含有量や、防湿層の厚みを適宜調整することにより所望の範囲内に制御することができる。
また、本発明の防湿紙は前記防湿層に上述した有機化無機層状化合物およびバインダーが含まれるため、より厚みの薄い防湿層によって前記透湿度を達成することができる。
なお、前記透湿度はJIS−Z0208(カップ法)B法によって測定した値を指すものとする。
【0065】
次に、本発明の防湿紙の製造方法について説明する。本発明の防湿紙の製造方法としては、上述した紙基材上に上述した防湿層を形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、なかでも上述した本発明の防湿紙用塗工用組成物を、前記紙基材上に塗工することによって防湿層を形成する方法が好適に用いられる。
【0066】
このような方法において、前記本発明の防湿紙用塗工用組成物を前記紙基材上に塗布する方法としては、所定量の防湿紙用塗工用組成物を紙基材上に均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等のコーターを用いて塗布する方法を挙げることができる。ここで、防湿紙用塗工用組成物の塗工量は、本発明の防湿紙に求める特性に応じて任意に決定することができるが、通常、固形分換算で2g/m〜30g/mの範囲内であることが好ましい。塗工量が前記範囲よりも少ないと作製される防湿紙に所望の防湿性を付与することができない可能性があるからである。また前記範囲以上に塗布しても防湿性の向上は少なく、かえってコスト高になってしまう恐れがあるからである。
なお、本発明の防湿紙用塗工用組成物は前記有機化無機層状化合物およびバインダーを含有するものであるため、このような少ない塗布量であっても防湿性に優れた防湿層を形成することができる。
【0067】
前記本発明の防湿紙用塗工用組成物が塗布されることによって形成された塗膜は、その後、乾燥されることによって防湿層とされるが、このとき前記塗膜を乾燥させる方法としては、例えば蒸気加熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等の各種方式のドライヤを単独あるいは組み合わせて用いる方法を挙げることができる。
【0068】
なお、上述した方法が用いられる場合、形成された防湿紙は、さらにカレンダー処理が施されてもよい。カレンダー処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、弾性ロールと60〜100℃に加熱した剛性ロールからなる通常のスーパーカレンダーで表面仕上げを行う方法を挙げることができる。ここで、一般に、剛性ロール温度が高いほど低いニップ圧あるいは短いニップ滞留時間で原紙あるいは塗工層を平滑化することができる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」は全て質量基準であり、また、実施例中の質量部はすべて固形分換算である。
【0071】
(製造例1)
有機化無機層状化合物
特開2000−273318号公報に記載された方法に従い、まずNaモンモリロナイト(陽イオン容量115meq./100g)160gを80℃の水10リットルに分散させて、1時間攪拌してモンモリロナイト分散液を得る。次に、以下の表1に従い、アミン溶液を調製しこれをモンモリロナイト分散液に加えさらに同温度(80℃)で1時間撹拌する。そして、室温に冷却後に析出物を濾過、洗浄し固形分濃度が10%になるように再度水を加え、80℃に昇温して1時間攪拌することにより、モンモリロナイトを十分に膨潤させ、有機化無機層状化合物分散液を調製する。そして、室温に冷却後に析出物を再度濾過、洗浄し固形分濃度が10%になるように再度水を加え、有機化無機層状化合物分散液を調製する。
【0072】
【表1】

【0073】
(実施例1)
酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単位47%、ブタジエン単位38%、メタクリル酸単位15%、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商品名:HOJ4097、日本ゼオン(株)社製)200部(固形分で100部)を攪拌下に製造例1−1で作製した有機化無機層状化合物を100部(固形分で10部)配合して防湿紙用塗工用組成物とする。
次に、紙基材として未晒両更クラフト紙を用い、当該紙基材上に前記防湿紙用塗工用組成物メイヤーバーで固形分として塗工量10g/mになるように手塗りした後、150℃で2分間乾燥させ防湿紙を作製する。
【0074】
(実施例2)
有機化無機層状化合物の配合部数を固形分で3部にする以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0075】
(実施例3)
有機化無機層状化合物の配合部数を固形分で20部にする以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0076】
(実施例4〜13)
有機化無機層状化合物を前記表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0077】
(比較例1)
製造例1−1の有機化無機層状化合物の配合量を1部にする以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0078】
(比較例2〜5)
有機化無機層状化合物を表2に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0079】
(比較例6)
有機化無機層状化合物の代わりに膨潤性カオリン(クニピアF クニミネ工業社製、膨潤度60ml/2g、カチオン交換能119mg/100g)を固形分で10部配合する以外は実施例1と同様にして防湿紙を作製する。
【0080】
(比較例7)
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部、変性ポリアミド系樹脂(pH7.2、固形分50%、商品名:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加える。次に、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体単位47%、ブタジエン単量体単位38%、メタクリル酸単位15%、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商品名:HOJ4097、日本ゼオン製)200部(固形分で100部)を加え攪拌する。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式3MgO・4SiO・HO、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)17.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商品名:NTO−5、トピー工業製)10部(固形分換算で)を攪拌しながら添加して防湿紙用塗工用組成物とする。
【0081】
次に、紙基材として未晒両更クラフト紙を用い、当該紙基材上に前記防湿紙用塗工用組成物をメイヤーバーで固形分として塗工量10g/mになるように手塗り後、150℃で2分間乾燥させ防湿紙を作製する。
【0082】
(防湿紙の評価)
作製した各防湿紙を対象として、以下の評価を行う。各評価結果を表2に示す。
(1)透湿度
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で防湿塗工面を外側にして測定する。なお、透湿度の基準としては、50g/m・24hr以下であれば防湿積層体として実用性がある。
◎:20g/m・24hr 以下
○:20g/m・24hr を超え、50g/m・24hr 以下
×:50g/m・24hr を超え
(2)防湿面どうしの摩擦係数
防湿紙の防湿層どうしの静摩擦係数及び動摩擦係数を、JIS P8147の方法により測定する。但し、測定スピードは150mm/分とする。測定された静摩擦係数が0.80を越えて大きい場合と0.40より小さい場合は包装時の滑り性が悪く自動包装機での包装が困難となる。また、動摩擦係数が0.70を越えて大きい場合と0.35より小さい場合も、同様に、自動包装機での包装が困難となる。また、静摩擦係数0.30以下、動摩擦係数0.50以下であると重量物運搬時に巻き滑りが発生する可能性がある。
静摩擦係数:
○:0.40以上、0.80以下
×:0.40未満もしくは0.80を超える
動摩擦係数:
○:0.50を超え、0.70以下
△:0.35以上、0.50以下
×:0.35未満もしくは0.70を超える
(3)耐ブロッキング性
防湿紙を20cm×20cmの寸法に切断し、防湿紙の防湿層どうしを重ね合わせて、この積層物を温度50℃、圧力12kg/cmの条件下で30分間圧着する。次に、この積層物の接着状態を観察し、下記のように評価する。
○:両紙が容易に剥離する
△:両紙を剥離することができたが、バリバリと剥離音が発生する
×:両紙を破断することなく剥離することができない
【0083】
【表2】

【0084】
表2の結果から、以下のことが言える。
有機化無機層状化合物の含有量が本願規定の量よりも少ないもの(比較例1)、無機層状化合物にインターカレートするアンモニウムイオンの炭素数が本願規定より少ないもの(比較例2、比較例3、比較例4及び比較例5)、並びに有機化無機層状化合物を用いずに膨潤性カオリンを用いたもの(比較例6)では、透湿度、動摩擦係数及びブロッキング性に劣る。有機化無機層状化合物を用いずに膨潤性無機層状化合物を用いたもの(比較例7)では、透湿度は改善されているが、動摩擦係数及びブロッキング性に劣る。
これに対し、本願規定の有機化無機層状化合物を本願規定の量用いた実施例1〜実施例13では、全ての評価項目について優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿紙用塗工用組成物であって、
前記防湿紙用塗工用組成物の全固形分中における前記有機化無機層状化合物の固形分の含有量が2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする防湿紙用塗工用組成物。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
【請求項2】
前記無機層状化合物が、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイトから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の防湿紙用塗工用組成物。
【請求項3】
紙基材、および、前記紙基材上に形成され、無機層状化合物の層間に、RNH3、RNH2、R(CH3)3N、およびR(CH3)2Nから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合されてなるバインダーと、が含まれる防湿層を有する防湿紙であって、
前記防湿層における前記有機化無機層状化合物の含有量が、固形分換算にて2質量%〜20質量%の範囲内であることを特徴とする防湿紙。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)

【公開番号】特開2008−255512(P2008−255512A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97425(P2007−97425)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】