説明

防滑性に優れた自動車用マット。

【課題】本発明の課題は、吸音性及び防滑性に優れ、しかも軽量化された自動車用マットを安価に提供することである。
【解決手段】本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、従来からよく使われているマット裏面の樹脂にエンボス(凹凸)形状を付与せしめたものに替えて、ポリプロピレン繊維からなる不織布層を採用し、不織布層の下面側の繊維を焼成して、繊維を変形させ、繊維同士を溶融固着した防滑層を形成することにより、軽量で、通気性があり、防滑性に優れ、曲げやすくて取り扱い性の良い自動車用マットのが得られることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車内に敷いて用いられるマットで、吸音性、防滑性に優れ、さらに軽量化の図られた自動車用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内のフロアーには、足踏み感を良好にすると共に床側からの振動が伝わらないようにすること等を目的として、フロアーカーペットが敷設されている。このフロアーカーペットが靴に付着した土、砂、泥等で汚れないように、フロアーカーペットの上にマットが敷かれている。このマットに、足で踏む、蹴る等の外力が加わると、該マットはフロアーカーペット上を滑り移動して位置ずれを生じる。このような位置ずれを防止するものとして、マット裏面の樹脂にエンボス(凹凸)形状を付与せしめたマットが多く使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、最近では、自動車内での快適性を向上させるために、自動車の室内空間における静粛性をさらに高めることも強く求められるようになってきているが、上記の従来のマットでは、エンボスが付与された樹脂層によって通気性が阻害されて良好な吸音効果が得られず、このような要請に応えることはできなかったことから、近年ではカーペット地等の表皮材の裏面側に不織布を貼り合わせた構成のものが用いられるようになってきており、(特許文献2参照)マット裏面の不織布に含まれる繊維を二ードルパンチ法により突き出し焼成して、滑り止め突起を備えたフロアマットを開示している。この構成によれば、騒音等の音は主に不織布層を通過する際に吸音されるので、十分な吸音性能を得ることができ、滑り止め効果も得ることができるとされている。
【0004】
また出願人は、特許文献3において、不織布層の下面を焼成して多数個の小塊状の滑り止め部を備えた、吸音及び滑り止め性能に優れた自動車用マットを開示している。
【特許文献1】特開2000−108753号公報
【特許文献2】特開2009−061992号公報
【特許文献3】特開2008−155865号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1のマットでは、軽量化の要求には不十分なもので、特許文献2のマットでは、二ードルパンチ法により突き出された繊維を焼成して得た滑り止め突起だけでは、滑り止め効果の不十分なもので、また、強度が弱く、フロアーカーペットの表面にこの繊維に絡みついて、フロアーカーペットを汚すことにもなっていた。特許文献3のフロアーマットでは、工程が複雑で高価なものとなり、また硬く曲げにくいものになっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたもので、吸音性及び防滑性に優れ、曲げやすくて取り扱い性が良くしかも軽量化された自動車用マットを安価に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、従来からよく使われているマット裏面の樹脂やゴムにエンボス(凹凸)形状を付与せしめたものに替えて、ポリプロピレン繊維からなる不織布層を採用し、不織布層の下面側の繊維を焼成して、一本の繊維を変形させ溶融固着させたり、あるいは繊維同士が溶融固着して、溶融した繊維の形状が繊維断面よりも太い形状となって存在する防滑層を形成することにより、軽量で、通気性があり、防滑性に優れ、曲げやすくて取り扱い性の良い自動車用マットのが得られることを見出し本発明に到達した。本発明は、以下の手段を提供する。
【0008】
[1]表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化された自動車用マットにおいて、前記不織布層が、1.5デシテックス以上30デシテックス未満のポリプロピレン繊維からなる不織布であって、前記不織布層の下面側の繊維が焼成され、繊維が溶融固着、あるいは繊維同士が溶融固着し、溶融した繊維の形状が繊維断面よりも太い形状となって存在する防滑層を具備した不織布層であることを特徴とする防滑性に優れた自動車用マット。
【0009】
[2]前記ポリプロピレン繊維に中空繊維が含まれていることを特徴とする前項1に記載の防滑性に優れた自動車用マット。
【0010】
[3]前記表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されたカーペットが用いられ、前記表皮材層と前記不織布層とがバッキング樹脂により形成された目付500〜900g/m2(乾燥後)の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されている前項1または2に記載の防滑性に優れた自動車用マット。
【0011】
[4]前記表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されると共に前記基布の下面にプレコート処理がなされたカーペットが用いられ、前記表皮材層と前記不織布層とが熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された目付100〜500g/m2の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されている前項1または2に記載の防滑性に優れた自動車用マット。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明では、表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化された自動車用マットにおいて、前記不織布層が、1.5デシテックス以上30デシテックス未満のポリプロピレン繊維からなる不織布であるので、低周波域から高周波域の騒音まで吸音効果を発揮することができる。また、前記ポリプロピレン繊維からなる不織布層の下面側が焼成されるので、不織布層の下面の一本一本のポリプロピレン繊維が変形させられて溶融固着したり、あるいは繊維同士が溶融固着して、溶融した繊維の形状が繊維断面よりも太い形状となって存在しやすいことから、(図1、2参照)フロアーカーペットの表面の繊維に絡みやすく、摩擦抵抗が大きくなり、優れた防滑層を形成することができる。また、自動車用マットをフロアーカーペットから剥がす時に、不織布層の下面の繊維同士が溶融固着しているので、フロアーカーペットの表面の繊維に絡みついた自動車用マットの繊維が,脱落してフロアーカーペットを汚すことはない。さらに不織布層であるので、樹脂やゴムでエンボス(凹凸)形状を付与せしめた自動車用マットの防滑層の1/5〜1/10の重量となり軽量化を図ることができる。
【0013】
[2]の発明では、前記ポリプロピレン繊維に中空繊維が含まれているので、中空繊維が他のポリプロピレン繊維(中実繊維)よりも溶融されやすいことから中空繊維が変形しやすく、先端だけでなく繊維の側面まで複雑な形状に変形するので、フロアーカーペットの表面の繊維に絡みやすく、摩擦抵抗がより大きくなり、優れた防滑層を形成することができる。
【0014】
[3]の発明では、表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されたカーペットが用いられ、前記表皮材層と前記不織布層とがバッキング樹脂により形成された目付500〜900g/m2(乾燥後)の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されているので、抜糸強度も十分で、自動車用マットとしての硬さも良好で、自動車用マット全体に通気性と接着強度が確保され、吸音性能と防滑性能を具備した、軽量化の図られた自動車用マットとすることができる。
【0015】
[4]の発明では、表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されると共に前記基布の下面にプレコート処理がなされたカーペットが用いられているので、十分な抜糸強度の自動車用マットとすることができ、前記表皮材層と前記不織布層とが熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された目付100〜500g/m2の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されているので、自動車用マット全体に通気性と接着強度と適度の硬さが確保され、吸音性能と防滑性能を具備し、軽量化の図られた自動車用マットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一般的によく使われている塩化ビニル樹脂製やオレフィン系樹脂製のエンボス(凹凸)形状を付与せしめた防滑バッキング層を有する自動車用マットは、バッキング層として、炭酸カルシウムを充填剤に、塩化ビニル樹脂やオレフィン系樹脂と混合した凹凸形状付きバッキング層を形成し、表皮材層に接着固化し、所定寸法に裁断して作られる。これらの塩化ビニル樹脂製やオレフィン系樹脂製の自動車用マットは、加工性も良好で安価であることから多く使われてきた。しかしながら、これらのバッキング層の樹脂や充填材の炭酸カルシウムの重量が重いことから、普通の規格の自動車用マットでも4〜6Kg/mと重量の重いものとなっており、自動車の燃費向上のためにも軽量化が求められてきた。
【0017】
本発明による自動車用マット1は、図1に示すように表皮材層2の下面側に、1.5デシテックス以上30デシテックス未満のポリプロピレン繊維からなる不織布層3の下面側の繊維を焼成し、前記不織布層の下面の繊維を溶融固着して防滑層3−1を形成している不織布層3を積層一体化している。不織布層3は、例えばニードルパンチ不織布、ウォーターニードル不織布のように1.0〜8.0mmの厚みのあるポリプロピレン繊維からなる不織布が好ましい。1.0mm未満では、自動車用マットとして十分な吸音性や強度、クッション性等が得られなくなるし、8.0mmを超えると、軽量化の目的に沿わないものになり、またコスト的にも好ましくない。より好ましくは2.0〜5.0mmの厚みのあるポリプロピレン繊維からなる不織布がよい。不織布層3を構成する繊維は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の熱可塑性樹脂繊維であれば一応の効果は期待できるが、特に、ポリプロピレン繊維が好ましい。ポリプロピレン繊維は、汎用繊維のなかでも最も融点が低く、複雑な表面形状への変化が期待され好ましい。また、繊度としては、1.5デシテックス以上30デシテックス未満の繊度からなるのが好ましい。1.5デシテックスを下回った繊度では、低周波域の騒音が吸収され難く、クッション性も低下することから好ましくない。また、30デシテックスを上回る繊度では、高周波域の騒音が吸収され難くなるので好ましくない。中でも、不織布層を構成するポリプロピレン繊維の繊度は5〜15dtexの範囲とするのがより好ましい。もちろん、複数の繊度のポリプロピレン繊維を混合してもかまわない。
【0018】
さらに、ポリプロピレン繊維においても、繊維断面が円形よりも、異形断面あるいは中空断面のものを含んでいる方が好ましい。異形断面の繊維は摩擦抵抗が大きく、中空断面のポリプロピレン繊維は、焼成されると、中実繊維よりも複雑に変形しやすいことから防滑層を構成する繊維として好ましい。
【0019】
図2は、防滑層3−1において、ポリプロピレン繊維からなる不織布層の下面の繊維が焼成され溶融固着している様子を示す写真である。図3は、焼成される前の不織布層の繊維の様子を示しており、両者の比較により、不織布層の表面の繊維が焼成されることによって、繊維がより複雑な形状になり、繊維表面が荒れた形状になって固化していることがわかる。この複雑な表面形状への変化(荒れた形状、繊維の太さが太くなって点在する、部分的に繊維が溶融固着している、繊維側面に穴があく等)が、フロアーカーペットの繊維との絡みやすさを増すことにつながり、フロアーカーペットとの摩擦抵抗を増大し、滑り止め効果を発揮しているものと思われる。なお、図2および図3の不織布層は、不織布層に締まりを与えるために、低融点繊維を2重量%含んでいる。
【0020】
不織布層3の下面側の繊維を焼成する方法は、例えば、ガス毛焼き機のように500〜1200℃の炎を直接不織布層にあて、表面の毛羽を焼取るようにして、不織布層の表面の繊維を溶融し、直ちに固化してやればよい。不織布層3の表面に留まらず内部まで炎で加熱すると、不織布層内部までが固くなり好ましくない。また、炎を不織布層から離しすぎても、繊維表面の形状変化が発現せず好ましくない。いずれにしろ、不織布層の表面繊維の変化を確認しながら焼成することが必要とされる。
【0021】
つぎに、表皮材層2と滑り止め効果のある不織布層3を積層一体化して自動車用マット原反を作成する。両者の接着には、例えば、図4に示すように、表皮材層2のパイル側を上面とし、発泡したバッキング樹脂エマルジョン6を表皮材層2の下面側に塗布し、不織布層3と重ね、加熱乾燥して通気性のある接着樹脂層4とし、表皮材層2と不織布層3を接着一体化して、吸音性能と防滑性能を具備し、軽量化の図られた自動車用マット原反とする。
【0022】
バッキング樹脂6としては、一般によく使われている、例えば、SBRラテックス、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等のエマルジョンで炭酸カルシウム等を充填材として含んだものでよく、ロールコーター等で表皮材層2に塗布し、不織布層3と重ね、加圧しながら乾燥する。このとき、バッキング樹脂6の塗布量は500〜900g/m2(乾燥後)が好ましい。塗布量が500g/mを下回る状況では、適度な剛性や、接着強度が得られないので好ましくない。また、900g/m2を超えても硬くなりすぎたり、通気性を確保するのが困難で、カーペット全体の軽量化の目的も達成することができないので好ましくない。
【0023】
また、表皮材層2と滑り止め効果のある不織布層3を積層一体化する別の方法としては、例えば図5に示すように熱可塑性樹脂パウダー5を不織布層3に塗布し、加熱溶融して通気性のある接着樹脂層4とし、表皮材層2を重ねて加圧し、接着一体化して、吸音性能と防滑性能を具備し、軽量化の図られた自動車用マット原反とすることもできる。
【0024】
この場合、表皮材層2は、図1に示すように基布(2−1)の上面にパイル(2−2)が植設されると共に前記基布(2−1)の下面にプレコート(2−3)処理がなされたカーペットが用いられるのが好ましい。プレコート処理によって、カーペットとしての抜糸強度が確保される。カーペットとしては、特に限定されるものではく、タフテッドカーペット、織カーペット、編カーペット、電着カーペット等を例示できる。また、表皮材層2の素材としては、基布、パイル共に特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは、麻、綿、羊毛等の天然繊維等の繊維を例示できる。リサイクル性と安全性の観点からは、オレフィン系の繊維からなるのが好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂パウダー5としては、特に限定されるものではないが、粒径75〜1000μmで、塗布量が100〜500g/mのポリエチレン樹脂パウダーが好適である。粒径が75μm未満や、粒径が1000μmを超えても適度な通気性を確保できないので好ましくない。また、塗布量が100g/mを下回る状況では、しっかりとした接着樹脂層を形成するには至らないし、500g/mを超える塗布量では、通気性を確保するのが困難で、カーペット全体の軽量化の目的も達成することはできない。
【0026】
このようにして得られた自動車用マット原反を、指定されたマットの形状に裁断し、オーバーロック等で縁処理をおこない、軽量で、吸音性能と防滑性能を具備した自動車用マットとするものである。
【実施例】
【0027】
つぎに本発明の防滑性に優れた自動車用マットについて具体的な実施例について説明する。なお、この発明の防滑性に優れた自動車用マットは、実施例に限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
表皮層2として、タフテッドカーペット表皮層(1/10ゲージ パイル長6/3mmハイローループ ステッチ51/10cm パイル糸2300dtex原着ポリプロピレン糸 目付670g/m基布 ポリエステルスパンボンド不織布100g/m、SBRラテックスエマルジョンをロールコーターで200g/m(乾燥重量)塗布しプレコート処理した。)を、不織布層3として、ニードルパンチ不織布A(繊度6.7dtex、繊維長51mmのポリプロピレン繊維80%、繊度14dtex、繊維長64mmのポリプロピレン繊維15%、繊度4.4dtex低融点繊維5%、厚さ4mm、目付200g/mで下面側をガス毛焼き機で焼成し、表面繊維を溶融固着した。)を、接着樹脂層4として、ポリエチレン樹脂パウダー(粒径100μm 塗布量が300g/m)を用い図5に示す加工方法で自動車用マット原反を作成した。これより試料を切り出し、各性能試験を実施しその結果を表1に記載した。重量は1.4Kg/mで通常の樹脂やゴムでエンボス(凹凸)形状を施したマットの半分以下の重量であった。吸音性能、防滑性能ともに良好であった。
【0029】
<実施例2>
実施例1において、接着樹脂層4として、ポリエチレン樹脂パウダーを粒径200μm 塗布量が150g/mとした以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。表1に記載したように、吸音性能、防滑性ともに問題はなく、さらに軽量な自動車用マット原反を得ることができた。
【0030】
<実施例3>
実施例1において、不織布層3として、以下のニードルパンチ不織布B(繊度1.7dtex、繊維長51mmのポリプロピレン繊維70%、繊度24dtex、繊維長64mmのポリプロピレン繊維15%、繊度20dtex、繊維長64mmのポリプロピレン中空繊維10%、繊度4.4dtex低融点繊維5%、厚さ6mm、目付250g/mで下面側をガス毛焼き機で焼成し、表面繊維を溶融固着した。)にした以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。各性能試験では表1に記載したように良好なものであった。
【0031】
<実施例4>
図4の方法で、実施例1と同様の表皮層2(但しプレコート処理のないタフテッドカーペット表皮層。)と不織布Aを使用し、接着樹脂層4として、SBRラテックスエマルジョンを550g/m(乾燥重量)表皮層2に塗布し、不織布Aを重ね加圧し、乾燥(90℃20分間)した。これより試料を切り出し、各性能試験を実施しその結果を表1に記載した。重量は1.55Kg/mであった。
【0032】
<実施例5>
実施例4において、SBRラテックスエマルジョンを890g/m(乾燥重量)表皮層2に塗布した以外は実施例4と同様にして、自動車用マット原反を得た。表1に示すように、吸音性能、防滑性ともに問題のない軽量な自動車用マット原反を得ることができた。
【0033】
<比較例1>
実施例1において、不織布層3として、ニードルパンチ不織布の下面側をガス毛焼き機で焼成しなかった以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。得られた自動車用マット原反は、実施例1と同様なものであったが、表2に記載したように、滑り防止性のないものであった。
【0034】
<比較例2>
実施例1において、不織布層3として、以下のニードルパンチ不織布C(繊度1.2dtex、繊維長51mmのポリプロピレン繊維95%、繊度4.4dtex低融点繊維5%、厚さ4mm、目付300g/mで下面側をガス毛焼き機で焼成し、表面繊維を溶融固着した。)にした以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。各性能試験では表2に記載したように滑り防止性が劣り、低周波域での吸音率の満足のいくものではなかった。
【0035】
<比較例3>
実施例1において、不織布層3として、ニードルパンチ不織布の下面側をガス毛焼き機で樹脂塊のできるまで充分焼成した以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。得られた自動車用マット原反は、実施例1と同様なもので、滑り防止性も問題のないものであったが、自動車用マットとしては、硬くて曲げにくく、使用できないものであった。
【0036】
<比較例4>
実施例1において、不織布層3として、以下のニードルパンチ不織布D(繊度35dtex、繊維長51mmのポリプロピレン繊維100%、厚さ4mm、目付300g/mで下面側をガス毛焼き機で焼成し、表面繊維を溶融固着した。)にした以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。各性能試験では表2に記載したように高周波域での吸音率が満足のいくものではなかった。
【0037】
<比較例5>
実施例1において、不織布層3として、以下のニードルパンチ不織布E(繊度6.7dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維80%、繊度14dtex、繊維長64mmのポリプロピレン繊維15%、繊度4.4dtexメルト繊維5%、厚さ4mm、目付200g/mで下面側をガス毛焼き機で焼成し、表面繊維を溶融固着した。)にした以外は実施例1と同じようにして、自動車用マット原反を得た。各性能試験では表2に記載したように滑り防止性に満足のいくものではなかった。
【0038】
<吸音特性の測定と評価>
ASTEM E1050の垂直入射吸音率測定方法に準拠して1000Hz、2000Hzにおける吸音率を測定し、吸音率0.150以上を合格とした。
【0039】
<滑り防止性の測定と評価>
自動車用マット原反から切り出した試料片(100mm×140mm)を、自動車の床に敷設される一般的なニードルパンチカーペット上に、不織布層3(防滑層3−1)が当接するように載置した。次いで、試料片の表皮層上に1kgの荷重を加えた状態で、試料片を一般的なニードルパンチ不織布の表面に対して水平方向に引張り速度100mm/分で引っ張り、試料片を滑らせた時の摩擦抵抗力を測定した。なお、この摩擦抵抗力は5回測定した値の平均値で、実際の自動車室内に自動車用マットを配置した場合を想定し、摩擦抵抗力50N以上を滑り防止性に優れた自動車用マットと判定した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係わる自動車用マットの概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる自動車用マットの不織布層の繊維が焼成され溶融固着している様子を示す写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる自動車用マットの不織布層の繊維が焼成される前の状態を示す写真である。
【図4】本発明の一実施形態に係わる自動車用マットの製造工程を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わる自動車用マットの製造工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・自動車用マット
2・・・表皮材層
2−1・・・基布
2−2・・・パイル
2−3・・・プレコート
3・・・不織布層
3−1・・・防滑層
4・・・接着樹脂層
5・・・熱可塑性樹脂パウダー
6・・・バッキング樹脂
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ポリプロピレン不織布の繊維を焼成することによって、繊維の形状を変化させた防滑層を形成し、不織布に剛性をもたせて、従来の樹脂層による防滑性のあるバッキング樹脂にかえて使用するもので、大幅な軽量化が図れる。自動車用に限らず、カーペット等の繊維性敷物に重ねて使用するマット等に有効な軽量化技術としても広く利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化された自動車用マットにおいて、前記不織布層が、1.5デシテックス以上30デシテックス未満のポリプロピレン繊維からなる不織布であって、前記不織布層の下面側の繊維が焼成され、繊維が溶融固着、あるいは繊維同士が溶融固着し、溶融した繊維の形状が繊維断面よりも太い形状となって存在する防滑層を具備した不織布層であることを特徴とする防滑性に優れた自動車用マット。
【請求項2】
前記ポリプロピレン繊維に中空繊維が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の防滑性に優れた自動車用マット。
【請求項3】
前記表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されたカーペットが用いられ、前記表皮材層と前記不織布層とがバッキング樹脂により形成された目付500〜900g/m2(乾燥後)の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されている請求項1または2に記載の防滑性に優れた自動車用マット。
【請求項4】
前記表皮材層として、基布の上面にパイルが植設されると共に前記基布の下面にプレコート処理がなされたカーペットが用いられ、前記表皮材層と前記不織布層とが熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された目付100〜500g/m2の通気性接着樹脂層を介して接着一体化されている請求項1または2に記載の防滑性に優れた自動車用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101729(P2012−101729A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253462(P2010−253462)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】