説明

防滑性靴底部材及び製造方法

【課題】 コルク粉粒体の吸湿性、クッション性と水膜除去と、ガラス繊維の氷結面スパイク効果とを互いに補完し、防滑機能の改善を図った防滑性靴底部材を提供する。
【解決手段】 天然ゴムと合成ゴムを配合した未加硫ゴム生地を加熱加圧加硫した靴底部材の接地底に、コルク粉粒体及びガラス繊維を配合混入し、かつ該ガラス繊維を断面突出状に配向したブロック防滑体を、靴底接地面での体重のかかる重心移動仮想軌跡曲線上の踏付部及び/又は踵部の領域に複数個嵌装配設した構成とする。また、成形法でも多段式金型の採用ほか、未加硫ゴムとの同時加硫でも特段の前処理を必要とせず、工業的有利に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防滑性靴底部材及び製造方法に関し、さらに詳しくは靴底基部にコルク粉粒体とガラス繊維を配合混入したブロック防滑体を、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置させて複数個嵌装配設してなり、該コルク粉粒体は氷雪面の水膜除去と接地面積を増やすクッション性で防滑性を発揮し、またガラス繊維での略垂直方向に配向させた断面突出形態としたスパイク効果との相互補完並びに相乗効果による防滑性靴底部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
靴はトータルフアッションの一部として認識されてきているが、従来、紳士婦人用に用いられる靴底部材としては、天然ゴム、合成ゴム等を適宜割合に配合した主成分に充填剤等を添加、混練りした後、加熱、加圧して靴底部材としたものが一般的に用いられている。また、従来より濡れた路面やマンホール面、磨かれた石材面等の床面で滑り易い問題があり、近年、特に寒冷地での氷雪面や凍結面で滑り防止を図った防滑性の高い靴底が要望されている。この為、例えば寒冷地での氷雪面又は凍結面での転倒を防止する目的で防滑性に工夫を凝らした靴底が種々提案されている。特に我が国における高齢化の波は顕著であり、その歩行における滑り現象に対して恐怖感が強い等、防滑性靴底部材への要望は不可避の緊急課題とされているが、寒冷地での氷雪面・凍結面などにおける防滑性が劣る問題はまだ解決されておらず、現状の製品を用い歩き方を工夫するといった履用者自身の対応に依るところが多いため、防滑性を図った靴底部材、加えて歩行性、快適性、安定性などを兼ね備えた防滑性の高い靴製品が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の防滑性靴底については、靴底接地面側に靴底用防滑部品や金属スパイクの貼着または底面意匠の工夫等の他、剛性繊維や動植物繊維あるいは硬度粒状物などを混合して防滑性を図った提案が主流となっている。
【特許文献1】たとえば、特開平11−164707号公報においては、防滑部材としてガラス繊維やウォラストナイトなどの先端形状に特徴のある剛性繊維が使用されているが、未加硫ゴムへの混入後のプレス加硫だけでは防滑部材が接地面へ露出せず、剛性繊維の属性を含めた特徴を生かした成形法となりにくい。
【特許文献2】特開2004−49682号公報には、靴底金型の意匠を漏斗状としたガラス繊維や剛性繊維を混入した未加硫ゴム生地シートを用いて加硫せしめた際に、漏斗先端方向に繊維を誘導させて垂直方向への配向を目的としたものがあるが、靴底金型意匠が固定され、自由度が少なく、また既存金型への応用ないし転用も考えにくい。
【特許文献3】実用新案登録第1860213号や実開平05−72201号公報等では、防滑部材にガラス繊維を使用し繊維方向を接地面に垂直に配向させた防滑部品を事前に加硫成形し作製し適宜靴底金型に配設する方法も開示されているが、防滑部品を加硫成形する毎に、繊維断面を露出せしめるバフ加工或いは漉き加工が伴い非効率的である。また、実用新案登録第2602710号公報では、防滑体用の未加硫ゴム生地にガラス繊維を接地面に垂直に配向させ且つ凹凸意匠を施す手段としてコールドプレスに着目した提案であるが、コールドプレス加工を含めた防滑体加硫に要する作業能率には難点がある。また、特開平7−79803号公報では、エポキシ化天然ゴム中に防滑要素として混入する高硬度粒子の粒径が大きすぎて、フロア等の床面を傷付けるという欠点がある。このように、従来より靴底面に多数の独立した突起成形凹部を有する靴底成形金型に、ガラス繊維等の硬質繊維を混入した未加硫ゴム生地を加熱加圧し、靴底と一体化された突起を有する靴底の成形法も一般に知られているが、該硬質繊維の方向性が定まらず不規則に散在される為、突起中に分散された硬質繊維による靴底の防滑性は殆ど期待できない難点があった。以上のように、従来の技術では、金属製或いは合成樹脂製スパイクの装着では、アイスバ−ン等の硬い表面ではかえって滑り易く、スパイクを取り付けたまま屋内に入れば床面を傷つけ、衝撃吸収性が悪く履き心地が悪い問題点があった。また、金属製スパイクの代替素材の使用として、ノルボ−ネンゴムの場合、ガラス転移点以下ではスパイクと同じで、アイスバ−ンではかえって滑り易く、温度によるクッション性等の物性変化を避けられない。さらにガラス繊維等の繊維材では、吸水性を有する繊維材では、吸水性の効果を期待できても飽和後は吸収しないし、氷雪面等では吸水後に再度凍結する虞れがある。また、これら繊維材を接地面に向けて配向させる必要があり、製造上の煩雑性ならびにコストアップにつながる難点がある。次に、靴底意匠の改良では、接地面積の増加による効果が期待されるが、使用時間経過により意匠面が摩耗すること、並びに均一な摩耗はなく、定常的な効果に問題があった。本発明は、これらの問題を改善するものであり、コルク材の特徴である吸湿性ないし放出性は濡れた面での水膜除去に効果を発揮するが、氷結面には弱い。その短所を補完する為、ガラス繊維との組み合わせの着想に基づき鋭意検討の結果、ガラス繊維を配合混入させて防滑性の向上を図ったものである。即ち、靴底部材として接地面における取り付け位置ないし領域の選択的な適用、並びに製造方法においても、本発明における該ブロック状防滑材は、未加硫ベースゴムにガラス繊維を配合混入し繊維の配向性を揃え加硫した後、繊維方向に直交する裁断でガラス繊維とゴムの多孔質の裁断面を露出せしめた防滑性の効果、並びに靴底基部を構成する未加硫ゴムとの同時加硫における成形を特別の前処理を施すことなく、ゴム投錨効果やゴム極性の相溶性を利用し容易に成形することができるように働き、防滑性機能を発揮しえる金型成形操作並びに品質安定維持を図り、工業的有利な製造方法を提供するものである。本発明は、上記の問題点にかんがみ、天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫と合成ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、前記接地底成形用の未加硫ゴム生地にコルク粉粒体及びガラス繊維を混入させてなる防滑性靴底部材であり、前記コルク粉粒体の備えた属性に基づく長所を維持すると共に、加えてガラス繊維の混入において、しかも該ガラス繊維を接地面に向かう方向に略垂直状に配向させ露出した断面突出形態を形成した防滑性靴底の構成により、該コルク粉粒体の短所の補完と共に、ガラス繊維を接地面に配向し露出突出とせしめ、これらの相乗効果によって、従来の防滑性靴底部材の欠点を克服することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の防滑性靴底部材は、天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、前記接地底成形用の未加硫ゴム生地にコルク粉粒体及びガラス繊維を混入させてなる防滑性靴底部材であり、その解決手段としては、靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、該曲線上で交差ないし直交状態に設定したコルク粉粒体及びガラス繊維を混入したブロック防滑体を複数個嵌装配設してなる防滑性靴底部材の構成とし、コルク粉粒体の優れた属性の維持と併せて、ガラス繊維を接地面に向かう略垂直方向に配向させた断面突出形態とし、これらコルク粉粒体とガラス繊維とを配合混入してなる部材により形成した防滑性靴底部材に関する。
本発明に係る天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、該未加硫ゴム生地にコルク粉粒体及びガラス繊維を混入させてなる防滑性靴底部材では、前記天然ゴムと合成ゴムの配合割合が10〜90:90〜10重量部であるゴム生地、さらに前記ゴム生地が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等の1種又は2種以上より選ばれ防滑性靴底部材である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ガラス繊維の氷結面でのスパイク把持効果と、コルク粉粒体による水膜除去のそれぞれの長短所を相互に補完すると共に、接地面に向かう方向にガラス繊維を多数配向させたブロック防滑体が最も体重のかかる重心移動仮想軌跡曲線上の領域に複数個嵌装配設されており、複合的な優れた防滑機能を発揮する。また、成形上も靴底部材の加硫成形を工業的有利に製造できる等の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、本発明者等は、特に寒冷地での氷雪面または凍結面等での防滑性の改善について検討のところ、防滑性能を改善するためには、氷雪または凍結面での水膜を取り除く、接地面積を増やす、アイスバ−ンでの引っ掛かりを増やすこと等が要求されるが、特に上記氷雪または凍結面での水膜を取り除く為の改善については、少なくとも氷雪面等の水膜を取り除くことが最も重要であるにも拘わらず、決め手といえる改善手段がみられないのが現状であった。発明者等は、さきに氷雪面等の路面はなぜ滑るのかの課題では、氷の上にあるミクロの水膜の存在と因果関係があることが究明されているが、防滑性能の改善には、まず水膜を取り除くことが最も重要であり、さらに接地面積を増やす等とも併せ、防滑性の改善の手段として必要であることに着目し、上記のような条件を充足する材料を探索し、多孔質でかつ吸水性が低く、氷雪面等での水膜除去に適すると共に、ゴムとのなじみもよく前処理の必要もない、また、温度による物性変化が小さく断熱性を有し長期にわたる防滑性の定常的効果が維持でき、適度なクッション性を持ち、接地面積が大きくなりホ−ルド性を高める等の諸特性を備えたコルク材の使用を見だした。即ち、種子殻等での吸水性と違って、コルク材は吸水性が低く、いわゆる呼吸する吸放湿の特性に着目し氷雪面等での水膜除去の解決手段とする知見を得るに至り、特開2002−320503公報において、上記問題点の氷雪面等での水膜層の除去につき種々検討の結果、接地面にミクロの気孔があるものを採択することにより、ミクロの水が気孔に入り靴底接地時に水膜層を除去することにより防滑性の改善を図り得ることにつき開示している。さらに、例えばゴム又は樹脂の発泡品を靴底に採択することで仮に同等な効果を期待できても反復履用時での摩耗強度の条件を克服困難である。そこで、靴底ゴム組成物に混入可能な各種の防滑材料を検討の上、JIS K7125−1987法に準拠し、氷面及び非イオン界面活性剤(0.05%溶液)での動摩擦係数試験の結果、コルク粉粒体をベ−スゴム基材に混入したものが防滑性の改善に優れた効果を発揮するとの結論に達した。この為、コルク粉粒体をベ−スゴム基材に練り混みにより防滑性改善と靴底接地面での物性及び挙動を探索した結果、所定量かつ所望粉粒径のコルク粉粒体の練り込み、並びに練り込み後の靴底成形品の表面にバフ研磨加工を施すことにより防滑性改善のための解決手段として所期の目的を達成するに至った。
本発明は、上記コルク粉粒体による防滑性靴底部材では、コルク材の備えた属性に起因し、それなり防滑機能を改善し効果を発揮している。しかしながら、例えば硬い氷面或いは軟らかい氷面や溶けかかった氷面、圧雪面等のの硬軟いずれの氷面でも十分に防滑機能を発揮することが望まれ、前記コルク粉粒体による防滑性靴底部材による氷面防滑機能に加えて、特に氷面防滑効果の改善が望まれる。また従来より使用されているガラス繊維の場合でも、単なる混入では所望の防滑効果は期待できず、更に、ガラス繊維等の如き硬質部材の配合では表面損傷や亀裂発生等の阻害要因でもある取り扱いでの短所も看過できないが、いずれにしても防滑性効果にはガラス繊維の配向性ないし方向性が関与し、防滑効果の改善にはその解決手段として必要かつ十分条件であることを示している。 本発明は、靴底部材における防滑性効果の改良であって、コルク粉粒体及びガラス繊維を配合混入したブロック状防滑材を、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置させて複数個嵌装配設してなり、該コルク粉粒体は氷雪面の水膜除去と接地面積を増やすクッション性で防滑性を発揮し、またガラス繊維での略垂直方向に配向させた断面突出形態としたスパイク効果との相互補完並びに相乗効果によって防滑性効果の改良を図った靴底部材に関する。
本発明は、靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、コルク粉粒体及びガラス繊維を混入したブロック状防滑材を複数個嵌装配設してなる防滑性靴底部材において、前記接地底成形用の未加硫ゴム生地にコルク粉粒体及びガラス繊維を配合混入させてなる防滑性靴底部材であり、前記ゴム生地100重量部に対し、平均粒径が0.5〜3.0mmのコルク粉粒体を3〜30重量部、及び繊維長30〜100mm、直径が10〜100ミクロンのガラス繊維を15〜50重量部を混入してなる防滑性靴底部材の構成である。
本発明で防滑性材料として配合するコルク粉粒体は、地中海沿岸に生育するコルク樫の樹皮で、樹齢約20年で最初の剥皮を行い、以後9年周期で樹皮を剥ぎ、樹齢約250年といわれ森林資源を枯渇させることのない天産物といわれる。コルクの構造は6角柱の細胞が煉瓦を積むように交互になっており、低級脂肪酸を結合材とした細胞質でできており、1立法cm当たり2000万〜4000万個の小さな細胞からなり、細胞の中は空気と殆ど同じ気体で満たされているといわる。その為、軽くて弾力性がある、摩擦係数が高い、液体に対して不浸透性である、質感,感触がよい、腐りにくい等の特長を備えている。
本発明において、天然ゴムと合成ゴムを配合した未加硫化ゴム生地にコルク粉粒体とガラス繊維を配合混入したことを特徴とし、防滑性を発揮させるためには、該コルク粉粒体の平均粒径は、0.5〜3.0mm、ガラス繊維は繊維長30〜100mm、直径10〜100ミクロンの範囲が適当である。該コルク粉粒体の粒径分布を、0.5〜3.0mmとした理由は、粒径が0.5mm未満では滑り防止効果を発揮せず、また粒径が3.0mmを超えると軽く弾力性があるとはいえ露出コルクの破砕や破断が生じ易く、得られる防滑性が低下するきらいがある。より好ましくは、1.0〜2.0mmの範囲が平均粒径として適当である。また、該コルク粉粒体は、3重量部未満では十分な防滑効果が得られず、一方、30重量部を超えるとゴム生地を加熱加圧し加硫成形後の底部材の機械的性質が低下して該粉粒体を保持する機能が低下し、成形後での氷雪面等に対する食い込み量が小さくなる虞れがあり、好ましくは、5〜20重量部の範囲が適当である。
本発明に使用される靴底部材用の未加硫ゴム生地組成物は、通常靴底に使用されるゴムであって、例えば天然ゴムや、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等の1種又は2種以上より選ばれたものを主成分とする未加硫ゴムである。上記天然ゴムと合成ゴムとの配合比は、10〜90重量部:90〜10重量部である。
上記のごとく本発明では、靴底用ゴム生地に対しコルク粉粒体とガラス繊維を配合混入した構成とするが、該コルク粉粒体は温度による物性変化が少なく、長期間にわたり防滑性を発揮かつ維持でき定常的に防滑効果が期待でき、多孔質、吸湿性で吸水性材料が一般に飽和状態に達すると、吸水効果により得られる水膜との密着性が得られず、防滑機能が失われ、吸水部が凍結すると靴底部材の物性を低下させるが、コルク材では吸水性が低く、本来のすぐれた吸湿性を発揮できる。つまり吸水性が低く飽和状態で防滑機能が喪失する現象を回避し氷雪面等での水膜除去の妨げとならない。しかし、コルク材は上記の如く氷結面に弱いが、その短所をガラス繊維が補完し、またガラス繊維は水膜除去に対して阻害要因があるが、コルク材の吸湿性を利用する相互補完に基づく相乗効果を発揮し得るものである。該ガラス繊維は水膜除去に難点があるが氷結面でのスパイク把持効果を発揮し、一方コルク材は接地面積を増やし、優れた防滑性を発揮し、また適度なクッション性を備え、フロア等を傷つける虞れがない。
【0007】
また、本発明の構成においては、靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、前記軌跡曲線上の領域に交差状、好ましくは略直交状にコルク粉粒体及びガラス繊維を混入したブロック防滑体を複数個嵌装配設した構成であるが、コルク粉粒体とガラス繊維とを配合混入したブロック防滑体では、ガラス繊維は接地面に向かう略垂直方向に配向させた断面突出形態として形成した防滑性靴底部材であり、これら構成の相乗効果により防滑性靴底部材としての機能を発揮するように働く。
【実施例】
【0008】
以下、本発明に係る靴底部材のと、それの製造方法について説明する。
まず、実施例で用いた未加硫ゴム生地であるベ−スゴムの基本的配合を以下に示す。
【0009】
天然ゴム 42重量部
合成ゴム 27重量部
促進剤 3重量部
軟化剤 5重量部
充填剤 20重量部
老化防止剤他 3重量部
上記配合の未加硫ゴム生地を、ロ−ルを用いて混練りしたものをベ−スゴムとして用いる。練り上がりのム−ニ−粘度は40であった。
【0010】
次に、本発明において用いる靴底部材用ゴムの配合は、上記ベ−スゴム100重量部に対し、繊維長30〜100mm、直径が10〜100ミクロンのガラス繊維を15〜50重量部、さらに硫黄を1重量部配合して、各々靴底部材用ゴム組成物を得た。
本発明に係る靴底防滑部材は、図1の本発明に係る防滑性靴底部材の平面図に示す通りであり、防滑性靴底部材1の本底3及び靴底基部2からなる構成において、該防滑性靴底部材1の靴底接地面7における重心移動仮想軌跡曲線16上の靴底踏付部4及び/又は靴底踵部5の領域に位置せしめて、前記重心移動仮想軌跡曲線16上で少なくとも交差状で複数個のブロック防滑体6が嵌装状態に配設された構成である。8は凹陥部である。
図2は、本発明に係る防滑性靴底部材の要部説明図であり、防滑性靴底部材1の本底3及び靴底基部2からなる構成において、該防滑性靴底部材1の靴底接地面7における重心移動仮想軌跡曲線16上の靴底踏付部4及び/又は靴底踵部5の領域に位置せしめ前記重心移動仮想軌跡曲線16上で、少なくとも交差状であって、好ましくは略直交状に、靴底踏付部4並びに靴底踵部5では複数個のブロック防滑体6が嵌装状態に配設された構成である。凹陥部8は、前記複数個嵌装配設されたブロック防滑体6の相互間に隣接状態として形成されており、氷或いは水分の他、侵入物の残留又放出の挙動に関与するように働く。
図3は図2における防滑性靴底部材のAーA線断面図である。図3で防滑性靴底部材1は、本底3および靴底基部2とからなり、6はブロック防滑体、7は靴底接地面、9はガラス繊維である。
図4は本発明におけるブロック防滑体の斜視図である。該防滑体6は側面での縦軸でガラス繊維が略垂直方向に配向されており、ガラス繊維の切断突出面を上面とした弧状刻み型のブロック状の形態とした防滑材の構造である。図5は上面に刻みを設けた別実施例を示す模式図、図6は中央軸に沿って隔離した孔部を穿設した別実施例を示す模式図である。
図7は本発明に係るブロック防滑体成形用金型の断面図であり、図8は本発明における未加硫シート積層体の斜視図である。
【0011】
図7において、9はガラス繊維、17はコルク粉粒体、10はブロック防滑体成形用下金型、11はブロック防滑体成形用上金型、12は多段式金型狭隙部、13は未加硫シート積層体である。図8は未加硫シート積層体の斜視図であり、本発明において成形用多段式金型の採用による効果として、該未加硫シート積層体13で、ガラス繊維9は略横軸方向に配向されており、断面部はガラス繊維が露出突起の形態となっている。17はコルク粉粒体である。
本発明に係る防滑性靴底部材、すなわち靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる靴底部材の該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、コルク粉粒体及びガラス繊維を混入したブロック防滑体を複数個嵌装配設してなる防滑性靴底部材の製造方法について、該防滑性靴底部材の成形工程を説明する。
工程1:混合機で混練した前記未加硫ゴム生地を、オープンロールを用い、前記ベースゴム100重量部に対し、平均粒径が0.5〜3.0mmのコルク粉粒体3〜30重量部、及び平均繊維長30mm、直径が17〜20ミクロンのガラス繊維15〜50重量部、さらに硫黄1重量部を徐々に加えながら、所定の生地出し厚とした該オープンロールの狭間において、30分間混練りすることによりガラス繊維の配向性が一定方向に定まった後、5mm厚の圧延生地シートを作製するが、該圧延生地シート表面への離型剤は施さない。工程2:前記圧延生地シートから所定寸法で圧延方向に揃えた予備シートを裁断し、成形用他段式金型に適宜枚数の未加硫シート積層体13を積層載置し、150度で920秒、加硫の後に脱型、冷却させ、ブロック防滑体6を作製する。
工程3:次に、圧延方向に直交する方向に該ブロック防滑体6を3mm厚に裁断し、上下裁断面にガラス繊維尖端を略垂直方向に露出せしめた裁断片15を得た。
工程4:前記裁断片15を配設しようとする靴底意匠形状に合わせ打ち抜き、ブロック防滑体を得、靴底成形用金型の所定の部位に適宜配設後、該未加硫ベースゴムをセットし、150度、420秒加硫せしめ、ブロック防滑体6が接地面に露出させた構成とする。 上記のように、本発明における該ブロック防滑体6は、図7に示すブロック防滑体成形用下金型10、ブロック防滑体成形用上金型11からなり、多段式金型狭隙部12を備えた多段式金型を使用することによって初めて所望のガラス繊維の配向性を備える条件を充足し解決課題を達成することができる。
本発明において、該ブロック防滑体は、成形用金型として成形用多段式金型を選択的に採択し、これを他工程との組み合わせとした工程結合であって、混合機で混練した未加硫ゴム生地をオープンロールを用い、コルク粉粒体及びガラス繊維、さらに硫黄を添加混合し、該オープンロールにて所定間隔に設定したロール狭隘部を複数回反復通過せしめて、ガラス繊維の配向性を一定方向に形成した圧延生地シートを、成形用多段式金型に適宜枚数の未加硫シート積層を載置し加硫後、脱型、冷却し、ガラス繊維の先端が略垂直方向に露出せしめるように適宜厚さとした裁断片を打抜き型にてブロック防滑体を形成し、次いで該ブロック防滑体を靴底成形用金型に入れ、別途未加硫ゴムをセットし、加硫一体化する防滑性靴底部材の製造方法である。これによって、前記のように未加硫ゴム生地の各々の積層面に介在するエアが加圧加硫中に抜けにくい難点、さらに加圧加硫中に発生するバリの箇所が一部に特定される為、予め配向させたガラス繊維が前記バリ発生箇所に流れてしまい、ガラス繊維の配向方向が崩れ易くなる阻害要因となる従来法ての実施上の難点を解消するように働く。
【0012】
本発明においては、上記(3)で成形用多段式金型を選択的に採択し、該ガラス繊維の尖端が略垂直方向に露出せしめるように適宜厚さした裁断片を打抜き型にてブロック防滑体を形成する。これによって、積層面のエア(空気)が抜け易くなり、さらにバリ発生箇所が各々の積層面の位置と同位置になることにより、ガラス繊維が略垂直方向の突出する防滑性効果を奏する配向性が崩れる阻害要因を解消することができる。
図9は本発明におけるブロック防滑体の斜視図であり、該ブロック防滑体層14では、ガラス繊維9は略一定の方向に配向されており、また、裁断片15の断面側には該ガラス繊維9の尖端突出形態が露出形成されている。17はコルク粉粒体である。
図10並びに図11は本発明に係る防滑性靴底部材にブロック防滑体を、靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に嵌装配設した別実施例を示す平面図であり、6はブロック防滑体、16は重心移動仮想軌跡曲線である。
[1]摩擦試験:
上記のように作成した本発明に係る防滑性靴底部材について、以下の方法で摩擦係数を測定した。 摩擦係数:ASTM法
試験方法 スライダーに試料を取り付けセットして引張試験機にて引っ張ったときの抵抗力を測定し、摩擦係数を求める。
・スライダー:64×65×8.5mm,200g ・摩擦対象:ステンレス板
・引張速度:100mm/min ・荷重:あり(1Kg)・なし
・動摩擦係数=摩擦抵抗力(N)/接触力(N)
*接触力(N)=[スライダー質量(Kg)+荷重(Kg)]×9.81
条件入力: スライダー質量 0.2Kg 荷重1.0Kg
(1)上記の測定結果は、<湿>では、本実施例のコルク粉粒体及びガラス繊維混入試料では、動摩擦力(Kg)0.845、動摩擦力(N)8.28945、試料重量(g)
3.3100、試料重量(Kg)0.0033100、接触力(N)11.8045、動摩擦係数0.702であった。
【0013】
これに対し、コルクのみでは、動摩擦力(Kg)0.794、動摩擦力(N)7.78914、試料重量(g)2.1527、試料重量(Kg)0.0021527、接触力
(N)11.7931、動摩擦係数0.660であった。また、ガラス繊維のみでは、
動摩擦力(Kg)0.789、動摩擦力(N)7.74009、試料重量(g)3.3437、接触力(N)11.8048、動摩擦係数0.656であった。
【0014】
ブランクゴムでは、動摩擦力(Kg)0.576、動摩擦力(N)5.65056、試料重量(g)2.4046、接触力(N)11.7956、動摩擦係数0.479であった。
(2) また、<氷>で、条件入力 スライダー質量 0.2Kg、荷重2.0Kg
本実施例のコルク粉粒体及びガラス繊維混入試料では、動摩擦係数0.988に対し、コルク粉粒体では、0.287、ガラス繊維では1.159、ブランクゴムでは、動摩擦係数0.046であった。
[2]実地履用試験:
上記の試験と同じ配合の靴底ゴム部材を使用して、商品名「セカイチョ−TOPAZ」の靴を作成し、北海道札幌市郊外にて、実施履用試験を行った。試験体で比較例1はガラス繊維、比較例2はコルク粉粒体、比較例3はベースゴムのみのブランクである。
【0015】
各例につき、試験者10名を選び、雪上アイスバ−ン状態で、1滑り易い 2やや滑り易い 3中間 4やや滑り難い 5滑り難いの5段階点で評価した。上記の試験結果は、実施例,4.0、比較例1,4.0、比較例2,3.0、比較例3,1.0であった。
以上のように本発明の一実施例を示したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない変更等は、本発明の範囲にに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る防滑性靴底部材の平面図である。
【図2】本発明に係る防滑性靴底部材の要部説明図である。
【図3】図2における防滑性靴底部材のA−A線断面図である。
【図4】本発明に係るブロック防滑体の斜視図である。
【図5】本発明に係るブロック防滑体の別実施例の模式図である。
【図6】本発明に係るブロック防滑体の別実施例の模式図である。
【図7】本発明に係るブロック防滑体の成形用金型の断面図である
【図8】本発明に係る未加硫シート積層体の斜視図である。
【図9】本発明に係るブロック防滑体の斜視図である。
【図10】本発明に係るブロック防滑体を嵌装配設した別実施例を示す平面図である。
【図11】本発明に係るブロック防滑体を嵌装配設した別実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 防滑性靴底部材
2 靴底基部
3 本底
4 靴底踏付部
5 靴底踵部
6 ブロック防滑体
7 靴底接地面
8 凹陥部
9 ガラス繊維
10 ブロック防滑体成形用下金型
11 ブロック防滑体成形用上金型
12 多段式金型狭隙部
13 未加硫シート積層体
14 ブロック状防滑体層
15 裁断片
16 重心移動仮想軌跡曲線
17 コルク粉粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる防滑性靴底部材において、該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、コルク粉粒体及びガラス繊維を配合混入したブロック防滑体を複数個嵌装配設してなることを特徴とする防滑性靴底部材。
【請求項2】
前記靴底基部の天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を無地若しくは該未加硫ゴムにコルク粉粒体又はガラス繊維のいずれかを混入してなる請求項1記載の防滑性靴底部材。
【請求項3】
靴底基部を天然ゴムと合成ゴムを配合した主成分からなる未加硫ゴム生地を加熱加圧し加硫してなる靴底部材の該靴底基部の接地面における重心移動仮想軌跡曲線上の靴底踏付部及び/又は靴底踵部の領域に位置せしめて、コルク粉粒体及びガラス繊維を配合混入したブロック防滑体を複数個嵌装配設してなる防滑性靴底部材の製造方法であって、混合機で混練した前記未加硫ゴム生地をオープンロールを用い、コルク粉粒体及びガラス繊維、硫黄を添加混合し、該オープンロールにて所定間隔に設定したロール狭隘部を複数回反復通過せしめて前記ガラス繊維の配向性を一定方向に形成した圧延生地シートとし、次いで該圧延生地シートを成形用多段式金型に適宜枚数の未加硫シート積層体を載置し加硫後、脱型、冷却し、ガラス繊維の先端が略垂直方向に露出せしめるように適宜厚さとした裁断片を打抜き型にてブロック防滑体を形成し、該ブロック防滑体を靴底成形用金型に入れ、別途未加硫ゴムをセットし、加硫一体化したことを特徴とする防滑性靴底部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−282648(P2007−282648A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109656(P2006−109656)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(305027939)世界長株式會社 (3)
【Fターム(参考)】