説明

防火構造物に対する固定構造、及び防火構造物に固定される固定対象物

【課題】防火シャッター装置の如き防火構造物に対して、送信機の如き固定対象物を固定した場合であっても、遮炎性能を確保することが可能となる固定構造を提供し、あるいは、このような防火構造物に対して遮炎性能を確保しつつ固定することができる固定対象物を提供すること。
【解決手段】防火構造物に対して固定対象物を固定するための固定構造であって、シャッターカーテン12に対して送信機を固定する固定ネジ30と、送信機22をシャッターカーテン12から離れる方向に押圧する押圧具40とを備え、火災時の熱で固定ネジ30又は押圧具40が加熱された場合に、固定ネジ30による固定力以上の押圧力で押圧具40が送信機22を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火構造物に対する固定構造、及び防火構造物に固定される固定対象物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の建築物に設けられた開口部を火災発生時に全閉状態とすることで、この建築物に防火区画を形成する電動式の防火シャッター装置が普及している。この防火シャッター装置は、シャッターカーテンを備えて構成されており、火災感知器によって火災が感知された時には、この火災感知器から出力された火災感知信号に基づいてシャッターカーテンを自重降下させることにより、防火区画を形成する。
【0003】
このような防火シャッター装置には、障害物検知装置(危害防止装置)が設けられている。この障害物検知装置は、シャッターカーテンを降下させて開口部を閉鎖する際において、シャッターカーテンが障害物に接触した場合に、シャッターカーテンの降下を停止させることで、当該障害物に危害を与えることを防止するためのものである。この障害物検知装置は、シャッターカーテンの下端部に設けられた座板スイッチと、座板スイッチから出力された信号を防火シャッター装置の制御部に伝送する信号線を、この信号線の巻き取り又は巻き出しを行うコードリールを備えて構成されている。そして、シャッターカーテンの降下中に、座板スイッチで障害物が検知された場合には、座板スイッチから出力された検知信号を信号線を介して制御部に伝送し、この制御部がシャッターカーテンの降下を停止させる。また、このようなシャッターカーテンの開閉に伴って座板スイッチが上下動しても、信号線の巻き出し長さが常に適切な長さに維持されるように、コードリールによって信号線の巻き取り又は巻き出しを行う(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このように信号線を用いた場合には、コードリールの不具合や第三者のいたずら等によって信号線が断線等した場合、障害物検知装置が正常に機能しなくなる可能性がある。この問題を防止すべく、本願発明者等は、シャッターカーテンの降下時の障害物検知状態に関する情報を、無線により送受信することに着目した。具体的には、シャッターカーテンにおける座板スイッチの近傍に送信機を設けると共に、制御部の近傍に受信機を設け、座板スイッチから出力された検知信号を送信機から無線送信し、この検知信号を受信機が受信して制御部に出力する。このような構成によれば、信号線やコードリールに起因する問題を解消することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように送信機をシャッターカーテンに固定した場合には、新たな問題が生じる可能性が考えられる。すなわち、防火シャッター装置は、法令により遮炎性能を持たせることが義務付けられており、送信機を固定した側とは反対側から所定時間だけ所定温度でシャッターカーテンが加熱された場合であっても、送信機を固定した側に所定時間以上継続して発炎や発煙が生じないことが求められる。しかし、送信機をシャッターカーテンに固定した場合には、シャッターカーテンを介して送信機が加熱されることで、送信機の樹脂製の筐体が高温となって発煙すること等により、遮炎性能を確保できない可能性があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、防火シャッター装置の如き防火構造物に対して、送信機の如き固定対象物を固定した場合であっても、遮炎性能を確保することが可能となる固定構造を提供し、あるいは、このような防火構造物に対して遮炎性能を確保しつつ固定することができる、送信機の如き固定対象物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の防火構造物に対する固定構造は、防火構造物に対して固定対象物を固定するための固定構造であって、前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する固定手段と、前記固定対象物を前記防火構造物から離れる方向に押圧する押圧手段とを備え、火災時の熱で前記固定手段又は前記押圧手段が加熱された場合に、前記固定手段による固定力以上の押圧力で前記押圧手段が前記固定対象物を押圧する。
【0009】
また、請求項2に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項1に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記固定手段は、火災時の熱で当該固定手段が加熱されることにより、前記防火構造物に対する前記固定対象物の固定を解除可能とし、前記押圧手段は、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合に、当該固定対象物を当該防火構造物から離れる方向に押圧する。
【0010】
また、請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項1又は2に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記押圧手段は、前記防火構造物の少なくとも一部と前記固定対象物の少なくとも一部との相互間に配置され、前記防火構造物と前記固定対象物とを結ぶ変形方向に変形可能である、変形部を備える。
【0011】
また、請求項4に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記変形部は、弾性材から形成された板状体であり、前記防火構造物に対して前記固定対象物が前記固定手段により固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力によって、前記変形方向に変形する。
【0012】
また、請求項5に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記変形部は、バイメタルとして形成された板状体であり、火災時の熱により当該変形部が所定の変形温度に加熱されていない場合には、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、火災時の熱により当該変形部が前記変形温度以上に加熱された場合には、前記変形方向に変形する。
【0013】
また、請求項6に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記変形部は、形状記憶合金により形成された板状体であり、火災時の熱により当該変形部が所定の変態温度に加熱されていない場合には、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、火災時の熱により当該変形部が前記変態温度以上に加熱された場合には、記憶形状を回復して前記変形方向に変形する。
【0014】
また、請求項7に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記押圧手段は、前記防火構造物と前記固定対象物との間において前記変形方向に直交する非変形方向に沿って配置されるベース板と、当該ベース板に設けられた前記変形部とを備える。
【0015】
また、請求項8に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記固定対象物の側面であって、前記防火構造物と対向する側面に、前記変形部を設けた。
【0016】
また、請求項9に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記防火構造物の側面であって、前記固定対象物と対向する側面に、前記変形部を設けた。
【0017】
また、請求項10に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記変形部は、コイルバネであり、前記防火構造物に対して前記固定対象物が前記固定手段にて固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、当該防火構造物の少なくとも一部と当該固定対象物の少なくとも一部との相互間に配置され、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力によって、当該固定対象物を当該防火構造物に対して前記変形方向に付勢する。
【0018】
また、請求項11に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項2から10のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記固定手段は、前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する固定ネジであって、火災時の熱で加熱されて溶融することにより、当該防火構造物に対する当該固定対象物の固定を解除可能とする。
【0019】
また、請求項12に記載の防火構造物に対する固定構造は、請求項2から10のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造において、前記固定手段は、前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する磁石であって、火災時の熱で加熱されて磁力を低下させることにより、当該防火構造物に対する当該固定対象物の固定を解除可能とする。
【0020】
また、請求項13に記載の防火構造物に固定される固定対象物は、防火構造物に対して固定手段を介して固定される固定対象物であって、当該固定対象物を前記防火構造物から離れる方向に押圧する押圧手段を備える。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、火災時の熱で固定手段又は押圧手段が加熱された場合に、固定手段による固定力以上の押圧力で押圧手段により固定対象物が押圧されるので、固定対象物を防火構造物から離れる方向に離脱させることができるため、固定対象物が防火構造物を介して加熱されることを防止でき、あるいは、加熱される場合であってもその程度を軽減できるので、固定対象物が発火等する可能性を低減できて、防火シャッター装置の如き防火構造物の遮炎性能を確保することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、固定手段が火災時の熱で加熱されて防火構造物に対する固定対象物の固定が解除可能となった場合に、固定対象物が防火構造物から離れる方向に押圧するので、固定対象物を防火構造物から離れる方向に確実に離脱させることができる。
【0023】
請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、防火構造物の少なくとも一部と固定対象物の少なくとも一部との相互間に変形部が配置されるので、変形部が外部に大きく露出することがなく、防火構造物の意匠性が変形部によって損なわれることを防止できる。また、防火構造物と固定対象物とを結ぶ変形方向に変形部が変形することで、固定対象物を防火構造物から離れる方向に押圧することができ、固定対象物を防火構造物から離れる方向に離脱させることができる。
【0024】
請求項4に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、弾性材から板状体に形成された変形部が自己の弾性力により変形することで、固定対象物を防火構造物から離れる方向に押圧する。この構造によれば、変形部をバイメタルや形状記憶合金により形成する場合に比べて、変形部を簡易かつ安価に形成することが可能になる。
【0025】
請求項5に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、バイメタルとして形成された変形部が加熱されて変形することで、固定対象物を防火構造物から離れる方向に押圧する。この構造によれば、固定対象物の固定時には、変形部が変形しておらず平板状となるため、固定対象物を容易に防火構造物に固定することができる。
【0026】
請求項6に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、形状記憶合金により形成された変形部が加熱されて復元することで、固定対象物を防火構造物から離れる方向に押圧する。この構造によれば、固定対象物の固定時には、変形部が変形しておらず平板状となるため、固定対象物を容易に防火構造物に固定することができる。
【0027】
請求項7に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、ベース板に変形部を設けることで、このベース板を防火構造物と固定対象物との間に配置することで変形部を設置することができ、防火構造物や固定対象物については構造を変更する必要がないことから、既設の防火構造物や固定対象物に対しても押圧手段を容易に設置することができる。
【0028】
請求項8に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、固定対象物の側面であって、防火構造物と対向する側面に、変形部を設けたので、押圧手段を固定対象物と一体的に構成して取り付け等を行うことができるので、押圧手段を個別的に設置する手間を省略することができる。
【0029】
請求項9に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、防火構造物の側面であって、固定対象物と対向する側面に、変形部を設けたので、押圧手段を防火構造物と一体的に構成して取り付け等を行うことができるので、押圧手段を個別的に設置する手間を省略することができる。
【0030】
請求項10に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、コイルバネが自己の弾性力により変形することで、固定対象物を防火構造物から離れる方向に付勢する。この構造によれば、変形部を板状体に形成する場合に比べて、必要な付勢力を容易に得ることができ、また既存の様々なコイルバネを流用して押圧手段を構成することが容易である。
【0031】
請求項11に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、固定ネジが火災時の熱で加熱されて溶融することにより、防火構造物に対する固定対象物の固定を解除可能とするので、火災時に固定対象物の固定を自動的に解除でき、固定対象物を押圧手段にて押圧させるだけで防火構造物から離脱させることができる。
【0032】
請求項12に記載の防火構造物に対する固定構造によれば、磁石が火災時の熱で加熱されて磁力を低下させることにより、防火構造物に対する固定対象物の固定を解除可能とするので、火災時に固定対象物の固定を自動的に解除でき、固定対象物を押圧手段にて押圧させるだけで防火構造物から離脱させることができる。
【0033】
請求項13に記載の防火構造物に固定される固定対象物によれば、火災時の熱で固定手段又は押圧手段が加熱された場合に、固定手段による固定力以上の押圧力で押圧手段により固定対象物が押圧されるので、固定対象物を防火構造物から離れる方向に離脱させることができるため、固定対象物が防火構造物を介して加熱されることを防止でき、あるいは、加熱される場合であってもその程度を軽減できるので、固定対象物が発火等する可能性を低減できて、防火シャッター装置の如き防火構造物の遮炎性能を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1に係る固定構造を適用して固定対象物が固定されたシャッター装置の正面図である。
【図2】図1のシャッター装置の側面図である。
【図3】送信機周辺の拡大斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】押圧具を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図6】送信機周辺の状態変化を模式的に示す図であり、(a)は加熱前の状態を示す図、(b)は加熱中の状態を示す図、(c)は加熱後の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る送信機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る送信機周辺の拡大斜視図である。
【図9】図8の分解斜視図である。
【図10】変形例に係る変形部周辺の拡大斜視図であり、係止爪の変形前の状態を示す図である。
【図11】変形例に係る変形部周辺の拡大斜視図であり、係止爪の変形後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る各実施の形態に共通の概念と、各実施の形態の具体的内容を説明し、最後に、各実施の形態に対する変形例を説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0036】
〔各実施の形態に共通の概念〕
最初に、本発明に係る各実施の形態に共通の概念について説明する。各実施の形態は、防火構造物に対して固定対象物を固定するための固定構造と、防火構造物に固定される固定対象物に係るものである。
【0037】
ここで、防火構造物としては、防火性能が要求される任意の構造物が該当し、例えば、遮炎性能を持たせることが法令や仕様によって要求される、防火シャッター装置、防火扉、あるいは防火壁を挙げることができる。以下では、防火構造物が防火シャッター装置(より具体的には、後述するシャッター装置10に設けられたシャッターカーテン12)である場合について説明する。ただし、防火シャッター装置自体は従来と同様に構成することが可能であり、特記しない構成や処理については従来と同様であるものとする。また、以下では、防火シャッター装置は、当該防火シャッター装置を挟んで区画された2つの空間のうち、一方の空間で火災が発生した場合に、他方の空間に対する延焼を防止することを目的とするものであり、火災が発生した空間(あるいは、火災が発生する可能性が想定されている空間)を「火災発生想定空間」、延焼の防止対象となる空間を「延焼防止対象空間」と称する。また、防火シャッター装置における後述するシャッターカーテンの両側面のうち、火災発生想定空間に露出した側面を「火災発生想定側面」、延焼防止対象空間に露出した側面を「延焼防止対象側面」と称する。ただし、このような概念は相対的なものであり、防火シャッター装置を挟んで区画された2つの空間のうち、いずれの空間も火災発生想定空間と延焼防止対象空間の両方に該当し得るものと想定すべき場合があり、この場合には、シャッターカーテンの両側面のうち、いずれの側面も、火災発生想定側面であると共に延焼防止対象側面である。
【0038】
また、固定対象物としては、防火構造物に対して固定される任意の物が該当し、例えば、送信機、郵便受け、防火構造物の開閉時のセキュリティー認証を行うための認証装置を挙げることができる。以下では、固定対象物が送信機である場合について説明する。この送信機は、防火シャッター装置における後述するシャッターカーテンの両側面のうち、延焼防止対象側面に固定される。
【0039】
このような前提において、固定構造は、固定手段と押圧手段を備える。固定手段は、防火構造物に対して固定対象物を固定する手段であり、押圧手段は、固定対象物を防火構造物から離れる方向に押圧する手段である。このような構造は、1)固定手段による固定力が、火災時の熱で加熱されることにより低下する一方、押圧手段による押圧力は、火災時の熱で加熱されるか否かに関わらず一定である構造(以下、第1構造)、2)固定手段による固定力が、火災時の熱で加熱されるか否かに関わらず一定である一方、押圧手段による押圧力が、火災時の熱で加熱されることにより増加する構造(以下、第2構造)、3)固定手段による固定力が、火災時の熱で加熱されることにより低下すると共に、押圧手段による押圧力が、火災時の熱で加熱されることにより増加する構造(以下、第3構造)、に大別される。いずれの構造においても、少なくとも、火災時の熱で固定手段又は押圧手段の少なくとも一方が加熱された場合に、固定手段による固定力以上の押圧力で押圧手段が固定対象物を押圧する構造とすることで、固定対象物を防火構造物から離脱させる。
【0040】
〔実施の形態1〕
次に、実施の形態1の具体的内容について説明する。この形態は、上記第1構造に関するものであり、防火構造物に対する固定対象物の固定手段による固定が解除可能となった場合には、防火構造物と固定対象物とを結ぶ変形方向に変形可能である変形部を備えた形態である。図1は、実施の形態1に係る固定構造を適用して固定対象物が固定されたシャッター装置の正面図、図2は、図1のシャッター装置の側面図である。
【0041】
(シャッター装置)
シャッター装置10は、建築物に設けられた開口部1を火災発生時に全閉状態とすることで、この建築物に防火区画を形成する電動式の防火シャッター装置であり、カーテン収納部11とシャッターカーテン12を備えて構成されている。なお、以下の説明では、図1又は図2のX方向を幅方向又は左右方向、Y方向を前後方向又は奥行方向,X方向及びY方向に直交するZ方向を高さ方向(+Z方向を上方、−Z方向を下方)、と称する。なお、図1及び図2では、シャッター装置10の各部を模式的に示す。
【0042】
カーテン収納部11は、シャッター装置10の各部を収容するための中空体であり、開口部1の上端近傍位置に取り付けられている。このカーテン収納部11の内部には、図示しない巻き取り軸と後述する受信機23が収容されている。そして、巻き取り軸にてシャッターカーテン12が巻き取られた状態では、シャッターカーテン12が、カーテン収納部11の内部に収容される。カーテン収納部11の下面には、図示しないスリットが形成されており、このスリットを介してシャッターカーテン12の出し入れが行われる。
【0043】
シャッターカーテン12は、巻き取り軸によって巻き取り又は巻き出しされることで、開口部1を、全開状態、全閉状態、あるいはこれらの2状態の間の状態とする遮蔽手段である。このシャッターカーテン12の幅方向の両端部は、開口部1の内縁において上下方向に沿って設けられたガイドレール2に挿入されており、上下方向においてはガイドレール2の内部をスライド移動可能であり、かつ、前後方向においてはガイドレール2の外部に脱落しないように規制されている。このシャッターカーテン12の下端部には、水平状の座板13が設けられており、この座板13には、図示しない座板スイッチが取り付けられている。
【0044】
(シャッター障害物検知システム)
このように構成されたシャッター装置10に対して、シャッター障害物検知システム20が取り付けられている。このシャッター障害物検知システム20は、シャッターカーテン12に対する障害物を検知するシステムであり、図示しない座板スイッチ、送信機22、及び受信機23を備えて構成されている。座板スイッチは、シャッターカーテン12の閉鎖作動時に、座板13が障害物に接触したことを検知する障害物センサであり、シャッターカーテン12の座板13に公知の構造によって設けられている。送信機22は、座板スイッチの出力信号を無線にて送信する通信手段である。受信機23は、座板スイッチの出力信号を無線にて受信する通信手段である。なお、送信機22の構造については、後述する固定構造と併せて説明する。
【0045】
(固定構造)
次に、防火構造物であるシャッターカーテン12に対して、固定対象物である送信機22を固定するための固定構造について、詳細に説明する。図3は、送信機22周辺の拡大斜視図、図4は、図3の分解斜視図である。これら図3、4に示すように、シャッターカーテン12の延焼防止対象側面の側方であって、座板13の上方の位置に、送信機22が固定ネジ30を介して固定されている。また、送信機22とシャッターカーテン12及び座板13との相互間には、押圧具40が挟持されている。
【0046】
送信機22は、筐体24の内部に、電子素子や電池を収容して構成されている。この筐体24は、樹脂にて形成されたものであって、幅方向を長手方向とする直方体状に形成されている。この筐体24の長手方向の各端部には、当該各端部よりもさらに外側に向かって突出するように、固定片25が一体に形成されている。このうち、固定片25は、シャッターカーテン12の側面に平行な板状片であり、固定片25は、座板スイッチの上面に平行な板状片である。これら固定片25には、ネジ孔26が穿設されており、このネジ孔26を貫通する固定ネジ30を、シャッターカーテン12及び座板13にネジ込むことによって、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13に対して固定されている。
【0047】
固定ネジ30は、防火構造物であるシャッターカーテン12及び座板13に対して、固定対象物である送信機22を固定するための手段であって、火災時の熱で加熱されることにより、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定を解除可能とする固定手段である。
ここで、「解除可能とする」とは、防火構造物に対する固定対象物の固定力が、押圧手段による押圧力未満となることを意味しており、防火構造物に対して固定対象物が脱落する場合の他、防火構造物に対して固定対象物が脱落しない場合であっても(例えば、防火構造物に対する固定対象物の固定手段による固定状態が維持されている場合であっても)、押圧手段による押圧力が発生することによって、防火構造物に対する固定対象物の固定手段による固定状態が解除され得る場合を含む。
具体的には、固定ネジ30は、樹脂にて形成されており、火災時に火災発生想定空間で発生した熱によってシャッターカーテン12の火災発生想定側面が加熱され、この熱の伝導によってシャッターカーテン12の延焼防止対象側面が加熱された場合に、当該延焼防止対象側面から伝導された熱によって加熱されて溶融することにより、シャッターカーテン12に対する送信機22の固定を解除可能とする。この固定ネジ30の溶融時の温度(以下、溶融温度)は、固定ネジ30が発火や発煙する温度未満となるように、かつ、送信機22の筐体が加熱されて発煙等することで遮炎性能を低下させてしまう温度未満に実験により設定する。そして、このように決定した溶融温度で溶融するように、固定ネジ30を構成する樹脂の添加物の種類や量を調整する。
【0048】
押圧具40は、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合に、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧する押圧手段である。図5は、押圧具40を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【0049】
具体的には、押圧具40は、一対の第1ベース板41と第2ベース板42を相互に直交するように組み合わせることによって、側面が略L字形状となるように構成されている。第1ベース板41は、シャッターカーテン12の延焼防止対象側面と送信機22の相互間に挟持されるものであって、幅方向を長手方向とする板状体として形成されている。この第1ベース板41は、送信機22と同程度の高さで、かつ、送信機22よりも若干短くなるような長さで形成されており、少なくとも、固定ネジ30による固定に障害が生じないような寸法で形成されている。また、第2ベース板42は、座板13の上面と送信機22の相互間に挟持されるものであって、幅方向を長手方向とする板状体として形成されている。この第2ベース板42、送信機22と同程度の奥行で、かつ、送信機22よりも若干短くなるような長さで形成されており、少なくとも、固定ネジ30による固定に障害が生じないような寸法で形成されている。
【0050】
これら第1ベース板41と第2ベース板42には、それぞれ一対の変形部43が設けられている。この各変形部43は、防火構造物であるシャッターカーテン12及び座板13に対して、固定対象物である送信機22が固定ネジ30により固定されている場合には、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に配置され、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合には、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向(本実施の形態においては、図2のY方向)に変形可能である。
【0051】
より具体的には、各変形部43は、弾性部材により形成された板状体であり、第1ベース板41や第2ベース板42よりもシャッターカーテン12及び座板13に向けて湾曲状に突出するように変形されている。そして、各変形部43は、図6(a)に模式的に示すように、シャッターカーテン12及び座板13に対して送信機22が固定ネジ30により固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、第1ベース板41や第2ベース板42に形成された開口部44に収容されることで、変形方向に直交する非変形方向(本実施の形態においては、図1又は図2のX方向)に沿って平行状に維持される。また、各変形部43は、図6(b)に模式的に示すように、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力(湾曲状に復元する復元力)によって、変形方向に変形する。そして、この弾性力によって押圧具40がシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧されることで、図6(c)に模式的に示すように、この押圧具40と共に送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧され、シャッターカーテン12及び座板13から離脱する。従って、シャッターカーテン12及び座板13の延焼防止対象側面が加熱されても、この熱により送信機22が加熱されることを防止でき、送信機22の加熱によって遮炎性能が低下することを防止することができる。
【0052】
この変形部43の位置や湾曲形状、あるいは、変形部43と送信機22との相対的な位置関係については、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧することができる限りにおいて、任意に決定することができる。本実施の形態では、送信機22の幅方向の中心位置を基準として左右に対称となるように、変形部43の位置や湾曲形状を決定している。このような構成によれば、送信機22を左右の対称位置において同じ力で押圧することが可能となる。
【0053】
なお、このように構成された押圧具40の具体的な製造方法は任意であり、例えば、第1ベース板41と第2ベース板42は、それぞれ個別に製造した後に溶接等で相互に接合してもよい。また、変形部43は、第1ベース板41や第2ベース板42とは個別に製造した後に、第1ベース板41や第2ベース板42に対して溶接等で接合してもよい。より好ましくは、弾性材から形成された1枚の平板を準備し、当該平板に対して打ち抜き加工により変形部43と開口部44を同時に形成すると同時に、当該平板を側面略L字状に折り曲げることで、押圧具40を製造する。
【0054】
(実施の形態1の効果)
実施の形態1に係る防火構造物に対する固定構造によれば、押圧具40が火災時の熱で加熱されてシャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となった場合に、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧されるので、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離脱するため、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13を介して加熱されることを防止でき、あるいは、加熱される場合であってもその程度を軽減でき、送信機22が発火等する可能性を低減できて、シャッター装置10の遮炎性能を確保することが可能となる。
【0055】
また、シャッターカーテン12及び座板13に対して送信機22が固定ネジ30により固定されている場合には、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に変形部43が配置されるので、変形部43が外部に大きく露出することがなく、シャッター装置10の意匠性が変形部43によって損なわれることを防止できる。また、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となった場合には、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向に変形部43が変形することで、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧することができる。
【0056】
また、弾性材から板状体に形成された変形部43が自己の弾性力により変形することで、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧する。この構造によれば、変形部43をバイメタルや形状記憶合金により形成する場合に比べて、変形部43を簡易かつ安価に形成することが可能になる。
【0057】
また、第1ベース板41や第2ベース板42に変形部43を設けることで、これらの第1ベース板41や第2ベース板42をシャッターカーテン12及び座板13と送信機22との間に配置することで変形部43を設置することができ、シャッターカーテン12、座板13、あるいは送信機22については構造を変更する必要がないことから、既設のシャッターカーテン12、座板13、あるいは送信機22に対しても押圧具40を容易に設置することができる。
【0058】
また、固定ネジ30が火災時の熱で加熱されて溶融することにより、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定を解除可能とするので、火災時に送信機22の固定を自動的に解除でき、送信機22を押圧具40にて押圧させるだけでシャッターカーテン12及び座板13から離脱させることができる。
【0059】
また、固定ネジ30が火災時の熱で加熱されてシャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となった場合に、シャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧されるので、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離脱するため、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13を介して加熱されることを防止でき、あるいは、加熱される場合であってもその程度を軽減でき、送信機22が発火等する可能性を低減できて、シャッター装置10の遮炎性能を確保することが可能となる。
【0060】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、上記第1構造に関するものであり、固定対象物の側面であって、防火構造物と対向する側面に、変形部を設けた形態である。ただし、実施の形態2における構成は、特記する部分を除いて、実施の形態1における構成と同一であり、必要に応じて、実施の形態1で使用した符号を付することにより、その説明を省略する。
【0061】
図7は、本実施の形態に係る送信機22を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。この図7に示すように、送信機22には、火災時の熱で加熱されることにより、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合に、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧する押圧手段としての変形部43が設けられている。より具体的には、送信機22の筐体24は弾性部材により形成されており、この筐体24の側面の中で、シャッターカーテン12及び座板13に対向する側面と、座板スイッチに対向する側面とには、打ち抜き等により変形部43と開口部44が設けられている。なお、実施の形態1で説明した押圧具40は、この実施の形態2では省略されている。
【0062】
そして、各変形部43は、シャッターカーテン12及び座板13に対して送信機22が固定ネジ30により固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、開口部44に収容されることにより、変形方向に直交する非変形方向(本実施の形態においては、図1又は図2のX方向)に沿って平行状に維持される。また、各変形部43は、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力(湾曲状に復元する復元力)によって、変形方向に変形する。そして、この弾性力によって送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧されることで、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離脱する。従って、シャッターカーテン12及び座板13の延焼防止対象側面が加熱されても、この熱により送信機22が加熱されることを防止でき、送信機22の加熱によって遮炎性能が低下することを防止することができる。なお、本実施の形態のように各変形部43を構成した場合には、実施の形態1の場合と異なり、筐体24に開口部44を形成することになるため、筐体24の防水性能等が損なわれる可能性がある。この問題を回避するためには、防水性能を備えた従来の筐体24の外側面に各変形部43を取り付けることが好ましい。
【0063】
(実施の形態2の効果)
実施の形態2に係る防火構造物に対する固定構造によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、送信機22の側面であって、シャッターカーテン12及び座板13と対向する側面に、変形部43を設けたので、押圧具40を送信機22と一体的に構成して取り付け等を行うことができるので、押圧具40を個別的に設置する手間を省略することができる。
【0064】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、上記第1構造に関するものであり、変形部をコイルバネとして形成した形態である。ただし、実施の形態3における構成は、特記する部分を除いて、実施の形態1における構成と同一であり、必要に応じて、実施の形態1で使用した符号を付することにより、その説明を省略する。
【0065】
図8は、本実施の形態に係る送信機22周辺の拡大斜視図、図9は、図8の分解斜視図である。これら図8、図9に示すように、各固定ネジ30の周辺には、コイルバネ50が配置されている。このコイルバネ50は、防火構造物であるシャッターカーテン12及び座板13に対して、固定対象物である送信機22が固定ネジ30により固定されている場合には、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に配置され、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合には、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向(本実施の形態においては、図2のY方向)に変形可能である。
【0066】
より具体的には、コイルバネ50は、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22との間において、各固定ネジ30と同心状となるように、各固定ネジ30を囲繞するように配置されている。そして、コイルバネ50は、シャッターカーテン12及び座板13に対して送信機22が固定ネジ30にて固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、その軸線方向に沿って圧縮され、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と当送信機22の少なくとも一部との相互間に配置される。また、シャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定ネジ30による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力によって、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13に対して変形方向に沿って付勢する。そして、この付勢力によって送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に押圧されることで、送信機22がシャッターカーテン12及び座板13から離脱する。従って、シャッターカーテン12及び座板13の延焼防止対象側面が加熱されても、この熱により送信機22が加熱されることを防止でき、送信機22の加熱によって遮炎性能が低下することを防止することができる。
【0067】
(実施の形態3の効果)
実施の形態3に係る防火構造物に対する固定構造によれば、実施の形態1−2と同様の効果に加えて、コイルバネ50が自己の弾性力により変形することで、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13から離れる方向に付勢する。この構造によれば、変形部43を板状体に形成する場合に比べて、必要な付勢力を容易に得ることができ、また既存の様々なコイルバネ50を流用して押圧具40を構成することが容易である。
【0068】
〔各実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0069】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、固定対象物の加熱を完全に防止できない場合であっても、従来よりも固定対象物の加熱の程度を低減できている場合や、従来とは異なる手段で固定対象物の加熱の程度を低減できている場合には、本発明の目的が達成されている。
【0070】
(固定手段について)
固定手段としては、固定ネジ30以外にも、各種の手段を用いることができる。例えば、上記第2構造を構築するため、固定手段として磁石を用いることで、送信機22をシャッターカーテン12及び座板13に固着させると共に、押圧具40を、上記のようにバイメタル、形状記憶合金、あるいは、後述するように弾性体と係止爪45を用いた構造としてよい。磁石が火災により加熱されることにより、磁石の温度がキュリー点を超えた場合には、磁石の磁力が低下する(完全に失われることを含む)ため、シャッターカーテン12に対する送信機22の固定が解除可能となる。この状態では、押圧具40の押圧力が磁石の磁力(固定力)を上回り、この押圧力によって送信機22をシャッターカーテン12から離脱させることができる。また、実施の形態1−3のように固定手段として固定ネジ30を使用する場合であっても、火災時の熱により固定ネジ30を完全に溶融させる必要はなく、少なくとも、固定力が押圧具40の押圧力未満となる程度に溶融すればよい。
【0071】
(押圧手段)
押圧手段は、必ずしも変形を伴うものでなくてもよい。例えば、シャッターカーテン12や座板13の一方に磁石を固定し、当該磁石と反対の極性の磁石を送信機22に固定して、これら磁石の反発力により送信機22を押圧するようにしてもよい。ただし、上述のように、磁石がキュリー点温度以上に加熱された場合には、磁石の磁力が低下等する。このため、キュリー点温度の高い磁石を使用すると共に、このキュリー点温度より固定ネジの溶融温度を低くする等の対策を講じることが必要になる。
【0072】
(押圧手段−変形部−位置、形状、又は数)
実施の形態1、2で説明した変形部43に関して、その位置、形状、又は数を変更してもよい。
位置に関して、例えば、実施の形態1、2では、変形部43を、シャッターカーテン12に対向する位置と、座板13に対向する位置に設けているが、いずれか一方を省略してもよい。このように変形部43を省略する場合、押圧具40についても、当該省略した変形部43に対応する第1ベース板41又は第2ベース板42の一方を省略してもよい。また、実施の形態1、2では、変形部43を、送信機22の筐体24に一体に設けているが、シャッターカーテン12や座板13の延焼防止対象側面に溶接やビス等にて固定したり、シャッターカーテン12や座板13の延焼防止対象側面に一体に設けてもよい。
また、形状に関して、例えば、実施の形態1、2の変形部43を、シャッターカーテン12や座板13の側面に沿った面内において、回転させた方向(90度、180度、270度、あるいはこれらの間であって変形部43が斜めになる角度)で形成してもよい。
また、数に関して、例えば、実施の形態1、2では、変形部43を、シャッターカーテン12に対向する位置と、座板13に対向する位置に、それぞれ2つずつ設けているが、1つのみ設けてもよく、あるいは、3つ以上設けてもよい。
【0073】
(押圧手段−変形部−バイメタル)
あるいは、上記第3構造を構築するため、変形部43を、実施の形態1、2に記載のように弾性変形により変形するものではなく、温度変化により変形するバイメタルとして形成してもよい。すなわち、熱膨張率が異なる複数枚の金属板を張り合わせることで変形部43を板状体として構成してもよい。この際、変形部43が、所定の変形温度に加熱されていない場合には、平板状となった状態で、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に配置され、変形部43が所定の変形温度以上に加熱された場合には、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向に変形するように、当該変形部43の変形温度を設定する。この変形温度は、固定ネジ30の溶融温度とほぼ同に設定され、固定ネジ30が溶融してシャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となると同時に、変形部43が変形して送信機22を押圧することが好ましい。ただし、変形温度が固定ネジ30の溶融温度以下の場合でも、最初に変形部43が溶融温度に加熱されることで変形して送信機22の押圧を開始し、この時点では固定ネジ30の固定力が押圧力を上回ることで送信機22の固定が維持され、その後に固定ネジ30が溶融してシャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となった時点で、変形部43により送信機22を押圧するようにしてもよい。あるいは、変形温度が固定ネジ30の溶融温度以上の場合でも、最初に固定ネジ30が溶融してシャッターカーテン12及び座板13に対する送信機22の固定が解除可能となり、この時点では送信機22が座板13の上面に載置されており、その後に変形部43が溶融温度に加熱されることで変形して送信機22を押圧するようにしてもよい。このようにバイメタルとして構成された変形部43は、実施の形態1のように第1ベース板41や第2ベース板42に溶接等にて固定され、あるいは、実施の形態2のように送信機22の筐体24に溶接等にて固定される。このようにバイメタルとして変形部43を構成した場合には、送信機22の固定時には、変形部43が変形しておらず平板状となっているため、送信機22を容易にシャッターカーテン12及び座板13に固定することができる。また、変形部43の変形温度を固定ネジ30の溶融温度とほぼ同じかそれ以上とした場合には、固定ネジ30の固定力は変形部43の押圧力以下であってもよいため、固定ネジ30の剛性を低減することができる。
【0074】
(押圧手段−変形部−形状記憶合金)
あるいは、上記第3構造を構築するため、変形部43を、実施の形態1、2に記載のように弾性変形により変形するものではなく、形状記憶合金により形成してもよい。この際、変形部43が、所定の変態温度に加熱されていない場合には、平板状となった状態で、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に配置され、変形部43が変態温度以上に加熱された場合には、記憶形状を回復して、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向に変形して形状を回復するように、記憶形状と変態温度を決定する。この変態温度は、上述したバイメタルの変形温度と同様に、固定ネジ30の溶融温度を考慮して決定することが好ましい。このように変形部43を形状記憶合金により構成した場合には、送信機22の固定時には、変形部43が変形しておらず平板状となっているため、送信機22を容易にシャッターカーテン12及び座板13に固定することができる。また、変形部43の変態温度を固定ネジ30の溶融温度とほぼ同じかそれ以上とした場合には、固定ネジ30の固定力は変形部43の押圧力以下であってもよいため、固定ネジ30の剛性を低減することができる。
【0075】
(押圧手段−変形部−係止爪)
あるいは、上記第3構造を構築するため、変形部43の変形を規制する規制部を設け、この規制部を、樹脂、バイメタル、あるいは形状記憶合金により形成してもよい。例えば、図10、図11の要部斜視図に示すように、押圧具40の第1ベース板41と第2ベース板42に(図10及び図11では、第1ベース板41のみを図示する)、実施の形態1と同様に変形部43が設けられている。また、第1ベース板41と第2ベース板42には、規制部としての係止爪45が設けられている。この係止爪45は、変形部43の変形側端部(変形部43の端部のうち、変形部43が変形した状態において、押圧具40から最も離れる側の端部)に係脱自在に係止するように、第1ベース板41と第2ベース板42において、変形部43の変形側端部に近接する位置に、溶接等にて固定されている。この係止爪45は、加熱されることにより溶融変形する樹脂、加熱されることにより変形するバイメタル、あるいは、加熱されることにより形状が回復する形状記憶合金により形成されており、変形前の状態では、平板状となった状態で、変形部43の変形側端部に係止して、この変形部43の変形を規制し、変形時の状態では、変形部43の変形側端部への係止を解除して、この変形部43の変形を許容する。この係止爪45の変形温度(樹脂の溶融温度、バイメタルの変形温度、あるいは形状記憶合金の変態温度)は、上述した変形例に係るバイメタルの変形温度や形状記憶合金の変態温度と同様に、固定ネジ30の溶融温度を考慮して、決定することが好ましい。このように係止爪45を設けた場合には、変形部43を弾性体から形成した場合であっても、送信機22の固定時には、変形部43が係止爪45により規制されて平板状となっているため、送信機22を容易にシャッターカーテン12及び座板13に固定することができる。また、係止爪45の変形温度を固定ネジ30の溶融温度とほぼ同じかそれ以上とした場合には、固定ネジ30の固定力は変形部43の押圧力以下であってもよいため、固定ネジ30の剛性を低減することができる。
【0076】
(押圧手段−コイルバネ−位置又は数)
実施の形態3で説明したコイルバネ50に関して、その位置、形状、又は数を変更してもよい。
位置に関して、例えば、実施の形態3は、コイルバネ50を、シャッターカーテン12に対向する位置と、座板13に対向する位置に設けているが、いずれか一方を省略してもよい。また、コイルバネ50を、固定ネジ30と同心状ではなく、固定ネジ30から離れた位置に独立して設けてもよい。
また、数に関して、例えば、実施の形態3では、コイルバネ50を、シャッターカーテン12に対向する位置と、座板13に対向する位置に、それぞれ2つずつ設けているが、1つのみ設けてもよく、あるいは、3つ以上設けてもよい。
【0077】
(押圧手段−コイルバネ−形状記憶合金)
あるいは、上記第3構造を構築するため、コイルバネ50を、実施の形態3に記載のように弾性変形により変形するものではなく、形状記憶合金により形成してもよい。この際、コイルバネ50が、所定の変態温度に加熱されていない場合には、軸線方向に沿った全長が比較的短い状態で、シャッターカーテン12及び座板13の少なくとも一部と送信機22の少なくとも一部との相互間に配置され、コイルバネ50が変態温度以上に加熱された場合には、記憶形状を回復して軸線方向に沿って伸長し、シャッターカーテン12及び座板13と送信機22とを結ぶ変形方向に変形して形状を回復するように、記憶形状と変態温度を決定する。この変態温度は、上述した変形部43を形状記憶合金で形成した場合と同様に、固定ネジ30の溶融温度を考慮して、決定することが好ましい。
【符号の説明】
【0078】
1 開口部
2 ガイドレール
10 シャッター装置
11 カーテン収納部
12 シャッターカーテン
20 シャッター障害物検知システム
21 座板スイッチ
22 送信機
23 受信機
24 筐体
25 固定片
26 ネジ孔
30 固定ネジ
40 押圧具
41 第1ベース板
42 第2ベース板
43 変形部
44 開口部
50 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火構造物に対して固定対象物を固定するための固定構造であって、
前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する固定手段と、
前記固定対象物を前記防火構造物から離れる方向に押圧する押圧手段とを備え、
火災時の熱で前記固定手段又は前記押圧手段が加熱された場合に、前記固定手段による固定力以上の押圧力で前記押圧手段が前記固定対象物を押圧する、
防火構造物に対する固定構造。
【請求項2】
前記固定手段は、火災時の熱で当該固定手段が加熱されることにより、前記防火構造物に対する前記固定対象物の固定を解除可能とし、
前記押圧手段は、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合に、当該固定対象物を当該防火構造物から離れる方向に押圧する、
請求項1に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記防火構造物の少なくとも一部と前記固定対象物の少なくとも一部との相互間に配置され、前記防火構造物と前記固定対象物とを結ぶ変形方向に変形可能である、変形部を備える、
請求項1又は2に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項4】
前記変形部は、弾性材から形成された板状体であり、前記防火構造物に対して前記固定対象物が前記固定手段により固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力によって、前記変形方向に変形する、
請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項5】
前記変形部は、バイメタルとして形成された板状体であり、火災時の熱により当該変形部が所定の変形温度に加熱されていない場合には、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、火災時の熱により当該変形部が前記変形温度以上に加熱された場合には、前記変形方向に変形する、
請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項6】
前記変形部は、形状記憶合金により形成された板状体であり、火災時の熱により当該変形部が所定の変態温度に加熱されていない場合には、前記変形方向に直交する非変形方向に沿って平行状に維持され、火災時の熱により当該変形部が前記変態温度以上に加熱された場合には、記憶形状を回復して前記変形方向に変形する、
請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項7】
前記押圧手段は、前記防火構造物と前記固定対象物との間において前記変形方向に直交する非変形方向に沿って配置されるベース板と、当該ベース板に設けられた前記変形部とを備える、
請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項8】
前記固定対象物の側面であって、前記防火構造物と対向する側面に、前記変形部を設けた、
請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項9】
前記防火構造物の側面であって、前記固定対象物と対向する側面に、前記変形部を設けた、
請求項3から6のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項10】
前記変形部は、コイルバネであり、前記防火構造物に対して前記固定対象物が前記固定手段にて固定されている場合には、当該固定力によって自己の弾性力に抗して、当該防火構造物の少なくとも一部と当該固定対象物の少なくとも一部との相互間に配置され、前記防火構造物に対する前記固定対象物の前記固定手段による固定が解除可能となった場合には、自己の弾性力によって、当該固定対象物を当該防火構造物に対して前記変形方向に付勢する、
請求項3に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項11】
前記固定手段は、前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する固定ネジであって、火災時の熱で加熱されて溶融することにより、当該防火構造物に対する当該固定対象物の固定を解除可能とする、
請求項2から10のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項12】
前記固定手段は、前記防火構造物に対して前記固定対象物を固定する磁石であって、火災時の熱で加熱されて磁力を低下させることにより、当該防火構造物に対する当該固定対象物の固定を解除可能とする、
請求項2から10のいずれか一項に記載の防火構造物に対する固定構造。
【請求項13】
防火構造物に対して固定手段を介して固定される固定対象物であって、
当該固定対象物を前記防火構造物から離れる方向に押圧する押圧手段、
を備える防火構造物に固定される固定対象物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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