説明

防眩性帯電防止ハードコートフィルム及び偏光板

【課題】高精細な防眩性及び埃の付着を防止する帯電防止性能を安定的に付与し得ると共に、耐擦傷性に優れ、各種ディスプレイに好適に用いられる防眩性帯電防止ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルム12の表面に、ハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層13を有し、かつ前記ハードコート層形成材料が、(A)活性エネルギー線硬化型化合物と、その100質量部に対して、(B)シリカ微粒子1〜50質量部及び(C)導電性有機高分子化合物1〜30質量部を含有すると共に、(D)有機微粒子を含有する防眩性帯電防止ハードコートフィルム14である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防眩性帯電防止ハードコートフィルム及び偏光板に関する。さらに詳しくは、本発明は高精細な防眩性及び埃の付着を防止する帯電防止性能を安定的に付与し得ると共に、耐擦傷性に優れ、各種ディスプレイに好適に用いられる防眩性帯電防止ハードコートフィルム、及びこの防眩性帯電防止ハードコートフィルムを用いた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)などのディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見難くすることがあり、特に近年ディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。この問題を解決する手段の一つとして防眩性ハードコート層を有する部材を用いることが挙げられる。そして該防眩性ハードコート層の形成手法は、(1)ハードコート層を形成するための硬化時に物理的手法で表面を粗面化する方法、(2)ハードコート層形成用のハードコート剤にフィラーを混入する方法、(3)ハードコート層形成用のハードコート剤に非相溶な2成分を混入し、それらの相分離を利用した方法、の3種類に大別することができる。これらはいずれも表面に微細凹凸を形成することにより、外光の正反射を抑え、蛍光灯などの外光の写り込みを防止している。これらの中でも(2)のハードコート剤にフィラーを混入する方法が主流である。フィラーとしては元来シリカに代表される無機微粒子を用いるのが一般的であった。シリカ粒子が使用される理由としては、得られたハードコートフィルムの白色度を低く抑えることができる上、硬化不足による耐擦傷性の低下をもたらさないことなどが挙げられる。
【0003】
一方、透明基板上に、屈折率1.40〜1.60の樹脂ビーズと電離放射線硬化型組成物から構成される防眩層が形成された防眩フィルムが提案されている。例えば、特許文献1では、防眩性を発現する凹凸を形成するために塗膜の膜厚以上の粒径の有機フィラーによる防眩性フィルムが提案されているが、防眩性を高めるために凹凸を大きくするとヘーズ値が上昇し、像鮮明度が下がるという問題があった。それを改善するために、特許文献2では、防眩性を発現する凹凸形成用の塗膜の膜厚以上の粒径の有機フィラー添加量を低減し、塗膜の膜厚以下の粒径の有機フィラーを添加することで、バランスのとれた防眩性フィルムを作製することが提案されている。
しかしながら、実際には上記のような方法では光学物性的なバランスをとることはできても、使用微粒子の粒径のばらつきにより、凹凸が存在しない箇所が現れ、全面で防眩性が得られなくなる。
【0004】
他方、防眩性ハードコートフィルムは、一般に表面抵抗率が1×1013Ω/□より大きいために、周囲に帯電した埃や塵等が防眩性ハードコートフィルムに対して電気的に付着しやすいという問題が見られる。そこで表面抵抗率を低下させるために例えば四級アンモニウム塩のようなカチオン性基を有する有機系帯電防止剤や、ITO、アンチモン酸錫のような無機系帯電防止剤が用いられてきた。しかしながら、カチオン性基を有する帯電防止剤はシリカ微粒子と混合するとゲル化してしまうため同時に用いることができない。また無機系帯電防止剤を用いた場合、透明性、透過率が著しく低下するため、光学フィルムとして用いるには不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−18706号公報
【特許文献2】特許第3507344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、高精細な防眩性及び埃の付着を防止する帯電防止性能を安定的に付与し得ると共に、耐擦傷性に優れ、各種ディスプレイに好適に用いられる防眩性帯電防止ハードコートフィルム、及びこの防眩性帯電防止ハードコートフィルムを用いた偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
ハードコート層形成材料として、活性エネルギー線硬化型化合物と、シリカ微粒子と、導電性有機高分子化合物とを所定の割合で含むと共に、さらに有機微粒子を含有するものを用いて、透明プラスチックフィルムの表面にハードコート層を形成することにより、前記の目的に適合し得る防眩性帯電防止ハードコートフィルムが得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]透明プラスチックフィルムの表面に、ハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有し、かつ前記ハードコート層形成材料が、(A)活性エネルギー線硬化型化合物と、その100質量部に対して、(B)シリカ微粒子1〜50質量部及び(C)導電性有機高分子化合物1〜30質量部を含有すると共に、(D)有機微粒子を含有することを特徴とする防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[2](D)有機微粒子の含有量が、(A)成分100質量部に対して、1〜10質量部である上記[1]項に記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[3](B)シリカ微粒子の平均粒径が1〜100nmであり、(D)有機微粒子の平均粒径が1〜10μmである上記[1]又は[2]項に記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[4]ハードコート層の表面抵抗率が1×1013Ω/□以下である上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[5]全光線透過率が85%以上である上記[1]〜[4]項のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[6]像鮮明度の5クシ合計値が250以上である上記[1]〜[5]項のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、
[7]全ヘーズ値−内部ヘーズ値が2%以下である上記[1]〜[6]項のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム、及び
[8]上記[1]〜[7]項のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルムを形成した面の反対側の面を偏光子に貼合してなる偏光板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精細な防眩性及び埃の付着を防止する帯電防止性能を安定的に付与し得ると共に、耐擦傷性に優れ、各種ディスプレイに好適に用いられる防眩性帯電防止ハードコートフィルム、及びこの防眩性帯電防止ハードコートフィルムを用いた偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】偏光板の1例の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の偏光板の1例の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムについて説明する。
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムは、透明プラスチックフィルムの表面に、ハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有するものであって、前記ハードコート層形成材料が、下記の組成を有することを特徴とする。
【0012】
[ハードコート層形成材料]
本発明におけるハードコート層形成材料は、(A)活性エネルギー線硬化型化合物と、その100質量部に対して、(B)シリカ微粒子1〜50質量部及び(C)導電性有機高分子化合物1〜30質量部を含有すると共に、(D)有機微粒子を含有する。
((A)活性エネルギー線硬化型化合物)
前記ハードコート層形成材料において、(A)成分として用いられる活性エネルギー線硬化型化合物には、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが必須成分として含まれる。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
【0013】
<活性エネルギー線硬化型化合物の種類>
本発明においては、活性エネルギー線硬化型化合物として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが用いられる。
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
一方、前記(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのプレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を指し、他の類似用語も同様である。
【0015】
((B)シリカ微粒子)
当該ハードコート層形成材料において、(B)成分として用いられるシリカ微粒子は、平均粒径が1〜100nm程度のコロイド状シリカ微粒子であって、このようなシリカ微粒子をハードコート層に含有することにより、高精細な防眩性が付与される。シリカ微粒子は、上記活性エネルギー線硬化型化合物等に比較して比重が大きい。そのため、ハードコート層中にシリカ微粒子を添加することにより、ハードコート層全体の比重を大きくすることができる。その結果、後述の有機微粒子とその他のハードコート層形成用組成物との比重差が大きくなり、ハードコート層の乾燥前の塗膜中において有機微粒子が表層部に浮遊するものと推定される。従って、本発明の防眩性フィルムは、ハードコート層の膜厚が有機微粒子の平均粒径より大きくともハードコート層表面に高精細化に最も適した程度の凹凸を形成できるものと推定する。さらに、シリカ微粒子がナノオーダーのコロイド状シリカであれば、活性エネルギー線硬化型化合物中への分散性に優れると共に、光の内部散乱等も抑えることができると推定されるため、高精細化において特に好ましいものとなる。
なお、このシリカ微粒子の平均粒径は、コールター・カウンター法によって測定することができる。
このシリカ微粒子の含有量は、高精細な防眩性を付与する観点から、前記(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部を要し、好ましくは3〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部である。
【0016】
((C)導電性有機高分子化合物)
本発明において、(C)導電性有機高分子化合物をハードコート層形成材料中に含有させることにより、防眩性ハードコートフィルムの高精細化を阻害することなくハードコート層に帯電防止性を付与することができる。さらに、(C)導電性有機高分子化合物は、後述の(D)有機微粒子の表面と作用することによりハードコート層形成材料中での有機微粒子の分散性向上にも寄与しているものと推定され、得られるハードコート層表面の凹凸の均一化を促進する。
当該ハードコート層形成材料において、(C)成分として用いられる導電性有機高分子化合物としては、導電性を有し、適当な溶媒に溶解又は分散し得る高分子化合物であればよく、特に制限されず、例えばトランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリジアセチレンなどのポリアセチレン系;ポリ(p−フェニレン)やポリ(m−フェニレン)などのポリ(フェニレン)系;ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物などのポリチオフェン系;ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリンなどのポリアニリン系;ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロールなどのポリピロール系;ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(フェニレンビニレン)系;ポリ(ビニレンスルフィド)系;ポリ(p−フェニレンスルフィド)系;ポリ(チエニレンビニレン)系化合物などが用いられる。これらの中で、性能及び入手の容易さなどの観点から、ポリチオフェン系、ポリアニリン系及びポリピロール系化合物が好ましく、着色性、導電性の観点から、ポリチオフェン系化合物がより好ましい。
これらの導電性有機高分子化合物は、帯電防止性能を良好なものとするために、従来公知のドーピング剤を適宜加えることができる。ポリチオフェンの場合、ドーピング剤としては、例えば塩化リチウム、脂肪族カルボン酸リチウム、テトラシアノキノリン、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。このようなドーピング剤を含むポリチオフェンとしては、例えば3,4−エチレンジオキシチオフェンを、高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[信越ポリマー(株)製「ポリチオフェンコート」]を挙げることができる。
【0017】
前記の導電性有機高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、ハードコート層の帯電防止性能、その他の性能及び経済性などの観点から、前記(A)成分100質量部に対して、1〜30質量部であることを要し、好ましくは3〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
また、本発明の目的が損なわれない範囲で、他の導電性化合物と適宜併用することもできる。
【0018】
((D)有機微粒子)
当該ハードコート層形成材料において、(D)成分として用いられる有機微粒子としては、例えばシリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子(以下、PMMA微粒子と称する場合がある。)などが挙げられる)、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。これらは、球状であって粒度分布の狭いものが好ましい。この有機微粒子の平均粒径は、防眩性能の観点から、1〜10μmであることが好ましく、粒度分布はコールター・カウンター法で測定した平均粒径の±2μm以内の範囲の重量分率が70%以上であるものが好ましい。
【0019】
本発明においては、この(D)成分の有機微粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、防眩性能の観点から、前述した(A)成分100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜8質量部である。
【0020】
(光重合開始剤)
当該ハードコート層形成材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどが挙げられる。
これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、全活性エネルギー線硬化型化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0021】
(ハードコート層形成材料の調製)
当該ハードコート層形成材料は、必要に応じ、適当な溶媒中に前述した(A)成分の活性エネルギー線硬化型化合物、(B)成分のシリカ微粒子、(C)成分の導電性有機高分子化合物、(D)成分の有機微粒子、及び所望により用いられる光重合開始剤や各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、(近)赤外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0022】
[透明プラスチックフィルム]
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、透明プラスチックフィルムの表面に、前述のようにして調製したハードコート層形成材料を用いて、ハードコート層を形成する。
前記の透明プラスチックフィルムについては特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0023】
これらのプラスチックフィルムは、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
【0024】
[ハードコート層の形成]
前記透明プラスチックフィルムの表面に、前記ハードコート層形成材料を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、良好な防眩性、及びハードコート層の硬化収縮によってハードコートフィルムがカールすることを防止する観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜7μmである。
【0025】
[防眩性帯電防止ハードコートフィルム]
このようにして得られた本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムは、下記の光学特性を有している。
(ヘーズ値)
ここで、内部ヘーズ値とはハードコート層の内部散乱に起因するヘーズ値を表し、外部ヘーズ値とはハードコート層の表層部における外部散乱に起因するヘーズ値を表し、全ヘーズ値とはハードコート層の内部散乱と外部散乱の両方に起因するヘーズ値を表す。
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムのハードコート層の全ヘーズ値は、通常20%以下であって、「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」(すなわち、外部ヘーズ値)の値は、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下である。全ヘーズ値及び外部ヘーズ値の値が上記範囲にあれば、白茶けやコントラストの低下が低減されると共に、高い像鮮明度と適度の防眩性を兼ね備えている。
【0026】
<内部ヘーズ値、外部ヘーズ値及び全ヘーズ値の測定>
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムのハードコート層の全ヘーズ値、内部ヘーズ値、及び外部ヘーズ値は次の手法により測定される。
JIS K 7136に準拠して、防眩性帯電防止ハードコートフィルムのヘーズ値及びそのハードコートフィルムに用いられる透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を測定する。
前記防眩性帯電防止ハードコートフィルムのヘーズ値から前記透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を差し引いた値をハードコート層の全ヘーズ値とする。
次に、厚さ50μmの透明フィルム上に厚さ20μmの粘着層が設けられた透明粘着シートを、防眩性帯電防止ハードコートフィルムのハードコート層側に貼付して内部ヘーズ値算出用試料とする。該透明粘着シートのヘーズ値、及び内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値をJIS K 7136に準拠して測定する。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から前記透明粘着シートのヘーズ値及び透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を差し引いた値を防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の内部ヘーズ値とする。
さらに、前記全ヘーズ値から前記内部ヘーズ値を差し引いた値をハードコート層の外部ヘーズ値とする。
なお、前記透明粘着シートのヘーズ値は、前述のとおり計算の過程で差し引きされるため、内部ヘーズ値及び全ヘーズ値に直接の影響を与えないので、特に制限されないが、測定精度を高める観点から15%未満のヘーズ値のものを用いることが好ましい。また、同様の観点から前記透明粘着シートの全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
(60°鏡面光沢度)
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムの60°鏡面光沢度は、グロスメーターを使用し、JIS K 7105に準拠して測定する。該ハードコートフィルムのハードコート層側の60°鏡面光沢度は、通常130以下であり、好ましくは80〜130、より好ましくは90〜130である。
(全光線透過率)
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムの全光線透過率は、通常85%以上であり、88%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%未満では透明性が不十分となるおそれがある。
なお、全光線透過率は、JIS K 7361−1に準拠して測定した値である。
(像鮮明度の5クシ合計値)
表示画質、すなわち視認性の指標として像鮮明度の5クシ合計値が用いられる。この値が250以上であれば十分に良好な表示画質(視認性)が得られ、高精細な防眩性が付与される。なお、ハードコートフィルムの像鮮明度の5クシ合計値は、JIS K 7374:2007に準拠して測定により求めることができる。
なお、前記光学特性の具体的な測定方法については、後で説明する。
【0027】
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、ハードコート層側表面の表面抵抗率は、帯電防止性能の観点から、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□未満であることがより好ましい。
なお、上記表面抵抗率の測定は、後で説明する。
【0028】
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、ハードコート層表面の算術平均粗さRaは、通常0.005〜0.300μm程度である。該Raが上記範囲にあれば、高精細でち密な凹凸となるので、良好な像鮮明度が得られる。該Raの好ましい値は、0.010〜0.250μmである。
なお、前記算術平均粗さRaは、JIS B 601−1994に準拠して測定した値である。
【0029】
(その他機能層)
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、必要により、ハードコート層上に、反射防止性を付与させるなどの目的で低屈折率層、例えばシロキサン系被膜、フッ素系被膜などを設けることができる。この場合、該低屈折率層の厚さは、0.05〜1μm程度が適当である。この低屈折率層を設けることにより、太陽光、蛍光灯などによる反射から生じる画面の映り込みが解消され、また、表面の反射率を抑えることで、全光線透過率が上がり、透明性が向上する。なお、低屈折率層の種類によっては、さらに帯電防止性の向上を図ることができる。
【0030】
(粘着剤層)
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、透明プラスチックフィルムのハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途に適した、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、必要に応じて剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
このような粘着剤層を形成した防眩性帯電防止ハードコートフィルムは、CRT、LCD、PDPなどのディスプレイに対して、防眩性能や耐擦傷性能、帯電防止性能などを付与する部材として好適に用いられ、特にLCDなどにおける偏光板貼付用として好適である。
【0031】
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムにおいては、必要に応じて、透明プラスチックフィルムのハードコート層が形成されていない側の面に、別のハードコート層を積層することができる。両方のハードコート層は、それぞれのハードコート層形成材料が同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0032】
[偏光板]
本発明はまた、前述した本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムのハードコート層形成面の反対側の面を偏光子に貼合してなる偏光板をも提供する。
LCDにおける液晶セルは一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板を、その配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隙になるように配置し、その周辺をシールして該間隙に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板の外側表面に、それぞれ粘着剤層を介して偏光板が配設された構造を有している。
図1は、粘着剤層が設けられた偏光板(以下、粘着剤層付き偏光板と称する場合がある。)の1例の構成を示す斜視図である。この図で示されるように、該粘着剤層付き偏光板10は、一般的には、ポリビニルアルコール系偏光子1の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム2及び2'を貼り合わせた3層構造の偏光板6、そして、その片面(TACフィルム2側)には液晶セルなどの光学部品に貼着するための粘着剤層3が形成され、さらに、この粘着剤層3には、剥離シート4が貼着されている。また、この粘着剤層付き偏光板10の該粘着剤層3と反対側の面には、通常表面保護フィルム5が設けられている。
本発明の粘着剤層付き偏光板10は、偏光子の両面に設けられたTACフィルムのうち、一方のTACフィルム若しくは両方のTACフィルムに上述した本発明に係わるハードコート層が設けられたものである。図1に示すように粘着剤層付き偏光板10に粘着剤層3、剥離シート4及び表面保護フィルム5が設けられている場合は、特に表面保護フィルム5側のTACフィルム2'側に本発明に係わるハードコート層が設けられる。
【0033】
本発明の偏光板を含有する粘着剤層付き偏光板を製造する方法としては、例えば以下に示す操作を行うことでできる。
なお、図2は、本発明の偏光板を含有する粘着剤層付き偏光板30の1例の構成を示す断面模式図である。
まず、基材の透明プラスチックフィルムとしてTACフィルムのような光学異方性のないフィルム12'を用い、その一方の面に本発明に係わるハードコート層13を形成し、防眩性帯電防止ハードコートフィルム14とする。次に、偏光子11の片面にハードコート層13の形成されていないTACフィルム12を、反対面に前記防眩性帯電防止ハードコートフィルム14を、接着剤層15、15'を用いて積層する。透明プラスチックフィルムにTACフィルムを使用する場合、接着剤による積層で密着性を向上させるには、前述した表面処理の他けん化処理なども行うことができる。
これにより、防眩性能と耐擦傷性能及び帯電防止性能に優れる偏光板20が得られる。偏光板20も必要に応じて、ハードコート層13の設けられる面に、前記図1に示す剥離可能な表面保護フィルム5や、その反対面に液晶セル等の光学部品に貼付するための粘着剤層16や剥離シート17が設けられてもよい。
本発明の偏光板は、LCDにおける液晶セル用を始め、光量調整用、偏光干渉応用装置用、光学的欠陥検出器用などとして用いることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により、なんら限定されるものではない。
なお、ハードコート層形成材料におけるシリカ微粒子及び有機微粒子の平均粒径、並びにハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って求めた。
<ハードコート層形成材料>
(1)シリカ微粒子の平均粒径
コールター・カウンター法により測定した。
(2)有機微粒子の平均粒径
コールター・カウンター法により測定した。
(3)有機微粒子の屈折率
有機微粒子のモノマーの組成に基づき含有モノマーの屈折率と含有質量比から平均屈折率を算出する。
【0035】
<ハードコートフィルム>
(4)内部ヘーズ値、全ヘーズ値及び外部ヘーズ値
明細書本文記載の方法に従い、機器として日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、ハードコートフィルムの内部ヘーズ値、全ヘーズ値及び外部ヘーズ値を測定した。
(5)全光線透過率
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7361−1に準拠して、ハードコートフィルムの全光線透過率を測定した。
(6)防眩性の評価
ハードコートフィルムをアクリル樹脂黒板[住友化学(株)製]にアクリル系粘着剤を介して貼り付けたサンプルを蛍光灯下にて目視にて観察し、下記の判定基準で防眩性を評価する。
○:蛍光灯の映り込み防止性が十分であり、かつ白茶けが少ない
×:蛍光灯の映り込み防止性が不十分である、又は蛍光灯の映り込み防止性は十分であるが、白茶けが大きく視認性に劣るもの
(7)60°鏡面光沢度
日本電色社製グロスメーター「PG−1M」を使用し、JIS K 7105に準拠して測定する。130以下が合格である。
(8)像鮮明度の5クシ合計値
スガ試験機(株)製写像性測定器「ICM−10P」を使用し、JIS K 7374:2007に準拠して測定する。5種類のスリット(スリット幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mm及び2mm)の合計値を像鮮明度と表す。
(9)表面抵抗率
高抵抗率計[三菱化学(株)製、機種名「ハイレスタ・UP」]を用い、印加電圧100Vにてハードコートフィルムの最表面の測定を行った。1×1013Ω/□以下が合格である。
(10)表面の算術平均粗さRa
表面粗さ測定機[(株)ミツトヨ製、機種名「SV30000S4」]を用い、JIS B 601−1994に準拠して測定する。
(11)スチールウール硬度の評価(SW)
スチールウール#0000を用いて、ハードコート層表面を10往復擦傷させた(加重200g/cm2(19.6kN/m2))後、目視観察した。ハードコート層表面に傷が見られない場合を○、傷が見られる場合を×と評価した。
【0036】
調製例1 ハードコート層用コート剤1
(A)活性エネルギー線硬化型化合物含有組成物として、セイカビームEXF−L203(CS−1)[大日精化工業(株)製、固形分濃度70質量%、単官能モノマーと多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、プロピレングリコールモノメチルアセテート30質量%]100質量部、及び(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部、(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYDA SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部、(D)有機微粒子として、球状のPMMA微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒径4.5μm、屈折率1.49]5質量部を均一に混合し、固形分約38質量%であるハードコート層用コート剤1を作製した。
【0037】
調製例2 ハードコート層用コート剤2
(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYDA SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部を200質量部に変更した以外は、調製例1と同様にして、固形分約28質量%であるハードコート層用コート剤2を作製した。
【0038】
調製例3 ハードコート層用コート剤3
(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部をPGM−ST−L[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径50nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]45質量部に変更した以外は、調製例1と同様にして、固形分約37質量%であるハードコート層用コート剤3を作製した。
【0039】
調製例4 ハードコート層用コート剤4
(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部をPGM−ST−UP[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径70nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部に変更した以外は、調製例1と同様にして、固形分約38質量%であるハードコート層用コート剤4を作製した。
【0040】
調製例5 ハードコート層用コート剤5
(A)活性エネルギー線硬化型化合物含有組成物として、セイカビームEXF−L203(CS−1)[大日精化工業(株)製、固形分濃度70質量%、単官能モノマーと多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、プロピレングリコールモノメチルアセテート30質量%]100質量部、及び(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部、(D)有機微粒子として、球状のPMMA微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒径4.5μm、屈折率1.49]5質量部、希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部を均一に混合し、固形分約36質量%であるハードコート層用コート剤5を作製した。
【0041】
調製例6 ハードコート層用コート剤6
(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部を4.5質量部、(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYDA SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部を450質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、固形分約18質量%であるハードコート層用コート剤6を作製した。
【0042】
調製例7 ハードコート層用コート剤7
(A)活性エネルギー線硬化型化合物含有組成物として、セイカビームEXF−L203(CS−1)[大日精化工業(株)製、固形分濃度70質量%、単官能モノマーと多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、プロピレングリコールモノメチルアセテート30質量%]100質量部、及び(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYD SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部、(D)有機微粒子として、球状のPMMA微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒径4.5μm、屈折率1.49]5質量部を均一に混合し、固形分約39質量%であるハードコート層用コート剤7を作製した。
【0043】
調製例8 ハードコート層用コート剤8
(B)シリカ微粒子を[東ソー・シリカ製、商品名「ニップシールSS50B」、平均粒径2000nm(2μm)]4.5質量部に変更した以外は、調製例1と同様にして、固形分約40質量%であるハードコート層用コート剤8を作製した。
【0044】
調製例9 ハードコート層用コート剤9
(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYDA SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部をアンチモン酸錫[日産化学(株)製、「セルナックスCX−Z210IP−F2」、固形分濃度20質量%、アンチモン酸錫20質量%、イソプロピルアルコール80質量%]150質量部に変更した以外は、調製例1と同様にして、固形分約40質量%であるハードコート層用コート剤9を作製した。
【0045】
調製例10 ハードコート層用コート剤10
(A)活性エネルギー線硬化型化合物含有組成物として、セイカビームEXF−L203(CS−1)[大日精化工業(株)製、固形分濃度70質量%、単官能モノマーと多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、プロピレングリコールモノメチルアセテート30質量%]100質量部、及び(B)シリカ微粒子として、PGM−ST[日産化学(株)製、固形分濃度30質量%、シリカ微粒子(平均粒径15nm)30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%]15質量部、(C)導電性有機高分子として、SEPLEGYDA SAS−MO5[信越ポリマー(株)製、固形分濃度5質量%、ポリチオフェン5質量%、メチルエチルケトン95質量%]100質量部を均一に混合し、固形分約37質量%であるハードコート層用コート剤10を作製した。
前記の調製例1〜10で得られたハードコート層用コート剤1〜10の性状を第1表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡績(株)製、コスモシャインA4300]の表面に、調製例1で得たコート剤1を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した。70℃のオーブンで1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプで200mJ/cm2の紫外線を照射し防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0048】
実施例2
調製例2で得たコート剤2を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0049】
実施例3
調製例3で得たコート剤3を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0050】
実施例4
調製例4で得たコート剤4を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0051】
実施例5
調製例8で得たコート剤8を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0052】
比較例1
調製例5で得たコート剤5を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0053】
比較例2
調製例6で得たコート剤6を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0054】
比較例3
調製例7で得たコート剤7を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0055】
比較例4
調製例9で得たコート剤9を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0056】
比較例5
調製例10で得たコート剤10を硬化膜厚が約6μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
第1表及び第2表から、下記のことが分かる。
帯電防止性能については、実施例1〜5及び比較例2、3、5は、いずれも導電性化合物としてポリチオフェンを含むことから、表面抵抗率が1×1012Ω/□未満であり、良好な帯電防止性能が付与されている。これに対して、比較例1は導電性化合物を含まないため、帯電防止性能は付与されておらず、比較例4は、導電性化合物としてアンチモン酸錫を含んでいるが、表面抵抗率が1×1012Ω/□であり、ポリチオフェンに比べて帯電防止性能に劣る。
高精細な防眩性については、実施例1〜4は、いずれも防眩性は合格であり、かつ全光線透過率が89%より高く、60°鏡面光沢度が80〜130の範囲にあり、しかも像鮮明度の5クシ合計値が250を超えていることから、高精細な防眩性を有している。これに対して、比較例3はシリカ微粒子を含まないために、また比較例5は球状有機微粒子を含まないために、いずれも60°鏡面光沢度が130を超え、防眩性は不合格となっている。
また、実施例1と、そのハードコート形成材料から(C)導電性化合物を除いた比較例1を比較すると、比較例1は実施例1に比べ、算術平均粗さRaが上昇し、像鮮明度と60°鏡面光沢度が低下している。これより、(C)導電性化合物の添加が(D)有機微粒子の分散性向上に寄与していることが分かる。
【0059】
実施例5は、シリカ微粒子として平均粒径が2000nm(2μm)である大きなものを含んでいるために60°鏡面光沢度が40.5と低く、かつ像鮮明度の5クシ合計値も30.3と低いことから、防眩性は合格であるが、高精細であるとは云えない。
比較例1、2及び4は、いずれも防眩性は合格であるが、像鮮明度の5クシ合計値が250未満であり、実施例1〜4のものに比べて高精細に劣る。また、比較例2はポリチオフェンの含有量が34.7質量部と多く、比較例4は導電性化合物としてアンチモン酸錫を含むことから、全光線透過率が85%未満であり、視認性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の防眩性帯電防止ハードコートフィルムは、高精細な防眩性及び埃の付着を防止する帯電防止性能を安定的に付与し得ると共に、耐擦傷性に優れ、CRT、LCD、PDPなどのディスプレイに対して、防眩性能、帯電防止性能及び耐擦傷性能などを付与する部材として好適に用いられ、特にLCDなどにおける偏光板用として好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 ポリビニルアルコール系偏光子
2 TACフィルム
2' TACフィルム
3 粘着剤層
4 剥離シート
5 表面保護フィルム
6 偏光板
10 粘着剤層付き偏光板
11 偏光子
12 TACフィルム
12' TACフィルム
13 ハードコート層
14 防眩性帯電防止ハードコートフィルム
15 接着剤層
15' 接着剤層
16 粘着剤層
17 剥離シート
20 偏光板
30 粘着剤層付き偏光板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの表面に、ハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有し、かつ前記ハードコート層形成材料が、(A)活性エネルギー線硬化型化合物と、その100質量部に対して、(B)シリカ微粒子1〜50質量部及び(C)導電性有機高分子化合物1〜30質量部を含有すると共に、(D)有機微粒子を含有することを特徴とする防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項2】
(D)有機微粒子の含有量が、(A)成分100質量部に対して、1〜10質量部である請求項1に記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項3】
(B)シリカ微粒子の平均粒径が1〜100nmであり、(D)有機微粒子の平均粒径が1〜10μmである請求項1又は2に記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層の表面抵抗率が1×1013Ω/□以下である請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項5】
全光線透過率が85%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項6】
像鮮明度の5クシ合計値が250以上である請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項7】
全ヘーズ値−内部ヘーズ値が2%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防眩性帯電防止ハードコートフィルムを形成した面の反対側の面を偏光子に貼合してなる偏光板。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−48099(P2012−48099A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191881(P2010−191881)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】