説明

防草用防草構造体及びその施工方法

【課題】防草シートを法面に敷設する場合に法面の凹凸を減らして美観を保った状態で確実に防草シートの端部の固定を保つ。
【解決手段】法面30の区域に施工されるアスファルト系防草シート10の一方の端部13に沿うように掘削された溝31を形成する第1工程と、アスファルト系防草シート10の端部13を溝31の内部に配置する第2工程と、溝31の上のアスファルト系防草シート10の端部13の上に、植物の生育が可能である緑化資材40を植物の種子と共に配置する第3工程と、植物の根44をアスファルト系防草シート10の表面層51に接するよりも長く成長させることで、植物の根44を防草シート10のアスファルト系材料の表面層52と一体化させる第4工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草の成育を防止する必要がある場所に設置する、防草用の防草構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、線路、河川、公園及び造林園並びにこれらの周辺の地面、表面及び特に法面などでは、美観が損なわれるなどの理由により、雑草などの草の成育を防止する必要があることが多い。特に、道路の路肩及びそれに隣接する法面においては、雑草が繁茂することにより、美観が損なわれるだけでなく、交通の安全が損なわれる可能性がある。そのため、それらの場所では、雑草の成育を防止する必要がある。
【0003】
草の成育の防止のためには、例えば、特許文献1に開示されているような防草シートが用いられている。
【0004】
草の成育を防止するための構造体として、例えば、特許文献2には、法面部上端の路肩部に布設されるコンクリートブロック部と、そのコンクリートブロック部の法面側に一端部が一体的に固定された防草シート部とからなり、コンクリートブロック部を路肩部に布設した状態で、防草シート部を法面部上に展開して法面部を被覆可能とした路肩ブロックが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、シート両面に多数の凸部を交互に形成した遮光性かつ遮水性の合成樹脂製エンボスシート(防草シート)を、除草すべき地面に敷設、固定したことを特徴とする防草構体が開示されている。この特許文献3には、路肩にガードレールがある場合には、ガードレール支柱と、エンボスシート(防草シート)に形成したガードレール支柱の挿通孔との隙間に、コーキング材を詰めることが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、所定の植生マットを法面に張設する緑化工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−272348号公報
【特許文献2】特開2005−307518号公報
【特許文献3】特開2006−177122号公報
【特許文献4】特開2007−303120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
草の成育を防止ために防草構造体を設置する場合には、防草シートを用いることが一般的である。防草シートを法面などに敷設する場合には、防草シートの端部の固定を確実に行う必要がある。しかしながら、従来の接続方法では、美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができず、防草シートの端部が捲れ上がったりするという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、防草が必要な区域全体にわたって雑草の生育を防止し、特に防草シートを法面に敷設する場合にも、法面の凹凸を減らして美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる防草構造体及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、盛土または切土における法面区域に、アスファルト系防草シートに基づいて形成された防草構造体の端部を固定する施工方法であって、法面区域または法肩区域または法尻区域に、施工されるアスファルト系防草シートの少なくとも一方の端部に沿うように掘削された溝を形成する第1工程と、アスファルト系防草シートの端部を溝の内部に配置する第2工程と、溝の上のアスファルト系防草シートの端部の上に、少なくとも植物の種子か或いは植生状態の土壌を含む植物の生育が可能な緑化資材を配置する第3工程と、育成する植物の根をアスファルト系防草シートの表面層に接するよりも長く成長させることで、植物の根を防草シートのアスファルト系材料の表面層と一体化させる第4工程を有する防草構造体の施工方法である。
この施工方法により、防草シートの端部を溝に配置し、その上に緑化資材を配置することで、法面に不要な盛り上がりを形成せずに美観を保ち、緑化資材の植物の根により防草シートの端部を固定でき、降雨等による防草シートの端部における土の流出を防止し、端部が露出して風がシート下側に入ったり、端部が捲れることを防止できる。本発明の緑化資材は、少なくとも植物の種子か或いは植生状態の土壌を含む植物の育成が可能なものであって、例えば、植生シート、植生マット等の板状の形態、吹きつけの場合の資材が溜まる形態、さらに既に植生状態の土壌などを挙げることができる。
なお、第1工程の「掘削された溝を形成する」とは、必ずしもU字状の断面を持った溝を形成する必要はなく、防草シートの端部を緑化資材を用いて埋め込むように配置するための空間(窪み)が確保できればよい。例えばV字状の断面を持った溝、或いは浅い窪み状の断面を持った溝であっても構わない。
【0011】
(2)また、本発明の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、芝の種子を緑化資材と共に配置するようにしてもよい。
この施工方法により、種子を芝に特定することで、土が流れず、冬でも根が枯れず、宿根性で、背が低いという法面に適した緑化を実施できる。
【0012】
(3)また、本発明の施工方法は、植物の根をアスファルト系材料の表面層と一体化させる第4工程では、1mm厚以上の厚みのアスファルト系材料の層と植物の根を一体化させるようにしてもよい。
この施工方法により、1mm厚以上、好ましくは1.5mm厚以上のアスファルト層と植物の根を一体化させることで、両者を強固に一体化させることができ、土の流出を防ぎ、防草シートの端部の露出や捲れを防止できる。
【0013】
(4)また、本発明の施工方法は、防草シートの端部を溝に配置する第2工程では、少なくとも表面側にアスファルト系材料の層として改質アスファルト層を有する防草シートを用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シートの表面に改質アスファルト層を形成することで、緑化資材の植物の根が改質アスファルト層の内部に入り込み、固定され一体化される。これにより、緑化資材と防草シートの間の土壌や周辺の土壌も植物の根により固定されるので、防草シートの固定をさらに強固にできる。
【0014】
(5)また、本発明の施工方法は、防草シートの端部を溝に配置する第2工程では、最表面に凹凸を形成した表面層を有する防草シートを用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シートの表面に凹凸を設けることで、緑化資材の植物の根が絡み易くなって防草シートの固定が容易になり、且つ、凹凸により接触面積が増加して摩擦も増加し、係合効果も得られるので固定を強固にできる。
【0015】
(6)また、本発明の施工方法は、防草シートの端部を溝に配置する第2工程では、凹凸を形成した表面層として、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む表面層を有する防草シートを用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シートの表面層の凹凸に無機質粒子を用いることで、植物の根が絡みやすく、凹凸量が大きい凹凸を容易に形成することができる。
【0016】
(7)また、本発明の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、緑化資材に植物の生育を促進するための肥料を含ませるようにしてもよい。
この施工方法により、緑化資材に肥料を含むことで、植物の生育が促進され、早期に植物の根により防草シートの表面層を固定することができる。施肥の形態としては、緑化資材中に混入させる方法、形態保持用のネット等の一部に肥料帯を設ける方法、形態保持用のネット又はシートの一部に肥料袋を設ける方法、形態保持用のネット又はシート自体が生分解性である場合にそれ自体に肥料成分を含ませる方法が考えられる。
【0017】
(8)また、本発明の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、緑化資材に土壌形成材料及び種子を含ませるようにしてもよい。
この施工方法により、緑化資材に、例えば、各種の土、植物繊維、廃材や間伐材のチップ等、植物の形成に好適な土壌形成材料として含ませ、さらに、芝等の根の成長が早く、根により防草シートを固定しやすい植物の種子を含ませることで、防草シートの固定を早期で容易且つ強固にできる。
【0018】
(9)また、本発明の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、緑化資材に形態を保持させるためのネット形状、シート形状又はマット形状を含む平面形状の高分子材料を含ませるようにしてもよい。
この施工方法により、シート形状、マット形状、ネット形状等の平面形状の高分子材料(形態保持用)を含ませることで、緑化資材の形態を安定させ、降雨等により資材が流出することを防いで、形態を保持することができる。含まれる資材を高分子材料とすると加工紙や金属ネット等は含まれないので、必要であれば追加する。
【0019】
(10)また、本発明の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、緑化資材の高分子材料として生分解性の高分子材料を用いるようにしてもよい。
この施工方法により、高分子材料を生分解性にすることで、植物が生育して根が防草シートの表面を充分に固定した後は、緑化資材の形態を安定させる必要は無くなるので環境保護に役立ち、高分子材料のあった場所も根で固定することができるので、防草シートをより強固に固定できる
【0020】
(11)また、本発明の施工方法は、防草シートの端部、又は、その端部を端部上の緑化資材と共に、釘状器具を打設する工程を有するようにしてもよい。
この施工方法により、防草シートの端部、又は、その端部を緑化資材と共に針状器具で打設することで、端部を強固に固定でき、緑化資材と共に固定する場合には、緑化資材から根が成長して防草シートの端部の表面を固定するまで、防草シートの端部を法面上に固定することができる。
【0021】
(12)また、本発明の防草構造体は、上記の何れかの施工方法により形成された防草構造体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、防草が必要な区域全体にわたって草の生育を防止し、特に防草シートを法面に敷設する場合に、法面上の凹凸を減らして美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる防草構造体及びその施工方法を得ることができる。
【0023】
また、本発明は、防草シートとして耐貫通型防草シートを用いることにより、際立った防草性能と優れた耐久性とを併せ持った防草構造体及びその施工方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の防草構造体の防草シート端部を、緑化資材を用いて法面に固定する状態を示す図であり、(a)は法肩から法面にかけて施工する場合の防草構造体の断面図であり、(b)は(a)の正面図である。
【図2】本発明の防草構造体の施工方法における施工中又は施工後の状態を示す図であり、(a)は法面に設けた溝に本発明の防草構造体の防草シート端部を配置して釘状器具で固定した状態を示す断面図であり、(b)は(a)の溝内の防草シート端部を埋めてその上に緑化資材を配置した状態を示す断面図であり、(c)は(b)の緑化資材の根が成長して法面に固定されると共に溝に配置した本発明の防草構造体の防草シート端部に根が絡んだ状態を示す断面図である。
【図3】本発明の防草構造体の施工方法における施工中又は施工後の状態を示す図であり、(a)は法面に設けた溝に本発明の防草構造体の防草シート端部を配置したのみの状態を示す断面図であり、(b)は(a)の溝内の防草シート端部を埋めてその上に緑化資材を配置した上から防草シートと緑化資材の双方を釘状器具で固定した状態を示す断面図であり、(c)は(b)の緑化資材の根が成長して法面に固定されると共に溝に配置した本発明の防草構造体の防草シート端部に根が絡んだ状態を示す断面図である。
【図4】(a)は本実施形態で用いられる防草構造体の防草シートの構成を示す断面図であり、(b)は図2(c)、図3(c)に示した本発明の防草構造体の防草シート端部に根が絡んだ状態を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の防草構造体の防草シート端部を、緑化資材を用いて法面に固定する状態を示す図であり、(a)は法尻から法面にかけて施工する場合の防草構造体の断面図であり、(b)は(a)の正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の防草構造体の防草シート端部を、緑化資材を用いて法面に固定する状態を示す図であり、(a)は法面の中腹のみに施工する場合の防草構造体の断面図であり、(b)は(a)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明では、図1(a)、(b)、図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)に示したように防草シートの端部の少なくとも一部を溝に埋設し、その上を緑化資材で覆うことにより、防草が必要な区域全体にわたって雑草の生育を防止するのみならず、美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる。さらに、図2(c)及び図3(c)に示したように防草構造体1を施工した後、時間の経過とともに、植生マットの植物の根が法面に根付き、また防草シート表層とも一体化して、法面の土壌の流出を防ぎ、防草シートの端部を法面に固定する効果をより一層高めることができる。
【0026】
なお、本明細書では、雑草の生育を防止することを「防草」という。防草が必要な区域を「防草区域」という。以下、本発明の防草構造体1及びその施工方法について詳しく説明する。
【0027】
<防草構造体>
本発明の防草構造体の第1実施形態の特徴的な断面模式図を図4(a)に示す。図1に示すように、本発明の防草構造体1は、防草シート10を含む。防草シート10の端の部分(「端部」という)を、所定の方法で防草区域に固定することにより、防草構造体1を設置することができる。図1は、本発明の防草構造体1を法肩から法面30の中腹までにかけて設置した場合を例示している。「法面」とは、道路、線路及び遊歩道などの周辺の斜面、切り土及び盛土などによってできた斜面、段差のある2つの地表面の間の斜面及び2つの地表面の間の斜面などを意味する。
【0028】
本明細書では、防草シート10の端部のうち、法面における上側(法肩側)又は法肩に固定される端部を、「第一端部」(符号:12)という。また、本明細書では、防草シート10の端部のうち、法面における下側(法尻側)又は法尻に固定される端部を「第二端部」(符号:13)という。また、「端部」とは、防草シート10の所定の一端付近の領域であり、防草シート10を所定の方法によって固定するために必要な寸法を有する領域のことをいう。
【0029】
第一端部12の固定方法について、第一端部12を法肩に固定し、第二端部13を法面に固定する場合を例として、図1、図2、図3及び図4を用いて説明する。なお、図1(b)に示すように、本発明の防草構造体1に用いる防草シート10の側端部は、加熱融着法又はテープ接着法によって固定することができる。これらの固定方法により、各防草シート10が結合されて防草構造体1が形成される。
【0030】
加熱融着法とは、例えば、防草シート10の端部をバーナー等で加熱することによって、防草シート10を構成する改質アスファルトを溶融させ、固化することにより、一つの防草シート10の一方の側端部を隣接する防草シートの他方の側端部に熱融着する固定方法である。
【0031】
テープ接着法とは、両面に接着性のあるアスファルトテープを、一つの防草シート10の一方の側端部を隣接する防草シートの他方の側端部との間に挿入し、隣接する防草シートの側端部を融着又は接着して固定を行う方法である。テープ接着法は、加熱融着法とほぼ同等の接着強度を得ることができる。住宅地近傍への設置の場合や、設置箇所近傍に下草等の可燃物が多い場合など、火気の使用が制限されている場合には、一つの防草シート10の一方の側端部と隣接する防草シートの他方の側端部との固定には、テープ接着法を用いることが好ましい。
【0032】
防草シート10の第一端部12、第二端部13及び各側端部を固定するには、通常、頭の部分が数字の「7」に似た形状を有するように屈曲した屈曲釘状器具、又は竹製の目串などのアンカーなどの第二の釘状器具15が用いられる。また、防草シート10の第一端部12をU字溝等のコンクリート(モルタル)の構造物又は舗装路等に固定する場合には、加熱融着法又はテープ接着法による固定に加え、第一の釘状器具14を用いて固定することが好ましい。
【0033】
防草シート10の第一端部12の法肩への固定は、具体的には、第二の釘状器具15の釘部が防草シート10を貫通して防草区域に打ち込むことにより行われる。このようにして、防草シート10の第一端部12を、法肩に固定することができる。防草シート10の法肩への固定をより確実にするために、第二の釘状器具15を打ち込む間隔は、例えば、1m以下であることが好ましく、0.7m以下、さらには0.2〜0.5mであることが好ましい。また、防草シート10を構造物又は舗装路等に固定する場合には、第一の釘状器具14を同様な間隔で打ち込めばよい。
【0034】
一般に、道路法面や鉄道法面の生育した草を刈り取る作業は、通行を遮断して実施しないケースもあり、作業者が交通事故に巻き込まれるなどの危険を伴う作業である。上述の施工方法を用いた場合には、防草シート10の第一端部12を法肩に確実に固定できるので、防草処理後に新たに草が生育することを防止できる効果を非常に高くできる。従って、防草区域が法肩と法面30を含むような場所へ本発明の防草構造体1を設置すると、防草シート10を用いた防草処理後に生育した草を刈り取る作業頻度を極端に少なくできるために交通安全の観点からも好ましい。また、本発明の防草構造体1を設置する法面30が、遊歩道法面である場合にも、メンテメンス頻度を大幅に小さくできるという優れた効果を奏する。
【0035】
そして、図1(a)、図3(a)に示すように、本発明の防草構造体1では、防草シート10が捲れることを防止するために、第二端部13を固定するために、第二端部13部分の土壌部分を、第二端部13部分に沿って掘ることで溝31を形成し、その溝31内に第二端部13を配置する。
【0036】
その次に、図1、図2(a)に示すように、本発明の防草構造体1では、防草シート10が捲れることを防止するために、第二端部13を固定する。第二端部13は、防草シート10を貫通するようにピン形状や片端に屈曲部を有する棒状である屈曲釘形状等の第二の釘状器具15を打ち込むことにより固定される。第二の釘状器具15の屈曲部は、鋭角的屈曲部又はU字形屈曲部であることが好ましい。具体的には、第二の釘状器具15として、L字型の屈曲釘状器具を用いることができる。L字型の屈曲釘状器具の寸法の一例として、直径9mm、長辺の長さ200mmのものを用いることができる。
【0037】
次に、図2(a)に示すように、溝31内の防草シート10の第二端部13を、防草シート10を貫通するように第二の釘状器具15を打ち込んで固定した後、溝31を土壌の土で平坦に埋め戻して埋め戻し部32を設け、防草シート10の第二端部13上の埋め戻し部32を覆うように植物の種等を含む緑化資材40で覆う。本発明の防草構造体1は、防草シート10の第二端部13を、溝31に埋め、その上を緑化資材40で覆う構造である。本発明の防草構造体1はこの構造により、第二端部13及び第二の釘状器具15が緑化資材40により隠れて防草区域の美観を向上させることができ、防草区域の美観を保った状態で、防草シート10の端部の固定を長期間にわたって確実に保つことができる。
【0038】
また、本発明の防草構造体1では、図3(b)に示すように、緑化資材40が根付くまでの土壌の流出等を防止する効果を高めるために、緑化資材40の上から防草シート10の第二端部13を貫通させるように第二の釘状器具15で固定してもよい。つまり、第二の釘状器具15は、第二端部13を単独で固定するのではなく、緑化資材40と第二端部13を共に貫通して、その双方を固定する。その場合、第二の釘状器具15の頭は露出するが、緑化資材40を本発明の防草構造体1と同じ第二の釘状器具15で一回で固定するので、図2(b)の場合と比べて工程が増えるわけではない。この場合、例えば、防草構造体1の施工後に緑化資材40が根付いて固定が強固になるまでの時間がかかる場合や、法面の角度が比較的急角度である場合等には、緑化資材40の上から第二の釘状器具15で固定することができるので、緑化資材40の下側の土壌の流出を防止でき、緑化資材40とその下の土壌の盛り上がりも無いことから、防草区域の美観を向上することができ、防草区域の美観を保った状態で、防草シート10の端部の固定を長期間にわたってより確実に保つことができる。
【0039】
第二端部13及び埋め戻し部32を、緑化資材40で覆った後、さらに緑化資材40を上述の第二の釘状器具15で固定することにより、緑化資材40及び防草シート10の固定を確実にすることができる。
【0040】
本発明の防草構造体1に用いる緑化資材40は、例えば、植物を植生ネットの上に植生した植生マットであり、具体的な一例としては、芝を植生ネットの上に植生した芝マットなどを好適に用いることができる。
【0041】
図1〜図4の緑化資材40の幅は、0.3〜2m程度であり、0.5〜1mであることが好ましい。この緑化資材40を用いて、防草シート10の第二端部13上の埋め戻し部32と、第二端部13の外側の地面(法面30)の一部を覆うように、緑化資材40を敷設する。緑化資材40の固定には、第二の釘状器具15(アンカー)等の公知の方法を用いることができる。
【0042】
また、アンカーとしては、上述の第二の釘状器具15と同様の釘状器具又は竹製の目串などを用いることができる。具体的には、屈曲釘状器具の屈曲部又は竹製の目串の節部が緑化資材40に接するように、緑化資材40の防草シート10上に敷設した部分及び第二端部13の外側の地面(法面30)に敷設した部分の両方に、防草シート10を貫通して屈曲釘状器具又は竹製の目串などのアンカーを打ち込むことによって、緑化資材40を固定する。この固定方法によって、防草シート10の防草区域に対する固定を確実にすることができる。このように緑化資材40を第二の釘状器具15で固定する方法の場合、暴風などによって防草シート10の第二端部13が捲れることを防止することができる。
【0043】
緑化資材40が芝マット等の低草木である場合のその低草木の各葉42又は各根(地下茎)44間の空隙部には、目土を充填することが好ましい。目土が緑化資材40の芝等の植物の葉42や茎44の間に入って、葉42と茎44とを保護する保護材としての役目を果たすことになるためである。緑化資材40への目土の充填は、緑化資材40の敷設の前後のいずれであっても良いが、作業性の点から、緑化資材40の敷設後に目土を充填することが好ましい。
【0044】
図4(b)は、図2(c)及び図3(c)における緑化資材40から出た根44が防草シート上で固定される状態を示している。根44は、成長するに従い、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂からなる表面層51の隙間を通過し、改質アスファルト層52に浸入する。後述する改質アスファルト層52は、その改質アスファルト層52内に植物の根44が容易に浸入することが可能である。従って、根44は、表面層51の無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂との係合、及び、改質アスファルト層52内への浸入による一体化により、防草シート10と強固に結合する。
【0045】
<緑化資材>
本発明における緑化資材とは、少なくとも植物の種子か或いは植生状態の土壌を含む、植物の育成が可能な資材である。緑化資材の形態としては、例えば、種を予め含んだ植生シート、植生マット等の板状の形態であってもよいし、種子と土と肥料等を吹き付ける形態でもよいし、さらに既に植生状態の土壌であってもよい。また、板状の形態には、例えば「貼り芝」等の既に植生状態の土壌を含む。
【0046】
<防草シート本体の材料>
本発明の防草構造体1に含まれる防草シートは、特に限定されるものではなく、市販の防草シートから適宜選択して用いることができるが、特に、可撓性、防水性及び遮光性を有し、シート状の形状を有するものは、良好な耐久性を有することから好適に用いることができる。本発明に用いる防草シート10の具体例として、優れた可撓性、防水性及び遮光性を有する改質アスファルト系防草シート、例えば、特開2002−272348号公報(特許文献1)に開示された改質アスファルト系防草シートを好ましく用いることができる。
【0047】
「改質アスファルト系防草シート」とは、改質アスファルトを材料として含む防草シートのことをいう。改質アスファルトとしては、具体的には図4(a)に示したような後述する耐貫通型防草シートの改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54に用いることのできる改質アスファルトと同様のものを用いることができる。改質アスファルト系防草シートは、建築用防水シート(改質アスファルト系防水シート)を転用して用いることができる。改質アスファルト系防草シートとしては、単層の改質アスファルトと不織布等からなる基材層を含む構造のシートを用いることができる。
【0048】
また、改質アスファルト系防草シートは、さらに図4(a)に示したような表面層及び裏面層を含むことができる。表面層には、後述する耐貫通型防草シートの表面層51と同様のものを用いることができる。また、裏面層には、合成樹脂フィルムを好適に用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、具体的には、HDPEフィルム(高密度ポリエチレン)及びOPPフィルム(二軸延伸成形ポリプロピレン)などから選択したものを好適に用いることができる。また、後述する耐貫通型防草シートの裏面層55と同様のものを用いることができる。
【0049】
図4(a)に示した改質アスファルト系防草シートの構造の一例は、表面層51、改質アスファルト層52、基材層53、改質アスファルト層54及び裏面層55をこの順番で有する構造であるが、これらの層の全てを含む必要はなく、また、さらなる層を含むこともできる。
【0050】
本発明の防草構造体1に含まれる防草シート本体10として、改質アスファルト系防草シートの1種である、後述する耐貫通型防草シートを用いることが特に好ましい。
【0051】
上述した本発明の施工方法によって、優れた防草構造体1の施工を容易に行うことができ、得られた防草構造体1は、長期に渡って良好な防草効果を発揮して、良好な景観形成に寄与できる。
【0052】
また、本発明の防草構造体1に含まれる防草シート10として、後述する耐貫通型防草シートを用いることが特に好ましい。
【0053】
防草シート10の寸法は、防草区域の寸法やその他の施工条件によって、適宜選択することができる。例えば、図1(b)に示す例においては、複数の防草シート10が、一つの防草シート10の一方の側端部である防草シート重ね合わせ融着部17にて、隣接する防草シート10の他方の側端部11と接続された構造となっている。このように、適宜選択した寸法の複数の防草シート10の防草シート重ね合わせ融着部17を、加熱融着法又はテープ接着法により張り合わせて用いることにより、本発明の防草構造体1を任意の寸法の防草区域に設置することができる。
【0054】
本発明の防草構造体1は、道路、線路、河川、公園及び造林園など並びにこれらの周辺の地面、表面及び法面など、どのような場所にも用いることができる。また、本発明の防草構造体1は、舗装面やU字孔などの既設構造物に隣接した防草区域に設置することができる。また、本発明の防草構造体1を、特に、法面に設置する場合には、美観の向上等に対する寄与する効果が大きいため、好ましい。このような法面は、道路法面、遊歩道法面及び鉄道法面から選ばれるいずれかの法面であることが好ましい。
【0055】
<耐貫通型防草シート>
次に、本発明の防草構造体1に用いることが特に好ましいに防草シートついて説明する。本明細書及び特許請求の範囲では、ここで説明する防草シートのことを「耐貫通型防草シート」という。耐貫通型防草シートは、硬く鋭い雑草の芽に対する貫通防止性に優れるため、本発明の防草構造体1に用いることが特に好ましい。本発明の防草構造体1の防草シートとして耐貫通型防草シート本体を用いることにより、際立った防草性能と優れた耐久性とを併せ持った防草構造体1及びその施工方法を得ることができる。
【0056】
<耐貫通型防草シートの効果>
耐貫通型防草シートにより、道路、線路、河川、公園及び造林園など並びにこれらの周辺などの地面、表面、特に法面での草の成育を防止ための、遮光性を有し、耐候性、機械的特性、不透水性に優れ、さらに硬く鋭い雑草の芽の防草シートに対する貫通防止性に優れる防草シートを得ることができる。
【0057】
<耐貫通型防草シートの態様>
耐貫通型防草シートは、図4(a)に示したように、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む表面層51、改質アスファルト層52、基材層53、改質アスファルト層54及び合成樹脂又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む裏面層55の少なくとも5層をこの順で積層した耐貫通型防草シートである。基材層53が、織布、編み布及び不織布からなる群より選ばれる少なくとも一つである基材Aと、スクリムを有する基材Bとを含む。基材Aの織布、編み布及び不織布が、芯部と鞘部とを有する芯鞘構造の繊維を含む。芯部が融点200℃以上の繊維及び鞘部が融点200℃以上の樹脂である。裏面層55の合成樹脂が硬質合成樹脂である耐貫通型防草シートである。
【0058】
耐貫通型防草シートの好ましい態様を以下に示す。耐貫通型防草シートでは、これらの態様を適宜組み合わせることができる。
(1)裏面層55の硬質合成樹脂が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル及びポリハロゲン化ポリビニルからなる群より選択される少なくとも一つの合成樹脂である。
(2)裏面層55が、厚さ10〜50μmの二軸延伸成形ポリプロピレンフィルムである。
(3)基材層53が、基材Aと、基材Bと、基材Aとをこの順に積層し、接着された、若しくは熱融着された三層構造を有する。
(4)芯部と鞘部とが、熱融着されている。
(5)基材Bが、複数の互いに平行な略等間隔の高強度繊維の繊維束からなる組を2組以上有し、異なった組の繊維束は、略等角度で互いに交差しあうスクリムである。
(6)基材Aと、基材Bとの接触部の少なくとも一部が、融点200℃以上の樹脂及び/又は200℃で熱分解しない接着剤により接着されている、若しくは熱融着されている。
(7)基材層53が、75〜500g/mの目付量を有する。
(8)表面層51が、天然スレート、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の、扁平状の無機質粒子を含む。
【0059】
<表面層51>
表面層51は、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む層である。表面層51は、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂からなる層であることが好ましい。表面層51に用いられる無機質粒子としては、天然スレート砂、マイカ及びタルクなどの鉱物質の扁平状無機質粒子を用いることができる。無機質粒子は、一種類又は複数種を組み合わせて用いることができる。耐貫通型防草シートでは、表面層51に扁平状の無機質粒子を用いることによって、耐候性塗料の塗着に頼ることなく長期供用においても耐貫通型防草シート全面が剥離することなく、変色や退色も小さく、耐貫通型防草シートの施工直後の状態を維持することができる。
【0060】
さらに、耐貫通型防草シートは、扁平状の無機質粒子と改質アスファルトコンパウンドとが積層された構造を有していることから、一般的な防草シートと比較し、ポイ捨てされたタバコによる穴あき等の重大な損傷が生じにくいという効果を奏する。
【0061】
無機質粒子の粒子径は、使用上問題ないものであればどのようなものでもよく、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.3〜8mm、さらに好ましくは0.5〜6mm、特に好ましくは1〜5mmの範囲が好ましい。なお、「粒子径」とは、無機質粒子が扁平状等の場合には、無機質粒子の任意の二点を結ぶ直線のうち、最も長いものの長さのことをいうものとする。
【0062】
無機質粒子が扁平状等の場合に、無機質粒子の任意の二点を結ぶ直線のうち最も長いものの長さをX、この直線に直交する無機質粒子の任意の二点を結ぶ直線のうち最も長いものの長さをY、扁平状の無機質粒子の最も厚い部分の厚さをZとすると、Y/Xの値が好ましくは0.2〜1の範囲であり、より好ましくは0.3〜0.9の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜0.8の範囲のものを好適に使用できる。また、Z/Xの値は好ましくは0.002〜0.4の範囲であり、より好ましくは0.01〜0.2の範囲であり、さらに好ましくは0.02〜0.1の範囲のものを好適に使用できる。
【0063】
表面層51において、耐貫通型防草シート表面1m当たりの無機質粒子量は、好ましくは100〜2000g/m、より好ましくは200〜1500g/m、さらに好ましくは400〜1200g/mの範囲が好ましい。
【0064】
無機質粒子は、必要に応じて撥水剤、塗料、顔料、増粘剤、耐光剤及び耐候剤などから選択される1種以上を添加、吹付け、塗布又は含浸したものを用いることができる。
【0065】
表面層51において、無機質粒子を含有する合成樹脂は、改質アスファルト層52に例えば貼り合わせ、塗布、吹付け及び含浸などの方法により、塗膜、シート又はフィルムとして用いることができる。無機質粒子を含有する合成樹脂は、無機質粒子及び合成樹脂塗料を含むものを用いることができる。無機質粒子を含有する合成樹脂は、合成樹脂塗料100重量部に対し、無機質粒子3〜250重量部、さらに5〜200重量部、特に10〜180重量部を配合したものを用いることが好ましい。無機質粒子を含有する合成樹脂は、必要に応じて撥水剤、顔料、増粘剤、耐光剤及び耐候剤などから選択される1種以上を添加することが好ましい。
【0066】
表面層51において、合成樹脂に含まれる無機質粒子の量は、耐貫通型防草シート表面1m当たりの無機質粒子量が、好ましくは100〜2000g/m、より好ましくは200〜1500g/m、さらに好ましくは400〜1200g/mの範囲となることが好ましい。
【0067】
表面層51の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸誘導体などのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体などの主鎖に2重結合を2以上有するオレフィン重合体、ビニル重合体及び主鎖に2重結合を2以上有するオレフィンと主鎖に2重結合を1つ有するオレフィンとの共重合体などから選択される1種以上を用いることができる。合成樹脂としては耐候性の優れたものを使用することが好ましい。合成樹脂としては耐光性の優れたものを使用することが好ましい。合成樹脂としては柔軟性の優れたものを使用することが好ましい。
【0068】
表面層51において、合成樹脂塗料としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体などから選択される1種以上を用いることができる。合成樹脂塗料としては耐候性の優れたものを使用することが好ましい。合成樹脂塗料としては柔軟性の優れたものを使用することが好ましい。特に、合成樹脂塗料としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選択されるモノマーの少なくとも1種の重合体、又はモノマーの少なくとも1種とエチレンなどのα−オレフィンやスチレンなどのほかのビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0069】
<改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルト>
改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトとしては、アスファルト及びポリマーを含むもの、アスファルト、ポリマー及び無機充填材の3成分を含むものなどを用いることができる。改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトとしては、アスファルト100重量部に対し、ポリマー10〜40重量部、及び無機充填材0〜20重量部を含むものを用いることが好ましい。
【0070】
改質アスファルトは、アスファルト及びポリマーを含むもの、アスファルト、ポリマー及び無機充填材の3成分を含むものなどを120〜200℃で3〜30時間加熱混合して調製したものを用いることが、防水・防湿性、伸縮性などに優れているために好ましい。
【0071】
改質アスファルトには、以上述べた成分のほかに、プロセスオイル、ワセリン、セレシン、石油樹脂など、一般に合成樹脂やゴムの配合で用いられる撥水剤、顔料、増粘剤、耐光剤、耐候剤などの無機や有機の配合剤を添加してもよい。
【0072】
改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトとしては、天然アスファルトやアスファルタイトなど天然に産するもの、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、カットバックアスファルト等の石油アスファルト、又はこれらのアスファルトの混合物等が好ましい。
【0073】
改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトにおいて、ポリマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、天然ゴムと合成ゴムとの混合物、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸誘導体との共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル及びスチレンとブタジエンとの重合体(例えば、SBSなど、SBRなど)等から選択される1種以上を使用することができる。特にSBSなどのゴム系が好適である。
【0074】
改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトにおいて、無機充填材としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、クレー、カーボンブラック、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土及びシリカ等の粒子状無機充填材並びに石綿及びガラス繊維などの繊維状無機充填材から選択される1種以上を用いることができる。
【0075】
改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54の改質アスファルトは、針入度が、好ましくは10dmm〜200dmmの範囲、さらに好ましくは15dmm〜100dmmの範囲、より好ましくは20dmm〜50dmmの範囲、特に好ましくは25dmm〜35dmmの範囲が柔軟性に優れるために好ましい。
【0076】
耐貫通型防草シートでは、改質アスファルト層52及び改質アスファルト層54として、上記組成の改質アスファルトを用いることにより、特に法面に配置した場合には、法面上部に不透水性に優れた層を形成することができる。そのため、雑草の生育に不可欠な水分を遮断できるのみならず、法面が盛土で構築されている場合には、法面上部(法肩)からの雨水の浸透に伴う法面自体の帯水を効果的に防止することにより、集中豪雨などに伴う法面地盤の崩壊を回避することができる。
【0077】
本発明に用いる防草シートの引裂強度は、好ましくは50N以上、より好ましくは70N以上、さらに好ましくは90N/cm以上、特に好ましくは110N/cm以上であることが好ましい。「引裂強度」とは、JIS・A6013に準拠した測定値である。防草シートが上記範囲の引裂強度を有することにより、防草シートの製造過程では良好な連続生産性が得られ、防草シートの施工過程では優れた取扱性が得られ、施工後の供用においては優れた耐久性を得ることができる。また、防草シートの引裂強度が前記範囲であれば、防草シートの端部を、針状器具を用いて固定した場合にも、固定箇所(応力が集中する箇所)の耐久性を充分に確保することができる。
【0078】
本発明に用いる防草シートは、表面層51から裏面層55までの5層全体の厚みが、好ましくは1mm〜10mmの範囲、より好ましくは1.5mm〜8mmの範囲、さらに好ましくは2mm〜6mmの範囲、特に好ましくは3mm〜5mmの範囲であることが、施工時の取り扱い易さや、隣り合う防草シートの熱融着部分の品質を充分に安定して確保できることから好ましい。
【0079】
本発明に用いる防草シートは、引張強度の縦方向と横方向との比が、好ましくは0.60〜1.60の範囲、より好ましくは0.72〜1.40の範囲、さらに好ましくは0.74〜1.35の範囲、特に好ましくは0.75〜1.30の範囲であることが、引張強度や引裂強度などの物性がシートの方向性に依存せず、安定した耐久性が得られることから好ましい。
【0080】
本発明に用いる防草シートは、引裂強度の縦方向と横方向との比が、好ましくは0.50〜2.00の範囲、より好ましくは0.80〜1.20の範囲、さらに好ましくは0.83〜1.18の範囲、特に好ましくは0.86〜1.16の範囲であることが、引張強度や引裂強度などの物性がシートの方向性に依存せず、安定した耐久性が得られることから好ましい。
【0081】
機械的強度の一例として、裏面層55として厚さ20μmの二軸延伸成形ポリプロピレンフィルム及び目付量155g/mの基材層を用い、全体の厚さを3mmとした耐貫通型防草シートの場合には、引張強度110〜190N/cm程度、引張伸び率50〜70%程度、引裂強度85〜140N/cm程度の値を得ることできる。
【0082】
以上述べたように、耐貫通型防草シートでは、織布、編み布及び不織布から選ばれる少なくとも一つである基材Aと、スクリムを有する基材Bとを含む基材層を用い、さらに裏面層に特定の樹脂フィルムを選択して用いるため、引裂強度及び引張強度に優れ、寸法安定性が優れる耐貫通型防草シートを得ることができる。また、耐貫通型防草シートを用いれば、道路、線路、河川、公園及び造林園など並びにこれらの周辺などの地面、表面、特に法面での草の成育を防止する遮光性と、非透水性とを有するとともに、集中豪雨などによる法面の帯水を防止でき、特に、硬く鋭い雑草の芽の防草シートに対する貫通防止性に優れる防草構造体1を得ることができる。
【0083】
従って本実施形態の施工方法は、盛土9における法面30の区域に、アスファルト系防草シート10に基づいて形成された防草構造体1の端部13を固定する施工方法であって、法面30の区域または法肩区域または法尻区域に、施工されるアスファルト系防草シート10の少なくとも一方の端部13に沿うように掘削された溝31を形成する第1工程と、アスファルト系防草シート10の端部13を溝31の内部に配置する第2工程と、溝31の上のアスファルト系防草シート10の端部13の上に、少なくとも植物の種子か或いは植生状態の土壌を含む植物の生育が可能な緑化資材40を配置する第3工程と、育成する植物の根44をアスファルト系防草シート10の表面層51に接するよりも長く成長させることで、植物の根44を防草シート10のアスファルト系材料の表面層52と一体化させる第4工程を有する防草構造体の施工方法である。
この施工方法により、防草シート10の端部13を溝31に配置し、その上に緑化資材40を配置することで、法面30に不要な盛り上がりを形成せずに、緑化資材40の植物の根44により防草シート10の端部13を固定でき、降雨等による防草シート10の端部13における土の流出を防止し、端部13が露出して風がシート下側に入ったり、端部13が捲れることを防止できる。緑化資材40としては、植生シート、植生マット等の板状の形態と、吹きつけの場合の資材が溜まる形態、既に植生状態の土壌を含む。
【0084】
また、本実施形態の施工方法は、緑化資材40を配置する第3工程では、芝の種子を緑化資材40と共に配置するようにしてもよい。
この施工方法により、種子を芝に特定することで、土が流れず、冬でも根が枯れず、宿根性で、背が低いという法面30に適した緑化を実施できる。
【0085】
また、本実施形態の施工方法は、植物の根44をアスファルト系材料の表面層52と一体化させる第4工程では、1mm厚以上の厚みのアスファルト系材料の層52と植物の根44を一体化させるようにしてもよい。
この施工方法により、1mm厚以上のアスファルト層52と植物の根44を一体化させることで、両者を強固に一体化させることができ、土の流出を防ぎ、防草シート10の端部13の露出や捲れを防止できる。
【0086】
また、本実施形態の施工方法は、防草シート10の端部13を溝31に配置する第2工程では、少なくとも表面側にアスファルト系材料の層として改質アスファルト層52を有する防草シート10を用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シート10の表面に改質アスファルト層52を形成することで、緑化資材40の植物の根44が改質アスファルト層52の内部に入り込み、固定され一体化される。これにより、緑化資材40と防草シート10の間の土壌や周辺の土壌も植物の根により固定されるので、防草シート10の固定をさらに強固にできる。
【0087】
また、本実施形態の施工方法は、防草シート10の端部13を溝31に配置する第2工程では、最表面に凹凸を形成した表面層51を有する防草シート10を用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シート10の表面に凹凸を設けることで、緑化資材40の植物の根44が絡み易くなって防草シート10の固定が容易になり、且つ、凹凸により接触面積が増加して摩擦も増加し、係合効果も得られるので固定を強固にできる。
【0088】
また、本実施形態の施工方法は、防草シート10の端部13を溝31に配置する第2工程では、凹凸を形成した表面層51として、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む表面層を有する防草シート10を用いるようにしてもよい。
この施工方法により、防草シート10の表面層51の凹凸に無機質粒子を用いることで、植物の根が絡みやすく、凹凸量が大きい凹凸を容易に形成することができる。
【0089】
また、本実施形態の施工方法は、緑化資材40を配置する第3工程では、緑化資材40に植物の生育を促進するための肥料を含ませるようにしてもよい。
この施工方法により、緑化資材40に肥料を含むことで、植物の生育が促進され、早期に植物の根44により防草シート10の表面層51を固定することができる。施肥の形態としては、緑化資材中に混入させる方法、形態保持用のネット等の一部に肥料帯を設ける方法、形態保持用のネット又はシートの一部に肥料袋を設ける方法、形態保持用のネット又はシート自体が生分解性である場合にそれ自体に肥料成分を含ませる方法が考えられる。
【0090】
また、本実施形態の施工方法は、緑化資材40を配置する第3工程では、緑化資材40に土壌形成材料及び種子を含ませるようにしてもよい。
この施工方法により、緑化資材40に、例えば、各種の土、植物繊維、廃材や間伐材のチップ等を、植物の形成に好適な土壌形成材料として含ませ、さらに、芝等の根44の成長が早く、根44により防草シート10を固定しやすい植物の種子を含ませることで、防草シート10の固定を早期で容易且つ強固にできる。
【0091】
また、本実施形態の施工方法は、緑化資材40を配置する第3工程では、緑化資材40に形態を保持させるためのネット形状、シート形状又はマット形状を含む平面形状の高分子材料を含ませるようにしてもよい。緑化資材40としては、他に、加工紙や金属ネット等を含ませてもよい。
この施工方法により、緑化資材40にシート形状、マット形状、ネット形状等の平面形状の高分子材料(形態保持用)を含ませることで、緑化資材40の形態を安定させ、降雨等により資材が流出することを防いで、形態を保持することができる。
【0092】
また、本実施形態の施工方法は、緑化資材を配置する第3工程では、緑化資材40の高分子材料として生分解性の高分子材料を用いるようにしてもよい。
この施工方法により、高分子材料を生分解性にすることで、植物が生育して根44が防草シート10の表面を充分に固定した後は、緑化資材40の形態を安定させる必要は無くなるので環境保護に役立つ。さらに高分子材料のあった場所も根44で固定することができるので、防草シート10をより強固に固定できる
【0093】
また、本実施形態の施工方法は、防草シート10の端部13、又は、その端部13を端部上の緑化資材40と共に、釘状器具15を打設する工程を有するようにしてもよい。
この施工方法により、防草シート10の端部13、又は、その端部13を緑化資材40と共に針状器具15で打設することで、端部13を強固に固定でき、緑化資材40と共に端部13を固定する場合には、緑化資材40から根44が成長して防草シート10の端部13の表面を固定するまで、防草シート10の端部13を法面30上に固定することができる。
【0094】
また、本実施形態の防草構造体は、上記の何れかの施工方法により形成された防草構造体である。
【0095】
なお、本実施形態の施工方法では、盛土9の法面30に防草構造体を設ける場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らず、切土の法面に防草構造体を設ける場合にも適用することができる。
【0096】
このように本実施形態では、防草が必要な区域全体にわたって草の生育を防止し、特に防草シートを法面に敷設する場合に、法面上の凹凸を減らして美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる防草構造体及びその施工方法を得ることができる。
【0097】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、法肩から法面中腹にかけて防草構造体1を施工する場合の法面中腹側の防草シート10の下側端部13の施工方法について説明したが、第2実施形態では、法尻から法面中腹にかけて防草構造体1を施工する場合の法面中腹側の防草シート10の上側端部12の施工方法について説明する。
【0098】
上記した第1実施形態では法肩側を先に固定し、その後、法面中腹側の防草シート10の下側端部13を施工したが、図5に示した第2実施形態の防草構造体1の場合は、法尻側を先に固定し、その後、法面中腹側の防草シート10の上側端部12を施工する。
【0099】
固定方法については、上下の無機が逆になっている点を除けば、第1実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0100】
このように本実施形態でも、第1実施形態と同様に、防草が必要な区域全体にわたって草の生育を防止し、特に防草シートを法面に敷設する場合に、法面上の凹凸を減らして美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる防草構造体及びその施工方法を得ることができる。
【0101】
<第3実施形態>
上記した第1実施形態では、法肩から法面中腹にかけて防草構造体1を施工する場合の法面中腹側の防草シート10の下側端部13の施工方法について説明し、上記した第2実施形態では、法尻から法面中腹にかけて防草構造体1を施工する場合の法面中腹側の防草シート10の上側端部12の施工方法について説明したが、第3実施形態では、法肩側と法尻側には施工せず、法面中腹のみに防草構造体1を施工する場合の防草シート10の上側端部12と下側端部13の施工方法について説明する。
【0102】
図6に示した第3実施形態の防草構造体1の場合は、上記した第1実施形態と同様に法肩側を先に固定し、その後、法尻側の防草シート10の下側端部13を施工する。
【0103】
固定方法については、防草構造体1の上側の端部12については第2実施形態と同様であり、防草構造体1の下側の端部13については第1実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0104】
このように本実施形態でも、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、防草が必要な区域全体にわたって草の生育を防止し、特に防草シートを法面に敷設する場合に、法面上の凹凸を減らして美観を保った状態で、長期間にわたって確実に、防草シートの端部の固定を保つことができる防草構造体及びその施工方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 防草構造体、
9 盛土、
10 防草シート、
11 防草シート側端部(重ね代とは反対側の側端部)、
12 第一端部(法肩側端部)、
13 第二端部(法尻側端部)、
14 第一の釘状器具(ナイロンプラグ+ディスク)、
15 第二の釘状器具(L字ピン)、
17 重ね代(防草シート重ね合わせ融着部)、
30 法面、
31 溝、
32 埋め戻し部、
40 緑化資材、
42 葉、
44 根、
51 表面層(無機質粒子)、
52 改質アスファルト層、
53 基材層、
54 改質アスファルト層、
55 裏面層、
60 パッチシート、
61 パッチ開口部、
62 パッチ切断部、
71 パッチ開口部の開口部側1点71、
72 パッチシートの法尻側端部の1点72。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土または切土における法面区域に、アスファルト系防草シートに基づいて形成された防草構造体の端部を固定する施工方法であって、
法面区域または法肩区域または法尻区域に、施工されるアスファルト系防草シートの少なくとも一方の端部に沿うように掘削された溝を形成する第1工程と、
アスファルト系防草シートの前記端部を前記溝の内部に配置する第2工程と、
前記溝の上のアスファルト系防草シートの前記端部の上に、少なくとも植物の種子か或いは植生状態の土壌を含む植物の生育が可能な緑化資材を配置する第3工程と、
前記育成する植物の根を前記アスファルト系防草シートの表面層に接するよりも長く成長させることで、前記植物の根を前記防草シートのアスファルト系材料の表面層と一体化させる第4工程
を有する防草構造体の施工方法。
【請求項2】
前記緑化資材を配置する第3工程では、芝の種子を緑化資材と共に配置する
請求項1記載の防草構造体の施工方法。
【請求項3】
前記植物の根を前記アスファルト系材料の表面層と一体化させる第4工程では、1mm厚以上の厚みの前記アスファルト系材料の層と前記植物の根を一体化させる
請求項1又は2に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項4】
前記防草シートの端部を前記溝に配置する第2工程では、少なくとも表面側に前記アスファルト系材料の層として改質アスファルト層を有する防草シートを用いる
請求項1〜3の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項5】
前記防草シートの端部を前記溝に配置する第2工程では、最表面に凹凸を形成した表面層を有する防草シートを用いる
請求項1〜4の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項6】
前記防草シートの端部を前記溝に配置する第2工程では、前記凹凸を形成した表面層として、無機質粒子又は無機質粒子を含有する合成樹脂を含む表面層を有する防草シートを用いる
請求項1〜3の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項7】
前記緑化資材を配置する第3工程では、前記緑化資材に植物の生育を促進するための肥料を含ませる
請求項1〜6の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項8】
前記緑化資材を配置する第3工程では、前記緑化資材に土壌形成材料及び種子を含ませる
請求項1〜7の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項9】
前記緑化資材を配置する第3工程では、前記緑化資材に形態を保持させるためのネット形状、シート形状又はマット形状を含む平面形状の高分子材料を含ませる
請求項1〜8の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項10】
前記緑化資材を配置する第3工程では、前記緑化資材の高分子材料として生分解性の高分子材料を用いる
請求項9に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項11】
前記防草シートの前記端部、又は、前記端部を前記端部上の緑化資材と共に、釘状器具を打設する工程を有する
請求項1〜10の何れか1項に記載の防草構造体の施工方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項記載の施工方法により形成される、防草構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196159(P2011−196159A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67219(P2010−67219)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】