説明

防草緑化マットおよびその施工方法

【課題】育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草が発芽して生長することを抑止することで、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能な防草緑化マットおよびその施工方法を提供する。
【解決手段】防草緑化マット1は、幅が約0.6m〜約2m、長さが20m〜50m、厚みが3mm〜15mmに形成され、マット本体10に、平面視して円形状に形成された凸状部11と凹状部12とを規則的に点在させることで、断面凹凸状に形成されている。凸状部11の頭頂面11aと凹状部12の底面12aとに、貫通孔が育成孔11b,12bとして設けられている。防草緑化マット1は、マット本体10が断面凹凸状に形成されていることで、地面との隙間が凸状部11の下方に確保される。この隙間が通水路13となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草の種子が発芽して生長することを抑止することができる防草緑化マットおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛来する雑草の種子が発芽して生長することを抑止する従来の防草マットとしては、例えば、特許文献1〜4に記載されたものがある。
特許文献1には、断面がT字形の細長帯に形成され、歩道のアスファルト舗装と擁壁や縁石等、コンクリート等同士、コンクリート等とアスファルト舗装との境界に確保された隙間に、垂直方向の脚部を挿着する防草マットが記載されている。
【0003】
特許文献2には、側溝と舗装面との隙間や、縁石と舗装面との隙間に、二つ折りしたシートを挿入すると共に、シートの途中から一方または両方を折り曲げて広げ、舗装面などに接着させる舗装界面の防草構造が記載されている。
【0004】
特許文献3には、表層に不織布、中間層にビチューメン、下層に保護フィルムを有し、防草施工箇所に保護フィルムを剥離除去して使用するようにした防草マットが記載されている。
【0005】
特許文献4には、長繊維による多孔質不織布により形成され、表面に耐熱性合成樹脂が塗布され、かつ内部にも浸透させて防水性及び耐熱性が附与された被覆マットが記載されている。
【0006】
これらの従来の防草マットは、防草したい地面に敷設されることで、雑草の種子がその地面へ侵入することを防ぎ、太陽の光を遮断して雨水の流入等を少なくし、雑草が生えることを防止するものである。
【0007】
【特許文献1】特開平10−183555号公報
【特許文献2】特開2001−64931号公報
【特許文献3】特開平6−146230号公報
【特許文献4】特許第3704518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように地面を覆うことで雑草が発芽することを抑止する方法として、防草シートで覆う他に、モルタル吹き付け工法、張コンクリート工法、ブロック積工法や、ゴムシート工法などがある。しかし、これらの従来の工法は、施工するために大型の機械を必要とするので、施工および補修が容易でない。また、コンクリート、ブロックやゴムシートが、露出した状態となるので、環境や景観に即した工法とはいえない。
【0009】
また、これらの従来の工法は、特許文献1〜4に記載の従来の防草マットで地面を覆う場合と同じように、地面を完全に外気から遮断してしまうので、飛来する雑草の種子が発芽することを抑止できるが、地面上や地中に生息する微生物や昆虫などの動物や植物を死滅させてしまい、元の土壌の状態に復元するまでには何年もの歳月を要してしまう。
【0010】
ところで、道路、林道、河川、治山、宅地造成などの法面や平地には、自然景観の連続性や、法面強度の補強増加を目的として、客土吹付工、厚層基材吹付工や、張芝工などにより種子や芝が植え付けられる。そして、時間の経過と共に植物が生長していくが、雑草の種子が飛来して発芽すると在来の植物を駆逐し、やがては雑草が生い茂るようになってしまう。しかし、この雑草の発芽を抑止するために、上記のような従来の防草マットや、従来の工法を用いては、法面や平地に植え付けられた植物の生長を阻害してしまう。これでは、育成を希望する植物を植え付けても生長は望めない。
【0011】
そこで本発明は、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草が発芽して生長することを抑止することで、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能な防草緑化マットおよびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の防草緑化マットは、地面に植え付けられることで生長する植物が通過可能な複数の貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の防草緑化マットには、複数の貫通孔が育成孔としてマット本体に設けられている。この育成孔は、地面に植え付けられることで生長する植物が通過可能な程度の大きさを有している。従って、育成を希望する植物が生長して延びる際に、本発明の防草緑化マットで地面を覆っていても、植物は育成孔を通過するので、植物の生長を阻害しない。また、植物が生長して育成孔を通過することで、飛来した雑草の種子が育成孔から侵入できない状態とすることができる。従って、雑草の種子が飛来してきても、本発明の防草緑化マット上に留まらせるだけで発芽することを抑止することができる。また、本発明の防草緑化マットには、地面とマット本体との間に通水路が形成されているので、地面上を流れる水や地中からの湧き水を、マット本体の外側まで通水路を通じて排水することができる。従って、本発明の防草緑化マットで地面を覆っていても、マット本体と地面との間に不要な水を滞留させることなく排水することができるので、育成を希望する植物を好環境の元で生長させることができる。
【0014】
前記通水路は、前記マット本体を連続した断面凹凸状に形成することで、前記地面との間にできる隙間であるのが望ましい。マット本体を連続した断面凹凸状に形成することで通水路を形成すれば、マット本体と地面との隙間を確保するためにマット本体に脚部などを設ける必要がない。
【0015】
前記育成孔は、少なくとも前記断面凹凸状に形成されたマット本体の頭頂面に設けられているのが望ましい。育成孔が断面凹凸状に形成されたマット本体の頭頂面に設けられていることで、地面から延びる植物を、凸状部の内側面に案内して頭頂面の育成孔から外側へ生長させることができる。
【0016】
前記マット本体に形成された凸状部が、直線状の稜線を有していると、本発明の防草緑化マットを法面に敷設するときには、直線状の稜線を有する凸状部を、法面の傾斜方向に合わせる。そうすることで、通水路が形成される方向を法面の傾斜方向と合わせることができるので、排水性を高めることができる。
【0017】
前記マット本体が、光透過性部材で形成されていると、育成孔だけでなく全体で光を透過させることができるので、育成を希望する植物として芝付けした場合には、本発明の防草緑化マットで芝を覆っても芝の光合成を阻害しない。
【0018】
本発明の防草緑化マットの施工方法は、育成を希望する植物を地面に植え付ける工程と、前記植物が生長して通過するのに可能な複数の貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成された防草緑化マットを、敷設する工程と、前記防草緑化マットをアンカーで固定する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の防草緑化マットの施工方法は、防草緑化マットを育成が希望される植物が植え付けられた地面に敷設し、アンカーで固定することで、容易に飛来してくる雑草の種子の発芽を抑止でき、育成を希望する植物を生長させることができる。
また、本発明の防草緑化マットの施工方法は、育成を希望する植物が生長して通過するのに可能な貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成された防草緑化マットを、敷設する工程と、前記防草緑化マットをアンカーで固定する工程と、前記植物を前記育成孔が形成された位置の地面に植え付ける工程と、前記植物の幹を中心として放射状に前記マット本体に切れ目を入れる工程とを含むことを特徴とする。
育成を希望する植物が木本類である場合には、植物が生長することで幹が太くなる。そこで、幹を中心として放射状にマット本体に切れ目を入れることで、幹が太くなるに従って切れ目がめくり上がり、育成孔全体が大きくなるので、木本類の植物の生長を本発明の防草緑化マットが阻害することがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の防草緑化マットは、育成を希望する植物が植え付けられた地面に敷設されていても、生長した植物が育成孔を通過すると共に、通水路を通じて水を排水させることができることで、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草の発芽を抑止することができるので、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る防草緑化マットを図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【0021】
図1(A)および同図(B)に示すように、本実施の形態1に係る防草緑化マット1は、幅が約0.6m〜約2m、長さが20m〜50m、厚みが3mm〜15mmに形成されている。防草緑化マット1の幅や長さは、敷設される場所に応じて適宜決定することができる。また、厚みは、施工される地盤の強度や植え付けられる植物に応じて決定することができる。現場にて、防草緑化マット1を連続して敷設する際に、幅方向や長さ方向に余りが発生した場合には、余った部分を切除することで調整することが可能である。
【0022】
防草緑化マット1は、マット本体10に、平面視して円形状に形成された凸状部11と凹状部12とを規則的に点在させることで、断面凹凸状に形成されている。
凸状部11と凹状部12とは、縦列および横列に、配置が交互となるように形成されている。本実施の形態1では、約10mmごとに凸状部11と凹状部12とが配置されている。なお、この防草緑化マット1は、凸状部11と凹状部12とがそれぞれ同じ直径に形成されていることで表裏があるものではないが、便宜上、地面に載置したときに、突起となる方を凸状部11、凹んだ方を凹状部12と称している。従って、防草緑化マット1を裏返せば、凸状部11は凹状部12になり、凹状部12は凸状部11となる。
【0023】
凸状部11の頭頂面11aと凹状部12の底面12aとに、貫通孔が育成孔11b,12bとして設けられている。本実施の形態1では、育成孔11b,12bが、円形状に形成されているが、凸状部の頭頂部や、凹状部の底面部の形状に合わせて、三角形状、正方形状、長方形状、菱形状、他の多角形状や、異形状としてもよい。
【0024】
この育成孔11b,12bは、本実施の形態1では直径が約3mmに形成されているが、育成が希望される植物の太さに応じて決めることができる。つまり、植物が生長して通過可能な程度の大きさとするのが望ましい。また、育成孔11b,12bの数は、全ての凸状部11の頭頂面11aと、全ての凹状部12の底面12aとに設けられていることで、1m2当たり約10000ほど設けられている。しかし、育成孔11b,12bは、播種される草の種子の発生期待本数(希望成立本数)に合わせれば十分である。従って、種子の種類に応じて、育成孔11b,12bを設ける凸状部11の頭頂面11aまたは凹状部12の底面12aを選択して、合計で1m2当たり450〜1000となるようにしてもよい。植え付けられる植物が芝の場合には、生長する密度が高いため、より数多くの育成孔11b,12bを設けるのが望ましい。
【0025】
防草緑化マット1は、不透水性で、かつ光透過性を有すると共に耐侯性に優れ、強度を確保しつつ、折り曲げが可能である透明なポリエチレンで形成されている。なお、防草緑化マット1をポリエチレンで形成する以外に、不透水性であり、かつ耐候性に優れていればゴム製としたり、塩化ビニールなどの樹脂製としたりすることが可能である。防草緑化マット1を光透過性部材としたことで、張芝工に採用すると芝に光合成を行わせ生長を促すことができるので適しているが、この防草緑化マット1は全ての緑化工法に採用することが可能である。
【0026】
防草緑化マット1は、マット本体10が断面凹凸状に形成されていることで、地面との隙間が凸状部11の下方に確保される。この隙間が通水路13となる。
【0027】
従って、地面に植え付けられた種子や、張芝などの植物は、通水路13を流れる水や、育成孔11b,12bからの水と、マット本体10を透過した光や、育成孔11b,12bを通過した光により光合成しながら生長して、育成孔11b,12bを通過し、大きく延びることができる。育成孔11b,12bを通過して生長する植物は、育成孔11b,12b全体を塞ぐように大きくなっていくので、飛来する雑草の種子が育成孔11b,12bから地面へ侵入してしまうことを抑止する。従って、飛来する雑草の種子は、防草緑化マット1上に落下して地面に侵入することができないので、育成が望まれない雑草の発芽を抑止することができる。
【0028】
凹状部12の下方に位置する植物は、凹状部12の育成孔12bを通過するように生長するが、育成孔12bの位置から少しずれた位置から生長すると、心配される程度ではないが育成孔12bの縁部に生長が邪魔されることがある。しかし、凸状部11の下方に位置する植物は、凸状部11の頭頂面11aの真下の位置から生長していなくても、凸状部11の内側面11cに案内されて頭頂面11aの育成孔11bから外側へ生長させることができる。
【0029】
このように、防草緑化マット1で地面を覆っていても、マット本体10と地面との間に不要な水を滞留させることなく排水することができるので、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草の発芽を抑止することができる。よって、防草緑化マット1は、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能である。
【0030】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る防草緑化マットを図2に基づいて説明する。図2は、本発明の実施の形態2に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【0031】
図2(A)および同図(B)に示すように、本発明の実施の形態2に係る防草緑化マット2は、幅が約0.6m〜約2m、長さが20m〜50m、厚みが3mm〜15mmに形成されている。防草緑化マット2の幅、長さ、厚みについては、実施の形態1に係る防草緑化マット1と同様に、適宜、決定することが可能である。
【0032】
防草緑化マット2は、マット本体20の凸状部21の断面が円弧状に形成されていることで直線状の稜線L1(点線で示される部分)が形成され、凸状部21と凹状部22とが交互に配置されていることで断面凹凸状の波型となっている。
この凸状部21の頭頂面21a同士、凹状部22の底面22a同士の間隔は、それぞれ約10mmに形成されている。つまり、防草緑化マット2は、凸状部21と凹状部22とがそれぞれ同じ幅に形成されていることで表裏があるものではないが、便宜上、地面に載置したときに、突起となる方を凸状部21、凹んだ方を凹状部22と称している。従って、防草緑化マット2を裏返せば、凸状部21は凹状部22になり、凹状部22は凸状部21となる。
【0033】
防草緑化マット2は、凸状部21の頭頂面21aと、凹状部22の底面22aと、凸状部21および凹状部22を繋ぐ傾斜面23とに、それぞれ列状に貫通孔が育成孔21b,22b,23aとして設けられている。
【0034】
防草緑化マット2は、不透水性で、かつ光不透過性を有している。防草緑化マット2を光不透過性としたことで、地面に種子を吹き付ける吹付工に適しているが、全ての緑化工法に適用することが可能である。なお、本実施の形態2に係る防草緑化マット2では、ゴムで形成されているが、不透水性であり、かつ耐候性に優れていればポリエチレン製や、他の樹脂製としたりすることが可能である。
【0035】
防草緑化マット2は、マット本体20が断面凹凸状の波型に形成されていることで、地面との隙間が凸状部21の下方に確保される。この隙間が通水路24となる。
【0036】
従って、地面に植え付けられた種子や、張芝などの植物は、通水路24を流れる水や、それぞれの育成孔21b,22b,23aからの水と、育成孔21b,22b,23aを通過した光により生長して、育成孔21b,22b,23aを通過して大きく延びることができる。
【0037】
育成孔21b,22b,23aを通過して生長する植物は、育成孔21b,22b,23a全体を塞ぐように大きくなっていくので、飛来する雑草の種子が育成孔21b,22b,23aから地面へ侵入してしまうことを抑止する。従って、飛来する雑草の種子は、防草緑化マット2上に落下して地面に侵入することができないので、育成が望まれない雑草の発芽を抑止することができる。
【0038】
凹状部22の下方に位置する植物は、凹状部22の育成孔22bを通過するように生長するが、育成孔22bの位置から少しずれた位置から生長すると、心配される程度ではないが育成孔22bの縁部に生長が邪魔されることがある。しかし、凸状部21の下方に位置する植物は、凸状部21の頭頂面21aの真下の位置から生長していなくても、凸状部21の内側面21cに案内されて頭頂面21aの育成孔21bから外側へ生長させることができる。
【0039】
このように、実施の形態2においても、防草緑化マット2は、マット本体20と地面との間に不要な水を滞留させることなく排水することができるので、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草の発芽を抑止することができる。よって、防草緑化マット2は、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能である。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る防草緑化マット3を図3に基づいて説明する。図3は、本発明の実施の形態3に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【0041】
図3(A)および同図(B)に示すように、本発明の実施の形態3に係る防草緑化マット3は、幅が約0.6m〜約2m、長さが20m〜50m、厚みが3mm〜15mmに形成されている。防草緑化マット3の幅、長さ、厚みについては、実施の形態1,2に係る防草緑化マット1,2と同様に、適宜、決定することが可能である。
【0042】
この防草緑化マット3は、マット本体30の凸状部31が台形状に形成されていることで直線状の稜線L2が形成され、凸状部31と凹状部32とが交互に配置されていることで断面凹凸状に形成されている。防草緑化マット3は、凸状部31の幅が凹状部32の幅より広く形成されている。
【0043】
この防草緑化マット3は、凸状部31の平面部である頭頂面31aと、凹状部32の底面32aとに、貫通孔が育成孔31b,32bとして設けられている。この育成孔31b,32bに関しては、実施の形態1,2に係る育成孔11b,12b,21b,22b,23aと同様なので、詳細な説明は省略するが、数の調整は配置される間隔により決定される。
【0044】
防草緑化マット3は、不透水性で、かつ光不透過性を有している。防草緑化マット3を光不透過性としたことで、地面に種子を吹き付ける吹付工に適している。また、凸状部31の頭頂面31aが平面状に形成されていることで、道路に沿って形成される歩道など歩行者が通行する場所に適している。なお、本実施の形態2に係る防草緑化マット2では、ゴムで形成されているが、不透水性であり、かつ耐候性に優れていればポリエチレン製や、他の樹脂製としたりすることが可能である。
【0045】
防草緑化マット3は、マット本体30が凸状部が台形状に形成されていることで、地面との隙間が凸状部31の下方に確保される。この隙間が通水路33となる。
従って、地面に植え付けられた種子や、張芝は、通水路33を流れる水や、それぞれの育成孔31b,32bからの水と、育成孔31b,32bを通過した光により生長して、育成孔31b,32bを通過して大きく延びることができる。
【0046】
育成孔31b,32bを通過して生長する植物は、育成孔31b,32b全体を塞ぐように大きくなっていくので、飛来する雑草の種子が育成孔31b,32bから地面へ侵入してしまうことを抑止する。従って、飛来する雑草の種子は、防草緑化マット3上に落下して地面に侵入することができないので、育成が望まれない雑草の発芽を抑止することができる。
【0047】
凹状部32の下方に位置する植物は、凹状部32の育成孔32bを通過するように生長するが、育成孔32bの位置から少しずれた位置から生長すると、心配される程度ではないが育成孔32bの縁部に生長が邪魔されることがある。しかし、凸状部31の下方に位置する植物は、凸状部31の頭頂面31aの真下の位置から生長していなくても、凸状部31の内側面31cに案内されて頭頂面31aの育成孔31bから外側へ生長させることができる。
【0048】
このように、実施の形態3においても、防草緑化マット3は、マット本体30と地面との間に不要な水を滞留させることなく排水することができるので、育成を希望する植物の生長を阻害することなく、飛来して来る雑草の発芽を抑止することができる。よって、防草緑化マット3は、景観を向上させつつ、地面強度の補強増加を図ることが可能である。
【0049】
(防草緑化マットの施工方法)
以上のように構成された本発明の実施の形態1〜3に係る防草緑化マット1〜3の施工方法について図面に基づいて説明する。図4は、実施の形態に係る防草緑化マットを道路の法面および路肩へ敷設する方法を説明するための図である。図5は、実施の形態に係る防草緑化マットを道路下法面および平地へ敷設する方法を説明するための図である。図6は、花壇に敷設される防草緑化マットの部分平面図である。図7は、実施の形態に係る防草緑化マットをコンクリート枠内に敷設する方法を説明するための図である。
【0050】
図4に示すように、アスファルト舗装された道路51沿いには、縁石ブロック52と歩道53と側溝ブロック54とが設けられている。また、歩道53の反対側にも道路51を挟んで側溝ブロック54が設けられている。そして、道路51の両側には、切土や盛土による法面55,55が形成されている。
【0051】
まず、法面55および歩道53の雑草を除去し、整形清掃する。次に、法面55および歩道53に、客土吹付工、または厚層基材吹付工などにより育成基盤材を吹き付けて育成基盤を形成する。また、肥料袋付張芝工や、人工張芝工などにより、種子や肥料を内包した袋体や網体を敷設して育成基盤を形成する。
【0052】
次に、育成基盤が形成された法面55,55に、実施の形態1に係る防草緑化マット1を敷く。例えば、幅が2mの防草緑化マット1を、法面55,55の希望高さに合わせて複数枚を敷設する。その際には、防草緑化マット1の重ね幅を約5cm以上として順次隙間無く敷く。そして、防草緑化マット1の重ねた場所に、ステーブル用釘打機を使用して重ねた防草緑化マット1をステーブル(図示せず)で打ち抜くようにして、防草緑化マット1同士を接続すると共に地面に固定する。法面55,55の土壌硬度が高い場合には、ステーブルによる固定の代わりに、スクリングアンカー(図示せず)により防草緑化マット1を固定する。このスリングアンカーは、径が6mm〜10mm、長さ150mm〜300mm程度のものが採用できる。
【0053】
幅が2mの歩道53の場合には、実施の形態3に係る防草緑化マット3として、2m幅のものを準備し、幅方向に1枚敷き地面に固定する。道路51に沿って防草緑化マット1を敷設する際に、長さが不足すれば次の防草緑化マット1を約5cm程度、またはそれ以上重ねて固定していく。
【0054】
法面55に敷かれた防草緑化マット1全体、および歩道53に敷かれた防草緑化マット3全体を固定するためには、主固定部材として、径が16mm、長さが400mmの平頭スクリングアンカー56aと、補助固定部材として、径が13mm、長さが300mmの平頭スクリングアンカー56bを、図4に示すように併用する。
【0055】
このように、法面55に防草緑化マット1を敷設したり、歩道53に防草緑化マット3を敷設したりする場合には、予め育成基盤を形成した後に、防草緑化マット1,3を載置して平頭スクリングアンカー56a,56bで固定するだけで簡単に敷設することができる。
【0056】
なお、歩道53には実施の形態3に係る防草緑化マット3以外に、実施の形態1,2に係る防草緑化マット1,2としてもよい。しかし、歩道53に敷設された防草緑化マット3は、凸状部31の頭頂面が平面に形成されているので、歩行者が歩きやすいので、歩道53には、防草緑化マット3を敷設するのが望ましい。
【0057】
法面55に敷設される防草緑化マット1は、裏表、左右上下がないため、防草緑化マット1を配置する方向を気にすることなく、法面55に固定するだけで、法面55の法肩から流れ込む水や、または湧き水を、通水路13を通じて法尻方向へ流すことができる。従って、法面55は、防草緑化マット1に覆われていても、水が滞留して澱むことなく全体を潤った状態とすることができる。
【0058】
法面55に、実施の形態2または3に係る防草緑化マット2,3を敷設する場合には、凸状部21,31の稜線方向が法面55の傾斜方向と直交しないように配置するのが望ましく、一致するように配置するのが最も望ましい。そうすることで、効率よく通水路24,33に水が流れ、法尻方向へ流すことができる。
このようにして、法面55に防草緑化マット1〜3を敷設することが可能である。この施工方法によれば、図5に示す道路下法面57でも同様に施工することができる。
【0059】
次に、歩道と車道とを分離するための花壇に、実施の形態1に係る防草緑化マット1を設ける場合を、図5に基づいて説明する。
図5に示すように、歩道58と車道59とを分離するための花壇60に、実施の形態1に係る防草緑化マット1を敷設し、かつ大きく幹61が生長する木本類の植物62を植えたい場合には、まず、花壇60を整形清掃する。次に、防草緑化マット1を敷き、平頭スクリングアンカー56a,56aで固定する。そして、花壇60に固定した防草緑化マット1の所定の位置に、育成孔11b,12bとは別に、例えば、20cm〜1mの大きさのポット式の木本類の植物62の苗を植栽可能な程度の貫通孔を、図6に示すように、育成孔11dとして穿孔する。
【0060】
穿孔した育成孔11dの位置に、木本類の植物62を植栽し、育成孔を中心にして放射状に延びる切れ目11eを形成する。この切れ目11eは、防草緑化マット1が樹脂で形成されているためカッターなどで容易に形成することが可能である。
【0061】
このように防草緑化マット1を木本類の植物62が植栽される花壇60に敷設する場合でも、防草緑化マット1には切れ目11eが形成されていることで、幹61の太さに応じて切れ目11eがめくれ上がり育成孔11d全体の大きさが大きくなるので、木本類の植物62の生長を阻害することが防止できる。
【0062】
次に、法面の保護として設けられる現場打ちのコンクリート枠の枠内に、実施の形態1に係る防草緑化マット1を設ける場合を、図7に基づいて説明する。
図7に示すように、まず、法面に形成されたコンクリート枠70内を清掃する。そして、客土吹付工、または厚層基材吹付工などにより育成基盤材を吹き付けて育成基盤を形成する。また、肥料袋付張芝工や、人工張芝工などにより、種子や肥料を内包した袋体や網体を敷設して育成基盤を形成する。図7では、肥料袋付張芝工にて袋体71が載置された状態を示す。
【0063】
次に、育成基盤が形成されたコンクリート枠70に、実施の形態1に係る防草緑化マット1を敷く。そして、防草緑化マット1を平頭スクリングアンカー(図示せず)で固定する。このように法面に形成されたコンクリート枠70においても、防草緑化マット1を敷設することが可能である。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、防草緑化マットとして、マット本体と地面との間に通水路が確保できればよいので、平坦状のマット本体に、適宜、所定の形状の脚部を設けて、地面との隙間を確保するように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の防草緑化マットおよびその施工方法は、道路や河川に沿って丘、山や川岸を整形した切土法面、盛土法面、または道路下法面や、歩道、中央分離帯、送電鉄塔地、公園、街路樹、墓地などの傾斜面や平地のあらゆるところに適用することができる。特に、本発明は、景観を損ね、道路幅を狭くし、圧迫感を与え、視野を妨げ、事故や犯罪の発生を誘引する雑草類の侵入を防止し、除草などのメンテナンスを必要とせず、しかも育成を希望する植物だけを生長させたい場所に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る防草緑化マットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図4】実施の形態に係る防草緑化マットを道路の法面および路肩へ敷設する方法を説明するための図である。
【図5】実施の形態に係る防草緑化マットを道路下法面および平地へ敷設する方法を説明するための図である。
【図6】花壇に敷設される防草緑化マットの部分平面図である。
【図7】実施の形態に係る防草緑化マットをコンクリート枠内に敷設する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3 防草緑化マット
10,20,30 マット本体
11,21,31 凸状部
11a,21a,31a 頭頂面
11b,21b,31b 育成孔
11c,21c,31c 内側面
11d 育成孔
11e 切れ目
12,22,32 凹状部
12a,22a,32a 底面
12b,22b,32b 育成孔
13,24,33 通水路
23 傾斜面
23a 育成孔
51 道路
52 縁石ブロック
53 歩道
54 側溝ブロック
55 法面
56a,56b 平頭スクリングアンカー
57 道路下法面
58 歩道
59 車道
60 花壇
61 幹
62 木本類の植物
70 コンクリート枠
71 袋体
L1,L2 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に植え付けられることで生長する植物が通過可能な複数の貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、
前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成されていることを特徴とする防草緑化マット。
【請求項2】
前記通水路は、前記マット本体を連続した断面凹凸状に形成することで、前記地面との間にできる隙間である請求項1記載の防草緑化マット。
【請求項3】
前記育成孔は、少なくとも前記断面凹凸状に形成されたマット本体の頭頂面に設けられている請求項1または2記載の防草緑化マット。
【請求項4】
前記マット本体に形成された凸状部は、直線状の稜線を有する請求項2または3記載の防草緑化マット。
【請求項5】
前記マット本体に形成された凸状部は、点在するように配置されている請求項2または3記載の防草緑化マット。
【請求項6】
前記マット本体は、光透過性部材で形成されている請求項1から5のいずれかの項に記載の防草緑化マット
【請求項7】
育成を希望する植物を地面に植え付ける工程と、
前記植物が生長して通過するのに可能な複数の貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成された防草緑化マットを、敷設する工程と、
前記防草緑化マットをアンカーで固定する工程とを含む防草緑化マットの施工方法。
【請求項8】
育成を希望する植物が生長して通過するのに可能な貫通孔が、育成孔としてマット本体に設けられ、前記地面と前記マット本体との間に通水路が形成された防草緑化マットを、敷設する工程と、
前記防草緑化マットをアンカーで固定する工程と、
前記植物を前記育成孔が形成された位置の地面に植え付ける工程と、
前記植物の幹を中心として放射状に前記マット本体に切れ目を入れる工程とを含む防草緑化マットの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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