説明

防蟻シートおよびそれを用いた防蟻構造

【課題】 化学薬剤を使用することのない安全性の高い構成内容で、長期間にわたり優れた防蟻効果が維持できる防蟻シートを提供すること。
【解決手段】 ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛およびステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成る。
【効果】 化学薬剤を使用しないので、土壌汚染による公害や薬剤揮発による健康障害の原因とはならず、さらに薬剤散布も要しないから、作業者の労働環境も健全であって安全性も高く長期間にわたり優れた防蟻効果が維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防蟻シートおよびそれを用いた防蟻構造に関する。さらに詳しくは、金属がシロアリの分泌する蟻酸に接触したときに生ずる腐食電流と金属イオンによるシロアリ放逐作用を巧みに利用して成る建築物におけるシロアリ防除に有効な防蟻シート、および建築物においてシロアリの侵入を確実に防止することができる防蟻構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物におけるシロアリ被害に対する防止策としては、シロアリに対する殺虫、防虫又は忌避作用を有する薬剤を建築物の床下に散布する方法や、前記薬剤を不織布、紙、合成樹脂シート等に塗布や練りこみなどによって配合したシート材を、床パネルの下面に貼り付けたり、建築物の基礎周辺に敷き詰める等の方法が一般的に行なわれている。
【0003】
しかしながら、シロアリに対する殺虫、防虫又は忌避作用を有する薬剤として化学薬剤を使用した場合には、薬剤による土壌汚染による公害や、揮発した薬剤による居住者への例えばシックハウス症候群等の障害、散布時の飛散による作業者への健康障害などが社会問題化している。
【0004】
そこで、本発明者は、以前化学薬剤を使用することなくシロアリ被害を防止するために、樹脂素材からなるシート本体と、このシート本体の成型時に前記樹脂素材と共にシート本体中に包含されたシロアリ忌避作用を有する複数種の粒子(コレマナイト粉砕物、活性炭、ヒノキチオールなどの天然抗菌剤マイクロカプセル粒子)とから構成してなることを特徴とする防蟻シート提案したことがあるが(特許文献1参照)、こうした構成の防蟻シートは複数種の忌避粒材を製造して樹脂素材に混練しシート状に成形せねばならないために製造コストが嵩むうえ、シロアリ忌避作用も建築物床下全体の長期にわたる防蟻対策としては今一つ性能が十分満足することができなかった。
【0005】
他方また、防蟻・防腐・防黴性建築構造面材の一面に、木質繊維板の含水分をコントロールすることによって寸法安定性を得るとともに、防腐・防蟻効果を付与することを目的として、アルミニウム箔、合成樹脂フィルム、アルミニウム樹脂ラミネートフィルム等のシート状物を貼り付けることも提案されている(特許文献2参照)。なるほど、このものにあっては、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルのいずれか一種と、アルミニウム箔とを積層したシートを使用することにはなっているものゝ(文献2の請求項2・3)、それは単に害虫忌避効果のある薬剤を含有した建築構造用繊維板(面材)を被覆して当該繊維板に対する外部からの水分や湿気の浸入を遮断するために採用されたものであって、含水分をコントロールする機能体としてしか利用されていないため(段落[0010]および[0028]参照)、依然として、その防蟻効果は防蟻薬剤に依存しており、シックハウス症候群等の健康傷害については全くの無配慮であって、しかも、防蟻効果は当該構造面材を使用した部分に限られ、建築物全体には及ばないものである。
【0006】
そしてまた、殺虫成分とエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション樹脂とを混合し、防蟻シート表面ならびに基礎立ち上がり部分に散布するシロアリ防除方法も提案されているが(特許文献3参照)、これも復、主として、殺虫成分の作用による防蟻効果に依存しており、やはり殺虫成分の揮散による健康障害の問題は解決し得ていない。
【0007】
ところで、本発明者は、金属がシロアリの分泌する蟻酸に接触したとき、電気化学的反応により接触した箇所を腐蝕し其処に腐蝕電流を生じさせると同時に、当該金属がイオン化して溶出されること、そして、この際に発生される腐食電流と金属イオンに対し、シロアリは極端に忌避する反応行動を示すことを知ったのであって、かゝる知見を利用することにより無薬剤の理想的なシロアリ防除建築用材が得られるとの確信の下に試作実験を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
【特許文献1】特開2004−121206号公報
【特許文献2】特開2001−2514号公報
【特許文献3】特開2004−156260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、化学薬剤を使用することのない安全性の高い構成内容で、長期間にわたり優れた防蟻効果が維持できる防蟻シートを提供することを技術的課題とする。
【0010】
また、この発明は、建築物における防蟻シートと基礎との境界における接合部分において、シロアリの侵入を確実に防止できると共に、更に湿り易い建築物床下の湿気や臭気を確実に封止することができる防湿兼防蟻構造を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者は試行錯誤的に試作と実験を重ねた結果、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンなど)およびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂により形成された樹脂層の間に当該金属層を被覆状態に積層一体化されて成ることを特徴とする防蟻シートが、長期間にわたり優れた防蟻効果を発揮することを確信した。この効果は、多くの合成樹脂の中でも、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルポリエステルのいずれかと金属とを組み合わせた場合にのみ見られる意外な効果であり、さらにアルカリ耐性も有している事実を確認し、この発明を完成するに到った。
【0012】
かくして、この発明によれば、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛およびステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成ることを特徴とする防蟻シートが提供される。
【0013】
また、本発明は、建築物の基礎部分における防蟻構造であって、土またはスラグなどの土壌中に基礎を埋設する一方、当該土壌の上には、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成る防蟻シートを敷設して、この防蟻シートと前記基礎の基部側面との境界における接合部分には、少なくともガラス粉が混入される充填剤を充填するか、あるいは、充填剤の充填箇所にガラス薄片を敷設し、その上に充填剤を充填して、当該防蟻シートの端縁を密閉状態に固定するという技術的手段を採用することによって、防蟻構造を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
この発明を適用することによって得られる防蟻シートは、化学薬剤を使用しないので、土壌汚染による公害や薬剤揮発による健康障害の原因とはならず、さらに薬剤散布も要しないから、作業者の労働環境も健全であって安全性も高く長期間にわたり優れた防蟻効果が維持することができ、しかも金属シート単体では栗石、固結土塊、目潰し石との衝合により破れ易い金属箔シートを樹脂層が補強して布基礎や束石との接合をも容易ならしめて施工時の使い勝手が頗る良好である。
【0015】
また、本発明の防蟻シートが2層以上の金属層を含むように構成した場合には、仮にもし、シロアリが樹脂層を破って最初に遭遇した金属層を孔蝕したとしても、次の樹脂層の上では次なる金属層が行く手を遮って電気化学的バリアを形成しているので、シロアリの進路は完全なまでに封鎖されることになる。
【0016】
さらに加えて、樹脂層と金属層とから構成される本発明の防蟻シートは、樹脂層ならびに金属層が湿気や臭気を確実に遮蔽することができるので、床下の防湿・防蟻対策としても極めて有効である。このように本発明の防蟻シートは、産業上極めて有用である。
【0017】
また、本発明の防蟻構造は、防蟻シートと基礎との境界における接合部分において、防蟻効果を有するガラス粉を組み合わせたことによって、防蟻シートによる上記効果と相俟って、建築物におけるシロアリの侵入を確実に防止することができることから、これまた産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面(図1−10)に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
『防蟻シートについて』
まず、本発明の防蟻シート1について説明する。この発明において使用される合成樹脂のポリエステルは、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、フィルムや容器などに広く使用されているポリエチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。
【0020】
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、建築用、土木用等のシートとして市販されているものを好適に用いることができる。また、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよいが、高密度ポリエチレンが好ましく、これらはいずれも市販されている各種用途のフィルムを好適に用いることができる。
【0021】
またポリ塩化ビニルは、塩化ビニルモノマーだけを重合して得られるストレートポリマー、酢酸ビニルなどの他のモノマーを共重合させたコポリマーのいずれを原料樹脂とするものでもよく、市販されている軟質製品であるフィルムを用いるのが好ましい。
【0022】
この発明において合成樹脂としては、ポリエステル、なかでもポリエチレンテレフタレート、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いるのが、防蟻効果、シートの物理的強度および汎用性の点から好ましい。
【0023】
この発明において、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と積層される金属は、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛およびステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種である。なかでもアルミニウムや銅を用いるのが、防蟻効果の点から好ましく、特にアルミニウムは製造コストの面において経済性が良好である。
【0024】
合成樹脂と金属とを積層させる方法としては、合成樹脂シート12と金属シート11とを接着剤で貼り合わせる方法や、合成樹脂シート12と金属シート11とを熱で圧着する方法が好ましい。また、合成樹脂と金属とを積層させた防蟻シートの両側辺部分および両端の短辺部分にシール加工を施して金属層を密封しておくのが、防蟻効果を長期間保持および防蟻シートの耐久性向上の点から好ましい。
【0025】
この発明の防蟻シート1は、外層が合成樹脂層12となるように積層され、かつ、積層構造を3層〜7層とするのが、防蟻効果、アルカリ耐性および強度が向上する点から好ましい。すなわち、図1に示すような3層の場合は合成樹脂層/金属層/合成樹脂層、4層の場合は合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/合成樹脂層、また、図2に示すような5層の場合は合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/金属層/合成樹脂層、6層の場合は合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/合成樹脂層の積層構造、7層の場合は合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/金属層/合成樹脂層/金属層/合成樹脂層となる。
【0026】
積層構造の外層の少なくとも一方の合成樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いると、防蟻効果だけでなく、アルカリ耐性、強度、および他の建築材料との接着性が向上した防蟻シートが得られる点から好ましい。
【0027】
また、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレートの3層に積層された防蟻シートはヤマトシロアリ用として、また、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレートの5層に積層された防蟻シートは食害性の強いイエシロアリ用として好適に用いることができる。
【0028】
なお、上記ヤマトシロアリ用あるいはイエシロアリ用に好適である3層あるいは5層の防蟻シート1には、これらシートの少なくとも一方の外層にエチレン−酢酸ビニル共重合体を積層させて、4〜5層あるいは6〜7層に積層された防蟻シートとしてもよい。
【0029】
この発明において、積層させる合成樹脂シート12の厚みは7μm以上、好ましくは10〜15μmとするのがよい。また、金属シートの厚みは、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス鋼の場合は10μm以上、好ましくは12μm以上、銀の場合は、3μm以上、好ましくは5μm以上、鉄の場合は、12μm以上、好ましくは14μm以上とするのがよい。
【0030】
この発明の防蟻シートの適用方法としては、後述するが、建築物の建築時に基礎コンクリートを打設する前の地面や打設後のコンクリート面、割栗または砕石作業を施し目つぶし砂利を敷いた上などに敷設したり、建築物やブロック塀などの基礎、建築物の床パネル下などに敷設する方法が挙げられる。
【0031】
また、この発明の防蟻シートは、この発明の効果を阻害しない限りにおいて、合成樹脂に既存の各種染料等を混合し、金属と積層させることもできる。さらに、この発明の防蟻シートを敷設する前の土壌に既存の防蟻剤を散布したり、建築材等に既存の防腐・防蟻・防カビ剤を注入、塗布、浸漬、噴霧してもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、防蟻シート1が2層以上の異種または同種の金属層11を連続または不連続に含むように構成することができ、この場合には、仮にもし、シロアリが樹脂層を破って最初に遭遇した金属層11を孔蝕したとしても、次の樹脂層の上では次なる金属層11が行く手を遮って電気化学的バリアを形成しているので、シロアリの進路は完全なまでに封鎖されることになる(図2および図3参照)。
【0033】
また、シートにエンボス加工等を施すことによって凹凸面を形成することもでき、表面積を増大して、蟻酸の接触箇所を大きくしてシロアリが忌避する腐食電流と金属イオンを増加させることもできる。
【0034】
『防蟻構造について』
次に、本発明の建築物の基礎部分における防蟻構造について説明する。本実施形態では、まず、土またはスラグなどの土壌3の中に基礎2を埋設する。この基礎2としては、布基礎やベタ基礎、ブロック塀などがある。
【0035】
そして、前記土壌3の上には、前述のとおり構成した、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成る防蟻シート1を敷設する。
【0036】
この際、複数の防蟻シート1・1…を接続するために、適宜、シート接続テープ6を用いることができる。
【0037】
次いで、防蟻シート1と前記基礎2の基部側面との境界部分には、少なくともガラス粉を混入した充填剤4を充填する。この際、ガラス粉の混入量は、充填剤に対して35〜60w%であり、このガラス粉は、例えば、厚さ0.5mmの蛍光灯バルブ、液晶用ガラス、自動車用ガラスを破砕して篩分けして大きさ0.5〜5mmの薄片に作製し、充填剤(例えば、シリコーン系やウレタン系のコーキング剤や、ポリエステル系の樹脂やパテなどの接着剤)に加えて攪拌・混合する。このとき、ガラス粉の形状は、尖角形状が好ましい。
【0038】
また、ガラスの種類は、高流動性ガラスの破片または廃棄液晶ガラス破片を採用する。この高流動性ガラスの素材としては、無アルカリガラス(比重=2.77以上)を尖った角のある状態に破砕して得た尖角形状の細片を用いる。無アルカリガラスとしては、液晶用ガラスが知られており、スベリ角(安息角)が30°以下のものが適当である。スベリ角が30°以上であると、堆積した細片の幾つかが除去されたとき、除去された部分の透き間が崩壊せずに孔ができ、シロアリが蟻土を運んできて蟻道を築成するおそれがあるからである。
【0039】
こうして、充填剤4を充填することにより、前記防蟻シート1の端縁を密閉状態に固定することができる(図4参照)。なお、本実施形態では、図5に示すように、土壌3がスラグであっても良いし、更に、防蟻シート1の上に土台コンクリート8を打設してから充填剤4を充填することもできる。
【0040】
また、本実施形態では、基礎2の基部側面近傍に形成された土壌3の掘削部に防蟻シート1の端縁を折り込み、この折り込んだ端縁の上に充填剤4を充填する(図6参照)。
【0041】
更にまた、本実施形態では、図7に示すように、敷設した防蟻シート1の上に土台コンクリート8を打設することができる。
【0042】
また、図8に示すように、敷設された防蟻シート1上の充填剤4の充填箇所において、ガラス薄片5を敷設して、その上に充填剤4を充填するように構成することもでき、このガラス薄片5によって形成される防蟻バリア層が地面全面を被覆ガードしてシロアリの侵入をより確実に阻止することができる。なお、この場合は、ガラス粉を混入していない充填剤4を用いることもできる。
【0043】
また、本実施形態では、図9に示すように、基礎2の基部側面近傍に形成された掘削部に充填剤4を充填して、この充填剤4の上に防蟻シート1の端縁を載置し、かつ、これら基礎2と防蟻シート1との境界における接合部分に目張りテープ材7を貼着して封止することができる。
【0044】
なお、前記同様に、本実施形態では、更に、防蟻シート1および目張りテープ材6の上に土台コンクリート8を打設することができる(図10参照)。
【0045】
また、本実施形態の防蟻構造は、ベタ基礎の施工に採用することもできる。この場合、防蟻シート1を先に敷設してから、捨てコンクリート9を打設し、コンクリート製の基礎2(ベタ基礎)を設置する(図11参照)。
【0046】
なお、図示しないが、水抜き処理のために防蟻シート1に切り欠きを入れた場合には、充填剤4の使用を行うことができる。また、切り欠き箇所が大きい場合には、この切り欠き箇所に川砂を敷き、その上にガラス粉が混入した充填剤4を充填するか、あるいは、切り欠き箇所に川砂を敷いて、その上にガラス薄片を敷設した後、さらに充填剤4(ガラス粉の混入は問わない)を充填することができる。
【実施例】
【0047】
(防蟻シートの調製例)
表1に示す種類および厚みの樹脂シートおよび各金属シートをエマルション型接着剤で貼り合わせて、実施例防蟻シート1〜12および比較例防蟻シート1〜3を調製した。実施例防蟻シートおよび比較例防蟻シートの積層構造および各樹脂層、各金属層の厚みを表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
略号の説明:
合成樹脂:PET:ポリエチレンテレフタレート
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体
PE:高密度ポリエチレン
PVC:ポリ塩化ビニル
OPP:2軸延伸ポリプロピレン
ONY:2軸延伸ナイロン
PS:ポリスチレン
採用金属:Al:高純度アルミニウム(JIS H 4170 圧延)
Ag:銀(JIS H 2141 圧延)
Cu:銅(JIS H 2123 無酸素形銅 1種 ビレット)
Fe:鉄(JIS G 0203 純鉄)
Zn:亜鉛(JIS H 2107 圧延)
ST:ステンレス鋼(SUS 403 冷間圧延)
【0050】
「試験例1」(イエシロアリに対する防蟻効果確認試験)
社団法人日本木材保存協会規格第14号1992「土壌処理用防蟻剤の防蟻効力試験方法」に基づいて試験を行った。すなわち、内径約5cm、高さ12cmのガラス円筒容器2本を、各ガラス円筒容器の底面から約2cmの所で、内径約1.5cm、長さ約10cmのガラス管(両端の摺り合わせ部分を除いた透明部の長さが5cmで、5mm毎に目盛りをつけたもの)で連結したものを試験容器とし、一方のガラス円筒容器には3gのアカマツ砕片を、他方のガラス円筒容器には無処理乾燥土壌を入れた。また無処理土壌側のガラス管の端に、供試防蟻シートを貼り付けた。次いで、無処理乾燥土壌を入れたガラス円筒容器にイエシロアリの職蟻100頭と兵蟻10頭を投入し、21日後に各供試防蟻シートの状態を観察した。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
「試験例2」(ヤマトシロアリに対する防蟻効果確認試験)
イエシロアリに代えてヤマトシロアリを用いる以外は試験例1と同様の方法で、ヤマトシロアリに対する防蟻効果確認試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
以上より、本発明の防蟻シートは、優れた防蟻効果を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態の防蟻シートの構造を表わす説明断面図である。
【図2】本発明の実施形態の防蟻シートの変形例の構造を表わす説明断面図である。
【図3】本発明の実施形態の防蟻シートの変形例の構造を表わす説明断面図である。
【図4】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図5】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図6】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図7】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図8】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図9】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図10】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【図11】本発明の実施形態の防蟻構造を表わす説明断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 防蟻シート
11 金属層(金属シート)
12 合成樹脂層(合成樹脂シート)
2 基礎
3 土壌
4 充填剤
5 ガラス薄片
6 シート接続テープ
7 目張りテープ材
8 土台コンクリート
9 捨てコンクリート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成ることを特徴とする防蟻シート。
【請求項2】
金属箔シートを合成樹脂シートで被覆し積層一体化したことを特徴とする請求項1記載の防蟻シート。
【請求項3】
合成樹脂にて形成された3層以上の樹脂層の間に、金属層を2層以上含んで積層一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防蟻シート。
【請求項4】
金属層が高純度で無孔性のアルミ箔シートにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の防蟻シート。
【請求項5】
金属層がアルミ蒸着により稠密に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の防蟻シート。
【請求項6】
金属層が銅箔シートにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の防蟻シート。
【請求項7】
建築物の基礎部分における防蟻構造であって、
土またはスラグなどの土壌中に基礎が埋設されている一方、当該土壌の上には、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成る防蟻シートが敷設されており、
この防蟻シートと前記基礎の基部側面との境界における接合部分には充填剤が充填されており、当該防蟻シートの端縁が密閉状態に固定されていることを特徴とする防蟻構造。
【請求項8】
敷設された防蟻シート上の充填剤の充填箇所において、ガラス薄片が敷設され、その上に充填剤が充填されていることを特徴とする請求項7記載の防蟻構造。
【請求項9】
基礎の基部側面近傍に形成された掘削部に防蟻シートの端縁が折り込まれており、この折り込まれた端縁の上に充填剤が充填されていることを特徴とする請求項7または8に記載の防蟻構造。
【請求項10】
基礎の基部側面近傍に形成された掘削部に充填剤が充填され、この充填剤の上に防蟻シートの端縁が載置されており、かつ、これら基礎と防蟻シートとの境界における接合部分に目張りテープ材が貼着され封止されていることを特徴とする請求項7または8に記載の防蟻構造。
【請求項11】
防蟻シートおよび目張りテープ材の上に土台コンクリートが打設されていることを特徴とする請求項10記載の防蟻構造。
【請求項12】
充填剤に少なくともガラス粉が混入されていることを特徴とする請求項7〜11の何れか一項に記載の防蟻構造。
【請求項13】
建築物の基礎部分における防蟻構造であって、
土またはスラグなどの土壌の上には、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルから選ばれた少なくとも1種の合成樹脂と、アルミニウム、銀、銅、鉄、亜鉛、ステンレス鋼から選ばれた少なくとも1種の金属とを、当該金属にて形成された金属層が前記合成樹脂にて形成された樹脂層の間に被覆状態に積層一体化されて成る防蟻シートが敷設されており、
この防蟻シートの上に捨てコンクリートが打設され、かつ、その上にコンクリート製のベタ基礎が設置されており、当該防蟻シートが密閉状態に固定されていることを特徴とする防蟻構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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