説明

防蟻性発泡樹脂成形体

【課題】建築物の断熱材、保温材等に適用したときに、防蟻効力およびその持続性、熱安定性等の点で優れた性能を発揮し得る防蟻性発泡樹脂成形体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)または(3)〔式中、Aは2−クロロ−5−チアゾリル基またはテトラヒドロフラン−3−イル基を表わす。〕で示される化合物を発泡樹脂成形体に対して0.001〜1%含有し、発泡樹脂が発泡ポリウレタン樹脂であることを特徴とする防蟻性発泡樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の断熱材、保温材等として使用され得る防蟻性を有する発泡樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、O,O−ジエチル−O−3,5,6−1−トリクロル−2−ピリジルホスホロチオエート(一般名:クロルピリホス)やO,O−ジエチル−O−(α−シアノベンジリデンアミノ))ホスホロチオエート(一般名:ホキシム)等の有機リン系化合物を成形体中に含有する防蟻性発泡ポリスチレン樹脂成形体が知られている(特許文献1〜2等)。
しかしながら有機リン系化合物を含有する発泡樹脂成形体は、一般に加工時の熱安定性、あるいは成形体の安全性や効力持続性の点で充分ではなかった。
また、ピレスロイド系化合物を含有する防蟻性発泡樹脂成形体も知られているが、適用場面によっては必ずしも防蟻効果が充分ではなく、優れた防蟻性発泡樹脂成形体の開発が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特公平6−10276号公報
【特許文献2】特開昭63−159451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築物の断熱材、保温材等に適用したときに、防蟻効力およびその持続性、熱安定性等の点で優れた性能を発揮し得る防蟻性発泡樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況下、本発明者は防蟻性発泡樹脂成形体につき検討した結果、一般式(1)または(3)で示される特定の化合物を含有する発泡樹脂成形体が、従来の問題点を解決できる優れた性能を発揮することを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、防蟻性樹脂成形体であって、防蟻成分として一般式(1)または(3)


〔式中、Aは2−クロロ−5−チアゾリル基またはテトラヒドロフラン−3−イル基を表わす。〕
で示される化合物(以下、本化合物と記す)を該発泡樹脂成形体に対して0.001〜1%含有し、発泡樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とする防蟻性発泡樹脂成形体(以下、本成形体と記す)に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、これを建築物の断熱材、保温材等に適用したときに、防蟻効力およびその持続性、熱安定性等の点で優れた性能を発揮し得る防蟻性発泡樹脂成形体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本化合物における一般式(1)の化合物としては、1−(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンを挙げることができる。
【0008】
一般式(3)の化合物としては、3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジンを挙げることができる。
【0009】
本発明により、効果的に防除できるシロアリとしては、次のものがあげられる。
等翅目(Isoptera):Mastotermitidaeムカシシロアリ科,Termopsidaeオオシロアリ科[Zootermopsis属,Archotermopsis属,Hodotermopsis属,Porotermes属,Stolotermes属],Kalotermitidaeレイビシロアリ科[Kalotermes属,Neotermes属,Cryptotermes属,Incisitermes属,Glyptotermes属],Hodotermitidaeシュウカクシロアリ科[Hodotermes属,Microhodotermes属,Anacanthotermes属],Rhinotermitidaeミゾガシラシロアリ科[Reticulitermes属,Heterotermes属,Coptotermes属,Schedolinotermes属],Serritermitidaeノコギリシロアリ科,Termitidaeシロアリ科[Amitermes属,Drepanotermes属,Hopitalitermes属,Trinervitermes属,Macrotermes属,Odontotermes属,Microtermes属,Nasutitermes属,Pericapritermes属,Anoplotermes属]に属する害虫。
【0010】
上記等翅目(Isoptera)に属する害虫に於いて、特に本邦における防除対象となるシロアリの種類としては、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)、ダイコクシロアリ(Cryptotermes domesticus)、タイワンシロアリ(Odontotermes formosanus)、コウシュンシロアリ(Neotermes koshunensis)、サツマシロアリ(Glyptotermes satsumensis)、ナカジマシロアリ(Glyptotermes nakajimai)、カタンシロアリ(Glyptotermes fuscus)、コダマシロアリ(Glyptotermes kodamai)、クシモトシロアリ(Glyptotermes kushimensis)、オオシロアリ(Hodotermopsis japonica)、コウシュウイエシロアリ(Coptotermes guangzhoensis)、アマミシロアリ(Reticulitermes miyatakei)、キアシシロアリ(Reticulitermes flaviceps amamianus)、カンモンシロアリ(Reticulitermes sp.)、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)、ニトベシロアリ(Pericapriterme nitobei)、ムシャシロアリ(Sinocapritermes mushae)等をあげることができる。
【0011】
本化合物の本成形体における含有量は、通常0.001〜1重量%であり、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0012】
発泡樹脂としては、発泡熱可塑性樹脂および発泡熱硬化性樹脂を挙げることができ、具体的にはたとえば、発泡ポリエチレン樹脂、発泡ポリプロピレン樹脂等の発泡ポリオレフィン樹脂、発泡ポリメチルメタクリレート樹脂等の発泡メタクリル酸エステル樹脂、発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂の他、スチレンおよびメタクリル酸エステルの共重合体からなる発泡樹脂等を挙げることができる。本成形体に適用可能な発泡樹脂としては、発泡ポリウレタン樹脂が使用される。
【0013】
本成形体中には、必要により可塑剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を適宜加えることができる。
【0014】
本成形体の製造方法としては公知の方法が適用でき、例えば、予備発泡させた樹脂粒子を空中に流動させながら、その予備発泡粒子に本化合物の溶媒液および接着剤を噴霧し、通風乾燥後、必要により本化合物を噴霧していない予備発泡樹脂粒子を混合し、これを発泡成形する方法(特開平10−36549号公報)、未発泡の樹脂粒子、例えば樹脂ビーズへ本化合物の溶媒液をコーティング後、発泡成形する方法(特開昭63−159451号)等を挙げることができる。また例えば、ポリウレタン樹脂の場合のように、発泡剤を含むポリエーテルポリオールに、本化合物を添加して溶解した後、ポリイソシアネートを混合し、発泡成形させる方法を適用することもできる。
本成形体は、建築物の断熱材、保温材、防音材、緩衝材、電気絶縁材等において通常の発泡樹脂成形体と同様に使用することができ、かかる適用場面において優れた防蟻効力を長期間にわたり安定的に発揮する。
【実施例】
【0015】
実施例1
(1) 流動コーティング機(流動塗装機)[(株)大川原製作所製、ミクスグラード]に約50倍に予備発泡させたポリスチレン樹脂180gを投入し、空気を吹込んで流動させる。次に、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンの5%水溶液8gおよび接着剤としてアクリル/スチレン樹脂エマルション30gの混合物をからなる希釈剤(水:ダイアセトンアルコール=19:1(重量比))30gで希釈して混合物を調製する。
この混合物を流動コーティング機中に30g/minの割合で噴霧し、流動している予備発泡粒子の表面に塗布する。混合物の全量を塗布した後さらに空気を吹込んで予備発泡粒子の表面を乾燥させることにより、防蟻性予備発泡粒子が得られる。この防蟻性発泡粒子を、例えば特開平10−36549号公報に記載の方法等の公知の方法により加熱成形することにより、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンの含有量が約0.2重量%の防蟻性発泡樹脂成形体が得られる。
(2) 前記防蟻性予備発泡粒子を、本化合物を塗布してない約50倍に予備発泡ポリスチレン樹脂と50:50の割合で混合し、(1)と同様の方法で加熱成形することにより、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンの含有量が0.1重量%の防蟻性発泡樹脂成形体が得られる。
【0016】
実施例2
1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンに代えて3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジンを用いる以外は実施例1と同様の処理を行うことにより、3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジンの含有量が0.2重量%または0.1重量%の防蟻性発泡樹脂成形体が得られる。
【0017】
実施例3
発泡剤HCFCを含むポリエーテルポリオール(東邦化学工業(株)製、商品名:HYCEL M−173C、主成分:ポリエーテルポリオールおよびHCFC−141b)25gに、1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンの所定量を添加して溶解した後、この溶解液をポリエチレン樹脂製袋(49cm×21cm)中に入れ、更にポリイソシアネート(東邦化学工業(株)製、商品名:HYCEL 360P、主成分:ポリイソシアネート)25gを室温で混合し、振動させて反応させることにより、防蟻性発泡ポリウレタン樹脂成形体が得られる。
【0018】
実施例4
1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンに代えて3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジンを用いる以外は実施例3と同様の処理を行うことにより、防蟻性発泡ポリウレタン樹脂成形体が得られる。
【0019】
試験例1
実施例3の方法にて作製した防蟻性発泡ポリウレタン樹脂成形体をφ1.7cm×長さ3cmにくり抜き、ガラスチューブ(内径1.7cm×長さ15cm)の下端から約2.5cmあけて該成形体を樹脂層として詰めた。該樹脂層の両側約1.5cmを4%寒天ではさみ、ガラスチューブの該樹脂層より上側の空間内にイエシロアリ職蟻50頭と兵蟻5頭を放し、1週間後にシロアリによる穿孔状況を観察した。試験は3反復実施した。結果を表1に示す。
表1の結果欄中の寒天層穿孔状況において、Aはシロアリが該樹脂層を貫通して下側の寒天層をも貫通したことを表し、Bはシロアリが該樹脂層を貫通しさらに下側の寒天層の途中まで穿孔したことを表し、Cはシロアリが該樹脂層を完全に貫通することができず下側の寒天層への穿孔が見られなかったことを表す。
【0020】
【表1】

【0021】
*:“化合物A”:1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジン
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の有害節足動物駆除組成物は種々の有害節足動物に対し、優れた駆除効果を示し、有害節足動物を駆除するために有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防蟻性発泡樹脂成形体であって、防蟻成分として一般式(1)または(3)

〔式中、Aは2−クロロ−5−チアゾリル基またはテトラヒドロフラン−3−イル基を表わす。〕
で示される化合物を該発泡樹脂成形体に対して0.001〜1%含有し、発泡樹脂が発泡ポリウレタン樹脂であることを特徴とする防蟻性発泡樹脂成形体。
【請求項2】
防蟻成分が1−(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル−3−メチル−2−ニトログアニジンまたは3−〔(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル〕−5−メチル−4−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジンである請求項1記載の防蟻性発泡樹脂成形体。

【公開番号】特開2009−84296(P2009−84296A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307238(P2008−307238)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【分割の表示】特願平11−22350の分割
【原出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】