説明

防誘虫コーティング組成物

【課題】400nm以下の光を吸収する顔料を用いた、塗料の分散性および経時安定性が良好、且つ塗膜にした時の可視光領域での透明性に優れる防誘虫コーティング組成物を提供することにある。
【解決手段】 波長400nm以下の光を吸収し、それより長い波長の光に透明な酸化鉄などの顔料と、塗膜形成性材料と、溶剤とを含有し、塗膜形成時に400nm以下の光を95%以上吸収した場合の550nmの透過率が70%以上である防誘虫コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、400nm以下の光を吸収する顔料を用いた防誘虫コーティング用組成物に関する。また、分散安定性および塗膜にしたときの透明性に優れた防誘虫コーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の昆虫は、波長400nm以下の領域の波長を好み、この波長を発する照明に誘因されやすい。高速道路等の道路照明や、各種スポーツ施設の照明等では、照明器具として大型の投光器を使用するので、この領域の光を発する照明を用いると、施設周辺のみならず遠距離より種々の昆虫が誘因されやすいという問題がある。一般に、光に誘引される昆虫の対処方法として、電撃殺虫器等での殺戮があるが、この場合、むやみに昆虫自体を殺戮し生態系に影響が出る可能性があることや、殺戮された昆虫の死骸の処理等も問題となっている。これらのことから、誘虫率の低い照明の使用が望まれている。
【0003】
400nm以下の波長の光を吸収するコーティング組成物としては、例えば特許文献1に示されている、Uvitex-OB(チバガイギー社製、2,5-ビス(5-ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン)もしくはEB-501(三井東圧染料社製)等の蛍光増白剤と、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系などの紫外線吸収剤を溶解添加してなる合成樹脂系プライマーコーティング溶液があるが、この組成物に用いられている材料は、その耐光性、耐熱性が顔料と比較すると低く、照明および太陽光による光や熱でその光カット能が低下してしまう恐れがある。

【特許文献1】特開平6−145387号公報
【0004】
照明に波長400nm以下の光を吸収するコーティング組成物を用いる場合、照明の明るさを保つために、可視光領域での透明性が重要になる。微粒子の可視光散乱強度は、その粒子と媒質が有する屈折率にも依存するが、一般的に粒径が波長の1/2付近で最大となり、それよりも粒径が小さくなるとレイリーの散乱式から示される様に、粒径の6乗に比例して散乱強度は小さくなっていく。よって可視光(波長が400〜800nm)に対しては、粒径が200〜400nmの時に散乱強度が最大、それ以下になるにつれて散乱強度が低下(透明化)していくことになる。即ち、一次粒子径の小さな粒子を高度に分散する製造方法が透明性の確保に関しては不可欠となる。


【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
400nm以下の光を吸収する顔料を用いた、塗料の分散性および経時安定性が良好、且つ塗膜にした時の可視光領域での透明性に優れる防誘虫コーティング組成物を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、波長400nm以下の光を吸収し、それより長い波長の光に透明な顔料と、塗膜形成性材料と、溶剤とを含有することを特徴とする防誘虫コーティング組成物に関する。
【0007】
また本発明は、顔料が無機顔料であることを特徴とする上記の防誘虫コーティング組成物に関する。
【0008】
また本発明は、顔料が酸化鉄であることを特徴とする上記の防誘虫コーティング組成物に関する。
【0009】
また本発明は、塗膜形成時に400nm以下の光を95%以上吸収した場合の550nm透過率が70%以上であることを特徴とする上記の防誘虫コーティング組成物に関する。
【0010】
更に本発明は、顔料が、窒素吸着法(BET法)による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする上記の防誘虫コーティング組成物およびその製造方法に関する。

【発明の効果】
【0011】
本発明の、400nm以下の光を吸収し、かつ耐性および可視光領域での透明性が高い防誘虫コーティング組成物を用いることで、照明の集虫量を低減できるばかりでなく、生態系への負荷が小さく環境保全に適した照明の作成が可能となる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いる顔料としては、400nm以下の光を吸収するものであれば特に制限はなく、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、5、6、10、12、13、14、16、17、19、23、24、34、42、49、53、55、60、61、62、63、65、73、74、75、77、81、83、87、90、93、94、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、116、117、120、121、123、124、126、127、128、129、130、133、136、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、157、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、191、192、193、194、199、202、213等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、本発明に用いる顔料としては、コーティング膜の色を調整するために、上記以外の顔料を併用することも出来る。例えば、黄色い光が嫌われる用途では、ブルーイングの為に、フタロブルー、スレンブルー等のブルー顔料を添加したり、黄味を消す為に、カーボンブラック等を添加するのが有効である。
【0013】
本発明に用いる顔料としては、その耐光性および耐熱性を考慮した場合、無機顔料であることが好ましい。また、無機顔料としては、400nm以下の光の吸収性能および可視光領域での透明性を考慮した場合、酸化鉄がより好ましい。
【0014】
コーティング膜の可視光(波長が400〜800nm)に対する透明性を考えた場合、一般にフィラーの分散粒径を波長の1/2 (200〜400nm)以下にすることが好ましい。よって本発明においては、窒素吸着法(BET法)により求められる比表面積が50m/g以上の顔料を用いることが好ましい。
【0015】
本発明のコーティング組成物は、メディア型分散機により顔料を分散して作成することが出来る。しかし、コーティング膜の可視光(波長が400〜800nm)に対する透明性を考えた場合、上述した通り顔料の分散粒径をより小さくした方が良いため、顔料と、樹脂と、溶剤とを2本ロールにより混練し固形チップとした後、該固形チップを溶剤に分散し製造する方法がより好ましい。
【0016】
本発明に用いる顔料は、予めカップリング剤、オルガノシリコーン、高級脂肪酸、リン酸エステルおよび高級アルコール等で疎水化処理されていても良い。例えばカップリング剤は、シラン系、チタネート系、アルミキレート系のいずれでも良く、具体的にはメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等がある。
【0017】
本発明における顔料の疎水化処理方法としては、従来公知の方法を用いることができる。すなわち、カップリング剤等の処理剤と顔料を湿式または乾式で各種混合分散機により、混合、粉砕、加熱等の処理をする。具体的には、湿式処理ではペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができ、また乾式処理では、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、アトライター、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))等が使用できるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明に用いる溶剤としては、塗膜形成性材料を溶解するものであれば特に制限はなく、水、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、芳香族有機溶剤類等種々のものが使用できる。溶剤として水を使用する場合は、水のみでも良いが、アルカリ化合物や水混和性有機溶剤を少量添加すると塗膜形成性材料の溶解が容易になり好ましい。アルカリ化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール等の各種有機アミン化合物、アンモニア、水酸化ナトリウム等に代表される無機塩基性物質、その他、各種の第4級アンモニウム化合物が使用できる。特に、有機アミン化合物が作業性、汎用性の点から好ましい。アルカリ化合物の添加量は、顔料100重量部に対し0.1〜5重量部が好ましい。
【0019】
本発明に用いる分散樹脂としては、塗膜形成材料と相溶するものであれば特に制限はなく、水性、有機溶剤系の一般の樹脂が使用できる。例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール等を構成単位として含む重合体または共重合体。ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂および硝化綿等の繊維素系樹脂が挙げられる。これらの分散樹脂は、−COOM、−SOM、−PO(OM) (Mは水素原子またはアルカリ金属)、−OH、−NRn (Rは炭化水素、nは2〜3の整数)、エポキシ基、スルホベタイン基等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を有するものが好ましい。これら極性官能基を有することで、分散樹脂と顔料の相互作用が強まり、分散性が向上する。また、最終的に透明な塗膜を得る為には、これら分散樹脂は透明であることが好ましい。また、分散樹脂として市販の水性用、有機溶剤用の樹脂型分散剤を用いることもできる。酸価としては、顔料の分散性、基材との密着性を考えた場合、有機溶剤系では5以上が好ましく、水性ではさらに溶解性も考え30以上が好ましい。また、耐水性、塗膜形成材料との相溶性を考えた場合は、130以下が好ましい。分子量としては、重量平均で2000〜20000が好ましい。これ以下では、顔料に吸着した時に効果的な立体障害効果を発揮しづらく、良好な顔料分散体が得られづらい。これ以上では、溶剤への溶解性、塗膜形成材料との相溶性が劣る場合が多く、経時安定性が不良になる可能性がある。また、これらの分散樹脂は、単独で使用しても良いし、二種類以上組み合わせて使用しても良い。またこれらの分散樹脂は、固形のまま使用しても良いし、適当な溶剤に溶解したワニスとして使用しても良い。
【0020】
本発明におけるにおけるメディア型分散機としては、特に限定されるものではないが、サンドミル、アトライター、DCPミル等のビーズミルを使用することが好ましい。またメディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等が使用できる。
【0021】
本発明における2本ロールによる混練処理は、2本ロールによるせん断力を利用して顔料の凝集体を解砕しつつ、粒子表面に分散樹脂を吸着させるものである。先ず、顔料100重量部に対し、分散樹脂5〜50重量部 (固形分換算)、好ましくは10〜40重量部を常温もしくは加熱下で混合し、均質な混合物を作る。せん断力を効率よく混練物与える為に、分散樹脂のTgは0℃〜100℃である必要があり、また、顔料への吸着性を上げる為に酸価5〜130が必要である。尚、このとき溶剤を加え湿潤混合物としても良い。溶剤としては、メチルエチルケトン等のケトン類、エチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、その他エーテル類、芳香族類等の有機溶剤が使用できるが特に限定されない、また特に表面が疎水化処理されていない顔料を用いる場合は水を使用しても良いが、最終的な用途に合わせて溶剤を選択することが好ましい。溶剤の添加量は、用いる粉体や樹脂によって異なるが、顔料100重量部に対して、溶剤を0〜50重量部添加する。顔料と分散樹脂および溶剤の重量比が上記の範囲を超えると、次の2本ロールによる混練処理工程の作業性が悪化する。また特に顔料に対して分散樹脂量が少ない場合には、塗料の分散安定化が低下する。こうして得られた混合物を、加熱温度40〜200℃、回転速度を10〜50rpmとした2本ロールにて複数回混練処理し、断片状もしくはシート状の混練物を得る。混練回数は、希望とする混練度に応じて任意に設定できる。得られた混練物がシート状の場合は、粉砕して粉状または断片状とした後に、次の溶解、分散工程に使用するのが好ましい。シート状の混練物を粉砕する方法としては、通常の粉砕機を用いればよく、特に限定されない。
【0022】
上記の2本ロールによる混練処理によって得られた混練物を、溶剤および塗膜形成性材料に分散することで液状のコーティング組成物を得る。
【0023】
使用する溶剤は、塗膜形成性材料を溶解するものであれば特に制限はなく、水、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、芳香族有機溶剤類等種々のものが使用できる。溶剤として水を使用する場合は、水のみでも良いが、アルカリ化合物や水混和性有機溶剤を少量添加すると分散が容易になり好ましい。アルカリ化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール等の各種有機アミン化合物、アンモニア、水酸化ナトリウム等に代表される無機塩基性物質、その他、各種の第4級アンモニウム化合物が使用できる。特に、有機アミン化合物が作業性、汎用性の点から好ましい。アルカリ化合物の添加量は、顔料100重量部に対し0.1〜5重量部が好ましい。
【0024】
2本ロールによる混練処理によって得られた混練物を、溶剤および塗膜形成性材料に分散する方法としては、上記混練物をディゾルバー等の高速攪拌機を用いて溶剤および塗膜形成性材料に分散するが、その後各種分散機で更に分散処理をすることが、均一且つ微細な分散体を得るのに好ましい。特に、作業性を考えた場合は、サンドミル、アトライター、DCPミル等のビーズミルを使用することが好ましい。また、混練処理によって得られた混練物を溶剤に分散した後に、塗膜形成性材料と混合してもよい。
【0025】
本発明における塗膜形成性材料としては、用いた分散樹脂と相溶するものであれば特に制限はなく、分散樹脂をそのまま用いても良いが、塗膜物性を考慮し、機械物性、耐熱性、耐光性、密着性等、用途に合った特性も持った材料を選定する事が望ましい。例えば、熱硬化型や溶剤が蒸発することにより硬化するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等、塗料用として一般的に使用されている樹脂を用いることもできるが、これに限定されるものではない。また、塗膜を活性エネルギー線により硬化する場合には、硬化樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明の防誘虫コーティング組成物は、照明器具本体の内部に400nm以下の光を発する光源を有し、さらに透光部にガラス等の透光カバーを有する照明器具に、透光カバーの両面若しくは内外面の少なくとも片面に塗工して使用する。
【0027】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部、%は重量%を表す。塗膜の各波長における透過率(透過スペクトル)については、基材(100μmのPETフィルム)に塗布した塗膜を分光光度計(日立社製、U-3500)で測定した。
【実施例1】
【0028】
シコトランスエローL1916(含水酸化鉄、窒素吸着法(BET法)による比表面積80m/g、BASF社製)100部とアクリル樹脂 A(Tg30℃、酸価100)20部およびメチルエチルケトン15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分88%の固形の混練物Aを得た。続いて、メチルエチルケトン100部と酢酸ブチル100部の混合液に、混練物A 130部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらにアクリル樹脂A75部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Aを得た。
【0029】
次に、コーティング組成物Aを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約2μmの塗膜Aを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は2%以下であり、550nmでの透過率は90%であった。
【実施例2】
【0030】
パリトールエローL1820(イソインドリン系顔料、窒素吸着法(BET法)による比表面積55m/g、BASF社製)100部とアクリル樹脂 B(Tg35℃、酸価50)20部およびメチルエチルケトン15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分91%の固形の混練物Bを得た。続いて、トルエン100部に、混練物B 30部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらにアクリル樹脂B18.2部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Bを得た。
【0031】
次に、コーティング組成物Bを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約5μmの塗膜Bを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は4.5%以下であり、550nmでの透過率は85%であった。
【実施例3】
【0032】
シコパールエローL1100(ビスマスバナデート、窒素吸着法(BET法)による比表面積6.4m/g、BASF社製)100部と水溶性アクリル樹脂 C(Tg25℃、酸価128)20部およびエタノール15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分85%の固形の混練物Cを得た。続いて、ジメチルアミノエタノール 0.4部、イオン交換水 50 部の混合液に、混練物C15部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらに水溶性アクリル樹脂C93.5部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Cを得た。
【0033】
次に、コーティング組成物Cを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約10μmの塗膜Cを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は4.5%以下であり、550nmでの透過率は71%であった。
【実施例4】
【0034】
シコトランスエローL1916(含水酸化鉄、窒素吸着法(BET法)による比表面積80m/g、BASF社製)100部とアクリル-ウレタン樹脂 D(Tg36℃、酸価90)20部および酢酸ブチル15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分95%の固形の混練物Dを得た。続いて、酢酸ブチル40部とトルエン40部の混合液に、混練物D30部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらにアクリル−ウレタン樹脂D209部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Dを得た。
【0035】
次に、コーティング組成物Dを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約10μmの塗膜Dを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は2%以下であり、550nmでの透過率は92%であった。
【実施例5】
【0036】
パリトールエローL1820(イソインドリン系顔料、窒素吸着法(BET法)による比表面積55m/g、BASF社製)100部と水溶性アクリル-ウレタン樹脂 E(Tg30℃、酸価125)20部およびエタノール15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分86%の固形の混練物Eを得た。続いて、ジメチルアミノエタノール 0.8部、イオン交換水 60 部の混合液に、混練物E40部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらに水溶性アクリル樹脂C109部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Eを得た。
【0037】
次に、コーティング組成物Eを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約5μmの塗膜Eを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は3.5%以下であり、550nmでの透過率は86%であった。
【実施例6】
【0038】
シコトランスエローL1916(含水酸化鉄、窒素吸着法(BET法)による比表面積80m/g、BASF社製)100部とアクリル-シリコーン樹脂 F(Tg36℃、酸価90)20部およびメチルエチルケトン15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形分93%の固形の混練物Fを得た。続いて、メチルエチルケトン40部とエタノール60部の混合液に、混練物F20部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、さらにアクリル−ウレタン樹脂D136部を加え、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散しコーティング組成物Fを得た。
【0039】
次に、コーティング組成物Fを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約10μmの塗膜Fを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は2.0%以下であり、550nmでの透過率は90%であった。
【実施例7】
【0040】
シコトランスエローL1916(含水酸化鉄、窒素吸着法(BET法)による比表面積80m/g、BASF社製)90部とアクリル-ウレタン樹脂 G(Tg40℃、酸価110)160部およびメチルエチルケトン250部の混合物をサンドミルで分散しコーティング組成物Gを得た。
【0041】
次に、コーティング組成物Fを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約2μmの塗膜Gを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は2.0%以下であり、550nmでの透過率は85%であった。
【実施例8】
【0042】
シコトランスエローL1916(含水酸化鉄、窒素吸着法(BET法)による比表面積80m/g、BASF社製)90部と水溶性アクリル-ウレタン樹脂 H(Tg40℃、酸価70)160部およびイオン交換水250部の混合物をサンドミルで分散しコーティング組成物Hを得た。
【0043】
次に、コーティング組成物Hを100μmのPETフィルムに塗布し、140℃で5分間加熱処理し、膜厚約2μmの塗膜Hを得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は3.5%以下であり、550nmでの透過率は84%であった。
(比較例1)
特開平6−145387の実施例1に示されている通り、攪拌機および循環器つきの1000ml丸底フラスコに溶媒となるシクロヘキサノン58.5g 、ジアセトンアルコール150g、プロピレングリコールモノメチルエーテル390gをはり込み、常温で攪拌しながらアクリルBRー85レジン(三菱レイヨン製)45.5g 投入、さらに攪拌を続けながら蛍光増白剤UVITEXーOB(チバガイギー製)3.25g 、紫外線吸収剤TINUVIN327(チバガイギー製)3.25g を添加し、オイルバスで約30分程度かけて約95℃程度に昇温後、約30分程度保持して完全に溶解させて樹脂塗布用の紫外線吸収性アクリル系プライマー組成物を得た。本組成物をガラス基板上に塗布し、膜厚約5μmの塗膜 I を得た。塗膜の透過スペクトルを測定した結果、400nm以下の波長領域の透過率は5%以下であり、550nmでの透過率は89%であった。
【0044】
実施例1から8および比較例1で得られた塗膜を、暴露試験用超高圧水銀灯を用いて100時間光照射したところ、表1に示す通り、実施例1から8の塗膜は400nm以下の波長領域が5.0%以下であったのに対し、比較例1の塗膜は22.0%に低下していた。





【表1】

【0045】
以上の通り、本発明のコーティング組成物は、多くの種類の昆虫が好む波長400nm以下の領域の波長を吸収し、かつ可視領域での透明性に優れており、また顔料を用いていることから耐性が高く、屋外照明のコーティングに非常に有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400nm以下の光を吸収し、それより長い波長の光に透明な顔料と、塗膜形成性材料と、溶剤とを含有することを特徴とする防誘虫コーティング組成物。
【請求項2】
顔料が無機顔料である防誘虫コーティング組成物。
【請求項3】
無機顔料が酸化鉄である請求項2記載の防誘虫コーティング組成物。
【請求項4】
塗膜形成時に400nm以下の光を95%以上吸収した場合の550nmの透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の防誘虫コーティング組成物。
【請求項5】
顔料が、窒素吸着法(BET法)による比表面積が50m2/g以上である請求項1ないし4いずれか記載の防誘虫コーティング組成物。



【公開番号】特開2006−176695(P2006−176695A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372779(P2004−372779)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】