説明

防護装備、隔離設備およびフィルタ

【課題】空気を浄化して人に供給したり、人が排出する空気を浄化したりすることができる防護装備、隔離設備およびフィルタを提供する。
【解決手段】人の口または鼻を外部から気密に覆うカバー10と、カバー10内に浄化した空気を供給し、カバー10内を外気よりも高い圧力に維持し得る空気浄化装置20とを備えており、空気浄化装置20が、吸引部21と、浄化手段25と、排出部26とを備えており、吸引部21が、密封容器23と、密封容器23内の空間とカバー10内とを連通する吸気通路22と、密封容器23内の空間と排出部26とを連通する排気通路23cと、密封容器23内に封入され、その空間内の空気を吸引し、排気通路23cに排出する吸引手段24とからなり、吸引手段24は、密封容器23内の空気を吸引する吸引口24aが、吸気通路22における密封容器23側の一端と分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護装備、隔離設備およびフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中に存在する有害物質やウイルスなど人が吸引することを防止する装備が開発されている(特許文献1)。
この装備は、人の顔全体を覆うフェイスピースと、このフェイスピース内に外部から吸引される空気を浄化するフィルタを備えている。このため、人が呼吸しても有害物質やウイルスなどはフィルタで除去されるから、人が有害物質を吸引したりウイルスに感染したりすることを防ぐことができる。
【0003】
ところで、病院や老人福祉施設等においては、抵抗力が低下し細菌等に感染しやすい患者は室内が陽圧に保たれた無菌室において抵抗力が回復するまで治療され、逆に流行性の高い感染病の患者は外部に細菌等が拡散しないように室内が陰圧に保たれた感染症用治療室において治療される。そして、無菌室や感染症用治療室に隔離された患者は、その室内での移動は許容されるものの、無菌室や感染症用治療室からの移動は制限される。
【0004】
かかる患者のうち、抵抗力が低下し細菌等に感染しやすい患者であれば、上記装備を装着することで、無菌室外で活動しても、細菌などに感染する可能性を低くできる可能性はある。
しかし、上記装備は、フェイスピース内に吸引される空気はフィルタで浄化できるが、フェイスピースから排出される空気を浄化するフィルタ等は有していないので、感染病の患者は上記装備をつけても感染症用治療室から外出することはできない。
【0005】
しかも、上記装備では、空気の吸入はフィルタを通して行われているため吸入抵抗が大きくなっているが、空気の吸入排出は患者の呼吸のみで行われており、弱っている患者にとって非常に呼吸が行いにくいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−512641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑み、空気を浄化して人に供給したり、人が排出する空気を浄化したりすることができる防護装備、隔離設備およびフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の防護装備は、人の口または鼻を外部から気密に覆うカバーと、該カバー内に浄化した空気を供給し、該カバー内を外気よりも高い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、該空気浄化装置は、外気を吸引する吸引部と、該吸引部が吸引する外気を浄化する浄化手段と、該浄化手段によって浄化された空気を前記カバー内に排出する排出部とを備えており、前記吸引部が、内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、該密封容器内における中空空間と前記外部とを連通する吸気通路と、該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、該吸引手段は、前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されていることを特徴とする。
第2発明の防護装備は、人の口または鼻を外部から気密に覆うカバーと、該カバー内の空気を吸引し、該カバー内を外気よりも低い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、該空気浄化装置は、前記カバー内の空気を吸引する吸引部と、該吸引部が吸引する空気を浄化する浄化手段と、該浄化手段によって浄化された空気を外部に排出する排出部とを備えており、前記吸引部が、内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、該密封容器内における中空空間と前記カバー内とを連通する吸気通路と、該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、該吸引手段は、前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されていることを特徴とする。
第2発明の防護装備は、第1または第2発明において、前記カバーが、前記人の全身を覆う防護服であることを特徴とする。
第3発明の防護装備は、第1、第2または第3発明において、前記吸引部にフィルタが設けられており、該フィルタは、0.3μm以上の粒子を捕捉し得るプリーツ構造を有するプリーツフィルタを、複数重ねて形成されたものであることを特徴とする。
第4発明の防護装備は、第1、第2または第3発明において、0.3μm以上の粒子を捕捉し得るプリーツ構造を有するプリーツフィルタを、複数重ねて形成されたものであることを特徴とする。
第5発明のフィルタは、0.3μm以上の粒子を捕捉し得るプリーツ構造を有するプリーツフィルタを、複数重ねて形成されたものである
ことを特徴とするフィルタ。
第6発明の防護設備は、中空な内部空間を有する隔離部材と、該隔離部材内に浄化した空気を供給し、該隔離部材内を外気よりも高い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、該空気浄化装置は、外気を吸引する吸引部と、該吸引部が吸引する外気を浄化する浄化手段と、該浄化手段によって浄化された空気を前記隔離部材内に排出する排出部とを備えており、前記吸引部が、内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、該密封容器内における中空空間と前記外部とを連通する吸気通路と、該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、該吸引手段は、前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されていることを特徴とする。
第7発明の防護設備は、中空な内部空間を有する隔離部材と、該隔離部材内の空気を吸引し、該隔離部材内を外気よりも低い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、該空気浄化装置は、前記隔離部材内の空気を吸引する吸引部と、該吸引部が吸引する空気を浄化する浄化手段と、該浄化手段によって浄化された空気を外部に排出する排出部とを備えており、前記吸引部が、内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、該密封容器内における中空空間と前記隔離部材内とを連通する吸気通路と、該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、該吸引手段は、前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、空気浄化装置からカバー内に浄化した空気を供給するので、外気が細菌などによって汚染されていても、カバー内には細菌などを含まない空気を供給することができる。また、空気浄化装置から供給される浄化した空気によって、カバー内が外気よりも高い圧力に維持されているので、カバーの隙間等から外気がカバー内に侵入することを防ぐことができる。しかも、吸引手段が密封容器内に密封されており、かつ、吸引手段の排出口は排気通路に気密に接続されているが吸引口は吸気通路と分離されているから、吸引手段から漏れる空気があっても、その空気は密封容器内に漏れるだけである。すると、外気に含まれる細菌などが浄化手段を通ることなくカバー内に侵入することもない。よって、外気が汚染された環境であっても、人が感染することを確実に防ぐことができる。しかも、吸引手段によって空気が強制的にカバー内に供給されるので、患者の呼吸も容易である。
第2発明によれば、カバー内から吸引した空気を空気浄化装置で浄化して外気に排出するので、人の呼気に細菌等が含まれていても、外部には細菌等を含まない空気を排出することができる。また、空気浄化装置によってカバー内が外気よりも低い圧力に維持されているので、カバーの隙間等からカバー内の空気が漏れることを防ぐことができる。しかも、吸引手段が密封容器内に密封されており、かつ、吸引手段の排出口は排気通路に気密に接続されているが吸引口は吸気通路と分離されているから、吸引手段から漏れる空気があっても、その空気は密封容器外に漏れることはない。すると、カバー内の空気に含まれる細菌などが浄化手段を通ることなく外部に漏れることもない。よって、細菌等に感染した人から、周囲に細菌等が拡散することを確実に防ぐことができる。しかも、カバー内から吸引手段によって強制的に空気が吸引されており、外気がカバー内に自然に流入するようになっているので、患者の呼吸も容易である。
第3発明によれば、カバーによって人の全身が覆われているので、人と外気との接触を極力少なくできるから、人が細菌などに感染する可能性や周囲に細菌などを拡散する可能性をより低くすることができる。
第4発明によれば、プリーツ構造を有するプリーツフィルタを採用しているので、0.3μmより小さい細菌であっても捕捉することができる。したがって、通気性をある程度高く保ちつつ、細菌等を捕捉する機能を高くすることができる。
第5発明によれば、プリーツ構造を有するプリーツフィルタを採用しているので、この0.3μmより小さい細菌であっても捕捉することができる。したがって、通気性をある程度高く保ちつつ、細菌等を捕捉する機能を高くすることができる。
第6発明によれば、空気浄化装置から隔離部材内に浄化した空気を供給するので、外気が細菌などによって汚染されていても、隔離部材内には細菌などを含まない空気を供給することができる。また、空気浄化装置から供給される浄化した空気によって、隔離部材内が外気よりも高い圧力に維持されているので、隔離部材の隙間等から外気が隔離部材内に侵入することを防ぐことができる。しかも、吸引手段が密封容器内に密封されており、かつ、吸引手段の排出口は排気通路に気密に接続されているが吸引口は吸気通路と分離されているから、吸引手段から漏れる空気があっても、その空気は密封容器内に漏れるだけである。すると、外気に含まれる細菌などが浄化手段を通ることなく隔離部材内に侵入することもない。よって、外気が汚染された環境であっても、人が感染することを確実に防ぐことができる。
第7発明によれば、隔離部材内から吸引した空気を空気浄化装置で浄化して外気に排出するので、人の呼気に細菌等が含まれていても、外部には細菌等を含まない空気を排出することができる。また、空気浄化装置によって隔離部材内が外気よりも低い圧力に維持されているので、隔離部材の隙間等から隔離部材内の空気が漏れることを防ぐことができる。しかも、吸引手段が密封容器内に密封されており、かつ、吸引手段の排出口は排気通路に気密に接続されているが吸引口は吸気通路と分離されているから、吸引手段から漏れる空気があっても、その空気は密封容器外に漏れることはない。すると、隔離部材内の空気に含まれる細菌などが浄化手段を通ることなく外部に漏れることもない。よって、細菌等に感染した人から、周囲に細菌等が拡散することを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の防護装備の概略説明図である。
【図2】空気浄化装置20の使用状況説明図であって、(A)は隔離用装備として使用する場合の説明図であり、(B)は感染防止装備として使用する場合の説明図である。
【図3】他の実施形態の防護装備の使用状況説明図である。
【図4】防護設備50Aの使用状況の概略説明図である。
【図5】他の実施形態の防護設備50Bの使用状況の概略説明図である。
【図6】他の実施形態の防護設備50Cの使用状況の概略説明図である。
【図7】(A)は実験に使用した本発明のフィルタの説明図であり、(B)は本発明のフィルタによる鳥インフルエンザ捕捉効果を調べた実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の防護装備1の概略説明図である。図1において、符号10は防護装備1のカバーを示している。このカバー10は、人の頭部を覆うヘッドカバー10aと、人の全身を覆うスーツ10bと備えており、ヘッドカバー10aとスーツ10bとが一体に形成されたものである。つまり、カバー10は、人の頭部からつま先まで、継ぎ目なく完全に覆うように形成されているのである。
このカバー10のヘッドカバー10aおよびスーツ10bは、いずれも気体を透過しない素材によって形成されており、図示しない特別な空気通過部においてのみカバー10とカバー10外との間で空気の流通を許容されるように構成されている。具体的には、空気通過部は、スーツ10bの脇の下などの比較的目立たない箇所に、空気の通過は許容するが液体は通過できないような構造の弁などを設けることによって形成されている。
【0012】
なお、カバー10には、外部との連通された図示しない連通部をもうけてもよい。この連通部の構造はとくに限定されないが、例えば、連通部の構造は、カバー10に貫通孔を形成しその貫通孔の内端縁に複数のひだ状を設けてひだ同士が互い違いに重なり合った構造を採用できる。かかる構造とすれば、ひだ同士が重なり合っているので、空気が連通部を通過しにくくなり、カバー10内部と外部との間の気密性を維持できる。一方、重なり合っているひだの間を通せば、チューブ等をカバー10内に挿入することができる。すると、このカバー10を身に付けた医者が、連通部を通して聴診器等を使用することができるという利点がある。
【0013】
なお、カバー10は、ヘッドカバー10aとスーツ10bとが互いに分離できるように構成されていてもよい。この場合には、両者の隙間から空気が流入流出できるようにしておけば、特別な空気通過部を設けなくてもよい。
また、カバー10はヘッドカバー11だけでもよいし、このヘッドカバー11も、人の頭部全体を覆うものとしなくてもよく、人の口または鼻を外部から気密に覆うマスクのような形状としてもよい。
【0014】
図1に示すように、カバー10の適所、例えば、ヘッドカバー10aには、空気通路15の一端が気密に取り付けられている。この空気通路15の他端は、空気浄化装置20に連結されている。
なお、空気通路15は、例えば、蛇腹状ホースなどのように可撓性を有する中空な部材であるが、その内部に空気を流すことができるものであれば、とくに限定されない。
また、図1では、空気浄化装置20として人が背負うタイプを例示しているが、図3に示すように、空気浄化装置20として人が引いて移動できるトランクタイプとしてもよい。つまり、空気浄化装置20は、人とともに移動できるようになっていればよく、とくに制限されない。
【0015】
つぎに、空気浄化装置20の内部構造を説明する。
図2に示すように、空気浄化装置20は、空気を吸引する吸引部21と、この吸引部21によって吸引された空気を浄化する浄化手段25と、この浄化手段25で浄化された空気(浄化空気)を排出する排気管26とを備えている。
なお、排気管26が特許請求の範囲にいう排出部に相当する。
【0016】
吸引部21は、空気を空気浄化装置20のケース20c内に導入するための吸入通路22を備えている。吸入通路22は、ケース20c外と後述する密封容器23内を連通する通路であり、密封容器23に気密に接続されている。
具体的には、吸入通路22は、吸入管22aとフィルタ部22bとを備えている。
吸入管22aは、中空な筒状の部材で形成されており、その一方の端部(外端)がケース20cの外方に突出し、その他方の端部(内端)がケース20c内に位置するように配設されている。
フィルタ部22bは、中空な筒状の部材で形成されており、その内部にフィルタが設けられている。このフィルタ部22bは、その一方の端部(一端)が吸入管22aの内端と気密に連結されており、その他方の端部(他端)が密封容器23内に位置するように配設されている。
このため、吸入管22aの外端とフィルタ部22bの他端との間で空気を流通させることができる。そして、吸入通路22によって、ケース20c外と密封容器23との間を、ケース20c内の空間に対して気密に保った状態で連通することができる。言い換えれば、空気をケース20c内に漏らすことなく、密封容器23内に空気を流すことができるのである。
【0017】
前記密封容器23は、その内部に中空な空間を有する容器であって、その中空な空間がケース20c内から気密に隔離されたものである。この密封容器23内には、ブロア等の吸引手段24が設けられている。この吸引手段24において、空気を吸引する吸引口24aは、フィルタ部22bの他端と分離されている。つまり、吸引手段24は、密封容器23内の空気を吸引するように構成されている。
また、密封容器23には、中空な筒状の部材で形成された排気通路23cが設けられている。この排気通路23cは、その一方の端部(外方端)が密封容器23の外方に突出し、その他方の端部(内方端)が密封容器23内に位置するように配設されている。
そして、この排気通路23cの内方端には、前記吸引手段24の排気口24bが気密に接続されている。
【0018】
このため、吸引手段24が密封容器23内の空気を吸引すると、密封容器23内の圧力が低下するから、吸入通路22を通して、外部の空気を密封容器23内に吸引することができる。
しかも、密封容器23内の圧力が低下しており、かつ、吸引手段24に吸引された空気は排気通路23cだけを通って密封容器23外に排出される。よって、密封容器23内に流入した空気が、密封容器23からケース20c内に漏れることを防ぐことができる。
また、吸引手段24が密封容器23内に密封されているから、吸引手段24を大型化しても吸引手段24の発生する騒音を低減することができる。例えば、吸引手段24として、一般的な室内設置型の空気浄化装置に使用される数百Pa程度の吸引力しか有しないものに比べて大型の数十kPa以上の吸引力を有するものであっても使用することができる。
さらに、吸引手段24が大型化すれば吸引手段24が発生する熱も増大するため、密封容器23内に密封すれば、冷却不良による吸引手段24の故障が問題となる。しかし、吸引手段24の吸引口24aがフィルタ部22bの他端と分離されているから、吸引手段24が密封容器23内の空気を吸引するときに、密封容器23内には気流が形成される。すると、この気流によって吸引手段24が冷却されるから、吸引手段24が密封容器23内に密封されていても、吸引手段24が温度上昇により損傷することを防ぐことができる。
【0019】
図2に示すように、吸引部21の下流側には、フィルタ部25aと加熱部25bとを備えた浄化手段25が設けられている。
フィルタ部25aは、中空な筒状の部材で形成されており、その内部にフィルタが設けられたものである。このフィルタ部25aは、その一方の端部(一端)が排気通路23cの外方端に気密に接続されている。
加熱部25bは、気密に保たれた気体通路を有し、この気体通路内の気体を加熱する、例えば、ヒータやバーナー等の空気を加熱する加熱器を備えたものである。この加熱部25bの気体通路は、その一方の端部(流入口)は前記フィルタ部25aの他方の端部(他端)と気密に接続されている。
このため、密封容器23から排気通路23cを通して浄化手段25に供給される空気を、ケース20c内に漏らすことなく、フィルタ部25aのフィルタ、および、加熱部25bの加熱器によって浄化することができるのである。
【0020】
また、ケース20cには、排気管26が設けられている。この排気管26は、中空な筒状の部材で形成されており、その一方の端部(外端)がケース20cの外方に突出し、その他方の端部(内端)がケース20c内に位置するように配設されている。そして、排気管26の内端は、浄化手段25の加熱部25bにおける気体通路の他方の端部(流出口)と気密に接続されているから、浄化手段25で浄化された空気を、排気管26を通してケース20c外に排出することができるのである。
【0021】
以上のごとき構成であるから、図2(A)に示すように、空気通路15の他端を、空気浄化装置20の排気管26の外端に気密に接続すれば、浄化手段25によって浄化された浄化空気をカバー10内に供給することができる。すると、外気が細菌などによって汚染されていても、カバー10内には細菌などを含まない空気を供給することができる。つまり、本実施形態の防護装備1を、感染防止装備として使用することができる。
また、空気浄化装置20から供給される浄化した空気によって、カバー10内が外気よりも高い圧力に維持されているので、万が一、カバー10に隙間や孔等があったとしても外気がカバー10内に侵入することを防ぐことができる。
しかも、吸引手段24が密封容器23内に密封されており、かつ、吸引手段24の排出口24bは排気通路23cに気密に接続されているが吸引口24aは吸気通路22と分離されているから、吸引した空気が吸引手段24から漏れても、その空気は密封容器23内に漏れるだけである。すると、外気に含まれる細菌などが浄化手段25を通らずにカバー10内に侵入することもない。よって、外気が細菌等に汚染されていても、人が細菌等に感染することを確実に防ぐことができる。
しかも、吸引手段24によって空気が強制的にカバー10内に供給されるので、患者の呼吸も容易である。なお、強制的に供給された空気は空気通過部から排出されるので、カバー10の内部の気圧が高くなりすぎることもない。
【0022】
逆に、図2(B)に示すように、空気通路15の他端を、空気浄化装置20の吸入管22aの外端に気密に接続すれば、カバー10内の空気を吸引し浄化手段25によって浄化して、浄化空気を外気中に排出することができる。すると、カバー10内から吸引した空気、つまり、人の呼気に細菌等が含まれていても、外部には細菌などを含まない空気を排出することができる。つまり、本実施形態の防護装備1を、隔離用装備として使用することができる。
また、空気浄化装置20によってカバー10内が外気よりも低い圧力に維持されているので、万が一、カバー10に隙間や孔等があったとしてもカバー10内の空気が外部に漏れることを防ぐことができる。
しかも、吸引手段24が密封容器23内に密封されており、かつ、吸引手段24の排出口24bは排気通路23cに気密に接続されているが吸引口24aは吸気通路22と分離されているから、吸引した空気が吸引手段24から漏れても、その空気は密封容器23内に漏れるだけである。すると、カバー10内の空気に含まれる細菌などが浄化手段25を通らずに外部に漏れることもない。よって、細菌等に感染した人から、周囲に細菌等が拡散することを確実に防ぐことができる。
しかも、吸引手段24によってカバー10内から強制的に空気が吸引されており、外気が、空気通過部から自然に流入するようになっているので、患者の呼吸も容易である。
【0023】
なお、上記の例では、フィルタ部25aの下流側に加熱部25bを設けているが、加熱部25bは必ずしも設けなくてもよい。しかし、加熱部25bを設けておけば、フィルタ部25aを通過した空気を加熱して殺菌滅菌することができるため、万が一、フィルタ部25aによって捕捉できない細菌やウイルス等があったとしても、その細菌やウイルス等が熱に弱いものであれば死滅させることができる。とくに、加熱部25bにおいて空気を100 ℃以上に加熱するようにしておけば、空気を滅菌することができるし、さらに300 ℃以上に加熱すればより確実に滅菌することができる。とくに、加熱部25bが、加熱器によって加熱された加熱空気を、再び加熱する再加熱部材を備えていれば、細菌やウイルス等を滅菌・殺菌する効果をさらに高くすることができる。この再加熱部材には、空気の流路に配設される、ハニカムやパンチングプレート、セラミック、剣山型、ワイヤメッシュ等を採用することができる。このような再加熱部材の温度が、加熱器の熱や特別に設けられたヒータの熱等によって、再加熱部材の位置まで流れてきた加熱空気の温度よりも高くなるようにしておけば、加熱空気を再加熱部材によって再び加熱することができる。しかも、再加熱部材によって加熱空気の流れが阻害されるため、再加熱部材近傍に加熱空気を長く滞留させることができる。言い換えれば、再加熱部材によって加熱空気を加熱する時間を長くすることができるから、細菌やウイルス等を滅菌・殺菌する効果をさらに高くすることができる。とくに、ハニカム等のように表面積の大きい再加熱部材を使用すれば、加熱空気と再加熱部材の接触機会を増やすことができ、加熱空気と再加熱部材の接触時間もより一層長くすることができるから、細菌やウイルス等を滅菌・殺菌する効果をより一層高くすることができる。なお、図2(A)に示すように、カバー10内に浄化した空気を供給する場合等のように、高温の空気を排出することができない場合には、加熱部25bの下流側に冷却部を設けておくことが好ましい。
さらになお、浄化手段25には、加熱部25bとともに、または、加熱部25bに代えて、殺菌灯や細菌等を薬剤等によって殺菌する殺菌器等を設けてもよく、この場合でも、空気中の細菌やウイルス等を殺菌・滅菌することができる。
さらになお、フィルタ部25aを設けずに、上記の加熱部25bだけを設けることも可能であるが、両方を備えている方が空気を確実に浄化することができる。
【0024】
(防護設備)
上述した空気浄化装置20を利用すれば、細菌やウイルス等に感染した患者を隔離するための隔離室や、逆に、細菌やウイルス等に汚染された場所において汚染されていない空間(避難室)を形成することも可能である。
以下に、隔離室や避難室などの防護設備について説明する。
【0025】
図4において、符号50Aは、本実施形態の防護設備を示している。この防護設備50Aは、中空な空間を形成することができる隔離部材51と、この隔離部材51の中空な空間と連通された前記空気浄化装置20とから構成されている。
【0026】
隔離部材51は、外部から概ね気密に隔離できる空間を内部に形成できる隔離袋52と、この隔離袋52をその内部に中空な空間を形成した状態で維持するための枠部材53とから構成されている。
【0027】
隔離袋52は、袋状に形成された部材であり、前記カバー10と同様に、気体を透過しない素材によって形成されている。この隔離袋52には、開口部が設けられており、この開口部がファスナ52a等よって開閉できるようになっている。
また、隔離袋52は、チューブなどの空気通路54によって空気浄化装置20と連通されている。例えば、隔離室として使用する場合には、空気通路54は空気浄化装置20の吸気通路22と接続され、避難室として使用する場合には、空気通路54は空気浄化装置20の排気管26と接続される。
【0028】
枠部材53は、隔離袋52の内部に中空な空間を形成した状態で維持する骨組みである。
この枠部材53は、例えば、複数本のパイプ材とジョイントとから構成されており、これらを組み合わせて所定の形状、例えば、図4の場合であれば、略直方体状となるように組み立てられる。
このため、枠部材53を隔離袋52内で組み立てれば、枠部材53は、その内部の空間が、枠部材53の形状、つまり、略直方体状となった状態で維持されるのである。
【0029】
以上のごとき構成であるから、空気通路54の他端を、空気浄化装置20の排気管26の外端に気密に接続すれば、空気浄化装置20から浄化された浄化空気を隔離袋52内に供給することができる。すると、外気が細菌などによって汚染されていても、隔離袋52内には細菌などを含まない空気を供給することができる。つまり、隔離袋52内を細菌などを含まない空気のみで満たされた空間とすることができるから、本実施形態の防護設備50Aを避難室として使用することができる。
【0030】
逆に、空気通路15の他端を、空気浄化装置20の吸気通路22の外端に気密に接続すれば、隔離袋52内の空気を吸引し浄化手段25によって浄化して、浄化空気を外気中に排出することができる。すると、隔離袋52内にウイルス等に感染した人を収容しておけば、隔離袋52内から吸引した空気、つまり、人の呼気に細菌等が含まれていても、外部には細菌などを含まない空気を排出することができるから、本実施形態の防護設備50Aを隔離室として使用することができる。
【0031】
ここで、隔離袋52の開口部に設けられているファスナ52a等の気密性が高い場合には、上述したカバー10と同様に、隔離袋52内と隔離袋52外との間で空気の流通を許容する特別な空気通過部を設けなければならない。しかし、ファスナ52a等による気密性がそれほど高くない場合には、ファスナ52a等を通って空気が流通できるので、特別な空気通過部は不要である。
このような場合でも、避難室として使用する場合には、空気浄化装置20によって隔離袋52内が外気よりも高い圧力に維持されるので、ファスナ52a等から外部の空気が隔離袋52内に侵入することは防ぐことができる。また、隔離室として使用する場合でも、空気浄化装置20によって隔離袋52内が外気よりも低い圧力に維持されるので、ファスナ52a等から隔離袋52内の空気が外部に漏れることは防ぐことができる。
【0032】
ここで、上記のごとき空気の漏れや侵入を防ぐ上では、隔離袋52内と外部との間の圧力差は、約20Pa程度かそれ以上であることがことが好ましい。そして、かかる圧力差を維持しつつ、隔離袋52内の人(感染者または避難者)の居住環境を好ましい状態に維持する上では、その内部の換気が重要であり、1時間で隔離袋52の空気を7回程度換気ができることが好ましい。よって、本発明の防護設備50Aの場合では、かかる換気を行うことができるように、空気浄化装置20の性能(例えば、吸引手段の性能等)を調整することが好ましい。
【0033】
なお、図4では、隔離袋52内に枠部材53を設ける場合を説明したが、図5に示すように、枠部材53は隔離袋52外に設け、枠部材53に隔離袋52を吊り下げるなどの方法で取り付けてもよい。かかる防護設備50Bの場合、枠部材53を隔離袋52内に設ける場合に比べて設置が容易であるし、隔離袋52を閉じたままで作業ができるので、設置作業中に隔離袋52内が汚染することがないという利点がある。
【0034】
また、ウイルス等によって空気が汚染された屋外において、上述しようなカバー10を着用して作業を行う場合などには、図6に示すような防護設備50Cを使用することが好ましい。なお、図6では、特徴を分かり易くするために、空気浄化装置20や枠部材53は省略している。
【0035】
図6において、符号Bは、作業者等が待機したり滞在したりする建物を示している。この建物Bの出入り口には、防護設備50Cが設けられている。
【0036】
この防護設備50Cは、2つの隔離室RA,RBを備えたものである。各隔離室RA,RBは、上述した防護設備50Aまたは防護設備50Bと実質的に同等の構造を有するものであり、各隔離室RA,RBの一つの側面を共有した状態となるように形成されている。そして、この共有している側面には、ファスナ52a等よって両室間を隔離連通することができる開口部が設けられている。
【0037】
また、各隔離室RA,RBには、ファスナ52a等よって開閉できる開口部を備えており、この隔離室RAの開口部から外部に出ることができ、また、隔離室RBの開口部からは建物B内に入ることができるように配置されている。
【0038】
そして、各隔離室RA,RBには、それぞれ独立した空気浄化装置20が連通されており、隔離室RAは外気よりも気圧が高く、隔離室RBは隔離室RAは外気よりも気圧が高くなるように調整されている。
なお、隔離室RBが連通されている建物B内は、隔離室RBよりも気圧が高くなるように調整される。
【0039】
以上のごとき防護設備50Cを使用すれば、ウイルス等によって空気が汚染された屋外で作業を行っても、建物B内にウイルス等が持ち込まれることを防ぐことができる。
以下、建物B内から屋外作業に行く場合、および、屋外作業から建物B内に戻る場合を説明する。
【0040】
まず、建物B外に行くときには、隔離室RBの開口部から隔離室RB内に作業者が入り、隔離室RB内に置いているカバー10等の防護装備を、隔離室RB内で作業者が身に付ける。そして、隔離室RA,RB間の開口部を通って隔離室RAに移動し、この開口部を閉めた後、隔離室RAに設けられている開口部から外部に出て作業を行う。
この間、建物Bおよび各隔離室RA,RB内の気圧が上記のように調整されているので、隔離室RBや建物B内には外気が侵入しない。
【0041】
作業が終了すると、隔離室RAの開口部から隔離室RA内に入る。そして、隔離室RAの開口部を閉めれば、隔離室RA内には外気が侵入しない。
この隔離室RAに、エタノールやアルコール等を噴射する装置などの殺菌手段を設けておき、この殺菌手段によって隔離室RA内においてカバー10等を消毒し、防護装備1のカバー10や空気清浄装置20に付着しているウイルスなどを完全に殺菌する。このとき、エタノールやアルコール等を空気清浄装置20内に吸引すれば、空気清浄装置20内も殺菌できる。
また、作業者が隔離室RA内に入るときに、ウイルス等が持ち込まれている可能性があるので、隔離室RAの内部も合わせて殺菌する。
【0042】
上記殺菌作業が終了すると、隔離室RA,RB間の開口部を通って隔離室RBに移動し、この開口部を閉めた後、カバー10等を脱いで、隔離室RBの開口部から建物B内に移動する。このときも、建物B内は隔離室RBよりも気圧が高く、隔離室RBは隔離室RAよりも気圧が高いので、建物B内にウイルス等が持ち込まれることはない。
【0043】
(フィルタの説明)
また、空気浄化装置20における浄化手段25のフィルタ部25aには、上流側から下流側にむかって順に、大きな埃を除去するための除塵フィルタと、本発明のフィルタの順番で配置されている。
【0044】
本発明のフィルタは、複数のプリーツ構造を有するフィルタ(プリーツフィルタとHEPAフィルタ)を重ねて形成されたものである。
プリーツフィルタは、0.3μmの粒子を99.5%除去できる捕捉性能(JIS B 9908準拠法試験)を有するものである。つまり、フィルタの目開き(開口径)が約0.3μmに形成されたものである。このプリーツフィルタは、例えば、フィルタとして機能する部分に金属性の部材を使用せず、フィルタとして機能する部分を紙のみで形成したものであるが、フィルタとして機能する部分を形成する素材はとくに限定されない。
また、HEPAフィルタは、プリーツ構造を有するフィルタであって、0.3μmの粒子を99.99%除去できる捕捉性能(IES規格)を有するものである。
【0045】
これらのフィルタは、0.3μmより小さい粒子、とくに、約0.1μmの鳥インフルエンザウイルスに対する捕捉効率は補償されないのであるが、上記のごとくプリーツ構造を有するフィルタを重ねれば、各フィルタによって、より小さい細菌等でも高い効率(99.99%以上)で捕捉することができる。
しかも、約0.1μmにおいて99.99%以上の効率を有するフィルタに比べて通気性がよいので、吸引手段24にかかる負担を軽減することができる。
【0046】
なお、HEPAフィルタに代えて、セミHEPAフィルタまたはULPAフィルタを使用してもよい。
また、吸引部21のフィルタ部22bにも、フィルタ部25aと同じフィルタを設けてもよい。
【実施例】
【0047】
本発明のフィルタ、プリーツ構造を有するフィルタを重ねたフィルタ(実施例1、2)による鳥インフルエンザウイルスを含む空気の浄化効果を確認した。
【0048】
実験は、以下の方法で行った。
1)吸引ポンプによって、試験装置に、試験フィルタを通過した空気がインピンジャー(柴田科学株式会社製、85GP250)に流入するように空気の流れを形成する。
2)その後、減菌リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)でおよそ10EID50/0.1mlに希釈した鳥インフルエンザウイルスを含むウイルス液を、ネプライザー(新鋭工業株式会社製、ミリコンS MMN-30s)を用いて試験装置の空気中に10分間噴霧した。
3)そして、フィルタを通過したウイルスを、インピンジャーを用いて20mlの減菌PBSに捕集した。
4)減菌PBSによって捕集されたウイルスを含むウイルス捕集液は、抗生物質を含む減菌PBSで10倍階段希釈し、10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔に0.1ml接種した。
5)希釈ウイルス液を接種された発育鶏卵を37℃で2日間培養した後、赤血球凝集(HA)試験により漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を確認し、捕集液中のウイルス感染価(50%発育鶏卵感染量(50% egg influence dose(EID50/0.1ml)))を Reed and Muench (Am. J. Hyg, 1938) の方法により算出した。
【0049】
また、図7(A)に示すように、実施例1のフィルタは、0.3μmの粒子を99.5%除去できる捕捉性能を有するプリーツフィルタと、プリーツ構造を有するHEPAフィルタとを重ねたものであり、実施例2のフィルタは、プリーツ構造を有する2つのHEPAフィルタを重ねたものである。そして、試験装置の空気をフィルタを通さずそのままインピンジャーによって捕集して、ウイルス液を噴霧した空気中のウイルス量も調べている(図7(B)のフィルタなし)。
なお、上記実験は、実施例1とフィルタなしの場合には、独立して3回実施し、実施例2では1回実施している。
【0050】
上記実験に使用した鳥インフルエンザウイルスは、1983年に島根県で野生のコハクチョウから分離された A/whistling swan/Shimane/499/83 (H5N3)である。試験では、この鳥インフルエンザウイルスを10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔に接種し、37℃で2日間インキュベーションした後、無菌的に回収した漿尿液をウイルス液として用いた。
【0051】
なお、上記実施例1では、フィルタにおける厚さ75mmのHEPAフィルタ側から空気が通るよう空気の流れを形成しており、空気が流入するHEPAフィルタの前に除塵用フィルタを設けている。吸引ポンプによって形成される空気の風速は、約0.22m/分と約0.34m/分である、
【0052】
図7(B)に結果を示す。図7(B)に示すように、フィルタなし、つまり、ウイルスを噴霧した空気では、鳥インフルエンザウイルスに対する50%発育鶏卵感染量が104.5以上である。
実施例1、2のフィルタを通過した空気では、鳥インフルエンザウイルスに対する50%発育鶏卵感染量は10-0.5以下であり、空気中の鳥インフルエンザウイルスを本発明のフィルタによって捕捉できていることが確認できる。
以上のことから、上記実験では、実施例1のフィルタに使用しているプリーツフィルタおよびプリーツ構造を有するHEPAフィルタとを重ねたフィルタ、および、実施例2のプリーツ構造を有するHEPAフィルタを2枚重ねたフィルタでは、大きさが約0.1μmの鳥インフルエンザウイルスを高い確率で捕捉することができることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の空気浄化装置は、老人福祉施設や病院、企業や大学などの研究施設等において医師や研究者等が細菌等に感染することを防止するの設備や、空港等において細菌等に感染していることが疑われる人を一時的に隔離する設備に適している。
【符号の説明】
【0054】
10 カバー
20 空気浄化装置
21 吸引部
22 吸気通路
23 密封容器
23c 排気通路
24 吸引手段
24a 吸引口
24b 排気口
25 浄化手段
26 排出部
50 防護設備
51 隔離部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の口または鼻を外部から気密に覆うカバーと、
該カバー内に浄化した空気を供給し、該カバー内を外気よりも高い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、
該空気浄化装置は、
外気を吸引する吸引部と、
該吸引部が吸引する外気を浄化する浄化手段と、
該浄化手段によって浄化された空気を前記カバー内に排出する排出部とを備えており、
前記吸引部が、
内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、
該密封容器内における中空空間と前記外部とを連通する吸気通路と、
該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、
前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、
該吸引手段は、
前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、
前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されている
ことを特徴とする防護装備。
【請求項2】
人の口または鼻を外部から気密に覆うカバーと、
該カバー内の空気を吸引し、該カバー内を外気よりも低い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、
該空気浄化装置は、
前記カバー内の空気を吸引する吸引部と、
該吸引部が吸引する空気を浄化する浄化手段と、
該浄化手段によって浄化された空気を外部に排出する排出部とを備えており、
前記吸引部が、
内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、
該密封容器内における中空空間と前記カバー内とを連通する吸気通路と、
該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、
前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、
該吸引手段は、
前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、
前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されている
ことを特徴とする防護装備。
【請求項3】
前記カバーが、
前記人の全身を覆う防護服である
ことを特徴とする請求項1または2記載の防護装備。
【請求項4】
前記吸引部にフィルタが設けられており、
該フィルタは、
0.3μm以上の粒子を捕捉し得るプリーツ構造を有するプリーツフィルタを、複数重ねて形成されたものである
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の防護装備。
【請求項5】
0.3μm以上の粒子を捕捉し得るプリーツ構造を有するプリーツフィルタを、複数重ねて形成されたものである
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
中空な内部空間を有する隔離部材と、
該隔離部材内に浄化した空気を供給し、該隔離部材内を外気よりも高い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、
該空気浄化装置は、
外気を吸引する吸引部と、
該吸引部が吸引する外気を浄化する浄化手段と、
該浄化手段によって浄化された空気を前記隔離部材内に排出する排出部とを備えており、
前記吸引部が、
内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、
該密封容器内における中空空間と前記外部とを連通する吸気通路と、
該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、
前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、
該吸引手段は、
前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、
前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されている
ことを特徴とする防護設備。
【請求項7】
中空な内部空間を有する隔離部材と、
該隔離部材内の空気を吸引し、該隔離部材内を外気よりも低い圧力に維持し得る空気浄化装置とを備えており、
該空気浄化装置は、
前記隔離部材内の空気を吸引する吸引部と、
該吸引部が吸引する空気を浄化する浄化手段と、
該浄化手段によって浄化された空気を外部に排出する排出部とを備えており、
前記吸引部が、
内部に、外部から気密に密封された中空空間を備えている密封容器と、
該密封容器内における中空空間と前記隔離部材内とを連通する吸気通路と、
該密封容器内における中空空間と前記浄化手段とを連通する排気通路と、
前記密封容器の中空空間内に封入され、該中空空間内の空気を吸引し、前記排気通路に排出する吸引手段とからなり、
該吸引手段は、
前記密封容器の中空空間内の空気を吸引する吸引口が、前記吸気通路における前記密封容器側の一端と分離されており、
前記空気を排気通路に排出する排出口が、前記排気通路における前記密封容器側の一端と気密に連結されている
ことを特徴とする防護設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−219865(P2009−219865A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30626(P2009−30626)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(508203666)株式会社イハラ (2)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】