説明

防錆性に優れた両面透明導電膜シートとその製造方法

【課題】 防錆性に優れた両面透明導電膜シートとその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、基体シートの両面に、中央窓部に透明導電膜の電極パターンが形成され、外枠縁部に当該電極パターンのための細線引き回し回路パターンが形成され、当該両面の電極パターンおよび細線引き回し回路パターンが異なる両面透明導電膜シートであって、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層が端子部は除いて被覆形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDA、小型PCなどに使われる静電容量式タッチセンサーなどに適用できる両面透明導電膜シートに関するものであり、とくに防錆性に優れていることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
従来、透明絶縁材より成る基板の表裏両面に透明電極パターンを形成することができる透明電極基板の製造方法の発明として特許文献1があった。上記特許文献1の発明は、両面に透明電極の材料を塗布した透明絶縁材よりなる基板を複数枚積層し、最上層の基板の一面側からレーザー光線を照射して、各基板の両面に塗布された上記透明電極材料を同時に除去すると共に、レーザー光線の照射位置を所定のパターンに沿って移動させることにより、各基板の両面に透明電極を同時に形成することを特徴とする発明である。
【0003】
しかし、特許文献1の発明は、同一パターンの透明電極を両面に形成する場合に限られる問題があった。従って、静電容量センサーのパターンのように、表裏のパターンが異なりしかも両者の位置合わせが必要な場合には適用ができない問題があった。
【0004】
また、レーザー光線の照射位置を所定のパターンに沿って移動させるため、パターン化に時間がかかり生産性が低い問題もあった。
【0005】
そこで、かかる問題を解消するために、基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成した後、両面同時に第一レジスト層を露光し、現像してパターン化した後、露出した遮光性導電膜および透明導電膜を両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に電極パターン、外枠縁部に細線引き回し回路パターンを得、次いでパターン化した第一レジスト層を剥離した後、両面同時に前記細線引き回し回路パターン上に第二レジスト層を被覆形成し、当該第二レジスト層が形成されていない遮光性導電膜のみを両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜のみからなる電極パターンを露出形成する構成の両面透明導電膜シートの製造方法が、本出願人において先に提案されている(先願未公知のため公知文献を示すことはできない)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−320637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、先に提案した発明は、遮光性導電膜および透明導電膜を同時に効率よくエッチングする必要があるために、かなり濃度の高い塩化第2鉄水溶液等を使用する必要があり、細線引き回し回路パターン上に被覆形成された第二レジスト層がエッチング液で多少劣化したり膨潤したりして、長期間に渡る細線引き回し回路パターンの保護には不十分な場合もある。そのため、エッチング後の水洗洗浄が不十分であると、高温高湿などの環境試験下において引き回し回路の腐食が進み、電気特性が劣化する問題があった。従って、静電容量式タッチセンサーなどに適用される両面透明導電膜シートのように引き回し回路が細線でかつ長期間に渡って低抵抗を維持しなければならないという用途には、その状態のままでは適用できない問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、防錆性に優れた両面透明導電膜シートとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために、以下のような発明をした。すなわち、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、透明な基体シートの両面に、中央窓部に透明導電膜の電極パターンが形成され、外枠縁部に当該電極パターンのための細線引き回し回路パターンが形成され、当該両面の電極パターンおよび細線引き回し回路パターンが異なる両面透明導電膜シートであって、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層が端子部は除いて被覆形成されている。
【0010】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、前記細線引き回し回路パターンが透明導電膜および遮光性導電膜が順次積層されているように構成してもよい。
【0011】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、前記電極パターン上にも前記透光性の防錆用塗膜層が被覆形成されているように構成してもよい。
【0012】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、前記透光性の防錆用塗膜層が、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなるように構成してもよい。
【0013】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、前記基体シートが二層構造からなるように構成してもよい。
【0014】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートは、さらに前記細線引き回し回路パターンの端子部に接続されるICチップが搭載された外部回路を備えることにより、静電容量式タッチセンサーとして作動するように構成してもよい。
【0015】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートの製造方法は、透明な基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、次いで両面とも第一レジスト層を露光し、現像してパターン化した後、露出した遮光性導電膜および透明導電膜を両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる電極パターンを形成するとともに、外枠縁部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる細線引き回し回路パターンを形成し、次いで第一レジスト層を剥離した後、両面とも前記細線引き回し回路パターン上に第二レジスト層を被覆形成し、当該第二レジスト層が形成されていない遮光性導電膜のみを両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜の回路パターンを露出形成し、次いで第二レジスト層を剥離した後、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層を端子部は除いて被覆形成する。
【0016】
また、本発明の防錆性に優れた両面透明導電膜シートの製造方法は、二枚の透明な基体シート上にそれぞれ透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、当該基体シートの前記各層を形成していない面どうしを対向して積層することにより積層された基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、次いで両面とも第一レジスト層を露光し、現像してパターン化した後、露出した遮光性導電膜および透明導電膜を両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる電極パターンを形成するとともに、外枠縁部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる細線引き回し回路パターンを形成し、次いで第一レジスト層を剥離した後、両面とも前記細線引き回し回路パターン上に第二レジスト層を被覆形成し、当該第二レジスト層が形成されていない遮光性導電膜のみを両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜の回路パターンを露出形成し、次いで第二レジスト層を剥離した後、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層を端子部は除いて被覆形成するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記したように基体シートの両面に、中央窓部に透明導電膜の電極パターンが形成され、外枠縁部に当該電極パターンのための細線引き回し回路パターンが形成され、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層が端子部は除いて被覆形成されているような両面透明導電膜シートを提供するものである。したがって、非常に防錆性に優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る両面透明導電膜シートの一実施例を示す模式断面図である。
【図2(a)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(b)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(c)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(d)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(e)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(f)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図2(g)】図1の両面透明導電膜シートを製造する工程を示す模式図である。
【図3】本発明に係る両面透明導電膜シートの別の一実施例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示す防錆性に優れた両面透明導電膜シート5は、透明な基体シート7の両面に、中央窓部24に透明導電膜3の電極パターン9が形成され、外枠縁部22に透明導電膜3および遮光性導電膜1が順次積層された細線引き回し回路パターン10が形成され、当該両面の電極パターン9および細線引き回し回路パターン10が異なる両面透明導電膜シートであって、両面において電極パターン9および細線引き回し回路パターン10上に透光性の防錆用塗膜層30が端子部は除いて被覆形成されている。
【0021】
ここで、両面の電極パターン9および細線引き回し回路パターン10が異なるとは、静電容量式タッチセンサーの電極パターンの形状および配置が以下のようになるためである。すなわち、一方の面にはX電極x1,x2,x3,...と、他方の面にはY電極y1,y2,y3,...と前記電極パターン9が設けられている。X電極x1,x2,x3,...は平行に配され、その長手方向に、対向する2つの角が並ぶように多数の方形が配された構成をなしている。また、Y電極y1,y2,y3,...も同様に、平行に配され、その長手方向に、対向する2つの角が並ぶように多数の方形が配された構成をなしている。これにより、中央窓部24には、方形が僅かな隙間を残して入力面を埋めつくすように配される。
【0022】
このような透明導電膜3の回路パターンおよび細線引き回し回路パターン10を両面に形成する両面透明導電膜シート5の製造方法は、まず基体シート7の表裏両面に、透明導電膜3、遮光性導電膜1、第一レジスト層16を順次全面形成した後、表裏それぞれ所望のパターンのマスク12を載せ、露光・現像して第一レジスト層16をパターン形成する(図2(a)参照)。あるいは厚みの薄い二枚の基体シート7を用いて、それぞれの片面に透明導電膜3、遮光性導電膜1、第一レジスト層16を順次全面形成した後、これらの二枚の基体シート7が対向するように積層し、当該積層された基体シートの表裏それぞれ所望のパターンのマスク12を載せ、露光・現像して第一レジスト層16をパターン形成した両面透明導電膜シート5としてもよい(図2(b)参照)。その際、遮光性導電膜1が反対側の面の露光光線14を遮断するので、両面で異なるマスクパターンで露光しても反対側の第一レジスト層16のパターンに影響を及ぼすこともない。なお、基体シート7の積層手段としては熱ラミネートや接着剤層を介したドライラミネートなどが挙げられる。
【0023】
次いで、塩化第二鉄などのエッチング液で透明導電膜3および遮光性導電膜1を同時にエッチングし、細線パターンを形成する(図2(c)参照)。次いで、レジスト剥離液でもって第一レジスト層16を剥離し、遮光性導電膜1を露出させた後、露出した遮光性導電膜1のうち外枠縁部22の部分のみに第二レジスト層18を形成する(図2(d)参照)。次いで、酸性化した過酸化水素などの特殊エッチング液でエッチングすると、第二レジスト層18が形成されている外枠縁部22はそのまま残り、第二レジスト層18が形成されず遮光性導電膜1が露出されたままの中央窓部24は遮光性導電膜1がエッチング除去され、その下にある透明導電膜3が露出して電極パターン9となる(図2(e)参照)。中央窓部24は両面に透明の導電膜が形成されたディスプレイ部となり、外枠縁部22に形成された遮光性導電膜1およびその下に同一のパターンで形成された透明導電膜3は細線引き回し回路パターン10となる。
【0024】
ただし、この状態では中央窓部に透明導電膜3の電極パターン9が露出しており、第二レジスト層18も特殊エッチング液で多少劣化したり膨潤したりして、長期間に渡る透明導電膜3および遮光性導電膜1の保護には不十分な場合もある。しかも、細線引き回し回路パターン10の端子部も第二レジスト層18で覆われてしまっている。そこで、本発明では、第二レジスト層を剥離した後、電極パターン9および細線引き回し回路パターン10を透光性の防錆用塗膜層30で端子部を除き被覆し透明導電膜3および遮光性導電膜1のさらなる保護を図っている(図2(f)参照)。
【0025】
そして、以上の方法により得られた防錆性に優れた両面透明導電膜シート5の両面に形成された細線引き回し回路パターン10の端子部をFPC(Flexible Printed Circuits)などを介してICチップが搭載された外部回路28に接続すれば、基体シート7を挟んで透明導電膜3が両面に形成された静電容量式タッチセンサーが製造される(図2(g)参照)。
【0026】
次に、上記両面透明導電膜シート5を形成する各層について詳細に説明する。まず、透明な基体シート7は厚みが30〜2000μm程度の透明なシートからなり、材質としてはポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などのプラスチックフィルムのほか、各種ガラスなどが挙げられる。
【0027】
遮光性導電膜1としては、導電率が高くかつ遮光性の良い単一の金属膜やそれらの合金または化合物などからなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成するとよい。そして、透明導電膜ではエッチングされないが自身はエッチングされるというエッチャントが存在することも必要である。その好ましい金属の例としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀などが挙げられる。とくに銅箔からなる厚み30〜1000nmの金属膜は、導電性、遮光性に優れ、透明導電膜はエッチングされない酸性雰囲気下での過酸化水素水で容易にエッチングできるほか、外部回路との接続のしやすさも併せ持つため非常に好ましい。
【0028】
透明導電膜3は、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物などからなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成するとよい。厚みは数十から数百nm程度で形成され、塩化第二鉄などの溶液では遮光性導電膜1とともに容易にエッチングされるが、酸性雰囲気下での過酸化水素水など遮光性導電膜1のエッチング液では容易にエッチングされないことが必要である。そして、80%以上の光線透過率、数mΩから数百Ωの表面抵抗値を示すことが好ましい。
【0029】
防錆用塗膜層30としては、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの熱硬化性樹脂や、ウレタンアクリレート系、シアノアクリレート系などの紫外線硬化型樹脂が挙げられる。防錆用塗膜層30の形成方法は、グラビア、スクリーン、オフセットなどの汎用の印刷法のほか、各種コーターによる方法、塗装、ディッピングなどの方法により形成するとよい。また、本発明において、電極パターン9および細線引き回し回路パターン10を被覆形成するとは、電極パターン9および細線引き回し回路パターン10の上面のみではなく、側面をも覆うことを意味する。
【0030】
なお、図1に示す実施態様では電極パターン9および細線引き回し回路パターン10上に防錆用塗膜層30を設けているが、細線引き回し回路パターン10のみが前記防錆用塗膜層30で被覆形成されていてもよい(図3参照)。この場合でも、細線引き回し回路パターン10を長期間に亘って所定の電気抵抗範囲内に収めることができる。ただし、図1に示す実施態様の方が、透明電極も長期間に渡って所定の電気抵抗範囲内に収めることができるため、より好ましい。細線引き回し回路パターン10のみが前記防錆用塗膜層30で被覆形成されてするには、前段落の方法にて直接部分的に形成の後に硬化させてもよいし、全面的に形成した後に部分的に紫外線を照射して硬化させ、非硬化部分を除去するようにしてもよい。
【0031】
また、図1に示す実施態様では両面透明導電膜シート5の両面において透光性の防錆用塗膜層30が形成されているが、両面透明導電膜シート5の片面においてのみ透光性の防錆用塗膜層30が形成されていてもよい。たとえば、両面透明導電膜シート5をガラス板や樹脂板に貼り付ける場合、両面透明導電膜シート5の貼付側の面はガラス板や樹脂板で保護されるので、貼付側の面とは反対面のみ防錆用塗膜層30で保護すれば済むからである。
【0032】
第一レジスト層16としては、レーザー光線やメタルハライドランプなどで露光しアルカリ溶液などで現像が可能なノボラック系樹脂やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのフォトレジスト材料で構成するのが好ましい。フォトレジスト材料による露光・現像により線幅の細い細線引き回し回路パターン10が確実性よく形成できるからである。また本発明では、前述したように遮光性導電膜1を形成するため、第一レジスト層16がフォトレジスト材料で構成されていると、表裏同時に露光・現像ができるため非常に生産性よく両面透明導電膜シート5を製造できるからである。第一レジスト層16の形成方法は、グラビア、スクリーン、オフセットなどの汎用の印刷法のほか、各種コーターによる方法、塗装、ディッピングなどの方法により形成するとよい。
【0033】
第二レジスト層18は、酸性雰囲気下での過酸化水素水など遮光性導電膜1のエッチング液に耐性をもつ材料であればとくに限定されない。形成方法や厚みは第一レジスト層18と同様で構わない。
【0034】
なお、フォトレジスト材料には感光した部分が溶解する「ポジ型」と、感光した部分が残る「ネガ型」がある。パターンの微細化にはポジ型の方が有利であるが、本発明では所望のパターンのレジストが得られるならばポジ型に限定されない。
【0035】
なお、図1に示す実施態様では細線引き回し回路パターン10を透明導電膜3および遮光性導電膜30が順次積層されている構成としているが、細線引き回し回路パターン10を透明導電膜3のみで形成してもよい。ただし、銅箔などの遮光性導電膜30を積層している方が、透明導電膜3の導電性を補うためにより好ましい。
【0036】
《実施例1》
基体シートとして厚さ100μmの無色透明ポリエステルフィルムを用い、その表裏両面に透明導電膜としてインジウムスズ酸化物からなるスパッタリング法で200nmの厚みで形成し、その上に遮光性導電膜として銅膜をスパッタリング法で300nmの厚みで形成し、その上に第一レジスト層としてノボラック樹脂をグラビアコートで形成し、表側にはX方向の電極パターンからなるマスクを載置し、裏側にはY方向の電極パターンからなるマスクを載置して、メタルハライドランプによって表裏両面同時に露光し、アルカリ溶液に浸して現像した。
【0037】
次いで、塩化第二鉄のエッチング液でインジウムスズ酸化物膜および銅膜を同時にエッチングしたところ、中央窓部表面にはX方向の電極パターン、その裏側にはY方向の電極パターンが露出して形成され、その中央窓部を囲む外枠縁部には平均線幅20μmの細線引き回しパターンが表裏両面に露出して形成されていた。次いで、これらの細線引き回しパターンを覆うように第二レジスト層として熱硬化アクリル樹脂層をスクリーン印刷で10μmの厚みに形成した。次いで、酸性雰囲気下での過酸化水素水に浸すと露出していた中央窓部の露出していた銅膜がエッチング除去され、その下に形成されていたインジウムスズ酸化物膜のみが残った。
【0038】
次いで、両面に形成された中央窓部の透明電極パターンおよび外枠縁部の熱硬化アクリル樹脂層を覆うように防錆用塗膜層として熱硬化アクリル樹脂層をスクリーン印刷で10μmの厚みに形成した。以上の方法により、中央窓部には基体シートの両面にそれぞれX方向の電極パターン、Y方向の電極パターンのインジウムスズ酸化物膜のみが形成され、各々の外枠縁部にはインジウムスズ酸化物膜の上に同じパターンの銅膜が形成された細線引き回し回路が形成され、細線引き回し回路を覆うように熱硬化アクリル樹脂層が被覆され、各々の透明電極パターンおよび熱硬化アクリル樹脂層を覆うように透光性の防錆用塗膜層が被覆された両面透明導電膜シートが得られた。
【0039】
この得られた両面透明導電膜シートに形成されている細線引き回し回路パターンの端部をICチップが搭載された外部回路に接続して、長期間、静電容量式タッチセンサーとして作動するか評価したところ、安定した電気特性が維持できる結果が得られた。
【0040】
《実施例2》
二枚の基体シートとして厚さ100μmの無色透明ポリエステルフィルムを用い、各々の基体シート上にそれぞれ透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、当該基体シートの前記各層を形成していない面どうしを対向して積層することにより積層された基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成した他は実施例1と同様の方法によって両面透明導電膜シートを得た。この両面透明導電膜シートに形成された細線引き回し回路パターンの端部をICチップが搭載された外部回路に接続して、長期間、静電容量式タッチセンサーとして作動するか評価したところ、安定した電気特性が維持できる結果が得られた。
【0041】
《実施例3》
防錆用塗膜層を外枠縁部の熱硬化アクリル樹脂層のみを覆うように形成した他は実施例1と同様の方法によって両面透明導電膜シートを得た。この両面透明導電膜シートに形成された細線引き回し回路パターンの端部をICチップが搭載された外部回路に接続して、長期間、静電容量式タッチセンサーとして作動するか評価したところ、実施例1には多少劣るものの安定した電気特性が維持できる結果が得られた。
【0042】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 遮光性導電膜
3 透明導電膜
5 両面透明導電膜シート
7 基体シート
9 電極シート
10 細線引き回し回路パターン
12 マスク
14 露光光線
16 第一レジスト層
18 第二レジスト層
22 両面透明導電膜シート5の外枠縁部
24 両面透明導電膜シート5の中央窓部
28 外部回路
30 防錆用塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基体シートの両面に、中央窓部に透明導電膜の電極パターンが形成され、外枠縁部に当該電極パターンのための細線引き回し回路パターンが形成され、当該両面の電極パターンおよび細線引き回し回路パターンが異なる両面透明導電膜シートであって、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層が端子部は除いて被覆形成されていることを特徴とする防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項2】
前記細線引き回し回路パターンが透明導電膜および遮光性導電膜が順次積層されていることを特徴とする請求項1に記載の防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項3】
前記電極パターン上にも前記透光性の防錆用塗膜層が被覆形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項4】
前記透光性の防錆用塗膜層が、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載の防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項5】
前記基体シートが二層構造からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項6】
さらに前記細線引き回し回路パターンの端子部に接続されるICチップが搭載された外部回路を備えることにより、静電容量式タッチセンサーとして作動することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防錆性に優れた両面透明導電膜シート。
【請求項7】
透明な基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、
次いで両面とも第一レジスト層を露光し、現像してパターン化した後、露出した遮光性導電膜および透明導電膜を両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる電極パターンを形成するとともに、外枠縁部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる細線引き回し回路パターンを形成し、
次いで第一レジスト層を剥離した後、両面とも前記細線引き回し回路パターン上に第二レジスト層を被覆形成し、当該第二レジスト層が形成されていない遮光性導電膜のみを両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜の回路パターンを露出形成し、
次いで第二レジスト層を剥離した後、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層を端子部は除いて被覆形成することを特徴とする防錆性に優れた両面透明導電膜シートの製造方法。
【請求項8】
二枚の透明な基体シート上にそれぞれ透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、当該基体シートの前記各層を形成していない面どうしを対向して積層することにより積層された基体シートの両面に、各々、透明導電膜、遮光性導電膜、第一レジスト層を順次形成し、
次いで両面とも第一レジスト層を露光し、現像してパターン化した後、露出した遮光性導電膜および透明導電膜を両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる電極パターンを形成するとともに、外枠縁部に透明導電膜および遮光性導電膜の積層物からなる細線引き回し回路パターンを形成し、
次いで第一レジスト層を剥離した後、両面とも前記細線引き回し回路パターン上に第二レジスト層を被覆形成し、当該第二レジスト層が形成されていない遮光性導電膜のみを両面同時にエッチングすることにより、中央窓部に透明導電膜の回路パターンを露出形成し、
次いで第二レジスト層を剥離した後、片面又は両面において少なくとも細線引き回し回路パターン上に透光性の防錆用塗膜層を端子部は除いて被覆形成することを特徴とする防錆性に優れた両面透明導電膜シートの製造方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図2(g)】
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【図3】
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