説明

防錆梱包体とその梱包方法

【課題】
鉄を主成分とする金属部品の段ボールでの保管・輸送のための防錆包装体であり、防錆フィルム及び/又は防錆紙使用の梱包方法より作業時間を短縮する。
【解決手段】
段ボールに、その内面側ライナーに気化性防錆剤を含有するライナーを使用し、複数個の積重ねた金属物品を段ボールに梱包した後に、その段ボールの少なくとも2個からなる集合体の外面6面を透湿度6.0g/m・24hr以下のプラスチックフィルムで密閉梱包して保管・輸送する防錆梱包体とする。さらに、段ボール箱内に防湿剤を封入することで、防錆効果が長期に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆梱包体とその梱包方法に関するものである。
特に、鉄を主成分とする金属部品等の物品を保管・輸送時の錆を発生させない梱包体とその梱包する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄を主成分とする金属部品等の物品は、その表面に付着した水分を介して、空気中の酸素と結合して、酸化鉄になる特性がある。
つまり、金属物品の表面に錆が発生し易い特性が有る。
【0003】
この錆発生を防止し、かつ金属物品を傷つけずに目的地等へ輸送する従来の梱包技術としては、鉄を主成分とする金属部品等の物品を、気化性防錆剤を練り込んだ防錆フィルム及び防錆剤が内添または塗布された防錆紙等で包装し、その包装物を一般の段ボールで梱包して、保管・輸送する方法がある。
【0004】
つまり、防錆フィルム及び防錆紙にて包装することで、物品に錆が発生するのを防止すると共に、保管・輸送時の振動等で物品に傷等が発生するのを段ボール梱包にて防止する梱包方法である。
【0005】
しかしながら、従来の方法の場合は、物品を防錆フィルム及び防錆紙で包装し、その包装したものを、更に段ボールにて梱包するため、包装・梱包作業に時間が掛かりすぎる問題が有った。
特に、物品の形状が複雑で、単純な6面体でない場合及び/又は物品の個数が複数個である場合は、防錆フィルム及び防錆紙での包装に大変な手間と時間を有していた。
【0006】
この問題を解消する技術として、段ボール箱の内面側ライナーには、気化性防錆剤を含有したライナーを使用し、外面側ライナーには、防湿層を有すライナーを使用する段ボールの技術がある(特許文献1)。
【0007】
この従来技術は、防錆フィルム等での包装を省略できるため、包装・梱包作業時間が大幅に短縮できる。
【0008】
しかしながら、この従来技術は、気化性防錆剤(防錆ガス)を遮断する特性において、防湿層を有するライナーが、防錆フィルム等のプラスチックフィルムより劣ることと、段ボール箱のコーナー部にできる小さな孔から防錆ガスが飛散する問題があり、防錆効果が防錆フィルム使用の段ボール梱包方法より劣る問題が有った。
そして更に、防錆層を有するライナーの価格が、通常の防錆剤を含まないプラスチックフィルムと通常のライナーを合わせた価格より高く、経済的に使用でき難い問題が有る。
【0009】
また、防錆紙及び防錆フィルムからの防錆ガスの大気飛散を抑え、物品への防錆効果を持続させる梱包方法として、特許文献2と特許文献3がある。
これらの技術は、防錆ガスの飛散防止の技術であり、保管・輸送時の傷防止等のためには、これらの技術に付加して、段ボール・木箱等を使用する必要がある。
【0010】
【特許文献1】特開2000−167952号公報
【特許文献2】特開平09−039907号公報
【特許文献3】特開2003−312748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金属物品を保管・輸送する場合に、従来技術と同様の防錆効果と物品の傷発生防止効果等を有し、防錆フィルム及び防錆紙で包装した後に段ボールに梱包する従来技術の包装・梱包作業時間を短縮することと、特許文献1における防錆ガスの大気飛散をできるだけ防止し、防錆効果を長期に維持するものであり、かつ、経済的にも従来技術より安価になる防錆梱包体とその梱包方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(6)の構成を採る。
(1)防錆の対象となる積み重ねた複数個の金属物品を、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用している段ボールで梱包し、その段ボールの外面6面をプラスチックフィルムにて密閉梱包することを特徴とする防錆梱包体である。
(2)プラスチックフィルムにて密閉梱包する段ボールの個数が2個以上の集合体であることを特徴とする(1)項に記載の防錆梱包体である。
(3)透湿度(g/m・24hr:相対湿度差90%で厚さ0.1mm)が6.0以下のプラスチックフィルムにて密閉梱包されることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の防錆梱包体である。
(4)段ボール箱内に吸湿剤を入れることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の防錆梱包体である。
(5)プラスチックフィルムにて密閉梱包された梱包体内部の湿度が60%未満であることを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の防錆包装体である。
(6)防錆の対象となる積み重ねた複数個の金属物品を、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用している段ボールで梱包し、その段ボールを集合して、プラスチックフィルムを敷いたパレット等に積載して、単純な6面体の集合体とし、該集合体の外面6面をプラスチックフィルムで密閉梱包することを特徴する(1)〜(5)のいずれか1項に記載の防錆梱包体の梱包方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、包装・梱包の作業時間を短縮し、かつ、その防錆効果は、従来技術の防錆フィルム等で包装し、その後段ボール梱包する方法と同等にするものである。
【0014】
本発明は、包装・梱包の作業時間を短縮するため、防錆フィルム及び防錆紙は使用せず、内面側ライナーに気化性防錆剤を含有した段ボールを使用するものである。
このため、本発明は、防錆フィルム等の梱包作業が無くなるため、作業時間の短縮が可能となる。
また、内面側ライナーに気化性防錆剤を含有した段ボールによる梱包作業は、通常の段ボール梱包と同様であるため、従来技術の様に作業時間が増加することはない。
【0015】
本発明においては、従来技術の梱包方法より、段ボール箱をプラスチックフィルムで包装する作業が増加する。
しかしながら、その作業は、金属物品を防錆フィルム等で包装する作業に比較して、短時間である。
特に、金属物品の形状が複雑で、単純な6面体形状でない場合とか、その個数が2個以上の複数個の場合は、従来技術の場合は、防錆フィルム等での作業が長時間になるのに対して、本発明の場合は、段ボール箱の形状が単純な6面体の形状であるため、その梱包作業は非常に短時間になる。
つまり、本発明は、従来技術の梱包方法に対して、その包装・梱包作業が短時間になるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、段ボール箱をプラスチックフィルムで包装する作業を短時間にするため、その段ボールの形状は単純な6面体の形状になるものが望ましい。
そして更に、本発明の段ボールを2個以上集合して、プラスチックフィルムを敷いたパレット等に積載して、単純な6面体の集合体にしてから、その集合体の外面6面をプラスチックフィルムで密封梱包体とすると、段ボール1ケース当りの作業時間は大幅に短縮するものである。
【0017】
本発明に使用するプラスチックフィルムとしては、相対湿度差90%で厚さが0.1mmの条件下での透湿度が6.0g/m・24hr以下の防錆剤を含まないプラスチックフィルムである。具体的には、ポリテトラフロロエチレン、ポリ3フッ化エチレン、塩酸ゴム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等があげられる。なお、プラスチックフィルムの透湿度の測定はJIS K 7129に準じて行う。
このプラスチックフィルムは、輸送時における降雨等による段ボール及び金属物品の水濡れの防止と外気条件により起きる梱包体内部への水分の浸透防止にも役立つものである。
【0018】
本発明において、防錆効果を更に高める場合は、本発明の段ボール箱内に吸湿剤を入れるものである。
鉄を主成分とする金属部品等の物品は、その表面に付着した水分を介して、錆が発生するため、物品への水分付着、結露を防止するため、吸湿剤を段ボール箱内に入れると、防錆効果は更に高まる。吸湿剤としては、市販のシリカゲル系、炭酸カルシウム系、塩化カルシウム系等のものがある。
【0019】
本発明は、積み重ねた複数個の金属物品を、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用している段ボールで梱包し、段ボール箱内に吸湿剤を入れ、その段ボールの少なくとも2個からなる集合体の外面6面を透湿度(g/m・24hr:相対湿度差90%で厚さ0.1mm)が6.0以下のプラスチックフィルムにて密閉梱包して保管・輸送する防錆梱包体である。
このような方法で梱包したプラスチックフィルムにて密閉梱包された梱包体内部の湿度を60%未満とするものである。
鉄等の金属は水と酸素が同時に存在することにより、錆が発生するが、密閉梱包された梱包体内部の湿度を60%未満に保つことにより、金属物品の表面に水が付着せず、錆の進行は抑制される。
【0020】
本発明において、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用するが、本発明に用いられる防錆剤としては、例えば亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、カプリル酸ジシクロヘキシルアンモニウム、炭酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ジイソプロピルアンモニウム、安息香酸モノエタノールアンモニウム、安息香酸ソーダ、安息香酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、桂皮酸ブチル、カルバミン酸アンモニウム、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、ヘキサメチレンテトラミン、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、尿素、チオ尿素、亜硝酸ソーダ等の当業界で公知の材料が挙げられる。
【0021】
これらの気化性防錆剤は、水分子より大きいので、その立体障害のために、ガス化した状態でも透湿度6.0g/m・24hr以下のプラスチックフィルムを容易に透過せず、防錆効果を長期に維持することができる。
なお、包装内部に入った湿度が、鋼製品表面に凝縮すると、充満していた防錆剤の蒸気がこれに溶け込んで、腐食性でなくさせるように、気化性防錆剤は吸湿剤的な作用も発揮する。
【0022】
気化性防錆剤をライナーに含有させる方法は、塗工のほかライナー原紙に内添することによっても可能であるが、通常は金属物品に接するライナーの表面に塗工することが効果的である。
防錆剤の塗工は、通常バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、エアナイフコーター等の塗工機を使ってライナー原紙表面に行われる。防錆剤は、通常乾燥質量が2〜50g/mとなるように塗工される。2g/m未満の場合には防錆効果が弱く、50g/mを超える場合には製造コストが極めて高いものとなる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例に従って説明する。
<実施例1>
クラフトパルプを主成分とする坪量200g/mのライナーを抄造し、このライナーにアミン系の気化性防錆剤(キレスト社製商品名:キレスコートPL−1)を15g/m塗工して、防錆ライナーを作成する。
次に、コルゲーターにて、この防錆ライナーをシングルフェーサー側ライナーに、中芯には王子板紙OND160中芯、ダブルフェーサー側ライナーには王子板紙OFK220を使用して、段ボールシートを作成し、次に、段ボール用製函機にて、この防錆ライナーを箱の内側ライナーに使用した段ボール箱を作成する。
次に、縦約25cm*横約15cm*厚さ約5cmの自動車用成形鋼鈑を10枚重ねて、上記段ボール箱に入れ梱包する。
次に、上記段ボール1個の外面6面を厚さ80μmで透湿度5.0g/m・24hrのポリエチレンフィルムで包装して、梱包体を得た。
【0024】
<実施例2>
自動車用成形鋼鈑を梱包した段ボール箱を16個まとめて外面6面を上記ポリエチレンフィルムで包装すること以外は、実施例1と同様に梱包体を得た。
【0025】
<実施例3>
自動車用成形鋼鈑を梱包した段ボール箱の内部に、シリカゲルを主成分とする吸湿剤100gを1個入れること以外は、実施例1と同様に梱包体を得た。
【0026】
<比較例1>
段ボール箱の原紙構成は、シングルフェーサー側とダブルフェーサー側のライナーは王子板紙OFK220であり、中芯は王子板紙OND160中芯であり、自動車用成形鋼鈑を段ボール梱包後に、ポリエチレンフィルムで包装しない以外は、実施例1と同様に梱包体を得た。
【0027】
<比較例2>
自動車用成形鋼鈑を10枚まとめて、アイセロ化学製の防錆剤煉り込みフィルム(商品名:ボーセロン)で包装した後に段ボール梱包すること以外は比較例1と同様に梱包体を得た。
【0028】
<比較例3>
自動車用成形鋼鈑を1枚ごと、王子特殊紙製の防錆紙(商品名:フェロブライト)で包装した後に、10個を段ボール梱包すること以外は比較例1と同様に梱包体を得た。
【0029】
<比較例4>
段ボール1個外面6面を厚さ80μmで透湿度5.0g/m・24hrのポリエチレンフィルムで包装し、梱包体とすること以外は比較例2と同様に梱包体を得た。
【0030】
<比較例5>
段ボール1個外面6面を厚さ80μmで透湿度20.0g/m・24hrのナイロンフィルムで包装し、梱包体とすること以外は実施例1と同様に梱包体を得た。
【0031】
<結果>
実施例および比較例の結果を表1に示す。
以上の様に、本発明は、従来技術と防錆効果を同様にする場合には、包装・梱包の作業性が大幅に向上し、かつ、降雨等による段ボール及び金属物品の水濡れ防止にも役立つものである。
【0032】
【表1】

*1:段ボール梱包体を下記条件下に15日間保管し、保管終了後に金属物品の錆状態を観察して、錆の発生なしを○、僅かに錆発生を△、錆発生が明らかであるを×とする。
・1日の保管条件:25℃、70%を12時間+50℃、95%を12時間の繰り返し
*2:*1の条件で保管した包装体の内部に紙間湿度計を差し込み測定(JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No.36による)。
*3:降雨状態で長時間保管した場合に、段ボールと金属物品への水濡れがないものを○、明らかにあるものを×とする。
*4:比較例2の作業時間を標準(△)とし、短くなるものを○、大きく短くなるものを◎、悪くなるものを×とする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
鉄を主成分とする金属物品の保管・輸送のための防錆包装体として利用できる梱包方法である。特に、高温多湿の地域への保管・輸送に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆の対象となる積み重ねた複数個の金属物品を、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用している段ボールで梱包し、その段ボールの外面6面をプラスチックフィルムにて密閉梱包することを特徴とする防錆梱包体。
【請求項2】
プラスチックフィルムにて密閉梱包する段ボールの個数が2個以上の集合体であることを特徴とする請求項1に記載の防錆梱包体。
【請求項3】
透湿度(g/m・24hr:相対湿度差90%で厚さ0.1mm)が6.0以下のプラスチックフィルムにて密閉梱包されることを特徴とする請求項1または2に記載の防錆梱包体。
【請求項4】
段ボール箱内に吸湿剤を入れることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆梱包体。
【請求項5】
プラスチックフィルムにて密閉梱包された梱包体内部の湿度が60%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防錆包装体。
【請求項6】
防錆の対象となる積み重ねた複数個の金属物品を、段ボール箱の内面側ライナーに気化性防錆剤を含有したライナーを使用している段ボールで梱包し、その段ボールを集合して、プラスチックフィルムを敷いたパレット等に積載して、単純な6面体の集合体とし、該集合体の外面6面をプラスチックフィルムで密閉梱包することを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の防錆梱包体の梱包方法。

【公開番号】特開2009−280250(P2009−280250A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134941(P2008−134941)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】