説明

防食方法

【課題】錆びおよび錆び汁の発生を抑制し、かつ塗装工程を短縮し得る金属表面の防食方法を提供すること。
【解決手段】本発明の金属表面の防食方法は、主剤および硬化剤からなる2液形防食塗料を金属表面に塗装する工程と、塗装後の塗膜を乾燥させる工程とを含み、該主剤が、ポリオール樹脂およびアセチルアセトンを含み、該硬化剤が、ポリイソシアネート化合物を含み、該アセチルアセトンの含有量が、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して0.25〜2重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錆びおよび錆び汁の発生を抑制し、かつ塗装工程を短縮し得る金属表面の防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される鋼構造物には、錆びの発生を防止するための下塗り塗装をした後に上塗り塗装が施される。一般的に、上塗り塗装は複数回塗り重ねられるため、鋼構造物の塗装に際しては、下塗り塗装および2回以上の上塗り塗装を必要とし、合わせて最低3回の塗装工程を行う必要がある。さらに、防錆性をより高めるために、下塗り塗装と上塗り塗装との間に中塗り塗装の施される場合もある(例えば、特許文献1)。このような場合には、さらに塗装工程を重ねる必要が生じる。
【0003】
このように従来の防錆性が求められる屋外の鋼構造物の塗装は、塗装を終えるまでの時間および手間がかかるため、塗装工程の短縮化が求められている。
【特許文献1】特開平11−616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、錆びおよび錆び汁の発生を抑制し、かつ塗装工程を短縮し得る金属表面の防食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の金属表面の防食方法は、主剤および硬化剤からなる2液形防食塗料を金属表面に塗装する工程と、塗装後の塗膜を乾燥させる工程とを含み、該主剤が、ポリオール樹脂およびアセチルアセトンを含み、該硬化剤が、ポリイソシアネート化合物を含み、該アセチルアセトンの含有量が、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して0.25〜2重量%である。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記硬化剤は、さらにシランカップリング剤を含み、該シランカップリング剤の含有量が、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して0.5〜1.5重量%である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記塗装工程および上記乾燥工程が複数回実施される。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記金属表面に腐食生成物が生成している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の成分を特定量含む主剤および硬化剤からなる2液形防食塗料を用いることにより、錆びおよび錆び汁の発生を抑制し、下塗り工程が不要となる防食方法、すなわち、塗膜の耐久性に優れかつ塗装工程を大幅に短縮し得る金属表面の防食方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
A.塗装工程
本発明の金属表面の防食方法は、まず、主剤および硬化剤からなる2液形防食塗料を金属表面に塗装する。
【0011】
上記主剤は、ポリオール樹脂およびアセチルアセトンを含む。
【0012】
上記主剤に含まれるポリオール樹脂の含有量は、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して、好ましくは10〜90重量%であり、さらに好ましくは20〜80重量%であり、特に好ましくは30〜70重量%である。
【0013】
上記主剤に含まれるアセチルアセトンの含有量は、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して、0.25〜2重量%であり、好ましくは0.5〜2重量%であり、さらに好ましくは1.5〜2重量%である。アセチルアセトン含有量がこのような範囲であれば、錆びおよび錆び汁の発生を顕著に抑制することができる。アセチルアセトンの含有量が、0.25重量%未満である場合は、アセチルアセトンを含有させる効果が十分に得られず錆びおよび錆び汁を効果的に抑制できないおそれがある。アセチルアセトンの含有量が、2重量%を超える場合は、得られる塗膜の耐水性が低くなり、この場合もまた錆びおよび錆び汁を効果的に抑制できないおそれがある。
【0014】
上記ポリオール樹脂は、好ましくはアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フッ素ポリオール樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等であり、特に好ましくは、アクリルポリオール樹脂である。アクリルポリオール樹脂であれば、外観、耐候性、耐薬品性等の諸物性に優れる塗膜を得ることができる。
【0015】
上記ポリオール樹脂のGPCによる数平均分子量は、好ましくは3000以上であり、さらに好ましくは4000〜20000であり、特に好ましくは6000〜16000である。ポリオール樹脂の分子量がこのような範囲であれば、硬化後の塗膜物性に優れる塗膜を得ることができる。
【0016】
上記ポリオール樹脂の水酸基価は、好ましくは10〜100mgKOH/gであり、さらに好ましくは20〜80mgKOH/gであり、特に好ましくは25〜50mgKOH/gである。
【0017】
上記ポリオール樹脂は、ヒドロキシル基含有モノマーおよび必要に応じてその他のモノマーを、常法によって重合して得ることができる。例えば、特開平7−48518号公報に記載の重合方法により得ることができる。
【0018】
上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレート、ポリエチレングリコール−またはポリプロピレン−グリコールモノ(メタ)アクリレート、およびこれらとε−カプロラクトンとの付加物等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸等の各種の不飽和モノ−またはジカルボン酸類;上記ジカルボン酸類と1価アルコール類とのモノエステル類等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸類;上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸類とε−カプロラクトンとの付加物、および特開平7−48518号公報に開示されたヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0019】
上記その他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;マレイン酸、フマル酸ないしはイタコン酸等のジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、および特開平7−48518号公報に開示されたその他のモノマーが挙げられる。
【0020】
上記ポリオール樹脂は、市販製品を用いてもよい。ポリオール樹脂の市販製品の具体例としては、DIC株式会社製の商品名「ACRYDIC A−837」、「ACRYDIC A−871」、「ACRYDIC A−1370」、ハリマ化成株式会社製の商品名「ハリアクロン D-1703」、「ハリアクロン N−2043−60MEX」等が挙げられる。
【0021】
上記硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を含む。
【0022】
上記硬化剤に含まれるポリイソシアネート化合物の含有量は、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して、好ましくは2〜10重量%であり、さらに好ましくは4〜8重量%である。
【0023】
上記ポリイソシアネート化合物は、主剤に用いられるポリオール樹脂と相溶性を示す限り、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、一般に塗料用途として使用されるようなポリイソシアネート化合物である。上記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等が挙げられる。
【0024】
上記ポリイソシアネート化合物のGPCによる数平均分子量は、好ましくは100〜2500であり、さらに好ましくは200〜2000であり、特に好ましくは300〜1500である。
【0025】
上記イソシアネート化合物は、市販製品を用いてもよい。イソシアネート化合物の市販製品の具体例としては、旭化成社製の商品名「デュラート TSA100」、「デュラート TPA10」、DIC株式会社製の商品名「バーノック DN−990」、「バーノック DN−992」等が挙げられる。
【0026】
上記硬化剤は、好ましくは、さらにシランカップリング剤を含む。上記シランカップリング剤は、好ましくはエポキシ基を含む。エポキシ基を含むシランカップリング剤の具体例としては、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
上記シランカップリング剤の含有量は、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して、好ましくは0.5〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.7〜1.3重量%であり、特に好ましくは0.8〜1.2重量%である。シランカップリング剤の含有量がこのような範囲であれば、塗装面に対する付着性に優れる塗膜を得ることができる。シランカップリング剤の含有量が0.5重量%より少ない場合、シランカップリング剤を含有させることの効果が十分に得られないおそれがある。シランカップリング剤の含有量が1.5重量%より多い場合、塗膜のくすみ・白化(ブラッシング)の生じるおそれがある。
【0028】
上記主剤または硬化剤は、必要に応じて、任意の適切な溶剤、顔料、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0029】
上記溶剤は、好ましくは、溶剤全量に対して50重量%以上の脂肪族炭化水素系溶剤を含む溶剤であり、さらに好ましくは溶剤全量に対して50重量%以上の脂肪族炭化水素系溶剤および20〜40重量%の芳香族炭化水素系溶剤を含む溶剤(通称ミネラルスピリット)である。上記溶剤は、市販製品を用いてもよい。溶剤全量に対して50重量%以上の脂肪族炭化水素系溶剤を含む溶剤の具体例としては、丸善石油(株)製の商品名「スワゾール 310」、エクソン社製の商品名「エクソン・ナフサNo.5」等が挙げられる。溶剤全量に対して50重量%以上の脂肪族炭化水素系溶剤および20〜40重量%の芳香族炭化水素系溶剤を含む溶剤の具体例としては、シェル社製の商品名「LAWS」、日本石油(株)製の商品名「昭石ソルベント」等が挙げられる。
【0030】
上記顔料としては、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾレッド、キナクリドンレッド、ベンツイミダゾロンイエロー等の着色顔料;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、クレー、タルク等の体質顔料が挙げられる。
【0031】
上記添加剤としては、例えば、消泡剤、ダレ止め剤、分散剤、粘性調整剤、硬化触媒、表面調整剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0032】
上記2液形防食塗料は、塗装前に上記主剤および硬化剤を混合した後に、当該混合物を金属表面に塗装する方法にて使用され得る。上記混合方法としては、任意の適切な混合方法(ディスパー等)が採用され得る。
【0033】
上記主剤および硬化剤の混合比(OH基/NCO基比)は、好ましくはOH基/NCO基=1/0.5〜1/1.5であり、より好ましくはOH基/NCO基=1/0.7〜1/1.3であり、特に好ましくはOH基/NCO基=1/1.0〜1/1.2である。
【0034】
上記金属表面は、好ましくは、鉄、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム、アルミニウム合金、トタン鋼板、ブリキ鋼板、ボンデ鋼板、ガルバリウム鋼板、黒皮鋼板、亜鉛アルミ鋼板、亜鉛合金およびステンレス鋼の表面であり、特に好ましくは鉄の表面である。このような金属表面であれば、上記2液形防食塗料によって、錆びおよび錆び汁の発生がより効果的に抑制され得る。
【0035】
上記金属表面は、腐食生成物(錆び等)が生成している金属表面であってもよい。すなわち、本発明の防食方法は、より錆び汁の発生しやすい腐食生成物が生成している金属表面に対しても、特段の金属表面の素地調整を必要とせずに(例えば、鋼道路橋塗装便覧に定められる4種ケレン以下の処理によっても)塗膜を形成でき、かつ錆びおよび錆び汁の発生を抑制することができる。本発明の防食方法によれば、新たな錆びの発生を抑制するという効果のみならず、残存する錆びを起因とする錆び汁をも抑制するという優れた効果を得ることができるからである。したがって、本発明の防食方法は、塗り替え塗装の際にも、作業性、経済性および良好な外観の維持等において、非常に有用である。
【0036】
上記2液形防食塗料の塗装方法としては、例えば、刷毛塗り、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー塗装などが挙げられる。
【0037】
上記2液形防食塗料の塗布量としては、用途に応じて任意の適切な塗布量に設定し得る。一般的には、100〜150g/mであることが好ましい。
【0038】
B.乾燥工程
本発明の金属表面の防食方法は、上記2液形防食塗料を金属表面に塗装した後、塗装後の塗膜を乾燥する工程を含む。
【0039】
上記乾燥工程における乾燥方法は、任意の適切な乾燥方法が採用され得る。代表的には、自然乾燥である。当該乾燥時間は、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは24時間以上である。
【0040】
上記塗装工程および乾燥工程は、複数回実施されてもよい。塗装工程および乾燥工程を複数回実施すれば、外観の優れた塗膜を得ることができる。塗装工程および乾燥工程は、用途に応じて任意の適切な回数で実施され得る。代表的には2回である。なお、塗装工程および乾燥工程を複数回実施する場合の2回目以降の塗装工程は、乾燥工程の後に実施することが好ましい。
【0041】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0042】
[参考例1]錆板の作製
磨き鋼板SPCC−SBを夏季3か月間(6月〜8月)屋外曝露させ、表面に錆びの発生した鋼板(錆板)を得た。
【0043】
[参考例2]主剤A〜Iの作製
アクリルポリオール樹脂(DIC社製 商品名「ACRYDIC A−871」(分子量8,000、水酸基価29±3%)、アセチルアセトン、チタン顔料(石原産業社製 商品名「チタン CR−95」)、消泡剤(BYK社製 商品名「BYK063」)、ダレ止め剤(楠本化成社製 商品名「ディスパロン 6810−20X」)、分散剤(BYK社製 商品名「BYK162」)および溶剤としてミネラルスピリットを、下記表1に示す配合量にて混合し、主剤A〜Iを得た。
【表1】

【0044】
[参考例3]硬化剤Jの作製
イソシアネート樹脂(旭化成社製 商品名「デュラート TSA100」(分子量700±300)、NCO含有量21%)6.2部、および溶剤としてミネラルスピリット3.8部を混合し、硬化剤Jを得た。
【0045】
[参考例4]硬化剤Kの作製
イソシアネート樹脂(旭化成社製 商品名「デュラート TSA100」6.2部、エポキシシランカップリング剤(信越化学社製 商品名「KBE−403」)1.0部および溶剤としてミネラルスピリット2.8部を混合し、硬化剤Kを得た。
【0046】
[実施例1]
参考例1で得た錆板をウエス拭き処理をした後、当該錆板に主剤Aおよび硬化剤Jを主剤A:硬化剤J=9:1の重量比(すなわち、OH基/NCO基=1/1)で混合して得られた2液形防食塗料を刷毛塗りにて塗装し、試験片を得た。なお、塗装回数は2回、1回当りの塗布量は130g/m、塗り重ね乾燥時間は3時間とした。
【0047】
[実施例2]
主剤Aに代えて、主剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0048】
[実施例3]
主剤Aに代えて、主剤Cを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0049】
[実施例4]
主剤Aに代えて、主剤Dを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0050】
[実施例5]
主剤Aに代えて、主剤Eを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0051】
[実施例6]
主剤Aに代えて、主剤Fを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0052】
[比較例1]
主剤Aに代えて、主剤Gを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0053】
[比較例2]
主剤Aに代えて、主剤Hを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0054】
[比較例3]
主剤Aに代えて、主剤Iを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0055】
[実施例7]
硬化剤Jに代えて、硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0056】
[実施例8]
主剤Aに代えて主剤Bを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0057】
[実施例9]
主剤Aに代えて主剤Cを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0058】
[実施例10]
主剤Aに代えて主剤Dを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0059】
[実施例11]
主剤Aに代えて主剤Eを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0060】
[実施例12]
主剤Aに代えて主剤Fを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0061】
[比較例4]
主剤Aに代えて主剤Gを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0062】
[比較例5]
主剤Aに代えて主剤Hを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0063】
[比較例6]
主剤Aに代えて主剤Iを用い、硬化剤Jに代えて硬化剤Kを用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0064】
[比較例7]
参考例1で得られた錆板をウエス拭き処理をした後、弱溶剤1液エポキシ樹脂系錆び止め塗料(日本ペイント社製 商品名「ハイポンファインデクロ」)を130g/mで塗装し、その後16時間乾燥させて下塗り層を形成した。さらに、上塗り層としてファインウレタン100(日本ペイント社製)を塗布し、下塗り層および上塗り層からなる塗膜を得た。なお、上塗り塗装は、塗装回数を2回、1回当りの塗布量を130g/m、塗り重ね乾燥時間を3時間とした。
【0065】
〈評価〉
上記実施例1〜12および比較例1〜7で得られた試験片を23℃×50%RHで7日間乾燥させた後、下記の方法で評価した。結果を表2および表3に示す。なお、表2および表3中のアセチルアセトン添加量およびシランカップリング剤添加量は、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対しての含有割合(%)である。
(1)錆び汁評価
JIS K5674 6.11.2の試験方法に準じて試験を行い、目視にて錆び汁評価を行った。図1に判定基準を示す。
(2)フクレ幅、錆び幅
JIS K5674 6.11.2の試験方法に準じて試験を行い、フクレ幅および錆び幅を測定した。ただし、複合サイクル試験は120サイクルとし、塗膜につけたきずの両側それぞれ2mm以内の塗膜も評価の対象とした。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表2および表3から明らかなように、本発明の金属表面の防食方法によれば、特定量のアセチルアセトンおよびポリオール樹脂を含有させた主剤およびポリイソシアネートを含有させた硬化剤を用いることにより、錆びおよび錆び汁を顕著に抑制することができる。
【0069】
また、例えば実施例1に対して実施例7のフクレ幅が小さいことから明らかなように、硬化剤にさらに特定量のシランカップリング剤を含有させることにより、金属表面に対して非常に高い付着性を示す塗膜を得ることができる。
【0070】
さらに、実施例1〜12から明らかなように、本発明の金属表面の防食方法によれば、下塗り塗装を施さずとも、従来の防食方法(比較例7)よりも、錆びおよび錆び汁の抑制効果に優れた塗膜を得ることができる。
【0071】
しかも、本発明の防食方法によれば、錆び板をウエス拭きする程度の簡単な素地調整のみがされた金属表面に対して、上記のような優れた効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の金属表面の防食方法は、建築物外装、橋梁、船舶、車両、産業機械、建設機械等に好適に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】錆び汁評価の判定基準を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤および硬化剤からなる2液形防食塗料を金属表面に塗装する工程と、
塗装後の塗膜を乾燥させる工程とを含み、
該主剤が、ポリオール樹脂およびアセチルアセトンを含み、
該硬化剤が、ポリイソシアネート化合物を含み、
該アセチルアセトンの含有量が、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して0.25〜2重量%である、
金属表面の防食方法。
【請求項2】
前記硬化剤がさらにシランカップリング剤を含み、
該シランカップリング剤の含有量が、主剤および硬化剤を混合した塗料の全量に対して0.5〜1.5重量%である、請求項1に記載の金属表面の防食方法。
【請求項3】
前記塗装工程および前記乾燥工程が複数回実施される、請求項1または2に記載の金属表面の防食方法。
【請求項4】
前記金属表面に、腐食生成物が生成している、請求項1から3のいずれかに記載の防食方法。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−70633(P2010−70633A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239238(P2008−239238)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(591163720)エーエスペイント株式会社 (2)
【Fターム(参考)】