説明

防食管継手

【課題】 ライニング鋼管を施工の良否に関係なく、漏水と共に赤水の発生を防止して接続することができるにも拘らず、ネジ切り加工等を必要とせず、短時間に接続できる防食管継手を提供する。
【解決手段】 略筒状を呈する継手本体(1)と、継手本体の端部にネジ結合される袋ナット(6)と、継手本体と接続されるライニング鋼管(P)との間に装着されるシール部材(10)と、該シール部材(10)をライニング鋼管(P)側へ押圧するコア部材(30)とからなる構成する。シール部材(10)は、継手本体(1)の内周面とライニング鋼管(P)の外周面とに圧接される第1の膨出部(11)と、継手本体(1)の内周面とライニング鋼管(P)の外周面との間に位置する第1の筒部(14)と、ライニング鋼管(P)の切断先端面が対向する底部(16)と、ライニング鋼管(P)の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部(18)とから構成し、これらを合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、略筒状を呈する継手本体と、該継手本体の端部にネジ結合される袋ナットと、継手本体と接続されるライニング鋼管との間に装着されるシール部材と、該シール部材をライニング鋼管側へ押圧するコア部材とからなる防食管継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】給水用の管として鋼管の内外両面を合成樹脂で被覆したライニング鋼管も採用されている。このライニング鋼管は、従来の水道管と同様に適当な長さに切断され、そして管継手で接続されて配管されている。このようなライニング鋼管の接続には色々な方法が採用されているが、一般にはライニング鋼管の外周にネジ切り加工を加え、継手にシール材を塗布あるいは充填して水との接触を断つ方法が採用されている。この方法によると、シール材が適用されているので、一応錆の問題は解決されているが、現場においてライニング鋼管の外周にネジ切り加工をしなければならず、施工時間が長くなる欠点がある。また、シール材を塗布する施工法によると乾燥に時間がかかり、施工時間が一層長くなる。また、ネジ切り加工後、シール材を適用しても、施工の良否によっては錆の問題が残る欠点もある。
【0003】そこで、ネジ切り加工を必要としない、防食管継手が例えば特開平7ー110084号、実開平7ー28298号等で提案されている。特開平7ー110084号に記載されているメカニカル式管継手は、継手本体と、ナットと、パッキンと、突条ゴムパッキンとを備えている。したがって、パッキンと突条ゴムパッキンとを装着して継手本体にナットを螺合すると、樹脂被覆管すなわちライニング鋼管が接続される。接続すると、パッキンにより漏水が防止されると共に、突条ゴムパッキンにより、ライニング鋼管の切断端部の錆から生じる赤水の発生も抑制される。また、実開平7ー28298号の防食キャップは、防食キャップの他にパッキンも備えている。したがって、漏水と共に赤水の発生も防止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の防食管継手によっても突条ゴムパッキンあるいは防食キャップを備えているので、ライニング鋼管の切断端面が水により腐食し、そして錆による赤水が水道水に混入することが一応防止される。また、継手本体にナットを螺合するようになっているので、施工現場において接続するライニング鋼管の外周にネジ切り加工を施す必要はない、等の効果は認められる。しかしながら、解決すべき問題点もある。例えば従来の防食管継手は、漏水防止用のパッキンと、赤水防止用のパッキンの2個のパッキンを必要としているので、すなわち部品数が多いので、現場における接続施工に時間がかかる恐れがある。また、部品数が多いので管理上も問題がある。さらには、これらのパッキンは、一般に金型により成形されるが、高価な金型が2面必要となり、コストアップにもなる。また、従来の防食キャップは、ライニング鋼管の切断端面が気密に当接して初めて漏水が防止される構造になっているので、施工によりライニング鋼管の切断端面が防食キャップに当接しないこともあり、防食効果が施工の条件に左右されるという問題もある。
【0005】また、ライニング鋼管には、硬質塩化ビニールでライニングした鋼管と、ポリエチレン粉体でライニングした鋼管の2種類の鋼管が実用に供されているが、これらのライニング鋼管は呼び径が同じでも内外径は異なる。すなわち、これらのライニング鋼管の間には、呼び径が同じでも外径には0.6mm程度の差があり、また内径には1.0mmの程度の差もある。このようにライニングの樹脂材料により径が異なるが、従来の防食管継手は径の異なるライニング鋼管には必ずしも対処できない。また、ライニング鋼管とステンレス(登録商標)管とを接続する要求もあるが、従来の防食管継手は、ライニング鋼管同志を接続するもので、材質の異なるステンレス管を接続することはできない。
【0006】本発明は、上記したような従来の欠点あるいは問題点を解決しようとするもので、具体的には、ライニング鋼管を施工の良否に関係なく、漏水と共に赤水の発生を防止して接続することができるにも拘らず、ネジ切り加工等を必要とせず、短時間に接続できる防食管継手を提供することを目的としている。また、部品数が少なくて、安価に提供できる防食管継手を提供することも目的としている。さらには、径に多少の誤差のあるライニング鋼管も接続でき防食管継手を提供することも目的としている。他の発明は、上記目的に加え、一方にライニングが施されていない鋼管例えばステンレス管を接続することもできる防食管継手を提供することも目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、シール部材は、継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とを有するように構成され、そしてこれらが一体化されている。すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、略筒状を呈する継手本体と、該継手本体の端部にネジ結合される袋ナットと、前記継手本体と接続されるライニング鋼管との間に装着されるシール部材と、該シール部材をライニング鋼管側へ押圧するコア部材とからなる防食管継手であって、前記シール部材は、ライニング鋼管に装着して前記袋ナットを前記継手本体の端部に形成されているネジに螺合すると、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面との間に位置する第1の筒部と、ライニング鋼管の切断先端面が対向する底部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とからなり、前記第2の筒部には、第2の膨出部が形成されていると共に、前記第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部はゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されている。請求項2記載の発明は、略筒状を呈する継手本体と、該継手本体の一方の端部に構成されている防食管継手部と、他方の端部に構成されている伸縮可撓式管継手、フレキシブル式管継手等の管継手部とからなる防食管継手であって、前記防食管継手部は、前記継手本体の一方の端部にネジ結合される袋ナットと、前記継手本体とライニング鋼管との間に装着されるシール部材と、該シール部材をライニング鋼管側へ押圧するコア部材とからなり、前記シール部材は、ライニング鋼管に装着して前記袋ナットを前記継手本体の端部に形成されているネジに螺合すると、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面との間に位置する第1の筒部と、ライニング鋼管の切断先端面が対向する底部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とからなり、前記第2の筒部には、第2の膨出部が形成されていると共に、前記第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部はゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されている。請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のシール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいて複数個形成されている。請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載のシール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいてライニング鋼管側へ突出するように複数個形成され、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の底部と第2の筒部とのコーナ部には、前記底部側に窪んだ凹溝が形成されている。そして請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載のコア部材は、装着時にシール部材の底部の外側に当接するように半径外方へ延びているストッパ部と、前記シール部材の第2の筒部をライニング鋼管の内周面側に押圧するように、軸方向に所定長さに延びている筒状部とから構成されている。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、添付図面により本発明の実施の形態を説明する。図1は、略筒状を呈する継手本体1の両端部が防食管継手部A、Aとなり、そしてこれらの防食管継手部A、Aにライニング鋼管P、Pがそれぞ接続されている状態を示す一部断面図である。図1に示されている防食管継手部Aは、略筒状を呈する継手本体1と、該継手本体の端部にネジ結合される袋ナット6、6と、継手本体1とライニング鋼管P、Pとの間に装着されるシール部材10、10と、該シール部材10、10を押圧するコア部材30、30とから概略構成されている。
【0009】防食管継手部A、Aは、同じ構造をしているので、以下一方の防食管継手部Aのみについて説明する。継手本体1は、継手直管部2と、この継手直管部2からテーパ状に拡径しているテーパ管部3と、テーパ管部3の最大径と同じ径の大径部4とから構成されている。大径部4の内周面には、雄ネジ5が形成されている。なお、継手本体1の略中心部には、その内周面から内側へ突出した、ライニング鋼管Pを挿入するときのストッパの目安となる、あるいは後述するコア部材30の抜け止め用のリング状のリブRが形成されている。
【0010】袋ナット6は、筒部7とテーパ部8とから従来周知の形状に構成されている。そして、筒部7の内周面に継手本体1の雄ネジ5に螺合する雌ネジが形成されている。したがって、後述するように、継手本体1のテーパ管部3の内側にシール部材10とワッシャー9とロックリング9’とを装着して袋ナット6を継手本体1の雄ネジ3にねじ込むと、袋ナット6のテーパ部8によりシール部材10の第1の膨出部11がロックリング9’とワッシャー9とを介して軸方向に押圧され、シールされることになる。
【0011】シール部材10の第1の実施の形態の詳細は、図2の(ロ)に拡大して示されているように、装着時に継手本体1のテーパ管部3と大径部4の内側に位置する第1の膨出部11と、継手本体1の継手直管部2の内周面とライニング鋼管Pの外周面との間に位置する第1の筒部14と、ライニング鋼管Pの端面が当接あるいは対向する底部16と、ライニング鋼管Pの内周面側に位置する第2の筒部18とから、ゴム、合成樹脂等の弾性材料により一体的に成形されている。
【0012】第1の膨出部11の形状は、格別に限定されないが、図示の実施の形態では、継手本体1のテーパ管部3に当接するテーパ部12を備えている。そして、図において左端部がロックリング9’で押圧される押圧部13となっている。第1の筒部14の端部の外周面には、比較的小さな凹凸15が付けら、また底部16と第2の筒部18とのコーナ部には、底部側に窪んだ凹溝17が形成されている。
【0013】第2の筒部18は、第1の筒部14よりも短く成形されている。そして、その外周部に図2に示す第1の実施の形態では第2の膨出部20、21が軸方向に所定の間隔をおいて外側へ突出するような形で2個成形されている。これらの第2の膨出部20、21の頂部は、丸みが付けられており、第2の筒部18はこれらの第2の膨出部20、21を介してコア部材30によりライニング鋼管Pの内周面側に押圧されることになる。
【0014】コア部材30は、図2の(イ)に示されているように、ストッパ部31と筒状部32とを有するように、樹脂あるいは金属材料のような弾性材料から形成されている。ストッパ部31は、装着時にシール部材10の底部16の外側面に接する部分でり、筒状部32の外径は所定径に選定され、その外周面がシール部材10の第2の筒部18すなわち第2の膨出部20、21をライニング鋼管Pの内周面側に押圧するようになっている。なお、図には示されていないが、筒状部32の外周面に剥離可能なフイルムを設けておき、施工現場において、このフイルムを適宜剥して、筒状部32の外径を調節することもできる。
【0015】次に、上記実施の形態の使用方法について説明する。ライニング鋼管Pの端部に袋ナット6とロックリング9’とワッシャー9とを、この順序で挿入する。また、図1に示されているように、ライニング鋼管Pの接続端部にシール部材10を装着する。このとき、ライニング鋼管Pの接続する端部分がシール部材10の第1、2の筒部14、18の間に位置するが、その切断先端部はシール部材10の底部16に必ずしも密着する必要はない。次に、コア部材30を筒状部32を先にして、ストッパ部31がシール部材10の底部16の外側面に接するまで挿入する。そうすると、コア部材30の筒状部32により、シール部材10の第2の膨出部20、21がライニング鋼管Pの内周面側に押圧される。その結果、シール部材10の第2の筒部18の内側周面がライニング鋼管Pの内周面に密着する。これによりシールされ、ライニング鋼管Pの切断面が防食される。
【0016】上記のようにして、ライニング鋼管Pの接続端部にシール部材10を装着し、そしてコア部材30を挿入するとき、接続するライニング鋼管Pの径に製作上の誤差があると、例えばライニング鋼管Pの内径が呼び径より大きいと、コア部材30を挿入するとき、シール部材10の底部16を第2の筒部18側に巻き込むような力が働き、過大な挿入力を必要とするが、シール部材10のコーナ部には凹溝17が設けられているので、比較的小さな力で挿入することができる。すなわち、この凹溝17によりライニング鋼管Pの径の誤差が一層吸収される。
【0017】上記のように、シール部材10を装着したライニング鋼管Pを継手本体1に挿入し、袋ナット6を継手本体1の大径部4の雄ネジ5にネジ込む。そうすると、袋ナット6が継手本体1と一体化される。ネジ込むときに、袋ナット6のテーパ部8によりシール部材10の押圧部13が、ロックリング9’とワッシャー9とを介して軸方向に押され、シール部材10のテーパ部12が継手本体1のテーパ管部3に圧接される。また、テーパ管部3はテーパ状になっているので、シール部材10の第1の膨出部11の内周面とライニング鋼管Pの外周面との間も密着する。これにより、シールされ、外部からの水等の侵入が防止される。なお、継手本体1の内周部にはリブRが設けられているので、コア部材30が抜ける方向の力を受けても、ストッパ部31がリブRに当接するだけでコア部材30が脱落するようなことはない。
【0018】シール部材10の第2の膨出部20、21の形状、位置、数等は、図2に示されている実施例に限定されることなく、色々な形で実施できる。例えば、シール部材10の第2の筒部18の内側すなわちライニング鋼管P側に設けることもできる。このとき、図3の(イ)に示す第2の実施の形態によると、単なる3個のヒレ状の突起22〜24として設けられている。第2の実施の形態によっても、シール部材10の第2の筒部18をコア30の筒状部32により押し広げると、これらの突起22〜24がライニング鋼管Pの内表面に密着してシールされることは明らかである。また、図3の(イ)に示す第3の実施の形態では3個のヒレ状の突起22’〜24’が奥の底部16側に向かって傾斜して設けられている。本実施の形態によると、シール部材10をライニング鋼管Pに一旦装着すると、抜け難いという効果がさらに付加される。
【0019】以上のように、第1の実施の形態によると、シール部材10の第1の膨出部20、21がコア30の筒状部32により押圧されるので、シール部材10の第2の筒部18の内側表面がライニング鋼管Pの外周面に密着し、面接触によりシールされる。また、第2、3の実施の形態によると、突起22〜24、22’〜24’がライニング鋼管Pの内表面に密着してシールされる。いずれの実施の形態によっても、ライニング鋼管Pの切断端面部がシール部材10の底部16から離れていてもシールされる。したがって、シール部材10の装着の深度あるいは良否に左右されるようなことはない。
【0020】図1に示されている第1の実施の形態では、継手本体1の両端部が防食管継手部A、Aとなって、ライニング鋼管P、Pがそれぞれ接続されているが、継手本体1の一方の端部には鋼管等を予め溶接により接合しておき、他方のみを防食管継手部Aとしてライニング鋼管Pを接続するように実施することもできる。また、継手本体1の一方のみを防食管継手部Aとし、他方は鋼管例えばステンレス管を施工現場で接続するように実施することもできる。このとき、ステンレス管を接続する管継手は、例えば本出願人が特開平8ー105586号等により提案している伸縮可撓性管継手、フレキシブル式管継手等を適用することができる。
【0021】図4に、継手本体1の他方が伸縮可撓性管継手部Bになっている例が示されている。伸縮可撓性管継手部Bは、継手本体1と継手構成体40とから構成されている。継手本体1は、継手直管部2’と、この継手直管部2’からテーパ状に拡径しているテーパ管部3’と、テーパ管部3’の最大径と同じ径の大径部4’とから構成されている。大径部4’の内周面には、雌ネジ5’が形成されている。なお、6’はステンレス管P’の先端部が当接する段部を示している。
【0022】継手構成体40は、締付ブッシュ41、樹脂製のカバー46、合成ゴム製のパッキン47、ボールレース49、複数個のボール50、50、…等から構成されている。締付ブッシュ41の内径は、ステンレス管P’の外径よりも大きく、内部には図において左方向に拡径されたテーパ面42が形成されている。そしてステンレス管P’の外周面とテーパ面42との間にボールレース49が嵌挿されている。ボールレース49は、実公平3ー49351号に開示されているように、蛇腹部、ボール受部、シールリング部等から構成されている。このようにボールレース49は蛇腹部を有するので、ボール受部に保持されている複数個のボール50、50、…は、ある程度軸方向に移動可能である。
【0023】締付ブッシュ41の外周面には雄ネジ43が形成され、この雄ネジ43が管接続時に、前述した継手本体1の雌ネジ5’と螺合する。締付ブッシュ41の頭部44における内周面とステンレス管P’の外周面との間には隙間δがある。したがって、この隙δの分だけステンレス管P’は、締付ブッシュ41が固定的であっても撓むことができることになる。パッキン47も概略リング状をしているが、全体としては円錐台形をし、先端部はテーパ面48となっている。このテーパ面48が、接続時に継手本体1のテーパ管部3’に着座する。
【0024】次に、上記実施の形態の接続方法を説明する。継手構成体40を例えば工場において仮結合しておく。すなわち継手本体1内にパッキン47、カバー46、複数個のボール50、50、…が保持されているボールレース49を、この順序に挿入し、そして締付ブッシュ41の雄ネジ43を継手本体1の雌ネジ5’に、締付ブッシュ41が脱落しない程度にねじ込んでおく。このように工場で準備しておくことにより現場での組立工数が少なくなる。次に、現場においてステンレス管P’の端部を、締付ブッシュ41の方からボールレース49、カバー46、パッキン47内に所定深さまで挿入する。そうして締付ブッシュ41の雄ネジ43を継手本体1の雌ネジ5’にネジ込み、本締めする。そうすると、締付ブッシュ41と継手本体1が一体化されると共に、パッキン47のテーパ面48が継手本体1のテーパ管部3’の内面に密着する。これにより水密が保たれた状態で、継手本体1にステンレス管P’が接続される。
【0025】継手本体1とステンレス管P’との間に圧縮方向の力が作用すると、ステンレス管P’の先端部51が継手本体1の段部6’に当接するまで相対的に移動する。この移動により圧縮方向の応力が吸収される。これに対し、引っ張り方向に力が作用すると、ボール50、50、…が、締付ブッシュ41のテーパ面42とステンレス管P’の外周面との間に噛み込むまで、ステンレス管P’と締付ブッシュ41との間に相対的なズレが生じる。このズレにより引っ張り方向の応力が吸収される。締付ブッシュ41の頭部44における内周面と、ステンレス管P’の外周面との間には環状隙間δがあるので、この環状隙間δにより撓みも吸収される。
【0026】
【発明の効果】以上のように、本発明によると、略筒状を呈する継手本体と、接続されるライニング鋼管との間に装着されるシール部材は、継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面との間に位置する第1の筒部と、ライニング鋼管の切断先端面が対向する底部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とからなり、第2の筒部には、第2の膨出部が形成されていると共に、第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部はゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されているので、シール部材をライニング鋼管に装着してコア部材を挿入し、そして袋ナットを継手本体のネジに螺合するだけでライニング鋼管を接続することができる。したがって、本発明によると、ライニング鋼管を施工の良否に関係なく、漏水と共に赤水の発生を防止して接続することができるという、本発明特有の効果が得られる。しかも、ネジ切り加工等を必要とせず、短時間に接続でき、またシール部材を構成している第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部は、ゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されているので、部品数が少なくて、例えばシール部材を成形する金型も1面で済み安価に提供できる。さらには、ライニング鋼管と接する第2の筒部には、第2の膨出部が設けられているので、径に多少の誤差のあるライニング鋼管も接続できる効果も得られる。請求項2記載の発明によると、略筒状を呈する継手本体の一方の端部には防食管継手部が構成されているので、ライニング鋼管を接続することができ、上記発明と同様な効果が得られると共に、他方の端部には伸縮可撓式管継手、フレキシブル式管継手等の管継手部が構成されているので、樹脂により被覆されていないステンレス管を接続することができる。請求項3記載の発明によると、シール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいて複数個形成されているので、シール効果がさらに高められている。また、請求項4記載の発明によると、シール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいてライニング鋼管側へ突出するように複数個形成されているので、複数個の第2の膨出部がライニング鋼管の表面と接してシールされる。請求項5記載の発明によると、シール部材の底部と第2の筒部とのコーナ部には、底部側に窪んだ凹溝が形成されているので、この凹溝により接続するライニング鋼管の径の誤差が一層吸収される効果がさらに得られる。請求項6記載の発明によると、コア部材は、シール部材の第2の筒部をライニング鋼管の内周面側に押圧するように、軸方向に所定長さに延びている筒状部の他に、装着時にシール部材の底部の外側に当接するように半径外方へ延びているストッパ部を備えているので、コア部材をシール部材に容易に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態によりライニング鋼管を接続した状態で一部断面にして模式的に示す断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態を拡大して示す図で、その(イ)はコア部材の拡大断面図で、その(ロ)はシール部材の第1の実施の形態の拡大断面図である。
【図3】 シール部材の他の実施の形態を示す図で、その(イ)は第2の実施の形態の一部を示す拡大断面図で、その(ロ)は第3の実施の形態の一部を示す拡大断面図である。
【図4】 伸縮可撓式継手の実施の形態を一部断面にして示す示す断面図である。
【符号の説明】
1 継手本体 6 袋ナット
10 シール部材 11 第1の膨出部
14 第1の筒部 16 底部
17 凹溝 18 第2の筒部
20〜24、22’〜14’ 第2の膨出部
A 防食管継手部
B 伸縮可撓性管継手部
P ライニング鋼管
P’ ステンレス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 略筒状を呈する継手本体と、該継手本体の端部にネジ結合される袋ナットと、前記継手本体と接続されるライニング鋼管との間に装着されるシール部材と、該シール部材をライニング鋼管側へ押圧するコア部材とからなる防食管継手であって、前記シール部材は、ライニング鋼管に装着して前記袋ナットを前記継手本体の端部に形成されているネジに螺合すると、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面との間に位置する第1の筒部と、ライニング鋼管の切断先端面が対向する底部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とからなり、前記第2の筒部には、第2の膨出部が形成されていると共に、前記第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部はゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されていることを特徴とする防食管継手。
【請求項2】 略筒状を呈する継手本体と、該継手本体の一方の端部に構成されている防食管継手部と、他方の端部に構成されている伸縮可撓式管継手、フレキシブル式管継手等の管継手部とからなる防食管継手であって、前記防食管継手部は、前記継手本体の一方の端部にネジ結合される袋ナットと、前記継手本体とライニング鋼管との間に装着されるシール部材と、該シール部材をライニング鋼管側へ押圧するコア部材とからなり、前記シール部材は、ライニング鋼管に装着して前記袋ナットを前記継手本体の端部に形成されているネジに螺合すると、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面とに圧接される第1の膨出部と、前記継手本体の内周面とライニング鋼管の外周面との間に位置する第1の筒部と、ライニング鋼管の切断先端面が対向する底部と、ライニング鋼管の内周面側に位置し、これに接してシールする第2の筒部とからなり、前記第2の筒部には、第2の膨出部が形成されていると共に、前記第1の膨出部と、第1の筒部と、底部と、第2の筒部と、第2の膨出部はゴム、合成樹脂等の弾性材料から一体的に成形されていることを特徴とする防食管継手。
【請求項3】 請求項1または2記載のシール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいて複数個形成されている防食管継手。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかの項に記載のシール部材の第2の膨出部が、軸方向に所定の間隔をおいてライニング鋼管側へ突出するように複数個形成されている防食管継手。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの項に記載の底部と第2の筒部とのコーナ部には、前記底部側に窪んだ凹溝が形成されている防食管継手。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの項に記載のコア部材は、装着時にシール部材の底部の外側に当接するように半径外方へ延びているストッパ部と、前記シール部材の第2の筒部をライニング鋼管の内周面側に押圧するように、軸方向に所定長さに延びている筒状部とから構成されている防食管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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