説明

降温用噴霧システム

【課題】簡易な設備および制御シーケンスを有し、小規模物件用として適する降温用噴霧システムを提供する。
【解決手段】降温用噴霧システムは、水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに接続される主配水管と、上記主配水管に接続され、上記主配水管と水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する子配水管と、上記主配水管内の水を排水する排水配管と、上記主配水管と上記排水配管の間に設けられる排水弁と、上記ポンプ、上記排水弁を制御するミスト制御盤と、を備え、上記ミスト制御盤は、噴霧を始めるとき、上記排水弁を閉じた状態で上記ポンプを作動して水を上記噴霧ヘッドに配水することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、博覧会のパビリオンなど集客施設に設けられ、ミストの蒸散による潜熱による冷却作用を用いる降温用噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の降温用噴霧システムは、噴霧ヘッドが複数の系統に配置され、系統ごとに噴霧させる選択弁を設けた、ミスト噴霧量が多い大規模物件用の設備であった。よって、噴霧時に、ミスト制御盤は元弁、選択弁、排水弁をそれぞれ開閉制御するシーケンス制御を有していた。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−177577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の降温用噴霧システムは、冷却効果を十分得るために、噴霧ヘッドが複数の系統設けられるとともに系統ごとに噴霧でき、かつ、ミスト噴霧量が多いので、大規模物件に適していた。よって、小規模物件用では設備が過大となっていた。
【0005】
この発明の目的は、ミスト噴霧量が少ない簡易な設備および制御シーケンスを有し、小規模物件用として適する降温用噴霧システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる降温用噴霧システムは、水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに接続される主配水管と、上記主配水管に接続され、上記主配水管と水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する子配水管と、上記主配水管内の水を排水する排水配管と、上記主配水管と上記排水配管の間に設けられる排水弁と、上記ポンプ、上記排水弁を制御するミスト制御盤と、を備え、上記ミスト制御盤は、噴霧を始めるとき、上記排水弁を閉じた状態で上記ポンプを作動して水を上記噴霧ヘッドに配水することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の係わる降温用噴霧システムの効果は、子配水管は一斉噴霧としたので、小規模物件に適した設備、噴霧制御とすることができ、低コスト化できる。また、ミスト制御盤が排水弁だけを制御することで、噴霧の開始および終了のときに大きな水滴が落下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。図2は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの平面図である。図3は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの断面図である。図4は、実施の形態1に係わる噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。図5は、噴霧を開始する水圧が異なる噴霧ノズルからのミストの粒度分布図である。図6は、噴霧ノズルからミストが噴霧される様子を表す図である。図7は、加圧水供給装置の構成図である。図8は、ミスト制御盤の機能ブロック図である。図9は、ミストの噴霧のタイミングチャートである。
なお、図2は、噴霧ヘッドを図3のBB断面から下方に見た一部断面図である。また、図3は、噴霧ヘッドを図2のAA断面から水平方向に見た断面図である。
【0009】
実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1は、図1に示すように、地上から縦立された柱2の先端にそれぞれ設けられた噴霧ヘッド3、噴霧ヘッド3に供給される加圧水が配水される子配水管4、子配水管4を介して加圧水を供給する加圧水供給装置5、周囲の温度と湿度を測定して加圧水供給装置5に送信する温湿度計6が備えられている。加圧水供給装置5に水道7から水が供給されている。なお、1本の柱2を例に挙げて説明するが、冷却する施設の大きさによって適宜柱2の本数を定めればよい。
また、噴霧ヘッド3は、地上から縦立されている柱の先端に設けられたことを記載したが、天井から吊り下げられていてもよい。
【0010】
噴霧ヘッド3は、図2に示すように、子配水管4を介して配水された加圧水を6個の噴霧ノズル10に均等に圧力が掛かるよう分配する噴霧ヘッダ11、噴霧ヘッダ11から噴霧ノズル10を所定の距離離すために設けられる6本の延長配管12、加圧水をミストにして噴霧する6個の噴霧ノズル10から構成されている。そして、噴霧ノズル10の設置高度は、4mである。なお、噴霧ノズル10の設置高度は、ミストの平均粒径および最大粒径に依存して定めることができる。
ここで、6個の噴霧ノズル10を噴霧ヘッド3に設けることを記載したが、これに限定されず、噴霧ノズル10は1個からN個であればよい。
【0011】
噴霧ヘッダ11は、図2、図3に示すように、中心軸が鉛直方向に配された6角柱状の空洞15が内部に形成されている6角柱である。そして、6角柱の下側の端面の中心に子配水管4が連結される孔16が設けられ、子配水管4と6角柱状の空洞15とが連通されている。また、6角柱の各側面の中心に延長配管12が連結される孔17が設けられ、延長配管12と6角柱状の空洞15とが連通されている。加圧水は片方の端面の孔16から注水され、6個の側面の孔17から延長配管12に給水されていく。噴霧ヘッダ11は、ステンレスからできている。
【0012】
延長配管12は、図3に示すように、円筒管であり、噴霧ヘッダ11の側面に垂直に一方の端部が取り付けられ、長手方向に下向きに彎曲し、他方の端部では、噴霧ヘッダ11の下側の端面を含む水平面から円筒管の中心軸が22.5度お辞儀するように傾いている。延長配管12は、ステンレスからできている。
その延長配管12の他方の端部には、直管18が取り付けられ、そこに噴霧ノズル10が嵌合されている。なお、1つの直管18に分岐して圧力変換器(株式会社共和電業製、型式PVD−100ka、測定レンジ0〜10MPa)14が取り付けられて、噴霧ノズル10の加圧水受け空洞20に掛かる水圧を計測し、それを噴霧水圧としている。通常は、この噴霧水圧と高圧ポンプ40の出力水圧との関係を予め求めておいて、高圧ポンプ40の出力水圧を管理することにより、噴霧水圧を管理する。なお、水圧の測定には、ブルドン管圧力計などを用いてもよい。また、直管18は、ステンレスからできている。
このように直管18に嵌合された噴霧ノズル10の中心軸は、噴霧ヘッダ11の下側の端面を含む水平面から22.5度下方に傾いている。
【0013】
噴霧ノズル10は、図4に示すように、略円筒状のハウジング19を有している。そして、円筒状のハウジング19の中心軸に沿って、延長配管12を介して供給された加圧水を受ける断面が円形の加圧水受け空洞20、加圧水受け空洞20の下流側に位置し、断面が加圧水受け空洞20の径より小さい円形の空洞21、感圧逆止弁22を収納し、断面が空洞21の径より大きい円形であり、下流側の端面の外縁部が中心方向に突き出されたリブ23により仕切られた弁収納空洞24、駒25を収納し、リブ23の下流側に位置し、断面が加圧水受け空洞20の径と等しい円形の空洞26およびその空洞26に連なる漏斗状の空洞27からなる噴流生成空洞28、漏斗状の空洞27の先端に連なるオリフィス29が連なるようにして設けられている。
【0014】
そして、弁収納空洞24には、空洞21の下流側の開口21aを閉鎖/開放する感圧逆止弁22が挿入されている。
感圧逆止弁22は、空洞21の下流側の開口21aに当接したとき、加圧水の流れを遮断する遮断球30、一端が遮断球30に当接し、他端がリブ23に固定され、遮断球30に所定のバネ圧が掛けられるように撓んでいるバネ31から構成されている。
そして、空洞21の水圧が所定のバネ圧を越えたとき、遮断球30と空洞21の開口21aとが離反して、その隙間から弁収納空洞24に水が流れ込む。
【0015】
ここで、遮断球30が開口21aに当接しているときのバネ圧が、0.2、0.4、1.0MPaからなるバネ31をそれぞれ備える3種類の噴霧ノズル10を用意し、水の圧力を0MPaから2MPaまで4秒間で変化させ、噴霧されたミストの粒径をレーザ回折粒径測定器(Malvern社製、スプレーテックRTS5000)を用いて測定した。測定点は、噴霧ノズル10の中心軸上でオリフィス29の先端から50mm離れた箇所とした。その結果、図示しないが、バネ圧が0.2MPaでは、棒状放水となり通行人を濡らしてしまう。
そして、バネ圧が大きくなるに従い、径の大きなミストが少なくなり、図5に示すように、バネ圧が0.6MPaの噴霧ノズル10から噴霧されるミストは、90%累積体積占有粒径D(90)が160μm以下になり、大きな径の液滴が落下して通行人を濡らすことがなくなる。
さらに、バネ圧が1.0MPaの噴霧ノズル10から噴霧されるミストは、90%累積体積占有粒径D(90)が60μm以下となり、ミストが通行人に当たることもなくなる。
また、所定のバネ圧が噴霧水圧に近い1.8MPaの噴霧ノズル10では、遮断球30が開口21aから充分に離反できないので、噴霧量に制約を受けてしまい、バネ圧が1.5MPaの噴霧ノズル10では、噴霧量の制約は見られない。このような理由から所定のバネ圧は、0.6MPa以上、1.5MPa以下が好ましい。
【0016】
さらに、噴流生成空洞28では、加圧水を旋回噴流として噴出し、漏斗状の空洞27の内側面に衝突させるための駒25が円柱状の空洞26の内側面に接しながら噴霧ノズル10の中心軸方向に摺動しながら移動する。駒25には、側面に螺旋状の溝32が掘られ、その溝32と円柱状の空洞26の内側面とにより加圧水を旋回して噴出する旋回流路が形成される。
【0017】
次に、噴霧ノズル10において加圧水が噴霧される手順について説明する。
加圧水受け空洞20に加圧水が注水され、水圧が所定の値に達すると、遮断球30を押して加圧水が弁収納空洞24内に流れ込む。
そして、リブ23の中央に形成された孔23aから加圧水が駒25の一方の端面を押して駒25が噴霧ノズル10の中心軸に沿って漏斗状の空洞27の方向に移動され、駒25の側面の溝32を通って加圧水が旋回されながら通過し、溝32の端部から噴流される。
この噴流が漏斗状の空洞27の内側面に衝突して、衝突噴流になりミストとしてオリフィス29から噴霧される。
【0018】
次に、噴霧されたミストについて説明する。この発明におけるミストは、小さな径の水滴を意味する。そして、ミストの平均粒径は、レーザ回折粒径測定器で体面積平均粒径(ザウター平均径と称す。)を5回測定した平均値である。
実施の形態1で使用した噴霧ノズル10から噴霧水圧6MPaのときザウター平均粒径が20μmであった。なお、噴霧水圧が2MPa未満であるとミストの平均粒径が大きくなるとともに噴霧量が少なくなり、冷却効果が小さくなってしまう。また、噴霧水圧が高いとミストの平均粒径が小さくなるとともに噴霧流量が多くなるが、噴霧水圧が10MPaを越えると配管などに大きな水撃が加わり、安全上好ましくない。これらの理由から噴霧水圧は、2MPa以上で10MPa以下が好ましい。なお、ミストの平均粒径として、レーザ回折粒径測定器を用いて測定しているが、他にドプラー位相粒径測定器などを用いて測定してもよい。このとき、測定器の種類により、平均粒径が異なるので、同一条件で噴霧したミストを測定して対比することが必要である。
【0019】
次に、ミストの噴霧の様子について説明し、噴霧領域を定義する。ミストは、図6に示すように、オリフィス29の近傍では、噴霧ノズル10の中心軸上に中心線を有し、オリフィス29の出口を頂点とする円錐内に噴霧される。この円錐の領域を噴霧領域34と称し、円錐の頂角を噴角35と称す。また、この噴霧領域34の側面を噴霧外縁36と称す。
この噴霧領域34は、オリフィス29の形状を調整することにより噴角35を調整することができる。噴角35を小さくすると、ミストを遠くまで飛ばすことができるし、噴角35を大きくすると、ミストが噴霧ノズル10の近くに漂うことになる。通常、噴角35を45度くらいにすることが好ましいが、45度に限るものではない。
このように噴角35を調整することにより、噴霧領域34がオリフィス29を横切る水平面の下方に位置することができる。
【0020】
風が吹いていないとき、ミストが蒸散することにより周囲の空気が冷却され、下降気流が発生するので、噴霧されたミストは、下降気流にともなって降下していく。そして、下降の途中でミストが蒸散しつくす。ミストが蒸散することにより潜熱が空気から奪われ、空気が冷やされる。
一方、地面に水平の風が吹いているとき、ミストは下降しながら風の方向に流されていく。しかし、噴霧ヘッダ11の下側の端面を含む水平面より下方に噴霧外縁36が位置するので、ミストが水平に流されても、噴霧ヘッダ11に当たることがない。
また、噴霧領域34が柱2や子配水管4からみてオリフィス29の先端から離れており、そのオリフィス29の先端が延長配管12により柱2や子配水管4から離れているので、ミストが水平方向に流されても、延長配管12の長さだけ移動する間に拡散や蒸散してしまうので、ミストが柱2や子配水管4に当たることがない。
また、延長配管12が下向きに彎曲しているので、上向きの風が吹かないとミストが延長配管12に当たることが防げる。
【0021】
加圧水供給装置5は、図7に示すように、高圧ポンプ40、高圧ポンプ40の下流側に接続された主配水管42内、子配水管4内の水を排水する流路を開閉する排水弁43、高圧ポンプ40および排水弁43を制御するミスト制御盤45から構成されている。また、ミスト制御盤45に、温湿度計6で計測された乾球温度および湿球温度が入力される。
【0022】
そして、排水弁43は、主配水管42の途中から子配水管4と分岐する排水配管46により主配水管42に連通されている。主配水管42、排水配管46、子配水管4はそれぞれステンレスからできている。また、高圧ポンプ40と主配水管42とは、ゴム製のブレードホース47により連通され、容積式の高圧ポンプ40により発生する脈動を平滑化している。
また、加圧水中に含まれる塵埃を取り除くために、高圧ポンプ40の出口に図示しない20μm角開口のフィルタが介在されている。
また、主配水管42、子配水管4、噴霧ヘッド3にスケールが沈積しないように、金属イオンの少ない加圧水を供給するために、高圧ポンプ40に図示しない軟水器から軟水化された水道水が供給されている。
【0023】
排水弁43は、電動機駆動弁であり、弁が全閉状態にあるとき電動機に弁を開放するように電流を流してから開閉時間(例えば、約4秒)経過すると弁が全開状態に変化する。また、弁が全開状態にあるとき電動機に弁を閉鎖するように電流を流してから開閉時間(例えば、約4秒)経過すると弁が全閉状態に変化する。このとき、例えば、弁の開口度は一定の割合で変化するとともに、電動機に流す電流によって任意に弁の開口度を設定できる。さらに、弁が閉鎖動作中に弁を開放するように電動機に電流を流し始めると、弁は開放動作中に切り換わる一方、弁が開放動作中に弁を閉鎖するように電動機に電流を流し始めると、弁は閉鎖動作中に切り換わるものである。
【0024】
ミスト制御盤45は、図8に示すように、温湿度計6により計測された乾球温度および湿球温度に基づいて噴霧の可否を判断する噴霧判断手段50、噴霧可の場合、噴霧量を算出して、高圧ポンプ40からの給水量を制御する給水量制御手段51、高圧ポンプ40および各種弁を制御する噴霧シーケンス制御手段52、湿り空気線図(図示せず)が記憶されている空気線図データベース53を有している。このミスト制御盤45は、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されている。
【0025】
実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1の設備導入の際の立上げ時に行う主配水管42と子配水管4の空気抜き作業について説明する。最初、各配管内は充水されていないので排水弁43を閉止する一方で、子配水管4に設けた空気抜き弁(図示せず)を開放する。この状態で高圧ポンプ40を運転すると各配管内の空気を抜くことができる。よって、ミスト噴霧時は子配水管4は空気が無い状態で充水されているので、高圧ポンプ40を運転するだけで即座に昇圧する一方で、高圧ポンプ40の停止のタイミングで排水弁を開けることで即座に降圧する。また、各配管内に空気を入れずにかつ、各配管内の圧力を高くしすぎなくなる。この空気抜き作業は一度だけ行うので空気抜き弁は手動でもよい。また、空気抜き弁は逆止弁付きタイプを使用してもよい。
【0026】
次に、立上げ時に各配管内の空気抜き作業が実施されていることを前提として、加圧水を高圧ポンプ40から供給するシーケンスについて図9を参照して説明する。
ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、まず排水弁43を閉鎖するように電流を流す。例えば、約4秒後に排水弁43が全閉する。次に、噴霧シーケンス制御手段52は、高圧ポンプ40の作動を開始して、加圧水をブレードホース47から主配水管42に送水する。すると、主配水管42内が均一な水圧が掛かるようになり、その後、主配水管42内の水圧が所望の水圧、例えば、6MPaに達する。
そして、加圧水が子配水管4を経由して上昇圧力波として伝搬し、噴霧ヘッド3に水が供給される。このときの噴霧ノズル10の加圧水受け空洞20に注水されて加わる水圧は4秒の間にほぼ0MPaから6MPaに達する。このように水圧が1MPa以上になると、噴霧ノズル10の感圧逆止弁22が開放されてミストの噴霧が開始される。
【0027】
逆に、ミストの噴霧を終了するときには、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43が半開した直後に閉鎖するように電流を流す。例えば、約2秒後に排水弁43が半開すると下降圧力波が子配水管4内を伝搬され、噴霧ノズル10の加圧水受け空洞内の水圧が1MPa以下に低下するので、感圧逆止弁22が閉まり、ミストの噴霧が停止される。さらに、例えば、約2秒後に排水弁43が全閉する。これらの排水弁43の開閉動作中に、高圧ポンプ40の作動を停止する。よって、高圧ポンプ40は、排水弁43が開動作開始から閉動作終了までにその作動を停止してもよい。
【0028】
このような降温用噴霧システム1は、排水弁43が閉じている状態で高圧ポンプ40を作動するので、主配水管42内の水圧を所望の値に一旦安定したのち、子配水管4に給水することにより、噴霧ノズル10に給水される加圧水の水圧が数秒の間で0MPaから6MPaに変化することができる。そして、感圧逆止弁22が急激に開放され、水圧の低い状態で噴霧される時間を短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
また、排水弁43を一旦半開すると主配水管42内の水圧が急激に低下し、感圧逆止弁22が急激に閉められ、水圧の低い状態で噴霧される時間が短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【0029】
従って、この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1は、ミスト制御盤45は高圧ポンプ40と排水弁43だけを制御して、主配水管42に接続される子配水管4を一斉噴霧する。これにより、降温用噴霧システム1を構成する各設備や制御シーケンスの簡易化が実現できる。つまり、従来の大規模物件用の降温用噴霧システムは、例えば、電動機の出力が約4〜6KW、ミスト噴霧量が30リットル毎分であるのに対し、この発明の小規模物件用の降温用噴霧システム1は、例えば、電動機の出力が約700〜800W、ミスト噴霧量が4リットル毎分としても同様なミスト噴霧ができる。さらに、ミスト制御盤45は高圧ポンプ40を運転するポンプ制御盤(図示せず)に内蔵してもよい。なお、排水弁43は、電磁弁等を用いてもよい。
【0030】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2に係わる加圧水供給装置の構成図である。図11は、実施の形態2に係わるミスト制御盤の機能ブロック図である。図12は、実施の形態2の加圧水供給装置により制御されたミストの噴霧のタイミングチャートである。
実施の形態2に係わる降温用噴霧システムは、実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1と加圧水供給装置5Bの構成が異なっており、その他は同様であるので、説明において同じ符号を付記して説明する。
【0031】
実施の形態2に係わる加圧水供給装置5Bは、図10に示すように、実施の形態1の加圧水供給装置5の子配水管4の途中に空気抜き弁48が設けられ、ミスト制御盤45Bにより空気抜き弁48の開閉が制御される。
また、ミスト制御盤45Bは、図11に示すように、噴霧シーケンス制御手段52Bが実施の形態1の噴霧シーケンス制御手段52と異なっており、高圧ポンプ40、排水弁43および空気抜き弁48を所定のタイミングでON/OFFまたは開閉する。
【0032】
次に、加圧水を高圧ポンプ40から噴霧ヘッド3に供給するシーケンスについて図12を参照して説明する。
ミスト制御盤45Bの噴霧シーケンス制御手段52Bは、まず排水弁43を閉鎖するように電流を流す。例えば、約4秒後に排水弁43が全閉する。また、子配水管4に備えられた空気抜き弁48を開放する。
次に、噴霧シーケンス制御手段52Bは、高圧ポンプ40の作動を開始して、加圧水をブレードホース47から主配水管42に送水する。そうすると、主配水管42内に残っている空気が子配水管4へ水と一緒に押し出されて、主配水管42内が均一な水圧の水で満たされる。その後、主配水管42内の水圧が所望の噴霧水圧、例えば、6MPaに達する。
【0033】
そして、加圧水が子配水管4を経由して上昇圧力波として伝搬し、噴霧ヘッド3に水が供給される。このとき、子配水管4の長さが長いと子配水管4内の空気が邪魔をしてスムーズに水が流れていかない。しかし、空気抜き弁48が子配水管4の途中に備えられているので、子配水管4内を流れてくる水により、子配水管4内の空気が空気抜き弁48から抜けていくので、水が子配水管4内をスムーズに流れて噴霧ヘッド3に達する。その後、空気抜き弁48を閉止する。このときの噴霧ノズル10の加圧水受け空洞20に注水されて加わる水圧は4秒の間にほぼ0MPaから6MPaに達する。このように水圧が1MPa以上になると、噴霧ノズル10の感圧逆止弁22が開放されてミストの噴霧が開始される。
【0034】
このような降温用噴霧システムは、子配水管4の途中に空気抜き弁48が備えられているので、子配水管4内に水を供給するとき、子配水管4内の空気が空気抜き弁48から抜け、水がスムーズに噴霧ヘッド3に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。
【図2】この発明の噴霧ヘッドの一部横断面図である。
【図3】この噴霧ヘッドの断面図である。
【図4】噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。
【図5】噴霧されたミストの粒度分布の測定結果を示す図である。
【図6】噴霧ノズルからミストが噴霧される様子を表す図である。
【図7】実施の形態1に係わる加圧水供給装置の構成図である。
【図8】実施の形態1に係わるミスト制御盤の機能ブロック図である。
【図9】実施の形態1の加圧水供給装置により制御されたミストの噴霧のタイミングチャートである。
【図10】実施の形態2に係わる加圧水供給装置の構成図である。
【図11】実施の形態2に係わるミスト制御盤の機能ブロック図である。
【図12】実施の形態2の加圧水供給装置により制御されたミストの噴霧のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 降温用噴霧システム、2 柱、3 噴霧ヘッド、4 子配水管、5、5B 加圧水供給装置、6 温湿度計、7 水道、10 噴霧ノズル、11 噴霧ヘッダ、12 延長配管、14圧力変換器、15 空洞、16、17 孔、18 直管、19 ハウジング、20、21、26、27 空洞、21a 開口、22 感圧逆止弁、23 リブ、23 孔、24弁収納空洞、25 駒、28 噴流生成空洞、29 オリフィス、30 遮断球、31 バネ、32 溝、34 噴霧領域、35 噴角、36 噴霧外縁、40 高圧ポンプ、42主配水管、43 排水弁、45、45B ミスト制御盤、46 排水配管、47 ブレードホース、48 空気抜き弁、50 噴霧判断手段、51 給水量制御手段、52、52B噴霧シーケンス制御手段、53 空気線図データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、
水を加圧して送り出すポンプと、
上記ポンプに接続される主配水管と、
上記主配水管に接続され、上記主配水管と水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する子配水管と、
上記主配水管内の水を排水する排水配管と、
上記主配水管と上記排水配管の間に設けられる排水弁と、
上記ポンプ、上記排水弁を制御するミスト制御盤と、を備え、
上記ミスト制御盤は、噴霧を始めるとき、上記排水弁を閉じた状態で上記ポンプを作動して水を上記噴霧ヘッドに配水することを特徴とする降温用噴霧システム。
【請求項2】
上記子配水管に空気抜き弁が備えられ、
上記ミスト制御盤は、噴霧を始めるとき、上記排水弁を閉じた状態で上記ポンプを作動し、その後、上記空気抜き弁を閉じてから水を上記噴霧ヘッドに配水することを特徴とする請求項1に記載する降温用噴霧システム。
【請求項3】
上記ミスト制御盤は、噴霧を終わらせるとき、上記排水弁を所定時間だけ開放する間に上記ポンプを停止することを特徴とする請求項1または2に記載する降温用噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−168387(P2009−168387A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8722(P2008−8722)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】