説明

限外濾過装置の洗浄方法

【課題】分離膜内に吸着したポリマーを効率良く溶解し、膜分離性能を回復させることができる限外濾過装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、両親媒性ポリマーを用いて有機溶媒相へ転相、分散させた混合溶液から、水系微粒子の有機溶媒相への転相によって持ち込まれた転相溶媒を限外濾過法によって除去する限外濾過装置であって、該限外濾過装置の分離膜に吸着したポリマーを洗浄する際、少なくとも2種類の有機溶媒を使用して洗浄することを特徴とする限外濾過装置の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外濾過装置の洗浄方法に関し、さらに詳しくは、2種類の極性の違う有機溶媒を用いて逆洗浄する限外濾過装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、両親媒性ポリマーを用いて有機溶媒相へ転相、分散させた混合溶液から、水系微粒子の有機溶媒相への転相によって持ち込まれた転相溶媒を限外濾過法によって除去する場合、分離膜内に吸着したポリマーによってろ過速度が低下する。このような場合には、分離膜内に吸着したポリマーを除去するかあるいは溶解して分離膜を再生させる必要がある。
【0003】
有機溶剤を用いて分離膜を循環洗浄する方法は知られて(例えば、特許文献1参照)いる。しかしながら、この方法では透過側は洗浄されないため、洗浄効果が少ない。
【0004】
また、逆洗浄方法が開示されているが、(例えば、特許文献2参照)この方法では透過側も洗浄されるが、付着力の強い付着物または堆積物については洗浄効果が少ない。
【0005】
更に、比透過側の洗浄を薬液による循環洗浄を行った後、低級アルコールによる透過側を逆洗浄し、更に水による置換洗浄を含めた洗浄方法が開示されて(例えば、特許文献3参照)いる。この方法は洗浄効果がより高いが、有機溶剤系の膜分離には適さない。
【特許文献1】特開平8−281081号公報
【特許文献2】特開2003−71254号公報
【特許文献3】特開2003−103149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分離膜内に吸着したポリマーを効率良く溶解し、膜分離性能を回復させることができる限外濾過装置の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、両親媒性ポリマーを用いて有機溶媒相へ転相、分散させた混合溶液から、水系微粒子の有機溶媒相への転相によって持ち込まれた転相溶媒を限外濾過法によって除去する限外濾過装置であって、該限外濾過装置の分離膜に吸着したポリマーを洗浄する際、少なくとも2種類の有機溶媒を使用して洗浄することを特徴とする限外濾過装置の洗浄方法。
【0009】
2.前記少なくとも2種類の有機溶媒で逆洗浄することを特徴とする前記1記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【0010】
3.前記少なくとも2種類の有機溶媒の種類が極性の違う溶媒であることを特徴とする前記1又は2記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【0011】
4.前記少なくとも2種類の有機溶媒を極性の高い溶媒から極性の低い溶媒の順で洗浄することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【0012】
5.前記少なくとも2種類の有機溶媒の温度をそれぞれ50〜70℃にして洗浄することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、分離膜内に吸着したポリマーを効率良く溶解し、膜分離性能を回復させることができる分離膜の洗浄方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を更に詳しく説明する。本発明は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、両親媒性ポリマーを用いて有機溶媒相へ転相、分散させた混合溶液から、水系微粒子の有機溶媒相への転相によって持ち込まれた転相溶媒を限外濾過法によって除去する装置の洗浄方法に関する。この際、2〜3種類の極性の違う有機溶媒を用いて逆洗浄することにより、付着力の強い付着物または堆積物を溶解し、且つ押し出すことでより洗浄効率を高めることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
(分離膜)
本発明の限外濾過装置に用いる限外濾過する分離膜とは、ロブ−スリーラーヤン法により作製される典型的な非対称膜である。膜の断面がスキン層と多孔質層の非対称構造になっている。使用される高分子素材はそれほど多くなく、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体/ポリスルフォン/ポリエーテルスルフォン/フッ化ビニリデン/芳香族ポリアミド/酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。本発明においては、セラミックス膜の使用が好ましい。
【0016】
限外濾過法では逆浸透法と異なり、前処理を行わないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。
【0017】
(有機溶媒)
本発明で用いることの出来る有機溶媒はアルコール類、ケトン類が挙げられる。具体的にアルコール類としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。また、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等を挙げることができる。本発明において、特にメタノール、メチルエチルケトンが好ましい。
【0018】
(親水性高分子)
本発明に係る親水性高分子は、ハロゲン化銀乳剤のような水系微粒子の分散物において保護コロイドとして用いられる親水性高分子を対象とする。
【0019】
前記親水性高分子としてはペプチド結合を分子中に有する高分子化合物が好ましいものとして挙げられる。ここにおいてペプチド結合とは、α−アミノ酸同士がカルボキシル基と他のアミノ基とから脱水結合してつくる酸アミド結合のことであり、タンパク、或いはタンパク由来のゼラチン等の天然高分子中の結合骨格となっている結合である。これらの結合は酸アミド結合であり、活性な水素を有する官能基である。
【0020】
これらの天然高分子の代表例としてゼラチンがあり、例えばハロゲン化銀写真感光材料において、特にそのハロゲン化銀乳剤の製造において保護コロイドとして用いられ、ハロゲン化銀の晶癖、またその増感等、感光特性に大きな影響を与える。
【0021】
ゼラチンはペプチド結合をその分子骨格中に有するが、後述する両親媒性ポリマーは、これらペプチド結合にたいし水素結合の形成が可能な基が官能基として含まれることが好ましい。
【0022】
ゼラチンとしては、通常分子量10万程度のアルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン、或いは酸化処理したゼラチンや酵素処理ゼラチン等、また、化学修飾ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチン等のゼラチン誘導体)等も挙げられ、ゼラチンの平均分子量としては1万〜7万であることが好ましく、1万〜5万であることが更に好ましい。
【0023】
(水系微粒子の分散物)
次にこれらゼラチンで代表される親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物の代表例であるハロゲン化銀乳剤について説明する。
【0024】
本発明に係わる水系微粒子の有機溶媒転相/分散方法においては、特に粒子径が10〜100nmである水系微粒子の水性分散物に適用するのが好ましい。
【0025】
この様な粒子径を有するハロゲン化銀粒子としては、熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子があり、ハロゲン化銀粒子の平均粒子径は10〜100nm、好ましくは10〜80nmである。ここでいう平均粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体や八面体のいわゆる正常晶である場合、その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径、いわゆる球相当径をいう。なお、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求める。
【0026】
また、粒径の分布を表す変動係数の最適の値としては、0%以上〜30%以下であり、好ましくは、0%以上〜20%以下である。ここで粒径の変動係数とは、粒径のバラツキの程度を表し、電子顕微鏡を用い1000個の粒子について測定した各粒子の投影面積の円換算直径の標準偏差を平均粒径で割った値のパーセント表示値である。
【0027】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができるが、全体のハロゲン組成としてBrが50質量%以上である事が好ましい。塩化銀が多すぎるとオストワルド熟成が進み易く、粒径の増大が起き易くなる。一方、ヨウ化銀が多すぎるとハロゲン化銀粒子の感度が低下し好ましくない。
【0028】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は、均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。また、塩臭化銀粒子の表面に、臭化銀やヨウ臭化銀、ヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0029】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は、当業界公知の方法、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができる。ゼラチンはハロゲン化銀粒子の分散剤(保護コロイド)としてハロゲン化銀1モルあたり、10〜100gの範囲で用いられる。
【0030】
具体的には、ゼラチン溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製する。特に銀イオン水溶液とハライド水溶液をダブルジェットで添加し粒子形成を行う方法が好ましい。
【0031】
感光性ハロゲン化銀乳剤は、ヌードル法、凝集沈殿法、電気透析等、当業界で知られている水洗方法により脱塩することができるが、限外ろ過によっても脱塩をおこなう事ができる。脱水は最終的に脱水された水の伝導度が好ましくは300μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下になる程度に行う。この場合、伝導度の下限に特に制限はないが、通常、5μS/cm程度である。
【0032】
(両親媒性ポリマー)
本発明に係る両親媒性ポリマーは、下記一般式(1)で表される共重合体であって、一般式(2)、(4)および(5)で表されるモノマーを含む溶液中に、一般式(3)で表されるモノマーと重合開始剤の溶液をそれぞれ添加することで重合し、形成された合成高分子ポリマー(共重合体)が挙げられる。
【0033】
【化1】

【0034】
式中、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0035】
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、またl+m+n+o=100である。また、一般式(4)および(5)において、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1およびm1は1〜300、n2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但しn1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。
【0036】
これらの合成高分子ポリマーは、前記親水性高分子であるゼラチン等の分子中に含まれるペプチド結合に親和性が高く、これと水素結合が可能な酸アミド基をその分子中に、均一に分散された状態で含んでいると考えられる。一般式(3)で表される酸アミド基を有するモノマー成分を順次添加する製造方法によって製造されることにより、一般式(3)で表されるモノマー成分、酸アミド基が、合成高分子ポリマー中に均一に導入されるためである。これによりゼラチンのような親水性高分子中のペプチド結合と水素結合(と考えている)による親和性によって、互いに均一に混じりあうようになる。
【0037】
一般式(1)において、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0038】
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、またl+m+n+o=100である。また、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1およびm1は1〜300、n2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但しn1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。
【0039】
1で表される炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、1,1−ジメチルエチレン等の基を表す、特に1,1−ジメチルエチレンが好ましい。
【0040】
1で表される炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基としては、無置換のアルキル基、置換アルキル基を含み、無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の基を表す。また、置換アルキル基における置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシ、カルボキシ基等の基を含み、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、また、例えばオキソラニル基、オキサニル基、ピラジニル基等、複素原子を含む飽和炭化水素基でもよい。R1としては水素原子、イソプロピル基等が好ましい。
【0041】
2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を表すが、好ましくは直鎖の、炭素数16以上のアルキル基、例えば、ステアリル基、ベヘニル基等を表す。
【0042】
またR3で表される炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましい。
【0043】
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、またl+m+n+o=100である。
【0044】
また、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表すが、n1およびm1は6〜100の範囲が好ましく、さらに好ましいのは8〜50である。また、n2およびm2は0〜30の範囲が好ましく、さらに好ましいのは0〜15である。また、n1+n2、m1+m2はそれぞれ好ましくは8以上の整数である。
【0045】
これらの共重合体の製造は、各成分モノマー即ち、下記一般式(2)、(3)、(4)および(5)で表されるモノマーの共重合により得ることができる。
【0046】
一般式(2)で表されるモノマーにおいて、R0、L1は前記と同じ基である。これらのモノマーとしては、代表的にはダイアセトンアクリルアミドがあり好ましいモノマーである。
【0047】
また、一般式(3)で表されるアクリルアミドモノマーとしては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)等が挙げられる。
【0048】
この成分はゼラチンのペプチド結合と親和性が高い酸アミド基を有するモノマー成分であり、共重合体中に均一に、ランダムに配置されることが好ましいと考えられる。
【0049】
一般式(4)および一般式(5)で表されるモノマーにおいてR0、EO、PO、R2、R3等の基は前記一般式(1)におけるものと同義である。これらのポリオキシアルキレン基を有するモノマーとしては、下記の中から選択して用いることができる。
【0050】
例えば(ポリオキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)]、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、トリトン[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))]およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
【0051】
また、上市されているものとして、日本油脂株式会社製のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどがあげられ、これらの中から選択し用いることができる。
【0052】
これらの共重合体は水に対する親和性と油性を併せもつ両親媒性のポリマーであり、有機溶媒、水の両者中においてそれぞれ溶解分散する性質を有している。
【0053】
前記原料モノマー例えば、NIPAM、前記PSE−400、PME−400等の共重合体ポリマーの構成成分である各モノマーを共重合比に応じて反応溶媒(例えばメチルエチルケトン等各原料モノマーや生成する共重合体が溶解する溶剤)中において、混合し、重合開始剤を添加し、室温或いは加温して共重合させることで共重合体を得ることができる。
【0054】
(ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒への転相方法)
無機微粒子の有機溶媒転相/分散方法について、以下これを実施する装置図を用いて説明する。
【0055】
図1はハロゲン化銀乳剤の有機溶媒への転相に用いる比較の装置の概略図である。図1において、2はハロゲン化銀乳剤のタンクである。ここにおいてハロゲン化銀乳剤は、保護コロイドであるゼラチンのゲル化温度以上の温度例えば、30℃〜45℃程度に加温され、溶解される。
【0056】
1は転相に用いる合成高分子ポリマー(ポリマーのメタノール溶液)のタンク(ポリマーのメタノール溶液)である。ここにおいて製造された4元共重合体がメタノールに溶解される。メタノールは加温され合成高分子ポリマーを徐々に添加しつつ、均一に溶解される。
【0057】
均一に溶解したら、フィルタ(図示せず)を通して4の転相タンクに送られる。転相タンク4において、前記ポリマーメタノール溶液は、40℃〜45℃の一定温度に調整維持される。釜内を攪拌しつつ、そこに前記ハロゲン化銀の溶解釜からゼラチンのゲル化温度以上の温度例えば45℃〜50℃にて溶解したハロゲン化銀ゼラチン乳剤を3のハロゲン化銀乳剤用ポンプで一定の速度で添加する。この間常に45℃〜50℃の温度を維持する。添加後充分に均一な混合が進むように同温度で、加温を続ける。加温は、例えばメタノールの溶媒の沸点に近くなると、乳剤のカブリ濃度が増したりするため、また局所的(気液界面等)に溶媒の蒸発による不溶物の形成が起こり好ましくないので、50℃以下の温度に維持することが好ましい。添加後少なくとも30分〜1時間添加時の温度を維持する。
【0058】
次に有機溶媒(この場合はメチルエチルケトン)を、4の転相タンクに9のMEK添加バルブを調整して10分程度の時間をかけ徐々に添加する。
【0059】
次に4の転相タンク内の液を分離膜(この場合はセラミック膜)で濃縮する操作を行う。6の限外濾過用ポンプで5のセラミック膜を経由して一定流量で循環させる。この時、8の真空ポンプで150mmHg(19998Pa)に減圧させ、7の濾過用タンクに濾過液を回収する。通常の限外濾過は加圧方式が一般的であるが、ハロゲン化銀乳剤とポリマーが反応した場合にはハロゲン化銀粒子が凝集するため、減圧方式が好ましい。
【0060】
所定の量まで濃縮したら、メチルエチルケトンを追加しつつ、連続、或いは、断続的に、濃縮をかける。この操作により混合乳剤中の水分が減少し、1%以内になるまで、メチルエチルケトンの追加、濃縮を繰り返し、最終的な合成高分子とゼラチンが共存する転相メチルエチルケトンハロゲン化銀乳剤が得られる。
【0061】
図2はハロゲン化銀乳剤の有機溶媒への転相に用いる本発明に係る装置の概略図である。基本的には図1と同様の機能を有する。但し、被透過側用洗浄溶媒タンクA(10)の外に被透過側用洗浄溶媒タンクB(20)と、透過側用洗浄溶媒タンクA(11)の外に透過側用洗浄溶媒タンクB(21)を有し、それぞれ異なる溶媒が貯蔵できる。
【実施例】
【0062】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0063】
比較例1
転相メチルエチルケトンハロゲン化銀乳剤を図1の装置で限外濾過を行った。なお、膜は日本ガイシ社製のセラミック限外濾過膜(細孔径10nm、膜面積0.24m2)を使用した。限外濾過の方式としては、クロスフロー方式で行い、操作条件は、循環流量6.3L/min、操作圧力は、濾過側を150mmHg(19998Pa)に減圧する減圧式濾過で行った。転相メチルエチルケトンハロゲン化銀乳剤を限外濾過したことにより、初期濾過量が1.29l/minだったものが限外濾過終了時には0.48l/minになっていた。次に図1の装置を使用して濾過膜の洗浄を行った。洗浄方法については図1中の10の被透過側用洗浄溶媒タンクAに60℃に保温したメチルエチルケトン(以下MEK)を5L準備し、4の転相タンクにMEKを送液した。次に、11の透過側用洗浄溶媒タンクAに60℃に保温したMEKを10L準備した。4の転相タンク内のMEKを6の限外濾過用ポンプを循環流量4L/minに調整し5のセラミック膜の被透過側を循環した。次に11のMEKを13の透過側圧力計が0.1MPaになるように12の透過側用ポンプを調整し5のセラミック膜の透過側を逆洗浄した。洗浄は11のMEKが無くなった時に終了した。
【0064】
比較例2
比較例1の有機溶媒をメタノールに変更する以外は比較例1と同様にしてセラミック膜の洗浄を行った。
【0065】
比較例3
図2の装置を使用して比較例1と同様にして転相メチルエチルケトンハロゲン化銀乳剤を限外濾過した。その後、濾過膜の洗浄を以下の2段階の方法で行った。
【0066】
(第1の有機溶媒の洗浄)
図2中の10の被透過側用洗浄溶媒タンクAに60℃に保温したメチルエチルケトン(以下MEK)を5L準備し、4の転相タンクにMEKを送液した。次に、11の透過側用洗浄溶媒タンクAに60℃に保温したMEKを10L準備した。4の転相タンク内のMEKを6の限外濾過用ポンプを循環流量4L/minに調整し5のセラミック膜の被透過側を循環した。次に11のMEKを13の透過側圧力計が0.1MPaになるように12の透過側用ポンプを調整し5のセラミック膜の透過側を逆洗浄した。洗浄は11のMEKが無くなった時に終了した。4の転相タンク内に溜まったMEKを14のドレインタンクに回収した。
【0067】
(第2の有機溶媒の洗浄)
図2中の20の被透過側用洗浄溶媒タンクBに60℃に保温したメタノールを5L準備し、4の転相タンクにメタノールを送液した。次に、21の透過側用洗浄溶媒タンクBに60℃に保温したメタノールを10L準備した。4の転相タンク内のMEKを6の限外濾過用ポンプを循環流量4L/minに調整し5のセラミック膜の被透過側を循環した。次に11のMEKを13の透過側圧力計が0.1MPaになるように12の透過側用ポンプを調整し5のセラミック膜の透過側を逆洗浄した。洗浄は11のメタノールが無くなった時に終了した。4の転相タンク内に溜まったメタノールを14のドレインタンクに回収した。
【0068】
実施例1
比較例3の第1の有機溶媒をメタノール、第2の有機溶媒をMEKにし、温度を30℃にする以外は比較例3と同様にしてセラミック膜の洗浄を行った。
【0069】
実施例2
実施例1の有機溶媒の温度をそれぞれ60℃にする以外は実施例1と同様にしてセラミック膜の洗浄を行った。
【0070】
(限外濾過膜の洗浄効果確認)
比較例1〜3、実施例1〜2の洗浄効果の確認を行うため、洗浄回復率を求めた。洗浄回復率とは新品の分離膜をメチルエチルケトンを使用して循環流量4.6L/min、減圧150mmHg(19998Pa)で減圧濾過した時の濾過量を100とした場合に対する、洗浄後の濾過量の割合とした。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1の結果からわかるように、本発明の洗浄方法が洗浄効果が高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒への転相に用いる比較の装置の概略図である。
【図2】ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒への転相に用いる本発明に係る装置の概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 ポリマータンク
2 ハロゲン化銀乳剤タンク
3 ハロゲン化銀乳剤添加用ポンプ
4 転相タンク
5 セラミック膜
6 限外ろ過用ポンプ
7 限外ろ過用ポンプ
8 真空ポンプ
9 MEK添加バルブ
10 被透過側用洗浄溶媒タンクA
20 被透過側用洗浄溶媒タンクB
11 透過側用洗浄溶媒タンクA
21 透過側用洗浄溶媒タンクB
12 透過側用ポンプ
13 透過側圧力計
14 ドレインタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、両親媒性ポリマーを用いて有機溶媒相へ転相、分散させた混合溶液から、水系微粒子の有機溶媒相への転相によって持ち込まれた転相溶媒を限外濾過法によって除去する限外濾過装置であって、該限外濾過装置の分離膜に吸着したポリマーを洗浄する際、少なくとも2種類の有機溶媒を使用して洗浄することを特徴とする限外濾過装置の洗浄方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種類の有機溶媒で逆洗浄することを特徴とする請求項1記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記少なくとも2種類の有機溶媒の種類が極性の違う溶媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記少なくとも2種類の有機溶媒を極性の高い溶媒から極性の低い溶媒の順で洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の限外濾過装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記少なくとも2種類の有機溶媒の温度をそれぞれ50〜70℃にして洗浄することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の限外濾過装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−142759(P2009−142759A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323094(P2007−323094)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】