説明

除塵脱臭フィルタ装置

【課題】除塵脱臭フィルタ装置の除塵脱臭性能を確保しながら、その除塵フィルタと脱臭フィルタをそれぞれ単独で交換可能とする。
【解決手段】枠体1に除塵フィルタ2と脱臭フィルタ3を着脱可能に組み込んで、各フィルタ2、3をそれぞれ単独で交換可能とするとともに、枠体1に回動可能に取り付けた蓋4で除塵フィルタ2を枠体1の後面側へ押圧して、除塵フィルタ2の後面の周縁部と枠体1の内周面に設けた段差面10とで気密材21と脱臭フィルタ3の鍔部20を挟み付けることにより、両フィルタ2、3間を確実にシールして、従来のものと同等の除塵脱臭性能が得られるようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵性能と脱臭性能を備えた除塵脱臭フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
除塵性能と脱臭性能を備えた除塵脱臭フィルタ装置は、空気清浄装置やトナーを定着させる電子写真装置の排気路等に装着されている。このような除塵脱臭フィルタ装置には、前面の開口から後面の開口に空気を通す略矩形状の枠体を有し、この枠体の前面側に除塵フィルタを、後面側に脱臭フィルタをそれぞれ組み込んで、これらの各フィルタを枠体に接着剤で固定して一体化したものが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたように除塵フィルタと脱臭フィルタを枠体に接着固定した除塵脱臭フィルタ装置では、除塵フィルタと脱臭フィルタのいずれか一方の性能が低下して寿命に達したときに、両フィルタと枠体とを一体化したユニットごと交換する必要がある。このため、寿命に達したフィルタとともに枠体および使用可能な方のフィルタも廃却することになり、交換コストが高く資源の面でムダが生じるという問題がある。
【0005】
これに対して、各フィルタをそれぞれ枠体に着脱可能に組み込んで単独で交換可能とすることにより、一方のフィルタが寿命に達したときには、そのフィルタだけを交換し、枠体ともう一方のフィルタは使い続けられるようにすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記のように各フィルタを着脱可能に組み込んだ場合、両フィルタ間に気密材を配置しても、徐塵フィルタおよび脱臭フィルタの変形等により十分なシール性を確保することができず、空気が両フィルタの間から漏れて、徐塵および脱臭が行われていない空気が外部に排出されてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、除塵脱臭フィルタ装置の除塵脱臭性能を確保しながら、その除塵フィルタと脱臭フィルタをそれぞれ単独で交換可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、前面の開口から後面の開口に空気を通す枠体と、前記枠体の前面側に組み込まれる除塵フィルタと、前記枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタとを備えた除塵脱臭フィルタ装置において、前記枠体の内周面に前面側を向く段差面を全周にわたって設け、前記除塵フィルタを、その後面の周縁部が全周にわたって前記枠体の段差面と対向する状態で枠体に着脱可能に組み込まれるものとし、前記脱臭フィルタを、その前面から張り出す鍔部が前記枠体の段差面と除塵フィルタの後面の周縁部とに挟まれる状態で枠体に着脱可能に組み込まれるものとし、前記除塵フィルタの後面の周縁部と脱臭フィルタの鍔部との間に全周にわたって気密材を設け、前記除塵フィルタを枠体の後面側へ押圧する手段を設けて、前記除塵フィルタの後面の周縁部と枠体の段差面とで前記気密材と脱臭フィルタの鍔部を挟み付ける構成を採用した。
【0009】
すなわち、枠体に除塵フィルタと脱臭フィルタを着脱可能に組み込んで、各フィルタをそれぞれ単独で交換可能とするとともに、除塵フィルタを枠体の後面側へ押圧して、その後面の周縁部と枠体の内周面に設けた段差面とで気密材と脱臭フィルタの鍔部を挟み付けることにより、両フィルタ間を確実にシールすることができ、臭気を含んだ空気が両フィルタの間から漏れないようにしたのである。
【0010】
上記の構成において、前記除塵フィルタを枠体の後面側へ押圧する手段としては、前記除塵フィルタの前面の周縁部を覆う状態で枠体と係合する蓋を採用することができる。
【0011】
ここで、前記枠体が、その側面にあけたばね収納孔の縁部から枠体の外側へ突出するばね片を有しており、前記蓋が、その側面にあけた係合孔に前記ばね片を嵌め込まれて前記枠体と係合するものである場合は、前記除塵フィルタの側面に、前記ばね片の突出部を枠体のばね収納孔に押し込んで前記枠体と蓋との係合を解除するときにばね片の一部が入り込む凹部を設けることにより、各フィルタの交換等のために蓋をあけるときのばね片の操作を行いやすくすることができる。
【0012】
また、前記除塵フィルタの後面の周縁部に前記枠体の後面側へ突出する突出部を設けることにより、その突出部を気密材に食い込ませて、脱臭フィルタとの間のシール性を向上させることができる。
【0013】
前記除塵フィルタとして、プリーツ状のろ材の側面の全周および前後面の少なくとも一方の周縁部に枠材を貼り付けたものを採用すれば、プリーツ状のろ材の側面にのみ枠材を貼り付けた場合よりも除塵フィルタの側面の変形が少なくなり、除塵フィルタで大きな圧力損失が生じるような使用条件でも、脱臭フィルタとの間のシール性を確保することができる。
【0014】
前記脱臭フィルタの後面を補強用の金網で覆い、前記枠体に前記金網の周縁部の近傍を挟む金網挟持部を設け、前記金網の周縁部を前記金網挟持部の外側で折り曲げることにより、金網自体の剛性を確保して脱臭フィルタを効果的に補強することができ、脱臭フィルタの変形によるシール性の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の除塵脱臭フィルタ装置は、上述したように、枠体に除塵フィルタと脱臭フィルタを着脱可能に組み込み、除塵フィルタの後面の周縁部と枠体の内周面に設けた段差面とで気密材と脱臭フィルタの鍔部を挟み付けることにより、両フィルタ間を確実にシールできるようにしたものであるから、除塵フィルタと脱臭フィルタを枠体に接着固定した従来のものと同等の除塵脱臭性能を有し、しかも除塵フィルタと脱臭フィルタをそれぞれ単独で交換することができ、枠体も各フィルタの寿命によらず長期間にわたって使用できる。従って、両フィルタの一方が寿命に達したときの交換コストが少なく、資源面でのムダもなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の除塵脱臭フィルタ装置の分解斜視図
【図2】図1のフィルタ装置の短手方向の縦断面図
【図3】図1のフィルタ装置の長手方向の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この除塵脱臭フィルタ装置は、図1に示すように、前面の開口から後面の開口に空気を通す枠体1と、枠体1の前面側に着脱可能に組み込まれる除塵フィルタ2と、枠体1の後面側に着脱可能に組み込まれる脱臭フィルタ3とを備え、トナーを定着させる電子写真装置の排気路に装着されて、前面から流入する排気に含まれるトナー等を除塵フィルタ2で捕集し、臭気を脱臭フィルタ3で吸着するものである。その枠体1には、除塵フィルタ2の前面に被せられる枠状の蓋4と脱臭フィルタ3の後面を覆う金網5が取り付けられ、脱臭フィルタ3と金網5の間には通気性のシート6が挟み込まれている。
【0018】
図2および図3に示すように、前記枠体1は、外形が略矩形に形成された金属製の枠7の内周面に、断面略C字状に形成された金属製の桟8をリベット9で取り付けて、前面側を向く段差面10を全周にわたって設けたものである。その枠7は、前面側の外形がわずかに絞られ、後面側と同じ外形寸法と厚みを有する蓋4の側面に覆われるようになっている。また、枠7の後面側の端部は断面略C字状に折り曲げられ、この折曲部と枠7の内周面の桟8とで金網5の周縁部の近傍を挟む金網挟持部11を形成している。なお、この実施形態では、枠7および桟8を板金加工により形成しており、枠7と桟8の間に空気の漏れを防ぐコーキングが施されているが、押出加工により形成する場合は、枠と桟を一体化できるためコーキングは不要となる。
【0019】
前記除塵フィルタ2は、ろ材12をプリーツ状に折り曲げて、プリーツ間の隙間を確保するためのビード13をプリーツと直交する方向に複数設け、そのプリーツ状のろ材12の側面の全周および前面の周縁部に不織布製の枠材14を貼り付けたものである。ろ材12はガラス繊維または不織布で形成され、ビード13は熱融着樹脂(ホットメルト)で形成されている。また、枠材14は、ろ材12の側面の幅よりも広幅の不織布をろ材12側面の全周に巻き付け、ろ材12の後面からはみ出す部分はそのまま枠体1後面側へ突出する突出部14aとして残し、ろ材12の前面からはみ出す部分をろ材12前面の周縁部を覆うように折り曲げている。この枠材14の折曲部14bには、蓋4との間をシールする気密材(ガスケット)15が貼り付けられている。
【0020】
前記脱臭フィルタ3は、前面が開口する不織布製の箱状体16の内側に、蜂の巣状に形成された紙製のハニカムコア17を配し、ハニカムコア17で仕切られた空間に粒状の活性炭18を充填して、箱状体16の開口を不織布製の蓋シート19で塞いだものである。その箱状体16の開口縁は全周にわたって外側へ延長され、この延長部と蓋シート19の周縁部とが接着されて、脱臭フィルタ3の前面から張り出す鍔部20が形成されている。そして、その鍔部20(蓋シート19周縁部)の前面に、除塵フィルタ2(枠材突出部14a)との間をシールする気密材(ガスケット)21が貼り付けられている。
【0021】
前記蓋4は、長手方向の一端部を枠体1に蝶番22で取り付けられ、その取付部を支点に回動して開閉するものである。その取付位置は、短手方向の一端部としてもよい。そして、閉じたときには、その長手方向の他端の側面にあけた2つの係合孔4aに枠体1側面に取り付けたばね片23をそれぞれ嵌め込まれて、除塵フィルタ2の前面の周縁部を覆う状態で枠体1と係合し、除塵フィルタ2を枠体1の後面側へ押圧するようになっている。この蓋4の作用により、除塵フィルタ2の後面の周縁部と枠体1の段差面10とが気密材21と脱臭フィルタ3の鍔部20を挟み付け、除塵フィルタ2の枠材突出部14aが気密材21に食い込んで、除塵フィルタ2と脱臭フィルタ3の間がシールされる。
【0022】
ここで、前記枠体1のばね片23は、枠体1の側面にあけたばね収納孔1aの縁部から枠体1の外側へ突出しており、その突出部をばね収納孔1aに押し込んで上述した枠体1と蓋4との係合を解除するときに、一部が除塵フィルタ2の側面に設けた凹部2aに入り込むようになっている。すなわち、蓋4をあけるときにばね片23を操作しやすくなっている。
【0023】
なお、枠体1のばね片23取付側の端面には把手24が取り付けられ、各フィルタ2、3の両端部には枠体1から引き出すときにつかむテープ25が取り付けられて、各フィルタ2、3の交換作業が容易に行えるようになっている。また、蓋4の外周面と前面および枠体1の後面側の外周面と後面には、不織布製の遮熱材26が貼り付けられ、枠体1や蓋4が高温の排気の通過によって熱くなっても、各フィルタ2、3の交換時に作業者が素手で作業できるようになっている。
【0024】
前記金網5は、その周縁部の近傍を枠体1の金網挟持部11で挟まれ、金網挟持部11の外側で周縁部を折り曲げられている。これにより、金網5自体の剛性が高まって、脱臭フィルタ3を効果的に補強でき、脱臭フィルタ3の変形によるシール性の低下を防止することができる。
【0025】
前記通気性シート6は、脱臭フィルタ3の箱状体16の後面を覆い、箱状体16から流出した活性炭18の微粉を捕集して外部へ排出しないようにするものである。
【0026】
この除塵脱臭フィルタ装置は、上述したように、枠体1に除塵フィルタ2と脱臭フィルタ3を着脱可能に組み込んだので、除塵フィルタ2と脱臭フィルタ3をそれぞれ単独で交換することができ、枠体1も各フィルタ2、3の寿命によらず長期間にわたって使用できる。
【0027】
しかも、除塵フィルタ2の後面の周縁部と枠体1の内周面に設けた段差面10とで気密材21と脱臭フィルタ3の鍔部20を挟み付けて、除塵フィルタ2の後面側の枠材突出部14aを気密材21に食い込ませることにより、両フィルタ2、3間を確実にシールできるようにしたので、臭気を含んだ空気が両フィルタ2、3の間から漏れることがなく、各フィルタを枠体に接着固定した従来のものと同等の除塵脱臭性能が得られる。
【0028】
ここで、除塵フィルタ2は、プリーツ状のろ材12の側面の全周だけでなく前面の周縁部にも枠材14を貼り付けたので、ろ材の側面にのみ枠材を貼り付けた場合よりも側面の変形が少なく、除塵フィルタ2で大きな圧力損失が生じるような使用条件でも、脱臭フィルタ3との間のシール性を確保できるものとなっている。
【0029】
なお、上述した実施形態では、除塵フィルタ2のろ材12の側面と前面の周縁部に枠材14を貼り付けたが、枠材はろ材の後面の周縁部にも貼り付けるようにしてもよい。その場合は、ろ材の後面周縁部に貼り付けた枠材全体が、枠体の後面側へ突出する突出部となって気密材に食い込むようになる。
【符号の説明】
【0030】
1 枠体
1a ばね収納孔
2 除塵フィルタ
2a 凹部
3 脱臭フィルタ
4 蓋
4a 係合孔
5 金網
6 通気性シート
10 段差面
11 金網挟持部
12 ろ材
14 枠材
14a 突出部
14b 折曲部
20 鍔部
21 気密材(ガスケット)
23 ばね片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面の開口から後面の開口に空気を通す枠体と、前記枠体の前面側に組み込まれる除塵フィルタと、前記枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタとを備えた除塵脱臭フィルタ装置において、前記枠体の内周面に前面側を向く段差面を全周にわたって設け、前記除塵フィルタを、その後面の周縁部が全周にわたって前記枠体の段差面と対向する状態で枠体に着脱可能に組み込まれるものとし、前記脱臭フィルタを、その前面から張り出す鍔部が前記枠体の段差面と除塵フィルタの後面の周縁部とに挟まれる状態で枠体に着脱可能に組み込まれるものとし、前記除塵フィルタの後面の周縁部と脱臭フィルタの鍔部との間に全周にわたって気密材を設け、前記除塵フィルタを枠体の後面側へ押圧する手段を設けて、前記除塵フィルタの後面の周縁部と枠体の段差面とで前記気密材と脱臭フィルタの鍔部を挟み付けるようにしたことを特徴とする除塵脱臭フィルタ装置。
【請求項2】
前記除塵フィルタを枠体の後面側へ押圧する手段が、前記除塵フィルタの前面の周縁部を覆う状態で枠体と係合する蓋であることを特徴とする請求項1に記載の除塵脱臭フィルタ装置。
【請求項3】
前記枠体が、その側面にあけたばね収納孔の縁部から枠体の外側へ突出するばね片を有しており、前記蓋が、その側面にあけた係合孔に前記ばね片を嵌め込まれて前記枠体と係合するものであり、前記除塵フィルタの側面に、前記ばね片の突出部を枠体のばね収納孔に押し込んで前記枠体と蓋との係合を解除するときにばね片の一部が入り込む凹部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の除塵脱臭フィルタ装置。
【請求項4】
前記除塵フィルタの後面の周縁部に前記枠体の後面側へ突出する突出部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ装置。
【請求項5】
前記除塵フィルタが、プリーツ状のろ材の側面の全周および前後面の少なくとも一方の周縁部に枠材を貼り付けたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ装置。
【請求項6】
前記脱臭フィルタの後面を補強用の金網で覆い、前記枠体に前記金網の周縁部の近傍を挟む金網挟持部を設け、前記金網の周縁部を前記金網挟持部の外側で折り曲げたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−166148(P2012−166148A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29340(P2011−29340)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(593107373)株式会社アクシー (10)
【Fターム(参考)】