説明

除害装置及び除害システム

【課題】電極の長寿命化を図りつつプラズマ中でのガスの酸化を促進することの可能な除害装置及び除害システムを提供する。
【解決手段】給水管31より給水されたH2Oに対しバブル発生装置33より多数の細かい粒状の気泡35が混入される。H2Oはパイプ23を堰として溢れ、その後、パイプ23の内側を伝ってほぼ均一に自然落下する。このとき、気泡35はカソード電極27の位置する付近ではH2Oから外に飛散し難く、一方、パイプ23の内側を伝って流れるH2Oに含まれている空気又はO2は、内側貯留槽42に至るまでの過程で徐々に外部に飛散する。このとき、プラズマの周囲にプラズマの流れと並行した水膜41が形成されているため、広範囲に亙ってO2と接触され、PFCガスが酸化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPFCガスを無害なガスに分解する除害装置及び除害システムに係わり、特に電極の長寿命化を図りつつプラズマ中でのガスの酸化を促進することの可能な除害装置及び除害システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程では、化学気相反応を利用して成膜するCVD(Chemical Vapor Deposition)処理やエッチング処理等が行われ、プロセスチャンバにおいて各種のガスが使用されている。
【0003】
そして、このプロセスチャンバから化学気相反応等を経て発生する排ガスは、有害なCF4(フロン14)やC48(フロン318)などのPFCガス(パーフロロカーボン:地球温暖化ガス)が含まれている。このPFCガスは極めて安定なため、分解されずに大気中に放出されると環境に対して害が大きい。
【0004】
このため、図4に示すように、プロセスチャンバ1には、この有害な排ガスを除去するべく真空引きのためにターボ分子ポンプ3及びドライポンプ5が直列に接続されている。そして、ドライポンプ5で運転開始時にある程度真空引きした後に、更にターボ分子ポンプ3で必要な低圧にまで真空引きするように構成されている。
【0005】
ドライポンプ5から出力された有害な排ガスは、除害装置7を通りセントラルスクラバー9に至るようになっている。このとき、排ガスは、セントラルスクラバー9により多少の減圧をされつつ除害装置7内に誘導される。そして、除害装置7では、例えば、プラズマによりPFCガスを無害なCO2やHF(フッ化水素)に分解するようになっている。その後、発生したHFはH2O(水)に溶かされた上で外部に排出される。
【0006】
ところで、このプラズマ処理の工程でPFCガスやH2ガスを酸化によりCO2やH2OやHFに分解するためには、O2をH2Oの形で供給するだけでは足りず、別途相当量のO2が必要である。このため、特許文献1では、除害装置7の入力側から配管11を介してO2を供給する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−117344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この除害装置7の排ガスの入力される側には構造上プラズマ発生のためのカソード電極が存在する。このカソード電極の材質は寿命の観点から例えばCu−W合金(カッパー・タングステン)が採用されている。
【0009】
従って、除害装置7の入力側からO2が供給されると、カソード電極はO2に晒される確率が増え、酸化される恐れが高い。カソード電極は酸化されるとスパッタリングされてしまう。その結果として、電極の寿命が短くなる恐れがあった。
【0010】
また、従来はH2Oを電気分解してO2を供給する方法も採用されているが、これだとO2の生成と等量のH2が生成されてしまい、H2の除害が出来ない。他のガスとの同時処理により、H2の濃度が高くなると、例えば4%程度で発火する恐れもある。
【0011】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、電極の長寿命化を図りつつプラズマ中でのガスの酸化を促進することの可能な除害装置及び除害システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明(請求項1)の除害装置は、吸入されたPFCガスを含む排ガスをプラズマにより酸化することで無害化する除害装置であって、アノード電極とカソード電極間に高電圧を印加して常圧中でプラズマを生成するプラズマ発生手段と、H2Oに対し空気又はO2の気泡を混入する気泡混入手段とを備え、前記プラズマ発生手段により発生されたプラズマの周囲に前記気泡の混入されたH2Oが接触することで前記排ガスが酸化促進されることを特徴とする。
【0013】
2Oに対し空気又はO2の気泡を混入したので、電極の周囲付近では水中から気泡が飛散し難く、従来のようにO2が直接電極に反応するといったようなことは無くなる。従って、電極が消耗され難く長寿命化を図ることができる。これにより、除害装置のランニングコストを低くすることができる。
【0014】
一方、H2Oに含まれている空気又はO2は、プラズマの周囲で接触されるため、PFCガスはH2O及びO2を媒体として酸化される。
ラジカル化されたC,F,HにはH2Oに含まれている空気又はO2により十分なだけのO2が供給される。その結果、吸入されたPFCガスを含む排ガスをプラズマにより酸化促進して無害なCO2やHFに分解することができる。
【0015】
このことにより、排ガスを高分解率で処理できる。従来はH2OからH2を発生させて利用したりしていたが、このような処理を適用することなく、プラズマ反応部分にO2を供給できる。
【0016】
なお、排ガスに含まれる他の成分であるH2とCOについても、H2Oに含まれている空気又はO2の十分な供給により、同様にそれぞれ無害なH2O、CO2として排出可能である。このため、CO処理のための特別な除害装置は不要である。また、除害装置で用いられるプラズマは常圧プラズマであるため、除害装置の設置が容易である。
【0017】
また、本発明(請求項2)の除害装置は、前記カソード電極より前記アノード電極方向に向けて所定長分離れた位置より前記アノード電極に至るまで、又は、前記カソード電極より前記アノード電極方向に向けて所定長分離れた位置より前記アノード電極の手前所定長分に至るまで、前記プラズマの周囲を囲むように設けられたプラズマ貫通路を備え、前記気泡の混入されたH2Oが該プラズマ貫通路の内表面を水膜状に流れることを特徴とする。
【0018】
プラズマ貫通路はパイプ若しくは壁等で構成可能である。カソード電極付近には、空気又はO2の気泡を含む水膜が存在しないように構成したので、O2が直接電極に反応するといったようなことは無い。
【0019】
また、プラズマの周囲にプラズマの流れに並行した水膜が形成されるため、広範囲に亙ってプラズマが水膜を形成するH2O及びこの水膜から飛散した空気又はO2とに接触しPFCガスを酸化可能である。
【0020】
更に、本発明(請求項3)の除害システムは、請求項1又は請求項2記載の除害装置の上流側にプロセスチャンバより真空引きするための真空ポンプ及びドライポンプが備えられたことを特徴とする。
【0021】
ドライポンプより排出されるN2についても酸化によりNOxが生成され、更なるO2が必要とされるが、十分なだけの空気又はO2がH2Oに混入されているため、一層の無害化に貢献できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、H2Oに対し空気又はO2の気泡を混入する気泡混入手段を備え、プラズマの周囲に気泡の混入されたH2Oが接触することで排ガスが酸化促進されるように構成したので、電極が消耗され難く長寿命化を図ることができる。これにより、除害装置のランニングコストを低くすることができる。
【0023】
一方、H2Oに含まれている空気又はO2は、プラズマの周囲で接触されるため、PFCガスはH2O及びO2を媒体として酸化される。その結果、無害なCO2やHFに分解することができる。このことにより、排ガスを高分解率で処理できる。なお、除害装置で用いられるプラズマは常圧プラズマであるため、除害装置の設置が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である除害装置の縦断面図
【図2】図1中のA−A矢視断面図
【図3】除害装置の別例
【図4】システム構成図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態である除害装置の縦断面図を図1に、また、図1中のA−A矢視断面図を図2に示す。図1及び図2の除害装置17において、外周が円筒状のケース21のケース底面21aからは絶縁体からなる円筒状のパイプ23が立設されている。パイプ23の径はプラズマの通り易い大きさに設定されている。
【0026】
そして、このケース底面21aの中心にはアノード電極25が取り付けられている。このアノード電極25の周囲には絶縁材26が巻かれている。
一方、ケース上面21bには、このアノード電極25に対峙してカソード電極27が取り付けられている。そして、パイプ23の高さは、パイプ23の上端がカソード電極27の下端よりも下方となるように形成されている。
【0027】
ケース上面21bには、この除害装置17の上流側に配設されたドライポンプ5から排出された排ガスが導入される管路29が取り付けられている。一方、図2に示すように、ケース21のケース側壁21cには給水管31が接続されている。
【0028】
給水管31の途中にはバブル発生装置33より生成された多数の気泡35が混入されるようになっている。気泡35は空気又はO2である。ケース側壁21cとパイプ23の間には円筒状の外側貯留槽40が形成され、給水管31から吸入されたH2Oが一時貯留されるようになっている。
【0029】
気泡35の混入されたH2Oは、パイプ23の上端を堰として少しずつ溢れ出て表面張力により膜状にパイプ23の内側を伝って自然落下するようになっている。パイプ23の内側には内側貯留槽42が形成され、その下部にはこの自然落下したH2Oが一時溜まるようになっている。
【0030】
この一時溜められたH2Oにはプラズマ処理の結果生成されたHFが溶け、その後、図示しない排水管により外部に排水されるようになっている。給水管31の高さはパイプ23の高さよりも低く形成されている。図示しない高電圧源によりカソード電極27とアノード電極25の間にはプラズマが発生されるようになっている。
【0031】
次に、本発明の実施形態の作用を説明する。
かかる構成によれば、セントラルスクラバー9により多少の減圧をされることで、PFCガスを含む排ガスが管路29を通じて除害装置17内に誘導される。
【0032】
給水管31より給水されたH2Oに対しバブル発生装置33より多数の細かい粒状の気泡35が混入される。
【0033】
このとき、H2Oは外側貯留槽40内に少しずつ増えていくので、増えた分ずつパイプ23を堰として溢れ、その後、パイプ23の内側を伝ってほぼ均一に自然落下する。このとき、気泡35はH2Oに含有されているため、カソード電極27の位置する付近ではH2Oから外に飛散し難く素通りし、空気又はO2が従来のようにカソード電極27と反応することはない。
【0034】
従って、カソード電極27が酸化されず、電極が消耗され難いので長寿命化を図ることができる。従って、除害装置17のランニングコストを低くすることが可能である。
【0035】
一方、パイプ23の内側を伝って流れるH2Oに含まれている空気又はO2は、内側貯留槽42に至るまでの過程で徐々に外部に飛散する。このとき、プラズマの周囲にプラズマの流れと並行した水膜41が形成されているため、広範囲に亙ってプラズマと水膜41から飛散した空気又はO2とが接触可能である。
このとき、プラズマの雰囲気中では数1のようにPFCガスの酸化が促進される。
【0036】
【数1】

【0037】
このプラズマと水膜41との間でのPFCガスを酸化可能な領域が反応部となる。
【0038】
プラズマによりラジカル化されたC,F,Hの各成分にはH2Oに含まれている空気又はO2により十分なだけのO2が供給される。この酸化促進の結果、PFCガスを含む排ガスは無害なCO2やHFに分解される。そして、生成されたHFはH2Oに溶かされた形で排水管より外部に排水される。
【0039】
また、ドライポンプ5からは上記ガス以外にN2の排出されることもある。このN2についても、酸化によりNOxに変換されるというように更なるO2が必要とされるが、十分なだけの空気又はO2がH2Oに混入されているため、一層の無害化に貢献できる。
【0040】
このように、空気又はO2の気泡35としてO2を供給したことにより、排ガスを高分解率で処理できる。従来はH2OからH2を発生させて利用したりしていたが、このような処理を適用することなく、プラズマ反応部分にO2を供給できる。
【0041】
なお、PFCガス以外にH2とCOについても、H2Oに含まれている空気又はO2の十分な供給により、同様にそれぞれ無害なH2O、CO2として排出可能である。このため、CO処理の除害装置は不要である。又、H2Oを使っての処理と異なり、H2処理時に等量或いはそれ以上のH2発生は無い。
また、除害装置17で用いられるプラズマは常圧プラズマであるため、除害装置の設置が容易である。
【0042】
なお、本実施形態では、パイプ23がケース底面21aから立設されているとして説明したが、図3の除害装置47に示すように、ケース側壁21c中段の内側にほぼ円筒状に突設された樹脂からなる壁部44のように形成されてもよい。プラズマは、この円筒状の壁部44の中心に形成された隙間を貫通する。
【0043】
この場合、給水管50から気泡35の混入したH2Oが、壁部44の表面を伝って上部から下部に向けて表面張力により水膜48のように自然落下する。なお、給水管50はケース側壁21cの複数箇所に均等に配置されることが望ましい。
【0044】
落下したH2OはHFが溶けた状態でケース21の底部に形成された底部貯留槽46に一時貯留された後、図示しない排水管により外部に排水される。
以上の構成によっても図1及び図2の除害装置17と同様に機能させることができる。
【符号の説明】
【0045】
17、47 除害装置
21 ケース
23 パイプ
25 アノード電極
27 カソード電極
29 管路
31、50 給水管
33 バブル発生装置
35 気泡
40 外側貯留槽
42 内側貯留槽
44 壁部
46 底部貯留槽
41、48 水膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入されたPFCガスを含む排ガスをプラズマにより酸化することで無害化する除害装置であって、
アノード電極とカソード電極間に高電圧を印加して常圧中でプラズマを生成するプラズマ発生手段と、
2Oに対し空気又はO2の気泡を混入する気泡混入手段とを備え、
前記プラズマ発生手段により発生されたプラズマの周囲に前記気泡の混入されたH2Oが接触することで前記排ガスが酸化促進されることを特徴とする除害装置。
【請求項2】
前記カソード電極より前記アノード電極方向に向けて所定長分離れた位置より前記アノード電極に至るまで、又は、前記カソード電極より前記アノード電極方向に向けて所定長分離れた位置より前記アノード電極の手前所定長分に至るまで、前記プラズマの周囲を囲むように設けられたプラズマ貫通路を備え、
前記気泡の混入されたH2Oが該プラズマ貫通路の内表面を水膜状に流れることを特徴とする請求項1記載の除害装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の除害装置の上流側にプロセスチャンバより真空引きするための真空ポンプ及びドライポンプが備えられたことを特徴とする除害システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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