説明

除湿器及び除湿装置

【課題】水分が吸着した吸湿剤を簡単に再生する。
【解決手段】除湿フィルター100をカバー200から引き出すだけで、水分が吸着した吸湿剤を、簡単に乾燥させて再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿器及び除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体が消磁の際に温度低下する現象、すなわち磁気熱量効果を利用した磁気冷凍機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、磁場印加により吸熱反応を誘起できる「逆磁気熱量効果」が報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
さて、クローゼットや下駄箱等に吸湿剤(乾燥剤)を入れて除湿したり、空調ダクトなどに吸湿剤で構成された除湿フィルターを入れて除湿したりすることが行われている。吸湿剤は、水分を所定量以上吸湿すると、除湿効果が低下又は除湿効果が失われる。しかし、水分を吸湿した吸湿剤は、例えば天日干しや加熱等によって乾燥させることで再生される。つまり、吸湿剤として再利用可能となる。そして、特許文献2には、乾燥剤を乾燥し得る除湿装置及び除湿装置用アタッチメントが開示されている。
【0004】
しかし、水分が吸着した吸湿剤を、より簡単に乾燥させて再生することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−106999号公報
【特許文献2】特開2008−212823号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】東北大学大学院 ホイスラー型機能性新材料の創製 ―その相安定性と物性― [online]、[平成23年7月25日検索]、インターネット<URL:http://www.material.tohoku.ac.jp/~seigyo/kakenhi-k/kakenhi.htm]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、水分が吸着した吸湿剤を簡単に再生することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、水分を吸着する吸湿剤で構成された除湿部と、前記除湿部に設けられた磁性体と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の発明では、気体中の水分が除湿部を構成する吸湿剤に吸着する。吸湿剤に水分が吸着して吸湿効果が低下又は除湿効果が失われると、除湿部に設けられた磁性体に印加する磁場を増加又は減少させることで磁性体を発熱させ、吸湿剤に吸着した水分を蒸発させて再生する。つまり、吸湿器自らが発熱して吸湿剤を乾燥させ再生させる。よって、水分が吸着した吸湿剤が簡単に再生する。
【0010】
請求項2の発明は、前記除湿部は、気体が通過する通気孔が複数形成され、前記通気孔を構成する壁に前記磁性体が埋め込まれている。
【0011】
請求項2に記載の発明では、通気孔を気体が通過する際に水分が吸着する。よって、効率的に水分が吸着される。
【0012】
請求項3の発明は、前記磁性体は粒状体である。
【0013】
請求項3記載の発明では、発熱する磁性体が粒状体であるので、発熱面積が大きくなると共に吸湿剤との接触面積が大きくなる。よって、吸湿剤が効率的に乾燥する。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の除湿器と、前記除湿器の外側に着脱可能に設けられ、前記磁性体に磁場を印加する磁場発生部と、を備える。
【0015】
請求項4の発明では、気体中の水分が除湿器の除湿部を構成する吸湿剤に吸着する。吸湿剤が水分を吸着して吸湿効果が低下又は除湿効果が失われると、除湿器を磁場発生部から取り外す、又は磁場発生部に取り付けることで、除湿部内の磁性体に印加する磁場を増加又は減少させて磁性体を発熱させる。
【0016】
そして、磁性体が発熱することで、吸湿剤に吸着した水分が蒸発して再生する。このように、除湿器を磁場発生部から取り外す、又は磁場発生部に取り付けることで、水分が吸着した吸湿剤が簡単に再生する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、本発明が適用されていない場合と比較し、水分が吸着した吸湿剤を簡単に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターがカバーに装着されている状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターがカバーに装着されていない状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターを示す斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る除湿装置を示し、(A)は除湿フィルターがカバーに装着されている状態を一部断面で模式的に示す構成図であり、(B)は除湿フィルターがカバーに装着されていない状態を一部断面で模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターの内部構造を説明するための一部断面で示す構成図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターの内部構造を説明するための一部断面で示す構成図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る除湿装置の除湿フィルターを説明する説明図である。
【図8】磁気熱量効果を説明する説明図あり、(A)は電子スピンが乱雑な高エントロピー状態を示す図であり、(B)は電子スピンが磁場方向に揃った低エントロピー状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<磁気熱量効果>
まず、磁気熱量効果について説明する。
【0020】
磁性体に磁場を印加すると温度変化(温度上昇又は温度低下)する現象が知られている。そして、そのうち磁場を急激に取り去ると温度低下が認められる場合が「磁気熱量効果」と呼ばれている。
【0021】
簡単に説明すると、磁性体は、原子サイズで見ると、自発的に磁気を発生する電子スピン(微小磁石)の集合体とされている。電子スピンの磁極の向きは、温度が超低温では、ほとんど同一の方向に揃っているが、図8(A)に示すように、温度の上昇に伴い乱雑になる。
【0022】
しかし、図8(A)のように電子スピンが乱雑な状態で、図8(B)に示すように、磁場Eを印加すると、電子スピンが磁場Eの方向に揃うため、磁性体の磁気エントロピーは減少する。この磁場Eを印加した低エントロピー状態は、磁場Eが無いときの低温状態と同じであるため、外部と熱のやり取りがない状態(断熱状態)で、素早く磁場Eを取り除くと、吸熱状態になり磁性体の温度が低下する。つまり、図8(B)の状態から図8(A)の状態に素早く移行させると吸熱し温度が低下する。
【0023】
ここで、磁性体に印加する磁場を増加させると温度上昇し、磁場を減少させると温度低下する「磁気熱量効果」とは逆に、磁性体に印加する磁場を増加させると温度低下し、磁場を減少させると温度上昇する所謂「逆磁気熱量効果」が知られている。つまり、図11(B)に示すように磁場Eを印加した状態から素早く磁場Eを取り除くと、発熱状態となり磁性体の温度が上昇する。そして、下記実施形態では、この「逆磁気熱量効果」を利用している。
【0024】
<第一実施形態>
図1〜図5を用いて、本発明の第一実施形態に係る除湿装置について説明する。
[構成]
【0025】
図1と図2とに示すように、除湿装置10は、ブロック状の除湿フィルター100と、除湿フィルター100が着脱可能なカバー200と、を備えている。
【0026】
カバー200は、筒状の枠体部202を有している。この枠体部202の対向する内壁面202A,202Bに永久磁石210A,210Bが対向して設けられている。なお、永久磁石210A,210Bは異なる磁極が対向するように配置されている。そして、これら永久磁石210A,210Bの間には、磁場Eが形成される。また、磁場Eが形成された空間(筒状の孔)が、着脱可能に除湿フィルター100が装着される装着部204である。
【0027】
図1〜図3に示すように、除湿フィルター100は、空気が通過する断面略正六角形状の通気孔104が複数形成された除湿部102を有している。つまり、除湿部102はハニカム構造とされている。
【0028】
図4と図5とに示すように、通気孔104の内壁面は凹凸が形成されている。また、除湿部102は、吸湿剤(デシカント)112、例えば、高分子収着剤、シリカゲル、ゼオライト等の水分を吸着する材料を主成分として構成されている。そして、除湿部102の通気孔104を構成する壁110には、粒状の磁性体120が埋め込まれている。
【0029】
磁性体120は、磁場Eを印加したのち、磁場Eを素早く取り除くことによって、別の言い方をすると、印加する磁場Eを急激に減少させることで、温度上昇が生じる磁気作業物質(磁場の増減に応じて温度が変化する磁気作業物質)とされている。
【0030】
なお、本実施形態においては、磁性体120は、平均中心粒径が数mm程度、或いは粒径が1〜2mmの間のものが使用されている。
【0031】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
図1と図2とに示すように、ブロック状の除湿フィルター100をカバー200の装着部204に装着する。除湿フィルター100の粒状の磁性体120に磁場Eが印加される。これにより、磁性体120が吸熱し温度が低下するが時間と共に平衡状態となる。そして、除湿を行いたい場所に除湿装置10を配置する。
【0033】
図4(A)と図5とに示すように、通気孔104の一方側から流入空気K1が流入し、他方側から排出空気K2として排出される。そして、空気が通気孔104を通過する際に空気中の水分が、除湿部102(通気孔104の壁110)を構成する吸湿剤112に吸着される。よって、排出空気K2は流入空気K1よりも湿度が低下して排出される。
【0034】
しかし、除湿部102(壁110)を構成する吸湿剤112に水分が吸着され続け所定量以上の水分が吸着すると、吸湿剤112は除湿効果が低下、又は除湿効果が失われる。
【0035】
このような状態となると、図2と図4とに示すように、除湿フィルター100をカバー200から引き出す。これにより、磁性体120に印加された磁場が素早く取り除かれ、逆磁気熱量効果によって、磁性体120が発熱し温度が上がる。
【0036】
よって、図4(B)に示すように、空気が通気孔104を通過する際に、吸湿剤112から水分が放出され乾燥する(排出空気K3は流入空気K1よりも湿度が上昇して排出される)。また、図のように通気孔104を上下方向に配置することで、暖められ空気が上昇し、空気が通気孔104を流れるので、効率的に吸湿剤112から水分が放出され、高湿度の排出空気K3が排出される。
【0037】
したがって、吸湿剤112が乾燥して再生され、除湿フィルター100が再利用可能となる。そして、図1、図2、図4(A)に示すように再び除湿フィルター100をカバー200に装着する。
【0038】
このように除湿フィルター100自らが発熱して乾燥し再生する機能を備えており、除湿フィルター100をカバー200から引き出すだけで、水分が吸着した吸湿剤を、簡単に乾燥させて再生することができる。
【0039】
また、通気孔104を断面略正六角形状としハニカム構造とすることで、通気孔104の開口が最も広くなると共に、高い強度が発揮される。
【0040】
また、磁性体120が粒状体であるので、表面積が大きくなる。つまり、発熱面積が大きく且つ吸湿剤112との接触面積が大きくなる。よって、吸湿剤112が効率的に乾燥する。
【0041】
なお、除湿装置10の設置場所は、クローゼットや下駄箱等、或いは、空調ダクトに配置してもよい。なお、空調ダクトに配置する場合、カバー200がダクトの一部を構成するようにしてもよい。また、ダクトの一部を構成する場合は、図1に示す側面201に窓部(孔)と蓋を設け、ここから除湿フィルター100を着脱するようにしてもよい。
【0042】
<第二実施形態>
つぎに、図6を用いて、本発明の第二実施形態に係る除湿装置について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[構成]
【0043】
除湿装置11は、ブロック状の除湿フィルター101と、第一実施形態と同様のカバー200(図1、図2参照)と、を備えている。カバー200は第一実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0044】
除湿フィルター101は、空気が通過する断面略正六角形状の通気孔104が形成された除湿部103を有している。除湿部103の通気孔104の壁110は吸湿剤112で構成されている。そして、この壁110の中心部分に、板状の磁性体122が埋め込まれている。
【0045】
なお、板状の磁性体122も、第一実施形態と同様に、磁場Eを印加して素早く磁場Eを取り除くことによって、別の言い方をすると、印加する磁場Eを急激に減少させることで、温度上昇が生じる磁気作業物質(磁場の増減に応じて温度が変化する磁気作業物質)とされている
【0046】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
本実施形態も第一実施形態と同様に、除湿フィルター101をカバー200から引き出すことで、除湿フィルター101自らが発熱して乾燥し再生する。
【0048】
また、除湿部103の通気孔104の壁110の中心部分に板状の磁性体122が埋め込まれているので、除湿フィルター101(除湿部103)の強度が向上する。
【0049】
<第三実施形態>
つぎに、図7を用いて、本発明の第二実施形態に係る除湿装置について説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[構成]
【0050】
図7に示すように、除湿装置20は、ブロック状の除湿フィルター300と、第一実施形態と同様のカバー200(図1、図2参照)と、を備えている。カバー200は第一実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0051】
除湿フィルター300は、一方と他方とが格子状の網部304で構成さされた収容部302を有している。この収容部302の中に、粒状の吸湿剤310を充填することで除湿部308が構成されている。更に、除湿部308を構成する吸湿剤310の間に粒状の磁性体320が設けられている。つまり、粒状の吸湿剤310と粒状の磁性体320とを混合した状態で、収容部302に充填(収容)されている。
【0052】
なお、本実施形態においては、吸湿剤310は、平均中心粒径が0.9〜4.0μmなど小粒径、或いは平均中心粒径が約50μmの大粒径ものが使用され、磁性体320は、平均中心粒径が数mm程度、或いは粒径が1〜2mmのガドリニウムなどが使用されている。
【0053】
なお、図7では、粒状の吸湿剤310と粒状の磁性体320は、球体状である。しかし、これは図示しやいため、このように球体状に図示しているだけで、実際は球形状でなく凹凸のある任意の形状である。また、粒状の吸湿剤310と粒状の磁性体320とは略同じ大きさで図示されているが、これらの大きさは任意である。
【0054】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0055】
本実施形態も第一実施形態と同様に、除湿フィルター300をカバー200から引き出すことで、除湿フィルター300自らが発熱して乾燥し再生する。
【0056】
また、吸湿剤310が粒状であるので、表面積が大きい。よって、空気との接触面積が大きいので、除湿効果が高く、且つ、乾燥しやすい。
【0057】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、除湿フィルター100,101、300をカバー200に装着した状態で除湿を行ったが、これに限定されない。除湿フィルター100,101,300単体で除湿を行ってもよい。そして、再生する必要が生じたい場合、除湿フィルター100,101,300をカバー200に装着して平衡状態となったあと、カバー200から除湿フィルターを引き出して、磁性体を発熱させ吸湿剤を乾燥させて再生するようにしてもよい。
【0059】
また、例えば、上記第一実施形態及び第二実施形態では、通気孔104は、断面正六角形であったが、これに限定されない。他の形状、例えば、円形状、四角形状、三角形状等であってもよい。
【0060】
更に、通気孔以外の構成であってもよい。
例えば、吸湿剤で構成された除湿部がスポンジのように複数の孔が無数に開いた多孔質体であってもよい。
或いは、吸湿剤で構成された網状のシートを重ねた構成であってもよい。この場合、磁性体も網状のシートとして、網状の吸湿剤シートと網状の磁性体シートとを積層した構成としてもよい。
【0061】
また、「逆磁気熱量効果」でなく、磁性体に印加する磁場を増加させると温度上昇し、磁場を減少させると温度低下する「磁気熱量効果」を利用してもよい(図8参照)。この場合は、除湿フィルターをケースに入れ磁場を印加させると磁性体が発熱し吸湿剤が乾燥して再生される構成となる(利用方法となる)。
【0062】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0063】
10 除湿装置
11 除湿装置
20 除湿装置
100 除湿フィルター(除湿器)
101 除湿フィルター(除湿器)
102 除湿部
103 除湿部
104 通気孔
110 壁
112 吸湿剤
120 磁性体
122 磁性体
200 カバー(磁場発生部)
300 除湿フィルター(除湿器)
308 除湿部
310 吸湿剤
320 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸着する吸湿剤で構成された除湿部と、
前記除湿部に設けられた磁性体と、
を備える除湿器。
【請求項2】
前記除湿部は、気体が通過する通気孔が複数形成され、
前記通気孔を構成する壁に前記磁性体が埋め込まれている、
請求項1に記載の除湿器。
【請求項3】
前記磁性体は粒状体である、
請求項1又は請求項2に記載の除湿器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の除湿器と、
前記除湿器の外側に着脱可能に設けられ、前記磁性体に磁場を印加する磁場発生部と、
を備える除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−66820(P2013−66820A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205367(P2011−205367)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】