説明

除雪用具

【課題】 本発明は、除雪作業における上半身の過度な前屈や側屈方向負荷のアンバランスを低減することにより、身体特定箇所への負荷集中を緩和した使い易い除雪用具を提供する。
【解決手段】 スコップ部と取っ手部が柄により連結されている除雪用具であって、柄のスコップ部との連結部近傍が下側把持部となされ、柄の略中間部分が上側把持部となされ、且つ、取っ手部と上側把持部を持ってスコップ部で雪を掬う姿勢時に、下側把持部と上側把持部が略鉛直線上に位置するように配置されていることを特徴とする除雪用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪掻きをする際に好適に使用できる、スコップ部を有する除雪用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雪国においては屋根の上の雪や道端の雪を除雪するために、スコップ部を有する除雪用具が使用されている。スコップ部を有する除雪用具としては、一般に図4に示したように、取っ手部4とスコップ部5が直線状の棒で形成された柄で連結された除雪用具が使用されていた。
【0003】
しかしながら、直線状の柄で連結された除雪用具で除雪する場合は、図5に示したように、上半身が深い前屈姿勢となり、このような姿勢でスコップ部に重量物である雪を載せて掬い上げると、人体骨格である脊柱と上半身を引き上げる背筋群に負荷が集中し、腰痛を誘発する危険性があった。
【0004】
そのため、安全な除雪姿勢として図6に示したように、膝関節を屈曲したスクワット姿勢で雪を掬い上げ、膝を伸ばしながら投雪動作を行うことが推奨されている。この場合、腰部への負担は軽減されるものの、脚屈曲伸展動作が新たな運動として加わると共に、体全体を大きく上下動させることによる負担が強くなってしまうという欠点があった。
【0005】
上記欠点を解消するために、種々の提案がなされている。例えば、スコップ等の柄の部分に、腰高部分(1)と曲線部分(2)を、設けて構成し、梃子の原理を応用する事によって、作業能率が向上する特徴をもった能率スコップ(例えば、特許文献1参照。)や柄の上部にS字型湾曲を設け、全長を長くし、器具と一体化したS字型長柄農機具(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2002−220849号公報
【特許文献2】特開2002―233201号公報
【0006】
しかしながら、屈曲形状柄部を有する除雪用具では、雪を地面より掬い上げる際に図7に示したように浅い前屈姿勢となる。このため、直線柄部を有する除雪具と比較すると、前屈に起因する腰部への負担は大きく軽減される。しかし、スコップ部の位置が身体中心より横に大きくずれており、このような姿勢で雪を掬い上げる場合には、上体を側屈させる方向に大きな力が働く。
【0007】
そのため、スコップ部と反対側の体幹の側屈を防ぐ筋群への負担が大きくなる一方で、スコップ側の同筋群への負担は小さいなど、バランスの悪い作業負荷が発生する。更に、実際の除雪作業においては地表付近の低い位置にある雪を掬い取り除くのみならず、膝高程度高さから雪を掬う場合も多い。そのため、従来の直線柄部を有する除雪具と同様に、スコップ部近傍に把持部があることも併せて必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、除雪作業における上半身の過度な前屈や側屈方向負荷のアンバランスを低減することにより、身体特定箇所への負荷集中を緩和した使い易い除雪用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の除雪用具は、スコップ部と取っ手部が柄により連結されている除雪用具であって、柄のスコップ部との連結部近傍が下側把持部となされ、柄の略中間部分が上側把持部となされ、且つ、取っ手部と上側把持部を持ってスコップ部で雪を掬う姿勢時に、下側把持部と上側把持部が略鉛直線上に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の除雪用具は、柄が、略直線状の下側把持部、上方に凸に屈曲された屈曲部及び略直線状の上側柄部よりなり、該屈曲部は、大きく屈曲し、下側把持部に連結された第1の屈曲部と、直線状又はわずかに屈曲し、上側柄部に連結された第2の屈曲部が連結されてなり、第2の屈曲部に上側把持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の除雪用具である。
【0011】
請求項3記載の除雪用具は、下側把持部と上側柄部が略同一直線上に配置されていることを特徴とする請求項2記載の除雪用具である。
【0012】
請求項4記載の除雪用具は、上側柄部と第2の屈曲部は鋭角で連結され、下側把持部と第1の屈曲部は、該上側柄部と第2の屈曲部の連結角度より大きい角度で連結されていることを特徴とする請求項2又は3記載の除雪用具である。
【0013】
請求項5記載の除雪用具は、柄は略直線状であり、略直線状の柄の中途に上方に凸に屈曲された屈曲部材が連結されており、該屈曲部材は、大きく屈曲し、下側把持部に連結された第1の屈曲部と、直線状又はわずかに屈曲し、上側柄部に連結された第2の屈曲部が連結されてなり、第2の屈曲部に上側把持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の除雪用具である。
【0014】
請求項6記載の除雪用具は、柄と第2の屈曲部は鋭角で連結され、柄と第1の屈曲部は、該柄と第2の屈曲部の連結角度より大きい角度で連結されていることを特徴とする請求項5記載の除雪用具である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の除雪用具の構成は上述の通りであり、除雪作業における上半身の過度な前屈や側屈方向負荷のアンバランスが低減され、身体特定箇所への負荷集中を緩和され使い易い。
【0016】
雪掬い姿勢時に、スコップ部近傍の下側把持部と屈曲部上の上側把持部とが略鉛直線上になるようになされているので、雪を地面より掬い上げる際には図3に示した作業姿勢となり、図4及び図5に示した直線柄による構成に比して上半身が浅い前屈姿勢となる。
【0017】
又、スコップ部の身体中心からの横ずれ量も、図7に示したS字屈曲柄による構成に比して少なくなっている。そのため、前屈に起因する腰部への負担が大きく軽減されると同時に、側屈方向負荷のアンバランスに起因するスコップ部と反対側の体幹の側屈を防ぐ筋群への負担も大きく軽減される。
【0018】
また、本構成において膝高程度高さから雪を掬う際には、図1に示すスコップ部近傍の下側把持部を握ることにより、従来の直線柄部を有する除雪具と同様の作業が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
図1は請求項1記載の除雪用具の一例を示す斜視図である。図中1は略直線状の上側柄部であり、2は上方に凸に屈曲された屈曲部であり、3は略直線状の下側柄部である。上側柄部1と屈曲部2と下側柄部3は一体的に連設されて柄6となされている。
【0021】
又、上側柄部1は取っ手部4に連結されており、下側柄部3はスコップ部5に連結され、連結部近傍が下側把持部31となされている。上側柄部1と下側柄部3(下側把持部31)は略同一直線上に配置されている。
【0022】
屈曲部2は、大きく屈曲し、下側把持部31に連結された第1の屈曲部21と、直線状又はわずかに屈曲し、上側柄部1に連結された第2の屈曲部22が連結されてなり、第2の屈曲部22に上側把持部23が形成されている。
【0023】
第2の屈曲部22の上端部は上側柄部1と鋭角で連結され、第1の屈曲部21の下端部は下側把持部31(下側柄部(3))と、第2の屈曲部22の上端部と上側柄部1との連結角度より大きい角度で連結されており、第2の屈曲部22と第1の屈曲部21が連結一体化されて屈曲部2となされている。
【0024】
そして、上記除雪用具を用いてスコップ部5で雪を掬う姿勢時(スコップ部5の底面が水平になるように雪を掬う姿勢時)には、図3に示したように、下側把持部31と上側把持部23は略鉛直線上に位置するように形成されている。
【0025】
図2は請求項5記載の除雪用具の一例を示す斜視図である。図中4は取っ手部であり、5はスコップ部である。取っ手部4とスコップ部5は直線状の柄6により連結されており、柄6のスコップ部5との連結部近傍が下側把持部31となされている。
【0026】
図中7は上方に凸に屈曲された屈曲部材であり、屈曲部材7は、大きく屈曲し、下側把持部31を介して柄6の下端部付近に連結された第1の屈曲部21と、直線状又はわずかに屈曲し、柄6の取っ手部4付近に連結された第2の屈曲部22からなり、第2の屈曲部22と第1の屈曲部21は連結一体化されて屈曲材部7となされている。又、第2の屈曲部22に上側把持部23が形成されている。
【0027】
第2の屈曲部22の上側端部は柄6に鋭角で連結され、第1の屈曲部21の下側端部は、該柄6と第2の屈曲部22の上側端部の連結角度より大きい角度で柄6に連結されている。
【0028】
柄6と屈曲部材7の連結方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、ネジやバンド等のクランプ具を用いて固定する方法、溶接する方法等が挙げられる。
【0029】
そして、上記除雪用具を用いてスコップ部5で雪を掬う姿勢時(スコップ部5の底面が水平になるように雪を掬う姿勢時)には、図3に示したように、下側把持部31と上側把持部23は略鉛直線上に位置するように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】請求項1記載の除雪用具の一例を示す斜視図である。
【図2】請求項5記載の除雪用具の一例を示す斜視図である。
【図3】請求項1記載の除雪用具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図4】直線状の柄で連結された除雪用具の一例を示す斜視図である。
【図5】直線状の柄で連結された除雪用具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図6】直線状の柄で連結された除雪用具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図7】屈曲形状柄部を有する除雪用具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 上側柄部
2 屈曲部
21 第1の屈曲部
22 第2の屈曲部
23 上側把持部
3 下側柄部
31 下側把持部
4 取っ手部
5 スコップ部
6 柄
7 屈曲部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコップ部と取っ手部が柄により連結されている除雪用具であって、柄のスコップ部との連結部近傍が下側把持部となされ、柄の略中間部分が上側把持部となされ、且つ、取っ手部と上側把持部を持ってスコップ部で雪を掬う姿勢時に、下側把持部と上側把持部が略鉛直線上に位置するように配置されていることを特徴とする除雪用具。
【請求項2】
柄が、略直線状の下側把持部、上方に凸に屈曲された屈曲部及び略直線状の上側柄部よりなり、該屈曲部は、大きく屈曲し、下側把持部に連結された第1の屈曲部と、直線状又はわずかに屈曲し、上側柄部に連結された第2の屈曲部が連結されてなり、第2の屈曲部に上側把持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の除雪用具。
【請求項3】
下側把持部と上側柄部が略同一直線上に配置されていることを特徴とする請求項2記載の除雪用具。
【請求項4】
上側柄部と第2の屈曲部は鋭角で連結され、下側把持部と第1の屈曲部は、該上側柄部と第2の屈曲部の連結角度より大きい角度で連結されていることを特徴とする請求項2又は3記載の除雪用具。
【請求項5】
柄は略直線状であり、略直線状の柄の中途に上方に凸に屈曲された屈曲部材が連結されており、該屈曲部材は、大きく屈曲し、下側把持部に連結された第1の屈曲部と、直線状又はわずかに屈曲し、上側柄部に連結された第2の屈曲部が連結されてなり、第2の屈曲部に上側把持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の除雪用具。
【請求項6】
柄と第2の屈曲部は鋭角で連結され、柄と第1の屈曲部は、該柄と第2の屈曲部の連結角度より大きい角度で連結されていることを特徴とする請求項5記載の除雪用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−274534(P2006−274534A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90402(P2005−90402)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(000241946)積水化学北海道株式会社 (7)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100094570
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼野 俊彦
【Fターム(参考)】