説明

除電装置

【課題】アース線が確保できない使用環境下であっても、自己放電式により細断屑等の絶縁体に対する十分な除電効果を得ることを可能とする。
【解決手段】シュレッダー内に、カッター52,52に沿って長尺状の除電ブラシ1を各々の配置し、除電ブラシ1,1を2組のサージ防護素子4及び抵抗器5を介してシュレッダーのACコード51の双方の電源線51a,51bとにそれぞれ接続する。カッター52,52により細断された細断屑の静電気を、除電ブラシ1,1との接触、及び除電ブラシ1,1との間に生じる放電により除電する。除電ブラシ1,1をいずれか一方の電源線51a,51bを介してアースすることにより静電誘導による放電を生じやすくさせる。放電に伴い除電ブラシ1,1に生ずる過渡的な過大電圧をサージ防護素子4及び抵抗器5により制限し、サージ電流を接地側となっている電源線から逃がして安全を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に組み込まれて使用される自己放電式の除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄用紙等の細断にはシュレッダーが一般に用いられている。一般にシュレッダーは、回転する一対のカッターによって紙等を種々の形状に細断する構造である。シュレッダーの使用時には、摩擦帯電などで生じた静電気によって細断屑がカッターやその周囲に付着しやすく、それに伴い断裁負荷が大きくなったり、場合によっては紙詰まりが生じたりする要因となっている。
【0003】
一方、絶縁体である紙から静電気を取り除く装置としては、例えばファクシミリやコピー機の給排紙口付近に設けられているような、金属フレームに導電性繊維がブラシ状に設けられた構成を有する自己放電式の除電器が周知である。したがって、係る除電器をシュレッダーに適用することによって細断屑に生じる静電気を取り除くことが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような除電器は、導電性繊維の先端と紙との間に放電を生じさせることによって静電気を取り除くものであり、より大きな除電効果を得るために前記金属フレームをアース線と接続させることが好ましい。しかしながら、シュレッダーが使用されるごく一般的な環境下においては、前記金属フレームを接続する文字通りのアース線を確保することは困難である。係ることから上述した除電器を仮にシュレッダーに使用したとしても細断屑から静電気を取り除くには自ずと限界があり、十分な除電効果を得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、電気機器に組み込まれて使用されるとともに、アース線が確保できない使用環境下であっても、細断屑等の絶縁体に対する十分な除電効果を得ることが可能となる自己放電式の除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る除電装置にあっては、電気機器に組み込まれる自己放電式の除電装置であって、絶縁体である除電対象との間に静電誘導に起因する放電を生じさせる除電素子と、この除電素子と前記電気機器が有する商用電源に接続される電源線の接地側との間を電気的に接続するとともに、前記放電に伴う過渡的な過大電圧を制限してサージ電流を逃がす保護手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の発明に係る除電装置にあっては、前記保護手段が、前記電源線の接地側及び非接地側の各々と前記除電素子との間にそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3記載の発明に係る除電装置にあっては、前記保護手段が、印加電圧が低い時には抵抗値が大きくなり、印加電圧が高い時には抵抗値が低くなる電圧依存特性を有するサージ防護素子と抵抗器とから構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4記載の発明に係る除電装置にあっては、前記電気機器は軸状のカッターにより絶縁体を細断する構成を備え、前記除電素子は、前記カッターに沿って配置される導電性を有する線材からなる除電ブラシであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載の発明に係る除電装置にあっては、前記除電ブラシを構成する導電性を有する線材は炭素繊維であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の除電装置によれば、電気機器に組み込まれて使用されるとき、アース線が確保できない使用環境下であっても、細断屑等の絶縁体に対する十分な除電効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図にしたがって説明する。図1は本発明に係る除電装置が、廃棄用紙等を細断するシュレッダーに組み込まれている状態を示した模式図である。
【0013】
図に示したようにシュレッダー内には、ACコード51を介して商用電源の電力により動作する図示しないモータによって回転され、廃棄用紙等を所定の形状に細断する一対のカッター52,52が配置されている。
【0014】
一対のカッター52,52の外側には除電ブラシ(除電素子)1,1が配置されている。除電ブラシ1,1は、カッター52,52に沿って延在する幅の狭い金属プレート2に炭素繊維3が電気的接続を確保した状態で多数の植え付けられた構成である。炭素繊維3の先端は一対のカッター52,52に触れない程度に近接しており、炭素繊維3の長さは弾性変形によりある程度の屈曲が可能な長さとなっている。
【0015】
双方の除電ブラシ1,1の金属プレート2は、ACコード51の一対の電源線51a,51bすなわち、ヒューズ53と電源スイッチ54とを介して商用電源に接続される一方の電源線51aと、他方の電源線51bとに、保護手段を構成するサージ防護素子4と抵抗器5とを介してそれぞれ接続されている。
【0016】
サージ防護素子4は、印加電圧が低い時には抵抗値が大きくなり、印加電圧が高い時には抵抗値が低くなる電圧依存特性を有する周知のサージ・アブソーバである。なお、本実施形態においては印加電圧が所定の値を超えると急速に抵抗値が低下するスイッチング・タイプである。また、上記抵抗器5に確保すべき抵抗値は200KΩ〜1MΩ程度である。
【0017】
そして、上述した除電ブラシ1,1と2組のサージ防護素子4及び抵抗器5とによって本発明の除電装置が構成されており、シュレッダーの使用中には、摩擦帯電などにより生じた静電気によって一対のカッター52,52に付着する細断屑(図示せず)は除電ブラシ1,1(炭素繊維3)によって払い落とされる。同時に、上記細断屑に生じている静電気は、除電ブラシ1,1との接触、及び除電ブラシ1,1との間に生じる放電により除電されることとなる。
【0018】
その際、上記放電に伴い除電ブラシ1,1に生ずる過渡的な過大電圧は、サージ防護素子4及び抵抗器5により制限され、そのときのサージ電流は、ACコード51の一対の電源線51a,51bのうちで接地側となっている電源線、つまり商用電源における単相3線式配線の中性線に接続されている側の電源線を介して安全に逃がされる。
【0019】
ここで、ACコード51が商用電源、つまり事業所等のコンセントに接続された状態では、除電ブラシ1,1は、一方の組のサージ防護素子4及び抵抗器5、ACコード51の一対の電源線51a,51bのうちで接地側となっている電源線を介して常時アースされる。そのため、除電ブラシ1,1の多数の炭素繊維3の先端部には、静電誘導によって細断屑側とは反対極性の電荷が集まりやすい。つまり前記放電が生じやすい状態にあり、細断屑に対して十分な除電効果を発揮することができる。しかも、ACコード51を商用電源に接続するだけでよく、殊更アース線を確保する必要がない。つまり、アース線が確保できない使用環境下においても、細断屑に対する十分な除電効果を得ることができる。
【0020】
また、本実施形態の除電装置においては、除電ブラシ1,1が2組のサージ防護素子4及び抵抗器5を介してACコード51の一対の電源線51a,51bの双方に接続される構成であるため、ACコード51が極性を意識されることなくコンセントに接続されていたとしても、それに対応することができる。
【0021】
これに関し、除電ブラシ1,1は、一対の電源線51a,51bのうちで接地側となっている電源線にさえ接続されればよいため、必ずしもサージ防護素子4及び抵抗器5を2組設ける必要はない。但し、その場合には、ACコード51の特定の側の電源線を商用電源の接地側と正しく接続させる必要が生じるため、使い勝手の点では本実施形態のようにすることが望ましい。
【0022】
また、本実施形態においては、本発明の保護手段をサージ防護素子4と抵抗器5とによって構成したが、細断屑と除電ブラシ1,1との間における放電に伴い生ずる過渡的な過大電圧を制限することができれば、保護手段を他の電子ディバイスによって構成しても構わない。
【0023】
また、除電ブラシ1,1の具体的な構成については任意であり、例えば前述した炭素繊維3は、良好な導電性を有するものであれば他の線材に代えることができる。但し、本実施形態のように、除電ブラシ1,1に、一対のカッター52,52に付着する細断屑を払い落とす機能を確保する場合には、可撓性や耐久性の点から炭素繊維3を使用することが好ましい。
【0024】
また、本実施形態においては、シュレッダーに組み込まれる除電装置について説明したが、本発明の除電装置の用途はこれに限定されるものでなく、シュレッダー以外の他の電気機器に組み込まれるものであってもよい。また、その場合における除電対象は、それが絶縁体であれば例えば粉体や、フィルム状のものであってもよく、また、前述した除電ブラシ1,1に代わる除電素子の具体的な形状や構造、材質は除電対象に応じたものとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】廃棄用紙等を細断するシュレッダーに組み込まれた状態にある本発明に係る除電装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 除電ブラシ
2 金属プレート
3 炭素繊維
4 サージ防護素子
5 抵抗器
51 ACコード
51a 一方の電源線
51b 他方の電源線
52 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に組み込まれる自己放電式の除電装置であって、
絶縁体である除電対象との間に静電誘導に起因する放電を生じさせる除電素子と、
この除電素子と前記電気機器が有する商用電源に接続される電源線の接地側との間を電気的に接続するとともに、前記放電に伴う過渡的な過大電圧を制限してサージ電流を逃がす保護手段と
を備えたことを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記保護手段が、前記電源線の接地側及び非接地側の各々と前記除電素子との間にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1記載の除電装置。
【請求項3】
前記保護手段が、印加電圧が低い時には抵抗値が大きくなり、印加電圧が高い時には抵抗値が低くなる電圧依存特性を有するサージ防護素子と抵抗器とから構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の除電装置。
【請求項4】
前記電気機器は軸状のカッターにより絶縁体を細断する構成を備え、
前記除電素子は、前記カッターに沿って配置される導電性を有する線材からなる除電ブラシである
ことを特徴とする請求項1又2,3記載の除電装置。
【請求項5】
前記除電ブラシを構成する導電性を有する線材は炭素繊維であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の除電装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−70596(P2009−70596A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234966(P2007−234966)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(507305196)株式会社イオンバランス (3)
【Fターム(参考)】