説明

除電装置

【課題】良好な送風特性を得ながら、簡単な構成で用途に応じた送風量を得ることができる除電装置を提供する。
【解決手段】除電装置は、吸気口11と送風口としてのルーバが対向して設けられるケーシング13と、吸気口11とルーバとの間にそれらの対向方向に回転軸が沿うように設けられるファンと、ファンよりルーバ側に設けられる放電針とを備える。又、吸気口11に対して着脱自在に取り付けられるカバー部材2と、カバー部材2によって吸気口11とカバー部材2との間に挟持され、外部から吸気口11を介してケーシング13内へ向かう塵埃の侵入を阻止するための防塵フィルタ部材3と、カバー部材2によって吸気口11とカバー部材2との間に防塵フィルタ部材3と送風方向に並んで挟持され、ファンの回転軸を中心とする周方向に空気通過部4aと空気遮断部4bとが一定のパターンを繰り返すように形成された風量調整用遮蔽板4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、各種電子部品等の除電対象物の静電気を除去するための除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーシング内にファンを備え、ファンの軸方向からファンを挟むように吸気口と送風口とをケーシングに設け、ファンより送風口側に設けられる放電針に高電圧を印加してコロナ放電を発生させて周囲の空気をイオン化し、該イオン化された空気をファン(その送風動作)により送風口から吹き出す除電装置がある。
【0003】
このような除電装置においては、通常、除電時間を短くするために、高速の回転数でファンを駆動している。しかしながら、除電対象物が様々であるため、通常(高速)の回転数でファンを駆動すると、薄物や小型軽量の除電対象物においては、吹き飛んでしまったり、波打ってしまうといった好ましくない現象が生じることがある。
【0004】
そこで、例えば、電気的にファンの回転数を制御することで送風量を変更可能としたものがある。
又、例えば、吸気口と該吸気口と直交する方向に開口した送風口を有するケーシング内にシロッコファンを備えた除電装置においては、吸気口に対して摺動自在な風量調整プレートが装着され、該風量調整プレートを摺動させて吸気口を一方向から塞いでいきその開度を調整することで送風量を変更可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−151293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように電気的にファンの回転数を制御する除電装置では、電気回路が複雑化する上、ファン(その駆動源のモータ)自体の仕様範囲があり、送風量の変更範囲に限界がある。よって、用途に応じた送風量を得ることができないといった問題がある。尚、勿論、仕様範囲、ひいては送風量の変更範囲の広いファンを使用することも考えられるが、その場合ファンが高額化してしまう。
【0007】
又、上記のように風量調整プレートを備えた除電装置では、風量調整プレートを摺動自在とするための機構が必要になり構造が複雑化してしまうという問題がある。又、吸気口と送風口とがファンを挟んで対向して設けられるものにおいて、風量調整プレートを組み合わせた場合、風量調整プレートを摺動させて吸気口を一方向から部分的に塞いで開度を調整すると、送風特性が大きく変わってしまう、詳しくは、送風範囲が大きく変わってしまったり、送風範囲内で送風量に大きなむらが発生するといった虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、良好な送風特性を得ながら、簡単な構成で用途に応じた送風量を得ることができる除電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、それぞれ外部と連通する吸気口と送風口とが対向して設けられるケーシングと、前記ケーシング内の前記吸気口と前記送風口との間に、それらの対向方向に回転軸が沿うように設けられ、該回転軸線方向に沿って空気を流すためのファンと、前記ケーシング内の前記ファンより前記送風口側に設けられる放電針とを備え、前記放電針に高電圧を印加してコロナ放電を発生させて周囲の空気をイオン化し、該イオン化された空気を前記ファンにて前記送風口から吹き出す除電装置であって、前記吸気口の外部との連通を確保しながらも前記吸気口に対して設けられるカバー部材と、前記カバー部材によって前記吸気口と前記カバー部材との間に保持可能とされ、前記ファンの回転軸を中心とする周方向に空気通過部と空気遮断部とが一定のパターンを繰り返すように形成された風量調整用遮蔽板とを備えたことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、風量調整用遮蔽板を取り外す(保持を解除して非保持状態とする)、又は風量調整用遮蔽板の種類を変更することで、送風量を大きく変更することができ、用途に応じた送風量を容易に得ることができる。又、風量調整用遮蔽板はカバー部材によって保持されるため、例えば、摺動自在とするための機構を設ける必要がなく、更に、風量調整用遮蔽板とケーシング間に互いに係合する係止部(係止爪等)を別途設けるといった必要がないため、簡単な構成とすることができる。更に、風量調整用遮蔽板は、ファンの回転軸を中心とする周方向に空気通過部と空気遮断部とが一定のパターンを繰り返すように形成されたものであるため、送風量を変更した場合(取り付けた場合や取り外した場合や種類を変更した場合)でも、送風範囲の変更を少なく、且つ送風範囲内での送風量のむらを小さくすることができ、ひいては良好な送風特性を維持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の除電装置において、前記カバー部材によって前記吸気口と前記カバー部材との間に前記風量調整用遮蔽板と送風方向に並んで保持可能とされ、外部から前記吸気口を介して前記ケーシング内へ向かう塵埃の侵入を阻止するための防塵フィルタ部材を備えたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、風量調整用遮蔽板を保持可能なカバー部材は、防塵フィルタ部材を保持するものと共用となるため、防塵フィルタ部材を備えつつも部品点数の増大を防止して、簡単な構成とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の除電装置において、前記風量調整用遮蔽板は、前記防塵フィルタ部材より前記送風口側に保持されたことを要旨とする。
同構成によれば、風量調整用遮蔽板は、防塵フィルタ部材より送風口側、即ちケーシングの内部側に保持されるため、外部からの塵埃に晒されることが防止され、防塵フィルタ部材よりケーシングの外部側に保持された場合に比べて、汚れてしまうことが低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好な送風特性を得ながら、簡単な構成で用途に応じた送風量を得ることができる除電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における除電装置の斜視図。
【図2】本実施の形態における除電装置の一部分解斜視図。
【図3】本実施形態における除電装置の一部を分解して並べた背面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
本実施の形態の除電装置は、図2及び図3に示すように、除電装置本体1と、カバー部材2と、防塵フィルタ部材3と、風量調整用遮蔽板4とを備える。
【0017】
除電装置本体1は、図2に示すように、後方側で外部と連通する吸気口11と、図1に示すように、前方側(除電対象物に向けられる側)で外部と連通するように設けられた(固定された)送風口としてのルーバ12とが対向して設けられる箱状のケーシング13を備える。尚、本実施の形態の吸気口11及び送風口としてのルーバ12は、共に全体が円形に形成されるとともに、放射状に延びる放射部11a,12aと径が異なる複数の環状部11b,12bとを有し、該放射部11a,12a及び環状部11b,12bにて形成される隙間を空気が前後方向(送風方向)に通過可能とされている。
【0018】
ケーシング13の内部において前方側(除電対象物に向けられる側)には、図3に示すように、前後方向から見て前記吸気口11及びルーバ12の円形の範囲内で放射状に延びる(本実施の形態では8本の)放電針14が設けられている。
【0019】
又、ケーシング13の内部において放電針14の後方側には、図3に示すように、前後方向から見て前記吸気口11及びルーバ12の円形の範囲内で回転駆動されるファン15が設けられている。このファン15は、前記吸気口11と前記ルーバ12との間に、それらの対向方向に回転軸(図示略)が沿うように設けられ、回転駆動されると回転軸線L方向に沿って空気を流すものである。尚、本実施の形態の除電装置本体1は、設置台21を介して除電対象物と対応した位置に設置される。この設置台21は、設置基部21aと、その設置基部21aの両端から屈曲して(上方に)延びてケーシング13の左右側面を挟むアーム21bとを有し、それらアーム21bの先端部に除電装置本体1(ケーシング13)が左右方向に沿った軸中心に傾動可能に支持されている。
【0020】
カバー部材2は、吸気口11の外部との連通を確保しながらもケーシング13(その吸気口11)に対して着脱自在に取り付けられる。詳しくは、まずケーシング13において前記吸気口11が形成された後方端面に隣接した周面には、上下一対の係合部13a(図2中、上側の一方のみ図示)と、左右一対の係止凹部13b(図2中、一つのみ図示)とが形成されている。一方、カバー部材2は、ケーシング13の後方端面の外縁に対応した(対向する)平面状の縁部2aと、その縁部2aの外縁全体から屈曲して延びケーシング13の後方端面に隣接した周面に外嵌可能な枠部2bとを有する。そして、その枠部2bには、前記係合部13aと左右方向に係合する上下一対の係合凸部2c(図2中、上側の一方のみ図示)と、前記係止凹部13bと上下方向及び前後方向(送風方向)に係合してカバー部材2をケーシング13(その吸気口11)に対して着脱自在に係止する左右一対の係止爪2dとが形成されている。又、カバー部材2において、縁部2aの内側には、放射状に延びる放射部2eと径が異なる複数の環状部2fとが形成され、それらにて形成される隙間を空気が前後方向(送風方向)に通過可能とされ、吸気口11の外部との連通が確保される。
【0021】
防塵フィルタ部材3は、空気の通過を許容しつつ塵埃の通過を阻止する材料よりなり、ケーシング13の吸気口11が形成された後方端面に対応した略4角形に形成され、前記吸気口11と重ならない四隅に切り欠きが形成されている。防塵フィルタ部材3は、前記カバー部材2がケーシング13(その吸気口11)に対して取り付けられた状態で該カバー部材2によって吸気口11とカバー部材2との(前後方向であって送風方向の)間に挟持され、外部から吸気口11を介してケーシング13内へ向かう塵埃の侵入を吸気口11の手前で阻止する。
【0022】
風量調整用遮蔽板4は、板状の樹脂材料よりなり、その外形が防塵フィルタ部材3と同様に、ケーシング13の吸気口11が形成された後方端面に対応した略4角形に形成され、前記吸気口11と重ならない四隅に切り欠きが形成されている。風量調整用遮蔽板4は、カバー部材2がケーシング13(その吸気口11)に対して取り付けられた状態で該カバー部材2によって吸気口11とカバー部材2との(前後方向であって送風方向の)間に防塵フィルタ部材3と送風方向に並んで(重ねられて)挟持される。尚、本実施の形態では、風量調整用遮蔽板4は、防塵フィルタ部材3よりルーバ12側、即ち送風方向の前方側であってケーシング13の内部側に保持される。そして、この風量調整用遮蔽板4には、前記ファン15の回転軸(前記回転軸線L(図3参照))を中心とする周方向に空気通過部4a(板厚方向に貫通する孔)と空気遮断部4bとが(本実施の形態では8個ずつ)一定のパターンを繰り返すように形成されている。詳しくは、本実施の形態の空気通過部4aは、同形状に形成されたものが周方向に等角度間隔で形成されている。又、空気通過部4aは、その径方向外側端部の位置(回転軸線Lからの距離)が前記吸気口11の径方向外側端部の位置(回転軸線Lからの距離)と一致するように形成されている。又、本実施の形態の空気通過部4aは、その周方向の幅が径方向外側に向かうほど広く形成されている。又、本実施の形態の空気通過部4aは、その周方向の幅が前記空気遮断部4bの周方向の幅より小さく形成されている。
【0023】
このように構成された除電装置では、図示しない高電圧発生回路にて発生された高電圧が放電針14に印加されるとともにファン15に駆動電流が供給されると、放電針14にてコロナ放電が発生されて周囲の空気がイオン化され、該イオン化された空気がファン15(その送風動作)にてルーバ12から吹き出される。尚、このとき、空気は、ファン15の送風動作によって、後方側の外部からカバー部材2、防塵フィルタ部材3、風量調整用遮蔽板4(空気通過部4a)、吸気口11及び放電針14の周囲を介してルーバ12から吹き出される。
【0024】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)吸気口11(ケーシング13)に対してカバー部材2を取り外して風量調整用遮蔽板4を取り外す(保持を解除して非保持状態とする)、又は風量調整用遮蔽板4の種類を変更することで、送風量を大きく変更することができ、用途に応じた送風量を容易に得ることができる。又、風量調整用遮蔽板4はカバー部材2によって保持されるため、例えば、摺動自在とするための機構を設ける必要がなく、更に、風量調整用遮蔽板4とケーシング13間に互いに係合する係止部(係止爪等)を別途設けるといった必要がないため、簡単な構成とすることができる。更に、風量調整用遮蔽板4は、ファン15の回転軸(回転軸線L)を中心とする周方向に空気通過部4aと空気遮断部4bとが(本実施の形態では8個ずつ)一定のパターンを繰り返すように形成されたものであるため、送風量を変更した場合(取り付けた場合や取り外した場合や種類を変更した場合)でも、送風範囲の変更を少なく、且つ送風範囲内での送風量のむらを小さくすることができ、ひいては良好な送風特性を維持することができる。
【0025】
(2)風量調整用遮蔽板4を保持可能なカバー部材2は、防塵フィルタ部材3を保持するものと共用となるため、防塵フィルタ部材3を備えつつも部品点数の増大を防止して、簡単な構成とすることができる。
【0026】
(3)風量調整用遮蔽板4は、防塵フィルタ部材3よりルーバ12側、即ちケーシング13の内部側に保持されるため、外部からの塵埃に晒されることが防止され、防塵フィルタ部材3よりケーシング13の外部側に保持された場合に比べて、汚れてしまうことが低減される。
【0027】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態の風量調整用遮蔽板4は、ファン15の能力や用途(除電対象物)に応じて空気通過部4a及び空気遮断部4bの形状を変更してもよい。例えば、上記実施の形態の風量調整用遮蔽板4は、ファン15の回転軸(回転軸線L)を中心とする周方向に空気通過部4aと空気遮断部4bとが8個ずつ一定のパターンを繰り返すように形成されるとしたが、それらの繰り返す数を変更してもよい。但し、送風範囲が大きく変わってしまわないことや、送風範囲内で送風量(送風速度)に大きなむらが発生してしまわない要件を満たすべく、空気通過部4aと空気遮断部4bは、少なくとも周方向に2個ずつ一定のパターンを繰り返すように形成する必要がある。又、空気通過部4aの周方向の幅にもよるが、空気通過部4aと空気遮断部4bは、少なくとも周方向に3個ずつ一定のパターンを繰り返すように形成することが好ましく、更には少なくとも4個ずつ一定のパターンを繰り返すように形成することがより好ましい。尚、空気通過部4aと空気遮断部4bを、一定のパターンを繰り返すように形成するとともに、それらの面積が同じとなるように形成してもよく、このようにすると、空気の通過量をむらなく(風量調整用遮蔽板を取り外した状態に比べて)半分にすることができる。又、空気通過部4aは、径方向に分割された形状(径方向中間部に空気遮断部が形成された形状)としてもよい。
【0028】
・上記実施の形態では、カバー部材2は、吸気口11(ケーシング13)に対して着脱自在に設けられるとしたが、これに限定されず、例えば、上記実施の形態の一方(左右一対の内の一方)の係止凹部13bと一方(左右一対の内の一方)の係止爪2dとの位置に、カバー部材2を吸気口11(ケーシング13)に対して開閉自在に支持するヒンジ部を設けて実施してもよい。
【0029】
・上記実施の形態では、風量調整用遮蔽板4は、防塵フィルタ部材3よりルーバ12側、即ちケーシング13の内部側に保持されるとしたが、これに限定されず、防塵フィルタ部材3よりケーシング13の外部側に保持されるようにしてもよい。又、用途に応じて防塵フィルタ部材3を備えていない除電装置として実施してもよい。
【符号の説明】
【0030】
2…カバー部材、3…防塵フィルタ部材、4…風量調整用遮蔽板、4a…空気通過部、4b…空気遮断部、11…吸気口、12…ルーバ(送風口)、13…ケーシング、14…放電針、15…ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ外部と連通する吸気口と送風口とが対向して設けられるケーシングと、
前記ケーシング内の前記吸気口と前記送風口との間に、それらの対向方向に回転軸が沿うように設けられ、該回転軸線方向に沿って空気を流すためのファンと、
前記ケーシング内の前記ファンより前記送風口側に設けられる放電針と
を備え、前記放電針に高電圧を印加してコロナ放電を発生させて周囲の空気をイオン化し、該イオン化された空気を前記ファンにて前記送風口から吹き出す除電装置であって、
前記吸気口の外部との連通を確保しながらも前記吸気口に対して設けられるカバー部材と、
前記カバー部材によって前記吸気口と前記カバー部材との間に保持可能とされ、前記ファンの回転軸を中心とする周方向に空気通過部と空気遮断部とが一定のパターンを繰り返すように形成された風量調整用遮蔽板と
を備えたことを特徴とする除電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除電装置において、
前記カバー部材によって前記吸気口と前記カバー部材との間に前記風量調整用遮蔽板と送風方向に並んで保持可能とされ、外部から前記吸気口を介して前記ケーシング内へ向かう塵埃の侵入を阻止するための防塵フィルタ部材を備えたことを特徴とする除電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の除電装置において、
前記風量調整用遮蔽板は、前記防塵フィルタ部材より前記送風口側に保持されたことを特徴とする除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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