説明

陰イオン性オリゴ糖類型活性成分の経皮投与のためのイオントフォレーゼ装置

【課題】陰イオン性オリゴ糖類の経皮投与するイオントフォレーゼ装置を提供する。
【解決手段】少なくとも部分的にイオン化された形態の、陰イオン性オリゴ糖類、特には五糖類、のような活性成分を含む電解質を収容する貯留部品11と接触している可逆的負極、単独の正極もしくは電解質を収容する容器と組み合わされている正極,及び両電極に接続可能な電気信号発生器を具備する装置。この電気信号発生器は、前記電極6間に生じる平均電流密度が0.05−0.25mA/cmであるような平均電圧を有する電気信号を前記電極6間に印加するように配置される。負極と組み合わされている貯留部品11内の活性成分の量は、電極のcm当り及び1cmの電極6を通過する電流のmAh当り0.5−12mgである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰イオン性オリゴ糖類型医薬活性成分、特には、とりわけ抗血栓及び/又は抗凝血活性を有する合成陰イオン性オリゴ糖類の経皮投与のためのイオントフォレーゼ装置に関する。
【0002】
血液凝固はその複雑さで有名な生理学的現象である。接触活性化及び組織因子のような特定の刺激は、血漿中に存在する一連の凝血因子の連続的な活性化の引き金となる。
【0003】
刺激の性質とは関わりなく、その最終工程は同一である。すなわち、活性化されたX(Xa)因子がII因子(プロトロンビンとも呼ばれる)を活性化し、このII因子は、その活性化された形態(IIa因子、トロンビンとも呼ばれる)で、可溶性線維素原の部分的なタンパク分解を引き起こして血餅の主要構成要素である不溶性線維素を放出させる。
【0004】
正常な生理状態の下では、凝血因子の活性は、同じく血漿中に存在する抗トロンビンIII(AT III)及びヘパリン補因子II(HC II)のようなタンパク質によって制御される。AT IIIは、多数の凝血因子、特にはXa及びIIa因子に対する阻害活性を発揮する。
【0005】
したがって、Xa因子及びIIa因子が、引き金となる刺激とは無関係の凝血の最後の2つの工程に関与するため、これら2つの因子の阻害が抗凝血及び抗血栓活性を得る優先的な方法である。
【0006】
下記式(I)
【0007】
【化2】

(ここで、Rは−COCH又は−SO−を表す)
の五糖類はAT IIIへの結合に適する構造を有する。この化合物(R=−SO)は、約10年前に全化学合成により得られた(P.Sinay et al.,Carbohydrate Research (1984),132 C5)。
【0008】
それ以来、全化学合成により得られ、かつ抗血栓及び抗凝血活性を有する多くの合成陰イオン性オリゴ糖類が文献に記述されている(例えば、EP−A−0,084,999、EP−A−0,113,599、EP−A−0,165,134、EP−A−0,301,618、EP−A−0,454,220及びEP−A−0,529,715を参照のこと)。
【0009】
この型のオリゴ糖類が有し得る抗凝血及び抗血栓活性は、それらをヒトの治療における活性成分として有用なものにする。
【0010】
不幸なことに、それらがかなり大きな分子量、強い陰イオン性電荷及び親水性を有し、胃腸管バリアを通過することが不可能であるため、それらを経口投与することができず、それらは本質的に非経口的に、例えば皮下もしくは静脈内に、投与される。
【0011】
そのような場合、化合物が胃腸管を通過する必要がないことから、非経口投与に代わる可能性のあるものでは経皮投与あることが知られている。しかしながら、前述の型のオリゴ糖類は、全身濃度が有効治療値に到達するに十分な速さでは皮膚に浸透しないことが観察されている。
【0012】
イオントフォレーゼは特定の活性成分の被験者への経皮投与を可能にすることが知られており、これらの活性成分は、一般に、低分子量及びイオン性を有する化合物からなる。
【0013】
これを行うには、少なくとも部分的にイオン化された形態の活性成分を保持する水溶液もしくは水性ゲルを用いて操作を行い、一方では、活性電極と呼ばれる第1の電極(該第1の電極は、投与しようとする活性成分のイオンと同じ極性を有し、かつ、その活性成分を保持して被験者の皮膚の第1の領域に接触して配置される貯留部品に接触して配置される)と、他方では、バック電極もしくは受動電極と呼ばれる第2の電極(該第2の電極は、活性成分に関連するものと反対の極性を有し、かつ、前記第1の領域とは異なる被験者の皮膚の第2の領域と直接もしくは無関係(indifferent)電解質を介して接触して配置される)との間に電気信号を印加する。この電極間への電気信号の印加によって生じる電流がこのように形成された回路を流れると、活性成分のイオンが、同じ極性を有する電極(活性電極)を離れ、被験者の皮膚及び組織を通過して、反対の極性の電極(バック電極)に向けて移動し、被験者の循環系に入り込む。
【0014】
イオントフォレーゼにおいて通常用いられる再利用可能な電極、例えば、炭素、プラチナもしくはチタン電極を使用するイオントフォレーゼ法を用いて、陰イオン性のオリゴ糖類型誘導体の経皮通過の可能性を研究することにより、出願人の企業は、前記誘導体について得られる経皮流動が、治療的な投与のために達成されるべきである流動よりもかなり少なかったことを観察している。
【0015】
参考文献EP−A−0,556,112は、特には陰イオン型の、医薬活性成分の経皮投与のためのイオントフォレーゼ装置に関するものであり、この装置は負極(又は陰電極:negative electrode)組立体(assembly)、正極(又は陽電極:positeve electrode)組立体及びこの2つの電極に接続することが可能な電気信号発生器を具備する。前記負極組立体は活性電極と呼ばれる負極からなり、少なくとも部分的にイオン化された形態の活性成分を保持する電解質を含有する貯留部品(reservoir element)に接触している。この貯留部品は、それが被験者の皮膚のある領域に接触して配置された場合に、前記負極と前記領域との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている。前記正極組立体は、(i)正極単独、又は好ましくは(ii)少なくとも1種の電解質を収容する容器部品(receptacle element)と接触する正極のいずれかからなり、この容器部品は、それが被験者の皮膚のある部分に接触して配置された場合に、前記正極と前記部分との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている。貯留部品に接触している負極は少なくとも部分的にイオン化可能な金属化合物で形成され、その金属イオンは、少なくともこの装置が作動する際に、対応する金属に電気化学的に還元され、かつその金属と共に電気化学的に可逆の系を形成して可逆的負極を構成することが可能である。前記発生器は、前記電極間に0.03ないし0.5mA/cmの平均電流密度が発生するような平均電圧で前記電極間に電気信号を印加するために配置される。
【0016】
陰イオン型の活性成分を用いての参考文献EP−A−0,556,112のイオントフォレーゼ装置の実施は、本質的に、適度な分子量を有する生成物、すなわちナトリウムバルプロエート(sodium valproate)を、5重量%ないし15重量%の範囲の濃度、すなわち0.3モル濃度ないし0.9モル濃度で使用することにより説明されている。この濃度は、電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り50mgを超えることを表す。
【0017】
活性成分の分子量が増大する場合、活性成分のイオンの拡散及び移送数が、競合イオン、特にAgClをベースとする負極(カソード)で生成するClイオンの拡散及び移送数と比較して減少することが知られている。皮膚が耐え得る電流密度で電極の単位表面積当りの活性成分の有意の通過を得ることが望ましい場合、活性成分の濃度を、したがって電極の貯留器中の活性成分の総量を増加させる必要があるが、これには、初期量の99%を上回ることがあり得る量の活性成分が消費されずに貯留器中に残るという欠点がある。さらに、あらゆるイオントフォレーゼの過程に生じる電気浸透の現象によって皮膚を通る水の流れを生じる。この水の流れは、正極から負極に循環し、かつ陰イオン性活性成分のイオンの移動を、このイオンの大きさの増加に伴って、すなわち、活性成分の分子量の増加に伴って、より強く相殺する。
【0018】
したがって、陰イオン性活性成分の許容可能なイオントフォレーゼによる経皮流動の必要と負極に関連付けられている貯留器中に最初に存在する活性成分の十分量の使用とを調和させながら、参考文献EP−A−0,556,112に記述されるイオントフォレーゼ装置を用いてバルプロエート型の生成物よりも実質的に大きな分子量を有する陰イオン性活性成分を経皮投与することは明らかに不可能だった。
【0019】
出願人の企業は、可逆的負極を備える、参考文献EP−A−0,556,112に記述されるものに匹敵する型のイオントフォレーゼ装置を利用して陰イオン性オリゴ糖類型誘導体の経皮投与を実施することが、電極間に生じる平均電流密度が0.05ないし0.25mA/cmの範囲の値であるような平均電圧でこれらの電極間に電気信号を印加し、かつ前記オリゴ糖類活性成分が負極に関連付けられる貯留部品内に参考文献EP−A−0,556,112でバルプロエート型の陰イオン性活性成分について教示されるものよりも実質的に少ない量で最初に存在する場合に、治療処置に適合する値の血漿濃度に到達するイオントフォレーゼによる経皮流動を得、かつ十分量の活性成分を同時に用いながら可能であったことを示している。
【0020】
本発明によるイオントフォレーゼ装置は、活性電極と呼ばれる負極からなる負極組立体(該負極は、少なくとも部分的にイオン化されている形態の活性成分を保持する電解質を含む貯留部品と接触しており、該貯留部品はそれが被験者の皮膚のあある領域に接触して配置された場合に、該負極と該領域との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている)、(i)正極単独、又は好ましくは(ii)少なくとも1種の電解質を収容する容器部品と接触している正極のいずれかからなる正極組立体(該容器部品は、それが被験者の皮膚のある部分に接触して配置された場合に、該正極と該部分との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている)、及び該2つの電極に接続することが可能な電気信号発生器を具備し、該貯留部品に接触している負極は少なくとも部分的にイオン化可能な金属化合物で形成され、その金属イオンは、少なくともこの装置が作動する際に、対応する金属に電気化学的に還元され得、かつ該金属と共に電気化学的に可逆の系を形成して可逆的負極を構成することが可能であり、かつ該発生器は、該電極間に生じる平均電流密度が0.03ないし0.5mA/cmであるような平均電圧で該電極間に電気信号を印加するために配置され、該装置は、負極に関連付けられる貯留部品内に存在する活性成分が、2ないし12の糖類単位からなるオリゴ糖類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩で表される陰イオン性オリゴ糖類(該陰イオン性オリゴ糖類は、該単位の幾つかもしくは全てのOH基が、少なくとも部分的に、−OSO、−COO、−NHSO、−NH−アシル、−OPO−−及び−OT(Tが炭化水素基を表す)から選択される官能基で置換され、かつイオントフォレーゼ投与に適するイオン的な性質を有する)から選択されることを特徴とし、かつ該電流密度が0.05mA/cmないし0.25mA/cmの範囲の値を有することを特徴とし、かつ該負極に関連付けられる該貯留部品内に最初に存在する活性成分の量が電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り0.5ないし12mgに相当することを特徴とする。
【0021】
少なくとも部分的に負極を構成し得る金属化合物の中で、化合物AgCl及びCuClに非限定的に言及することができる。
【0022】
特には、負極は、金属化合物をこれに対応する金属と組み合わせることによって形成することができる。
【0023】
負極の材料は支持体にデポジットさせることが可能であり、この支持体は絶縁体、特にはポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、ポリエステルのような絶縁プラスチック又は電流が存在しない状態で活性成分を保持する電解質による腐蝕に耐性の金属性もしくは非金属性の導電性材料、例えば、銀、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーで構成することができる。
【0024】
本発明の方法において用いられる正極は、チタン、プラチナ、ステンレス鋼のような金属もしくは金属合金、又はその代わりに、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーのような非金属性導電性材料で作製することが可能である。正極を、少なくとも部分的に、電気化学的な酸化によって消費され得る金属、例えば、Al、Cu、Mg、Zn及びAgのような金属で形成することもできる。この場合、電気化学的な酸化によって消費され得る前記金属は、特には、電気化学的な酸化によって生じる金属イオンと共に電気化学的に可逆な系を形成し、装置の作動中可逆的である正極を構成し得る、銀のような金属から選択することができる。電気化学的な酸化によって消費され得る正極の材料は、絶縁体、特にはポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、ポリエステルのような絶縁プラスチック、又はその代わりに、金属性もしくは非金属性の導電性材料、例えば、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーからなる支持体にデポジットさせることが可能である。
【0025】
負極及び/又は正極は、ポリマーバインダー、粉末状もしくは繊維状導電性充填材、特にはカーボンブロックもしくは短グラファイト線維、並びに分割形態の、すなわち、負極の場合には単独もしくは対応する金属と組み合わせられている電気化学的に還元可能な金属化合物、正極の場合には電極を構成するように選択される金属もしくは金属合金である、電極の活性材料をベースとする組成で形成される複合電極を構成するように配置することができる。このポリマーバインダーは、好ましくは、ELF AQUITAINE及びSANOFIによって1994年7月26日に出願されたフランス特許出願94 09231号に記述される、1,2−エポキシプロパン及び/又は1,2−エポキシブタンをベースとするポリマーである。
【0026】
陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分の所定の総量を被験者に経皮投与することを可能にする本発明によるイオントフォレーゼ装置の別の態様によると、導電性支持体又は絶縁性支持体に結合する限定された量の電気化学的に消費され得る材料で形成される、制限電極と呼ばれる電極(ここで、該電気化学的に消費され得る材料は、該制限電極が負極である場合、電気化学的に還元し得る金属化合物であり、又は、該制限電極が正極である場合、電気化学的な酸化によって消費され得る金属、特にはAl、Mg、Zn及びAgのような金属であり、かつ該導電性支持体は、電流が存在しない状態で該制限電極に関連付けられる電解質による腐蝕に耐性である材料であって、かつ該制限電極が負極である場合、該電解質の存在下において少なくともアルミニウムと等しい水素過電位を有するか、あるいは、該制限電極が正極である場合、電気化学的な酸化では消費され得ない材料で作製される)が構成されるように負極及び正極の1方又は他方が配置される。一方、該限定された量の電気化学的に消費され得る材料が、その電気化学的な消費に必要な電気量が所定の総量の活性成分を被験者に投与するのに必要な電気量に対応するように選択され、電極間の電流の流れが該制限電極の消費可能な材料が消費された場合に事実上断絶し、かつ陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分が負極に接触する貯留部品内に被験者に投与される所定の総量を上回る量だけ最初に存在するようになされる。
【0027】
制限電極に特に適する絶縁支持体の1つは、ポリプロピレン、PVC、ポリエチレン又はポリエステルのような絶縁プラスチックで作製される支持体である。
【0028】
制限負極の導電性支持体として、アルミニウム、銀、チタン、タンタル、バナジウム、ステンレス鋼、亜鉛、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーから選択される材料で作製される支持体を有利に選択することができる。例として、制限正極に適切な支持体は、プラチナ、チタン、ステンレス鋼、金、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーから選択される材料で作製される支持体である。
【0029】
負極もしくは正極の金属性導電性支持体はバルクの支持体であっても、絶縁プラスチックフィルムにデポジットした非常に薄い金属からなるものであってもよい。これらの金属デポジットは、例えば、真空メタライジング又は陰極スパッタリング法のような公知の技術によって生成させることができる。
【0030】
本発明による装置において非制限もしくは制限負極として用いることができる電極の限定されない例として、銀、銅、ステンレス鋼、炭素、ポリプロピレン、ポリエチレン又は導電性ポリマー支持体上のAgClもしくはCuClをベースとする電極に言及することができる。本発明による装置において用いることができる非制限もしくは制限消費可能正極の例として、Al、Ag、Cu、Mg及びZnから選択される電気化学的な酸化によって消費され得る金属をベースとする非制限電極、及びポリプロピレンもしくはポリエステルのような絶縁支持体又はチタン、ステンレス鋼、プラチナ、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーから選択される支持体上にデポジットするこの型の金属をベースとする制限電極に非限定的に言及することができる。
【0031】
上に示されるように、制限電極の電気化学的に消費され得る材料は、この電極中に、その電気化学的な消費に必要な電気量が所定の総量の陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を被験者に投与するのに用いられる電気量に対応するような量だけ存在する。この後者の電気量は用いられるイオントフォレーゼシステムに依存し、すなわち、可逆的な負極及び正極に接触する反応媒体、電極に印加される電気信号並びにその電極の性質に依存するものであり、用いられるイオントフォレーゼシステムの各々の型に対する従来の試験によって決定される。
【0032】
電気発生器は、負極(活性電極)と正極(バック電極)との間に、強度型(intensiometric signal)信号、すなわち設定平均強度、例えば定常(強度不変信号(intensiostatic signal))の信号、又は、好ましくは、電位差型(potentiometric)信号、すなわち設定平均電圧、例えば定常(電位差不変信号(potentiostatic signal))の信号のいずれであってもよい電気信号を印加する。この強度型もしくは電位差型の電気信号は、連続するものであってもパルスであってもよく、かつ恒久的なものであっても断続的なものであってもよく、一時的な極性の反転を伴っても伴わなくてもよい。その周波数は0ないし500kHz、特には0ないし100kHzを範囲をとり得る。電気信号がパルス型である場合には、0.05ないし0.95、特には0.1ないし0.8の範囲の衝撃係数、すなわち、その繰り返しがパルス型信号を形成するパルス要素の持続期間とこのパルスの2つの連続する出現を分離する間隔期間との間の割合を有し得る。
【0033】
負極と正極との間に発生器によって印加される信号の平均電圧は、これらの電極間に発生する平均電流密度が0.05ないし0.25mA/cm、好ましくは0.05ないし0.2mA/cmの値を有するように、0.1ないし50ボルト、特には0.3ないし20ボルトの間で選択することが有利である。
【0034】
本発明による装置の電気信号発生器は、一時的な極性の反転を伴う、もしくは伴わない、連続もしくはパルス型の、かつ恒久的もしくは断続的な、上に定義される特性を有する、設定平均強度もしくは設定平均電圧の電気信号を発生させることが可能な公知の型のいかなるものであってもよい。
【0035】
負極に接触する貯留部品内に存在する電解質は水溶液又は水性ゲルを有利に含み、粘着性であってもなくてもよく、少なくとも部分的にイオン化されたナトリウムもしくはカリウムのようなアルカリ金属の塩又はカルシウムのようなアルカリ土類金属の塩の形態の投与しようとする陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を保持する。同様に、任意に正極と接触している電解質は、少なくとも部分的に、粘着性であってもなくてもよい水溶液又は水性ゲルの形態にある。これらの水溶液又は水性ゲルは、問題の貯留部品内に存在する電解質の全てを構成してもよく、あるいはこの電解質の一部のみを形成してもよい。この場合、それらは、電極と皮膚との間のイオンの導伝継続性を断絶せず、かつ電極と皮膚との間の接着性の質を向上させるように選択される、その電解質の残部を形成する非水性媒体中に分散させる。これらの水溶液又は水性ゲルは、イオントフォレーゼ技術においてよく知られる通りに得ることができる。水性ゲル又は濃水溶液の例は、特には、それぞれUS−A−4,766,164及びUS−A−3,163,166に記述されている。
【0036】
陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を保持する水性媒体は、正極に関連付けられる電解質が用いられる場合にはこの電解質を構成する水性媒体と同様に、必要であれば、活性成分の経皮通過を促進することが可能な薬剤、例えば血管拡張性物質及び/又は両親媒性物質を保持してもよい。両親媒性物質の言及し得る非限定的な例は、アルコール型又はエステル型の化合物である。これらの物質は、媒体中の活性成分の良好な溶解性を可能にする濃度で用いられる。
【0037】
上に示されるように、負極に関連付けられる貯留部品内に最初に存在する陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分の量は、前記電極のcm当り及びこの電極のcm当りの電流のmAh当り0.5mgないし12mg、好ましくは1mgないし8mgである。
【0038】
投与しようとする活性成分は、負極に関連付けられる貯留部品内だけではなく、正極に関連付けられる容器部品内にも導入することができる。この場合、このイオントフォレーゼ装置の負極及び正極は、還元及びイオン化可能な金属化合物及びそれに対応する金属をベースとする可逆的電極、例えば、Ag/AgClの対をベースとする可逆的電極からなる。これらの電極に印加する電気信号の極性を反転させることにより、負極の貯留部品及び正極の容器部品から交互に活性成分を投与することが可能になる。
【0039】
この場合、電極の各々に関連付けられる貯留容器部品内に最初に存在する陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分の量は、電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り0.5mgないし6mg、好ましくは0.5mgないし4mgである。
【0040】
本発明が関与する陰イオン性オリゴ糖類は、2ないし12の単位、特には3ないし8の糖類単位からなる化合物のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、特にはナトリウム、カリウム又はカルシウム塩からなる。この陰イオン性オリゴ糖類の幾つかもしくは全ての単位のOH基は、少なくとも部分的に、−OSO、−COO、−NHSO、−NH−アシル、−OPO−−、−OT(ここでTは、炭化水素基、特には脂肪族もしくは芳香族炭化水素基を表す、特には、−OTはアルコキシ官能基である)ような官能基よって置換されている。この陰イオン性オリゴ糖類は、イオントフォレーゼ投与に適するイオン性を有する。このオリゴ糖類は、特には、全化学合成によって得られる陰イオン性オリゴ糖類である。
【0041】
特には、このオリゴ糖類は、
− 2ないし12個の交互のウロン酸(グルクロン酸もしくはイズロン酸)及びグルコサミン単糖類単位からなり、かつ、OH基の他に、−SO、−NHSO及び−N−アシル官能基、特には−N−アセチル官能基、及び特定の場合には、アルコキシ基、特にはメトキシ基をアノマーOH基の代わりとして含む、参考文献EP−A−0,084,999に記述される合成オリゴ糖類(この型のオリゴ糖類の例は、上記式(I)で表される化合物を含む、抗血栓及び/又は抗凝血特性を有する五糖類である);
− ウロン酸及びグルコサミン単糖類単位からなり、かつ−SO及び−O−PO−−官能基を含む、参考文献EP−A−0,165,134に記述される、抗血栓活性を有する合成オリゴ糖類;
− ウロン酸単位及びグルコサミン単位からなり、このグルコサミン構造単位の3位に−OSO基を有する、参考文献EP−A−0,301,618に記述される、抗血栓及び/又は抗凝血特性を有する五糖類;
− ウロン酸及び、特定の三糖類鎖配列を有しかつO−アルキルもしくは−O−SO官能基を含むグルコースの誘導体である、参考文献EP−A−0,454,220に記述されている抗血栓及び/又は抗凝血特性を有する合成オリゴ糖類;
− −NHSO、N−アセテート又はOH官能基がアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ又は−O−SO基で置換されている、参考文献EP−A−0,529,715に記述される、抗血栓特性及び平滑筋細胞の増殖に対する阻害活性を有する合成硫酸化グリコサミノグリカン誘導体;
− ウロン酸単位及びグルコサミン単位からなり、かつこのグルコサミン単位の−NHSO、N−アセテート官能基、及び任意に、ウロン酸及びグルコサミン単位のOH基がアルコキシ又は−O−SO基で置換されている、ELF SANOFI及びAKZOによって1993年4月22日に出願されたフランス特許出願93 04769号に記述される、抗血栓活性を有する合成3−デオキシヘパリン誘導体;
− ウロン酸(グルクロン酸もしくはイズロン酸)及びD−ガラクトサミン単糖類単位からなる、参考文献EP−A−0,113,599に記述される合成オリゴ糖類;
から選択することができる。
【0042】
本発明に従って用いられる陰イオン性オリゴ糖類は、特には三、四、五もしくは六糖類であり、より特別には五糖類、特には下記式(II)の五糖類である:
【0043】
【化3】

(ここで、Rは−SO又はアシル基、特にはアセチル基であり、R及びRは同一であるか異なっており、H又は−SOを示し、かつRはH又は低級アルキル基、特には−CHを表す)。
【0044】
本発明による装置は、(i)その負極が可逆的負極であり、正極が通常の正極又は非可逆的もしくは可逆的の消費可能な正極のいずれかであり、かつ負極に関連付けられる貯留部品が少なくとも部分的にイオン化された形態の陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を保持し、(ii)その電気信号発生器が、電極間に生じる平均電流密度が0.05ないし0.25mA/cm、好ましくは0.05ないし0.2mA/cmであるような平均電圧を有する電気信号を電極間に印加するために配置され、かつ(iii)負極に関連付けられる貯留部品内又は負極もしくは正極に関連付けられる貯留部品もしくは容器部品内に最初に存在する陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分の量が上記に示される値であるように変更されている、あらゆる公知のイオントフォレーゼ装置から作製することができる。
【0045】
適当であるならば、負極又は正極は、制限電極を構成するように上記に示されるように配置することができる。
【0046】
特には、本発明による装置は、各々50cm未満、特には1ないし30cmの面積を有する電極及び小型化された電気信号発生器を具備する、ブレスレットによって固定され、あるいはおそらく皮膚に固着される携帯可能な自給式装置であってもよい。したがって、本発明による自給式携帯型装置は、装置の負極が可逆的負極であり、かつ電気信号発生器及び各電極に関連付けられる貯留容器部品が上記に示されるように配置されるという条件付きで、例えば参考文献US−A−4,325,367、EP−A−0,060,452及びFR−A−2,509,182に記述される自給式携帯型イオントフォレーゼ装置に類似する構造を有し得る。
【0047】
負極は、例えば、銀、銅、炭素、ポリプロピレン、ポリエチレン又は導電性ポリマー支持体上のAgCl又はCuClをベースとする電極であってよい。正極は、通常の正極、例えば、チタン、プラチナ、ステンレス鋼のような金属もしくは金属合金で、又はその代わりに、炭素もしくはグラファイトのような非金属性の導電性材料で作製される電極であっても、あるいはその代わりに、非可逆的もしくは可逆的な消費可能な正極、例えば、ポリプロピレンもしくはポリエステルのような絶縁支持体上又はチタン、ステンレス鋼、プラチナ、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーから選択される支持体上に任意にデポジットする、Al、Cu、Mg、Zn及びAgのような金属で作製される電極であってもよい。負極及び陽極の一方及び/又は他方を、制限電極を構成するために上記に示されるように配置することができるこの負極及び正極は、各々、50cm未満、特には1ないし30cmの面積を有する。
【0048】
負極組立体及び正極組立体を接着剤で皮膚に固定する場合、各電極組立体の貯留容器部品における皮膚と接触させることが意図されている面又は該面を取り巻く領域に、イオン導電性接着剤層を提供することにより行うことができる。
【0049】
Ag/AgClの対をベースとする少なくとも1つの負極を備え、好ましくはこのAg/AgClの対をベースとする負極及び正極を有する場合には、本発明によるイオントフォレーゼ装置は、ELF AQUITAINE及びSANOFIによって1994年9月2日に出願されたフランス特許出願94 10541号に記述されるような、活性成分の経皮投与の進行の程度を監視するための組立体(assembly)をさらに具備していてもよい。
【0050】
以下、本発明を実施例により説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
定電圧のイオントフォレーゼによるナトリウムペンタサッカライド塩の経皮通過の研究。
【0052】
使用したペンタサッカライドは、Rが−SOである前述化学式(1)に相当するものである。
【0053】
操作は同一構造のイオントフォレーゼセルの中で行った。各イオントフォレーゼセルは断面積が2cmである同軸上に並んだ、すなわち、ドナーコンパートメント、レシーバーコンパートメント、バック電極コンパートメントの順で配置された3つの隣接するシリンダー型のコンパートメントから成っており、それぞれのコンパートメントは、経皮拡散を調べるための膜として用いるヌ−ドラット(OFA/hr/hr)の皮膚片により、次のコンパートメントとは漏出のない形で仕切られた。ドナーコンパートメントの容積は0.5mlであり、0.65「ゴ−ルドスタンダ−ド(Golden standard)」単位/μgの抗Xa因子活性を有する前述のペンタサッカライドのナトリウム塩の2重量%水溶液が入っており、ペンタサッカライドの量は電極の活性表面2cm当たり10mgであった。レシーバーコンパートメントは容量が10mlであり、500ppmのNaNが補充された生理食塩水溶液が入っており、マグネティックバ−で攪拌された。バック電極コンパートメントはドナーコンパートメントと同一であり、500重量ppmのNaNを含む2重量%の塩化ナトリウム水溶液を0.5ml入れた。レシーバーコンパートメントと反対側の端で、ドナーコンパートメントに負電極が装着された。ドナーコンパートメントと同様に、バック電極コンパートメントにも陽電極(バック電極)が装着された。
【0054】
ラットの皮膚サンプルは皮下組織を除去し、500ppmのNaNを加えた生理食塩水溶液に15分間置いてから、真皮側をレシーバーコンパートメントに向けてイオントフォレーゼセル内に取り付けるまで、−40℃で凍結し保存した。
【0055】
実施した各試験は、4つの同一のイオントフォレーゼセルで同時に開始した。それぞれの皮膚に対して活性交換表面積(active exchange surface area)は2cmであった。
【0056】
パルス型電流発電器を用いることで、平行に設置した4つのセルの電極間にピ−ク電圧が2.2ボルト、衝撃係数50%(即ち、平均電圧1.1ボルト)、周波数25kHzの電位差不変型の電気信号を作り出すことができた。
【0057】
各セルのドナーコンパートメントの電極を該発電器の陰極に、バック電極を陽極に接続し、発電器により発生したパルス型電流を6時間通電した。
【0058】
上記時間の終了時点で、レシーバーコンパートメントに含まれる媒質のアリコートを取り出し、各セルのドナーおよびレシーバーコンパートメントを分けている皮膚を通過したペンタサッカライドの量をアッセイにより測定した。第2回目のサンプルを、各実験開始24時間後、即ち電気信号を停止してから18時間後に採取した。
【0059】
1aから1eまでの5種類の試験を以下の通り行った。
【0060】
・試験1a:陰電極と陽電極は厚さ10μmのチタンフィルムから構成される。受動的経皮拡散を測定するために、両電極には電圧をかけなかった。
【0061】
・試験1b:陰電極と陽電極は厚さ60μmのグラファイトシ−トから構成される。
【0062】
・試験1c:陰電極と陽電極は厚さ10μmのチタンフィルムから構成される。
【0063】
・試験1dと1e:陰電極は厚さ15μmの銀フィルムから構成され、1.8mAh/cmに相当する塩化銀層を保有するためにあらかじめその1つの面を塩化物化処理してあり、一方陽電極は厚さ15μmの銀フィルムから構成され、その表面を僅かに塩化物化処理(0.1mAh/cm相当の塩化銀量)し、両電極の塩化物化処理された表面はラット皮膚膜に接する側に配置された。
【0064】
銀フィルムは5mA/cmの直流電流を流すことで電気化学的に塩化物化処理し、一方、絶縁粘着プラスチックフィルムにより保護された面の一方にある各銀フィルムは、0.1Nの塩酸浴に浸し、同じ塩酸浴に浸したグラファイト電極に関して陽極を構成した。銀フィルム上に所望量の塩化銀を形成させるため、電流量を回路内に直列に設置した積分電流計を用いてモニタ−した。
【0065】
試験1a−1dでは、各セルのドナーとレシーバーコンパートメントには、リン酸一水素ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムからなる0.06モル緩衝液組成物が等モル量入っており、該コンパートメントのpHは約7に保たれている。試験1eでは緩衝液は使用していない。試験1dと1eでは、電極間に発生した平均電流密度は約0.20mA/cmであった。
【0066】
各試験について、媒質1ml中の平均抗Xa因子活性を、4つのセルのレシーバーコンパートメントから得たアリコートより求め、この活性を通電6時間後ならびに各実験開始24時間後、即ち上記電流の通電を停止してから18時間後のコンパートメント内に拡散したペンタサッカライド量とした。
【0067】
レシーバーコンパートメントのペンタサッカライドのアッセイは、その抗Xa因子活性の調査に基づいた。アッセイはレシーバーコンパートメントから得た媒質サンプルに直接、あるいは希釈した後に、STAGO社より供給されたROTACHROM HEPARIN 8(登録商標)アッセイキットとアッセイ装置用の追加緩衝液、そしてウシ抗トロンビンIIIを用い、HITACHI717アッセイ装置にて行った。抗Xa因子活性を13単位/mlに調製された「ゴ−ルドスタンダ−ド」ペンタサッカライド溶液を用いてキャリブレ−ションカ−ブを作成した。
【0068】
得られた結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
抗Xa因子活性のレベルはレシーバーコンパートメント中のペンタサッカライド濃度を反映することから、表1より、グラファイトやチタンの様な不可逆的電極を使用した場合はイオントフォレーゼによりレシーバーコンパートメント中に拡散したペンタサッカライドの量が極めて少なくかつ受動的移動量に近似しており、一方、Ag/AgCl陰電極(可逆的電極)を使用した場合には、緩衝液存在下においてさえ上記の量は非常に大きく増加した。チタンやグラファイトの様な非消費型電極と異なり、これらの可逆的電極では水の加水分解を回避することができ、従って処理中の陰電極ならびに陽電極に於ける大きなpH変動も回避することができる。従って、ドナーコンパートメント内の緩衝作用を有する物質を存在させる必要がなくなり、可逆的電極の別の優位な特徴となっている。計測試験1eに見られる様に、緩衝液が無い状態で得られるイオントフォレーゼ下の経皮流量は、他の全ての試験と比べてより大きな増加を示した(137μg/cm/mAh)。
【実施例2】
【0071】
指定強度でのイオントフォレーゼによるナトリウムペンタサッカライド塩の経皮的通過に関する研究
研究は実施例1の方法で行ったが、以下の点に改良を加えた。
【0072】
・各セルの強度を一定に設定したイオントフォレーゼを実施
・パルス型電流に換えて直流を使用
・試験2dではドナーならびにバック電極コンパートメントに水を加水分解しないAg/AgCl型の電極を装備したため、両コンパートメントについては緩衝液を使用しなかった。
【0073】
作業は、各セル端末間に生じる電圧に関係なく一定強度になるようにセット可能な発電器を使用して、4つのイオントフォレーゼセルの各々の電極について0.4mA、即ち0.2mA/cmの定直流電流を設定して6時間実施した。
【0074】
発電器により生じた0.4mAの定強度直流電流を、各セルのドナーコンパートメントを該発電器の陰電極に接続し、さらにバック電極を陽極に接続して6時間通電した。
【0075】
試験2aから2dのそれぞれについては、レシーバー媒質1ml当たりの平均の抗Xa因子活性を、レシーバーコンパートメントから採取したアリコートで測定し、この活性値を上記通電6時間後ならびに各実験開始24時間後、即ち該通電停止18時間後の、レシーバーコンパートメント内に拡散したペンタサッカライドの量とした。
【0076】
得られた結果を表2にまとめた。
【0077】
【表2】

【0078】
各試験の総拡散量をμg/cmで表すと、4.64(試験2a)、45(試験2b)、38(試験2c)および185(試験2d)、即ちAg/AgCl電極に関し154μ/cm/mAhである。
【0079】
前に定電圧下に実施した試験と比較して、グラファイトやチタン電極でのイオントフォレーゼによる拡散は受動的拡散に比べより有意な差となったが、塩化銀電極の性能は極めて優れた状態を維持していた。
【実施例3】
【0080】
設定電流密度でのイオントフォレーゼによるペンタサッカライドナトリウム塩のミニブタへの投与
専門家は、イオントフォレーゼによる医薬品のヒトへの投与を研究する上でミニブタのYUCATAN種は優れた動物モデルであると考えている。それは、この動物の皮膚の構造がヒトの皮膚の構造に極めて良く似ているからである。
【0081】
前述実施例で使用したペンタサッカライドのナトリウム塩のイオントフォレーゼによる投与と、該物質の皮下注射あるいは静脈注射による投与とを比較することを目的に、上記ミニブタに対し以下の試験を行った。
【0082】
これらの試験用に粘着電極セットを幾組か作成し、各組は投与するペンタサッカライドを保持する第一貯留部品に接触する可逆的陰電極(活性電極)から構成されるドナー電極組立体と無関係電解質を保持する第二貯留部品(容器部品)に接触した陽電極(バック電極)により構成される受動電極組立体を有した。
【0083】
各電極組立体は、これに限定されるものではないが、図中に概要を示した構造に近似した構造を有していた。
【0084】
図にあるように、各電極組立体は軸方向にシリンダー型をした凹部2を有するポリエチレンフォ−ムでできたディスク1を含んでおり、該ディスクは粘着面3と非粘着面4を有し、両面はそれぞれ2cm幅の環形状を有している。ディスクの凹端部5は非粘着面側に位置し、塩化物化処理された銀ディスクのフォ−ム中に位置する電極6によって仕切られており、該ディスクの断面積は20cmである。電極ディスクの塩化物化処理面7は凹部の内側に向いている。該ディスクの非塩化物化処理面は、電気伝導的接着法により該表面に結合されたプシュボタン型のコンタクトコネクタ−8を有し、ディスク1と同軸を成すしコンタクトコネクタ−8へのアクセスを可能せしめる同軸の凹部10を有するポリエチレンフォ−ムでできた支持ディスク9に圧着されている。該サポ−トディスクは、電極6とディスク1の中間の直径を有し、ディスク1の非粘着面の上に結合している。ディスク1内にある凹部2は貯留部品を形成する導電性ヒドロゲル11で満たされている。ディスク1の粘着面3は皮膚装着用の感圧接着剤で被覆され、貯留部品11に隣接する該表面3と表面12は最初は取り外し可能な非接着性ポリエステル保護フィルムで覆われており、該フィルムは皮膚に適用する前に取り去る。
【0085】
ドナー電極組立体において、塩化銀陰電極(活性電極)は1.8mAh/cm相当の塩化銀を含んでおり、これによってイオントフォレーゼ処理中、電極を通る電流を一定に、即ち1.2mAh/cmに、維持することができた。陰電極に付属する貯留部品は、キサンタンと3%の乾燥抽出物を含むキャロブ抽出物をベースとし、2重量%の前述の化学式(I)のペンタサッカライドのナトリウム塩を含むヒドロゲルにより、2mmの厚さ、すなわち電極20cm当たり4gの量で満たされていた。従って、処置を受ける動物1匹について、ドナー電極組立体としては4mg/cmの割合で80mgのペンタサッカライドを含んだ。
【0086】
受動電極組立体では、塩化物化した銀から成る陽電極(バック電極)が0.1mAh/cmに相当する塩化銀量を含み、該電極に付属する貯留部品は、ペンタサッカライドを含まず、その代わりに4重量%のNaClを含む点だけ異なる、ドナー電極組立体内に存在するのと同様のヒドロゲルから構成された。
【0087】
各電極組立体対の電極に接続可能な電気信号発生器により、該電極の間に、強度を調製された、周波数25kHz、衝撃係数50%のパルス型電気信号を送ることが可能となった。
【0088】
各試験の5日前に、動物に薬物投与の実験では公知である2つの頚部へのカテ−テル留置を行い、抗Xa因子活性を測定し、それによって皮膚を通して循環系に入った活性体の量を調べ、イオントフォレーゼ処置の有効性を確認するための定期採血ができる様にした。
【0089】
実験1日前より絶食させた動物を特製ハンモックに置いた。取り外し可能保護フィルムを前もって取り除いた電極組立体の1組を、前もって湿らせたティシュで清浄化した動物の背の脊椎の左右いずれかに固定し、さらに本目的用の接触コネクタ−のために設計されたクリップに合致するケ−ブルを用いて、ドナー電極組立体の陰電極を発電器の陰極に、そして受動電極組立体のバック電極は該発電器の陽極に接続した。
【0090】
発電器を用いて、動物に固定した電極組立体の各対の陽電極と陰電極の間の電流を、6時間の間4.8mA(すなわち、0.20mA/cmの電流密度)に設定し、各実験開始後30時間、すなわちイオントフォレーゼ処置終了25時間後まで、H STAGO(登録商標)ダイチュ−ブを用いて定期的に各種血液サンプルを得た。イオントフォレーゼ試験は平均体重11.4kgの5匹の雄のミニブタを用いて実施した。
【0091】
イオントフォレーゼによる活性成分の投与実験に加えて、前述(試験3b)同様の手段で、比較試験3a、3c、ならびに3dも以下の通り実施し、各試験はイオントフォレーゼ投与の例の同様に2匹から4匹のミニブタを用いて実施した:
試験3a:電流を流さない状態でイオントフォレーゼ試験3b同様に電極組立体を装着する。
【0092】
試験3c:ペンタサッカライド0.240mg/kgの注射液の丸薬静脈注射。
【0093】
試験3d:ペンタサッカライド0.200mg/kgの注射液の皮下注射。
【0094】
これら試験3a,3c,3dでは、試験3bのイオントフォレーゼ処置例と同様に各実験開始後30時間まで採血を定期的に複数回行った。
【0095】
本発明(試験3b)と比較試験(試験3a、3cならびに3d)による試験条件下で、同一活性成分で処置された同一体重、同一種の動物で得られた平均血漿レベルを比較するために、抗Xa因子の「ゴ−ルデンスタンダ−ド」単位で表した各種血液サンプルの血漿レベルを表3に示した。
【0096】
【表3】

【0097】
表3の結果の比較から、本発明によるイオントフォレーゼ処置により、抗Xa因子活性で表した血漿レベルは、静脈注射あるいは皮下注射処置に於ける血漿レベルに比べ高いことが示された。血漿レベルの上昇は速やかであり、処置の間は一様で、通電中止後緩やかに低下した。
【0098】
このタイプの活性成分をイオントフォレーゼで投与する場合、特に一日を僅かに越え、且つより低い電流密度で投与する場合、抗Xa因子を用いて表わされる良好な抗血栓作用を有する活性成分の血漿濃度が比較的長時間、血漿濃度のピ−ク形成無しに得ることができる。
【0099】
様々な処置の期間中の血漿レベルの変化を示すカ−ブ下の面積を比較することで、薬物動態の専門家は、動物体重の関数としてイオントフォレーゼにより実際に投与されたペンタサッカライド量を計算することができる。試験3bの場合、該投与量は20cm当たり7±1.3mg、すなわち1.2mAh/cm当たり350μg/cm、換言すると1mAh/cm当たり292μg/cmと見積もられた。
【0100】
生物学的利用能、つまり電極内に存在する活性成分量に対して標準化した実際に投与された活性成分のレベルはおよそ9%であり、in vitro試験で観察された利用分画よりも高い値であった。
【実施例4】
【0101】
直流の方向が定期的逆転するよう電流密度設定したイオントフォレーゼによるペンタサッカライドのナトリウム塩のミニブタへの投与
実施例3と同一の発電器と同一の型の電極を用いて、以下の条件にて4匹のミニブタを対象に以下のイオントフォレーゼ投与試験を行った。
【0102】
電極は、実施例3と同一の構造を有し、20cmの活性表面積を持つ。電極自体は15μmの厚さの、1cm当たり0.5mAhの塩化銀の割合で電気的酸化により塩化物化処理された銀フィルムから成った。貯留部品も20cmの表面積を持ち、ポリプロピレン繊維を補充したセルロ−ス繊維から成るブロッティングペ−パ−のシ−トから成り、2重量%のペンタサッカライドと0.2重量%のNaClを含む水溶液で50mg/cmまで含浸されている。各電極、アノードおよびカソードは全て1gの溶液を含んでおり、すなわち20cmの活性表面積について20mgのペンタサッカライド(1mg/cm)を保有していた。従って、40mgのペンタサッカライドが全ての動物に投入された。
【0103】
発電器により、合計8時間の間30分おきに電流の方向が定期的に逆転する、2.5mA、即ち125μA/cmの一定電流が供給された。これは、直流電流の1mA/cmの通過に相当する。
【0104】
電極はそれぞれ同一の構造と組成を有し、陽極及び陰極として交互に機能した。また各貯留器には塩化ナトリウムが存在しているため、可逆的電極として永続使用でき、活性成分の加水分解(pHの変化を伴う)反応、あるいは酸化/還元反応を回避することができる。
【0105】
試験4aでは、平均体重11.8kgの動物3匹を使用し、電極は装着するが発電器には接続せず、試験4bでは平均体重12.3kgの4匹の動物全てに、8時間にわたり、電流方向が30分毎に自動的に逆転する2.5mAの電流を流した。
【0106】
試験4aと4bでは、実施例3と同様に、各実験開始後30時間まで定期的に血液サンプルを採取した。
【0107】
各種サンプルの血漿レベルを、試験4aと4bを相互に比較し、また実施例3の結果、特に静脈内注射および皮下注射例である3cならびに3dと比較することを目的に表4に示した。
【0108】
薬物動態の専門家によると、試験4bの時間に伴う血漿レベル変化を示す曲線下の面積と、試験3cならびに3dの同様の面積を比較することで、処置の間に投与されたペンタサッカライドの平均量を極めて正確に評価することができる。受動試験4aの場合に、その量は0であり、試験4bでは8.45±1.5mgペンタサッカライドであった。
【0109】
【表4】

【0110】
80mgのペンタサッカライドが入った前試験との比較では、より良好な生物学的利用能が観察された。すなわち、試験3bがおよそ9%であったのに対し試験4bでは約21%であった。mAh当たりの投与ペンタサッカライド量が試験3bでは292μg/cmであったのに対し、試験4bでは372μg/cmであることから電気的効率も良好であった。
【0111】
この定期的かつ交互に流れを変える電流を用いると、前の相の間に塩化銀の還元によって発生した各貯留器の中の塩素イオンを消費することができ、治療効果イオンと塩素イオンとの競合を減少させ、表面単位当たりの活性成分量を減少させることができる。更に、可逆的電極の使用が、カソードコンパートメントとアノードコンパートメント中に交互に存在する活性成分に作用する酸化/還元反応の阻止に有用であることも示されている。
【0112】
現在イオントフォレーゼ装置は小型化され、毎日の生活の為に持ち運ぶことが可能となっていることから、本発明に基づくイオントフォレーゼの実施は、上記の型のペンタサッカライド、ならびにより一般的に類縁体、もしくは近縁の陰イオンオリゴサッカライド類のデリバリ−の為の、特に興味深いガレノス式方法を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、自給式携帯型イオントフォセーゼ装置を示す概略図であり、図中、1はディスク、2は凹部、3は粘着面、4は非粘着面、5は凹端部、6は電極、7は塩化物化処理面、8はコネクター、9は支持ディスク、11は導電性ヒドロゲルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン型の医薬活性成分を経皮投与するためのイオントフォレーゼ装置であって、活性電極と呼ばれる負極からなる負極組立体(該負極は、少なくとも部分的にイオン化されている形態の活性成分を保持する電解質を収容する貯留部品と接触しており、該貯留部品はそれが被験者の皮膚のある領域に接触して配置された場合に、該負極と該領域との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている)、(i)正極単独、又は好ましくは(ii)少なくとも1種の電解質を収容する容器部品と接触している正極のいずれかからなる正極組立体(該容器部品は、それが被験者の皮膚のある部分に接触して配置された場合に、該正極と該部分との間のイオンの導伝継続性を確実なものとするために配置されている)、及び該2つの電極に接続することが可能な電気信号発生器を具備し、該貯留部品に接触している負極は少なくとも部分的にイオン化可能な金属化合物で形成され、その金属イオンは、少なくとも該装置が作動する際に、対応する金属に電気化学的に還元され得、かつ該金属と共に電気化学的に可逆の系を形成して可逆的負極を構成することが可能であり、かつ該発生器は、該電極間に発生する平均電流密度が0.03ないし0.5mA/cmであるような平均電圧で該電極間に電気信号を印加するために配置され、該装置は、負極に関連付けられる貯留部品内に存在する活性成分が、2ないし12の糖類単位からなるオリゴ糖類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩で表される陰イオン性オリゴ糖類(該陰イオン性オリゴ糖類は、該単位の幾つかもしくは全てのOH基が、少なくとも部分的に、−OSO、−COO、−NHSO、−NH−アシル、−OPO−−及び−OT(Tは炭化水素基を表す)から選択される官能基で置換され、かつイオントフォレーゼ投与に適するイオン的な性質を有する)から選択されることを特徴とし、かつ該電流密度が0.05mA/cmないし0.25mA/cmの範囲の値を有することを特徴とし、かつ該負極に関連付けられる該貯留部品内に最初に存在する活性成分の量が電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り0.5ないし12mgに相当することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記陰イオン性オリゴ糖類が全化学合成によって得られることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも部分的に負極を構成し得る金属化合物が化合物AgCl及びCuClから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
負極の材料が支持体上にデポジットし、該支持体が絶縁体、特には、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、ポリエステルのような絶縁プラスチックからなるか、あるいは、電流が存在しない状態で活性成分を保持する電解質による腐蝕に耐性の金属性もしくは非金属性の導電性材料、例えば、銀、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、炭素、グラファイト及び導電性ポリマーからなることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
負極がAg/AgClの対をベースとすることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
正極が、チタン、プラチナ、ステンレス鋼のような金属もしくは金属合金からなるか、又は、炭素もしくはグラファイトのような非金属性導電性材料からなるか、あるいは、少なくとも部分的に、電気化学的な酸化によって消費され得る金属、例えば、Al、Cu、Mg、Zn及びAgのような金属からなり、該電気化学的な酸化によって消費され得る金属が、特には、電気化学的な酸化によって生じる金属イオンと共に電気化学的に可逆な系を形成して可逆的な正極を構成し得るものから選択されることを特徴とする請求項1ないし6のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
正極がAg/AgClの対をベースとすることを特長とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分の所定の総量を被験者に投与するための請求項1ないし7のいずれか1項による装置であって、負極及び正極の1つ以上が、導電性支持体又は絶縁性支持体に結合する限定量の電気化学的に消費され得る材料で形成される、制限電極と呼ばれる電極を構成する様に配置され、ここで、該電気化学的に消費され得る材料は、該制限電極が負極である場合は電気化学的に還元し得る金属化合物であり、又は、該制限電極が正極である場合は電気化学的な酸化によって消費され得る金属、特にはAl、Mg、Zn及びAgの等金属であり、かつ該導電性支持体は、電流が存在しない状態で該制限電極に関連付けられる電解質による腐蝕に耐性である材料であって、かつ該制限電極が負極である場合、該電解質の存在下において少なくともアルミニウムと等しい水素過電位を有するか、あるいは、該制限電極が正極である場合、電気化学的な酸化では消費され得ない材料で作製され、一方、該量が限定された電気化学的に消費され得る材料は、その電気化学的な消費に必要な電気量が所定の総量の活性成分を被験者に投与するのに必要な電気量に対応するように、かつ、電極間の電流の流れが該制限電極の消費可能な材料が全て消費された場合に事実上断絶する様に選択され、かつ、作動開始時に、陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分が負極に接触する貯留部品内に被験者に投与される所定の総量を上回る量だけ存在することを特徴とする装置。
【請求項9】
電気信号発生器が、強度型信号(すなわち設定平均強度の信号)又は電位差型信号(すなわち設定平均電圧の信号)を負極と正極との間に印加し、該電気信号は、一時的な極性の反転を伴う、もしくは伴わない、連続的なものもしくはパルスであり、かつ恒久的なものもしくは断続的なものであり、並びに0ないし500kHz、特には0ないし100kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項1ないし8のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記電気信号が、0.05ないし0.95、特には0.1ないし0.8の範囲の衝撃係数(すなわち、その繰り返しがパルス型信号を形成するパルス要素の持続期間とこのパルスの2つの連続する出現を分離する間隔期間との間の割合)を有するパルス型信号であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
負極と正極との間に印加される信号が、該電極間に生じる平均電流密度が0.05ないし0.25mA/cm、特には0.05ないし0.2mA/cmの値を有するように、0.1ないし50ボルト、特には0.5ないし20ボルトの間で選択される平均電圧を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を保持する水性媒体及び/又は他の電解質を構成する水性媒体が、該活性成分の経皮通過を促進し得る物質、例えば、血管拡張物質及び/又は、特にはアルコール型もしくはエステル型の化合物のような、両親媒性物質を保持することを特徴とする請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
負極に関連付けられる貯留部品内に存在する陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分が3ないし8の糖類単位からなるオリゴ糖類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、特にはナトリウム、カリウム又はカルシウム塩から選択され、ここで、該オリゴ糖類の幾つかもしくは全ての単位のOH基は、少なくとも部分的に、−OSO、−COO、−NHSO、−NH−アシル、−OPO−−、−OT(Tは炭化水素基、特には脂肪族もしくは芳香族炭化水素基を表し、−OTは特にはアルコキシ基である)のような官能基よって置換され、かつ該オリゴ糖類はイオントフォレーゼ投与に適するイオン性を有し、該オリゴ糖類は、特には、全化学合成によって得られる陰イオン性オリゴ糖類であることを特徴とする請求項1ないし12のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
陰イオン性オリゴ糖類が三、四、五又は六糖類、特には、五糖類であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
陰イオン性オリゴ糖類が交互のウロン酸及びグルコサミン単位、又は交互のウロン酸及びグルコース単位、あるいは、交互のウロン酸及びガラクトサミン単位からなることを特徴とする請求項1ないし14のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
陰イオン性オリゴ糖類が下記式(II)の五糖類であることを特徴とする請求項14に記載の装置:
【化1】

(ここで、Rは−SO又はアシル基、特にはアセチル基であり、R及びRは同一であるか異なっており、H又は−SOを示し、かつRは低級アルキル基、特にはCHを表す)
【請求項17】
負極に関連付けられる貯留部品内に最初に存在する活性成分の量が、電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り1mgないし8mgに相当することを特徴とする請求項1ないし16のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
正極が可逆的負極と同じ種類の可逆的電極であり、負極に関連付けられる貯留部品及び正極に関連付けられる容器部品の各々が最初に、電極のcm当り及び電極のcm当りの電流のmAh当り0.5mgないし6mg、好ましくは0.5mgないし4mgに相当する量の陰イオン性オリゴ糖類型の活性成分を保持し、かつ電気信号発生器が、活性成分を前記貯留部品及び前記容器部品から交互に投与するために前記電極に印加される電気信号の極性を反転するように配置されることを特徴とする請求項1ないし16のうちのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−341107(P2006−341107A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188002(P2006−188002)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【分割の表示】特願平8−522675の分割
【原出願日】平成8年1月24日(1996.1.24)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【出願人】(594046226)
【出願人】(394010986)アクゾ・ノベル・エヌ・ベー (31)
【Fターム(参考)】