説明

陰唇間パッド

二つ折りタイプの陰唇間パッドにおいて、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに対して圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッドを提供する。着用者の動作に伴い、前庭床から陰唇間パッド10の折り目を跨ぐ領域2に対して圧力が加えられた場合に、その圧力に反発して、圧力がそのまま前庭床に伝導することを防止する圧力分散手段11を陰唇間パッド10の折り目線を跨ぐ領域2に備えることにより、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッド10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに対して圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性用生理用品としては、生理用ナプキン、タンポンが一般的に用いられているが、これら生理用ナプキンやタンポンの中間に位置する生理用品として、近年、陰唇間パッドなる生理用品が注目され始めている。この陰唇間パッドは、女性の陰唇間に挟み込み、陰唇内壁に当接させて装着するというものであり、生理用ナプキンと比べて身体との密着性が高いために経血の漏れが防止できるとともに、経血の拡散を防止できるため衛生的且つ清潔なものである。また、生理用ナプキンよりも小型であるため装着感に優れており、膣内に挿入するタンポンに比べて着用時の心理抵抗も低いという特徴を有している。
【0003】
このような特徴を有する陰唇間パッドとして、種々の構造を有するものが開発されている。例えば、特許文献1に記載された陰唇間パッドは、陰唇間パッドの長手方向中心軸に沿った折り目線で裏面側が互いに向かい合うように二つ折りにされ、裏面側同士が少なくとも一点以上の接合部で接合されているものである。この陰唇間パッドは、裏面側同士が接合される事で形成される空間に着用者が指を挿入して、陰唇間のスペースに着用する事ができる構造となっている。このように二つ折りされて使用されるタイプの陰唇間パッドは、二つ折りされることによって形成される折り曲げ部が前庭床に当接するように装着されるものであり、陰唇間に挟持され易く、陰唇内にフィットして経血漏れの心配が少ないという利点を有しており、好ましい構造であると言える。
【特許文献1】国際公開第WO02/100315号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載された陰唇間パッドは、着用時には、折り曲げ部と接合部とがほぼ鉛直線上に並んで位置することになる。このため、椅子に座る等の着用者の動作に伴って、陰唇間に挟持されている陰唇間パッドに外部から圧力が加えられた場合には、圧力がそのまま折り曲げ部に伝導されて、折り曲げ部に当接している前庭床を押圧するため、着用者に使用感を強く感じさせてしまうという問題があった。
【0005】
従って、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感を感じない二つ折りタイプの陰唇間パッドを開発することが当業者に課せられた課題であった。本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに対して圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、二つ折りタイプの陰唇間パッドにおいて、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに対して圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感を強く感じない陰唇間パッドを如何にして提供することができるかについて鋭意研究を重ねた。その結果、着用者の動作に伴い、前庭床から陰唇間パッドに対して加えられた圧力を分散する圧力分散手段を陰唇間パッドに備えることにより、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッドを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0007】
(1) 着用状態で身体側に面する身体側面と当該身体側面の反対側に面する反身体側面とを有し、長手方向と短手方向とを有する実質的に縦長の形状の陰唇間パッドであって、着用時には、前記短手方向において前記反身体側面同士が向かい合うように二つ折りがなされており、前記二つ折りの折り軸である折り目線に沿った部分の少なくとも一部が陰唇内の前庭床に当接するように前記陰唇間に挟持されるものであり、前記折り目線を跨ぐ領域には、着用者の動作に伴って前記陰唇間パッドに対して生じる圧力に反発して、前記圧力が前記前庭床にそのまま伝導することを防止する圧力分散手段を備えているものである陰唇間パッド。
【0008】
(1)に係る陰唇間パッドは、二つ折りタイプの陰唇間パッドであり、着用者の動作に伴って、前庭床が陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域を強く押圧した場合に、その圧力を分散させる圧力分散手段が、折り目線を跨ぐ領域に設けられたものである。ここで、「前庭床」とは、左右の陰唇の付け根部分、即ち、陰唇内部に位置する陰核から膣口を結ぶ線に沿った領域を意味し、外部からの刺激に対して非常に敏感な部分である。また、「折り目線を跨ぐ領域」とは、二つ折りの折り軸である折り目線を含み、且つ、折り目線に沿った領域を意味し、その少なくとも一部は、陰唇間パッド着用中においては前庭床に当接しているものである。本明細書で言う「圧力分散手段」とは、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が折り目線を跨ぐ領域を強く押圧した場合に、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させるように折り目線を跨ぐ領域が膨らんで変形するものである(図1、図2及び図3参照)。
【0009】
従来の二つ折りタイプの陰唇間パッドにおいては、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に対して強い圧力が加わった場合、折り目線を跨ぐ領域が変形する前に、二つ折りにすることによって折り目線の両側に形成される両折り曲げ片が座屈するなどして変形してしまう。これは、二つ折りにすることでその折り目線を跨ぐ領域の屈曲力が高まるためである。従って、従来の二つ折りタイプの陰唇間パッドでは、折り目線を跨ぐ領域が変形しないため、着用者へ異物感を与えてしまう一方で、折り曲げ片が変形するため、陰唇内壁との密着性が得られなくなり、経血漏れの危険性が高まってしまうという不具合が生じていた。
【0010】
この点、(1)に係る陰唇間パッドでは、折り目線を跨いで圧力分散手段が設けられているため、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に加えられた圧力を外側方向に分散できることとなり、前庭床が陰唇間パッドから強い反発力を受けることが無い。より詳しくは、着用者の動作に伴って、前庭床が折り目線を跨ぐ領域を強く押圧した場合には、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させるように、折り目線を跨ぐ領域が膨らんで変形するため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんどなく、着用者は使用感をほとんど感じることが無い。従って、(1)に係る陰唇間パッドによれば、着用者の動作に伴い、前庭床から陰唇間パッドに圧力が加えられた場合であっても、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0011】
(1)に係る陰唇間パッドでは、圧力分散手段は折り目線を跨いで設けられているが、圧力分散手段と折り目線との間に空間を有するような場合も含まれ(例えば、図15参照)、折り目線を跨いで配置されていれば特に制限されない。従って、陰唇間パッド全体に配置されていても良いが、特に刺激に対して敏感な陰核や膣口と接触する領域に設けられていることが好ましい。また、折り目線は、長手方向の中心軸に沿って設けられることが好ましいが、二つ折りにして形成される折り目線は全て本発明でいうところの折り目線に含まれる。なお、本発明でいう二つ折りタイプの陰唇間パッドには、最初から二つ折りにされているものと、着用時に二つ折りにされるものとの双方が含まれる。
【0012】
折り目線を跨ぐ領域は、二つ折りの折り軸である折り目線を含み、且つ、折り目線に沿った領域を意味することは上述した通りであるが、その短手方向の長さは、好ましくは、0.5mm以上40mm以下の範囲内であり、更に好ましくは、5mm以上20mm以下の範囲内である。また、折り目線は、長手方向へ向かう直線であっても良いが、ジグザグ状や波状などのみかけ幅を有する形状の方が、折り目線を跨ぐ領域はより一層膨らんで変形し易くなるため好ましい。
【0013】
さらには、上述したような効果に加えて、経血の流出や陰唇間パッドの落下等を効果的に防止するために、(1)に係る陰唇間パッドの外形寸法は、陰唇の外形及び陰唇とショーツとの間に形成される空間の大きさを考慮して、長手方向の延べ長さは50mm以上180mm以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは80mm以上120mm以下の範囲内である。また、両折り曲げ片のそれぞれの延べ幅は15mm以上50mm以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは25mm以上40mm以下の範囲内である。
【0014】
なお、(1)に係る陰唇間パッドは、身体側面に配置される液透過性の表面側シート、体液を吸収して保持する吸収材、及び、反身体側面に配置される液難透過性の裏面側シートを備えるものであって良い。この場合、表面側シートとしては、液透過性であって肌に刺激を与え難いものが一般に使用される。用いられる繊維の例としては、繊維長が5mm以上51mm以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは、25mm以上51mmの範囲内であり、ヤング率は、100kg/mm以上1500kg/mmの範囲内が好ましく、更に好ましくは、300kg/mm以上1000kg/mmの範囲内から選択される繊維である。例えば、レーヨン、アセテートレーヨン、天然コットン、パルプ、化学パルプ、又は、合成樹脂を成分としたものを単独又は芯鞘構造をなすように複合したものを、単独又は混合して用いることができる。これらの繊維は、断面形状がY型やC型などの異型であっても良く、また、延伸加工を施されることで分子配向が高まったもの、あるいは捲縮された繊維であっても良い。
【0015】
このような繊維が折り目線を跨ぐ領域に積層され、その後スパンポンド、ポイントボンド、エアースルー、ニードルパンチ、乾式・湿式スパンレース等の方法によってシート化され、表面側シートが形成される。具体的には、天然コットン5%以上30%以下、レーヨン又はアセテートレーヨンを70%以上95%以下の比率で混合した繊維を、目付が20g/m以上50g/m以下の範囲内で調製した後、水流交絡により繊維同士を絡合させて乾燥し、厚みが0.3mm以上1.0mm以下の範囲内で調製されたスパンレース不織布が用いられる。使用する糸質は、天然コットンであれば繊維長が15mm以上60mm以下の範囲内、レーヨン又はアセテートレーヨンであれば繊維長25mm以上51mm以下の範囲内で、繊度1.1dtex以上6.6dtex以下の範囲内のものである。
【0016】
また、陰唇間パッドを二つ折りにした際に、折り目線を跨ぐ領域における吸収材の厚みが折り曲げ片における吸収材の厚みより薄くなってしまうと、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に圧力が加わったときに、折り目線を跨ぐ領域が変形し難くなる。これを防止するためには、短手方向へ容易に伸長することができる表面側シートを用いるのが有効であり、これにより、折り目線を跨ぐ領域の吸収材の厚みが薄くなってしまうことを防止できる。
【0017】
短手方向へ容易に伸長できる表面側シートを形成するためには表面側シートを形成する繊維間の延性を高める方法が挙げられる。表面側シートを形成するために必要な繊維の例としては、捲縮率が高い繊維、ゴム成分などが混入されていることで伸長され易くなった繊維、分割繊維、分子配向が低い繊維などが挙げられる。なお、各繊維間の延性を高めるには、油剤が混入されている繊維、断面がY型の繊維やC型の繊維などが混合されて隣り合う繊維との接触面積を低下させた繊維を使用することなどが挙げられる。表面側シートの短手方向への伸長性を付与する方法の別の例としては、短手方向へ向かう噛み込みの波状エンボス加工を施す方法が挙げられ、波状の大きさやピッチによって伸長性を制御できる。ここでいう伸長性とは、波状形成することで元々の表面側シートの短手方向の長さがどれだけ伸長したか(例えば、元々の表面側シートの短手方向の長さが100mmとし、波状形成することでその長さが200mmになったとき、伸長性は2倍である)を意味するものである。具体的には、高さ1.12mm、ピッチが2.0mmの噛み込みパターンにすることで伸長性は1.5倍になる。また、別の例としては、表面側シートの短手方向の延べ長さは、裏面側シートの短手方向の延べ長さよりも大きく、表面側シートのたわみは折り目線を跨ぐ領域に設けられている。従って、二つ折りされた場合に、このたわみにより、表面側シートは短手方向へ容易に伸長できるため、折り目線を跨ぐ領域における吸収材の厚みが薄くなってしまうことを防止することができる。
【0018】
表面側シートとしては、上述したような繊維が集積された繊維集合体に限定されるものではなく、開孔フィルムであっても良い。開孔フィルムである場合、折り目線を跨ぐ領域の開孔径は、0.2mm以上5mm以下の範囲内、ピッチは、0.2mm以上10mm以下の範囲内、開孔面積率は、10%以上50%以下の範囲内であり、折り目線を跨ぐ領域以外の開孔径は0.05mm以上3mm以下の範囲内、ピッチは、0.2mm以上10mm以下の範囲内、開孔面積率は、3%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。製法としては、予め開孔条件を変化させたパターンドラムにフィルムを通紙し、サクション吸引することで開孔するいわゆるPFW法や、均一な開孔条件を有するPFW法で得られた表面側シートの折り目線を跨ぐ領域に、ピンエンボス加工によって開孔をさらに付加する方法などが挙げられる。開孔の配列は千鳥状、格子状、波状など特に限定されない。また、開孔の形状としては、丸型、楕円型、四角型などが挙げられる。また、開孔部の周縁に弁が備えられていても良い。好ましくは、外圧が加わっても開孔が弁で塞がり難くするために、特に折り目線を跨ぐ領域の開孔部の弁の高さが折り目線を跨ぐ領域以外の領域の弁の高さよりも低くしたものである。
【0019】
また、吸収材としては、繊維集合体を用いることが可能であり、例えば、繊維長が5mm以上51mm以下の範囲内、更に好ましくは、25mm以上51mm以下の範囲内であり、ヤング率は100kg/mm以上1500kg/mmの範囲内、好ましくは、300kg/mm以上1000kg/mm以下の範囲内から選択される繊維である。例としては、レーヨン、アセテートレーヨン、天然コットン、パルプ、化学パルプ、高分子吸収体、繊維状高分子吸収体、合成繊維等を単独又はこれらを混合したものからなり、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。これらの繊維は、断面形状がY型やC型などの異型のものが混合されたものであっても良く、また、延伸加工を施されることで分子配向が高まったもの、捲縮された繊維であっても良い。
【0020】
具体例としては、1.1dtex以上6.6dtex以下の範囲内から選択されるレーヨン又はアセテートレーヨンを60%以上95%以下、天然コットンを5%以上40%以下の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化した目付が50g/m以上500g/m以下で、1mm以上20mm以下の嵩を有する不織布シートが挙げられる。また、上記の繊維を折り目線を跨ぐ領域に積層して、その後エアレイド法、メルトプローン法、スパンレース法、抄紙法等によりシート化したものを、ニードリングやドット状、格子状などのロール間を通過させエンボス加工を施しても良い。なお、エンボス面積率は、0.3%以上60%以下の範囲内であることが好ましい。さらに具体例を挙げると、折り目線を跨がない領域における吸収材の一部に、繊維長が8mm以下のパルプを100g/m積層し、折り目線を跨ぐ領域における吸収材には、繊維長が51mmで3.3dtexのレーヨン85%と天然コットン15%とを混合したものを、折り目線に交差するように繊維配向させて吸収材全面に180g/m積層したものが挙げられる。繊維長が短いと繊維同士の交絡点が少なく、密度が高くなって剛性が高まり易いため、折り目線を跨がない領域に繊維長の短いパルプを用いた場合には、その領域の剛性は折り目線を跨ぐ領域の剛性よりも高くなる。従って、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域に接触した際には、折り目線を跨がない領域が変形しにくくなるため、折り目線を跨ぐ領域がより一層容易に膨らんで変形し易くなり、強い反発力を前庭床に与えることが無い。
【0021】
(2) 前記陰唇間パッドは、前記折り目線を跨ぐ領域に繊維集合体を備えるものであり、前記圧力分散手段は、前記圧力に対する反発性を制御するために前記折り目線に交差して配向された繊維を有するものである(1)記載の陰唇間パッド。
【0022】
(2)に係る陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域には、圧力分散手段として、折り目線に交差して配向する繊維が設けられている。このため、(2)に係る陰唇間パッドは着用の際に二つ折りされても、折り目線を跨ぐ領域に設けられた各繊維が元の形状に戻ろうとする反発剛性を有している。従って、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、反発剛性を有する折り目線を跨ぐ領域は容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0023】
(2)に係る陰唇間パッドでは、陰唇間パッドを構成する繊維集合体の繊維の内、折り目線を跨ぐ領域に配置されたそれぞれの部材を構成する繊維の少なくとも一部は、折り目線に交差して配向するように設けられている。ここで、「折り目線に交差して配向された繊維を有する繊維集合体」とは、繊維の配向が折り目線に対して角度を有しており、少なくとも繊維の配向が折り目線と平行ではない繊維集合体を意味する。また、折り目線を跨ぐ領域に配置されたそれぞれの部材を構成する繊維集合体の繊維の少なくとも一部が、折り目線に交差して配向していれば良い。
【0024】
(2)に係る陰唇間パッドを構成する繊維集合体としては、例えば、繊維集合体で構成された液透過性の表面側シートや、繊維集合体で主体的に構成され且つ体液を吸収して保持する機能を有する吸収材などが挙げられる。そして、繊維集合体から構成された表面側シートの繊維のみが折り目線に交差して配向していても良いし、繊維集合体から構成された吸収材の繊維のみが折り目線に交差して配向していても良い。あるいは、これらの繊維集合体の繊維のいずれもが折り目線に交差して配向していても良い。さらには、これら表面側シート及び吸収材のそれぞれが多層構造を有している場合などは、その内の少なくとも1層の繊維集合体の繊維が、折り目線に交差して配向していれば良い。
【0025】
繊維が折り目線に交差して配向している指標としては、表面側シート及び吸収材それぞれのMDへの引張最大強度とCDへの引張最大強度との比(引張最大強度MD/CD)によって表現することができる。ここで、MDは繊維集合体の長手方向を意味し、CDは繊維集合体の短手方向を意味する。具体的には、引張最大強度MD/CDは、0.1以上7.0以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは、0.5以上2.5以下の範囲内である。ここで、引張最大強度MD/CDが1である状態とは、繊維のMDへの配向とCDへの配向がほぼ同じであることを意味する。また、繊維が折り目線を跨いで配向するためには、繊維長が長い方が好ましく、具体的には、5mm以上51mm以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは、25mm以上51mm以下の範囲内である。
【0026】
繊維の反発剛性を示す指標としては、一般にヤング率(=荷重/歪み量)で表すことができる。具体的には、100kg/mm以上1500kg/mm以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは、300kg/mm以上1000kg/mm以下の範囲内である。反発剛性は繊度を変更することによって調整され、具体的には繊度が1.1dtex以上6.6dtex以下の範囲内から適宜選択される。
【0027】
上述の繊維集合体から構成される吸収材は、体液を吸収して保持するという吸収材が本来有する機能に加えて弾性をも有するものであり、圧力が加わった場合にはこの圧力に反発して、圧力を分散させることができるものである。このような吸収材を構成するものとしては、例えば、弾性素材と吸収素材とを混合したものが挙げられ、弾性素材としては、弾性を有する繊維や空気のセルを有する発泡化材料が挙げられる。弾性を有する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性材料で構成され、各樹脂を単独若しくは芯鞘構造あるいはサイドバイサイド構造にした繊維が挙げられる。好ましくは、機械若しくは熱等により2次倦縮が掛けられた繊維である。なお、着用感を考慮すると、繊維の太さは0.5dtex以上8.8dtex以下の範囲内が好ましく、繊維長は3mm以上64mm以下の範囲内に調整されたものが好ましく用いられる。また、発泡化材料としては、弾性を有するPE、PP、更には高弾性を有するウレタン、ゴム等の樹脂を発泡化した材料が使用される。さらには、吸水性を有するセルローススポンジ等が好適に使用される。これらの材料を裁断してフィラメント状にしたり粒状にした後、吸収素材と混合することによって吸収材が形成される。一方、吸収素材としては、フラップパルプ、レーヨン、コットン等の一般的な素材が挙げられる他、SAP(高吸収性樹脂)等の高分子吸収ポリマーの粒状物や繊維状物が用いられる。なお、弾性素材と吸収素材との構成比率は、重量比で弾性素材:吸収素材=1:4〜4:1の範囲内であることが好ましい。また、吸収材の目付は、陰唇間パッドの厚みと着用感との観点から、20g/m以上500g/m以下の範囲内であることが好ましく、50g/m以上400g/m以下の範囲内であることがより好ましい。
【0028】
また、上述の吸収材は、弾性に加えて剛性を有するものであっても良い。ここで、「剛性」とは、物体に外部から力を加えて変形しようとするとき、物体がその変形に抵抗することを意味する。即ち、折り目線を跨ぐ領域に弾性を付与することさえできれば、折り目線を跨ぐ領域における吸収材においても、弾性素材以外に剛性素材を用いても良い。また、両折り曲げ片における吸収材中に剛性素材を用いることもできる。この場合には、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に圧力が加わった際に、剛性素材を有する両折り曲げ片は変形し難くなるため、折り目線を跨ぐ領域がより容易に膨らんで変形し易くなり好ましい。
【0029】
なお、剛性は吸収材の目付を高めること及び/又は厚みを増やすことによって得られる。具体的には、剛性を有する吸収材の目付は、剛性を有さない吸収材と比較して少なくとも20%以上高くすることが好ましい。なお、目付を高くする方法としては、吸収素材を増量する方法の他、吸収材の積層工程においてパターンプレートの深さを深くしたり、サクション量を強くすることで積層量を増加する方法や、部分的に第2吸収材を重ねる方法等が挙げられる。また、剛性は、吸収材の密度を高くすることによっても得ることができる。具体的には、吸収材の密度を高くする方法としては、二つ折りされた陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域における吸収材に、エンボス加工を施す方法が挙げられる。但し、エンボス加工によって厚みが薄くなった吸収材の占める割合が高くなり過ぎると、陰唇間パッドが脱落してしまったり、剛性が高くなり過ぎて着用感を阻害してしまうため好ましくない。エンボス加工は、金属やゴム等で形成された基体にエンボスパターンを施したロールと、フラット若しくは噛合せパターンを施したロールを作成し、2つのロール間に吸収材を通過させることで、吸収材の一部にエンボス加工が施された吸収材を形成することができる。この際に、適当な温度や圧力を与えることによって、剛性を調整することもできる。なお、エンボスのパターンとしては、フラットに潰すタイプや、四角や丸の形状をした断続的なパターンで潰すタイプの他、断続するエンボスであって高圧搾によるエンボスと中圧搾によるエンボスとが交互に形成されたタイプ等が挙げられる。さらには、吸収材に接着剤を添加することにより、吸収材に剛性を付与することもできる。接着剤としては、一般的に利用されるゴム系、オレフィン系等のHM(ホットメルト)が特に制限なく利用され、これらのHMを溶融して吸収材の表面や内部に塗布される。塗布の方法としては、非接触塗工可能なスプレー、スパイラル、ビート、CC、カーテンコーター、デュラーウィーブ等が挙げられ、接触塗工ではコーター、ロールコーター等が挙げられる。HM以外にも水溶性の糊等を利用することもできる。
【0030】
また、吸収材、表面側シート及び裏面側シートとは異なる部材であって、弾性を有するシート部材を折り目線を跨ぐ領域に設けても良い。このシート部材の配置は、折り目線を跨ぐ領域であれば特に限定はされず、例えば、身体側面に液透過性の表面側シート、反身体側面に液難透過性の裏面側シート、及び、これらの間に配置された吸収材を有する陰唇間パッドの場合にあっては、裏面側シートと吸収材との間に配置された場合や、表面側シートと吸収材との間に配置された場合の他、吸収材中にサンドイッチされた形で配置された場合等が挙げられる。なお、このシート部材は、上述した弾性素材を利用した不織布が好適に使用される。不織布を製造する方法としては、繊維をカードで積層し、熱可塑性繊維の溶融によりボンディングした後、スルーエアー法で形成する方法が挙げられ、この方法により得られた不織布は、反発弾性力を有しているため好ましい。その他にも、一般的に利用されるポイントボンド、スパンボンド、ウォータージェット(WJ)や、連続フィラメントを紡糸し熱エンボスでボンディングするスパンボンド、スパンボンドにメルトブローを吹き付けボンディングしたSMSシート(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドの3層構造シート)等も使用することができる。さらには、繊維積層後に表面にバインダーを塗付する事によりボンディングするケミカルボンドやエアレイド法も用いることができる。
【0031】
(3) 前記圧力分散手段は、前記折り目線を跨ぐ領域に施されたスリットを有するものである(1)又は(2)記載の陰唇間パッド。
【0032】
(3)に係る陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域は、圧力分散手段として、スリット加工が施されたものである。このように、折り目線を跨ぐ領域にスリット加工を施すことによって、折り目線を跨ぐ領域に反発剛性を付与することができる。従って、(3)に陰唇間パッドによれば、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、反発剛性を有する折り目線を跨ぐ領域は容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0033】
なお、スリット加工については、スリットの寸法は1mm以上20mm以下の範囲内、ピッチは20mm以下の範囲内が好ましく、スリットパターンは縦方向、横方向、斜め方向、あるいは、それらが組み合わされている、若しくは交差しているものであって良い。スリットの形状は、直線状、曲線状、波状など、特に限定されない。また、これらのスリットは、厚み方向に貫通しているものであっても良いし、貫通していないものであっても良い。さらに、前記スリットに直交する方向に、別のスリットを更に設けることにより、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧したときには、圧力を多方向に分散させるように折り目線を跨ぐ領域が膨らんで変形するので、着用感を極めて与え難いものとなり、好ましい。
【0034】
(4) 前記圧力分散手段は、前記折り目線を跨ぐ領域に施されたエンボスパターンを有するものである(1)又は(2)記載の陰唇間パッド。
【0035】
(4)に係る陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域は、圧力分散手段として、エンボス加工が施されたものである。このように、折り目線を跨ぐ領域にエンボス加工を施すことによって、折り目線を跨ぐ領域に反発剛性を付与することができる。従って、(4)に陰唇間パッドによれば、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、反発剛性を有する折り目線を跨ぐ領域は容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0036】
なお、エンボスパターンについては、ドット状、線状、波状、格子状など特に限定されるものではない。ドット状のエンボスが折り目線を跨ぐ領域に、ピッチが5mm以上20mm以下の範囲内で複数施される場合や、線状のエンボスが折り目線とほぼ直交する方向へ寸法が5mm以上20mm以下、ピッチが5mm以上20mm以下の範囲内で複数設けられる場合が挙げられる。また、これらのスリット加工やエンボス加工は吸収材に施される場合のみならず、表面側シートや裏面側シートに施されていても良い。
【0037】
(5) 前記陰唇間パッドは、前記反身体側面に液難透過性の弾性シートを備えるものであり、前記圧力分散手段は、前記弾性シートに設けられているものである(1)記載の陰唇間パッド。
【0038】
(5)に係る陰唇間パッドは、圧力分散手段が設けられた液難透過性の弾性シートを備えたものであり、折り目線を跨ぐようにして弾性シートが設けられている。ここで、「弾性」とは、物体に外部から力を加えると変形し、その力を取り除けば直ぐに元に戻ろうとする性質を意味する。即ち、(5)に係る陰唇間パッドに設けられた弾性シートは、変形、復元し易い性質を有するものである。このため、(5)に係る陰唇間パッドでは、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、弾性シートを有する折り目線を跨ぐ領域は、容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0039】
弾性シートに弾性を付与する方法として、弾性素材を用いる方法が挙げられる。弾性シートに弾性素材を用いることにより、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に圧力が加わった場合に、折り目線を跨ぐ領域が膨らんで変形し易く、圧力の向きと交差する外側方向に圧力を容易に分散させることが可能となるのである。弾性素材としては、弾性を有する繊維の積層体やフィルム、空気のセルを有する発泡化材料が挙げられる。弾性を有する繊維としては、PE、PP、PET等の熱可塑性材料で構成され、各樹脂を単独若しくは芯鞘構造あるいはサイドバイサイド構造にした繊維が挙げられる。好ましくは、機械若しく熱等により2次倦縮が掛けられた繊維である。なお、着用感を考慮すると、繊維の太さは0.5dtex以上8.8dtex以下の範囲内が好ましく、繊維長は3mm以上64mm以下の範囲内に調整されたものが好ましく用いられる。これらの繊維の積層体は、繊維をカードで積層し、熱可塑性繊維の溶融によりボンディングした後、スルーエアー法で形成する方法により得ることができる。この方法により得られた不織布は、反発弾性力を有しているため好ましい。その他にも、一般的に利用されるポイントボンド、スパンボンド、WJや、連続フィラメントを紡糸し熱エンボスでボンディングするスパンボンド、スパンボンドにメルトブローを吹き付けボンディングしたSMSシート等も使用することができる。さらには、繊維積層後に表面にバインダーを塗付する事によりボンディングするケミカルボンドやエアレイド法も用いることができる。一方、弾性を有するフィルムとしては、弾性を有するPE、PP、更には高弾性を有するウレタン、ゴム等の樹脂をTダイやインフレで単一、複合、又は多層で押し出し成型して得られたフィルムが使用される。発泡化材料としては、弾性を有するPE、PP、更には高弾性を有するウレタン、ゴム等の樹脂を発泡化した材料が使用される。なお、以上述べた素材を単一で利用したり、接着材やエンボスで固定して多層化したり、あるいは、エンボス加工によって一定の方向に弾性や剛性を付与したものであってもよい。
【0040】
また、弾性シートに弾性を付与する別の方法として、弾性シートに複数の微小な凸部を設ける方法を挙げることができる。弾性シートに複数の微小な凸部を設けることにより、折り目線を跨ぐ領域においては、対抗して向かい合う弾性シート同士が接触できずに緩やかに湾曲し、弾性シート同士の間に空間が形成される。このため、前庭床から折り目線を跨ぐ領域に圧力が加わった際には、折り目線を跨ぐ領域が膨らんで変形し易く、圧力の向きと交差する外側方向に圧力を容易に分散させることが可能となるのである。具体的には、折り目線を跨ぐ領域の延べ短手方向の長さが0.5mm以上40mm以下の範囲内において、弾性シート同士が完全に接触せずに空間を形成することが好ましい。弾性シート同士が完全に接触しない部分は、更に好ましくは、折り目線を跨ぐ領域の延べ短手方向の長さが0.5mm以上30mm以下の範囲内である。また、複数の微小凸部は、折り目線を跨ぐ領域の延べ短手方向の長さが0.5mm以上40mm以下の範囲内に設けられているのが好ましい。さらには、微小凸部の高さは、0.05mm以上2mm以下の範囲内が好ましく、微小凸部の間隔は、0.3mm以上20mm以下の範囲内が好ましい。例えば、微小な凸形状の高さが0.2mmで間隔が1.5mm、千鳥状に配置された微小な凸部を複数有する低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体としたフィルムを用いることができる。このような複数の微小凸部が備えられていれば、弾性シートに用いる素材としては、上述した弾性素材に限られない。例えば、難透水性シートの材料である厚さ15〜60μmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、又は不織布、紙、及びこれらのラミネート材料などを用いることができる。無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことで得られる通気性フィルムであっても良い。また、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体として、10〜30%の開孔を有し、孔径が0.1〜0.6mm、目付15〜35g/mの範囲で調整した開孔フィルムなどを用いても良い。
【0041】
(6) 前記陰唇間パッドは、前記反身体側面に弾性を有するミニシート片が取り付けられているものであり、前記圧力分散手段は、前記ミニシート片に設けられているものである(1)記載の陰唇間パッド。
【0042】
(6)に係る陰唇間パッドは、圧力分散手段が設けられたミニシート片を反身体側面に備えており、折り目線を跨ぐようにして弾性を有するミニシート片が取り付けられている。即ち、(6)に係る陰唇間パッドは、変形、復元し易い性質を有するミニシート片を折り目線を跨ぐ領域に有している。従って、(6)に係る陰唇間パッドによれば、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、ミニシート片を有する折り目線を跨ぐ領域は、容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。なお、ミニシート片に弾性素材を用いることによって、ミニシート片に弾性を付与することが可能であり、具体的には、上述した弾性シートに用いられる弾性素材と同等のものが用いられる。
【0043】
(7) 前記ミニシート片は、当該ミニシート片の一方の面が全面に亘って前記反身体側面に接合されているものである(6)記載の陰唇間パッド。
【0044】
(7)に係る陰唇間パッドの折り目線を跨ぐようにして設けられた弾性を有するミニシート片は、一方の面が全面に亘って反身体側面に接合されたものである。従って、弾性を有するミニシート片の一方の面が全面に亘って、陰唇間パッドの折り目線を跨ぐ領域に当接しているため、折り目線を跨ぐ領域に十分な弾性を付与することができる。このような弾性を有するミニシート片を備えた(7)に係る陰唇間パッドによれば、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、ミニシート片を有する折り目線を跨ぐ領域は、容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0045】
(8) 前記ミニシート片は、前記陰唇間パッドが二つ折りの状態から広がることを規制するように前記折り目線を跨いで向かい合う前記反身体側面に対し、前記反身体側面と前記ミニシート片との間に空間が形成されるように接合されているものである(6)記載の陰唇間パッド。
【0046】
(8)に係る陰唇間パッドの折り目線を跨ぐようにして設けられた弾性を有するミニシート片は、向かい合う反身体側面を架橋するように接合されているものである。従って、弾性を有するミニシート片が対抗して向かい合う反身体側面同士を架橋しているため、両折り曲げ片は変形し難い一方で、折り目線を跨ぐ領域は容易に変形し易いものとなっている。このような弾性を有するミニシート片を備えた(8)に係る陰唇間パッドによれば、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域を押圧した際には、ミニシート片を有する折り目線を跨ぐ領域は、容易に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッドが前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。なお、(8)に係る陰唇間パッドでは、ミニシート片と反身体側面との間に空間が形成されるため、この空間を指挿入用に利用することもできる。指挿入用に利用するためには、形成される空間の内周縁は40mm以上であることが好ましい。
【0047】
(9) 前記長手方向の両側端は、着用者の動作に伴って陰唇間パッドに対して生じる圧力を低減できるように前記身体側面の向きに折り曲げがなされるものであり、前記長手方向の両側端には、前記折り曲げの軸となる可とう線が設けられているものである(1)から(8)いずれか記載の陰唇間パッド。
【0048】
(9)に係る陰唇間パッドの長手方向の両側端には、身体側面の向きに折り曲げることができるように可とう線が設けられている。通常、二つ折りの陰唇間パッドにおいては、陰唇間パッド長手方向の側端部は着用時に陰唇内に収容されずに露出しているため、係る部分が突出していたような場合には着用者の動作によって圧力を受け易い。これに対して、(9)に係る陰唇間パッドは、長手方向の両側端を身体側面の向きに折り曲げることによって、突出部分が無くなり、受ける圧力を低減することができる。従って、陰唇間パッドに対して外部から圧力が加えられた場合であっても着用者に使用感を感じさせることはほとんどない。さらには、長手方向の両側端部が身体側面の向きに折り曲げられるため、陰唇によりフィットし易く、経血の流出や陰唇間パッドの落下等を効果的に防止することもできる。
【0049】
なお、この可とう線を設ける方法としては、吸収材に線状の連続又は断続したパターンを形成するようにエンボス等で型押しする方法の他、吸収材に線状の連続又は断続したパターンを形成するようにカッター等で切断する方法や、剛性の異なる材料を吸収材にゾーニングして剛性の異なる領域を形成する方法等が挙げられる。また、経血の流出や陰唇間パッドの落下等をより効果的に防止するためには、折り曲げられる両側端部の大きさは、陰唇の外形及び脚ぐりまでの距離を考慮して、厚みは15mm以上50mm以下の範囲内が好ましく、より好ましくは25mm以上40mm以下の範囲内である。一方、幅は3mm以上30mm以下の範囲内が好ましく、より好ましくは5mm以上20mm以下の範囲内である。
【0050】
(10) 前記陰唇間パッドは、尿失禁用の陰唇間パッドである(1)から(9)いずれか記載の陰唇間パッド。
【0051】
(10)に係る陰唇間パッドによれば、尿失禁用の吸収パッドとして使用することができる。即ち、経血を排出する膣口と尿を排出する尿道口とはいずれも陰唇間に位置するものであるため、(10)に係る陰唇間パッドを陰唇間に挟み込んで使用した場合には、尿を吸収することができる。このように、(10)に係る陰唇間パッドによれば、尿を陰唇間、特に尿道口付近で吸収できるので、尿失禁、特に軽度の尿失禁に対して有効な吸収パッドを得ることができる。
【0052】
(11) 前記陰唇間パッドは、おりもの吸収用の陰唇間パッドである(1)から(10)いずれか記載の陰唇間パッド。
【0053】
(11)に係る陰唇間パッドによれば、陰唇間パッドをおりもの吸収用として使用することができる。即ち、(11)に係る陰唇間パッドは陰唇間に挟み込んで使用するものであることから、膣口からの経血以外の分泌物(おりもの)も吸収することができるので、そのための用途(おりもの吸収用)にも使用することができる。このように、(11)に係る陰唇間パッドによれば、おりものを吸収して着用者の不快感を軽減することができるため、生理時以外の着用者にとっても有効である。
【0054】
(12) (1)から(11)いずれか記載の陰唇間パッドが個別包装容器に封入され、密封された陰唇間パッド包装体。
【0055】
(12)に係る陰唇間パッド包装体は、個々の陰唇間パッドが個別包装容器内に封入されて実質的に密封され、空気が充填されたものである。このため、着用者が個別包装容器をバックに入れて携帯した場合などにおいて、個別包装容器に外圧が加わったとしても、空気によってその外圧を緩衝することができる。特に、折り目線を跨ぐ領域に対して横方向から二つ折りの向きに加わった外圧を緩衝できるため、折り目線を跨ぐ領域が尖形状になることが無く、緩やかに湾曲している状態を維持することができる。従って、(12)に係る陰唇間パッド包装体によれば、携帯中に外圧が加わったとしても潰れることが無く、折り目線を跨ぐ領域は、緩やかに湾曲している状態を維持することができるため、使用感をほとんど感じない陰唇間パッドを提供することができる。
【0056】
(12)に係る陰唇間パッド包装体に用いられる個別包装容器の体積は、少なくとも陰唇間パッドの体積より大きいものである。具体的には、個別包装容器の長さは、陰唇間パッドの長手方向の長さよりも80mmを超えない範囲で大きいことが好ましく、40mmを超えない範囲で大きいことが更に好ましい。また、個別包装容器の幅は、陰唇間パッドの短手方向の長さよりも80mmを超えない範囲で大きいことが好ましく、40mmを超えない範囲で大きいことが更に好ましい。個別包装容器の厚みは、陰唇間パッドの厚みよりも80mmを超えない範囲で大きいことが好ましく、40mmを超えない範囲で大きいことが更に好ましい。なお、個別包装容器内の空気の充填率は、5〜60%の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは10〜40%の範囲内である。このような大きさを有する個別包装容器は、一枚の非通気性シートによって形成することができる。具体的には、二つ折りされた陰唇間パッドを非通気性シートで包み込んだ後、包み込むことによって形成される非通気性シートが重なり合う領域に、非通気性シート同士を接合するシール部を設けることによって個別包装容器が形成される。なお、非通気性シート体同士が重なりあう領域の内、開封部とする領域については、開封性をより高めるために粘着力を有するテープが設けられていても良い。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、着用者の動作に伴い、外部から陰唇間パッドに対して圧力が加えられた場合であっても、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】着用中の本発明の第1実施形態に係る陰唇間パッド10を短手方向に切断したときの断面図である。
【図2】前記陰唇間パッド10の折り目線を跨ぐ領域に圧力が加わった場合の様子を説明するための図面である。
【図3】前記陰唇間パッド10を短手方向に切断したときの断面斜視図である。
【図4】前記陰唇間パッド10を開いたときの斜視図である。
【図5】前記陰唇間パッド10を二つ折りにしたときの斜視図である。
【図6】図5における陰唇間パッド10をX1−X2方向に切断したときの断面図である。
【図7】図5における陰唇間パッド10をX3−X4方向に切断したときの断面図である。
【図8】繊維集合体の開繊方法を説明するための製造工程図である。
【図9】第1実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10aを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図10】第2実施形態に係る陰唇間パッド10bを開いたときの斜視図である。
【図11】前記陰唇間パッド10bの吸収材12bの斜視図である。
【図12】前記陰唇間パッド10bを二つ折りにしたときの斜視図である。
【図13】図12における陰唇間パッド10bをX5−X6方向に切断したときの断面図である。
【図14】第3実施形態に係る陰唇間パッド10cを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図15】第3実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10dを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図16】第4実施形態に係る陰唇間パッド10eを開いた状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図17】第4実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10fを開いた状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図18】第4実施形態の変形例2に係る陰唇間パッド10gを開いた状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図19】第5実施形態に係る陰唇間パッド10hの吸収材12hの斜視図である。
【図20】第6実施形態に係る陰唇間パッド10iを開いた状態で反身体側面側から見た平面図である。
【図21】前記陰唇間パッド10iを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図22】第6実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10jを二つ折りにした状態で反身体側面から見た平面図である。
【図23】前記陰唇間パッド10jを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図24】第6実施形態の変形例2に係る陰唇間パッド10kを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。
【図25】第6実施形態の変形例3に係る陰唇間パッド10mを二つ折りにした状態で反身体側面から見た平面図である。
【図26】図25における陰唇間パッド10mをX7−X8方向に切断したときの断面図である。
【図27】図25における陰唇間パッド10mをX9−X10方向に切断したときの断面図である。
【図28】陰唇間パッド1を個別包装容器に封入して密封した陰唇間パッド包装体30の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1、10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j、10k、10m 陰唇間パッド
2 折り目線を跨ぐ領域
11 圧力分散手段
12、12b、12h 吸収材
14 表面側シート
15 裏面側シート
16 可とう線
17 剛性素材
18 凸部
25 接合部
30 陰唇間パッド包装体
31 シール
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通する構成、作用、及び効果の説明については省略する。
【0061】
<第1実施形態>
[陰唇間パッドの全体構成]
図4は、本発明の第1実施形態に係る陰唇間パッド10を開いたときの斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係る陰唇間パッド10は実質的に縦長の形状を成しており、長手方向と短手方向とを有する形状を成している。陰唇間パッド10は、表面側シート14と、裏面側シート15とを有しており、これら表面側シート14と裏面側シート15との間には吸収材12が配置されている。表面側シート14は、着用者の体液を透過する液透過性のものであり、裏面側シート15は、着用者の体液を実質的に透過しない液難透過性のものである。また、吸収材12の略中央部分には、圧力分散手段11が設けられている。なお、本実施形態に係る陰唇間パッド10の外形寸法は、陰唇の外形及び陰唇とショーツとの間に形成される空間の大きさを考慮して、長手方向の長さはおよそ100mmであり、両折り曲げ片の幅はおよそ30mmである。
【0062】
また、図5に示すように、本実施形態に係る陰唇間パッド10は、着用時には、長手方向に延びる折り目線で、裏面側シート15同士が向かい合うように二つに折り曲げて使用されるタイプのものである。また、この二つ折りにされた陰唇間パッド10には、長手方向に延びる折り目線に沿った領域の吸収材12に圧力分散手段11が設けられており、この折り目線に沿った領域の少なくとも一部が前庭床に当接するように陰唇間に挟持されるものである。
【0063】
[表面側シート]
表面側シート14は液透過性のものが用いられ、具体的には、天然コットン5%以上30%以下、レーヨン又はアセテートレーヨンを70%以上95%以下の比率で混合した繊維を、目付が20g/m以上50g/m以下の範囲内で調製した後、水流交絡により繊維同士を絡合させて乾燥し、厚みが0.3mm以上1.0mm以下の範囲内で調製されたスパンレース不織布が用いられる。使用する糸質は、天然コットンであれば繊維長15mm以上60mm以下の範囲内、レーヨン又はアセテートレーヨンであれば25mm以上51mm以下の範囲内で、繊度1.1dtex以上6.6dtex以下の範囲内のものである。
【0064】
[裏面側シート]
一般的に裏面側シートとしては、吸収材12に吸収、保持された経血が陰唇間パッド10の外部へ漏れ出すことを防止できるものが使用される。また、透湿性素材とすることにより、着用時のムレを低減させることができ、着用時における不快感を低減させることが可能となる。具体的には、裏面側シート15としては、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことにより得られる通気フィルム、10%以上30%以下の開孔を有し孔径が0.1mm以上0.6mm以下の範囲で毛細管を吸収材12に向かうように配置することにより得られる通気性液遮断シートが使用されている。なお、装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、例えば、密度が0.90g/cm以上0.925g/cm以下の範囲の低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした、目付15g/m以上30g/m以下の範囲から得られるフィルムを使用した形態が変形例として挙げられる。
【0065】
[吸収材]
一般的に陰唇間パッドに備えられる吸収材としては、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、繊維状高分子吸収体、合成繊維を単独又はこれらを混合したものを使用することができる。また、これらの材料をシート状若しくは粉状に加工したものを用いることもできる。吸収材としては、体液を吸収して保持することが可能であれば問題は無いが、嵩高であり、型崩れしにくく、身体に対して化学的刺激が少ないものであることが好ましい。具体的には、吸収材12としては、繊度1.1dtex以上4.4dtex以下の範囲から選択されるレーヨン又はアセテートを60%以上90%以下、繊維状高分子吸収体10%以上40%以下の混合比で積層した繊維を、ニードリングにより絡ませてシート化し、目付50g/m以上250g/m以下、2mm以上5mm以下の嵩を有する不織布シートが使用される。なお、吸収材12を陰唇間パッド10に組み込む際には、必要に応じて嵩を変更したり、重ねたり、折り重ねたりして、適宜調整される。
【0066】
[圧力分散手段]
図6は、図5における陰唇間パッド10をX1−X2方向に切断したときの断面図である。また、図7は、図5における陰唇間パッド10をX3−X4方向に切断したときの断面図である。これら図6、図7に示すように、圧力分散手段11は、折り目線を跨ぐようにして吸収材12の略中央部に設けられている。このように、吸収材12の全範囲に亘って圧力分散手段11を設ける必要性はなく、略中央部の狭い領域に設けるだけでも十分に効果を発揮することができる。
【0067】
この圧力分散手段11は、折り目線に交差して配向された繊維を有する繊維集合体で構成されたものである。具体的には、1.1dtex以上6.6dtex以下の範囲内から選択されるレーヨン又はアセテートレーヨンを60%以上95%以下、天然コットンを5%以上40%以下の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化した目付が50g/m以上500g/m以下で、1mm以上20mm以下の嵩を有する不織布シートが用いられている。また、上記繊維をエアレイド法、メルトプローン法、スパンレース法、抄紙法等によりシート化したものや、これらシート化されたものにドット状、格子状などのエンボス加工を施したものを圧力分散手段11として用いたものが変形例として挙げられる。
【0068】
なお、折り目線に交差して配向する繊維を設けるための方法としては、繊維をランダムに配向させる方法が用いられている。以下、繊維長の長い繊維集合体の繊維をランダムに配向させる方法について、図8を用いて説明する。図8は圧力分散手段を構成する繊維集合体の開繊方法を説明する製造工程図であって、繊維集合体シート102を巻きつけた巻きロール101より繊維集合体シート102を一対のロール103で開繊装置100Aに搬送する。この開繊装置100Aは波状の刃が多条に配列されたガーネット式の開繊ロール104を有しており、この開繊ロール104に通すことによって開繊される。この際、開繊性を高めるために、多条に配列され隣り合う波状の刃同士の先端が互い違いになるように千鳥状に設けた複数のロール105、105’を開繊ロール104と逆回転の方向に廻るように組み合わせて通過させるのがより好ましい。なお、この開繊方法は、ガーネット式に限定されるものではなく、ハンマーミル式などであってもよい。
【0069】
このようにして開繊された繊維106は、メッシュ状搬送用ベルト108の内面に設けられたサクション吸引装置107からサクション吸引することによって、搬送用ベルト108上に繊維106が集合体となり積層される。この時、開繊ロール104の波状の刃から繊維が離れると同時にサクション吸引によって開繊された繊維106に吸引速度が与えられる。サクション吸引圧力が1500Pa以上15000Pa以下の範囲内であると、開繊された繊維106には4m/sec以上200m/sec以下(240m/min以上1200m/min以下)の捕集速度が与えられるので、搬送用ベルト108の搬送速度20m/min以上200m/min以下よりも、開繊された繊維106に与えられた捕集速度の方が相対的に高くなり、繊維配向がMD方向に向かい難くなる。ここで、MD方向とは、搬送用ベルト108の進行方向、すなわち繊維集合体109の進行方向である。
【0070】
このように、繊維長の長い繊維集合体109の繊維配向をランダムに配向させるためには、製造工程中において、開繊した繊維106を搬送ベルトの上に積層する際に、開繊した直後から繊維106にかける捕集速度を、搬送用ベルト108の搬送速度よりも相対的に高めることによって可能となる。開繊した繊維106に与える捕集速度は、主に、メッシュ状にした搬送用ベルト108の内面に設けられたサクション吸引装置107のサクション吸引力によって決定される。繊維にかける捕集速度を搬送ベルトの搬送速度よりも相対的に高めるためには、搬送速度が20m/min以上200m/min以下の範囲内である時、積層された繊維集合体109とメッシュ状の搬送ベルトを介したサクション吸引圧力を、1500Pa以上15000Pa以下の範囲内から選ぶことによって可能となる。サクション吸引圧力が1500Pa未満であると、搬送速度によって繊維がMDへ向き易くなってしまい、15000Paを超えると、繊維106が搬送ベルト用のメッシュに絡みつきすぎ、後の工程に繊維集合体109を受け渡し難くなってしまうため好ましくない。
【0071】
[作用、効果]
第1実施形態に係る陰唇間パッド10では、折り目線を跨いで吸収材12に圧力分散手段11が設けられているため、着用者が椅子に座るなどして、前庭床が強い圧力で陰唇間パッド10の折り目線を跨ぐ領域2を上から押圧した際には、図1及び図2に示すように、反発剛性を有する折り目線を跨ぐ領域2は容易に左右に膨らんで変形し、その圧力の向きと交差する外側方向に圧力を分散させることができる。このため、圧力に反発して陰唇間パッド10が前庭床を押圧することはほとんど無く、着用者は使用感をほとんど感じず、快適な日常生活を送ることができる。
【0072】
[変形例1]
第1実施形態の変形例1は、第1実施形態に係る陰唇間パッド10の折り目線を跨がない領域における吸収材12の一部に、剛性素材17が用いられていることを特徴とするものである。図9は、第1実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10aを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。具体的には、折り目線を跨がない領域における吸収材12の一部に、剛性素材17として繊維長が8mm以下のパルプを目付け100g/mで積層したものが用いられ、圧力分散手段11には繊維長が51mmで繊度が3.3dtexのレーヨン85%と天然コットン15%とを混合したものを、折り目線に交差するように繊維配向させて180g/m積層したものが用いられている。なお、この変形例1における折り目線は長手方向中心線上であり、折り目線を跨ぐ領域2は、長手方向中心線から短手方向へ5mm以内の範囲、即ち、長手方向中心線を跨いだ10mm以内の範囲である。さらに、吸収材12は、ドット状のエンボスパターンによりエンボス面積率1.8%でエンボス加工を施したものである。このような変形例1に係る陰唇間パッド10aによれば、前庭床が強い圧力で折り目線を跨ぐ領域2に接触した際には、剛性素材17を有する折り目線を跨がない領域は変形し難くなるため、折り目線を跨ぐ領域2がより一層容易に膨らんで変形し易くなり、強い反発力を前庭床に与えることが無く、着用者はほとんど使用感を感じることが無い。なお、剛性素材17を用いる代わりに、吸収材12の目付を高めたり、密度を高くしたり、あるいは接着剤を添加することによって剛性を付与した形態を採用することもできる。
【0073】
[変形例2]
第1実施形態の変形例2は、第1実施形態に係る陰唇間パッド10に設けられた圧力分散手段11として、スリット加工が施されたものである。具体的には、スリットの寸法は1mm以上20mm以下の範囲内、ピッチは20mm以下の範囲内であり、スリットパターンは交差しているものである。スリットの形状は、直線状のものであり、これらのスリットは、厚み方向に貫通したものである。この第1実施形態の変形例2によれば、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0074】
[変形例3]
第1実施形態の変形例3は、第1実施形態に係る陰唇間パッド10に設けられた圧力分散手段11として、エンボス加工が施されたものである。具体的には、ドット状のエンボスが折り目線を跨ぐ領域に、ピッチが5mm以上20mm以下の範囲内で複数施されたものである。この第1実施形態の変形例3によれば、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0075】
[変形例4]
第1実施形態の変形例4は、第1実施形態に係る陰唇間パッド10の折り目線を跨ぐ領域2における表面側シート14に、圧力分散手段11が設けられたものである。この変形例4における圧力分散手段11は、折り目線に交差して配向された繊維を有する繊維集合体で構成されたものである。具体的には、表面側シート14に用いられる繊維を折り目線に交差して配向させた繊維集合体が圧力分散手段11として用いられている。この変形例4のように、表面側シートに圧力分散手段11を設けることによっても、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0076】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る陰唇間パッド10bの斜視図である。この図10に示すように、第2実施形態に係る陰唇間パッド10bは、第1実施形態に係る陰唇間パッド10の長手方向の両側端に可とう線16が設けられたものである。このため、図12に示すように、この陰唇間パッド10bは二つ折りにされたうえ、長手方向の両側端が可とう線16を折り曲げの軸として身体側面の向きに折り曲げられた状態で陰唇間に挟持される構造となっている。
【0077】
[可とう線]
図11は、第2実施形態に係る陰唇間パッド10bの吸収材12bの斜視図である。図11に示すように、可とう線16は吸収材12bの両側端に設けられており、より具体的には、吸収材12bの両側縁からおよそ10mm離れた位置に、吸収材12bの長手方向中心線に略平行に設けられている。この可とう線16は、吸収材12bの両側端に線状の連続したパターンのエンボス加工を施すことにより形成されたものである。
【0078】
[作用、効果]
図13は図12における陰唇間パッド10bをX5−X6の方向に切断したときの断面図である。図13に示すように、陰唇間パッド10bは、折り目線を跨ぐようにして圧力分散手段11が設けられているため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、長手方向の両側端は身体側面の向きに折り曲げられており、陰唇間パッドの側端が反身体側に突出していないため、着用者の動作に伴って陰唇間パッド10bが受ける圧力を低減することができる。従って、陰唇間パッド10bは、着用者の動作に伴って前庭床から受けた圧力を分散できるうえに、そもそも前庭床から圧力を受けにくい構造となっているため、着用者が使用感を感じることはほとんど無い。さらには、陰唇によりフィットし易い形状であり、経血の流出や陰唇間パッド10bの落下等を効果的に防止することもできる。
【0079】
<第3実施形態>
第1実施形態に係る陰唇間パッド10及び第2実施形態に係る陰唇間パッド10bは、それぞれの吸収材12及び吸収材12bに圧力分散手段11が設けられたものである。これに対して、第3実施形態に係る陰唇間パッド10cは、圧力分散手段11を吸収材12にではなく、反身体側面に備えられた弾性シートに設けられたものである。図14は、陰唇間パッド10cを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。図14に示すように、陰唇間パッド10cでは、反身体側面の全面に亘って弾性シートが設けられており、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、弾性シートは折り目線を跨ぐ領域に設けられていればよいため、折り目線を跨ぐ領域にのみ設けられている形態を採用することもできる。
【0080】
弾性シートとしては、PE、PP、PET等の弾性を有する熱可塑性材料で構成され、各樹脂を単独若しくは芯鞘構造あるいはサイドバイサイド構造にした繊維に2次倦縮を掛けたものが用いられている。また、繊維の太さは0.5dtex以上8.8dtex以下の範囲内であり、繊維長は3mm以上64mm以下の範囲内に調整されたものである。これらの繊維を積層し、熱可塑性繊維の溶融によりボンディングした後、スルーエアー法で形成する方法により、弾性シートが形成される。
【0081】
[変形例1]
第3実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10dは、折り目線を跨ぐ領域における反身体側面に、圧力分散手段11として、複数の微小な凸部を設けた弾性シートを備えたものである。図15は、第3実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10dを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。この変形例1では、凸部は反身体側面の全面に亘って設けられたものであるが、折り目線を跨ぐ領域2の延べ短手方向の長さが0.5mm以上30mm以下の範囲内に設けられていれば良い。また、微小な凸形状の高さは0.2mm、間隔は1.5mmであり、千鳥状に配置された微小な凸部を複数有する低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体としたフィルムが用いられている。このように、圧力分散手段11として、複数の微小な凸部を設けた弾性シートを備えた第3実施形態の変形例1によっても、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0082】
<第4実施形態>
図16は、第4実施形態に係る陰唇間パッド10eを開いた状態で短手方向に切断したときの断面図である。この図16に示すように、第4実施形態に係る陰唇間パッド10eは、圧力分散手段11として、弾性を有するシート部材が吸収材12と表面側シート14との間に配置されたものである。また、圧力分散手段11の配置を変更した変形例として、裏面側シート15と吸収材12との間に配置した陰唇間パッド10f(変形例1)や、吸収材12中にサンドイッチする形で配置した陰唇間パッド10g(変形例2)が挙げられる。これら変形例1に係る陰唇間パッド10f及び変形例2に係る陰唇間パッド10gを、開いた状態で短手方向に切断したときの断面図をそれぞれ図17及び図18に示す。弾性を有するシート部材としては、弾性素材を利用した不織布が用いられている。より具体的には、弾性を有するPE繊維を積層し、熱可塑性繊維の溶融によりボンディングした後、スルーエアー法で形成する方法により得られた不織布が使用されている。このように、弾性を有するシート部材を備えたタイプのものであっても、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0083】
<第5実施形態>
図19は、第5実施形態に係る陰唇間パッド10hの吸収材12hの斜視図である。図19に示すように、この第5実施形態に係る陰唇間パッド10hの吸収材12hは、折り目線を跨ぐ領域に圧力分散手段11として、エンボス加工が施されたものである。このエンボス加工は、折り目線を跨ぐようにして、吸収材12hの短手方向の中心線と略平行で直線状に設けられている。また、エンボス加工は、フラットパターンのエンボスであり、フラットなエンボスパターンを施した2つのロール間に吸収材を通過させることによって形成されたものである。このように、圧力分散手段11として、エンボス加工を施した第5実施形態においても、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0084】
<第6実施形態>
図20は、第6実施形態に係る陰唇間パッド10iを開いた状態で反身体側面側から見た平面図である。陰唇間パッド10iの反身体側面の略中央部分には、圧力分散手段11としてミニシート片が設けられている。このミニシート片は、その一方の面が全面に亘って裏面側シート15に接合されており、二つ折りにされたときに折り目線を跨ぐようにして裏面側シートに接合しているものである。図21は、二つ折りにされた陰唇間パッド10iを短手方向に切断したときの断面図である。ミニシート片は、弾性を有するものであり、弾性素材を利用した不織布が用いられている。より具体的には、弾性を有するPE繊維を積層し、熱可塑性繊維の溶融によりボンディングした後、スルーエアー法で形成する方法により得られた不織布が使用されている。このように、折り目線を跨ぐ領域における反身体側面にミニシート片を取り付けた第6実施形態に係る陰唇間nパッド10iによれば、第1実施形態に係る効果と同等の効果を得ることができる。
【0085】
[変形例1、変形例2]
図22は、第6実施形態の変形例1に係る陰唇間パッド10jを二つ折りにした状態で反身体側面から見た平面図である。図22に示すように、この変形例1では、ミニシート片は、ミニシート片と反身体側面との間に空間が形成されるように、折り目線を跨いで向かい合う反身体側面に接合されている。この陰唇間パッド10jを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図が図23である。図23に示すように、変形例1に係る陰唇間パッド10jのミニシート片は、図23において、略逆V字形状を成している。これに対して、略逆W字形状を成すものが変形例2に係る陰唇間パッド10kであり、図24がこの変形例2に係る陰唇間パッド10kを二つ折りにした状態で短手方向に切断したときの断面図である。これらミニシート片が設けられた変形例1に係る陰唇間パッド10j及び変形例2に係る陰唇間パッド10kによれば、第1実施形態に係る効果と同様の効果を得ることができる。また、ミニシート片と反身体側面との間に形成される空間を、着用者が指を挿入する指挿入用に利用することもできる。なお、この陰唇間パッド10j及び10kは、二つ折りにした後、ミニシート片を向かい合う反身体側面に接合することによって製造される。
【0086】
[変形例3]
図25は、第6実施形態の変形例3に係る陰唇間パッド10mを二つ折りにした状態で反身体側面から見た平面図である。この陰唇間パッド10mでは、ミニシート片が、長手方向の一方の側縁から他方の側縁に跨るようにして、且つ、長手方向の一方側に偏倚して設けられている。また、このミニシート片は、長手方向の両側端で反身体側面と接合されている他、偏倚して設けられている長手方向の一方側の端部において、反身体側面と接合されている。図25における陰唇間パッド10mを、X7−X8の方向に切断したときの断面図が図26であり、X9−X10の方向に切断したときの断面図が図27である。このように、変形例3に係る陰唇間パッド10mは、反身体側面が広範囲に亘ってミニシート片によって覆われており、そもそも外部からの圧力を受けにくい構造となっているため、第1実施形態に係る効果をより効果的に発揮することができる。また、ミニシート片と反身体側面との間に形成される空間は指挿入用に利用することができ、一方側の端部が反身体側面と接合されているため、ポケット状の構造となっている。従って、指の挿入が一定の範囲内に規制されるため、着用の際に指で陰唇内を傷付けてしまうといったトラブルを回避できる。
【0087】
<陰唇間パッド包装体30>
図28は、陰唇間パッド1を個別包装容器に封入して密封した陰唇間パッド包装体30の平面図である。この陰唇間パッド包装体30は、陰唇間パッド1を一枚の非通気性シートで包み込んだ後、包み込むことによって形成される非通気性シートが重なり合う領域に、非通気性シート同士を接合するシール31を設けることによって形成されたものである。より具体的には、陰唇間パッド1は陰唇間パッド包装体30内では折り曲げ線で二つ折りの状態で収まっており、その状態での陰唇間パッド1の長手方向の長さは110mm、短手方向の長さは35mm、厚みは7mmであり、陰唇間パッド包装体30の長手方向の長さは135mm、短手方向の長さは35mm、厚みは8mmである。また、空気の充填率は30%である。このような陰唇間パッド包装体30によれば、携帯中に外圧が加わったとしても潰れることが無く、折り目線を跨ぐ領域2は、緩やかに湾曲している状態を維持することができるため、着用者が使用感をほとんど感じない陰唇間パッド1を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用状態で身体側に面する身体側面と当該身体側面の反対側に面する反身体側面とを有し、長手方向と短手方向とを有する実質的に縦長の形状の陰唇間パッドであって、
着用時には、前記短手方向において前記反身体側面同士が向かい合うように二つ折りがなされており、前記二つ折りの折り軸である折り目線に沿った部分の少なくとも一部が陰唇内の前庭床に当接するように前記陰唇間に挟持されるものであり、
前記折り目線を跨ぐ領域には、着用者の動作に伴って前記陰唇間パッドに対して生じる圧力に反発して、前記圧力が前記前庭床にそのまま伝導することを防止する圧力分散手段を備えているものである陰唇間パッド。
【請求項2】
前記陰唇間パッドは、前記折り目線を跨ぐ領域に繊維集合体を備えるものであり、
前記圧力分散手段は、前記圧力に対する反発性を制御するために前記折り目線に交差して配向された繊維を有するものである請求項1記載の陰唇間パッド。
【請求項3】
前記圧力分散手段は、前記折り目線を跨ぐ領域に施されたスリットを有するものである請求項1又は2記載の陰唇間パッド。
【請求項4】
前記圧力分散手段は、前記折り目線を跨ぐ領域に施されたエンボスパターンを有するものである請求項1又は2記載の陰唇間パッド。
【請求項5】
前記陰唇間パッドは、前記反身体側面に液難透過性の弾性シートを備えるものであり、
前記圧力分散手段は、前記弾性シートに設けられているものである請求項1記載の陰唇間パッド。
【請求項6】
前記陰唇間パッドは、前記反身体側面に弾性を有するミニシート片が取り付けられているものであり、
前記圧力分散手段は、前記ミニシート片に設けられているものである請求項1記載の陰唇間パッド。
【請求項7】
前記ミニシート片は、当該ミニシート片の一方の面が全面に亘って前記反身体側面に接合されているものである請求項6記載の陰唇間パッド。
【請求項8】
前記ミニシート片は、前記陰唇間パッドが二つ折りの状態から広がることを規制するように前記折り目線を跨いで向かい合う前記反身体側面に対し、前記反身体側面と前記ミニシート片との間に空間が形成されるように接合されているものである請求項6記載の陰唇間パッド。
【請求項9】
前記長手方向の両側端は、着用者の動作に伴って陰唇間パッドに対して生じる圧力を低減できるように前記身体側面の向きに折り曲げがなされるものであり、
前記長手方向の両側端には、前記折り曲げの軸となる可とう線が設けられているものである請求項1から8いずれか記載の陰唇間パッド。
【請求項10】
前記陰唇間パッドは、尿失禁用の陰唇間パッドである請求項1から9いずれか記載の陰唇間パッド。
【請求項11】
前記陰唇間パッドは、おりもの吸収用の陰唇間パッドである請求項1から10いずれか記載の陰唇間パッド。
【請求項12】
請求項1から11いずれか記載の陰唇間パッドが個別包装容器に封入され、密封された陰唇間パッド包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【国際公開番号】WO2005/055904
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516140(P2005−516140)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018278
【国際出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】