説明

陽イオン除去用材料

【課題】高効率で耐薬品性、耐熱性に優れた陽イオン除去用材料を提供する。
【解決手段】繊維径20μm以下のナイロン系繊維が含有された繊維材料もしくはその複合体に、陽イオン交換能を有する機能性官能基が導入され、イオン交換容量が0.5meq/g以上であることを特徴とする、陽イオン除去用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中若しくは油中に存在する微量の陽イオンを高速でしかも効率良く除去する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
液中から陽イオンを除去する材料には、すでによく知られているとおりイオン交換樹脂、平膜、中空糸膜、不織布、繊維などがある。
陽イオンを除去するためのフィルター製品として、吸着基を基材に重合させた材料が開発され、浄水器、エアーフィルター、純水製造用イオン交換フィルター等に用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。また、フィルター材として、機能性官能基を導入されたポリエチレン材料(例えば、特許文献3、4、5参照)が開示されている。
官能基の導入しやすさの点から、従来提案されたフィルター材の殆どがポリエチレン材料である。しかしポリエチレン材料は融点や耐薬品性(特に耐アルカリ性、耐油性)などの点でフィルター材料に求められる性能を満たすことが困難である。さらに、ポリエチレンが疎水性であるため、フィルターとして水中で使用する際、圧損が高くなり流量を制限されるというフィルター性能上の問題、および、官能基導入の際、モノマーとの接触を向上させるためメタノールなどの有機溶媒を介在させなければならず工程中に有機溶媒の使用頻度が多くなるという環境面の問題を有する。
【0003】
ナイロンは、親水性の素材である上に耐熱性や耐薬品性が優れているのでフィルター用途には有望な素材である。しかし、その高分子構造上分子中にアミド基、アミノ基といった+のイオン性(カチオン性)官能基を有しているため、アニオンを吸着しやすいが同イオン性となるカチオンは吸着しにくい素材である。陽イオンを除去できるフィルター材の基材にナイロンの開示が有る例としては、カチオン交換樹脂微粒子をセルロース、ナイロン等の基材繊維内に分散させた例(特許文献6)があるが、これはナイロン自体にイオン交換基を導入させたものではないので、イオン交換性能と物理性能はイオン交換樹脂の性能に依存し、ナイロンの特性を反映させたものではない。また、多芯海島型複合繊維を製糸後、海成分にイオン交換基導入し島成分を除去する方法において基材としてナイロンが使用できるとの記載がある(特許文献7)が、海島型複合繊維であるために繊維径が大きく、イオン交換能力が不十分であった。
【0004】
このように、陽イオン交換能力に優れ、フィルターとして必要な親水性、耐熱性、耐薬品性等に優れる陽イオン除去用材料はいまだ得られていない。
【特許文献1】特許第2772010号 公報
【特許文献2】特許第3602640号 公報
【特許文献3】特開平11−279945号公報
【特許文献4】特開2005−349241号公報
【特許文献5】特開2003−251118号公報
【特許文献6】特許第3765060号公報
【特許文献7】特開平02−228332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、従来あるイオン交換膜やイオン交換樹脂よりも圧損が低く、大流量処理が可能な陽イオン除去用材料を提供することと、従来のイオン交換材料よりも加工性が良好で耐油性、耐アルカリ性、耐熱性などが優れた陽イオン除去用材料を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
(1)繊維径20μm以下のナイロン系繊維が含有された繊維材料もしくはその複合体に、陽イオン交換能を有する機能性官能基が導入され、イオン交換容量が0.5meq/g以上であることを特徴とする、陽イオン除去用材料。
(2)陽イオン交換能を有する機能性官能基が放射線グラフト重合法により導入されていることを特徴とする、上記(1)記載の陽イオン除去用材料。
(3)放射線グラフト重合法により機能性官能基とともにジビニル系モノマーが導入されることを特徴とする上記(2)記載の陽イオン除去用材料。
(4)ナイロン系繊維が含有された繊維材料が、不織布、織布、編布のいずれか、又はそれらの複合体あるいは成型加工品であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の陽イオン除去用材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の陽イオン除去用材料は、特定の細繊度ナイロンに陽イオン交換能を有する官能基を導入させたことにより、溶液中の陽イオンを効率的に吸着除去することができる。
更に、放射線グラフト重合によりモノマーの残渣や開始剤の使用を減少させ効率的に官能基の導入を行うことができる。
本発明の陽イオン除去用材料はナイロン系繊維の親水性を保持したまま官能基が導入されたものであるため、フィルターとして使用する場合圧損が低く流量を大きくすることができる。また、耐熱性や有機溶媒、油、燃料油に対する耐薬品性が要求される用途に適用可能な材料として利用することが出来る。
本発明の陽イオン除去用材料は、ナイロン系繊維の柔軟性を保持したまま官能基が導入されたものであるため、カット性がよく、プリーツ加工、ロール加工など、現状の織布又は不織布が成型加工される様々な用途に適用可能な材料として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の陽イオン除去用材料は、ナイロン系繊維からなる繊維材料に陽イオンに対してイオン交換能を有する機能性官能基を導入して形成したことを特徴とするものである。ここで、「ナイロン」とはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などを含む。
本発明の陽イオン除去用材料に用いられるナイロン系繊維の繊維径は、処理液との接触効率を高くするため、比表面積が大きい、すなわち繊維径が小さいことが必要とされ、繊維径が20μm以下であることを特徴とする。繊維径が小さいほど陽イオン除去性能は優れるが、機能性官能基の導入しやすさ、および取り扱い性の点から0.1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜18μm、さらに好ましくは0.7〜9μm、特に好ましくは0.8〜5μmである。
【0009】
「ナイロン系繊維からなる繊維材料」としては、前記ナイロンを主構成要素とする繊維が含有された不織布、織布、編布又はそれらの複合体あるいは成型加工品等が挙げられる。このような繊維材料であれば、被処理液の通過量を大きくすることにより、単位時間当たりの処理量を増大させることが可能であるため好ましい。
ここでいう不織布とは乾式法、湿式法いずれの方法で作られたものも含むが、フィルター用途としては接着剤を使用しないスパンレース法やスパンボンド法、メルトブロー法で作られたものが好ましい。さらに、繊維脱落のない長繊維からなるスパンボンド法、メルトブロー法で作られたものがより好ましく、繊維径の小さい不織布を製造できるメルトブロー法が特に好ましい。織布、編布は織機、編み機を特に限定するものではない、また、糸形態はフィラメント糸、スパン糸どちらでもよい。また、織組織、編み組織も特に限定するものではない。
【0010】
ここでいう複合体とは不織布同士、織布同士、編布同士の積層体、またはそれらのいずれか2種以上の積層体をいう。また、成型加工品とは不織布、織布、編布又はそれらの複合体をロール状に巻いたもの、プリーツに成型しエレメント形態にしたもの、スリットしカラムに詰めた物などをいう。
フィルター用途として使用する場合、繊維と捕捉物との接触確率が高いものほど捕捉効果もしくは吸着効果が高い。この点から本発明における繊維材料としては、繊維が縦横に規則正しく並んでいる織布、編み布よりも3次元的にランダムに繊維が配されている不織布、または不織布と織布、編み布との複合体あるいは成型加工品が好ましい。
【0011】
本発明に用いられる繊維材料の複合体としては、陽イオンの吸着効果を高める観点から目付け10〜100g/m2、厚さ0.1〜1.0mmであることが好ましく、より好ましくは目付け10〜50g/m2、厚さ0.1〜0.5mmである。
上記不織布、複合体はナイロン系繊維だけで構成されても良く、他繊維が混合されても良い。他の繊維としては、天然繊維、再生繊維、無機繊維、合成繊維などが挙げられる。天然繊維としては綿、麻、木材などのセルロース繊維、再生繊維としては、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。無機繊維としてはガラス繊維、炭素繊維が挙げられる。合成繊維としてはポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリケトン繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、ポリイミド繊維、テフロン繊維等が挙げられる。また、他の繊維として1種類、あるいは複数種類を組み合わせて混合することができる。ナイロン系繊維以外の混合比率は30%以下が好ましい。陽イオン除去用材料に吸着された陽イオンは酸によって溶離することができ、耐酸性に優れる材料であれば繰り返し使用することができる。この点からナイロン系繊維以外の繊維が耐酸性を有することが好ましく、ナイロン系繊維だけで構成されることがより好ましい。
【0012】
本発明の陽イオン除去用材料は、上述の繊維材料もしくはその複合体に、陽イオン交換能を有する機能性官能基が導入されていることを特徴とする。陽イオン交換能を有する機能性官能基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等が挙げられ、スルホン酸基が好ましい。また、導入されているとは、繊維材料と化学的に結合している状態、バインダー等で繊維材料上に固定された状態等を示す。イオン交換能を発現させるためには、繊維材料の表面近傍に化学的に結合させることが好ましい。
本発明の陽イオン除去用材料は、イオン交換能の指標であるイオン交換容量が0.5meq/g以上であることを特徴とする。0.5meq/g以上であれば、イオン交換能に優れる。さらに1.0meq/g以上が好ましく、1.5meq/g以上が特に好ましい。
【0013】
このような高いイオン交換能を発現させるためには、機能性官能基の導入量が0.5mmol/g以上であることが好ましい。特に好ましくは1.5mmol/g以上である。
ここで機能性官能基導入量は、共重合であれば共重合率、後処理による導入であれば処理による重量増加量から、基材重量当たりの導入された官能基のモル数として算出される。
さらに機能性官能基が繊維材料の表面近傍に多く存在すること、および、イオン交換の障害となるバインダー等を少なくするか、または存在させないこと等が重要である。
機能性官能基を繊維材料に導入する方法としては、繊維の基材となる重合体に共重合させる方法や、繊維材料を機能性官能基の基材化合物とバインダーが含有された加工液に浸漬させ固着させるディップ−ニップ法でも良いが、高いイオン交換能を発現させるためには、繊維材料表面に機能性官能基を化学的に結合させることが好ましく、レドックス重合触媒等の触媒を使用する方法、放射線照射を行なう方法などが好ましい。本発明では放射線グラフト重合法によって機能性官能基を導入されたナイロン系繊維を含有する繊維材料が、機能性官能基導入後の触媒による汚染を生じさせないという観点等から、特に最適であることを見出した。
【0014】
かかる方法としては、予め基材に放射線を照射してラジカルを形成した後、重合性単量体(モノマー)を接触させる前照射グラフト重合法が、副生成物である単独重合物の生成量が少ないことから好ましい。
照射済みの基材を低酸素状態でモノマー液に含浸してグラフト重合する方法を採用することができる。この場合には、反応温度20〜80℃、反応時間2〜10時間が好適である。
また、本発明の別の態様においては、既に知られているように照射済み基材に所定量のモノマーを付与して、真空中又は不活性ガス中で反応させることによりグラフト重合する、含浸グラフト重合法や、照射済み基材とモノマー蒸気とを接触させる、気相グラフト重合法を採用することができる。
【0015】
本発明においては、上記のいずれの放射線グラフト重合法も用いることができる。放射線グラフト重合によってナイロン系基材に導入する重合性単量体としては、陽イオン交換能を有する機能性官能基を得られるものであればよく、それ自体が機能性官能基を有する重合性単量体や、或いはそれをグラフトした後に更に2次反応を行なうことによって機能性官能基を導入することのできる重合性単量体を用いることができる。重合性単量体は、特に限定はないが、スチレンスルホン酸ソーダ、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0016】
本発明において、ナイロン系繊維からなる繊維材料に陽イオンに対してイオン交換能を有する機能性官能基を、放射線グラフト重合法により導入された繊維材料が官能基の導入により硬化し、収縮しやすくなる場合がある。こうした状況を鑑み鋭意検討した結果、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートなどから選ばれるジビニル系モノマーの少なくとも一種を官能基導入時に重合性単量体と同時に添加することにより、官能基の機能性を損なうことなく、また、職布、不織布の風合いを保ちながら陽イオン除去用材料を提供できることが分かった。該ジビニル系モノマーの添加量は、重合性単量体に対して0.1〜10%の濃度であることが好ましい。
【0017】
本発明の陽イオン除去用材料は、ナイロン系繊維の柔軟性を保持しているため、カット性がよく、プリーツ加工、ロール加工など、現状の織布、編布又は不織布が成型加工される様々な用途に適用可能な材料として利用することができる。あるいは、適するサイズのカラム形態のものに充填することにより、フィルター製品として使用することができる。本発明の金属除去材料を含むフィルター製品は、無機系凝集剤や高分子系凝集剤により処理された工場廃水の2次処理に適用して、廃水中に含まれる銅、鉛、水銀、ニッケル、カドミウムなどの重金属イオンを除去することができる。また、本発明の別の態様においては、プロセス水中のカリウムイオンを除去することができる。金属除去材料に吸着された金属陽イオンは酸により溶離することができ、材料が耐酸性繊維の混合物か、より好ましくはナイロン系繊維単一成分により構成されていれば、溶離のあとも繰り返し使用できるという効果を有する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により説明するが、これらの実施例は本発明を例示するものであり、何ら限定するものではない。
なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
(1)目付け(g/m2):100mm×100mmの試料を原反幅方向に12点、長さ方向に4点採取し重量を測定しg/m2に換算し、その平均値を求める。
(2)平均繊維径(μm):不織布の表面を顕微鏡写真で拡大しその繊維径を10点実測しその平均値で示す。
(3)厚み(mm):尾崎製作所製厚み計PEACOCKにて9.8kPa荷重下で100mm×100mmの試料中ランダムに5箇所測定しその平均値を求める。
(4)グラフト率:グラフト前後の繊維材料を60℃の乾燥機中で乾燥させた後、20℃、60%RHの恒温恒湿状態で恒量し、重量測定した。グラフト率は重量増加率に基づき下式により求められる。
グラフト率(%)={(Y−X)/X}×100
X:グラフト前の繊維材料重量
Y:グラフト後の繊維材料重量
【0019】
(5)イオン交換容量
20℃、60%RHの恒温恒湿状態で恒量し、重量測定したグラフト加工布を2N塩酸で再生処理を行い4%食塩水中に投入し十分イオン交換させた後グラフト加工布を取り出し、水酸化ナトリウム溶液で中和滴定しイオン交換容量を求めた。
イオン交換容量(meq/g)=1規定水酸化ナトリウム滴定量(ml)/グラフト加工布重量(g)
(6)カドミウムイオン除去性能評価
(i)市販のフィルターホルダー(ADVANTEC社製 フィルターホルダーKS25)に陽イオン除去用材料をセットする。
(ii)100ppmカドミウム標準液(和光純薬製)を純水で希釈しカドミウム100ppbの溶液2000mlとした試料溶液を、定量ポンプを用いて8ml/分の流速で(i)に通水する。
(iii)通水後の処理液をICP分析装置によりカドミウムイオン濃度を定量測定する。
【0020】
(実施例1)
平均繊維径16μmのナイロン6繊維からなる、目付け40g/m2、厚み0.19mmのスパンボンド不織布に、窒素雰囲気下で150kGyの電子線を照射した。次いで、この不織布に10%のスチレンスルホン酸ソーダ水溶液を含浸させ、50℃で3.5時間反応させて、p−スチレンスルホン酸ナトリウムのグラフト率191%のグラフト物を得た。
このグラフト物を、2N塩酸で再生処理を行い、スルホン酸ソーダ型を酸型つまり陽イオン交換型とした。得られた陽イオン除去用材料における機能性官能基の導入量は3.2mmol/gであり、イオン交換容量は2.1meq/gであった。この陽イオン除去材料について、カドミウムイオンを除去対象として性能評価を行った。
結果を表1に示す。原液のカドミウム濃度が100ppbに対してフィルター通液後のカドミウム濃度は5ppbとなり陽イオンを効率的に除去した。
【0021】
(比較例1)
上記の比較として、3.0重量%の5−Naスルホイソフタル酸を共重合させたナイロン6樹脂をスパンボンド法により繊維径18μmの不織布形状に加工し、目付け40g/m2の不織布シート状物を得た。
この不織布を、2N塩酸で再生処理を行い、スルホン酸ソーダ型を酸型つまり陽イオン交換型とした。得られた陽イオン除去用材料における機能性官能基の導入量は0.13mmol/gであり、イオン交換容量は0.002meq/gであった。この陽イオン除去材料について、カドミウムイオンを除去対象として性能評価を行った。結果を表1に示す。
原液のカドミウム濃度が100ppbに対してフィルター通液後のカドミウム濃度は99ppbとなり、陽イオン除去性能をほとんど有さない。これは、5−Naスルホイソフタル酸のスルホン酸基の導入量が少ない上に、その殆どが糸表面に現れず分子内部に閉じ込められているため、陽イオン除去の機能が発現されないためと考えられる。
【0022】
(比較例2)
平均繊維径16μmのナイロン6繊維からなる、目付け40g/m2、厚み0.19mmのスパンボンド不織布に、スチレンスルホン酸ソーダ10%溶液を水分散系のバインダー樹脂加工浴により浸漬処理(ディップ・ニップ)し、ピンテンターを用いて乾燥・固着処理(ドライ・キュア)を施して得た。この不織布を、2N塩酸で再生処理を行い、スルホン酸ソーダ型を酸型つまり陽イオン交換型とした。得られた陽イオン除去用材料における機能性官能基の導入量は0.24mmol/gであり、イオン交換容量は0.01meq/gであった。
ここで得たイオン交換不織布について実施例1と同様のカドミウムイオン除去性能評価を行った。得られた結果を表1に示す。
フィルター通液後のカドミウム濃度は85ppbとなり、陽イオン除去効果を有するが、除去性能は実施例1には及ばない。
【0023】
【表1】

【0024】
(実施例2〜5、比較例3)
目付けが50g/m2で繊維径0.5μm(実施例2)、0.8μm(実施例3)、4μm(実施例4)のナイロンメルトブロー不織布及び16μm(実施例5)、22μm
(比較例3)のナイロンスパンボンド不織布を用い、実施例1と同様の方法で陽イオン除去材料を得た。
これらの陽イオン除去材料について、カドミウムイオンを除去対象として性能評価を行った。結果を表2に示す。繊維径が細い不織布からなる方がカドミウムイオンの捕集性能が高くフィルター通液後の液中カドミウムイオン濃度は低い傾向にある。しかし、繊維径が小さい繊維からなる不織布は陽イオン交換基の導入の際、取り扱い性が劣る傾向がある。
【0025】
(実施例6)
平均繊維径16μmのナイロン6繊維からなる、目付け40g/m2、厚み0.19mmのスパンボンド不織布に、窒素雰囲気下で150kGyの電子線を照射した。次いで、この不織布を濃度10%のスチレンスルホン酸ソーダと0.05%のジビニルベンゼンを含有する水溶液に含浸させ、50℃で3.5時間反応させて、p−スチレンスルホン酸ナトリウムとジビニルベンゼンのグラフト率250%のグラフト物を得た。
このグラフト物を、2N塩酸で再生処理を行い、スルホン酸ソーダ型を酸型つまり陽イオン交換型とした。得られた陽イオン除去用材料における機能性官能基の導入量は3.1mmol/gであり、イオン交換容量は1.9meq/gであった。この陽イオン除去材料について、カドミウムイオンを除去対象として性能評価を行った。結果を表2に示す。フィルター通液後のカドミウムイオン濃度は5.0ppbとなり、実施例1と同様のカドミウムイオン除去性能を有する上に、硬化が少なく、柔軟性が高く、フィルターとしての加工時に取り扱い性に優れることが分かった。
【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、従来あまり用いられることのなかったナイロン系繊維が含有された織布、不織布、編布を用いて、グラフト加工が容易で液中の陽イオンを吸着除去する耐熱性、耐薬品性に優れた材料を得ることができ、電子工業、食品工業などの一般化学工業用のプロセス水に含まれる金属イオン除去に応用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径20μm以下のナイロン系繊維が含有された繊維材料もしくはその複合体に、陽イオン交換能を有する機能性官能基が導入され、イオン交換容量が0.5meq/g以上であることを特徴とする、陽イオン除去用材料。
【請求項2】
陽イオン交換能を有する機能性官能基が放射線グラフト重合法により導入されていることを特徴とする、請求項1に記載の陽イオン除去用材料。
【請求項3】
放射線グラフト重合法により機能性官能基とともにジビニル系モノマーが導入されることを特徴とする請求項2記載の陽イオン除去用材料。
【請求項4】
ナイロン系繊維が含有された繊維材料が、不織布、織布、編布のいずれか、又はそれらの複合体あるいは成型加工品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の陽イオン除去用材料。

【公開番号】特開2009−247996(P2009−247996A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99397(P2008−99397)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】