説明

陽電子放出断層撮影として有用なラジシコール誘導体

本発明は、遊離形または塩形の、式I
【化1】


〔式中、
RはR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'は11CH、[H]C、[H]HC、[H]HCまたは(CH)Halであり、ここで、
Halは123I、125I、131I、I、75Br、76Br、77Br、82Br、Br、18FまたはFであるか、または
R'は(CH)n−1[H]HCHalまたは(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalはI、BrまたはFであり、そして
nは、各々独立して、1、2、3または4である。〕
の新規ラジシコール誘導体、それらの製造、放射性トレーサー/マーカーとしてのそれらの使用およびそれらを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ラジシコール(radicicol)誘導体それらの製造、それらの放射性トレーサー/マーカーとしての使用およびそれらを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャペロンのHsp90ファミリーは、4種の既知メンバー:両方ともサイトゾルのHsp90αおよびHsp90β、小胞体のgrp94およびミトコンドリアのtrap−1から成る。Hsp90は、変性または“非折り畳み”タンパク質のATP依存性再折り畳みに、および細胞外因子に応答した細胞の増殖に関与する種々のキー・タンパク質の高次構造的成熟に必要な、豊富な細胞性シャペロンである。クライアント・タンパク質と呼ばれるこれらのタンパク質は、ステロイド受容体ならびに種々のタンパク質キナーゼを含む。Hsp90は、真核細胞製造に必須であり、多くの腫瘍において過剰発現されている。癌細胞は、Hsp90 ATPaseの一過性の阻害に感受性であるように見え、Hsp90阻害剤が、新規抗癌剤としての可能性を有し得ることを示唆する。各Hsp90ファミリーメンバーは、保存されたATP結合部位をそのN末端ドメインに有し、これは、他のATP結合性タンパク質においてほとんど見られない。Hsp90の弱いATPase活性は、その種々のコシャペロンタンパク質との相互作用により刺激される。ゲルダナマイシンまたはラジシコールのような数個の天然化合物が、Hsp90のATP結合部位に結合し、そのATPase活性を阻害する。細胞系およびインビボにおいて、これらの薬剤は、Hsp90との結合によりクライアント・タンパク質の折り畳みを阻止し、それは次いでプロテアソームにより分解される。ゲルダナマイシン誘導体である17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)は、数機関で現在第I相臨床試験中である。17−AAGでの最初の臨床実験は、前臨床系における活性と相関する本医薬の濃度が、ヒトにおいて許容できる毒性で達成できることを提供し、そして、少なくともある種の代用物および腫瘍区画における標的調節の初期の証拠を提供している。17−AAGの用量規制毒性は肝臓である。17−AAGの乏しい溶解性が、その製剤/投与を困難とし、その合成を困難とする(それは、一般に醗酵により得られる)。それ故、良好な生化学的特性および恐らくより高い特性(17−AAGは、4種のHsp90パラログ全てを阻害する)を有する別の化合物が望まれる。
【0003】
ラジシコールは、v−Srcおよびv−HA−RAs形質転換線維芽細胞の悪性表現型を逆行させることが示されている大環状抗生物質である。それはHSP90阻害の結果として、多くのシグナリングタンパク質を退化させることが示された。X線結晶学データは、ラジシコールがまたHSP90のN末端ドメインに結合し、内因性ATPase活性を阻害することも確認した。しかしながら、ラジシコールは、本化合物の不安定な化学的性質のためにインビボでの抗腫瘍活性がない。ケトン官能基のオキシ官能基への変換が、インビボで活性を保持する生成物を提供することが判明した。これらの結果は、ラジシコールが、改善されたインビボ特性を有する薬剤を製造するために修飾できる可能性を高めている。
【0004】
非侵襲的核造影技術を、実験動物、患者およびボランティアを含む生存対象の生理学および生化学における基本的および診断的情報を得るために使用できる。これらの技術は、生存対象に投与した放射性トレーサーから放出される放射線を検出できる造影装置の使用に依存する。得られた情報を再構築して、平面のおよび断層画像を提供することができ、これは時間の関数としての放射性トレーサーの分布および/または濃度を示す。
【0005】
陽電子放出断層撮影(PET)は、全核医学造影モダリティーの最高の空間および時間的解像度を提供し、そして組織中のトレーサー濃度の真の定量を可能にできるさらなる利点を有する、非侵襲的造影技術である。本技術は、製造組織における種々の過程の生理学または生化学に関連するパラメータの測定を可能にするインビボ特性を有するように設計された、陽電子放出核種で標識された放射性トレーサーの使用を含む。
【0006】
化合物は、陽電子またはガンマ線放出核種で標識できる。最も一般的に使用される陽電子放出核種は15O、13N、11Cおよび18Fであり、それらは、産生され、そして各々2、10、20および110分の半減期を有するアクセレレーターである。最も広く使用されているガンマ線放出核種は、99mTc、201Tlおよび123Iである。
【0007】
我々は、ラジシコール誘導体が、PETのような分子造影モダリティーを使用したインビトロおよびインビボでのHsp90の探査に使用できることを発見した。
【発明の開示】
【0008】
従って、第一の局面において、本発明は、遊離形または塩形の式I
【化1】

〔式中、
RはR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'は11CH、[H]C、[H]HC、[H]HCまたは(CH)Halであり、ここで、
Halは123I、125I、131I、I、75Br、76Br、77Br、82Br、Br、18FまたはFであるか、または
R'は(CH)n−1[H]HCHalまたは(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalはI、BrまたはFであり、そして
nは、各々独立して、1、2、3または4である。〕
の化合物に関する。
【0009】
好ましい態様において、本発明は、
(1)RがR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'が11CH、[H]C、[H]HC、[H]HCまたは(CH)Halであり、ここで、
Halが123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br、82Brまたは18Fであるか、または
R'が(CH)n−1[H]HCHalまたは(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalがI、BrまたはFであり、そして
nが、各々独立して、1、2、3または4である;
(2)RがR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'が11CH、[H]Cまたは(CH)Halであり、ここで、
Halが123I、76Brまたは18Fであるか、または
R'が(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalがI、BrまたはFであり、そして
nが、各々独立して、1、2、3または4である、
遊離形または塩形の式Iの化合物に関する。
【0010】
とりわけ好ましい態様において、本発明は、遊離形または塩形の、実施例に後記の式Iの化合物の1個または1個以上に関する。
【0011】
不斉炭素原子が式Iの化合物に存在するならば、本化合物は純粋光学活性形または光学異性体の混合物の形、例えばラセミ混合物の形で存在できる。全ての純粋な光学異性体およびラセミ混合物を含む全てのそれらの混合物は、本発明の一部である。
【0012】
可能性のある立体異性、例えば二重結合のcis/trans立体異性の場合、本化合物は、純粋立体異性体またはそれらの混合物として存在できる。全てのこのような純粋立体異性体および全てのこのような混合物は本発明の一部である。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、遊離形または塩形の式Iの化合物の製造方法であって、
a)式la
【化2】

〔式中、R11CH、[H]HC、[H]HCまたは[H]Cである。〕
の化合物の製造のために、式II
【化3】

の化合物と、11CHL、[H]HCL、[H]HCLまたは[H]CL(ここで、LはI、OTs、OMsまたはOTfである)を、好ましくは塩基の存在下で反応させるか、または
【0014】
b)式lb
【化4】

〔式中、Rは[18F](CH)、F(CH)、[123I](CH)、[125I](CH)、[131I](CH)、I(CH)、[75Br](CH)、[76Br](CH)、[77Br](CH)、[82Br](CH)またはBr(CH)である。〕
の化合物の製造のために、式III
【化5】

〔式中、nは1、2、3または4であり、そしてX[基=N−O−(CH)−X中の]はOTs、OMs、OTfまたはIである。〕
の化合物と、[123I]、[125I]、[131I]、I、[75Br]、[76Br]、[77Br]、[82Br]、Br、[18F]またはFを反応させるか、
または、式IIの化合物と、式IV
X−R IV
〔式中、XおよびRは、この方法において上記で定義の通りである。〕
の化合物を反応させるか、
または式Iの化合物に存在するオキシム官能基の代わりにオキソ基を担持するラジシコール誘導体と、[18F](CH)−O−NH、[123I](CH)−O−NH、[125I](CH)−O−NH、[131I](CH)−O−NH、[75Br](CH)−O−NH、[76Br](CH)−O−NH、[77Br](CH)−O−NHまたは[82Br](CH)−O−NH(nは、各場合、1、2、3または4、好ましくは2、3または4である)と反応させるか、または
【0015】
c)式lc
【化6】

〔式中、Rは(CH)CO[11C]H、(CH)CO[H]C、(CH)CO[H]HCまたは(CH)CO[H]HCである。〕
の化合物の製造のために、式V
【化7】

〔式中、nは1、2、3または4である。〕
の化合物と、[11C]HL、[H]HCL、[H]HCLまたは[H]CL(ここで、LはI、OTs、OMsまたはOTfである)を、好ましくは塩基の存在下反応させるか、または
【0016】
d)式ld
【化8】

〔式中、Rは[123I](CH)CONH(CH)I、[125I](CH)CONH(CH)I、[131I](CH)CONH(CH)I、(CH)CONH(CH)I、[75Br](CH)CONH(CH)Br、[76Br](CH)CONH(CH)Br、[77Br](CH)CONH(CH)Br、[82Br](CH)CONH(CH)Br、(CH)CONH(CH)Br、[18F](CH)CONH(CH)F、または(CH)CONH(CH)Fであり、nは、各場合、独立して、1、2、3または4である。〕
の化合物の製造のために、式VI
【化9】

〔式中、nは、各場合、独立して、1、2、3または4であり、そして末端XはOTs、OMs、OTfまたはIである。〕
の化合物と、[123I]、[125I]、[131I]、I、[75Br]、[76Br]、[77Br]、[82Br]、Br、[18F]またはFを反応させるか、
または、nが1、2、3または4である式Vの化合物と、[18F](CH)NH、F(CH)NH、[123I](CH)NH、[125I](CH)NH、[131I](CH)NH、I(CH)NH、[75Br](CH)NH、[76Br](CH)NH、[77Br](CH)NH、[82Br](CH)NH、Br(CH)NH、F[H]C(CH)n−1NH、F[H]HC(CH)n−1NH2、F[H]HC(CH)n−1NH2、Br[H]C(CH)n−1NH、Br[H]HC(CH)n−1NH2、Br[H]HC(CH)n−1NH、I[H]C(CH)n−1NH、I[H]HC(CH)n−1NHまたはI[H]HC(CH)n−1NH(nは、各場合2、3または4である)を、標準カルボン酸活性化法、例えばアシルハライドの形成、またはペプチドカップリング剤の使用により反応させ、
各場合、所望によりその後、所望により存在する保護基を開裂し、および各場合、このようにして得られた式Iの化合物を遊離の、好ましくは遊離酸の形で、または、好ましくはフェノール性の塩の形で回収する
工程を含む、方法に関する。
【0017】
この反応は慣用法に従い、例えば実施例に記載の通り行い得る。
反応混合物の後処理およびこのようにして得られた化合物の精製は、既知方法に従い行い得る。
【0018】
塩は既知方法で遊離化合物から製造でき、そして逆も可能である。
式Iの化合物はまたさらなる慣用法により製造でき、この方法は、例えば実施例に記載の通り、本発明のさらなる局面である。
【0019】
式Ia、Ib、Ic、Id、II、III、IV、VおよびVIの出発物質は既知であるか、既知化合物から出発して、慣用法に従い、例えば実施例に記載の通り、製造できる。
【0020】
記載の一連の合成の何れかの間、関係する任意の分子上の感受性または反応性基を保護する必要があるおよび/または望まれるかもしれない。これは、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry, ed J. F. W. McOmie, Plenum Press, 1973; and T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Jon Wiley & Sons, 1991に記載のような、慣用の保護基の手段により達成できる。保護基は、当分野で既知の方法を使用して、便利な段階で除去できる。ヒドロキシル基の保護が必要であるとき、これは、エステル、トリアルキルシリル、テトラヒドロピラン、ベンジルまたはアルキルエーテルの形成により達成できる。このような誘導体は標準法により脱保護でき、従って、例えば、メトキシメチルエーテル誘導体を、塩酸のメタノール溶液を使用して脱保護できる。
【0021】
式Iの化合物(以後“本発明の薬剤”と呼ぶ)は、ヒート・ショック・プロテイン90(Hsp90)の選択的標識のための組織病理学的インビトロおよびインビボ標識薬剤、造影剤および/またはバイオマーカー(以後“マーカー”)として、およびHSP90モジュレーターが標的にできる疾患の処置のためのHSP90を標的とするリガンド(非放射標識化合物について)として、価値ある特性を有する。
【0022】
式Iの化合物に挿入できる適当な放射性核種は:H、18F、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brを含む。式Iの化合物に挿入すべき放射性核種の選択は、具体的分析もしくは医薬適用に依存する。それ故、HSP90のインビトロ標識および競合的アッセイのために、H、125Iまたは77Brを含む化合物が好ましい。診断および研究造影剤のために、11C、18F、123Iまたは76Brから選択される放射性核種を含む化合物が好ましい。キレート放射性核種の挿入は、ある特定の態様において有用であり得る。
【0023】
式Iの化合物の放射性標識類似体は、HSP90リガンドが関与すると考えられる種々の疾患領域におけるHSP90リガンドの役割を評価する臨床試験に使用できる。
【0024】
本発明はまた、式Iの化合物および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、放射性医薬組成物も提供する。
【0025】
より具体的に“本発明の薬剤”は、インビトロまたはインビボでのHsp90の標識のためのマーカーとして有用である(実施例7−9参照)。
【0026】
“本発明の薬剤”は、それ故、例えば、Hsp90で作用する医薬の受容体の占拠のレベルを決定するために、またはHsp90の過剰発現、活性化または異常調節が原因の疾患の診断目的のために、およびこのような疾患の医薬治療の有効性をモニタリングするために、有用である。
【0027】
前記に従って、本発明は、癌造影または神経画像処理のマーカーとして使用するための“本発明の薬剤”を提供する。
【0028】
さらなる局面において、本発明は、インビボおよびインビトロにおける腫瘍、脳およびHsp90の過剰発現、活性化または異常調節が関与する他の組織を標識するための、“本発明の薬剤”を含む組成物を提供する。
【0029】
さらに別の局面において、本発明は、インビトロまたはインビボで腫瘍、脳およびHsp90の過剰発現、活性化または異常調節が関与する他の組織を標識する方法であって、腫瘍、脳組織または他の組織と“本発明の薬剤”を接触させることを含む、方法を提供する。
【0030】
本発明の方法は、“本発明の薬剤”が標的構造を標識したか否かを決定することを目的としたさらなる工程を含み得る。該さらなる工程は、標的構造を、陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、または放射活性放射能の検出を可能にする任意のデバイスを使用した標的構造の観察により行い得る。
以下の実施例は本発明を説明するが、それを限定しない(Me=CH)。
【0031】
実施例1:[11C−O−メチル]ラジシコール9−(O−メチル−オキシム)、[11C]Ia(Ra=[11C]CH)の製造
【化10】

表題化合物を、[11C]MeIとオキシムIIのナトリウム塩を乾燥DMF(400μl)中で反応させることにより製造する。[11C]MeIを、部屋で、反応剤を含む1mlガラス容器にトラップし、添加が完了したとき、反応混合物を120℃で10分加熱する。表題化合物を、逆相半分取HPLCで精製する。集めた精製物フラクションを蒸発および改質(reformulated)して、[11C−O−メチル]ラジシコール9−(O−メチル−オキシム)を得る。
注:Iの製造(ラジシコールから)は既知であり、Bioorg Med Chem, 2002, 3445に記載されている。
【0032】
実施例2:[O−トリ(H)−メチル]ラジシコール9−(O−メチル−オキシム)、[H]Ia(Ra=[H]C)の製造
表題化合物を、[H]MeIとオキシムIIのナトリウムまたはカリウム塩を乾燥DMF中で反応させ、その後逆相半分取HPLC精製することにより製造する。
【0033】
実施例3、3bおよび3c:ラジシコール9−(O−(2−フルオロ−エチル−オキシム)
ラジシコールとO−(2−フルオロ−エチル)−ヒドロキシルアミンの反応による(実施例3a)。
ラジシコール9−オキシムと1−[18F]フルオロ−2−トシルオキシエタンの反応による(実施例3b)。
ラジシコールと[18F]O−(2−フルオロ−エチル)−ヒドロキシルアミンの反応による。[18F]O−(2−フルオロ−エチル)−ヒドロキシルアミンを、N−ヒドロキシ−フタルイミドの[18F]1−ブロモ−2−フルオロ−エタンでのアルキル化、続く[18F]2−(2−フルオロ−エトキシ)−イソインドール−1,3−ジオンとヒドラジン水和物の反応により製造する(実施例3c)。
【0034】
実施例3a:[18F]ラジシコール9−(O−フルオロエチル−オキシム)、Ib(Ra=CF)の製造
【化11】

表題化合物は、文献法[Bioorganic & Medicinal Chemistry 2002, 19, 3445-3454]に従い、O−(2−フルオロ−エチル)−ヒドロキシルアミンヒドロクロライド[The Journal of Antibiotics 2000, 53, 1071-1085]を使用して製造できる。
(9Z,11E)−(4R,6R,8R)−16−クロロ−17,19−ジヒドロキシ−4−メチル−3,7−ジオキサ−トリシクロ[13.4.0.06,8]ノナデカ−1(19),9,11,15,17−ペンタエン−2,13−ジオン 13−[O−(2−フルオロ−エチル)−オキシム]のジアステレオ異性混合物、HPLC t:5.0、(M+H)=426。
【0035】
実施例3b:IIからの[18F]ラジシコール9−(O−フルオロエチル−オキシム)、[18F]Ib(Ra=[18F]C)の製造
【化12】

最初の工程は、1−[18F]フルオロ−2−トシルオキシエタンの製造から成る。[18O]HOに富む溶液中の[18F]フルオライドを、10mg Kryptofix(K-222)(Aldrich Chemical, Milwaukee, WI USA)および1mg 炭酸カリウムを0.05mL 水および0.95mL CHCN中に含む1mLの溶液を含むWheaton 5mL マイクロバイアル(Millville, NJ USA)に添加する。溶液を116℃で3.5分加熱し、その後3回の1mL CHCNを添加して、蒸発させて、フルオライドを乾燥させる。バイアルを室温に冷却し、1.0mL CHCNに溶解した1.5mgの1,2−ジトシルオキシエタンを添加する。溶液を80℃で10分加熱し、室温に冷却し、5mLのエーテルで希釈し、Waters classic SiO2 Sep-Pak(Milford, MA USA)を通して、50ml丸底フラスコに接続した10mL マキシバイアルに入れた。sep-pakを5mLのEtOで濯ぎ、それをマキシバイアルに入れ、総容量を10mLとした。得られたエーテル性溶液を真空で蒸発させ、5mL バイアルに移して、[18F]フルオロ−2−トシルオキシエタンを得た。0.5mL DMFに溶解したオキシムIIのナトリウム塩を1−[18F]フルオロ−2−トシルオキシエタンと反応させた。表題化合物を逆相半分取HPLCで精製する。
【0036】
実施例3c:ラジシコールからの[18F]ラジシコール9−(O−フルオロエチル−オキシム)、[18F]Ib(Ra=[18F]C)の製造
【化13】

表題化合物を、文献法(Journal of Labelled Compounds & Radiopharmaceuticals (2002), 45(3), 217-229, Nuclear medicine and biology (1997 Nov), 24(8), 755-60)に従い製造した[18F]フルオロエチルアミン、および文献法(Bioorganic & Medicinal Chemistry 2002, 19, 3445-3454)に従うラジシコールの反応、続く逆相半分取HPLC精製により製造できる。
【0037】
実施例4:[11C−OMe]ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−酢酸メチルエステル、[11C]Ic(Rc=CHCOMe)の製造
【化14】

表題化合物を、[11C]MeIとカルボン酸Vのナトリウム塩の乾燥DMF中の反応により製造できる。[11C]MeIを、部屋で、反応剤を含む1mlガラス容器にトラップし、添加が完了したとき、反応混合物を加熱する。次いで、表題化合物を逆相半分取HPLCで精製する。
【0038】
実施例5:[O−トリ(H)−メチル]ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−酢酸メチルエステル、[H]Ic(Rc=CHCOMe)の製造
表題化合物を、[H]MeIと、カルボン酸Vのナトリウムまたはカリウム塩の乾燥DMF中での反応、続く逆相半分取HPLC精製により製造できる。
【0039】
実施例6a:ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−N−(2−フルオロ−エチル)−アセトアミド、Id(Rd=CHCONHCF)の製造
【化15】

表題化合物を、文献法[J. Med. Chem. 2003, 46, 2534-2541]により、2−フルオロ−エチルアミンの塩酸塩、メチルアミンの塩酸塩またはアンモニウムヒドロクロライドの各々を使用して製造できる。
2−[(9Z,11E)−(4R,6R,8R)−16−クロロ−17,19−ジヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−3,7−ジオキサ−トリシクロ[13.4.0.06,8]ノナデカ−1(19),9,11,15,17−ペンタエン−13−イリデンアミノオキシ]−N−(2−フルオロ−エチル)−アセトアミドのジアステレオ異性混合物、HPLC t:4.3、(M+H)=483、(M+H)=482。
【0040】
実施例6b:ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−N−メチル−アセトアミド、Id(Rd=CHCONHCH)の製造
【化16】

表題化合物を、文献法[J. Med. Chem. 2003, 46, 2534-2541]に従い、2−フルオロ−エチルアミンの塩酸塩、メチルアミンの塩酸塩またはアンモニウムヒドロクロライドの各々を使用して製造できる。
2−[(9Z,11E)−(4R,6R,8R)−16−クロロ−17,19−ジヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−3,7−ジオキサ−トリシクロ[13.4.0.06,8]ノナデカ−1(19),9,11,15,17−ペンタエン−13−イリデンアミノオキシ]−N−メチル−アセトアミドのジアステレオ異性混合物、HPLC t:4.1、(M+H)=449。
【0041】
実施例6c:ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−アセトアミド、Id(Rd=CHCONH)の製造
【化17】

表題化合物を、文献法[J. Med. Chem. 2003, 46, 2534-2541]に従い、2−フルオロ−エチルアミンの塩酸塩、メチルアミンの塩酸塩またはアンモニウムヒドロクロライドの各々を使用して、製造できる。
2−[(9Z,11E)−(4R,6R,8R)−16−クロロ−17,19−ジヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−3,7−ジオキサ−トリシクロ[13.4.0.06,8]ノナデカ−1(19),9,11,15,17−ペンタエン−13−イリデンアミノオキシ]−アセトアミドのジアステレオ異性混合物、HPLC t:3.9、(M+H)=435。
【0042】
実施例6d:ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−N−メチル−アセトアミド、Id(Rd=CHCONHCH)の製造
【化18】

表題化合物を、[11C]MeIと、実施例5cを、塩基の存在下、乾燥DMF中で反応させることにより製造できる。[11C]MeIを、部屋で、反応剤を含む1mlガラス容器にトラップし、添加が完了したとき、反応混合物を加熱する。次いで、表題化合物を逆相半分取HPLCで精製する。
【0043】
実施例6e:[18F]ラジシコール9−イリデンアミノオキシ−N−(2−フルオロ−エチル)−アセトアミド、[18F]Id(x=F、n=2,1)の製造
【化19】

(ラジシコール13−イリデンアミノオキシ−酢酸と2−フルオロ−エチルアミンの縮合)
製造の第一工程は、クリプタート仲介n.c.a.を介した2−[18F]フルオロエチルアミンの製造から成る。DMSO中のN−Boc−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)エチルアミンの18Fフッ素化およびその後の脱保護はJournal of Labelled Compounds & Radiopharmaceuticals (2002), 45(3), 217-229に記載の通り。表題化合物を、カルボン酸V(n=1)と2−[18F]フルオロエチルアミンの反応、続く逆相半分取HPLC精製により製造できる。
【0044】
実施例7:Ki/IC50決定(結合アッセイ)
Hsp90の阻害を、Schilb et al. Development and Implementation of a Highly Miniaturized Confocal 2D-FIDA-Based Analysis-Based High-Throughput Screening Assay to Search for Active Site Modulators of the Human Heat Shock Protein 90β, J of Biomolecular Screening, 2003 in pressに記載の方法をわずかに改変して使用して、測定する。本方法を、0%から100%阻害の範囲をカバーするために選択した種々の濃度の試験化合物で繰り返して、各化合物についてHsp90の50%阻害が起こる濃度(IC50)を、慣用法により濃度−阻害曲線から決定する。
上記の実施例の化合物は、上記FIDAアッセイにおいて、50−1000nM未満、具体的に≦100nMのIC50値を有する。
【0045】
実施例8:薬物動態学および臓器分布
放射活性の組織分布を、正常および腫瘍担持オスFischerラット(200−250g)で、放射性標識化合物(1−100MBq)の静脈注射後に決定する。実験前、動物は餌および水を自由に摂取できる。麻酔後、放射性医薬を、尾静脈カテーテルを介してラットに注射する。4匹のラットの群を一定量注射後の種々の時点で殺す。動物を切開し、選択した組織を秤量し、ガンマ線カウンターの用量標準と共に計測する。生計測値を崩壊補正し、計測値を組織の1グラムあたりの総注射量のパーセントとして標準化する(%ID/g)。
放射活性の組織分布をまた腫瘍担持ラットで静脈注射後に行う。方法は、正常ラットについて既に上記したものと類似である。正常ラットと同じ組織に加えて腫瘍組織をアッセイし、腫瘍に対側性の脳の対応する領域を切開し、比較のために使用する。
【0046】
実施例9:エキソビボ・オートラジオグラフィー
放射性医薬の局所分布および取り込みを、定量的オートラジオグラフィー技術を使用して調査できる。放射性医薬を動物の尾静脈に注射する。直ぐに組織を摘出し、イソペンタン中に凍結し、それを−70℃に冷却する。凍結サンプルを、cryostateを使用して20μm矢状断面に切断し、ガラス顕微鏡スライド上にマウントし、何ら洗浄せず、それらをホスホロイメージャースクリーンに2時間置く。造影プレートデータを、BAS800 IIシステム(富士フイルム)により分析する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形または塩形の、式I
【化1】

〔式中、
RはR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'は11CH、[H]C、[H]HC、[H]HCまたは(CH)Halであり、ここで、
Halは123I、125I、131I、I、75Br、76Br、77Br、82Br、Br、18FまたはFであるか、または
R'は(CH)n−1[H]HCHalまたは(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalはI、BrまたはFであり、そして
nは、各々独立して、1、2、3または4である。〕
の化合物。
【請求項2】
RがR'、(CH)COOR'または(CH)CONHR'であり、ここで、
R'が11CH、[H]C、[H]HC、[H]HCまたは(CH)Halであり、ここで、
Halが123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br、82Brまたは18Fであるか、または
R'が(CH)n−1[H]HCHalまたは(CH)n−1[H]CHalであり、ここで、
HalがI、BrまたはFであり、そして
nが、各々独立して、1、2、3または4である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の、遊離形または塩形の式Iの化合物の製造方法であって、
a)式la
【化2】

〔式中、R11CH、[H]HC、[H]HCまたは[H]Cである。〕
の化合物の製造のために、式II
【化3】

の化合物と、11CHL、[H]HCL、[H]HCLまたは[H]CL(ここで、LはI、OTs、OMsまたはOTfである)を、好ましくは塩基の存在下で反応させるか、または
b)式lb
【化4】

〔式中、Rは[18F](CH)、F(CH)、[123I](CH)、[125I](CH)、[131I](CH)、I(CH)、[75Br](CH)、[76Br](CH)、[77Br](CH)、[82Br](CH)またはBr(CH)である。〕
の化合物の製造のために、式III
【化5】

〔式中、nは1、2、3または4であり、そしてX[基=N−O−(CH)−X中の]はOTs、OMs、OTfまたはIである。〕
の化合物と、[123I]、[125I]、[131I]、I、[75Br]、[76Br]、[77Br]、[82Br]、Br、[18F]またはFを反応させるか、
または、式IIの化合物と、式IV
X−R IV
〔式中、XおよびRは、この方法において上記で定義の通りである。〕
の化合物を反応させるか、
または式Iの化合物に存在するオキシム官能基の代わりにオキソ基を担持するラジシコール(radicicol)誘導体と、[18F](CH)−O−NH、[123I](CH)−O−NH、[125I](CH)−O−NH、[131I](CH)−O−NH、[75Br](CH)−O−NH、[76Br](CH)−O−NH、[77Br](CH)−O−NHまたは[82Br](CH)−O−NH(nは、各場合、1、2、3または4、好ましくは2、3または4である)と反応させるか、または
c)式lc
【化6】

〔式中、Rは(CH)CO[11C]H、(CH)CO[H]C、(CH)CO[H]HCまたは(CH)CO[H]HCである。〕
の化合物の製造のために、式V
【化7】

〔式中、nは1、2、3または4である。〕
の化合物と、[11C]HL、[H]HCL、[H]HCLまたは[H]CL(ここで、LはI、OTs、OMsまたはOTfである)を、好ましくは塩基の存在下反応させるか、または
d)式ld
【化8】

〔式中、Rは[123I](CH)CONH(CH)I、[125I](CH)CONH(CH)I、[131I](CH)CONH(CH)I、(CH)CONH(CH)I、[75Br](CH)CONH(CH)Br、[76Br](CH)CONH(CH)Br、[77Br](CH)CONH(CH)Br、[82Br](CH)CONH(CH)Br、(CH)CONH(CH)Br、[18F](CH)CONH(CH)F、または(CH)CONH(CH)Fであり、nは、各場合、独立して、1、2、3または4である。〕
の化合物の製造のために、式VI
【化9】

〔式中、nは、各場合、独立して、1、2、3または4であり、そして末端XはOTs、OMs、OTfまたはIである。〕
の化合物と、[123I]、[125I]、[131I]、I、[75Br]、[76Br]、[77Br]、[82Br]、Br、[18F]またはFを反応させるか、
または、nが1、2、3または4である式Vの化合物と、[18F](CH)NH、F(CH)NH、[123I](CH)NH、[125I](CH)NH、[131I](CH)NH、I(CH)NH、[75Br](CH)NH、[76Br](CH)NH、[77Br](CH)NH、[82Br](CH)NH、Br(CH)NH、F[H]C(CH)n−1NH、F[H]HC(CH)n−1NH2、F[H]HC(CH)n−1NH2、Br[H]C(CH)n−1NH、Br[H]HC(CH)n−1NH2、Br[H]HC(CH)n−1NH、I[H]C(CH)n−1NH、I[H]HC(CH)n−1NHまたはI[H]HC(CH)n−1NH(nは、各場合2、3または4である)を、好ましくは標準カルボン酸活性化法、例えばアシルハライドの形成、またはペプチドカップリング剤の使用により反応させ、
各場合、所望によりその後、所望により存在する保護基を開裂し、そして各場合、このようにして得られた式Iの化合物を遊離の、好ましくは遊離酸の形で、または、好ましくはフェノール性の塩の形で回収する工程を含む、方法。
【請求項4】
放射性トレーサー/マーカーとして使用するための、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
HSP90のマーカーとして使用するための、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
インビボまたはインビトロで腫瘍およびHsp90の過剰発現または活性化が関与する他の組織を標識するための、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項7】
インビボまたはインビトロで腫瘍およびHsp90の過剰発現または活性化が関与する他の組織を標識する方法であって、該腫瘍組織または該他の組織と請求項1に記載の式Iの化合物を接触させることを含む、方法。

【公表番号】特表2009−522240(P2009−522240A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547982(P2008−547982)
【出願日】平成19年1月2日(2007.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000013
【国際公開番号】WO2007/077209
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】