説明

隆起印刷システム、隆起印刷方法及び隆起印刷用プログラム

【課題】ンクジェット等の画像形成方式において、各画像情報に対応したインク吐出量の制御を行うことにより、簡易かつ確実に、インク量を最適化し、ユーザーが意図したとおりの降起印刷を行う。
【解決手段】ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定部340と、画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算部332bと、隆起量設定部340における設定に基づいて吐出量演算部332bで算出されるインク吐出量を変更する吐出量変更部334aと、吐出量変更部334aが変更したインク吐出量で記録媒体に対する印刷を実行する画像処理部332と、画像処理部332で印刷された記録媒体上のインクに対して膨張剤を付着させ、膨張剤を膨張させる隆起処理装置200とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に印刷された画像の特定範囲を隆起させる隆起印刷システム、隆起印刷方法及び隆起印刷用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般的な印刷物では、付加価値向上のため、例えば、印刷表面に凹凸を付加し、質感を持たせる隆起印刷がある。この隆起印刷は、樹脂パウダー等を印刷物に付着させ加熱溶融させることで、インク上に付着したパウダーが膨張し、印刷部分を降起させるものである。この隆起印刷としては、インクジェットプリンタにおいて、記録媒体上に吐出されたインク上にパウダーを付着させる技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−142277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたインクジェットプリンタを使用する場合、入力画像の彩度が低い部分では、インク量は少なく吐出される。そのため、彩度が低い箇所においては、パウダーが付着せず、降起しない箇所が生じる問題があった。また、降起箇所をユーザーの意図するように形成させるには、ユーザーが入力画像を調整したり、総インク量を増加する等の設定を行う必要があり、印刷装置の操作面で複雑となっていた。さらに、操作の複雑化により、ユーザーの意図したとおりの隆起印刷を行うことができず、印刷物の品質低下となる場合も生じていた。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、インクジェット等の画像形成方式において、各画像情報に対応したインク吐出量の制御を行うことにより、簡易かつ確実に、インク量を最適化し、ユーザーが意図したとおりの降起印刷を行うことのできる隆起印刷システム、隆起印刷方法及び隆起印刷用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、記録媒体に印刷された画像の特定範囲を隆起させる隆起印刷システムであって、ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定部と、画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算部と、隆起量設定部における設定に基づいて吐出量演算部で算出されるインク吐出量を変更する吐出量変更部と、吐出量変更部が変更したインク吐出量で記録媒体に対する印刷を実行する印刷部と、印刷部で印刷された記録媒体上のインクに対して膨張剤を付着させ、膨張剤を膨張させる膨張処理部とを備える。
【0007】
また、他の発明は、記録媒体に印刷された画像の特定範囲を隆起させる隆起印刷方法であって、
(1)ユーザー操作に基づいて前記特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定ステップと、
(2)前記画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算ステップと、
(3)前記隆起量設定ステップにおける設定に基づいて前記吐出量演算ステップで算出される前記インク吐出量を変更する吐出量変更ステップと、
(4)前記吐出量変更ステップにおいて変更したインク吐出量で前記記録媒体に対する印刷を実行する印刷ステップと、
(5)前記印刷ステップで印刷された記録媒体上のインクに対して膨張剤を付着させ、該膨張剤を膨張させる膨張処理ステップと
を備えることを特徴とする。
【0008】
これらの発明によれば、ユーザー操作に基づいて設定した特定範囲の隆起量に応じて、インク吐出量が変更されるため、膨張剤がインクに付着する範囲を任意に調整することができ、様々な画像におけるユーザーが意図したとおりの隆起印刷を簡易かつ確実に行うことができる。
【0009】
上記発明において、吐出量演算部は、画像の入力信号と、各色のインク吐出量との対応関係を定義する色変換プロファイルに基づいて、画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、吐出量変更部は、色変換プロファイルにおける対応関係を変更させることにより、インク吐出量の変更を行うことが好ましい。
【0010】
この場合には、予め画像の入力信号とインク吐出量を関連づけされている色変換プロファイルを作成するため、インク吐出量の算出に際し、色変換プロファイルを用いることにより、演算処理を簡略してインク吐出量を算出することができ、演算処理の速度が向上し、高速に隆起印刷を行うことができる。
【0011】
上記発明において、特定範囲及び隆起量は、隆起量設定部において、画像の色相範囲及び彩度範囲により設定可能であり、吐出量演算部は、画像の入力信号から決定される色相及び彩度に基づいて、画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、吐出量変更部は、画像の入力信号から決定される色相及び彩度のうち、隆起量設定部において設定された色相範囲及び彩度範囲に対応するインク吐出量の変更を行うことが好ましい。この場合には、隆起する範囲及び隆起量を、画像の色相範囲及び彩度範囲から設定するため、より詳細な隆起印刷設定が可能となり、様々な画像におけるユーザーが意図したとおりの隆起印刷物を提供することができる。
【0012】
上記発明において、特定範囲及び隆起量は、隆起量設定部において、画像に含まれる被写体毎に設定可能であり、吐出量演算部は、画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、吐出量変更部は、画像の入力信号から決定される色相及び彩度のうち、隆起量設定部において設定された被写体に含まれる色相範囲及び彩度範囲に対応するインク吐出量の変更を行うことが好ましい。この場合には、隆起する範囲及び隆起量を画像に含まれる被写体の特性に応じて設定できるため、より簡易かつ確実な隆起印刷設定が可能となり、様々な画像におけるユーザーが意図したとおりの隆起印刷物を提供することができる。
【0013】
さらに、他の発明は、記録媒体上に印刷された画像の特定範囲のインクに対して膨張剤を付着させ、膨張剤を膨張させる隆起印刷用のプログラムであって、コンピュータに、ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定ステップと、前記画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算ステップと、隆起量設定ステップにおける設定に基づいて前記吐出量演算ステップで算出されるインク吐出量を変更する吐出量変更ステップとを含む処理を実行させることを特徴とする。
【0014】
このような発明によれば、隆起印刷用のプログラムを使用することで、特別な処理装置を必要とせず、上述した隆起印刷システム及び方法を、様々なインクジェット印刷装置において実現することができる。すなわち、この隆起印刷用のプログラムを、汎用的なコンピュータやICチップにインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有する隆起印刷システムを容易に構築することができる。このプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またスタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。そして、このような隆起印刷用プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録することができ、汎用のコンピュータや専用コンピュータを用いて、上述したシステムや方法を実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、この発明によれば、インクジェット等の画像形成方式において、各画像情報に対応したインク吐出量の制御を行うことにより、簡易かつ確実に、インク量を最適化し、ユーザーが意図したとおりの降起印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る隆起印刷システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】実施形態に係る演算処理部における隆起印刷処理に係る機能モジュールを示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る隆起印刷に係る設定操作を行う隆起印刷モード用の設定画面を示す説明図である。
【図4】実施形態に係る一律隆起時におけるインク量変換前後の分布を示すグラフ図である。
【図5】実施形態に係る隆起させる場合のインク量変換前後の分布を示すグラフ図である。
【図6】実施形態に係る隆起させない場合のインク量変換前後の分布を示すグラフ図である。
【図7】実施形態に係る隆起印刷方法の概要を示すフローチャート図である。
【図8】実施形態に係る隆起印刷制御の概要を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る隆起印刷システムの実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る隆起印刷システムの全体構成を示す概念図である。
【0018】
(システムの全体構成)
本実施形態に係る隆起印刷システムは、記録媒体10に印刷された画像の特定範囲を隆起させる機能を備えており、具体的には、印刷処理を実行する印刷装置100に隆起処理を施す隆起処理装置200を連設して構成される。
【0019】
印刷装置100は、インクジェット方式による印刷処理を行うヘッドユニット110と、ユーザー設定を行うユーザーインターフェースと、ユーザー設定を反映させた印刷処理のために演算処理を実行する演算処理部330とを備えている。ユーザーインターフェースとしては、印刷装置100の上面に備えられユーザー操作を入力する操作パネル341や、印刷装置100にLAN等の通信ネットワーク1を通じて接続された外部PC343上で実行されるプリンタドライバ等のアプリケーションが備えられている。ヘッドユニット110は、通常の印刷処理の機能に加え、ユーザー設定に応じて変更されたインク吐出量で印刷する機能を有している。
【0020】
一方、隆起処理装置200は、印刷装置100で印刷された記録媒体10上のインクに対して膨張剤を付着させ、膨張剤を膨張させる装置であり、印刷済みの記録媒体10を挿入する給紙口200aと、挿入された印刷済みの記録媒体10に膨張剤であるパウダーを噴出して付着させるパウダー噴出部201と、パウダーが付着した記録媒体10に振動等を加えて余分なパウダーを落下させ除去するパウダー除去部202と、余分なパウダーが除去され、印刷されたインク上にのみパウダーが付着された記録媒体10に熱を加え、パウダーを膨張させる加熱部203とを備えている。
【0021】
(隆起印刷処理に関する設定及び制御)
そして、本実施形態における隆起印刷処理に関する設定及び制御は、上述した操作パネル341、又は外部PC343上のプリンタドライバ343aでユーザー操作を行い、このユーザー操作に応じて演算処理部330によって、画像データの解析や、ヘッドユニット110の動作及びインク吐出量を制御することにより行われる。図2は、演算処理部330における隆起印刷処理に係る機能モジュールを示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0022】
図2に示すように、演算処理部330は、主としてジョブデータ受信部331と、操作信号取得部333と、画像処理部332と、プロファイル管理部334と、色変換プロファイル記憶部335とを備えている。また、本実施形態において、操作パネル341、又は外部PC343上のプリンタドライバ343aは、ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定部340を構成する。
【0023】
ジョブデータ受信部331は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを、通信ネットワーク1を通じて受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれるデータを画像処理部332に受け渡すモジュールである。ここでの通信としては、例えば、0BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0024】
画像処理部332は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換、例えば、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換を行う回路であり、印刷画像を構成する画素毎の入力信号に基づいて、各画素を構成する各色について画像形成制御部332aに印刷を実行させる。本実施形態において、この画像処理部332は、画像形成制御部332a、吐出量演算部332bとを備えている。
【0025】
吐出量演算部332bは、画像の印刷におけるインク吐出量を算出するモジュールであり、特に、隆起印刷に際しては、ユーザー操作により設定された隆起量に応じて変更された色変換プロファイルに従って、各画素を構成する各色のインク吐出量(ドロップ数)を算出する。画像形成制御部332aは、各色のインクヘッドの駆動や、搬送経路の駆動手段の動作を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、吐出量演算部332bによる算出されたインク吐出量を記録媒体10に吐出するようにヘッドユニット110を駆動させる。
【0026】
操作信号取得部333は、ユーザーによる操作信号を受信するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザー操作に応じた処理を他のモジュールに実行させる。特に、本実施形態において、この操作信号取得部333は、隆起量設定部340から、ユーザーが隆起印刷処理を実行するか否かの指示操作や設定操作を受け取る。この操作信号取得部333で受け取った隆起印刷処理の要否や条件は、プロファイル管理部334に入力される。
【0027】
プロファイル管理部334は、画像処理における画像データの色彩、彩度情報や、画像の解像度等の画像に関するプロファイルを管理するモジュールであり、印刷処理に応じて、色変換プロファイル記憶部335から該当するデータを読み出し、画像処理部332へ送信する。特に、プロファイル管理部334は、吐出量変更部334aを有している。
【0028】
この吐出量変更部334aは、画像の印刷におけるインク吐出量を算出するモジュールであり、本実施形態では、図4に示すように、読み出した標準的な色変換プロファイルを照合することにより算出された吐出量を、隆起量設定部340における設定に基づいて変更する。
色変換プロファイル記憶部335は、画像の入力信号と、各色のインク吐出量との対応関係を定義する色変換プロファイルを記憶するモジュールであり、吐出量演算部332bが吐出するインク量を算出する際に、プロファイル管理部334により色変換プロファイルデータが参照され、入力画像の各画素の色に応じた各色の吐出量を算出する。
【0029】
隆起量設定部340は、ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定するインターフェース群であり、操作パネル341、又は通信インターフェース342を通じて接続されたプリンタドライバ343aなどから、ユーザーが隆起印刷処理を実行するか否かの指示操作や設定操作を行う。詳述すると、図3に示すように、操作パネル341及びプリンタドライバ343aには、隆起印刷モード用の設定画面340aが表示され、この設定画面340a上において隆起印刷に係る種々の設定操作を行うことができる。
【0030】
この設定画面340aには、複数の設定項目ボックス3401〜3404が含まれており、この設定項目ボックス毎に隆起印刷に関する設定ができるようになっている。これら設定項目ボックス3401〜3404は、光の三原色(RGB)、「肌」や「空」等の被写体、CRYKのように色料の三原色や黒などインクの色を直接、文字印刷など印刷モード毎に、所望する範囲及び隆起量を設定することができ、これらの設定項目ボックスを選択して項目ボックス毎に設定操作を行うことによって、目的の色相範囲及び彩度範囲をパターン化して一括的に設定することができる。具体的に、この設定項目ボックス3401〜3404は、隆起印刷用の補正を行うか否かを指示するチェックボックス340dをはじめ、ユーザーが記録媒体10に印刷された画像の特定範囲を隆起させるか否かを選択するラジオボタン340bや、隆起印刷を行う場合にその特定範囲や隆起量を設定する入力ボックス340cが含まれている。
【0031】
吐出量変更部334aは、画像のジョブデータ受信部331で受信される各画素の入力信号から決定される色相及び彩度のうち、設定画面340aにおいて設定された色相範囲及び彩度範囲に対応するインク吐出量の変更を行うモジュールである。具体的に吐出量変更部334aは、色変換プロファイルにおける各色のインク吐出量との対応関係を変更させることにより、インク吐出量の変更を行う。色変換プロファイルは、図4に示すように、彩度と総インク量との関係を所謂γ曲線状に関係づけたテーブルデータであり、通常のインク量の調整では、図3に示すように、このγ曲線を一律に増減させる。
【0032】
本実施形態における隆起印刷用の修正では、図4及び図5に示すように、一定の色相及び彩度の範囲に含まれるγ曲線上の値のみを増減させて、インク量の調整を行う。この吐出量の変更を行う範囲は、設定画面340aにおける設定に基づいて、入力信号から決定される色相及び彩度のうち、設定画面340aにおいて設定された色相範囲及び彩度範囲に含まれる入力信号のみを増減させる。
【0033】
このとき、ユーザー操作が隆起に関して指定した特定範囲については、ラジオボタン340bのチェック操作により、積極的に隆起させる設定と、隆起させない範囲としての設定が可能となっている。具体的には、特定範囲を積極的に隆起させる場合は、図5に示すように、隆起量設定部340を通じて隆起させる範囲A1を設定し、設定された範囲A1に含まれる画像入力信号に対し、下式に従って補正を加え、変換後のインク量が増加するように算出する。
(数1)
変換後インク量=((TinC-TminC)/(TmaxC-TminC))^γ)×(TmaxC-TminC)
【0034】
一方、特定範囲について積極的に隆起させない場合は、図6に示すように、隆起量設定部340を通じて隆起させない範囲A2を設定し、設定された範囲A2に含まれる画像入力信号に対し、下式に従い、変換後のインク量が減少するように算出する。
(数2)
変換後インク量=((TinC/TmaxC)^γ)×TmaxC
【0035】
なお、このとき、「TinC」は、入力彩度の総インク量、「TmaxC」は、隆起させる範囲内における最大彩度の総インク量、「TminC」は、隆起させる範囲内における最小彩度の総インク量、「γ」は、γ変換の指数(0<γ<1)、「Tth」は、隆起する総インク量を表す。この「Tth」は、テキストボックス340cにより段階的に設定できるようになっている。
【0036】
また、吐出量変更部334aは、被写体が特定範囲として設定された場合に、その被写体に含まれる色相範囲及び彩度範囲に対応するインク吐出量の変更を行う機能も備えている。この被写体毎の設定では、吐出量変更部334aが、被写体の特性に応じた色相範囲及び彩度範囲をパターンデータとして保持しており、設定画面340aで、被写体の種別を選択し、その隆起量を設定することによってパターンデータから色相範囲及び彩度範囲を読み出して一括で設定する。この被写体としては、本実施形態では、「肌」や「空」などが含まれている。
【0037】
(隆起印刷方法)
以上の構成を有す隆起印刷システムを動作させることによって、本発明の隆起印刷方法を実施することができる。図7は、本実施形態に係る隆起印刷方法の概要を示すフローチャート図である。
【0038】
隆起印刷の全体処理としては、図7に示すように、操作パネル341又はプリンタドライバ343a上で隆起印刷設定を行う(S101)。そして、印刷装置100により、印刷が開始される(S102)。ここでは、隆起量設定部340における設定に基づいて吐出量演算部332bで算出されるインク吐出量で印刷が実行される。
【0039】
その後、印刷後の記録媒体10を隆起処理装置200に挿入し、隆起処理装置200において、膨張剤であるパウダーを付着させ(S103)、振動等で余分な膨張剤を取り除き(S104)、加熱処理などによりパウダーを膨張させる(S105)。
【0040】
上述したステップS102では、具体的には、以下の制御を行う。図8は、本実施形態に係る隆起印刷制御の概要を示すフローチャート図である。
【0041】
図8に示すように、操作信号取得部333を通じて隆起量設定部340における設定を読み出し、隆起印刷が選択されたかどうかを判断する(S201)。隆起印刷が選択されていない場合は(S201における“N”)、通常印刷を実行し(S206)、その後の隆起印刷を行うことなく、印刷処理のみで動作を終了する。
【0042】
一方、ステップS201において、隆起印刷が選択されていると判断した場合は(S201における“Y”)、隆起範囲設定において、隆起させない範囲があるかどうかを判断する(S202)。隆起させない範囲がない場合は(S202における“N”)、その範囲については、標準プロファイルにより、一律インク量を増加させ(S207)、印刷を行い(S208)、終了する。他方、隆起させない範囲がある場合は(S202における“Y”)、詳細設定を行うため、画像の色相範囲及び彩度範囲を調整したり、画像に含まれる被写体毎の一括設定パターンを選択する(S203)。そして、吐出量演算部332bは、選択された色相、彩度範囲のインク量の増減を制御し(S204)、印刷を実行し(S205)、終了する。
【0043】
(隆起印刷用のプログラム)
上述した隆起印刷システム及び隆起印刷方法は、隆起印刷用のプログラムを使用することで、特別な処理装置を必要とせず、様々なインクジェット印刷装置において実現することができる。
【0044】
詳述すると、例えば、外部PC343上において、隆起印刷用プログラムを実行し、外部PC343のディスプレイ等に上述した設定画面340aをGUIとして表示させ、このGUIを通じて、隆起印刷の諸設定を行えるようにすることができる。具体的には、外部PC343に、ユーザー操作に基づいて特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定ステップと、画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算ステップと、隆起量設定ステップにおける設定に基づいて前記吐出量演算ステップで算出されるインク吐出量を変更する吐出量変更ステップとを含む処理を実行させる。
【0045】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、ユーザー操作に基づいて設定した特定範囲の隆起量に応じて、インク吐出量が変更されるので、膨張剤がインクに付着する範囲を任意に調整することができる。特に本実施形態においては、特定範囲の隆起量の設定を、画像の色彩範囲及び彩度範囲に応じた詳細な隆起印刷設定や、画像に含まれる被写体の特性に応じた簡易かつ確実な隆起印刷設定を選択することができるので、その結果、様々な画像におけるユーザーが意図したとおりの隆起印刷物を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、インク吐出量の算出に際し、色変換プロファイルを用いるので、演算処理を簡略してインク吐出量を算出することができ、演算処理の速度が向上し、高速に隆起印刷を行うことができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、隆起印刷用のプログラムを使用すれば、特別な処理装置を必要とせず、上述した隆起印刷システム及び方法を、様々なインクジェット印刷装置において実現することができる。すなわち、この隆起印刷用のプログラムを、汎用的なコンピュータやICチップにインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有する隆起印刷システムを容易に構築することができる。
【0048】
この隆起印刷用のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またスタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。そして、このような隆起印刷用プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体10に記録することができ、汎用のコンピュータや専用コンピュータを用いて、上述したシステムや方法を実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1…通信ネットワーク
10…記録媒体
100…印刷装置
110…ヘッドユニット
200…隆起処理装置
200a…給紙口
201…パウダー噴出部
202…パウダー除去部
203…加熱部
330…演算処理部
331…ジョブデータ受信部
332…画像処理部
332a…画像形成制御部
332b…吐出量演算部
333…操作信号取得部
334…プロファイル管理部
334a…吐出量変更部
335…色変換プロファイル記憶部
340…隆起量設定部
340a…設定画面
340b…ダイアログ
340c…入力ボックス
341…操作パネル
342…通信インターフェース
343…外部PC
343a…プリンタドライバ
3401〜3404…設定項目ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に印刷された画像の特定範囲を隆起させる隆起印刷システムであって、
ユーザー操作に基づいて前記特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定部と、
前記画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算部と、
前記隆起量設定部における設定に基づいて前記吐出量演算部で算出される前記インク吐出量を変更する吐出量変更部と、
前記吐出量変更部が変更したインク吐出量で前記記録媒体に対する印刷を実行する印刷部と、
前記印刷部で印刷された記録媒体上のインクに対して膨張剤を付着させ、該膨張剤を膨張させる膨張処理部と
を備えることを特徴とする隆起印刷システム。
【請求項2】
前記吐出量演算部は、前記画像の入力信号と、各色のインク吐出量との対応関係を定義する色変換プロファイルに基づいて、該画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、
前記吐出量変更部は、前記色変換プロファイルにおける前記対応関係を変更させることにより、前記インク吐出量の変更を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の隆起印刷システム。
【請求項3】
前記特定範囲及び前記隆起量は、前記隆起量設定部において、前記画像の色相範囲及び彩度範囲により設定可能であり、
前記吐出量演算部は、前記画像の入力信号から決定される色相及び彩度に基づいて、前記画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、
前記吐出量変更部は、前記画像の入力信号から決定される色相及び彩度のうち、前記隆起量設定部において設定された前記色相範囲及び前記彩度範囲に対応する前記インク吐出量の変更を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の隆起印刷システム。
【請求項4】
前記特定範囲及び前記隆起量は、前記隆起量設定部において、前記画像に含まれる被写体毎に設定可能であり、
前記吐出量演算部は、前記画像を構成する各色のインク吐出量を算出し、
前記吐出量変更部は、前記画像の入力信号から決定される色相及び彩度のうち、前記隆起量設定部において設定された被写体に含まれる色相範囲及び彩度範囲に対応する前記インク吐出量の変更を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の隆起印刷システム。
【請求項5】
記録媒体に印刷された画像の特定範囲を隆起させる隆起印刷方法であって、
ユーザー操作に基づいて前記特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定ステップと、
前記画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算ステップと、
前記隆起量設定ステップにおける設定に基づいて前記吐出量演算ステップで算出される前記インク吐出量を変更する吐出量変更ステップと、
前記吐出量変更ステップにおいて変更したインク吐出量で前記記録媒体に対する印刷を実行する印刷ステップと、
前記印刷ステップで印刷された記録媒体上のインクに対して膨張剤を付着させ、該膨張剤を膨張させる膨張処理ステップと
を備えることを特徴とする隆起印刷方法。
【請求項6】
記録媒体上に印刷された画像の特定範囲のインクに対して膨張剤を付着させ、該膨張剤を膨張させる隆起印刷用のプログラムであって、コンピュータに、
ユーザー操作に基づいて前記特定範囲の隆起量を設定する隆起量設定ステップと、
前記画像の印刷におけるインク吐出量を算出する吐出量演算ステップと、
前記隆起量設定ステップにおける設定に基づいて前記吐出量演算ステップで算出される前記インク吐出量を変更する吐出量変更ステップと
を含む処理を実行させることを特徴とする隆起印刷用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188709(P2010−188709A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38543(P2009−38543)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】