説明

階段の吸音構造

【課題】体裁を悪くすることなく、吸音効果を発揮することができる階段の吸音構造を提供する。
【解決手段】各蹴込み材2…が、その背面側を隠蔽するが、背面側への音の透過は許容する性質の布製の膜材からなり、該蹴込み材2…の背面側にスリット型の孔あき吸音板3が設けられると共に、該孔あき吸音板3の背後に空気層5を形成する無孔板4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
階段の吸音構造として、各蹴込み材板を、孔あき吸音板で構成し、該蹴込み材板の背後に空気層を形成する無孔板を設けたものは、従来より知られている。
【特許文献1】特開2003−293474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような構造では、蹴込み材板として孔あき吸音板を用いているため、孔あき吸音板が階段室に露出してしまい、体裁を悪くしてしまうことがある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、体裁を悪くすることなく、吸音効果を発揮することができる階段の吸音構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、各蹴込み材が、その背面側を隠蔽するが、背面側への音の透過は許容する性質の膜材からなり、該蹴込み材の背面側に孔あき吸音板が設けられると共に、該孔あき吸音板の背後に空気層を形成する無孔板が設けられていることを特徴とする階段の吸音構造によって解決される。
【0006】
この構造では、各蹴込み材が、背面側への音の透過を許容する性質の膜材からなっているので、孔あき吸音板と空気層を蹴込み材の背面側に設けたものでありながら、孔あき吸音板と空気層による吸音効果を発揮することができる。
【0007】
しかも、各蹴込み材は、その背面側を隠蔽する性質を備えているので、蹴込み材を通じて孔あき吸音板が見えてしまうことがなく、階段の体裁を孔あき吸音板によって悪くすることがない。
【0008】
上記の構造において、蹴込み材が、布製の膜材からなる場合は、階段を上っていくときに爪先が蹴込み材に当たっても痛くなく、ヒトに優しい階段を実現することができる。
【0009】
また、前記孔あき吸音板が、複数のスリット孔を並列させたスリット型孔あき吸音板からなり、各スリット孔が階段の幅方向に向けられている場合は、歩行音に対する吸音効果を高いものにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の階段の吸音構造は、以上のとおりのものであるから、体裁を悪くすることなく、吸音効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1及び図2に示す実施形態の階段構造において、1…は段板、2…は蹴込み材であり、各蹴込み材2…の背面側には、孔あき吸音板3が、階段の傾斜方向に向けられて設置されていると共に、該孔あき吸音板3の背後に空気層5を形成する無孔板4が同じく階段の傾斜方向に向けられて設けられている。
【0013】
孔あき吸音板3は、複数のスリット孔3a…を並列させたスリット型孔あき吸音板からなっており、各スリット孔3a…が階段の幅方向に向けられて備えられている。
【0014】
そして、各蹴込み材2は、その背面側を隠蔽するが、背面側への音の透過は許容する性質を備えた布製の膜材で構成されている。
【0015】
上記の階段の吸音構造では、各蹴込み材2…が、背面側への音の透過を許容する性質を備えているので、図1(ロ)に示すように、歩行音等は、蹴込み材2…を透過するが、蹴込み材2…の背後には、孔あき吸音板3と、その背後に空気層5が備えられているので、孔あき吸音板3と空気層5による吸音作用で、歩行音等が、階段室や、それと隣接する玄関ホールや廊下で響くのを効果的に防ぐことができる。
【0016】
特に、本実施形態では、吸音板として、スリット型孔あき吸音板3を採用しているので、吸音板3の厚さ寸法a、各スリット孔3aの幅寸法b、スリット孔3a…の間の間隔寸法c、各スリット孔3aの長さ寸法d、空気層5の厚さ寸法eを種々設定することによって、環境に応じて、吸音しようとする周波数の音を効果的に吸音することができる。例えば、aを8mm、bを5mm、cを50mm、dを500mm、eを30mmに設定することにより、共振周波数を607Hz程度となしえて、特定の環境での歩行音等を効果的に吸音することができるようになる。
【0017】
しかも、各蹴込み材2…は、その背面側を隠蔽する性質を備えた布製の膜材で構成されているので、蹴込み材2…を通じて孔あき吸音板3が見えず、階段の体裁が孔あき吸音板3によって悪くなることもなく、また、階段を上っていくときに爪先が蹴込み材2に当たっても痛くなくてヒトにも優しい。
【0018】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、孔あき吸音板として、スリット型の孔あき吸音板3を用いた場合を示したが、各種形態の孔を備えた孔あき吸音板が用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】階段の吸音構造の実施形態を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は吸音の作用を示す断面側面図である。
【図2】孔あき吸音板と無孔板とを階段の背面側から分離させた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
2…蹴込み材
3…スリット型孔あき吸音板(孔あき吸音板)
3a…スリット孔
4…無孔板
5…空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各蹴込み材が、その背面側を隠蔽するが、背面側への音の透過は許容する性質の膜材からなり、該蹴込み材の背面側に孔あき吸音板が設けられると共に、該孔あき吸音板の背後に空気層を形成する無孔板が設けられていることを特徴とする階段の吸音構造。
【請求項2】
前記蹴込み材が、布製の膜材からなる請求項1に記載の階段の吸音構造。
【請求項3】
前記孔あき吸音板が、複数のスリット孔を並列させたスリット型孔あき吸音板からなり、各スリット孔が階段の幅方向に向けられている請求項1又は2に記載の階段の吸音構造。

【図1】
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【図2】
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