説明

階段

【課題】あらゆる箇所に設置可能で、しかも施工の際の作業性にも優れ、さらに強度や美感にも配慮された階段を提供すること。
【解決手段】踏み板55と一体化された支持板51を、コンクリートなどによって形成された側壁面58に取り付けていく形態の階段において、対になる受け金具11と掛け金具21を用いて、受け金具11を側壁面58に取り付けた上、掛け金具21を支持板51の一端面に取り付ける。受け金具11と掛け金具21には、対になる差込帯13、23と傾斜面22、12が形成されており、これらを組み合わせるだけの簡単な作業で踏み板55の取り付けが完成する。本発明は踏み板55を片持ちで支持するため、強度のある側壁面58があれば、あらゆる場所に設置できる。しかも金具類の大半を覆い隠すことができ、美感に優れており、また隣接する支持板51と踏み板55を釘類40で一体化することで、全体の強度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅での使用に適した階段に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の住宅の内部に設置される階段は、図7のような構造が広く普及している。この構造は、上下の階を結ぶように二枚の側桁が斜方向に配置され、左右の側桁の内側に溝が形成されており、この中に踏み板の両端部が差し込まれている。踏み板を溝で支持することで、強度や信頼性に優れているほか、側桁と踏み板のいずれも、板状の木材を直線的に加工するだけで良く、製造が容易で費用も抑制できる。なお上下の踏み板の間が開放されていると、思わぬ事故が発生する恐れがあり、隣接する踏み板の間を塞ぐケコミ板を取り付ける場合が多い。
【0003】
一般の住宅向けの階段は、図7に示すもので何らの問題もないが、施工作業の効率化などを目的として下記特許文献1のような技術が提案されており、また螺旋階段などの特殊な用途向けに下記特許文献2のような技術が提案されている。そのほか、階段とは無関係だが、本発明と関連して、特許文献3のような技術が存在している。この技術は、大型木造建築物を効率的に施工することを目的としており、一対の金物に受部とテーパ部を設けて、これらを組み合わせることで双方を一体化している。
【特許文献1】特開2005−256300号公報
【特許文献2】特開2007−204929号公報
【特許文献3】特開2007−132168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改築によって階段を新設する場合には、その周辺の構造や強度などによって様々な制約が発生する。例えば、上階の床付近に梁が設置されていなければ、側桁の配置が困難になるため、建物の骨格を改良するなどの大掛かりな工事が必要になる。しかし建物の骨格を修正する場合、耐震性などを低下させる恐れがあるほか、作業規模が拡大して費用も増加しやすい。そのため梁などが周辺にない場合でも、何らかの手段で階段を設置できる技術が模索されている。また改築のための資材を室内に持ち込む際は、人力に依存することが多く、重量物や長尺物の取り扱いは難しい。そのほかにも、階段を新設するような改築を行う場合、居住者の日常生活に大きな影響を与えるため、作業時間はできるだけ短縮すべきである。
【0005】
階段を通過する際、強度上の問題がない場合でも、踏み板に大きな変形が生じると通行者に不安感を与え、建物に対する信頼性を喪失させる恐れがある。したがって踏み板を始めとする各構成要素は、十分な剛性を確保する必要がある。また階段は、室内において大きな構造物であり、しかも居住者の視線が届きやすいため、機能性以外の美感にも十分な配慮が必要である。
【0006】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、あらゆる箇所に設置可能で、しかも施工の際の作業性にも優れ、さらに強度や美感にも配慮された階段の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、踏み板と、該踏み板の下面を支える支持板と、全数の支持板を支える側壁面に固定される受け金具と、該受け金具と側面同士が面接触する掛け金具と、支持板の一端面に形成された縦溝の奥面に埋設され且つ一端面に雌ネジが形成された埋設体と、前記雌ネジと螺合して掛け金具を縦溝の奥面に固定する固定ボルトと、から成る階段であって、前記受け金具および掛け金具は、垂直に延在する棒状であり、受け金具の上部および掛け金具の下部には、双方の接触面の反対面に先細り状の傾斜面が形成され、更に受け金具の下部には、掛け金具の傾斜面を差し込むための差込帯が形成され、また掛け金具の上部には、受け金具の傾斜面を差し込むための差込帯が形成され、両差込帯には、差し込まれる傾斜面と平行に延びる当接面を有しており、受け金具と掛け金具との結合によって支持板を側壁面に固定することを特徴とする階段である。
【0008】
本発明は、従来のように複数の踏み板を左右の側桁で支持する構造ではなく、踏み板を側壁面に一枚ずつ片持ちで取り付けていく構造である。側壁面とは、コンクリートを打設した壁面や、登り梁の側面など、所定の強度を有する概ね垂直な面を意味している。また踏み板を片持ちで取り付けていくため、踏み板の下面に補強用の支持板を配置しており、この支持板を側壁面に取り付ける方法として、受け金具と掛け金具を使用している。受け金具と掛け金具は、対になる金具であり、側壁面に受け金具を取り付けた上、対する支持板に掛け金具を取り付けて、双方の金具を結合させることで支持板を側壁面に取り付けることができる。本発明による受け金具と掛け金具は、前記特許文献3と同様な構造であり、連結強度や施工効率の向上などの特徴を全て引き継いでいる。
【0009】
受け金具と掛け金具は、いずれも矩形断面の棒状鋼材で長さが等しく、垂直に延在する状態で使用され、双方の金具が相手を引き寄せることで、側面同士が強固に密着する構造である。また、受け金具の上部および掛け金具の下部に形成される傾斜面は、金具同士の接触面とは反対側に形成され、その傾斜方向は、金具の端部に向かうに連れて接触面に近づいていく先細り状とする。他に、受け金具の下部および掛け金具の上部に形成される差込帯は、対になる金具の端部(傾斜面のある方)を差し込むことのできる環状の帯であり、双方の金具を一体化させる機能がある。なお当接面は、差込帯の内周面のうち、傾斜面に接触する部分を指しており、傾斜面と平行になるよう角度が調整されている。
【0010】
したがって、一方の金具の一端部を相手方の差込帯の中に差し込んでいくと、傾斜面と当接面との摺動により、双方の金具を密着させるような分力が発生するため、金具同士が強固に面接触して隙間の発生を防止する。なお本発明では、差込帯の形成位置を、受け金具の下部および掛け金具の上部に限定しているため、受け金具の上方に掛け金具を移動した後、掛け金具を徐々に下降させていき、やがて双方の差込帯に傾斜面が入り込むと、掛け金具は、受け金具によって支持された状態になる。
【0011】
縦溝は、支持板において側壁面側の端面に形成された上下に延びる切り欠きであり、受け金具および掛け金具の全体を収容する機能がある。また埋設体は、掛け金具を支持板に固定するために使用され、縦溝の奥から支持板の長手方向(水平方向)に差し込まれる。この埋設体の掛け金具側の端面には、雌ネジが形成されている必要がある。埋設体の例としてはラグスクリューが挙げられ、その側周面に形成された螺旋状の突出部が支持板の中に食い込み、双方の摩擦によって不動状態が維持され、木材の経年変形の影響を受けにくい。次に固定ボルトは、埋設体の雌ネジに螺合して掛け金具を支持板に取り付ける機能があり、掛け金具には、固定ボルトを挿通するための孔を設ける必要がある。なお、一個の掛け金具を取り付けるために使用される埋設体の数量については、想定される荷重や周辺の寸法によって都度決まるが、最低でも一個は必要である。
【0012】
このように構成することで、側壁面の所定の位置に受け金具を取り付けた上、また踏み板を載せた支持板の一端面に掛け金具を取り付けた後、受け金具の上方から掛け金具を差し込んで行くと、受け金具と掛け金具が結合して、踏み板が側壁面によって支持された状態になる。その後、踏み板などの自重が掛け金具に作用することで、受け金具と掛け金具は次第に密着度を高めていくため、この金具に大きな曲げモーメントが作用した場合でも十分な剛性を確保できる。なお踏み板と支持板とを一体化する方法については、各種金具や接着剤など、従来技術を使用する。
【0013】
請求項2記載の発明は、踏み板の剛性を一段と高めるもので、踏み板の一側面は、上段側に隣接する支持板の側面に接触しており、且つその接触部を貫通する釘類を打ち込んでいることを特徴とする。踏み板の一側面とは、踏み板の計四箇所の側面のうち、階段を上っていく通行者から見て、最も奥側に位置する側面であり、この面は構造上、一つ上段の踏み板を載置している支持板と隣接する。そのため踏み板および支持板の寸法や配置を調整して、踏み板の側面に上段の支持板の側面を接触させると、踏み板の奥側の隙間を塞ぐことができる。さらに接触部を貫通するように釘類を打ち込んで双方を一体化すると、踏み板の剛性が高まり変形が抑制される。なお釘類は、所定の長さが確保されていれば、その形態については自在であり、単純な平釘やネジ釘などを都度選択すればよい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明のように、踏み板を載せた支持板を、受け金具と掛け金具との結合を利用して側壁面に取り付けることで、従来のような側桁が不要になり、コンクリート壁など、受け金具の取り付けが可能な側壁面があれば、あらゆる場所に階段を設置できる。また施工の際は、側壁面に受け金具を取り付けておけば、後は、これに掛け金具を差し込んでいく単純な作業だけで踏み板の仮設が素早く完了する。したがって、支持板を所定の形状に加工した後、ラグスクリューなどの埋設体の埋め込みから、掛け金具や踏み板の取り付けまでを製材工場などで一括して行うならば、現地での作業を必要最低限に抑制できるほか、現地へ輸送する際は、個々の踏み板が分離しているため、人力での持ち運びも容易である。なお、長尺の登り梁の一面を側壁面として利用する場合もあるが、登り梁は単なる棒材であり、輸送などの取り扱いに大きな困難はない。そのほか、本発明のような階段は、個々の踏み板が側壁面に取り付けられた特異な構造であり、人々の注目を集めやすく、しかも金具類は、大半が支持板などに埋め込まれるため、美感にも優れている。本発明は、直線状に延びる階段での使用を想定しているが、側壁面を円断面や多角形断面とすることで、螺旋階段としての使用も可能である。
【0015】
請求項2記載の発明のように、踏み板の一側面を隣接する支持板と釘類で一体化することで、踏み板は、自らを載置している支持板のほか、隣接する支持板でも拘束されることになり、踏み板の剛性が向上する。そのため本発明のように片持ちで踏み板を支持する場合でも、踏み板の変形が抑制され、通行者に不安を感じさせることがない。また、踏み板の奥面が支持板で塞がれているため、従来のケコミ板と同様な効果を発揮して、安全性が一段と向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明による階段の構造の概要を示している。本発明においても、複数の踏み板55を等間隔で配置している点は従来と全く同様だが、その構造は大きく異なる。なお本図では、階段全体のうち、一組の踏み板55だけを抽出して描いており、また実際の登り梁56は上下の階を結ぶように架設されており、この登り梁56の両側面のうち階段を設置する方を側壁面58と規定しており、この面に複数の踏み板55が等間隔で配置されている。踏み板55は、支持板51の上面に載置されており、この支持板51の一端面だけが登り梁56で支えられた片持ち構造になっている。なお踏み板55および支持板51は、集成材を含む木材を所定の形状に加工したもので、踏み板55は所定の荷重に耐えるだけの厚さが確保されており、また支持板51は垂直荷重に対する剛性を高めるため、直立した状態で使用される。
【0017】
支持板51と登り梁56との結合は、登り梁56に取り付けられる受け金具11と、支持板51に取り付けられる掛け金具21によって実現している。両金具は鋼製であり、矩形断面で上下に延びる棒形状を基調としており、結合の際は、双方の高さが同一に揃い側面同士が段差のない状態で接触する。さらに双方の結合を維持できるよう、傾斜面12,22と差込帯13,23が形成されている。差込帯13,23は、対になる金具の端部を差し込むことのできる環状で、水平に対してやや傾斜している。また傾斜面12,22は、差込帯13,23の中に円滑に入り込めるよう、金具の端部を先細り状にした面である。この傾斜面12,22は構造上、金具同士の接触面とは反対側に形成され、その傾斜方向は一方だけに限定されている。なお差込帯13,23の内周面のうち、傾斜面12,22と接触する部分を当接面27,17と規定しており、この当接面27,17は傾斜面12,22と平行になっている。そのため差込帯13,23の中に傾斜面22,12が入り込むと、傾斜面22,12と当接面17,27との摺動により、双方の金具を密着させるような分力が発生する。
【0018】
このように受け金具11と掛け金具21は、傾斜面12,22と差込帯13,23によって一体化する。したがって本図のように、受け金具11の下部に差込帯13があり、対する掛け金具21の下部に傾斜面22があるため、受け金具11の上方から掛け金具21を接近させていくと、傾斜面22が差込帯13によって保持され、しかも傾斜面22と当接面17が接触して、掛け金具21が受け金具11に引き寄せられていく。一方、受け金具11の上部には傾斜面12があり、対する掛け金具21の上部に差込帯23があり、この傾斜面12が差込帯23の中に入り込むと、上部でも掛け金具21が受け金具11に引き寄せられていく。したがって両金具が差込帯13,23によって結合した後は、掛け金具21に作用する下向きの荷重を登り梁56が受け止める。ただし、掛け金具21に上向きの荷重が作用した場合を考慮して、両金具を一体化するためのドリフトピン39を打ち込んでいる。この打ち込みのため、受け金具11には一対の側板18を設けており、その端部に上下二組のピン孔16を形成しており、対する掛け金具21にもピン孔26を形成している。さらに支持板51の側面にも、所定の位置にピン孔54を形成している。
【0019】
受け金具11と掛け金具21は、踏み板55に作用する荷重を伝達する重要な部品であり、これらは登り梁56や支持板51と強固に一体化する必要があり、ラグスクリュー31,35を介在させている。登り梁56の側壁面58に埋め込まれるラグスクリュー31は、その側周面に螺旋状の突出部が形成されており、これが登り梁56の中に食い込むことで、双方の間に強力な摩擦が発生して不動状態を維持する。このラグスクリュー31の一端面には、埋め込みの際、回転を付与する工具を掛けるための六角部32が形成されており、その中心に雌ネジ33が形成されている。なおラグスクリュー31は、汎用のネジ釘などに比べて直径が大きいため、埋め込みに先立ち、所定の位置に下穴57を加工しておく必要がある。また固定ボルト34は、受け金具11を登り梁56に固定するために使用され、受け金具11の座グリ穴14と係止孔15を挿通して、ラグスクリュー31の雌ネジ33に螺合する。なお座グリ穴14は、固定ボルト34の頭部と掛け金具21との接触を防止するために設けている。また本図では、登り梁56に埋め込まれるラグスクリュー31を一個だけ描いているが、実際には上下に並んで二個使用され、座グリ穴14と係止孔15も上下に並んでおり、固定ボルト34も二本使用される。
【0020】
掛け金具21は、ラグスクリュー35(埋設体)を介して支持板51に固定される。このラグスクリュー35は受け金具11で使用されるものと同一形状だが、逆向きで使用されるため、六角部36や雌ネジ37は右上に位置している。またラグスクリュー35を埋め込むための下穴53は、支持板51の端面ではなく、端面の中央部分を切り欠いた縦溝52の奥面に形成されている。この縦溝52は、受け金具11および掛け金具21の全体を収容する機能があり、これによって両金具の露見を防止できるほか、縦溝52よりも外側では、支持板51の端面が登り梁56の側壁面58に接触して剛性が向上する。なお掛け金具21の固定方法は、受け金具11と同様であり、掛け金具21の側面に座グリ穴24と係止孔25が形成され、この中に固定ボルト38を挿通してラグスクリュー35の雌ネジ37に螺合させる。
【0021】
支持板51の上面には踏み板55が載置されているが、双方を一体化する方法については、各種金具や接着などを自在に選択でき、本図では美感を考慮して接着となっている。なお踏み板55は、縦溝52の上部を覆っているため、受け金具11などは上方から全く視認できない。そのほか踏み板55の剛性を向上するため、踏み板55の一側面(図の左上の方)と上段側の支持板51の側面を接触させており、階段の背後からこの接触面に向けて釘類40を打ち込んでいる。これによって踏み板55は上下の支持板51によって保持されることになり、剛性が一段と向上する。また上下の踏み板55の間が支持板51によって塞がれるため、安全性も向上する。
【0022】
図2は、図1に示す金具などの取り付けを終えた状態を示している。なお踏み板55と支持板51については、縦断面で描いている。登り梁56の側壁面58には、受け金具11が取り付けられており、また支持板51の縦溝52の中には掛け金具21が取り付けられている。登り梁56の中にラグスクリュー31が埋め込まれているため、受け金具11は固定ボルト34によって側壁面58と強固に一体化されており、様々な荷重に耐えることができる。なお固定ボルト34の頭部は座グリ穴14によって受け金具11の内部に埋め込まれており、掛け金具21と接触することはない。
【0023】
対する支持板51と踏み板55については、支持板51の一端面に上下を貫く縦溝52が加工されており、この中に掛け金具21が収容されている。また縦溝52の奥面には、ラグスクリュー35を埋め込むための下穴53が加工されており、ラグスクリュー35と掛け金具21が一体化されている。本図のように、踏み板55と支持板51が一体化され、さらに掛け金具21が取り付けられた状態において、これを登り梁56の上方に移動させて、受け金具11と掛け金具21の位置を揃えた後、徐々に下降させていき、双方の差込帯13,23の中に傾斜面22,12を差し込むと、踏み板55の仮設が完了する。
【0024】
本発明を実施する場合、踏み板55や支持板51については、製材などの初期段階でラグスクリュー35の埋め込みや掛け金具21の取り付けを終えた後、現地に輸送することで、金具類の取り付けを工場内で効率的に実施でき、しかも輸送の際は個々の踏み板55が分離しているため、取り扱いも容易である。また受け金具11の取り付けについては、既存の登り梁56や各種の壁を使用する場合、準備作業として所定の位置にラグスクリュー31を埋め込んでおく必要がある。
【0025】
図3は、図2の後、踏み板55が登り梁56によって支持された状態である。受け金具11と掛け金具21を結合させた後、ピン孔16,26にドリフトピン39を打ち込むと、登り梁56と踏み板55は完全に一体化される。そのため、踏み板55を持ち上げようとする荷重が作用した場合でも、掛け金具21が受け金具11から離脱することはない。また踏み板55の四側面のうち、階段を上る通行者から見て奥側に位置する一面は、上段側の支持板51と面接触しており、この接触面を貫通するように釘類40を打ち込んでいるため、踏み板55は、下面および側面が支持板51によって拘束され、剛性が向上する。なお釘類40は、一枚の踏み板55に複数を打ち込むことが好ましい。
【0026】
図4は、側壁面58と支持板51との境界付近の構成を示す縦断面図であり、図4(A)は支持板51が側壁面58から分離している状態で、図4(B)は支持板51が側壁面58に取り付けられた状態である。図4(A)のように、登り梁56の側壁面58には固定ボルト34を介して受け金具11が取り付けられている。この固定ボルト34を螺合させるため、側壁面58には水平に延びる下穴57が加工されており、この中にラグスクリュー31が埋め込まれている。ラグスクリュー31の側周面には突出部が形成され、下穴57の周囲に食い込んでいる。また支持板51については、端面に加工された縦溝52の奥にラグスクリュー35が埋め込まれており、これに掛け金具21が取り付けられている。なお支持板51に加工される縦溝52は、踏み板55によって完全に塞がれるため、金具などは上方から視認できない。
【0027】
受け金具11の下部には、差込帯13が形成されており、対面する掛け金具21の下部には傾斜面22が形成されており、この差込帯13の中に掛け金具21の下部が入り込むことで、掛け金具21に作用する荷重を受け金具11に伝達できる。また、掛け金具21上部の差込帯23は、受け金具11上部の傾斜面12を拘束して、両金具の分離を防止する。差込帯13,23の当接面17,27は、対になる傾斜面22,12と傾きが等しく、双方が面接触することで両金具が密着状態になる。さらに図4(B)のように、掛け金具21の浮き上がりを防止するため、両金具を貫通するドリフトピン39を打ち込んでいる。
【0028】
図5は、本発明による階段の構成例を示しており、図5(A)は側面から見たもので、図5(B)は背面から見たもので、図5(C)は正面から見たものである。図5(A)のように、各踏み板55は支持板51によって受け止められており、各支持板51は、受け金具11と掛け金具21との結合によって登り梁56の側壁面58と一体化している。また最上段を除く各踏み板55の一側面(図の左側)は、上段に位置する支持板51の側面と接触しており、この間を貫通するように釘類40が打ち込まれている。そのため踏み板55は、自らを載せている支持板51のほか、隣接する支持板51によっても拘束され剛性が高く、踏み板55の変形や振動を防止できる。他にも、側壁面58と対向する側の安全性を確保するため、踏み板55を利用して手すり41を設けているが、このような付帯設備については、設置に何らの制約もない。次に図5(B)のように、釘類40は階段の背面側から打ち込む構造であるため、通行者は釘類40を全く視認できない。また支持板51の長さは、必ずしも踏み板55の幅に一致させる必要はなく、強度や安全性などの問題がなければ、図5(C)のように、支持板51が踏み板55の先端に達していなくても良い。なお本図のように、最下段の支持板51は、段差を均一にするため他に比べて高さを抑えている。
【0029】
図6は、図1とは異なる本発明の形態例を示している。ここでも受け金具11と掛け金具21を使用している点は何らの相違点もないが、両金具の取り付け方法は異なっており、ラグスクリューを一切使用していない。図1では受け金具11を登り梁56に取り付けているが、本図ではコンクリート面を側壁面58として使用しており、この中にアンカー59を埋め込んで受け金具11を取り付けている。アンカー59は、物理的あるいは化学的に側壁面58と一体化しており、その一端面に雌ネジ33が形成されており、これに固定ボルト34を螺合させて受け金具11を取り付けている。また支持板51に掛け金具21を取り付けるための埋設体としては、異形棒鋼42を使用している。この異形棒鋼42は、縦溝52の奥に加工された下穴53の中に差し込まれた上、接着剤によって双方が一体化されている。なお異形棒鋼42は、図の右側の端面に雌ネジ37が形成されており、これに固定ボルト38を螺合させて掛け金具21を取り付けている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による階段の構造の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す金具などの取り付けを終えた状態を示す斜視図である。
【図3】図2の後、踏み板が登り梁によって支持された状態を示す斜視図である。
【図4(A)(B)】側壁面と支持板との境界付近の構成を示す縦断面図であり、(A)は支持板が側壁面から分離している状態で、(B)は支持板が側壁面に取り付けられた状態である。
【図5(A)(B)(C)】本発明による階段の構成例を示しており、(A)は側面図で、(B)は背面図で、(C)は正面図である。
【図6】図1とは異なる本発明の形態例を示す斜視図であり、受け金具の取り付けにアンカーを使用しており、掛け金具の取り付けに異形棒鋼を使用している。
【図7】住宅などで使用されている一般的な階段の構造例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
11 受け金具
12 傾斜面
13 差込帯
14 座グリ穴
15 係止孔
16 ピン孔
17 当接面
18 側板
21 掛け金具
22 傾斜面
23 差込帯
24 座グリ穴
25 係止孔
26 ピン孔
27 当接面
31 ラグスクリュー(受け金具側)
32 六角部
33 雌ネジ
34 固定ボルト
35 ラグスクリュー(埋設体)
36 六角部
37 雌ネジ
38 固定ボルト
39 ドリフトピン
40 釘類
41 手すり
42 異形棒鋼(埋設体)
51 支持板
52 縦溝
53 下穴
54 ピン孔
55 踏み板
56 登り梁
57 下穴
58 側壁面
59 アンカー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み板(55)と、該踏み板(55)の下面を支える支持板(51)と、全数の支持板(51)を支える側壁面(58)に固定される受け金具(11)と、該受け金具(11)と側面同士が面接触する掛け金具(21)と、支持板(51)の一端面に形成された縦溝(52)の奥面に埋設され且つ一端面に雌ネジ(37)が形成された埋設体(35又は42)と、前記雌ネジ(37)と螺合して掛け金具(21)を縦溝(52)の奥面に固定する固定ボルト(38)と、から成る階段であって、
前記受け金具(11)および掛け金具(21)は、垂直に延在する棒状であり、受け金具(11)の上部および掛け金具(21)の下部には、双方の接触面の反対面に先細り状の傾斜面(12、22)が形成され、更に受け金具(11)の下部には、掛け金具(21)の傾斜面(22)を差し込むための差込帯(13)が形成され、また掛け金具(21)の上部には、受け金具(11)の傾斜面(12)を差し込むための差込帯(23)が形成され、両差込帯(13、23)には、差し込まれる傾斜面(22、12)と平行に延びる当接面(17、27)を有しており、
受け金具(11)と掛け金具(21)との結合によって支持板(51)を側壁面(58)に固定することを特徴とする階段。
【請求項2】
前記踏み板(55)の一側面は、上段側に隣接する支持板(51)の側面に接触しており、且つその接触部を貫通する釘類(40)を打ち込んでいることを特徴とする請求項1記載の階段。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(A)(B)】
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【図5(A)(B)(C)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−174116(P2009−174116A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10565(P2008−10565)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】