説明

階段

【課題】
美感に優れているほか、あらゆる場所に設置可能で、しかも施工の際の作業性にも優れた階段を提供すること。
【解決手段】
支持部材(登り梁31など)と踏み板41を貫通する軸棒11を用いて、軸棒11には螺旋状の凸条12など、支持部材との締結手段を設けるほか、軸棒11の側周面には環状の凹部14を設ける。この凹部14に向けて踏み板41の下面から止めネジ21などの留め具を打ち込むと、その先端が凹部14に入り込み、踏み板41が固定される。このように踏み板41に軸棒11が差し込まれることで、踏み板41の強度を向上でき、その結果、踏み板41の厚さを削減可能でデザインの自由度が高まるほか、軸棒11を差し込む位置を変えることで、様々な階段を構築できる。そのほか凹部14を設けているため、止めネジ21などを軸棒11に挿通させる必要がなく、作業性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅など小規模な建物での使用に適した階段に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の住宅に設置される階段は、通行者を載せる踏み板を左右の側桁で支持する構造が広く普及している。この構造は、踏み板の両端を側桁の中に差し込んでいるため、踏み板を確実に支持できるほか、金具などが外部に露見しないため美感も向上する。しかも踏み板や側桁は、板材を所定の形状に切り出した後、溝などを加工するだけで組み立てが可能で、製作が容易で費用も抑制できる。なお上下の踏み板の間が開放していると、思わぬ事故が発生する恐れがあり、隣接する踏み板の間を塞ぐケコミ板を取り付ける場合が多い。
【0003】
そのほかの階段構造の例としては、特許文献1が挙げられる。この階段は、階の上下を結ぶように中桁(登り梁)を配置して、その上面に踏み板を取り付けている。この構造は踏み板の周囲が開放されており、ストリップ階段やスケルトン階段などと呼ばれており、吹き抜け空間などに使用した場合、周囲に独特の雰囲気を醸し出す。なお特許文献1は、階段の基本構造そのものに特徴がある訳ではなく、幼児の転落防止を目的として、上下の踏み板の間に棒状部材を設けたことを特徴としている。
【特許文献1】特開2007−321497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住宅は、日常生活を快適に過ごすための基本的な機能のほか、建物内外のデザインも居住者の満足度に大きな影響を与える。そのため階段についても、側桁と踏み板を組み合わせた典型的な構造ではなく、従来とは一線を画す斬新なデザインを導入したいという要望は根強く、前記特許文献のようなストリップ階段もその一つである。しかし階段は、通行者の安全性を確保するため十分な強度が必要であり、デザインに関しては様々な制約が生じやすい。
【0005】
仮に所定の強度が確保できた場合でも、施工性にも十分な配慮が必要である。特に改築で新たに階段を設置する際は、資材の搬入に重機を使用できないことも多く、人力での輸送にも対応できるよう部品を細分化して、現地で組み立て可能な構造が好ましい。また改築では、新築時には想定していない場所に階段を設置することもあるため、様々な場所に設置可能な柔軟性が必要である。しかも改築は、居住者の生活を維持しながら作業を進めるため、作業時間を極力短縮できるよう配慮が必要である。
【0006】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、美感に優れているほか、あらゆる場所に設置可能で、しかも施工の際の作業性にも優れた階段の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、所定の間隔で斜方向に配置される複数の踏み板と、該踏み板を取り付けるための支持部材と、踏み板の側面に形成された横穴および支持部材に形成された保持穴を貫通する軸棒と、踏み板と軸棒を一体化するため、踏み板の上面または下面から打ち込まれる留め具と、から成り、前記軸棒は、一枚の踏み板に複数本使用され、且つ一端側には支持部材と一体するための締結手段を備え、他端側には前記留め具を係合するための環状の凹部が側周面に一列以上形成されていることを特徴とする階段である。
【0008】
本発明は、斜方向に配置される複数の踏み板を支持部材で受け止める構造の階段であり、踏み板は従来の階段と同様、幅方向に長い矩形状の板であり、合板を含む木製であることを前提とする。対する支持部材は、従来の側桁などに相当するもので、踏み板を取り付けるための機能を有しており、その具体的な形態については、一般的な側桁と同様、階段の上下を斜方向に結ぶ棒材のほか、強度を有する壁面を流用することも可能で、さらに柱を狭い間隔で並べたものなど様々である。ただしいずれの場合も、踏み板に作用する荷重に耐え抜き、変形もごくわずかに収まる程度の強度が必要である。
【0009】
軸棒は、踏み板と支持部材とを結ぶ金属製の丸棒であり、踏み板に作用する荷重を受け止めて支持部材に伝達する機能がある。この軸棒を差し込むため、踏み板の側面には横穴が加工されており、対する支持部材には横穴の延長線上に保持穴が加工されている。横穴については、美感などを考慮して反対面には貫通しないことを原則とするが、保持穴については貫通していても構わない。なお軸棒は、一枚の踏み板について最低でも二本は使用され、軸棒毎に横穴と保持穴を設けるものとする。また踏み板に加工される横穴については、軸棒よりも直径を大きくしておき、軸棒の据え付け誤差を吸収して、軸棒を横穴に差し込めるようにする。
【0010】
支持部材に形成された保持穴に軸棒を差し込んだだけでは、軸棒は容易に抜け落ちてしまうため、双方を一体化するための締結手段が必要になる。締結手段は、軸棒にどのような荷重が作用した場合でも、軸棒が抜け落ちることなく、荷重を支持部材に伝達できることが要求される。ただし締結手段が露見していると美感が悪化する恐れがあり、大半を支持部材に埋没させることが好ましい。次に凹部は、軸棒の側周面に環状の溝を形成したもので、軸棒の踏み板側に設けられており、留め具を係合するための機能を有している。凹部は環状であれば断面形状は自在だが、当然ながら留め具を凹部の中に差し込めるだけの大きさが必要である。
【0011】
留め具は、踏み板の上面または下面から打ち込まれて、軸棒の凹部に挟み込まれることで、踏み板を軸棒と一体化する機能がある。この留め具は、金属製のピンやネジなど、棒状のもので、何らかの形で踏み板の中に不動状態で固定できる必要がある。したがって丸棒状のピンを用いる場合には、延長を増大するなどの方法で抜けを防止する必要である。またネジであれば、必要に応じて踏み板に係止穴を設けた上、軸棒に向けてねじ込めば良いが、経年変形などでネジが脱落する恐れがあれば、鬼目ナットなどを介在させる。
【0012】
踏み板に打ち込まれた留め具と軸棒の凹部との関係については、留め具が凹部から離脱できなければ、どのような状態でも問題はなく、凹部の接線方向に留め具が交差していく構成のほか、留め具を軸棒の中心軸に向けて、留め具の先端が凹部の内周面を押し付ける構成でも良い。また様々な誤差などを考慮して、留め具と凹部との間には若干の隙間を設けることが好ましい。なお留め具は、軸棒に対して直交するような配置となるため、必然的に踏み板の上面または下面の両方から打ち込み可能だが、美感の観点から、原則として下面から打ち込んで上面には貫通させない。
【0013】
このように構成することで、個々の踏み板は、複数の軸棒を介して支持部材と一体化されることになる。軸棒は金属製で強度に優れているため、単に踏み板を受け止めるだけではなく、踏み板の強度を高めることもできる。しかもピンや木ネジなどを用いた留め具を軸棒の凹部に差し込むと、留め具が凹部に挟み込まれて踏み板の取り付けが完了する。なお仮に、本発明のような凹部がなく、留め具を軸棒に挿通させる構造であれば、当然ながら軸棒に何らかの孔を設けた上、この孔の位置や方向(断面から見た場合の方向)を調整する必要がある。しかし本発明では、位置を調整すれば方向は自在であり、作業時の手間が軽減される。
【0014】
請求項2記載の発明は、締結手段を特定するもので、締結手段は、軸棒の側周面に形成された螺旋状の凸条であることを特徴とする。凸条は、建築資材の一つであるラグスクリューと同様のもので、側周面から半径方向に突出する凸条が螺旋状に形成されており、これが支持部材の中に食い込んでいくことで、双方の間で生じる摩擦によって軸棒が固定される。
【0015】
請求項3記載の発明も、締結手段を特定するもので、締結手段は、軸棒の側周面を貫通する側孔と、支持部材に形成されたピン孔から打ち込まれて該側孔を貫通するドリフトピンと、で構成されていることを特徴とする。この発明は、ドリフトピンを打ち込んで軸棒を固定するもので、軸棒の側周面にはドリフトピンを挿通するため、一個ないし複数個の側孔を設けておき、また支持部材にもドリフトピンを打ち込むためのピン孔を加工する。施工の際は、軸棒を保持穴に差し込み、側孔とピン孔を同心に揃えた後、ピン孔からドリフトピンを打ち込んでいく。なおドリフトピンは、一本の軸棒について複数本使用することが好ましい。
【0016】
請求項4記載の発明は、本発明の具体的な構成例を示すもので、支持部材は、踏み板を片持ちで支持する一列の登り梁であり、踏み板の短辺側の一側面に横穴が形成され、且つ登り梁の一側面に保持穴が形成されていることを特徴とする。請求項1記載の発明は、凹部を有する軸棒を介して踏み板を固定することを特徴としており、階段の具体的な形状は限定していない。しかし本発明では、階の上下を結ぶように一列の登り梁を斜方向に配置して、その一側面から軸棒を水平に突出させて、この軸棒を踏み板の横穴に差し込んで階段を構成している。したがって横穴は、踏み板の計四側面のうち短辺の一面に形成される。なお踏み板を片持ちで支持するため強度上の制約は大きくなるが、登り梁の厚さや軸棒の長さを増大することで、所定の強度を確保できる。
【0017】
請求項5記載の発明も、本発明の具体的な構成例を示すもので、支持部材は、踏み板の下方に配置される二列の登り梁であり、踏み板の長辺側の一側面に横穴が形成され、且つ登り梁の上斜面に保持穴が形成されていることを特徴とする。本発明では、踏み板の下方に登り梁を配置して、登り梁の上斜面(斜め上方を向いている面)から軸棒を水平方向に突出させて、この軸棒を踏み板の奥方(階段を上る際の視線で奥に位置する長辺)の側面に差し込んでいる。なお登り梁は、二列を平行に並べており、それぞれに一本の軸棒を差し込んでいるため、踏み板は二本の軸棒で支持される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明のように、支持部材から突出する軸棒によって踏み板を支持する構造とすることで、踏み板の中に鋼製の丸棒が差し込まれるため、踏み板の強度が向上して変形量を抑制できる。したがって踏み板の厚さを抑制可能で、デザインの自由度を高めることができる。また本発明では、軸棒を差し込むための横穴と保持穴が形成できれば、階段の構造自体には制約がなく、様々なデザインを実現できる。そのほか軸棒と踏み板との固定は、軸棒にピンなどを貫通させる形態ではなく、環状の凹部の一角に留め具を係合させる形態で実現するため、軸棒の向きに依存せず留め具を打ち込むことができる。したがって軸棒を支持部材に埋め込む際は、軸棒の向きを調整する作業が一切不要であり、手間や時間を削減できる。さらに本発明は、踏み板を一枚毎に持ち運んで現地で取り付ける形態であり、人手での輸送も可能で改築にも対応できる。
【0019】
請求項2記載の発明のように、軸棒と支持部材との締結手段としてラグスクリューのような凸条を用いることで、凸条と支持部材との接触面全体で摩擦が発生して、軸棒を強固に固定できる。また凸条によって支持部材の経年変形を拘束できるため、長期間信頼性を維持できる。次に請求項3記載の発明のように、締結手段としてドリフトピンを使用するほか、軸棒に側孔を設けた上、支持部材にピン孔を加工することで、ピン孔から側孔に向けてドリフトピンを打ち込むだけの簡単な作業で軸棒の取り付けが完了して、手間や時間を削減できる。なお軸棒を支持部材に取り付ける段階では、軸棒を容易に回転できるため、側孔とピン孔を一致させる作業に困難はない。
【0020】
請求項4記載の発明のように、踏み板を片持ちで登り梁(支持部材)の側面に取り付けることで、踏み板が空間に突出しているような特異な外観の階段を構築でき、斬新な階段を採用したいという要望に応えることができる。しかも一列の登り梁が設置できれば、あらゆる場所に階段を構築できるため、改築の際にも対応しやすい。また請求項5記載の発明のように、二列の登り梁が設置可能であれば、美感に優れたストリップ階段を容易に構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明による階段の構成例を示している。この図の階段は、支持部材として斜方向に延びる一本の登り梁31を配置しており、この一側面に踏み板41の側面を取り付けた片持ち構造になっている。なお図では、一個の踏み板41とその近傍の登り梁31だけを描いているが、登り梁31は上下の階を結ぶように斜方向に配置されており、また踏み板41は所定の間隔で上下に並んでいる。次に軸棒11は、鋼製の丸棒を素材としており、その右端寄りには、側周面を半径方向に突出させた凸条12が螺旋状に形成されている。凸条12は、汎用のラグスクリューと同様な形態で、登り梁31との締結手段として機能する。また軸棒11の中間部には、スパナなどの工具を掛けるため、対向する側周面を切り欠いた二面幅部13が形成されている。さらに左端寄りには、側周面を環状に削り取った凹部14が形成されている。この凹部14の断面(軸棒11の軸線方向の切断面)は全域で半円形である。
【0022】
登り梁31には、軸棒11を差し込むための保持穴33が所定の位置に形成されている。この保持穴33は、凸条12を除く軸棒11の直径と等しい。軸棒11を埋め込む際は、その先端を保持穴33に差し込んだ後、二面幅部13に工具を掛けて回転を与え、凸条12を木質部に食い込ませていく。凸条12がある程度食い込んでいくと、自然に推進力が発生するため、回転を与えるだけで軸棒11は所定の深さまで埋没していく。なお本図では、一枚の踏み板41に対して二本の軸棒11を使用している。
【0023】
踏み板41は、合板を含む木材を用いており、階段の幅に合わせた長さに切断され、短辺の一側面が登り梁31に対面しており、この面に二列の横穴42が水平方向に形成されている。この横穴42は、軸棒11を差し込むための機能を有するが、登り梁31から突出する二本の軸棒11は、誤差で平行に並んでいない場合がある。そのため横穴42の直径は、軸棒11よりもやや大きくしている。なお横穴42に軸棒11を差し込んだだけでは踏み板41を固定できないため、踏み板41の下面には、横穴42の中心に揃う係止穴43が形成されており、この中に留め具として機能する止めネジ21をねじ込んでいる。止めネジ21は、側周面が木ネジのような形状で、しかも一端面に六角レンチを差し込める構造であるため、先端を係止穴43の中に差し込んだ後に回転を与えると、先端が軸棒11の凹部14に入り込む。
【0024】
図2は、図1の後、踏み板41を登り梁31に取り付けた状態を示している。登り梁31と踏み板41の側面同士は密着しており、双方の境界を貫通するように軸棒11が差し込まれている。軸棒11は螺旋状の凸条12が登り梁31の中に食い込んでいるため、軸棒11は登り梁31と強固に一体化しており、しかも経年による緩みも発生しにくい。また軸棒11の凹部14は、踏み板41に形成された係止穴43の真上に位置しており、係止穴43に止めネジ21をねじ込んでいくと、その先端が凹部14の中に入り込み、踏み板41が軸棒11から離脱できなくなる。なお止めネジ21は、側周面が木ネジと同様な構造になっているため、係止穴43に雌ネジを形成する必要はない。
【0025】
図のように、複数の踏み板41が登り梁31の側面に等間隔で配置されており、各踏み板41の内部に軸棒11が差し込まれている。したがって踏み板41に作用する荷重は、直ちに軸棒11に伝達していくため、踏み板41の厚さを抑制できる。なお踏み板41を片持ちで支持する場合、力学的な条件が厳しくなるため、軸棒11の長さや本数を増加させるなどの対策で剛性を高めることが好ましい。そのほか本図の保持穴33は、登り梁31の側面を貫通させているが、美感等で問題がある場合には、貫通させずに有底としても良い。
【0026】
図3は、平行する二列の登り梁32の上方に踏み板41を配置した形態を示している。この構造は一般的なスケルトン階段とほぼ同じであり、階段の中央付近に登り梁32を配置して、その上に踏み板41を並べている。なお本図では、一枚の踏み板41だけを描いており、登り梁32も中間部のごく一部だけを描いている。軸棒11は図1と同様、一端側に螺旋状の凸条12が形成され、他端側に環状の凹部14が形成されているが、二面幅部13に代わって端面に六角部15が形成されている。この六角部15は、文字通り六角断面で、この周囲に工具を差し込んで回転を与えることができる。また軸棒11を差し込むための保持穴33は、登り梁32の上斜面を基点として水平方向に形成されている。したがって登り梁32の上斜面と保持穴33は直交しておらず、登り梁32の傾斜に応じた交角を有している。
【0027】
踏み板41については、図1と同様、側面に横穴42が形成されており、さらに止めネジ21を取り付けるため、横穴42に交差する係止穴43を設けている。ただし登り梁32と踏み板41との位置関係は図1と大きく異なるため、横穴42は踏み板41の四側面のうち、階段を上る際の視線を基準として、奥方になる面に形成している。なお本図では、個々の登り梁32に一本の軸棒11を埋設しているため、両軸棒11を平行に並べるのは困難であり、横穴42の直径は軸棒11よりも大きく、誤差を吸収できるよう配慮されている。
【0028】
図4は、図3の後、踏み板41を登り梁32に取り付けた状態を示している。軸棒11は水平方向に埋設されており、登り梁32の上斜面に対して交角を有している。この形態は、登り梁32の上斜面と踏み板41とを面接触させることが不可能であり、登り梁32と踏み板41は接触しておらず、踏み板41は左右二本の軸棒11だけで支えられている。したがって登り梁32と踏み板41との間に軸棒11が露見することは避けられないが、美感の向上や安全性を確保するため、軸棒11の凸条12は、全体を登り梁32の中にねじ込んでいる。
【0029】
図5は、図3と同様、平行する二列の登り梁32の上方に踏み板41を配置した形態を示しているが、軸棒11の構成などが異なっている。本図では、登り梁32と踏み板41が面的に接触できるよう、登り梁32の上斜面を部分的に削り落とした切欠部34を設けており、この切欠部34を基点として、軸棒11を埋め込むための保持穴33を水平方向に形成している。したがって踏み板41に作用する荷重は、登り梁32に直接伝達できるほか、踏み板41の上面と登り梁32の上斜面との段差を解消でき、美感が向上する。また踏み板41の奥面が登り梁32に接触するため、軸棒11は外部に露見しない。
【0030】
そのほか軸棒11については、登り梁32との締結手段としてドリフトピン18を使用している。したがって軸棒11の側周面には、側孔16が形成されており、また登り梁32にも側面を貫くピン孔35が形成されている。軸棒11を取り付ける際は、その先端部を保持穴33に差し込んだ後、ピン孔35と側孔16を同心に揃えた上、ピン孔35からドリフトピン18を打ち込んで側孔16に挿通させると、軸棒11が登り梁32と一体化する。このようにドリフトピン18を用いて軸棒11を固定することで、作業が簡素化され時間や手間を削減できるほか、踏み板41の下面を登り梁32に直接載置できるため、軸棒11に作用する荷重を軽減できる。なお本図の軸棒11は、凹部14が二列形成されており、それぞれに止めネジ21がねじ込まれる。
【0031】
図6は、図5の後、踏み板41を登り梁32に取り付けた状態を示している。本図の構成では、踏み板41の奥方の側面が登り梁32の切欠部34と面接触しており、横穴42と保持穴33が接触しているため、図4とは異なり軸棒11が外部に露見しない。しかも切欠部34の大きさを調整して、踏み板41の上面と登り梁32の上斜面との段差を解消しているため、踏み板41が登り梁32と一体になった印象を与える。なおドリフトピン18は水平方向に打ち込んでおり、しかも登り梁32の厚さと同等な長さを有しているため、十分な摩擦が確保され経年で抜け落ちることはない。
【0032】
図1から図6に示す各形態は、あくまでも本発明の一例に過ぎず、支持部材31、32と踏み板41の位置関係や、支持部材31、32と軸棒11との締結手段は、様々な組み合わせが可能である。例えば図1のように、踏み板41を片持ちで支持する形態においても、登り梁31と軸棒11との締結手段として、図5のようなドリフトピン18を用いることも可能である。また図5のように、登り梁32に切欠部34を設けている場合でも、図1のような凸条12を有する軸棒11も使用できる。そのほか、支持部材として登り梁31、32ではなく、所定の強度が確保できれば、柱や壁面なども利用可能である。
【0033】
図7は、留め具と凹部14との関係を断面で示しており、図7(A)は留め具として止めネジ21を使用しており、図7(B)は留め具として止めネジ21を使用した上、抜け止め対策を講じており、図7(C)は留め具として固定ピン22を使用している。なお図7(A)(B)(C)のいずれも、図1のように、一本の登り梁31によって踏み板41が片持ちで取り付けられている形態を想定しており、各図の右側が軸棒11の長手方向に沿った断面で、左側が凹部14の断面である。図7(A)のように、踏み板41に形成される横穴42は、軸棒11よりもやや直径が大きく、施工時の寸法誤差を吸収している。また踏み板41の下面には、止めネジ21を差し込むため、所定の位置に係止穴43が形成されており、踏み板41を仮置きした後、係止穴43に止めネジ21をねじ込んでいく。そして止めネジ21の先端が凹部14の内部に到達すると、止めネジ21が凹部14によって拘束された状態になり、踏み板41が軸棒11に固定される。
【0034】
図7(B)は、基本的に図7(A)と同様の構成だが、係止穴43の入口にいわゆる鬼目ナット23を使用している。図7(A)のように、係止穴43に止めネジ21をねじ込んだだけでは、止めネジ21の長さやネジ山の突出量が不足していると、止めネジ21の固定が不十分になり脱落する場合もある。そこで係止穴43と同心で鬼目ナット23を打ち込んで、これによって止めネジ21を固定することで、脱落を防止できる。
【0035】
図7(C)は、留め具として固定ピン22を使用している。この固定ピン22は金属製の丸棒で側周面が平滑であり、図7(A)の止めネジ21のように、ネジ山が踏み板41に食い込んでいく効果はない。したがって固定ピン22を使用する場合、踏み板41との接触長さを十分に確保して摩擦を増大させる必要があり、係止穴43は踏み板の上面近傍にまで達している。そのため軸棒11と固定ピン22との干渉を防止する必要があり、固定ピン22が軸棒11の側方を通過できる位置に係止穴43を形成している。なお留め具として固定ピン22を使用する場合でも、十分に摩擦を確保できれば、図7(A)などのように、軸棒11の直下に打ち込むことも可能で、また留め具として止めネジ21を使用する場合でも、図7(C)のように、軸棒11の側方を通過させることも可能である。
【0036】
図8は、軸棒11の構造例を示しており、図8(A)は全体形状で、図8(B)は構成要素を分割した状態の断面図で、図8(C)は一体化した状態の断面図である。これまでの各図に示した軸棒11は、締結手段や凹部14が一体的に形成されているが、本図では本体25と付属部26に分割されており、ボルト27によって一体化される構造になっている。そして本体25と付属部26の境界に半円形断面の凹部14が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による階段の構成例を示す斜視図である。
【図2】図1の後、踏み板を登り梁に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】平行する二列の登り梁の上方に踏み板を配置した形態を示す斜視図である。
【図4】図3の後、踏み板を登り梁に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図3と同様、平行する二列の登り梁の上方に踏み板を配置した形態を示す斜視図である。
【図6】図5の後、踏み板を登り梁に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7(A)(B)(C)】留め具と凹部との関係を断面で示しており、(A)は留め具として止めネジを使用しており、(B)は留め具として止めネジを使用した上、抜け止め対策を講じており、(C)は留め具として固定ピンを使用している。
【図8(A)(B)(C)】軸棒の構造例を示しており、(A)は全体形状を示す斜視図で、(B)は構成要素を分割した状態の断面図で、(C)は一体化した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
11 軸棒
12 凸条(締結手段)
13 二面幅部
14 凹部
15 六角部
16 側孔(締結手段)
18 ドリフトピン(締結手段)
21 止めネジ(留め具)
22 固定ピン(留め具)
23 鬼目ナット
25 本体
26 付属部
27 ボルト
31 登り梁(支持部材:一列配置)
32 登り梁(支持部材:二列配置)
33 保持穴
34 切欠部
35 ピン孔
41 踏み板
42 横穴
43 係止穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で斜方向に配置される複数の踏み板(41)と、
該踏み板(41)を取り付けるための支持部材(31又は32)と、
踏み板(41)の側面に形成された横穴(42)および支持部材(31又は32)に形成された保持穴(33)を貫通する軸棒(11)と、
踏み板(41)と軸棒(11)を一体化するため、踏み板(41)の上面または下面から打ち込まれる留め具(21又は22)と、
から成り、
前記軸棒(11)は、一枚の踏み板(41)に複数本使用され、且つ一端側には支持部材(31又は32)と一体するための締結手段(12又は16と18)を備え、他端側には前記留め具(21又は22)を係合するための環状の凹部(14)が側周面に一列以上形成されていることを特徴とする階段。
【請求項2】
前記締結手段は、軸棒(11)の側周面に形成された螺旋状の凸条(12)であることを特徴とする請求項1記載の階段。
【請求項3】
前記締結手段は、軸棒(11)の側周面を貫通する側孔(16)と、支持部材(31又は32)に形成されたピン孔(35)から打ち込まれて該側孔(16)を貫通するドリフトピン(18)と、で構成されていることを特徴とする請求項1記載の階段。
【請求項4】
前記支持部材は、踏み板(41)を片持ちで支持する一列の登り梁(31)であり、踏み板(41)の短辺側の一側面に横穴(42)が形成され、且つ登り梁(31)の一側面に保持穴(33)が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の階段。
【請求項5】
前記支持部材は、踏み板(41)の下方に配置される二列の登り梁(32)であり、踏み板(41)の長辺側の一側面に横穴(42)が形成され、且つ登り梁(32)の上斜面に保持穴(33)が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の階段。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(A)(B)(C)】
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【図8(A)(B)(C)】
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【公開番号】特開2009−185585(P2009−185585A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29349(P2008−29349)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】