説明

集光装置

【課題】室内への採光と集光とを選択して行うことができる集光装置を提供する。
【解決手段】室内と室外を区画するように配置され、室外側からの光を室内側に透過および反射可能なベースプレート35と、ベースプレート35における室外側の面に配置され、室外側からの光をベースプレート35での反射光として取り込むことが可能な光ファイバ60,61,62と、光ファイバ60,61,62により受光した光により発電する光発電素子と、を備えている。ベースプレート35の光の反射率が変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光発電システムにおいては太陽光を受光し、受光した光により光発電機において発電する。一方、複数の光ファイバを基板の上に整列して配置する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−110413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベースプレートを室内と室外を区画するように配置するとともにベースプレートにおける室外側の面に集光部材を配置して室外側からの光を集光部材で集光する構成とした場合には、室内の環境を調整すべく室外から光を取り入れる、いわゆる採光がやりにくかった。
【0005】
本発明の目的は、室内への採光と集光とを選択して行うことができる集光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、室内と室外を区画するように配置され、室外側からの光を室内側に透過および反射可能なベースプレートと、前記ベースプレートにおける前記室外側の面に配置され、前記室外側からの光を前記ベースプレートでの反射光として取り込むことが可能なガラス体よりなる集光部材と、前記集光部材により受光した光により発電する光発電手段と、を備え、前記ベースプレートは光の反射率が変更可能であることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ベースプレートにより室内と室外が区画され、ベースプレートにおける室外側の面に配置されたガラス体よりなる集光部材において、室外側からの光をベースプレートでの反射光として取り込むことが可能である。
【0008】
そして、ベースプレートの光の反射率を変えることにより、室外側からの光をベースプレートを通して室内に取り入れることができるとともに、室外側からの光をベースプレートでの反射光として集光部材に取り込むことができる。
【0009】
つまり、ベースプレートの光の反射率を低くすることにより、室外側からの光をベースプレートを通して室内に取り入れることができる。また、ベースプレートの光の反射率を高くすることにより、室外側からの光をベースプレートでの反射光として集光部材に取り込むことができる。
【0010】
このようにして、室内への採光と集光とを選択して行うことができる。
請求項2に記載のように、請求項1に記載の集光装置において、前記集光部材は光ファイバである構成とすることができる。
【0011】
請求項3に記載のように、請求項1または2に記載の集光装置において、前記ベースプレートは、光学的性質を調整可能な調光ミラーであるとよい。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光装置において、前記ベースプレートに通電する通電部材と前記通電の状態を調整する通電調整部材を備えることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、通電部材によりベースプレートに通電することができ、通電調整部材により通電の状態を調整することができる。
請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれか1項に記載の集光装置において、前記集光部材は車両の屋根に配置されるものであるとよい。
【0013】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載の集光装置において、前記集光部材と前記ベースプレートの間が光を透過可能な樹脂材料でモールドされていることを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、集光部材からベースプレートに光を透過可能であるとともに集光部材をベースプレートに固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、室内への採光と集光とを選択して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本実施形態の車両の平面図、(b)は車両の側面図。
【図2】本実施形態の光発電システムの構成を示す斜視図
【図3】光発電システムの集光部の構成を示す一部斜視図。
【図4】光発電システムの集光部の電気的構成図。
【図5】作用を説明するための採光モードにおける光発電システムの集光部の一部断面図。
【図6】作用を説明するための集光アップモードにおける光発電システムの集光部の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両としての乗用車10はハイブリッド車であり、走行モータを駆動するための電池11を搭載している。乗用車10には光発電システム20が装着されている。
【0018】
光発電システム20は、集光部30と、光伝送部40と、光発電手段としての光発電素子50を備えている。
乗用車10の屋根12には光発電システム20の集光部30が配置され、集光部30において太陽光を受光して集光する。集光部30は、図2に示すように四角板状のベースプレート35を有している。ベースプレート35は室内(車室内)と室外(車室外)を区画するように配置され、室外側(車室外側)からの光である太陽光を室内側(車室内側)に透過可能である。
【0019】
ベースプレート35の上に3本の集光部材としての光ファイバ60,61,62が蛇行するように延設されている。つまり、光ファイバ60,61,62は、ベースプレート35における室外側(車室外側)の面に配置されている。
【0020】
図3に示すように、光ファイバ60,61,62は、ベースプレート35の上に配置され、光透過性樹脂材36でモールドされている。光ファイバ60,61,62は屈折率の大きなコア65を屈折率の小さいクラッド66で包んで構成され、クラッド66を通して太陽光がコア65内に入射される。そして、光ファイバ60,61,62においてコア65に入射された光はコア65に封じ込めた状態でコア65内を伝播する。このとき、光ファイバ60,61,62において集光される。
【0021】
ベースプレート35は、光の反射・透過を変更できるようになっている。詳しくは、ベースプレート35は、ガラス基板に導電層、酸化タングステンを形成し、その上にマグネシウム・ニッケル・チタン合金製の調光層が形成されている。そして、スイッチ・オフとした非通電状態では反射膜となり、スイッチ・オンにて通電することにより透明化される。このように、ベースプレート35は、光学的性質を調整可能な調光ミラーである。
【0022】
ガラス体よりなる集光部材としての光ファイバ60,61,62は、室外側からの光である太陽光を直接取り込むことができるとともにベースプレート35での反射光として取り込むことができるようになっている。
【0023】
図1の乗用車10のフロントピラー13の内部には光伝送部40が延設されている。光伝送部40は集光部30から延設された光ファイバ60,61,62により構成されている。つまり、図2に示すように、細い部分であるフロントピラー13の内部を光ファイバ60,61,62が通っており、光を受ける部位(集光部30)と発電する部位(光発電素子50)を光学的につないでいる。
【0024】
図1の乗用車10の車体の内部には光発電素子50が設置されている。光発電素子50にはフロントピラー13の内部を通る光ファイバ60,61,62が接続されている。そして、フロントピラー13の内部を通る光ファイバ60,61,62を通して光が送られ、この光は光発電素子50において発電に供される。
【0025】
図4に示すように、集光部30においてベースプレート35は接点80を介して電源と接続されている(所定の電圧V1を印加できるようになっている)。そして、接点80を閉じることによりベースプレート35を通電することができる。この通電によりベースプレート35が透明化される。また、接点80を開くことによりベースプレート35が非通電状態となり、この状態ではベースプレート35が反射膜となる。
【0026】
図4において通電部材としてのコントローラ81には通電調整部材としての操作スイッチ82が接続され、乗員により操作スイッチ82が操作される。操作スイッチ82の操作により採光モードと集光アップモードに切り替えることができる。操作スイッチ82の操作により採光モードに設定されると、コントローラ81は接点80を閉じてベースプレート35を通電してベースプレート35を透明化する。また、操作スイッチ82の操作により集光アップモードに設定されると、コントローラ81は接点80を開けてベースプレート35を非通電状態にしてベースプレート35を反射膜にする。
【0027】
このようにして、乗員による操作スイッチ82の切り替え操作によりベースプレート35を通電状態と非通電状態に切り替えてベースプレート35の光の反射率を変えることができるようになっている(電気式にてベースプレート35の光の反射率を調整することができる)。
【0028】
次に、このように構成した光発電システム20の作用を説明する。
乗用車10の屋根12に光発電システム20の集光部30が設置されており、室外からの光である太陽光を集光部30で受ける。集光部30において、3本の光ファイバ60,61,62のクラッド66を通して太陽光がコア65内に入射され、コア65に入射された光はコア65に封じ込めた状態でコア65内を光発電素子50に向かって伝播する。
【0029】
3本の光ファイバ60,61,62における集光部30から出た光は、光伝送部40を通して光発電素子50に送られる。このとき、光伝送部40は乗用車10のフロントピラー13の内部に形成されており、フロントピラー13内を通して光が光発電素子50に至る。
【0030】
光発電素子50において光ファイバ60,61,62を通して送られてきた光は光発電素子50で発電に供され電気エネルギーに変換される。この電気は、電池11に蓄電され、走行モータの駆動に供される。
【0031】
発電電力よりも明かりがほしい時において乗員により操作スイッチ82が操作され、採光モードに設定される。すると、コントローラ81は接点80を閉じてベースプレート35を通電する。これにより、ベースプレート35が透明化される。その結果、図5に示すように、室外からの光である太陽光がベースプレート35を通して室内(車室内)に取り入れられる。
【0032】
一方、採光よりも発電量をアップしたい時において乗員により操作スイッチ82が操作され、集光アップモードに設定される。すると、コントローラ81は接点80を開けてベースプレート35を非通電状態にする。これにより、ベースプレート35が反射膜になる。その結果、図6に示すように、ベースプレート35により全反射した光が光ファイバ60,61,62のコア65に取り込まれて集光量がアップし、その光が発電に供される。これにより、発電量が増加する。
【0033】
このようにして、光の反射・透過を変更できるベースプレート35を使用することにより、採光モードと集光アップモードに切り替えることができ、採光モードには、発電電力よりも明かりがほしい時に設定し、集光アップモードには、発電量を増加したい時に設定する。
【0034】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)集光装置の構成として、室内と室外を区画するように配置され、室外側からの光を室内側に透過および反射可能なベースプレート35を備えている。さらに、ベースプレート35における室外側の面に配置され、室外側からの光をベースプレート35での反射光として取り込むことが可能な光ファイバ60,61,62と、光ファイバ60,61,62により受光した光により発電する光発電素子50と、を備えている。ここで、ベースプレート35の光の反射率が変更可能である。そして、ベースプレート35の光の反射率を変えることにより、室外側からの光である太陽光をベースプレート35を通して室内に取り入れることができるとともに、室外側からの光である太陽光をベースプレート35での反射光として光ファイバ60,61,62に取り込むことができる。つまり、ベースプレート35の光の反射率を低くすることにより、室外側からの光である太陽光をベースプレート35を通して室内に取り入れることができる。また、ベースプレート35の光の反射率を高くすることにより、室外側からの光である太陽光をベースプレート35での反射光として光ファイバ60,61,62に取り込むことができる。このようにして、室内への採光と集光とを選択して行うことができる。
【0035】
(2)ベースプレート35は、光学的性質を調整可能な調光ミラーであるので、実用上好ましいものとなる。
(3)ベースプレート35に通電するコントローラ81と、通電の状態を調整する操作スイッチ82を備える。これによって、コントローラ81によりベースプレート35に通電することができ、操作スイッチ82により通電の状態を調整することができる。
【0036】
(4)光ファイバ60,61,62は車両の屋根12に配置されるものであるので(車両用であるので)、採光と集光アップを行うことにより車室内の環境性の向上と集光性の向上を図ることができる。
【0037】
(5)光ファイバ60,61,62とベースプレート35の間が光を透過可能な樹脂材料(光透過性樹脂材36)でモールドされているので、光ファイバ60,61,62からベースプレート35に光を透過可能であるとともに光ファイバ60,61,62をベースプレート35に固定することができる。
【0038】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・上記実施形態ではベースプレート35は通電と非通電により全反射状態と光通過状態とに切り替えたが、これに限ることなく、中間の状態を調整可能としてもよい。また、連続的にベースプレート35の光の反射率を変えられるようにしてもよい。
【0039】
・ベースプレート35は電気式にて反射率を調整する方式としたが、これに限ることはない。例えばガス式としてもよく、ガスを封入した時とガスを抜いた時とで、ベースプレート35の反射率を異ならせてもよい。
【0040】
・ベースプレート35は電気式にて反射率を調整する方式としたが、これに代わり、可動式反射板付のベースプレートとして、反射板を移動させることにより反射率を調整するようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では乗用車10の屋根12に集光部30を設けるとともにフロントピラー13の内部に光ファイバ60,61,62を通したが、フロントピラー以外の部位に光ファイバを通してもよい。例えば、センタピラーの内部に光ファイバ60,61,62を通してもよい。
【0042】
・光ファイバは3本用いたが、これに限ることなく、1本でも2本でも4本以上用いてもよい。
・上記実施形態ではハイブリッド車に適用したが、これに限定されるものではなく、例えば、電気自動車やエンジン車に適用してもよい。
【0043】
・上記実施形態では車両用としたが、これに限定されるものではなく、例えば、住宅用としてもよい。
・集光部材として光ファイバ60,61,62を用いたが、例えば外側の屈折率と内部の屈折率とが異なるように形成されたガラス体としてのレンズであってもよい。レンズの屈折率が、室外側からの光を透過可能かつベースプレートで反射された光を伝播可能に調整されればよい。
【符号の説明】
【0044】
10…乗用車、12…屋根、20…光発電システム、30…集光部、35…ベースプレート、36…光透過性樹脂材、50…光発電素子、60,61,62…光ファイバ、81…コントローラ、82…操作スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外を区画するように配置され、室外側からの光を室内側に透過および反射可能なベースプレートと、
前記ベースプレートにおける前記室外側の面に配置され、前記室外側からの光を前記ベースプレートでの反射光として取り込むことが可能なガラス体よりなる集光部材と、
前記集光部材により受光した光により発電する光発電手段と、
を備え、
前記ベースプレートは光の反射率が変更可能であることを特徴とする集光装置。
【請求項2】
前記集光部材は光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の集光装置。
【請求項3】
前記ベースプレートは、光学的性質を調整可能な調光ミラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の集光装置。
【請求項4】
前記ベースプレートに通電する通電部材と前記通電の状態を調整する通電調整部材を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集光装置。
【請求項5】
前記集光部材は車両の屋根に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の集光装置。
【請求項6】
前記集光部材と前記ベースプレートの間が光を透過可能な樹脂材料でモールドされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の集光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−253154(P2012−253154A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123716(P2011−123716)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】