説明

集合ケーブルの製造方法及びその装置

【課題】複数の集合素線を集合して集合ケーブルを製造する際に、前記複数の集合素線にかかる外圧を減少せしめてたるみ(ゆとり)を持たせて集合撚りする。
【解決手段】中心材3の周囲に複数の集合素線5を回転せしめて撚り合わせ集合し、この集合撚りされた集合ケーブル1を一定の高張力で巻き取る際に、前記中心材3に前記集合素線5より伸びが小さい抗張力体を使用し、前記集合ケーブル1を中心材3のまわりに前記複数の集合素線5の回転方向と同じ方向に回転せしめて巻き取ると共に、この巻取時の集合ケーブル1の中心材まわりの回転数nを前記複数の集合素線5の集合撚り時の回転数Nより任意に小さくすることにより(N>n)、前記中心材3に対する複数の集合素線5のたるみ量を容易に且つ正確に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集合ケーブルの製造方法及びその装置に関し、特に通信信号などを伝送するための信号線などの集合素線の複数本を集合して集合ケーブルを製造する際に、前記複数の集合素線にたるみ(ゆとり)を持たせて集合撚りする集合ケーブルの製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、集合すべき複数の信号線などの集合素線を集合して集合ケーブルを製造するには、複数の集合素線の集合時にある一定張力をかけるために、複数の集合素線にたるみ(ゆとり)を持たせることができないものであった。
【0003】
そこで、従来、集合すべき集合素線にたるみをつけて集合撚りされた集合ケーブルとしては、複数の集合素線が右撚り、左撚りに交互に入れられることで、SZ交互集合撚りされるものがある。このSZ撚りの集合ケーブルは、ケーブルの途中から集合素線を分岐して取り出し易いようにたるみをつけたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の集合ケーブルの製造装置としては、複数の集合素線を送り出す送出ケージの回転数をはじめに適宜設定し、この回転数で集合撚りされた集合素線は粗巻装置によって一旦固定される。次いで、集合素線は粗巻装置の下流側に設けた固定型の非回転引取装置によって引き取られる。この非回転引取装置の下流側には、引取線の中心軸線の回りに前記送出ケージの回転方向と同方向に回転する型の回転引取装置が設けられている。しかも、前記回転引取装置の回転数は、前記送出ケージの回転数よりも適宜小さい回転数に設定されている。したがって、非回転引取装置で引き取られた引取線は、回転引取装置によって撚りが戻されてたるみがつくられる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−142701号公報
【特許文献2】特開平6−299485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、集合ケーブルの集合素線には、発泡層を外被として備えた発泡絶縁線が用いられている。その理由は、発泡層は一般の樹脂層に比して絶縁性が良く、より減衰量を押さえることができるからである。しかし、発泡絶縁線等のような潰れやすい集合素線を集合する場合は、たるみ(ゆとり)を持たせないで集合すると、発泡絶縁線にかかる側圧(外圧)等により発泡絶縁線が潰されてしまい、そのために誘電力が低下するなどのように電気特性に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0006】
従来、集合される複数の集合素線にたるみを持たせるためには、特許文献1のSZ撚りの集合ケーブルにあるように、集合素線の集合方向をある間隔で右方向、左方向に変更する必要があり、一方向でたるみを持たせることはできないものである。
【0007】
一方、従来、特許文献2のように、集合される複数の集合素線を一方向に集合撚りする集合ケーブルの製造装置では、確かに位相ずれや撚りくずれなどが発生することなく複数の集合素線を一方向に集合撚りする集合ケーブルを確実に製造する点で画期的なものであるが、集合撚りされた集合素線がその集合状態を粗巻装置によって一旦固定されてから、その後、回転引取装置によってたるみを設けられる必要があるので、設備的に高くなることと、発泡絶縁線等のような潰れやすい集合素線が集合される場合は、粗巻装置によって一旦固定される時に一定張力をかけるために発泡絶縁線が潰される場合がある。さらに加えて、集合状態が粗巻装置によって一旦固定されたものであっても、回転引取装置の逆戻しによってたるみを与えられる際に、厳密的には撚りピッチが長くなる現象が生じるために一定したたるみを設けることが難しいという問題点があった。
【0008】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の集合ケーブルの製造方法は、中心材の周囲に集合すべき複数の集合素線を回転せしめて撚り合わせ集合し、この集合撚りされた集合ケーブルを一定の高張力で巻き取る集合ケーブルの製造方法において、
前記中心材に前記集合素線より伸びが小さい抗張力体を使用し、前記集合ケーブルを中心材のまわりに前記複数の集合素線の回転方向と同じ方向に回転せしめて巻き取ると共に、この巻取時の集合ケーブルの中心材まわりの回転数を前記複数の集合素線の集合撚り時の回転数より任意に小さくすることにより、前記中心材に対する複数の集合素線のたるみ量を調整して集合ケーブルを製造することを特徴とするものである。
【0010】
この発明の集合ケーブルの製造装置は、集合すべき集合素線より伸びが小さい抗張力体からなる中心材を送り出す中心材送出装置と、この中心材送出装置から送出された中心材の周囲に集合すべき複数の集合素線を回転せしめて撚り合わせ集合する集合撚り装置と、この集合撚り装置で集合撚りされた集合ケーブルを一定の高張力で巻き取ると共に前記集合ケーブルを前記中心材のまわりに前記集合撚り装置による複数の集合素線の回転方向と同じ方向に且つ前記複数の集合素線の回転数より任意に小さく回転せしめる巻取装置と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の集合ケーブルの製造装置は、前記集合ケーブルの製造装置において、前記集合ケーブルの巻取時の中心材まわりの回転数を、前記複数の集合素線の集合撚り時の回転数に対して1〜3%とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の集合ケーブルの製造方法によれば、集合素線より伸びが小さい中心材は製造時に張力がかかっても伸びが少ないので、複数の集合素線の撚り戻しが行われるときに前記中心材に対する複数の集合素線のたるみが設けられるので、そのたるみの調整も容易に且つ正確に行うことができる。
【0013】
その結果、中心材に対して複数の集合素線のたるみを生じさせていることで各集合素線にかかる側圧等の拘束力を緩和することができ、そのため、潰れやすいが絶縁性が良好な発泡絶縁線を集合素線として集合する場合であっても、発泡絶縁線が潰されないので、集合ケーブルの電気特性を安定させることができる。しかも、簡単な装置で行えるので設備的にも安価となる。
【0014】
また、この発明の集合ケーブルの製造装置によれば、集合素線より伸びが小さい中心材は中心材送出装置と巻取装置との間で張力がかかっても伸びが少ない。しかも、集合撚り装置で集合撚りされた集合ケーブルは一定の高張力で巻き取られるので、中心材には常時一定の張力がかかる。この状態で、前記集合ケーブルを巻取時には、前記集合撚り装置の回転方向と同じ方向に集合ケーブルを中心材まわりに回転せしめ且つこの回転数を前記集合撚り時の回転数より任意に小さく回転せしめるので、複数の集合素線の撚り戻しが行われる。このときに伸びが少ない中心材に対する複数の集合素線のたるみが設けられるので、そのたるみの調整も容易に且つ正確に行うことができる。
【0015】
その結果、上述した製造方法と同様に、潰れやすいが絶縁性が良好な発泡絶縁線を集合素線として集合する場合であっても、発泡絶縁線が潰されないので、集合ケーブルの電気特性を安定させることができる。しかも、簡単な装置で行えるので設備的にも安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図2及び図3(A),(B)を参照するに、この実施の形態に係る集合ケーブル1は、中心材3の周囲に複数の集合素線5(この実施の形態では6本)が一方向に撚り合わされて集合されており、しかも、図3(B)に示されているように複数の集合素線5が中心材3に対してたるみ(ゆとり)を持っている状態である。ちなみに、図3(A)に示されている集合撚り状態は、中心材3と各集合素線5に一定の高張力を加えて集合撚りされたものであり、複数の集合素線5が中心材3に対してたるみ(ゆとり)を持っていない状態である。
【0018】
なお、この実施の形態では6本の集合素線5が集合撚りされているが、その本数は限定されず、例えば8本、22本、24本などのように種々の本数の集合素線5を集合撚りする集合ケーブルにも適用できる。
【0019】
また、上記の中心材3は集合素線5より伸びが小さい抗張力体であり、この実施の形態では例えば伸びが小さく且つ引張り強度が高く、さらに加えて曲げ可能な可撓性のあるアラミド繊維などの抗張力体で構成されている。なお、中心材3としては、前記アラミド繊維に限らず、他の形態の抗張力体であっても構わないが、可能な限り伸びが小さく且つ引張り強度が高く、曲げ可能な可撓性のあるものが望ましい。
【0020】
また、各集合素線5は、この実施の形態では図2に示されているように例えば複数本の軟銅撚り線からなる導体7の外周に発泡絶縁層9を被覆してなる発泡絶縁線11が、対撚りされて構成されている対撚り線13であり、例えば短径の長さが1.6mmで、長径の長さが3.2mmである。なお、各集合素線5としては、前記対撚り線13に限らず、単なる発泡絶縁線11であっても、あるいは外被として発泡絶縁層9ではなく一般の樹脂からなる絶縁層を有する絶縁線であっても、あるいは他の形態であっても構わない。
【0021】
次に、この発明の実施の形態の集合ケーブルの製造装置並びにこの装置を用いた集合ケーブルの製造方法について図面を参照して説明する。
【0022】
図1を参照するに、集合ケーブルの製造装置15は、中心材3が巻き取られている送出ボビン17から前記中心材3を張力をかけて前方へ送り出す中心材送出装置19が設けられている。前記中心材3は、前述したように、伸びが小さく且つ引張り強度が高く、さらに加えて曲げ可能な可撓性のあるアラミド繊維からなる抗張力体が使用されている。
【0023】
上記の中心材送出装置19の前方には、中心材送出装置19から送り出された中心材3の周囲に複数の集合素線5を回転せしめて撚り合わせ集合する集合撚り装置21が設けられている。例えば、前記集合撚り装置21は、集合ケーブル1となるべき集合素線5を巻回している各ボビン23が、全体フレーム25に支承されている図示しないフレームに懸架されている。なお、各集合素線5は、前述したように例えば2本の発泡絶縁線11が対撚りされて構成されている対撚り線13である。
【0024】
集合撚り装置21の全体フレーム25の回転によって各集合素線5は前記送出方向の前方に配置した集合ダイス27において撚り合わされる。このとき、全体フレーム25の回転数Nは集合ダイス27において通常の集合ケーブル1が得られる程度の回転数が選定される。また、全体フレーム25の回転方向は、この実施の形態では、図1において矢印に示されているように中心材3の送出方向に向かって右回りに回転している。なお、この回転方向は左回りであっても構わない。
【0025】
集合撚り装置21の前記送出方向の前方には、前記集合ケーブル1の引取りのためのキャプスタンの回転により集合ケーブル1を定速走行せしめる引取装置29と、この引取装置29の前記送出方向の前方に配置して集合ケーブル1を巻取ボビン31に巻き取るための巻取装置33と、から構成される巻取ユニット35が配置されており、この巻取ユニット35は全体として上述した集合撚り装置21の全体フレーム25の回転方向と同方向に回転するように構成されている。すなわち、この実施の形態では、図1において矢印に示されているように集合ケーブル1の引取方向に向かって右回りに回転している。
【0026】
したがって、引取装置29及び巻取装置33は集合ケーブル1の中心材3のまわりに回転する型の装置であり、集合ケーブル1の中心材3のまわりの回転数は上述した集合撚り装置21の回転数Nよりも適宜小さい回転数nに設定されている(N>n)。なお、前記回転数nは前記回転数Nに対して1〜3%にすることが、複数の集合素線5に充分のたるみ(ゆとり)を得るという点で望ましい。
【0027】
また、前記引取装置29の引取速度(V)と巻取装置33の巻取速度(v)は、通常の集合ケーブル1を製造する場合と全く同様の適宜の値Vに設定されており、前記中心材3に一定の高張力がかかるように調整されている(V=v)。
【0028】
上記構成により、中心材3が中心材送出装置19によって送出ボビン17から高張力で送出され、集合撚り装置21の全体フレーム25のN回転によって複数の集合素線5が集合ダイス27において前記中心材3の周囲にN回転撚りの状態で集合撚りされる。次いで、この集合撚りされた集合ケーブル1は、巻取ユニット35内で引取装置29により引き取られてから巻取装置33に巻き取られると共に、前記巻取ユニット35の全体が集合ケーブル1の中心材3のまわりに前記集合撚り装置21の回転数Nよりも適宜小さい回転数nで回転する。この巻取ユニット35の回転数はNより小さいnであるために、集合ケーブル1はその集合撚りが集合ダイス27と巻取ユニット35との間でn/Nだけ戻されることになる。
【0029】
このとき、集合ケーブル1の中心に存在する中心材3は、高張力であっても伸びが小さく且つ高強度であるので集合撚り時と同長であるが、集合された集合素線5は撚り戻されるために中心材3に対してたるみを持たせることができる。
【0030】
例えば、図4に示されているように、集合ケーブル1の外径が例えばφ0.1mで、ケーブルピッチP(集合素線5の撚りピッチ)が1mであり、さらに表1に示されているように、引取速度のV値が100m/分で、集合撚り装置21の回転数Nが100rpmであるとする。巻取ユニット35の回転数nを前記集合撚り装置21の回転数Nに対して1%、すなわち1rpmの回転数で同方向に回転させると、集合撚り装置21における見かけ上の各集合素線5の回転数は99rpmで回転していることになる。これによって、ケーブルピッチPは1mから0.99mに変更されるが中心材3の実長には変化がないので、図5に示されているように、集合撚り時の各集合素線5の実長Lは1.048mであるが1.039mの長さで充分になるために、各集合素線5に0.009m(=1.048−1.039)の余長(たるみ)ができることになる。
【0031】
したがって、図3(A)に示されている集合撚り状態から図3(B)に示されている集合撚り状態へ移行する。この図3(B)から分かるように、各集合素線5の撚りが一部戻されることによりたるみ(ゆとり)が生じる。なお、図3(B)では便宜上、各集合素線5の撚り状態が綺麗な等間隔の隙間で描かれているが、実際のたるみ状態はランダムである。
【0032】
巻取ユニット35の回転数nの割合を任意に変動させることにより、集合ケーブル1の各集合素線5に所望の余長を容易に且つ正確に設けることができる。このようにたるみが生じた状態が最終製品としてのたるみ付きの集合ケーブル1として巻取ユニット35内の巻取装置33に巻き取られる。
【0033】
以上のように、この発明による集合ケーブルの製造方法では、集合ケーブル1には中心材3に対する複数の集合素線5のたるみが設けられるので、従来のように厳密的に撚りピッチPが長くなるという現象は生じることがなく、たるみの調整も容易に且つ正確に行うことができる。
【0034】
その結果、発泡絶縁線11等のような潰れやすい集合素線5を集合する集合ケーブル1を製造する場合でも、中心材3に対してたるみを生じさせていることで側圧等の拘束力を緩和することができる。そのため集合素線5が潰されないので、絶縁性が良好な発泡絶縁線11を集合して集合ケーブル1の電気特性を安定させることができる。しかも、従来のように集合撚り状態を仮止めするための粗巻装置などの装置を設ける必要がなく、設備的にも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態の集合ケーブルの製造装置の全体的な概略説明図である。
【図2】この発明の実施の形態の集合ケーブルの一例を示す概略的な斜視図である。
【図3】(A)は集合撚り時の集合ケーブルの断面図で、(B)は巻き取り時の集合ケーブルの断面図である。
【図4】この発明の実施の形態の集合ケーブルのケーブルピッチの状態を示す概略説明図である。
【図5】図4を展開した展開図である。
【符号の説明】
【0036】
1 集合ケーブル
3 中心材
5 集合素線
7 導体
9 発泡絶縁層
11 発泡絶縁線
13 対撚り線
15 集合ケーブルの製造装置
17 送出ボビン
19 中心材送出装置
21 集合撚り装置
23 ボビン
25 全体フレーム
27 集合ダイス
29 引取装置
31 巻取ボビン
33 巻取装置
35 巻取ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心材の周囲に集合すべき複数の集合素線を回転せしめて撚り合わせ集合し、この集合撚りされた集合ケーブルを一定の高張力で巻き取る集合ケーブルの製造方法において、
前記中心材に前記集合素線より伸びが小さい抗張力体を使用し、前記集合ケーブルを中心材のまわりに前記複数の集合素線の回転方向と同じ方向に回転せしめて巻き取ると共に、この巻取時の集合ケーブルの中心材まわりの回転数を前記複数の集合素線の集合撚り時の回転数より任意に小さくすることにより、前記中心材に対する複数の集合素線のたるみ量を調整して集合ケーブルを製造することを特徴とする集合ケーブルの製造方法。
【請求項2】
集合すべき集合素線より伸びが小さい抗張力体からなる中心材を送り出す中心材送出装置と、この中心材送出装置から送出された中心材の周囲に集合すべき複数の集合素線を回転せしめて撚り合わせ集合する集合撚り装置と、この集合撚り装置で集合撚りされた集合ケーブルを一定の高張力で巻き取ると共に前記集合ケーブルを前記中心材のまわりに前記集合撚り装置による複数の集合素線の回転方向と同じ方向に且つ前記複数の集合素線の回転数より任意に小さく回転せしめる巻取装置と、で構成されていることを特徴とする集合ケーブルの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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