説明

集合住宅

【課題】集合住宅の耐震性を向上させるとともに、居住空間の間取りの自由度を高めることを可能とした、集合住宅の耐震構造を提案する。
【解決手段】隣り合う住戸2,2の戸境に一対のT型耐震壁10,10が配設された集合住宅であって、各T型耐震壁10は戸境に沿って形成された第一壁11と第一壁11と直交するように当該第一壁11の一方の端部に形成された第二壁12とにより平面視T字状に形成されていて、一対のT型耐震壁10,10は、戸境の中央において第二壁12同士が所定の間隔をあけて対向するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅では、居住空間を有効に使用することを目的として様々な工夫がなされている。
例えば、扁平ラーメン構造は、主構造である柱や梁を扁平にすることで、居室内に柱型や梁型が出ない構造形式とし、空間を有効に活用するものである。
【0003】
ところが、このように主構造の断面寸法を小さくすると、建物の剛性低下が懸念される。そのため、主構造の小断面化に伴い、耐震壁を併用した構造形式とするのが一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1には、住戸同士の戸境に、角筒状の耐震壁からなるコアウォールを設けた集合住宅が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−254024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
角筒状のコアウォールは、エレベータシャフトや階段周りのように、共有部分に面して形成されるのが一般的である。
そのため、住戸間の中央部にコアウォールを形成すると、共有部分が大きくなり、間取り設計の自由度が低下する場合があった。一方、間取り設計の自由度を高めるために、コアウォールの位置をずらすと、平面上偏った位置にコアウォールが配置されるために、偏心により力学的なバランスに影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決するものであり、集合住宅の耐震性を向上させるとともに、居住空間の間取りの自由度を高めることを可能とした、集合住宅を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、隣り合う住戸の戸境に一対のT型耐震壁が配設された集合住宅であって、前記各T型耐震壁は、前記戸境に沿って形成された第一壁と前記第一壁と直交するように当該第一壁の一方の端部に形成された第二壁とにより平面視T字状に形成されていて、前記一対のT型耐震壁は、前記戸境の中央において、前記第二壁同士が所定の間隔をあけて対向するように配置されていることを特徴としている。
【0009】
かかる集合住宅によれば、平面視T字状に形成された一対のT型耐震壁が、住戸の戸境の中央に配置されているため、力学的なバランスがよく、耐震性に優れている。
また、T型耐震壁はT字状であるため、従来の角筒状のコアウォールに比べて戸境での収まりがよく、居住空間の間取りの自由度を高めることができる。
【0010】
前記第一壁の他方の端部から、前記戸境に沿って、扁平な壁柱が延設されていれば、桁行方向の開口を大きく確保することが可能となり、間取り設計の自由度をより高めることができる。
【0011】
前記住戸の水廻りを、前記T型耐震壁の周囲に集中して配置すれば、第二壁同士の間に形成された空間を設備用吹き抜け空間として使用することで、各住戸の設備配管の横引き配管を短くすることができ、居室空間の設計の自由度がより高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い耐震性を有しているとともに、間取り設計の自由度が高い集合住宅を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る集合住宅の一部を示す平断面図である。
【図2】図1に示す集合住宅の構造体の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る集合住宅1は、3〜4階建ての低層建物であり、図1に示すように、各階に複数の住戸2,2,…を備えている。集合住宅1はT型耐震壁10と、扁平ラーメン構造20と、平板型耐震壁30とを併用して構成している。
【0015】
住戸2は、T型耐震壁10、壁柱21、平板型耐震壁30、ボイド壁40、外壁50および窓51により囲まれている。
隣り合う二戸の住戸2,2は、戸境に配設されたT型耐震壁10,10と壁柱21,21とにより仕切られるか、あるいは、戸境に配設された平板型耐震壁30と壁柱21,21とにより仕切られている。
ている。
【0016】
本実施形態では、並設された複数の戸境に対して、一つおきに設備ボイド3が形成されている。つまり、各住戸2は、1つの設備ボイド3に面している。なお、設備ボイド3は、戸境の中央(梁行方向の中間部)に形成されている。
【0017】
設備ボイド3は、上下方向に連続して形成された空間であって、本実施形態では、配管スペースとして使用する。
各住戸2の水廻り(キッチン2a、浴室・洗面所2b、トイレ2c等)は、設備ボイド3の周囲に配置されていて、設備配管の横引きの延長が短くなるように構成されている。
【0018】
設備ボイド3が形成された戸境には、一対のT型耐震壁10,10が配設されている。また、設備ボイド3がない戸境には、平板型耐震壁30が形成されている。
【0019】
T型耐震壁10は、第一壁11と第二壁12とにより平面視T字状に形成されている。
T型耐震壁10は、図示しない基礎部において基礎梁に定着固定されているとともに、下層階から上層階にわたって連続している(図2参照)。
【0020】
第一壁11は、鉄筋コンクリート製の版状部材であって、戸境に沿って形成されている。
第一壁11の一方の端部には、第二壁12が形成されていて、第一壁11の他方の端部は戸境に沿って形成された壁柱21に接続されている。
【0021】
第二壁12は、第一壁11と一体に形成された鉄筋コンクリート製の版状部材であって、第一壁11の一方の端部において第一壁11と直交するように形成されている。
【0022】
一対のT型耐震壁10,10は、戸境の中央(梁行方向の中間部)において、第二壁12同士が所定の間隔をあけて対向するように配置されている。
【0023】
本実施形態では、対向するように配設された第二壁12,12の側端面同士をコ字状のボイド壁40,40により連結し、平面視矩形状の空間を形成する。第二壁12,12とボイド壁40,40とで囲まれた空間は、設備ボイド3として使用する。
各設備管の室内から設備ボイド3への配管は、このボイド壁40を貫通させることにより行う。なお、ボイド壁40は、非構造壁(例えば、乾式壁等)である。
【0024】
耐震壁30は、鉄筋コンクリート製の版状部材であって、戸境に沿って形成されている。図2に示すように、耐震壁30は、下層階から上層階にわたって連続して形成されている。
耐震壁30の両側端は、それぞれ戸境に沿って形成された壁柱21に接続されている。
【0025】
扁平ラーメン構造20は、図2に示すように、扁平状の壁柱21と扁平状の床梁22とを組み合わせることにより、立面視井桁状に形成されている。
【0026】
壁柱21は、鉄筋コンクリートにより構成されていて、居住空間に柱型が突出することがないように扁平(版状)に形成されている。
【0027】
戸境に沿って並設された壁柱21,21の間には、T型耐震壁10または平板型耐震壁30が形成されている。T型耐震壁10と壁柱21との境界および平板型耐震壁30と壁柱21との境界には、ダボ筋が配設されている。
なお、T型耐震壁10と壁柱21との境界および平板型耐震壁30と壁柱21との境界における接合方法は限定されるものではない。
【0028】
床梁22は、居住空間を挟んで対向する壁柱21,21をつなぐものであり、鉄筋コンクリートにより構成されている。床梁22は、居住空間(天井面等)に梁型が突出することがないように扁平(版状)に形成されている。
【0029】
梁行方向に沿って並設された床梁22同士は、床スラブ60を介して連続している。
各住戸2は、床梁22,22および床スラブ60により床が形成されている。
【0030】
床スラブ60は、鉄筋コンクリートにより構成されていて、厚さは床梁22よりも小さい。
床スラブ60の桁行方向の両側端は、T型耐震壁10または平板型耐震壁30に接続されている。
【0031】
本実施形態の集合住宅1によれば、平面視T字状に形成された一対のT型耐震壁10,10が、住戸2,2の戸境の中央に配置されているため、力学的なバランスがよく、耐震性に優れている。
そのため、壁柱や床梁等の主構造が扁平に形成された集合住宅1の耐力を増加させることができる。
【0032】
また、T型耐震壁10,10がT字状に形成されているため、従来の角筒状のコアウォールに比べて戸境での収まりがよく、居住空間の間取りの自由度が高められている。
【0033】
T字状に形成されたT型耐震壁10により設備ボイド3を形成しているため、T型耐震壁10に欠損部を形成することなく、室内から設備ボイド3への設備管の配管を行うことができる。
【0034】
扁平ラーメン構造を採用しているため、室内に柱型や梁型が突出することがなく、間取り設計の自由度をより高めることができる。柱型が室内に現れないため、桁行方向の開口を大きく確保することができる。
【0035】
各住戸の水廻りを設備空間3の周囲に集約したため、設備配管の横引きを短くし、室内空間をより大きくすることが可能となる。
【0036】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0037】
前記実施形態では、扁平ラーメン構造と耐震壁とを併用した構造形式を採用する場合について説明したが、例えば、ラーメン構造や壁式ラーメン構造であってもよく、本発明に係る集合住宅の構造形式はこれに限定されるものではない。
【0038】
本発明に係る集合住宅の階数は限定されるものではないが、3,4階建て等、低層階の建物が望ましい。
また、集合住宅が備える戸数も限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0039】
耐震壁は、鉄筋コンクリート造に限定されるものではなく、例えば鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。
同様に、壁柱および床梁も鉄筋コンクリート造に限定されるものではない。
【0040】
設備ボイドの用途は、配管スペースに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 集合住宅
10 T型耐震壁
11 第一壁
12 第二壁
20 扁平ラーメン構造
21 壁柱
22 床梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う住戸の戸境に一対のT型耐震壁が配設された集合住宅であって、
前記各T型耐震壁は、前記戸境に沿って形成された第一壁と前記第一壁と直交するように当該第一壁の一方の端部に形成された第二壁とにより平面視T字状に形成されていて、
前記一対のT型耐震壁は、前記戸境の中央において、前記第二壁同士が所定の間隔をあけて対向するように配置されていることを特徴とする、集合住宅。
【請求項2】
前記第一壁の他方の端部から、前記戸境に沿って、壁柱が延設されていることを特徴とする、請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記住戸の水廻りが、前記T型耐震壁の周囲に配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の集合住宅。

【図1】
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【図2】
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