説明

集合型不動産建設システム

【課題】企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売などの様々な分業体制で生じる図面や仕様の不整合を吸収して確定設計情報をデータベース化して、様々な不具合を解消する集合型不動産建設システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の集合型不動産建設システム1は、集合型不動産の基本設計図を記憶する記憶部2と、前記基本設計図に含まれる設計要素を抽出する抽出手段3と、前記設計要素と施工要素との不整合を検出して整合性4を取る整合手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの集合住宅や商業ビルなどの集合型不動産を建設するに当たって、建築で発生する種々の要素の不整合を吸収し、企画、設計、建築、仕上げ、広告、販売作業での手戻りを削減し、効率的な建設およびそれ以降の管理を実現する集合型不動産建設システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、マンションなどの集合住宅や複数のオフィスが入居する商業ビルなどの集合型不動産が、多数の場所で建設されている。我が国におけるこれら集合型不動産の建設の特徴は、大手建設会社を頂点として、企画、設計、調達、施工、内装、広告、販売などが下請けや孫請けで作業されるピラミッド型の事業であることである。すなわち、垂直かつ水平における分業システムでありながら、職人気質特有の標準化に対する慎重さがあることによって相互の情報交換が少ない問題がある。
【0003】
日本独自の職人としての誇りがあり、隠れた技術・技能が分業された業務に存在する。しかし、情報イノベーションのスピードが消費者要求を高めており、このため、企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売などにおける図面や設計情報が不整合を生じさせないことが重要である。ここで、企画においては、そのマンションや商業ビルの設計思想が開発される。次いで、この設計思想を踏まえて、設計事務所などが設計の段階において、マンションや商業ビルの設計図面を作成する。この設計図面に基づいて、建設会社、外装会社、内装会社などが、詳細の設計・建築を実施する。また、マンションや商業ビルの販売の慣習として、建設が終了する前に、入居広告や入居契約を勧めていく。このため、設計事務所が作成した図面に基づいて、入居広告やモデルルームが作成される。すなわち、設計事務所が作成した図面は、その後の詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売の全てに用いられることになる。
【0004】
しかしながら、基本設計である設計事務所で作成された基本設計図は、企画段階での設計思想との不整合を有している可能性もある。あるいは、基本設計の後においては、詳細設計、調達、施工、内装などを、それぞれ異なる業者が行うために、それぞれが自社の都合に応じて詳細な図面を再作成することがある。基本設計後の各業者が、基本設計図に従うといっても、実際の建築や施工が進むにつれて、基本設計図どおりに建築や施工が進まない事態も生じる。例えば、基本設計では、ある部屋の寸法がある値に決まっていたが、調達や施工の都合で、この寸法よりも小さく施工せざるを得ないことも生じる。基本設計は、設計思想を優先するために、以降の建築や施工で生じうる不整合を完全に想定していないことが多いからである。
【0005】
また、企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売などが垂直分業および水平分業されるために、基本設計ができたところで、各業者は、各々に必要となる詳細図面や詳細仕様を並列に作成する。この場合にも、実際の建築や施工の都合によって、各業者が作成する詳細設計や詳細仕様に不整合が生じることもある。この不整合を生じたまま建設が進むと、基本設計と異なる不動産が建設されたり、不整合を吸収するための手戻りが生じたりする。
【0006】
上述の通り、我が国の集合型不動産の建設は、それぞれ異なる役割を担う業者が、下請け、孫請けなどの態様によるピラミッド構造で実現されるので、上記のような問題が生じやすい。お互いに情報交換を行ったり、お互いの不整合を吸収したりすることで、基本設計と異なる不動産となったり、手戻りが生じたりすることを防止する対応が、困難となっている事情がある。これは、消費者要求が技術進化を超えてしまっていることも理由となっている。
【0007】
また、実際に竣工が終わったマンションや商業ビルが、基本設計図と異なる施工で建設されてしまうことは、購入者からのクレーム原因となりかねない。例えば、広告や販売において用いられるマンションや商業ビルの図面や情報は、基本設計図が作成される段階に作成される。このため、広告や販売に用いられる図面や情報は、基本設計図を基礎としている。一方で、実際の建築や施工が進むにつれて、出来上がるマンションや商業ビルが、基本設計図と乖離してしまうと、購入者や入居者は、当然に広告や販売の段階で確認した図面や情報と異なっていることに対して、クレームをつけることになるからである。
【0008】
このような状況において、例えば、壁や床などの施工における不具合を吸収する技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−233578号公報
【特許文献2】特開2006−169810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2をはじめとする技術は、建築される不動産の一部に着目しただけの技術である。集合型不動産の建設における、垂直分業および水平分業に基づく、手戻りや不整合などの問題に焦点を絞っているものではない。
【0011】
以上より、従来技術および我が国の集合型不動産の建設においては、次のような問題がある。
【0012】
(問題1)企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売などのそれぞれでの図面や仕様の不整合が吸収されていないので、建設後半において手戻りが発生しやすい。
【0013】
(問題2)企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売のそれぞれでの図面や仕様の不整合が吸収されていないので、広告や販売の図面と実際の仕上がりとに乖離が生じ、顧客からのクレームが発生しやすい。
【0014】
(問題3)企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売のそれぞれが個別の図面や仕様を有しているので、不動産が管理会社に引き渡された後で、不動産全体に係る共通情報が失われる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑み、企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売などの様々な分業体制で生じる図面や仕様の不整合を吸収して確定設計情報をデータベース化して、上記の問題1〜3を生じさせない新しい集合型不動産建設システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の集合型不動産建設システムは、集合型不動産の基本設計図を記憶する記憶部と、前記基本設計図に含まれる設計要素を抽出する抽出手段と、前記設計要素と施工要素との不整合を検出して整合性を取る整合手段と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の集合型不動産建設システムは、日本特有の職人の技術・技能を十分に活用しながら、建設の早期段階で、企画、基本設計、詳細設計、調達、施工、内装、広告、販売のそれぞれの図面・仕様の不整合を吸収できるので、建設の後半における手戻りの発生を低減できる。
【0018】
また、広告や販売に用いる図面・仕様は、基本設計や詳細設計との乖離を生じさせないので、不動産の購入顧客からのクレームを減少させることができる。
【0019】
また、不整合が吸収された確定設計情報がデータベースに記録されることで、不動産が、中古で販売されたり、再販売されたりする場合にも、購入者や管理者に必要な情報が提供される。このため、不動産の長期的な活用や運用が容易となり、不動産市場の活性化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術における集合型不動産建設のフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1における集合型不動産建設システムのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における集合型不動産の建設フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1における基本設計図の一部を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1における施工要素が整合手段に取り込まれる状態を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の発明に係る集合型不動産建設システムは、集合型不動産の基本設計図を記憶する記憶部と、前記基本設計図に含まれる設計要素を抽出する抽出手段と、前記設計要素と施工要素との不整合を検出して整合性を取る整合手段と、を備える。
【0022】
この構成により、基本設計図に含まれる不整合が、以降の施工、広告、販売、管理などに継続せず、施工作業の手戻りなどが削減できる。
【0023】
本発明の第2の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1の発明に加えて、前記設計要素および前記施工要素の少なくとも一方は、前記基本設計図に含まれる縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを含む。
【0024】
この構成により、集合型不動産システムは、問題となる不整合の要素を修正できる。
【0025】
本発明の第3の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1又は第2の発明に加えて、前記施工要素は、前記集合型不動産を施工する施工業者から得られる施工条件に基づく。
【0026】
この構成により、集合型不動産建設システムは、実際の施工の慣例や経験則に基づいて、設計要素の不整合を修正できる。
【0027】
本発明の第4の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1又は第2の発明に加えて、前記施工要素は、前記集合型不動産を施工する際に想定される施工設計図から得られる。
【0028】
この構成により、集合型不動産建設システムは、実際に作成される施工設計図を想定して、設計要素の不整合を修正できる。
【0029】
本発明の第5の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第4の発明に加えて、前記不整合は、前記基本設計図の寸法と前記施工設計図の寸法との不整合、前記基本設計図の縮尺と前記施工設計図の縮尺との不整合、前記基本設計図の表現形式と前記施工設計図の表現形式との不整合、前記基本設計図の機器説明と前記施工設計図の機器説明との不整合および前記基本設計図の仕上がり標準的表現と前記施工設計図の仕上がり標準的表現との不整合の少なくとも一つを含む。
【0030】
この構成により、整合手段は、施工設計図の経験値に基づいて、不整合を修正できる。
【0031】
本発明の第6の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第2から第5のいずれかの発明に加えて、前記表現形式は、前記集合型不動産の窓、柱、壁、管路および戸の少なくとも一つの表現を含む。
【0032】
この構成により、整合手段は、不整合が生じやすい要素の不整合を修正できる。
【0033】
本発明の第7の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記整合手段は、前記不整合を修正した確定図面を出力する。
【0034】
この構成により、不整合が修正された確定図面が、以降の作業において用いられるようになり、実際に竣工する不動産と必要になる図面との矛盾が低減できる。結果として、売り手、買い手双方にメリットが生じる。
【0035】
本発明の第8の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の施工設計図を生成する、施工設計手段を更に備える。
【0036】
この構成により、施工設計図の矛盾や施工作業の手戻りが防止できる。
【0037】
本発明の第9の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の販売用図面を生成する、販売図面生成手段を更に有する。
【0038】
この構成により、販売に用いられる図面と、実際に施工される不動産との矛盾が低減できるので、購入者によるクレームを低減できる。
【0039】
本発明の第10の発明に係る集合型不動産建設システムでは、第1から第9の発明に加えて、前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の管理用図面を生成する、管理用図面生成手段を更に有する。
【0040】
この構成により、実際に竣工される不動産との矛盾のない管理用図面によって、管理が確実かつ容易になる。
【0041】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0042】
(実施の形態1)
【0043】
実施の形態1について説明する。
まず、従来の集合型不動産の建設の流れについて説明する。図1は、従来技術における集合型不動産建設のフローチャートである。
【0044】
従来技術における集合型不動産建設においては、ステップST1にて基本設計が行われて基本設計図が作成される。基本設計では、その前提としての集合型不動産についての企画や仕様に基づいて、不動産となる建物の基本的な設計図を作成する。実際には、設計事務所において、企画や仕様に基づいて基本設計図を作成する。基本設計図は、集合型不動産の各部屋の割り振りレイアウト、各部屋の間取り、共通部分のレイアウトなどの形状、寸法、各種必要な設計用の表現を含んでいる。この基本設計によって基本設計図が次の段階に提供される。
【0045】
基本設計に次いで、ステップST2において実際の施工に用いられる施工設計図を作成する施工設計が行われる。例えば、ゼネコンや施工業者が、施工設計を行う。この施工設計においては、基本設計図が用いられるが、実際には基本設計図に十分に従うのではなく、施工業者において蓄積されているノウハウに基づく施工要素に基づいて、施工設計が行われる。実際に施工を行うに当たっては、ゼネコンや施工業者の独自の技術に応じた独自の表現形式や記載方式に依存した施工設計図を必要とするからである。
【0046】
この施工設計のステップST2によって、施工設計図が作成される。
【0047】
施工設計図が作成された後で、ステップST3にて実際の施工が行われる。ゼネコンや施工業者が実際の施工を行う。この施工は、集合型不動産の全体の設計を行うフェーズ、外装を行うフェーズ、内装を行うフェーズなどに分割され、それぞれ異なる施工業者が作業を行う。このため、異なる施工業者ごとに異なる施工要素を有しており、同一の部材や構成の表現形式も異なっていることも多い。このため、施工設計図は、施工の段階が進むにつれて、頻繁に書き換えられたり作成されなおしたりする。これは、基本設計図から施工設計図に作り変えられる際に、基本設計と施工との相違を吸収するのが難しいからである。
【0048】
ステップST3の施工が終わると、ステップST4にて、集合型不動産が竣工する。
【0049】
また、ステップST1にて基本設計図が作成されると、この基本設計図は、そのまま広告や販売に用いられる。すなわち、ステップST5にて、基本設計図が用いられて広告・販売が行われる。すなわち、広告・販売においては、基本設計図が用いられる。同様に、ステップST4での竣工が終わると、竣工した集合型不動産は、ステップST6にて管理に移管される。不動産管理においては、基本設計図に基づく施工設計図が用いられ、構造管理においては施工設計図が用いられたりする。あるいは、管理の全てにおいて、基本設計図に基づく竣工設計図が用いられる。
【0050】
この図1のフローチャートより明らかな通り、基本設計図と施工設計図とは、それぞれの整合性をとるように考えられていないことが多い。このため、(1)広告・販売や管理において用いられる不動産の図面と、実際に施工に用いられる図面(この図面が竣工される不動産を表している)とが相違する、(2)基本設計図とそこから作成されるであろう施工設計図との不整合が修正されないことがあるので、施工設計図によって施工される集合型不動産は、基本設計図に含まれる設計思想を反映していない、(3)不整合の修正がないので、施工設計図の施工中における修正が増加する、(4)施工が進むにつれて生じる基本設計との相違によって、作業の手直しが発生しやすい、(5)基本設計図(これが広告・販売に用いられる)と竣工した集合型不動産との不一致に対するクレームを生みやすい、(6)管理に入った後で、実際の集合型不動産と保存される基本設計図に基づく施主が提示した図面とが相違することによる管理の困難性、などの問題を生じさせる。
【0051】
これらは、図1のフローのように、基本設計図が作成された後で、実際の施工要素との不整合を修正しないままに、施工設計図の作成および施工が行われことで生じてしまう。
【0052】
(全体概要)
本発明の集合型不動産建設システムは、上述の問題点(1)〜(6)を解消する。まず、図2を用いて全体概要について説明する。図2は、本発明の実施の形態1における集合型不動産建設システムのブロック図である。
【0053】
集合型不動産システム1は、記憶部2、抽出手段3および整合手段4を備える。記憶部2は、集合型不動産の基本設計図を記憶する。抽出手段3は、記憶部2から基本設計図を読み出して、基本設計図に含まれる設計要素を抽出する。整合手段4は、設計要素と施工要素との不整合を検出して、整合を取る(すなわち、不整合を修正する)。集合型不動産建設システム1は、このように基本設計図に対して予め、施工要素を考慮した整合性を与えることにより、以降の施工設計図との乖離や施工との乖離を防止できる。特に、整合手段4は、整合を取った後で、確定図面を出力する。
【0054】
この確定図面は、基本設計図に含まれる設計要素と施工要素との不整合が修正されており、この確定図面に基づいて作成される施工図面は、不要な不整合を有さない。基本設計図は、設計事務所や建築事務所で作成されることが多いが、設計事務所や建築事務所の個々における慣習によって実際の施工とは異なる作成要素が含まれる。このために、基本設計図は、実際の施工や施工設計図との不整合を有してしまうことになる。
【0055】
一方、実施の形態1における集合型不動産建設システム1を用いることで、設計事務所や建築事務所の慣習に基づく不整合が修正されるので、確定図面は、この不整合が無い。このため、この確定図面を基準に、基本設計以降の作業がなされれば、以降の作業における不整合や手戻りが減少する。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態1における集合型不動産の建設フローを示すフローチャートである。図1のフローチャートと異なり、基本設計図が作成された後で、ステップST7にて整合処理が行われる。整合処理は、上述の通り、設計要素の不整合を施工要素に基づいて修正して、確定図面を作成する。施工設計ST2、広告・販売ST5、管理ST6のそれぞれは、この確定図面に基づいて作業される。
【0057】
このため、この確定図面が作成されて確定図面に基づいて作業されることで、上述の問題(1)〜(6)のそれぞれは解決される。
【0058】
(1の解決)広告・販売や管理においては、確定図面が用いられる。当然ながら確定図面は、基本設計図に含まれる不整合を修正しているので、広告・販売や管理において用いられる図面と、実際に施工に用いられる施工に用いられる図面(言い換えれば、竣工した不動産の建物そのもの)とが、相違することもない。
【0059】
(2の解決)基本設計図に含まれる不整合を修正した確定図面に基づいて施工設計図が作成される。このため、施工設計図は、基本設計図に含まれる設計思想を反映しており、施工設計図に基づいて施工される集合型不動産も、この設計思想を反映している。設計思想は、施主やデザイナーが集合型不動産に与えようとするプランニングであり、この設計思想が維持されることは、集合型不動産の所有者や購入者にとっても都合がよい。
【0060】
(3の解決)施工設計図は、不整合が修正された確定図面に基づいて作成されて施工が行われる。このため、施工設計図は、施工中における修正が余り発生しなくなる。
【0061】
(4の解決)施工設計図は、不整合が修正された確定図面に基づいて作成されて、この施工設計図によって施工が行われる。このため、施工当初に様々な問題が解決されていることになり、施工の後半になって不整合に基づく作業の手直しが発生することも少なくなる。作業の手直しが少なくなれば、集合型不動産の建設コストも当然に下がる。
【0062】
(5の解決)広告・販売においては、確定図面が用いられる。確定図面は、基本設計図の不整合を修正しており、実際に施工された集合型不動産との問題のある相違は少ない(もちろん、施工の中で生じる相違はあるが、いわゆる購入者にとって必要となる要素における相違は少ない)。このため、購入者からの不一致に対するクレームが生じにくくなる。クレームが少なければ、施主は信用を得ることができるし、クレーム対策費などのコストも低減できる。
【0063】
(6の解決)また、管理においても確定図面が用いられるので、管理に入った後で、実際の集合型不動産と確定図面とは、不整合が修正されているので(細かな相違はあるが、いわゆる設計要素における不整合は少ない)、管理における困難が少なくなる。
【0064】
以上のように、実施の形態1における集合型不動産建設システムは、従来の建設における問題(1)〜(6)を解決できる。
【0065】
次に、各部の詳細について説明する。
(記憶部)
【0066】
記憶部2は、基本設計図を記憶する。また、記憶部2は、施工要素を記憶する。基本設計図は、設計事務所や建築事務所において作成される。施工要素は、ゼネコンや種々の施工業者において経験的に蓄積されたものである。記憶部2は、これらを記憶することで、整合手段4における整合処理に必要な素材を提供できる。
記憶部2は、基本設計図や施工要素が電子データである場合には、電子データとして記憶する。この場合には、記憶部2は、ハードディスクドライブ、CD、DVD、半導体メモリ、光ディスク、磁気ディスク、テープドライブなどを備える。これらの要素によって、電子データとなっている基本設計図、標準要素および施工要素を記憶できる。
【0067】
また、基本設計図や施工要素が紙データである場合には、記憶部2は、ファイリングやOCRによってこれらを記憶する。実施の形態1における集合型不動産建設システム1の使用者は、記憶部2に基本設計図や施工要素を入力したり、これらを出力したりする。
【0068】
(抽出手段)
抽出手段3は、基本設計図から設計要素を抽出する。この設計要素が、実際の施工において必要となる施工要素(あるいは施工要素に基づいて作成される施工設計図)との不整合を生じさせる要素になる。
【0069】
設計要素は、基本設計図に含まれる縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを含む。当然ながら、施工要素も、実際の施工において必要となる(あるいは、施工設計図に含まれる)縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを含む。抽出手段3は、基本設計図から、これら縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを抽出する。
【0070】
(縮尺)
縮尺は、基本設計図において使用される縮尺である。本来的には、基本設計図に含まれる縮尺は、図面の各所において(あるいは異なるシートの図面同士において)一致していることが好ましい。施工においては、これら縮尺が不一致であれば、あるべき集合型不動産が施工されなくなるからである。しかしながら、基本設計図は、間取りや構造を明確にすることに主眼が置かれており、図面の各所における縮尺や異なるシートの図面同士における縮尺の一致性を取ることを重視していないことが多い。設計事務所などにおける慣例もあるからである。このため、例えば、基本設計図の間取り図において、ある部屋は1000分の1の縮尺で記載されているのに、別の部屋は800分の1の縮尺で記載されていたりする。これは、部屋の広さによっては、部屋の特徴が伝えにくい場合には、縮尺を変えて部屋の特徴を伝えることを、基本設計図は優先するからである。
【0071】
(寸法)
寸法も同様である。基本設計図においては、各間取りについて、それぞれ寸法が記載されている。本来的には、基本設計図に記載されている寸法は、縮尺と合わせて正しくあるべきである。しかしながら、基本設計図は、間取りの構造や特徴を伝えることを重視しており、設計事務所などでの慣例もあって、記載されている寸法と実寸とがあっていないことも多い。基本設計図におけるある部屋は、実寸で1500mmの長さが15mmで表されている(すなわち、縮尺は100分の1である)。一方、別の部屋は、6000mmの長さが50mmで表されている(すなわち、縮尺は、120分の1である)。このような場合は、縮尺の不一致であるのか寸法の不一致であるのか分かりにくい。
【0072】
基本設計図を見ただけの使用者は、このような不整合を把握することはできないが、このまま施工されば、当然に不具合が生じる。このため、施工設計図が作成される際には、この寸法や縮尺の不一致は修正されることになるが、当然に、基本設計図と施工設計図とが食い違ってしまうことになる。
【0073】
図4は、本発明の実施の形態1における基本設計図の一部を示す模式図である。図4に示されるように、部屋Aの横幅は5000mmで表示されている。一方、部屋Bの横幅は6000mmと表示されている。部屋Bの横幅は、部屋Aの横幅の1.2倍であるはずである。しかしながら、図4より明らかな通り、そのようになっていない。部屋Aの横幅と部屋Bの横幅は、見た目では同じくらいである。これは、寸法が縮尺を考慮した実寸とあっていない状態である。施工を考慮すると、この基本設計図が含む縮尺や寸法などの不一致は問題である。しかし、基本設計図は、間取りの構造や特徴を示すのが主眼であるので、このような細かな不一致を考慮する必要性は少ない。このため、抽出手段3は、このような縮尺や寸法を、施工との不整合となりうる設計要素として、抽出する。
【0074】
(表現形式)
表現形式は、集合型不動産の窓、柱、壁、管路および戸の少なくとも一つの表現を含む。集合型不動産の基本設計図では、窓、柱、壁、管路および戸の少なくとも一つは、形状、サイズ、角度、高さ、位置などの重要な要素を含んでいるので、これらの表現形式は、特徴を有している。例えば、柱の形状や角の角度などは、ある表現形式を有していたり、窓の開き方もある表現形式を有していたりする。このような表現形式は、施工業者によっても異なっていたり、設計事務所によっても異なっていたりする。基本設計図は、間取りや構造の特徴を明確に伝えることに主眼を置いているので、このような詳細の表現形式への配慮は少ないことが多い。
【0075】
しかしながら、この表現形式が施工と不整合となる可能性があり、放置していると、施工におけるミスが生じたりする。例えば、基本設計図で、ある窓が両側が開くように表現されていながら、施工業者の表現形式と異なっているため(不整合であるため)両側ではなく、中央が開くように施工されてしまうこともある。このような場合には、施工のやり直しとなってしまい、コストにも悪影響がでる。場合によっては、クレームの原因ともなる。
【0076】
(機器説明)
集合型不動産は、キッチン、備え付け家具、エアコン、照明などの機器を有している。基本設計図は、当然ながら、想定されるこれらの機器の表示を含んでいる。しかしながら、基本設計では、間取りや特徴を伝えることが主眼であり、このような機器説明については、詳細を検討していないことも多い。また、施工業者(外装業者、内装業者)や、機器のサプライヤーのそれぞれによって、機器の表現形式も異なる。
【0077】
このため、基本設計図から抽出された機器説明は、実際の施工に用いられる施工図面や施工作業における機器説明と不整合となる可能性もある。この不整合を放置しておけば、当然に、施工のやり直しやクレームの原因となりうることもある。抽出手段3は、この機器説明を抽出して、整合手段4に出力する。
【0078】
(仕上がり標準的表現)
抽出手段3は、基本設計図から仕上がり標準的表現を、設計要素の一つとして抽出する。仕上がり標準的表現は、いわゆる収まり図などの表現である。仕上がり標準的表現も、機器説明などと同様に設計事務所や施工業者などによって、様々である。このように様々である仕上がり標準的表現も、施工設計図や施工との不整合の要因となりうる。このため、抽出手段3は、この仕上がり標準的表現を抽出して、整合手段4に出力する。
【0079】
以上列挙した、縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つである設計要素は、実際の施工や竣工した集合型不動産との食い違いであって、施工作業での不具合や購入者にとっての不適正などの原因となる要素である。もちろん、ここに列挙した要素以外でも、基本設計図と実際の施工との相違点となりうるものはあるが、施工作業での不具合や購入者にとっての不適正の原因となるほどのものではない。すなわち、抽出手段3が抽出する設計要素は、集合型不動産の施工、販売、管理などのフローにおいて、早期にその不整合を修正しておくべき要素である。これらの設計要素の不整合が、早期に修正されておけば、以降の施工作業、販売、管理における不具合やクレームが生じにくくなる。
【0080】
また、これら抽出手段3が抽出する設計要素が、施工要素(実際の施工に合わせた場合)との不整合の原因となる。このため、抽出手段3は、抽出した設計要素を整合手段4に出力する。整合手段4での、不整合の修正に用いるためである。
【0081】
(整合手段)
整合手段4は、設計要素と施工要素との不整合を検出して、整合性を取って、確定図面を作成する。
【0082】
整合手段4は、抽出された設計要素に施工要素を対比させることで、設計要素の不整合を検出する。ここで、施工要素は、設計要素と対応する要素であって、施工設計図や施工作業において用いられる要素である。すなわち、設計要素と同一概念の施工要素との間に不整合があるままであると、設計要素を含んでいる基本設計図と施工要素を含んでいる施工設計図(あるいは施工される不動産)とは、異なったものになる。これらが異なる場合の問題点(1)〜(6)は、上述したとおりである。
【0083】
施工要素は、集合型不動産を施工する施工業者から得られる施工条件に基づく。施工業者は、不動産全体を施工するゼネコン、設備業者、外装業者、内装業者あるいはこれらの関係業者などである。これらの施工業者は、それぞれの慣例や規格などに従って、縮尺や寸法といった要素について、施工条件を有している。この施工条件に基づいて、種々の施工要素が定まる。
【0084】
図5は、本発明の実施の形態1における施工要素が整合手段に取り込まれる状態を示す模式図である。施工業者は、図5に示されるようにその種類等によって、施工業者A、施工業者B、施工業者Cなどがある(当然に他もありえる)。施工業者A、施工業者B、施工業者Cのそれぞれは、施工条件A、施工条件B、施工条件Cを有している。これらの施工条件A〜Cは、縮尺や寸法など施工において用いる施工要素の表現方法や決まりごとを含んでいる。これらが相まって、施工要素が決定される。このとき、施工条件A〜Cのそれぞれは、施工業者によって異なっていることも多い。
【0085】
すなわち、施工要素は、各施工業者で異なっている施工条件から共通となるように決定された要素である。このため、施工要素は、各施工業者での相違を共通化したものである。この施工要素は、整合手段4で用いられる。
【0086】
あるいは、施工要素は、集合型不動産において想定される施工設計図より得られても良い。施工設計図は、基本設計図に基づいて、施工業者が作成する。通常は、基本設計図より施工設計図が作成されるので、基本設計図と施工設計図との不一致となりやすいポイントは、経験的に蓄積されている。この蓄積によって、基本設計図から作成されるであろう施工設計図は、想定される。この想定される施工設計図から施工要素が得られても良い。
【0087】
(不整合)
施工要素は、設計要素と同じく、施工設計図や施工において実際に用いられる縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを用いる。ここで、設計要素と施工要素との不整合は、設計要素の縮尺と施工要素の縮尺との不整合、設計要素の寸法と施工要素の寸法との不整合、設計要素の表現形式と施工要素の表現形式との不整合、設計要素の機器説明と施工要素の機器説明との不整合および設計要素の仕上がり標準的表現と施工要素の仕上がり標準的表現との不整合の少なくとも一つを含む。
【0088】
また、施工要素が想定される施工設計図に基づく場合には、基本設計図の縮尺と施工設計図の縮尺との不整合、基本設計図の寸法と施工設計図の寸法との不整合、基本設計図の表現形式と施工設計図の表現形式との不整合、基本設計図の機器説明と施工設計図の機器説明との不整合および基本設計図の仕上がり標準的表現と施工設計図の仕上がり標準的表現との不整合の少なくとも一つを含む。
【0089】
整合手段4は、これらの不整合を修正する。
【0090】
不整合が縮尺である場合には、基本設計図の縮尺における不整合を、整合手段4は修正する。例えば、基本設計図のある部分は縮尺が100分の1で、ある部分が120分の1で表現されている場合には、整合手段4は、ある縮尺に合わせて図面や資料を作成しなおす。
【0091】
また、不整合が寸法である場合には、基本設計図の寸法における不整合を、整合手段4は、修正する。例えば、基本設計図のある部分は、ある縮尺に従って寸法が記載されているが、縮尺を実寸とした場合には、その大きさに不整合がある場合がある。整合手段4は、これらの不整合を修正する。例えば、基本設計図の寸法と図面上の大きさとが合っていない場合には、これを合わせるように基本設計図の図面を修正する。
【0092】
不整合が表現形式である場合には、整合手段4は、この表現形式の不整合を修正する。基本設計図の後は、施工設計図および施工が行われるので、整合手段4は、表現形式を施工設計や施工にあわせたものに修正することが好ましい。施工設計や施工にあわせた表現形式にあわせることで、施工設計や施工における手戻りなどを防止できる。整合手段4によって作成される確定図面は、施工設計や施工において便宜である。
【0093】
例えば、基本設計図における窓の表現形式が、施工要素の窓の表現形式(施工設計図や施工の慣例に基づく窓の表現形式)と不整合である場合には、整合手段4は、基本設計図の窓の表現形式を、施工要素の窓の表現形式に合わせる。もちろん、窓の表現形式のみならず、基本設計図の柱、壁、管路および戸などの表現形式が、施工要素での表現形式と異なる場合には、整合手段4は、表現形式を施工要素の表現形式に合わせるように修正する。
【0094】
不整合が機器説明である場合には、整合手段4は、施工要素の機器説明に合わせるように、基本設計図の機器説明を修正する。不整合が仕上がり標準的表現である場合も同様である。もちろん、ここに列挙した以外の設計要素についても、整合手段4は、不整合を検出して整合をとってもよい。
【0095】
整合手段4は、以上のように不整合を修正して、確定図面を作成する。確定図面は、例えば、基本設計図とは別個に作成されても良いし、基本設計図を修正するように作成されても良い。このとき、確定図面は、客観性をもって作成される。
【0096】
以上のように作成された確定図面は、以降の施工設計や施工において利用されるようになる。
【0097】
以上、実施の形態1における集合型不動産建設システム1は、基本設計図に含まれる設計要素の施工要素に対する不整合を修正することで、以降の処理の手戻りなどを低減し、コスト削減にも寄与する。
【0098】
(実施の形態2)
【0099】
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2は、確定図面の活用について説明する。
【0100】
(施工設計図への活用)
整合手段4は、基本設計図に含まれる設計要素の不整合を修正して、施工設計や施工における不具合を生じさせにくい確定図面を作成する。施工設計手段は、この確定図面を用いて、施工設計図を作成する。図6は、本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。施工設計手段6は、確定図面を受けて、施工設計図を作成して出力する。施工設計手段6は、自動化された部分と施工業者によって人的作業を受ける部分とを踏んでいて良い。
【0101】
施工設計図は、基本設計図に基づいて、実際の施工をするのに必要な詳細情報を含めた図面である。従来技術においては、基本設計図に基づいて施工設計図を作成するため、基本設計図に含まれる不整合を修正する手間が大きかった。あるいは、不整合に気づかずに、矛盾や問題を含んだ施工設計図が作成されることもあった。後者の場合には、当然ながら、施工が始まった後で、施工設計図を作成しなおしたり、施工計画を見直したりなどの作業を必要とし、手戻り作業となってしまう。
【0102】
しかし、確定図面は不整合を修正しており、確定図面に基づいて施工設計図が作成されれば、矛盾や問題を含まない施工設計図となる。例えば、確定図面は、基本設計図に含まれていた間取りの寸法と実寸との矛盾を修正している。このため、確定図面に基づいて、施工設計図を作成する際には、寸法と実寸との矛盾へ考慮を払う必要がない。
【0103】
このため、施工設計者は、確定図面に、施工に必要な詳細情報を追加するだけで、施工設計図を作成できる。当然に、この施工設計図は、確定図面と同じ構造を表示しているので、確定図面と施工設計図との間に矛盾や不整合がない。施工は、この施工設計図に基づいて行われるので、竣工される集合型不動産は確定図面と不整合がなく(いわゆる施工において生じる差異はあるが、設計要素に関る根本的な差異はない)、購入者のクレーム要因を生じさせない。
【0104】
また、施工設計図および確定図面のそれぞれは、必要に応じて施工業者や施主の手元に保管されるが、設計要素の不整合が修正されているので、施工設計図と確定図面との間でのやり取りで、不具合が生じることも少ない。
【0105】
以上のように、集合型不動産建設システム1が、施工設計手段6を更に備えることで、不整合が修正された確定図面によって施工設計図が作成される。この施工設計図は、確定図面に基づいていることで施工における手戻りや不具合を防止できる。当然に、建設期間、建設コストが低減し、購入者からのクレーム発生も抑えることができる。
【0106】
(販売図面)
図7は、本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。実施の形態1で説明した集合型不動産建設システム1が、販売図面生成手段7を更に有している構成が示されている。
【0107】
確定図面は、基本設計図に含まれる設計要素の不整合を修正している。このため、確定図面は、施工される集合型不動産の仕上がりとの矛盾は少ない。施工において生じざるを得ない相違は含んでいるが、設計要素における矛盾はない。このため、この確定図面に基づいて、広告や販売に用いられる販売図面が生成されれば、最終仕上がりとの矛盾が無い情報が提供できる。すなわち、確定図面に基づく販売図面によって、広告や販売を行った場合には、竣工する集合型不動産との矛盾が無いので、購入者は不満を感じることが少ない。購入者の不満が少なければ、クレームになることもなく、販売主も安心して販売することができる。
【0108】
販売図面生成手段7は、確定図面を受けて、販売図面を生成する。例えば、販売図面に価格やその他のコメントが必要である場合には、販売図面生成手段7は、確定図面にこれらの要素を書き加える。この書き加えによって、販売図面が生成される。
【0109】
このように、販売図面が確定図面に基づいていることで、販売図面と実際の集合型不動産の仕上がりとの不整合が少なくなるので、広告や販売において使用されても、問題が生じることがほとんどなくなる。結果として、販売主にとっても購入者にとってもメリットが生じ、集合型不動産の売買の活発化が期待できる。
【0110】
(管理用図面)
図8は、本発明の実施の形態2における集合型不動産建設システムのブロック図である。図8の集合型不動産建設システム1は、管理用図面生成手段8を備えている。管理用図面生成手段8は、確定図面に基づいて、管理用図面を生成する。
【0111】
集合型不動産は、竣工して販売が終了すると、施主から管理会社に移管される。このため、販売後は、管理会社が当該不動産を管理する立場になる。この管理においては、不動産を管理することはもちろん、中古不動産となった不動産の販売や斡旋も管理する必要が生じる。従来技術においては、販売図面と同様に、基本設計図がそのまま管理用図面として用いられていることが多かった。
【0112】
基本設計図は、実施の形態1で説明した通り、設計の慣例などによって、設計要素において種々の不整合を有している。この不整合を有したままの基本設計図に基づいて管理用図面が作成されると、実際に施工された集合型不動産と矛盾を有する管理用図面が用いられることになる。このような矛盾を含んだ管理用図面によって集合型不動産が管理されたり、中古不動産が販売されることは、当然に困難性が生じたりすることもある。
【0113】
管理用図面生成手段8は、基本設計図の設計要素の不整合(この不整合は、実際の施工に必要となる施工要素との不整合)を修正した確定図面に基づいて、管理用図面を生成する。このため、生成される管理用図面は、施工された集合型不動産との矛盾や不整合をほとんど含んでいない。このため、管理会社にとっては、この管理用図面に従うことで、管理や中古販売における困難性が低減できるメリットが生じる。
【0114】
以上のように、確定図面が中心となって、様々な展開が図られることで、集合型不動産建設における従来の問題が解決できる。この結果、集合型不動産の建設期間、建設コストが低減し、売買双方にとってのメリットがもたらされる。このメリットが高まることで、集合型不動産の建設意欲が高まり、経済活動が活発化する。
【0115】
なお、図6〜図8は、説明の便宜のために、個々の要素を備える説明を行ったが、集合型不動産建設システム1は、施工設計手段6、販売図面生成手段7、管理用図面生成手段8の内、2以上(当然全ても含む)を備えていてもよい。
【0116】
以上、実施の形態1〜2で説明された集合型不動産建設システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0117】
1 集合型不動産建設システム
2 記憶部
3 抽出手段
4 整合手段
6 施工設計手段
7 販売図面生成手段
8 管理用図面生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合型不動産の基本設計図を記憶する記憶部と、
前記基本設計図に含まれる設計要素を抽出する抽出手段と、
前記設計要素と施工要素との不整合を検出して整合性を取る整合手段と、を備える、集合型不動産建設システム。
【請求項2】
前記設計要素および前記施工要素の少なくとも一方は、前記基本設計図に含まれる縮尺、寸法、表現形式、機器説明および仕上がり標準的表現の少なくとも一つを含む、請求項1記載の集合型不動産建設システム。
【請求項3】
前記施工要素は、前記集合型不動産を施工する施工業者から得られる施工条件に基づく、請求項1又は2記載の集合型不動産建設システム。
【請求項4】
前記施工要素は、前記集合型不動産を施工する際に想定される施工設計図から得られる、請求項1又は2記載の集合型不動産建設システム。
【請求項5】
前記不整合は、前記基本設計図の寸法と前記施工設計図の寸法との不整合、前記基本設計図の縮尺と前記施工設計図の縮尺との不整合、前記基本設計図の表現形式と前記施工設計図の表現形式との不整合、前記基本設計図の機器説明と前記施工設計図の機器説明との不整合および前記基本設計図の仕上がり標準的表現と前記施工設計図の仕上がり標準的表現との不整合の少なくとも一つを含む、請求項4記載の集合型不動産建設システム。
【請求項6】
前記表現形式は、前記集合型不動産の窓、柱、壁、管路および戸の少なくとも一つの表現を含む、請求項2から5のいずれか記載の集合型不動産建設システム。
【請求項7】
前記整合手段は、前記不整合を修正した確定図面を出力する、請求項1から6のいずれか記載の集合型不動産建設システム。
【請求項8】
前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の施工設計図を生成する、施工設計手段を更に備える、請求項1から7のいずれか記載の集合型不動産建設システム。
【請求項9】
前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の販売用図面を生成する、販売図面生成手段を更に有する、請求項1から8のいずれか記載の集合型不動産建設システム。
【請求項10】
前記確定図面に基づいて、前記集合型不動産の管理用図面を生成する、管理用図面生成手段を更に有する、請求項1から9のいずれか記載の集合型不動産建設システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−20567(P2013−20567A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155427(P2011−155427)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500110407)ラウンドスペース株式会社 (1)
【Fターム(参考)】